(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024045576
(43)【公開日】2024-04-02
(54)【発明の名称】多軸リニアモータアクチュエータ
(51)【国際特許分類】
H02K 41/03 20060101AFI20240326BHJP
【FI】
H02K41/03 A
【審査請求】有
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2024021766
(22)【出願日】2024-02-16
(62)【分割の表示】P 2020153087の分割
【原出願日】2020-09-11
(71)【出願人】
【識別番号】000229645
【氏名又は名称】日本パルスモーター株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100077838
【弁理士】
【氏名又は名称】池田 憲保
(74)【代理人】
【識別番号】100129023
【弁理士】
【氏名又は名称】佐々木 敬
(72)【発明者】
【氏名】佐久間 謙輔
(57)【要約】
【課題】コンパクト化に適した多軸リニアモータアクチュエータを提供する。
【解決手段】リニアシャフトモータ10をn/2個ずつ平面視で一列に並べた状態で第1、第2のコイル固定部材に収容してなる第1、第2のモータユニットと、n/2組のガイド部44を有して分注ヘッド40を平面視で一列に並べた状態で中心軸方向に移動可能に支持すると共に、第1、第2のモータユニットに取り付けられる第1、第2の分注ヘッド支持部材と、を有する。第1、第2のモータユニットを、第1、第2の分注ヘッド支持部材を挟んだ状態で対向し、しかも第1のモータユニットにおけるn/2個のリニアシャフトモータの配置と第2のモータユニットにおけるn/2個のリニアシャフトモータの配置が平面視で千鳥状になるように組み合わせ、第1の分注ヘッド支持部材のガイド部と第2の分注ヘッド支持部材のガイド部とが平面視で隣接し、かつ交互に隣り合うようにした。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
中心軸方向に駆動されるモータシャフトを持つリニアシャフトモータと、前記リニアシャフトモータと平行に延び、前記モータシャフトの少なくとも一端側において第1の連結部材で連結して当該モータシャフトと一体的に変位するように組み合わされた軸状の被駆動体との組み合わせをn組(nは正の偶数)備える多軸リニアモータアクチュエータにおいて、
前記リニアシャフトモータをn/2個ずつ平面視で一列に並べた状態で第1、第2のモータ収容部材に収容してなる第1、第2のモータユニットと、
n/2組のガイド部を有して前記被駆動体を平面視で一列に並べた状態で中心軸方向に移動可能に支持すると共に、前記第1、第2のモータユニットに取り付けられる第1、第2の被駆動体支持部材と、を有し、
前記第1、第2のモータユニットを、前記第1、第2の被駆動体支持部材を挟んだ状態で対向し、しかも前記第1のモータユニットにおけるn/2個の前記リニアシャフトモータの配置と前記第2のモータユニットにおけるn/2個の前記リニアシャフトモータの配置が平面視で千鳥状になるように組み合わせることにより、前記第1の被駆動体支持部材の前記ガイド部と前記第2の被駆動体支持部材の前記ガイド部とが平面視で隣接し、かつ交互に隣り合うようにし、
前記第2のモータユニットに組み合わされる前記第2の被駆動体支持部材に設置されるn/2組のガイド部を、前記第1のモータユニットにおけるn/2個のリニアシャフトモータのそれぞれのモータシャフトに連結されるn/2個の被駆動体のガイド部とし、
前記第1のモータユニットに組み合わされる前記第1の被駆動体支持部材に設置されるn/2組のガイド部を、前記第2のモータユニットにおけるn/2個のリニアシャフトモータのそれぞれのモータシャフトに連結されるn/2個の被駆動体のガイド部とすることを特徴とする多軸リニアモータアクチュエータ。
【請求項2】
前記第1の被駆動体支持部材は、前記第1のモータユニットにおける前記第2のモータユニットとの対向面に取り付けられる2つの第1の取付け部と、これらの2つの第1の取付け部の間に掛け渡されてn/2個の前記ガイド部を設置するための第1のブリッジ部を有し、該第1のブリッジ部は、前記第2のモータユニット側に向けて突出し前記被駆動体を通すための穴を持つn/2組の突出部を有し、
前記第2の被駆動体支持部材は、前記第2のモータユニットにおける前記第1のモータユニットとの対向面に取り付けられる2つの第2の取付け部と、これらの2つの第2の取付け部の間に掛け渡されてn/2個の前記ガイド部を設置するための第2のブリッジ部を有し、該第2のブリッジ部は、前記第1のモータユニット側に向けて突出し前記被駆動体を通すための穴を持つn/2組の突出部を有し、
前記第1、第2の被駆動体支持部材のガイド部はそれぞれ、前記被駆動体が挿通される挿通孔が、前記突出部の穴と合わさって前記第1、第2のブリッジ部から突出した状態で前記突出部に設置されることにより、前記第1の被駆動体支持部材の前記ガイド部の挿通孔と前記第2の被駆動体支持部材の前記ガイド部の挿通孔とが平面視で一列かつ交互に隣り合うようにしたことを特徴とする請求項1に記載の多軸リニアモータアクチュエータ。
【請求項3】
前記第1の被駆動体支持部材は、前記第1のブリッジ部としてn/2個の上側突出部を持つ上側ブリッジとn/2個の下側突出部を持つ下側ブリッジとを平面視で互いに重なる位置に有して、前記n/2個の上側突出部と前記n/2個の下側突出部にそれぞれ、n/2個の上側ガイドとn/2個の下側ガイドが前記n/2組のガイド部として設置され、
前記第2の被駆動体支持部材も、前記第2のブリッジ部としてn/2個の上側突出部を持つ上側ブリッジとn/2個の下側突出部を持つ下側ブリッジとを平面視で互いに重なる位置に有して、前記n/2個の上側突出部と前記n/2個の下側突出部にそれぞれ、n/2個の上側ガイドとn/2個の下側ガイドが前記n/2組のガイド部として設置され、
前記第1の被駆動体支持部材の上側ブリッジは、前記第2の被駆動体支持部材の上側ブリッジよりも高い又は低い高さ位置にあり、前記第1の被駆動体支持部材の下側ブリッジも、前記第2の被駆動体支持部材の下側ブリッジよりも高い又は低い高さ位置にあることを特徴とする請求項1または2に記載の多軸リニアモータアクチュエータ。
【請求項4】
前記第1の被駆動体支持部材の上側ガイドは上側ブリッジの上面側に、下側ガイドは下側ブリッジの下面側にそれぞれ設置され、
前記第2の被駆動体支持部材の上側ガイドは上側ブリッジの上面側に、下側ガイドは下側ブリッジの下面側にそれぞれ設置されることを特徴とする請求項1から3のいずれか1項に記載の多軸リニアモータアクチュエータ。
【請求項5】
前記第1の被駆動体支持部材と前記第2の被駆動体支持部材における前記ガイド部の配列方向の長さを、前記第1のモータユニットと前記第2のモータユニットにおける前記リニアシャフトモータの配列方向の長さよりも大きくして、前記第1の被駆動体支持部材の前記2つの第1の取付け部と前記第2の被駆動体支持部材の前記2つの第2の取付け部を、前記第1のモータユニットと前記第2のモータユニットにおける前記配列方向の両端部から突出させ、この突出させた部分において前記第1の被駆動体支持部材と前記第2の被駆動体支持部材を固定するようにしたことを特徴とする請求項2から4のいずれか1項に記載の多軸リニアモータアクチュエータ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、多軸リニアモータアクチュエータに関し、特に、多軸型の分注装置に適した多軸リニアモータアクチュエータに関する。
【背景技術】
【0002】
リニアモータの一種に、リニアシャフトモータと呼ばれるものがある。リニアシャフトモータは、複数の筒状のコイルをその中心軸方向に積層してなるコイル部と、複数の永久磁石を、同磁極同士を対向させて直列に繋ぎ合わせ、繋ぎ合わせた複数の永久磁石よりも長い支持部材に固定してモータシャフトを構成してなる磁石部とを有し、コイル部の中心孔内に微小ギャップをおいてモータシャフトを挿通した構成となっている。そして、複数のコイルをU相、V相、W相の三相に分け、各相のコイルに120度ずつ位相のずれた交流電流を流し、永久磁石から発生される磁界と、コイルに流される電流との作用により、モータシャフトを中心軸方向に駆動する推力が得られるようにしている(特許文献1)。
【0003】
このようなリニアシャフトモータは、電子部品のハンドリング装置、少量液体の吸引、吐出を行う分注装置等、様々な分野に適用されている。ハンドリング装置や分注装置等のいずれにおいても、通常は、リニアシャフトモータのモータシャフトを第1シャフトとし、この第1シャフトに、その中心軸方向と平行に中空状の第2シャフトを第1シャフトと一体に上下移動するように組み合わせてリニアモータアクチュエータとして提供されている。そして、第2シャフトの中空空間がエアによるハンドリングや液体の吸引、吐出に利用できるように構成されている。
【0004】
例えば、ハンドリング装置の場合、第2シャフトの先端に真空吸着器のような治具を装着し、第1シャフトの上下移動に同期して電子部品のハンドリングを行うように構成されている(特許文献2)。一方、分注装置の場合、第2シャフトの先端にノズルを装着して分注ヘッドとし、第1シャフトの上下移動に同期してノズルの内部圧力を適宜増減させることにより、液体の吸引、吐出を行うように構成されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2017-139861号公報
【特許文献2】特開2012-090492号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
近年、上記のような第1シャフトと第2シャフトの組み合わせによるリニアモータアクチュエータを複数組、一列に並べて配置構成し、一括して同じ作業動作を行わせることで作業効率を向上させるようにした、多軸型リニアモータアクチュエータと呼ばれるものが提供されている。多軸型リニアモータアクチュエータは、例えば、個別に製造された上記のような分注装置を複数組、一列に並べて配置構成し、医薬品、化粧品、バイオなどの各分野で分注作業を行うための多軸型の分注装置として適用することが行われている。多軸型の分注装置によれば、複数組の分注装置に対して一括して同じ作業動作を行わせるので、人の手作業による分注作業に比べて大幅な省力化と、分注ミスの防止に有効である。
【0007】
これまでの多軸型の分注装置は、例えば臨床検査装置として、96(8サンプル×12列)検体用のマイクロプレートと組み合わされる場合、8組の分注装置が一列に並ぶように組み立てられて8軸同時制御型、すなわち多軸型の分注装置として構成されている。そして、多軸型の分注装置を搬送機構により液体(例えば試薬)の吸引場所と吐出場所(すなわちマイクロプレート)との間を往復移動させるように構成されている。よって、これまでの多軸型の分注装置は、個別に製造された複数組の分注装置の組み合わせにより製造されるのが一般的であり、同じ量の試薬を同じタイミングでマイクロプレートに吐出する分注作業のみ可能である。
【0008】
しかしながら、第1シャフト(リニアシャフトモータ)と第2シャフトの組み合わせによるリニアモータアクチュエータを個別に製造したうえで、これを複数組組み合わせるというこれまでの多軸型の分注装置は、装置全体が大型化してしまい、コンパクト化の要求に対応しにくいという問題点がある。
【0009】
一方、多軸型の分注装置に対し、複数組の分注装置のそれぞれを独立制御可能とする要求が高まっている。多軸独立制御型の分注装置によれば、同じ列であっても軸毎に個別の試薬量を個別のタイミングでマイクロプレートに吐出し、検体の反応をモニタリングすることができる。つまり、マイクロプレートに吐出する試薬量とタイミングをサンプル毎に設定することができ、試薬の吸引、吐出を自動化された制御形態で実行できることにより、客観的で信頼性の高い検査結果を得ることができる。
【0010】
上記のような問題点に鑑みて、本発明の課題は、コンパクト化に適した多軸リニアモータアクチュエータを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
(第1の態様)
本発明の第1の態様は、中心軸方向に駆動されるモータシャフトを持つリニアシャフトモータと、前記リニアシャフトモータと平行に延び、前記モータシャフトの少なくとも一端側において第1の連結部材で連結して当該モータシャフトと一体的に変位するように組み合わされた軸状の被駆動体との組み合わせをn組(nは正の偶数)備える多軸リニアモータアクチュエータにおいて、
前記リニアシャフトモータをn/2個ずつ平面視で一列に並べた状態で第1、第2のモータ収容部材に収容してなる第1、第2のモータユニットと、
n/2組のガイド部を有して前記被駆動体を平面視で一列に並べた状態で中心軸方向に移動可能に支持すると共に、前記第1、第2のモータユニットに組み合わされる第1、第2の被駆動体支持部材と、を有し、
前記第1、第2のモータユニットを、前記第1、第2の被駆動体支持部材を間において対向し、しかも前記第1のモータユニットにおけるn/2個の前記リニアシャフトモータの配置と前記第2のモータユニットにおけるn/2個の前記リニアシャフトモータの配置が平面視で千鳥状になるように組み合わせ、前記第1の被駆動体支持部材の前記ガイド部と前記第2の被駆動体支持部材の前記ガイド部とが平面視で隣接し、かつ交互に隣り合うように構成したことを特徴とする多軸リニアモータアクチュエータである。
【0012】
(第2の態様)
本発明の第2の態様は、前記第2のモータユニットに組み合わされる前記第2の被駆動体支持部材に設置されるn/2組のガイド部を、前記第1のモータユニットにおけるn/2個のリニアシャフトモータのそれぞれのモータシャフトに連結されるn/2個の被駆動体のガイド部とし、
前記第1のモータユニットに組み合わされる前記第1の被駆動体支持部材に設置されるn/2組のガイド部を、前記第2のモータユニットにおけるn/2個のリニアシャフトモータのそれぞれのモータシャフトに連結されるn/2個の被駆動体のガイド部とすることを特徴とする上記第1の態様に記載の多軸リニアモータアクチュエータである。
【0013】
(第3の態様)
本発明の第3の態様は、前記第1のモータユニットに組み合わされる前記第1の被駆動体支持部材に設置されるn/2組のガイド部を、前記第1のモータユニットにおけるn/2個のリニアシャフトモータのそれぞれのモータシャフトに連結されるn/2個の被駆動体のガイド部とし、
前記第2のモータユニットに組み合わされる前記第2の被駆動体支持部材に設置されるn/2組のガイド部を、前記第2のモータユニットにおけるn/2個のリニアシャフトモータのそれぞれのモータシャフトに連結されるn/2個の被駆動体のガイド部とすることを特徴とする上記第1の態様に記載の多軸リニアモータアクチュエータである。
【0014】
(第4の態様)
本発明の第4の態様は、前記第1の被駆動体支持部材は、前記第1のモータユニットにおける前記第2のモータユニットとの対向面に取り付けられる2つの第1の取付け部と、これらの2つの第1の取付け部の間に掛け渡されてn/2個の前記ガイド部を設置するための第1のブリッジ部を有し、該第1のブリッジ部は、前記第2のモータユニット側に向けて突出し前記被駆動体を通すための穴を持つn/2組の突出部を有し、
前記第2の被駆動体支持部材は、前記第2のモータユニットにおける前記第1のモータユニットとの対向面に取り付けられる2つの第2の取付け部と、これらの2つの第2の取付け部の間に掛け渡されてn/2個の前記ガイド部を設置するための第2のブリッジ部を有し、該第2のブリッジ部は、前記第1のモータユニット側に向けて突出し前記被駆動体を通すための穴を持つn/2組の突出部を有し、
前記第1、第2の被駆動体支持部材のガイド部はそれぞれ、前記被駆動体が挿通される挿通孔が、前記突出部の穴と合わさって前記第1、第2のブリッジ部から突出した状態で前記突出部に設置されることにより、前記第1の被駆動体支持部材の前記ガイド部の挿通孔と前記第2の被駆動体支持部材の前記ガイド部の挿通孔とが平面視で一列かつ交互に隣り合うようにしたことを特徴とする上記第1から第3の態様のいずれか1つに記載の多軸リニアモータアクチュエータである。
【0015】
(第5の態様)
本発明の第5の態様は、前記第1の被駆動体支持部材は、前記第1のブリッジ部としてn/2個の上側突出部を持つ上側ブリッジとn/2個の下側突出部を持つ下側ブリッジとを平面視で互いに重なる位置に有して、前記n/2個の上側突出部と前記n/2個の下側突出部にそれぞれ、n/2個の上側ガイドとn/2個の下側ガイドが前記n/2組のガイド部として設置され、
前記第2の被駆動体支持部材も、前記第2のブリッジ部としてn/2個の上側突出部を持つ上側ブリッジとn/2個の下側突出部を持つ下側ブリッジとを平面視で互いに重なる位置に有して、前記n/2個の上側突出部と前記n/2個の下側突出部にそれぞれ、n/2個の上側ガイドとn/2個の下側ガイドが前記n/2組のガイド部として設置され、
前記第1の被駆動体支持部材の上側ブリッジは、前記第2の被駆動体支持部材の上側ブリッジよりも高い又は低い高さ位置にあり、前記第1の被駆動体支持部材の下側ブリッジも、前記第2の被駆動体支持部材の下側ブリッジよりも高い又は低い高さ位置にあることを特徴とする上記第1から第4の態様のいずれか1つに記載の多軸リニアモータアクチュエータである。
【0016】
(第6の態様)
本発明の第6の態様は、前記第1の被駆動体支持部材の上側ガイドは上側ブリッジの上面側に、下側ガイドは下側ブリッジの下面側にそれぞれ設置され、
前記第2の被駆動体支持部材の上側ガイドは上側ブリッジの上面側に、下側ガイドは下側ブリッジの下面側にそれぞれ設置されることを特徴とする上記第1から第5のいずれか1つに記載の多軸リニアモータアクチュエータである。
【0017】
(第7の態様)
本発明の第7の態様は、前記第1の被駆動体支持部材と前記第2の被駆動体支持部材における前記ガイド部の配列方向の長さを、前記第1のモータユニットと前記第2のモータユニットにおける前記リニアシャフトモータの配列方向の長さよりも大きくして、前記第1の被駆動体支持部材の前記2つの第1の取付け部と前記第2の被駆動体支持部材の前記2つの第2の取付け部を、前記第1のモータユニットと前記第2のモータユニットにおける前記配列方向の両端部から突出させ、この突出させた部分において前記第1の被駆動体支持部材と前記第2の被駆動体支持部材を固定するようにしたことを特徴とする上記第4から第6の態様のいずれか1つに記載の多軸リニアモータアクチュエータである。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、コンパクト化に適した多軸リニアモータアクチュエータを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【
図1】本発明に係る多軸リニアモータアクチュエータの好ましい実施形態である8軸分注装置の斜視図である。
【
図2】
図1に示された8軸分注装置から、リニアシャフトモータと分注ヘッド及びこれらを連結している上下の連結部材を抽出して示した斜視図である。
【
図3】
図1に示された8軸分注装置から、
図1図中、左側の4組のリニアシャフトモータと分注ヘッドの組み合わせ(4軸分注装置)を抽出して示した斜視図である。
【
図5】
図4から、リニアシャフトモータと分注ヘッドの組み合わせ及びこれらを連結している上下の連結部材を抽出して示した側面図である。
【
図6】
図4に示されたリニアシャフトモータの一部の内部構造及びモータユニットに設置された回路基板の一部を示した断面図である。
【
図7】
図4に示された分注ヘッドの主要部の縦断面図である。
【
図8】
図1に示された8軸分注装置における第1、第2のモータユニット及び第1、第2の分注ヘッド支持部材をそれぞれ、リニアシャフトモータ、分注ヘッドを省略し、分解して示した斜視図である。
【
図9】
図1に示された8軸分注装置における第1、第2のモータユニットの主要部であるコイルユニットの製造過程を、順を追って説明するための斜視図である。
【
図10】
図9に示されたコイルユニットの構成要素であるコイル部の斜視図である。
【
図11】
図9に示されたコイルユニットを、その一部を分解して示した斜視図である。
【
図12】
図8に示されたコイルユニットに取付けられる回路基板の一例を示した図である。
【
図13】
図8に示された一対のモータユニットの左側の第1のモータユニットを、リニアシャフトモータのモータシャフトを省略して、別角度から見た斜視図である。
【
図14】リニアシャフトモータにおける位置制御のために設置される一対のホールセンサの取付間隔について説明するための図である。
【
図15】リニアシャフトモータにおけるモータシャフトのラジアル方向の外部磁界を計測した結果を示す図である。
【
図16】ホールセンサによるリニアシャフトモータの位置制御系の構成を示すブロック図である。
【
図17】
図1に示された8軸分注装置における上側連結部材の配置形態を示す上面図である。
【
図18】
図1に示された8軸分注装置を、上側連結部材、リニアシャフトモータ、及び分注ヘッドを省略して上方から見た平面図であり、第1のモータユニットに取り付けられた第1の分注ヘッド支持部材と、第2のモータユニットに取り付けられた第2の分注ヘッド支持部材とを分離した状態で示している。
【
図19】
図18に示された第1の分注ヘッド支持部材と、第2の分注ヘッド支持部材とを結合した状態で示した平面図である。
【
図20】
図8に示された第1の分注ヘッド支持部材を示し、図(a)は上面図、図(b)は正面図である。
【
図21】
図8に示された第2の分注ヘッド支持部材を示し、図(a)は上面図、図(b)は正面図である。
【
図22】4個のヘッド本体を支持している第1の分注ヘッド支持部材と4個のヘッド本体を支持している第2の分注ヘッド支持部材とを突き合わせ固定した状態を示す斜視図である。
【
図24】第1の分注ヘッド支持部材と第2の分注ヘッド支持部材の結合形態の別の例を示す平面図である。
【
図25】第1の分注ヘッド支持部材と第2の分注ヘッド支持部材の結合形態のさらに別の例を示す平面図である。
【
図26】本発明の第2の実施形態を示し、8軸分注装置を、
図18と同様に、上側連結部材、リニアシャフトモータ、及び分注ヘッドを省略して上方から見た平面図であり、第1のモータユニットに取り付けられた第1の分注ヘッド支持部材と、第2のモータユニットに取り付けられた第2の分注ヘッド支持部材とを分離した状態で示している。
【
図27】
図1に示された8軸独立制御型の分注装置における上側連結部材の上動位置を検出する検出手段を説明するための斜視図である。
【
図28】
図27に示された検出手段の設置形態の一例を説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
図1~
図8を参照して、本発明による多軸リニアモータアクチュエータの好ましい実施形態として、8軸分注装置について説明する。
【0021】
図1、
図2は、本発明が適用された8軸分注装置を示し、
図3は、8軸分注装置の半分、すなわち4軸分注装置を示す。
図4は、
図1のA-A線による縦断面図である。
図5は、
図4から、リニアシャフトモータと分注ヘッドの組み合わせ及びこれらを連結している上下の連結部材を抽出して示した側面図である。また、
図6は、リニアシャフトモータの一部の内部構造及びモータユニットに設置された回路基板の一部を示した断面図である。
【0022】
はじめに、リニアシャフトモータの内部構造について説明するが、この種のリニアシャフトモータは良く知られているので、簡単な説明にとどめることとする。
【0023】
図6を参照して、リニアシャフトモータ10は、中心軸方向に着磁した複数の永久磁石12を、同磁極同士を対向させて直列に繋ぎ合わせた状態で、非磁性材料による筒体13に収容、固定したものをモータシャフト(第1シャフト)11として有する。筒体13は、複数の永久磁石12の全長以上の長さを持つ。永久磁石12を収容している筒体13部分は、リニアシャフトモータ10用の磁石部と呼ばれても良い。このような磁石部は、後述するように、同形、同磁力の永久磁石12を対向させることで、モータシャフト11(磁石部)の周辺には、軸方向にN極とS極が同ピッチで交互に現れ、その表面磁束密度を測定すると正弦波形となる。リニアシャフトモータ10はまた、モータシャフト11を、ギャップを介して同心状に内包するように複数の筒状のコイル14を直列に繋ぎ合わせてなるものを、コイル部15として有する。コイル部15は、樹脂製のコイル一体化筒16の外周側に複数の筒状のコイル14を直列に繋ぎ合わせて一体化している。コイル一体化筒16は、(筒体13の外径+ギャップ)で表される内径を有している。モータシャフト11とコイル部15は、中心軸方向に相対的移動可能に構成されるが、ここでは、モータシャフト11が可動部、コイル部15が固定部となるように構成されている。
【0024】
コイル部15は、三相リニアモータを構成するために、U相、V相、W相の少なくとも3個のコイル14からなる。そして、それぞれのコイル14には電気的に120度の位相差を持つ交流電流を流し、各コイル14への通電を制御することにより、永久磁石12から発生される磁界と、コイル14に流される電流との作用により、モータシャフト11を中心軸方向に駆動する推力が得られるように構成している。
【0025】
なお、本明細書において「永久磁石を繋ぎ合わせる」という意味は、
図6に示すように永久磁石12同士を直接繋ぎ合わせるだけでなく、磁気特性や、反発力を抑制して組立て易くするという製造工程を考慮して、隣接する永久磁石12の間に軟鉄等の軟磁性体やラジアル方向に磁化した別の永久磁石をポールピースとして介在させて繋ぎ合わせることも含む。
【0026】
電源を含むリニアモータ駆動回路や、リニアモータ制御回路等は、良く知られており、本発明の要部ではないので、回路の図示、説明は省略し、位置制御系について後で説明する。
【0027】
図4、
図5を参照して、リニアシャフトモータ10は、モータシャフト11の下側、上側にそれぞれ、下側連結部材31、上側連結部材32が固定されている。それゆえ、固定部としてのコイル部15に対してモータシャフト11が上下動するのに伴って、下側連結部材31、上側連結部材32も一体的に上下動する。
【0028】
下側連結部材31及び上側連結部材32には、モータシャフト11の中心軸と平行に分注ヘッド(筒状の被駆動体)40が取り付けられている。分注ヘッド40は、
図7をも参照して、下側連結部材31と上側連結部材32との間隔よりも長い長さを持つ中空の筒状体によるヘッド本体41を有し、ヘッド本体41の上端部には上側連結部材32からわずかに突出している突出部41-1を有する。一方、下側連結部材31から突出しているヘッド本体41の下部には、先端にチップ42を装着したノズル部43が取り付けられている。分注ヘッド40は、下側連結部材31、上側連結部材32を介してモータシャフト11と一体に上下動する。分注ヘッド40は、ノズル部43よりも上方の部分、すなわちヘッド本体41をスプライン軸として、その中心軸周りの回転を防止する構造となっている。すなわち、スプライン軸となるヘッド本体41の外周に、中心軸方向に延びるスプライン溝(又は突条)を設けている。
【0029】
一方、
図4、
図5に戻って、下側連結部材31と上側連結部材32の間の2箇所に、ボールスプラインを構成する、フランジ付きのスプライン外筒を持つ上側ガイド44-1及び下側ガイド44-2をガイド部として設けている。上側ガイド44-1、下側ガイド44-2はそれぞれ、それらの中央部に分注ヘッド40のヘッド本体41を挿通するための貫通孔44-1a(下側の貫通孔は図示せず)を持つスプライン外筒を有し、貫通孔の内周側に中心軸方向に延びる突条(又は溝)を形成してヘッド本体41のプライン溝(又は突条)と共にボールスプラインを構成している。そして、スプライン溝(又は突条)が突条(又は溝)に嵌りこむようにヘッド本体41を上側ガイド44-1と下側ガイド44-2に装着している。なお、ボールスプラインに代えてボールブッシュが用いられても良い。また、ガイド部44は、上側ガイド44-1、下側ガイド44-2の一方のみで実現されても良い。
【0030】
上側ガイド44-1と下側ガイド44-2は、分注ヘッド支持部材(被駆動体支持部材)に設置されて1組のガイド部44として機能するが、本実施形態は、上側ガイド44-1と下側ガイド44-2の設置形態に1つの特徴があり、詳しくは後述する。
【0031】
モータシャフト11の上端部を上側連結部材32に固定するため、本実施形態では、
図1に示されるように、上側連結部材32に、モータシャフト11を挿通するための貫通孔32aを形成すると共に、貫通孔32aから上側連結部材32の一端に至るすり割り32bを形成している。更に、上側連結部材32の前記一端側に、一方の側面側からすり割り32bを横切って他方の側面側に向かう、六角穴付ネジ34をねじ込み可能にしている。このような構造により、貫通孔32aに挿入されたモータシャフト11の上端部は、六角穴付ネジ34による締付けによって貫通孔32a内に固定される。
【0032】
モータシャフト11の下端側についても上記と同様の固定構造が適用される。すなわち、
図2、
図5をも参照して、下側連結部材31に形成された貫通孔31aに挿入されたモータシャフト11の下端部が、六角穴付ネジ35による締付けによって貫通孔31a内に固定される。
【0033】
図3に示されるように、ヘッド本体41の上端側及びノズル部43よりも少し上方のヘッド本体41の途中部分も、上記と同様の固定構造(貫通孔とすり割り及び六角穴付ネジの組合せ)が適用されることにより、六角穴付ネジ36及び37による締付けによって、ヘッド本体41が上側連結部材32の貫通孔32c内及び下側連結部材31の貫通孔31c内に固定される。
【0034】
図3から理解できるように、4軸分注装置は、リニアシャフトモータ10と分注ヘッド40の組み合わせ4組からなり、4個のリニアシャフトモータ10と4個の分注ヘッド40がそれぞれ、互いに平行な異なる平面内で一列に並ぶように組み合わされてなる。
【0035】
図8は、
図1に示された8軸分注装置における第1、第2のモータユニット50A、50B及び第1、第2の分注ヘッド支持部材(被駆動体支持部材)60A、60Bをそれぞれ、リニアシャフトモータ、分注ヘッドを省略し、分解して示した斜視図である。第1、第2のモータユニット50A、50Bは、実質上同じ構造を有しているので、モータユニットについては、以下では、主に、
図8中左側の第1のモータユニット50Aについて説明する。
【0036】
図4、
図8を参照して、8個のリニアシャフトモータ10を4個ずつ一列に並べて配置するために一対のコイル固定部材(モータ収容部材)50が用いられる。一方、8個の分注ヘッド40を一列に並べて配置するために第1、第2の分注ヘッド支持部材60A、60Bが用いられる。後の説明で明らかとなるように、本実施形態では、第1のモータユニット50Aと第2の分注ヘッド支持部材60Bで支持される4個の分注ヘッド40が対の一方の4軸分注装置を構成するようにし、第2のモータユニット50Bと第1の分注ヘッド支持部材60Aで支持される4個の分注ヘッド40が対の他方の4軸分注装置を構成するようにしている。第1、第2の分注ヘッド支持部材60A、60Bはそれぞれ、対の他方の4軸分注装置の4個の分注ヘッド40と、対の一方の4軸分注装置の4個の分注ヘッド40を交互に並べて支持するための4組のガイド部44を有する。後述するように、ガイド部44は、分注ヘッド40を中心軸回りの回転を阻止しつつ中心軸方向に移動可能に支持する手段を構成するためにボールスプラインのスプライン外筒を有する。
【0037】
図3に示すような4軸分注装置は以下のようにして組立てられる。但し、
図3に示す4軸分注装置は、説明をわかり易くするための、いわば一部省略図であり、
図3に示すような形態に製造されるものではない。これは、
図3に示す4個の分注ヘッド40は、上述した第2の分注ヘッド支持部材60Bで支持された状態で8軸分注装置に組み込まれるからである。
【0038】
はじめに、コイル固定部材50内に4個のコイル部15を、一定間隔をおいて並べて配置、固定した後、各コイル部15にモータシャフト11を挿通する。続いて、各モータシャフト11の下端部及び上端部にそれぞれ、下側連結部材31及び上側連結部材32を固定する。次に、チップ42及びノズル43の付いていない4個の分注ヘッド40を第2の分注ヘッド支持部材60Bの4組のガイド部44で支持し、ヘッド本体41の下側部分を下側連結部材31に固定すると共に、ヘッド本体41の上端側を上側連結部材32に固定する。その後、ヘッド本体41にノズル43及びチップ42を装着する。以上のようにして、対の一方の4軸分注装置が組み立てられ、同様にして対の他方の4軸分注装置が組み立てられる。そして、対の4軸分注装置の組み立てに際しては、第1の分注ヘッド支持部材60Aの4組のガイド部44と、第2の分注ヘッド支持部材60Bの4組のガイド部44とが交互に一列に並ぶように第1の分注ヘッド支持部材60Aと第2の分注ヘッド支持部材60Bが結合され、その結果、
図1に示されるような8軸分注装置が出来上がる。
【0039】
図9~
図13をも参照して、本実施形態の別の特徴であるコイルユニットの製造方法を、第1のモータユニット50Aに適用して説明する。
【0040】
図9は、4軸分注装置のコイルユニットの製造過程を、順を追って示した斜視図である。
【0041】
図9において、はじめに、4組のコイル部15を所定ピッチP1で一列に並べた状態で受入れ可能な受入れ部51を持つコイル固定部材(第1のモータ収容部材)50を用意する(
図9(a))。コイル部15は、
図10をも参照して、樹脂製のコイル一体化筒16の外周に複数のコイル14を直列につなぎ合わせて固着してなる。コイル一体化筒16は、モータシャフト11の外径よりわずかに大きな内径と、複数のコイルのうちの両端のコイル14から突出した突出部16-1を持つ長さとを持つ。前述したように、複数のコイル14は、U相-V相-W相の3個を1組として配列され、デルタあるいはスター結線が施される。
【0042】
次に、
図9(b)に示すように、コイル固定部材50の受入れ部51に、4組のコイル部15を所定ピッチP1で一列に並べて配置する。
【0043】
コイル固定部材50の受入れ部51は、
図11を参照して、一列に並べて配置される4組のコイル部15の受入れ空間の底面を規定する底壁51aと、受入れ空間をコイル部15の軸方向と平行方向に関して規定するように互いに対向し合う一対の壁部材51bと、4組のコイル部15の両端側における一対の壁部材51bの間に設けられる一対のコイルエンド52とで形成される。コイルエンド52は、4組のコイル部15の両端から突出しているコイル一体化筒16の突出部16-1が挿入される4つの貫通孔52aを有し、底壁51aにネジ止めにより取外し可能に固定される。突出部16-1の突出長はコイルエンド52の板厚、すなわち貫通孔52aの長さより短い方が望ましい。
【0044】
コイルエンド52を底壁51aから取外し可能にしているのは、複数のコイル14の全長を、一対のコイルエンド52の間隔とほぼ同じにしているからである。つまり、
図11に示されるように、コイル受入れ部51の底壁51aに固定された一方のコイルエンド52の4つの貫通孔52aに4組のコイル部15の一方の突出部16-1を挿入して4組のコイル部15を受入れ部51に配置した後、他方のコイルエンド52を、その貫通孔52aに4組のコイル部15の他方の突出部16-1を挿入した状態で底壁51aにネジ止め固定する。
【0045】
コイルエンド52にはまた、受入れ部51に配置された4組のコイル部15の軸方向に平行な両側に、後述する磁気遮蔽板70(
図9(c))を設置するための5個のスリット52bが形成されている。言い換えれば、スリット52bは、貫通孔52aの両側の位置に、受入れ空間の開口側から深さ方向に形成されている。なお、一対のコイルエンド52は、少なくとも一方が底壁51aに取外し可能にされていればよい。
【0046】
図9(b)のコイル部15の配置工程に続いて、
図9(c)を参照して、一列に並べて配置された4組のコイル部15の軸方向に沿った両側にそれぞれ、コイル部15よりも長い磁気遮蔽板70を配置する。つまり、一対のコイルエンド52のスリット52bに1枚ずつ、合計5枚の磁気遮蔽板70を装着する。磁気遮蔽板70は、隣り合うコイル部15及びモータシャフト11内の永久磁石12により隣り合うリニアシャフトモータが互いに干渉(例えばコギング)し合うのを防止するためのものである。このため、磁気遮蔽板70は高透磁率材料、例えばSPCC(冷間圧延鋼鈑)からなり、少なくともモータシャフト11内の複数の永久磁石12の可動範囲に亘る長さを有する。また、磁気遮蔽板70の幅は受入れ部51の受入れ空間の深さよりも大きく、かつ少なくとも受入れ空間領域の一部領域に対応する部分の幅を受入れ空間の深さと同程度としている。これは、
図13を参照して後述されるように、受入れ空間領域に対応する部分に回路基板80を取付け可能な構成とするためである。
【0047】
続いて、
図9(d)を参照して、受入れ部51におけるコイル部15と磁気遮蔽板70との間に硬化性の樹脂(接着剤)75を流し込んで硬化させる。
【0048】
なお、磁気遮蔽板70は、少なくとも隣り合うコイル部15の間に対応する箇所に設けられれば良く、最も外側の2枚は省略されても良い。また、コイル部15と磁気遮蔽板70の固定は、硬化性の樹脂75による接着以外の固定方法で行われても良い。
【0049】
図12は、
図9の製造方法により作られたコイルユニットにおける受入れ空間の開口側に設置される回路基板80の一例を示し、
図13は、回路基板80がネジ止めにより設置されたコイルユニットの例を示す。回路基板80は、4組のコイル部15の一部を露出させるための切欠き81を有すると共に、磁気遮蔽板70の板幅の大きい幅広部の回路基板80からの突出を許容するための5個のスリット82を有する。切欠き81は、その周縁に形成されたコイル結線用の導電パターン84と4組のコイル部15との電気接続(図示省略)を容易にするために形成される。一方、スリット82は、回路基板80の上側となる位置に形成されているので、運用時に、万一、磁気遮蔽板70が接着不良により受入れ部51から剥離したとしても、幅広部の下端部がスリット82の下端縁に引っかかることにより、磁気遮蔽板70が落下することを防止する。
【0050】
図13では図示を省略しているが、コイルユニットにおける受入れ空間の開口側に設置した回路基板80は、
図8に示すように、コイル固定部材50にネジ止めにより固定された蓋部材55でカバーされる。勿論、蓋部材55の上端側には、回路基板80から突出している磁気遮蔽板70の突出部分を受け入れるための5つの溝55aが形成されている。
【0051】
図12及び
図13において、83は、モータシャフト11内の永久磁石12の位置を検出するための一対の磁気センサ、例えばアナログホールセンサ(以下、ホールセンサと略称する)であり、リニアシャフトモータ10におけるモータシャフト11の位置制御のために使用される。一対のホールセンサ83は、モータシャフト11に対応した位置であって磁気遮蔽板70の幅広部に隣接する位置に、モータシャフト11の移動方向に所定の取付間隔をおいて設置される。一対のホールセンサ83の取付間隔は、
図14に示すように、モータシャフト11(永久磁石12)の表面磁束密度の波形の電気角90度に設定される。これは、本発明者らが、リニアシャフトモータ10のラジアル方向の外部磁界を計測した結果、
図15に示すように、モータシャフト11(永久磁石12)の表面磁束密度はモータシャフト11の表面からある程度離れてゆくと正弦波に近い波形になってゆくという知見を得たことに基づいている。本実施形態では、
図15に示されるような計測データを参照しながら、正弦波により近いデータが得られる位置を、ホールセンサ83の設置場所として決定するようにしている。
【0052】
ところで、本実施形態では、以下の理由により、一対のホールセンサ83を、回路基板80の表面側(受入れ部51側と反対側の面)であって、2枚の磁気遮蔽板70の板幅の大きい部分の間に設置している。つまり、回路基板80にスリット82を形成することで、磁気遮蔽板70の板幅の大きい部分をコイル固定部材50の受入れ部51内まで延ばしている。これは、2枚の磁気遮蔽板70の板幅の大きい部分の間に設置されている一対のホールセンサ83に対して隣接するリニアシャフトモータ10からの磁界の影響を受けないようにするためである。なお、回路基板80に実装される電気回路は、主に、複数のコイル14と接続されて4個のリニアシャフトモータ10を駆動、制御するための回路であるが、回路については説明を省略し、
図16を参照して、リニアシャフトモータ10の位置制御系について説明する。
【0053】
図16は、リニアシャフトモータ10を個別に制御する位置制御系のブロック図であり、この位置制御系が各軸のリニアシャフトモータ10に設置される。ただし、マイコン88については、すべての軸のリニアシャフトモータ10に共通とすることができる。この位置制御系は、回路基板80上に設置されている2つのホールセンサ83と、2つのホールセンサ83からの検出信号を処理するオペアンプ85と、オペアンプ85からの信号をデジタル化するインターポレータ86と、インターポレータ86からのデジタル信号に基づいてリニアシャフトモータ10のモータシャフト11を駆動、制御するモータ駆動回路87と,モータ駆動回路87に対して、リニアシャフトモータ10の駆動に必要な移動量、移動速度、方向信号等の動作指令を出力するマイコン88とを含む。
【0054】
この位置制御系は、2つのホールセンサ83の検出信号から正の電圧信号に加えて負の電圧信号を生成する場合(信号反転ありの場合)と、2つのホールセンサ83の検出信号から正の電圧信号のみを生成する場合(信号反転なしの場合)とで以下の2通りの制御形態がある。
図16は、信号反転なしの場合を示しているが、信号反転ありの場合には、オペアンプ85以降の出力信号線の本数が異なることになる。
【0055】
(信号反転なしの場合)
1.モータシャフト11の表面磁束密度をホールセンサ83で検出し、アナログ電圧信号として出力する。モータシャフト11の表面磁束密度は、軸方向に沿って正弦波となっており、永久磁石12の磁極ピッチ(以下、マグネットピッチと呼ぶ)の1/4で2つのホールセンサ83を配置し、検出を行うと、電気角で90度位相のずれた2つの正弦波電圧信号、つまり正弦波(以下、Sin波)電圧信号、余弦波(以下、Cos波)電圧信号を生成することができる。
【0056】
2.2つのホールセンサ83から出力されたアナログ電圧信号はオペアンプ85に入力される。オペアンプ85は、2つのホールセンサ83の出力電圧をドライバ入力に適合するように調整する。
【0057】
3.ドライバのインターポレータ86で、オペアンプ85から入力された2つのアナログ信号をデジタル化し、指定のビット数で分割する。この分割数は、分解能(マグネットピッチ / 分割数)を規定し、例えば、マグネットピッチ24mm、分割数214の場合、分解能は1.5μmである。これにより、2つのアナログ電圧信号(Sin波電圧信号、Cos波電圧信号)は電気角で90度位相のずれた2つの矩形波信号(位置信号)になる。
【0058】
4.モータ駆動回路87で、インターポレータ86から入力された2つの矩形波信号によりモータシャフト11(分注ヘッド40)の現在位置、速度を検知し、リニアシャフトモータ10(コイル部15)に位置制御指令を出す。
【0059】
(信号反転ありの場合)
1.モータシャフト11の表面磁束密度を2つのホールセンサ83で検出し、アナログ電圧信号として出力する。モータシャフト11の表面磁束密度は、軸方向に沿って正弦波となっており、永久磁石12の磁極ピッチ(以下、マグネットピッチと呼ぶ)の1/4で2つのホールセンサ83を配置し、検出を行うと、電気角で90度位相のずれた2つのアナログ正弦波電圧信号、つまりSin波電圧信号と、Cos波電圧信号を生成することができる。
【0060】
2.2つのホールセンサ83から出力された2つのアナログ電圧信号はオペアンプ85に入力される。オペアンプ85は、入力された2つのアナログ電圧信号(Sin波電圧信号、Cos波電圧信号)のそれぞれについて反転信号を生成する。これにより、ホールセンサ83から入力されたSin波電圧信号、Cos波電圧信号の他に、-Sin波電圧信号、-Cos波電圧信号が生成されて4つのアナログ信号になる。また、オペアンプ85は、ホールセンサ83の出力電圧をドライバ入力に適合するように調整する。別の制御形態として上述したように、Sin波電圧信号、Cos波電圧信号の2つだけでも良いが、-Sin波電圧信号、-Cos波電圧信号を生成することでノイズに強くなる。
【0061】
3.ドライバのインターポレータ86で、オペアンプ85から入力された4つのアナログ信号をデジタル化し、指定のビット数で分割する。マグネットピッチと分割数で表される分解能は、上述した通りである。これにより、4つのアナログ電圧信号は4つの矩形波信号(位置信号)になる。
【0062】
4.モータ駆動回路87で、インターポレータ86から入力された4つの矩形波信号(位置信号)により、モータシャフト11(分注ヘッド40)の現在位置、速度を検知し、リニアシャフトモータ10(コイル部15)に位置制御指令を出す。
【0063】
次に、
図8に加えて、
図17~
図23をも参照して、本実施形態の主たる特徴部分とも言える、8軸分注装置における8個の分注ヘッド40の支持構造とガイド部の設置形態について説明する。
【0064】
図8において、8軸分注装置は、8個のリニアシャフトモータ10を4個ずつ平面視で一列に並べた状態で第1、第2のコイル固定部材(モータ収容部材)50に収容してなる第1、第2のモータユニット50A、50Bと、4組のガイド部44を有して4個の分注ヘッド40を平面視で一列に並べた状態で中心軸方向に移動可能に支持すると共に、第1、第2のモータユニット50A、50Bに取り付けられる第1、第2の分注ヘッド支持部材(被駆動体支持部材)60A、60Bと、を有する。
【0065】
なお、第1、第2の分注ヘッド支持部材(被駆動体支持部材)60A、60Bの延在長(分注ヘッドの配列方向の長さ)を、第1、第2のモータユニット50A、50Bの延在長(リニアシャフトモータの配列方向の長さ)より少し大きくしているが、その理由については後述する。
【0066】
8軸分注装置はまた、第1、第2のモータユニット50A、50Bを、第1、第2の分注ヘッド支持部材60A、60Bを挟んだ状態で対向し、しかも第1のモータユニット50Aにおける4個のリニアシャフトモータ10の配置と第2のモータユニット50Bにおける4個のリニアシャフトモータ10の配置が平面視で千鳥状になるように組み合わせ、第1の分注ヘッド支持部材のガイド部44と第2の分注ヘッド支持部材60Bのガイド部44とが平面視で隣接し、かつ交互に隣り合うように構成している。
【0067】
図17は、
図1に示された8軸分注装置における上側連結部材32の配置形態を示す上面図であり、第1のモータユニット50Aにおける4個のリニアシャフトモータ10の配置(ピッチP1)と第2のモータユニット50Bにおける4個のリニアシャフトモータ10の配置(ピッチP1)が平面視で千鳥状であることを示している。
【0068】
一方、
図18は、
図1に示された8軸分注装置を、上側連結部材32、リニアシャフトモータ10、及び分注ヘッド40を省略して上方から見た平面図であり、第1のモータユニット50Aに取り付けられた第1の分注ヘッド支持部材60Aと、第2のモータユニット50Bに取り付けられた第2の分注ヘッド支持部材60Bとを分離した状態で示している。
【0069】
図18は、以下のことを示している。第1のモータユニット50Aの4個のリニアシャフトモータ10の配置(ピッチP1)と第2のモータユニット50Bの4個のリニアシャフトモータ10の配置(ピッチP1)が平面視で千鳥状になるように組み合わされている。
図18はまた、以下のことを示している。
【0070】
すなわち、第1のモータユニット50Aに取り付けられた第1の分注ヘッド支持部材60Aにおいては4組のガイド部44が、4個のリニアシャフトモータ10の配置に対してP1/2ピッチだけ配列方向にずれるように設置されている。第2の分注ヘッド支持部材60Bについても同様であるが、第1の分注ヘッド支持部材60Aにおける4組のガイド部44の配置に対してもP1/2ピッチだけ配列方向にずれるように設置されている。
【0071】
一方、
図19は、
図18に示された第1の分注ヘッド支持部材60Aと、第2の分注ヘッド支持部材60Bとを結合した状態で示した平面図である。
図18、
図19は以下のことを示している。すなわち、
図18に示す分離状態から、
図19に示す結合状態になると、第1の分注ヘッド支持部材60Aの4組のガイド部44(ピッチP1)と第2の分注ヘッド支持部材60Bの4組のガイド部44(ピッチP1)とが平面視で隣接し、かつ交互に隣り合い、第1の分注ヘッド支持部材の4組のガイド部44で支持される分注ヘッド40と第2の分注ヘッド支持部材60Bの4組のガイド部44で支持される分注ヘッド40とが平面視で隣接し、かつ交互に隣り合う(ピッチP2=P1/2)ようになる。
【0072】
図19はまた、以下のことを示している。すなわち、第1のモータユニット50Aに組み合わされる第1の分注ヘッド支持部材60Aに設置される4組のガイド部44を、第2のモータユニット50Bにおける4個のリニアシャフトモータ10のそれぞれのモータシャフト11に連結される4個の分注ヘッド40のガイド部44とし、第2のモータユニット50Bに組み合わされる第2の分注ヘッド支持部材60Bに設置される4組のガイド部44を、第1のモータユニット50Aにおける4個のリニアシャフトモータ10のそれぞれのモータシャフト11に連結される4個の分注ヘッド40のガイド部44としている。例えば、
図17、
図18、
図19を参照して、図中最も左側の分注ヘッド40は、第1の分注ヘッド支持部材60Aに設置されたガイド部44で支持されるが、この分注ヘッド40は、図中最も左側の上側連結部材32によって図中最も左側のリニアシャフトモータ10のモータシャフトに連結され、このリニアシャフトモータ10は第2のモータユニット50Bに設置されている。
【0073】
図20は、第1の分注ヘッド支持部材60Aを示し、図(a)は上面図、図(b)は正面図である。
図21は、第2の分注ヘッド支持部材60Bを示し、図(a)は上面図、図(b)は正面図である。
【0074】
図8、
図20、
図21を参照して、第1の分注ヘッド支持部材60Aは、第1のモータユニット50Aにおける第2のモータユニット50Bとの対向面に取り付けられる2つの取付け部(第1の取付け部)61と、これらの2つの取付け部61の間に掛け渡されて4組のガイド部44を設置するための第1のブリッジ部として上側ブリッジ62-1と、下側ブリッジ62-2とを有する。上側ブリッジ62-1と、下側ブリッジ62-2はそれぞれ、第2のモータユニット50B側に向けて突出し分注ヘッド40のヘッド本体41を通すための穴を持つ4個の上側突出部62-11(ピッチP1)、下側突出部62-21(ピッチP1)を有する。なお、下側ブリッジ62-2に設けられる4個の下側突出部62-21は、上側ブリッジ62-1に設けられる4個の上側突出部62-11と平面視で重なる位置にある。
【0075】
第1の分注ヘッド支持部材60Aと同様に、第2の分注ヘッド支持部材60Bも、第2のモータユニット50Bにおける第1のモータユニット50Aとの対向面に取り付けられる2つの取付け部(第2の取付け部)61と、これらの2つの取付け部61の間に掛け渡されて4組のガイド部44を設置するための第2のブリッジ部として上側ブリッジ62-1と、下側ブリッジ62-2とを有する。上側ブリッジ62-1と、下側ブリッジ62-2はそれぞれ、第1のモータユニット50A側に向けて突出し分注ヘッド40のヘッド本体41を通すための穴を持つ4個の上側突出部62-11(ピッチP1)、下側突出部62-21(図示せず)を有する。ただし、第2の分注ヘッド支持部材60Bの上側ブリッジ62-1、下側ブリッジ62-2に形成する突出部は、第1の分注ヘッド支持部材60Aの上側ブリッジ62-1、下側ブリッジ62-2に形成する突出部に対して平面視でピッチP2(=P1/2)だけずれるようにしている。
【0076】
第1の分注ヘッド支持部材60Aの4個の上側ガイド44-1はそれぞれ、ヘッド本体41が挿通される挿通孔44-1aが、上側ブリッジ62-1の上側突出部62-11の穴と合わさって上側ブリッジ62-1から突出した状態で上側突出部62-11に設置(ピッチP1)される。上側突出部62-11への上側ガイド44-1の設置は、スプライン外筒の貫通孔44-1aの両側のフランジにおいてネジ45により行われる。下側突出部62-21への下側ガイド44-1の設置も同様である。同様に、第1の分注ヘッド支持部材60Aの4個の下側ガイド44-2はそれぞれ、ヘッド本体41が挿通される挿通孔44-2a(図示せず)が、下側ブリッジ62-2の下側突出部62-21の穴と合わさって下側ブリッジ62-2から突出した状態で下側突出部62-21に設置(ピッチP1)される。第2の分注ヘッド支持部材60Bの上側ブリッジ62-1に設置される4個の上側ガイド44-1、及び下側ブリッジ62-2に設置される下側ガイド44-2は、第1の分注ヘッド支持部材60A側の上側ガイド44-1、下側ガイド44-2に対して平面視でピッチP2(=P1/2)だけずれるように設置されることを除き、第1の分注ヘッド支持部材60Aと同じであるので、説明は省略する。
【0077】
上述したように、第1の分注ヘッド支持部材60Aは、4組のガイド部44を設置するための第1のブリッジ部として、4個の上側突出部62-11を持つ上側ブリッジ62-1と4個の下側突出部62-21を持つ下側ブリッジ62-21とを平面視で互いに重なる位置に有して、4個の上側突出部62-11と4個の下側突出部62-21にそれぞれ、4個の上側ガイド44-1と4個の下側ガイド44-2が4組のガイド部44として設置されている。これは、第2の分注ヘッド支持部材60Bも同様である。
【0078】
図20、
図21をも参照して、本実施形態では特に、第1の分注ヘッド支持部材60Aの上側ブリッジ62-1は、第2の分注ヘッド支持部材60Bの上側ブリッジ62-1よりも高い高さ位置にあり、第1の分注ヘッド支持部材60Aの下側ブリッジ62-2も、第2の分注ヘッド支持部材60Bの下側ブリッジ62-2よりも高い高さ位置にある。勿論、第1の分注ヘッド支持部材60Aの上側ブリッジ62-1、下側ブリッジ62-2をそれぞれ、第2の分注ヘッド支持部材60Bの上側ブリッジ62-1、下側ブリッジ62-2よりも低い高さ位置にしてもよい。
【0079】
本実施形態ではさらに、第1の分注ヘッド支持部材60Aの上側ガイド44-1を上側ブリッジ62-1(上側突出部62-11)の上面側に設置し、下側ガイド44-2を下側ブリッジ62-2(下側突出部62-21)の下面側に設置している(
図20(b))。同様に、第2の分注ヘッド支持部材60Bの上側ガイド44-1を上側ブリッジ62-1(上側突出部62-11)の上面側に設置し、下側ガイド44-2を下側ブリッジ62-2(下側突出部62-21)の下面側に設置している(
図21(b))。
【0080】
上述した8個の分注ヘッド40の支持構造及びガイド部44の設置形態により、
図18、
図19に示すように、第1の分注ヘッド支持部材60Aの上側ガイド44-1の挿通孔44-1aと第2の分注ヘッド支持部材60Bの上側ガイド44-1の挿通孔44-1aとが異なる高さ位置にあるにも拘わらず、平面視で一列かつピッチP2(=P1/2)で交互に隣り合うようにされている。同様に、第1の分注ヘッド支持部材60Aの下側ガイド44-2の挿通孔44-2a(図示せず)と第2の分注ヘッド支持部材60Bの下側ガイド44-2の挿通孔44-2a(図示せず)とが異なる高さ位置にあるにも拘わらず、平面視で一列かつピッチP2で交互に隣り合うようにされている。
【0081】
図22は、4個のヘッド本体41を支持している第1の分注ヘッド支持部材60Aと4個のヘッド本体41を支持している第2の分注ヘッド支持部材60Bとを突き合わせ固定した状態を示す斜視図である。第1の分注ヘッド支持部材60Aと第2の分注ヘッド支持部材60Bの固定は、第1の分注ヘッド支持部材60Aの両側の第1の取付け部61と第2の分注ヘッド支持部材60Bの両側の第2の取付け部61とを突き合わせた状態で、ネジ63をねじ込むことで行われる。これが、第1、第2の分注ヘッド支持部材60A、60Bの延在長を、第1、第2のモータユニット50A、50Bの延在長より少し大きくしている理由である。つまり、
図1に示すように、第1、第2のモータユニット50A、50Bの両端から突出した第1、第2の取付け部61を利用してネジ63による締付け固定を行うことができるようにしている。
【0082】
図23は、
図22を正面から見た図である。
図23から明らかなように、第1の分注ヘッド支持部材60Aにおける4個の上側ガイド44-1及び下側ガイド44-2と、第2の分注ヘッド支持部材60Bにおける4個の上側ガイド44-1及び下側ガイド44-2とを、交互に上下互い違いになるように設置したことにより、以下の効果が得られる。隣接配置された8個の分注ヘッドを、ボールスプライン(あるいはボールブッシュ)のガイド部で支持する場合、ガイド部の設置を同じ高さ位置にすると、ボールスプライン同士の干渉を防ぐために分注ヘッドの間隔を大きく取らなければならず、装置全体のコンパクト化の妨げとなる問題点がある。これに対し、8個の分注ヘッドのガイド部の設置形態を、
図23のように、交互に上下互い違いになるようにしたことにより、上記のような問題点は生じない。
【0083】
図24は、第1の分注ヘッド支持部材60Aと第2の分注ヘッド支持部材60Bの結合形態の別の例を示す平面図である。
図22では第1の分注ヘッド支持部材60Aと第2の分注ヘッド支持部材60Bとをネジ63で直接結合しているが、本例では第1の分注ヘッド支持部材60Aと第2の分注ヘッド支持部材60Bとを距離d1だけ離した状態で連結板65により一体化している。連結板65は、第1の分注ヘッド支持部材60Aの第1の取付け61と第2の分注ヘッド支持部材60Bの第2の取付け部61にねじ止めされる。
【0084】
図25は、第1の分注ヘッド支持部材60Aと第2の分注ヘッド支持部材60Bの結合形態のさらに別の例を示す平面図である。本例では第1の分注ヘッド支持部材60Aと第2の分注ヘッド支持部材60Bとを距離d1だけ離した状態で連結板65´により一体化している。連結板65´は、第1のモータユニット50Aの端面と第2のモータユニット50Bの端面にねじ止めされる。
【0085】
図26は、本発明の第2の実施形態を示し、
図1に示された8軸分注装置を、上側連結部材32、リニアシャフトモータ10、及び分注ヘッド40を省略して上方から見た平面図であり、第1のモータユニット50Aに取り付けられた第1の分注ヘッド支持部材60Aと、第2のモータユニット50Bに取り付けられた第2の分注ヘッド支持部材60Bとを分離した状態で示している。第2のモータユニット50Bにおける4個のリニアシャフトモータ10の配置と、第1のモータユニット50Aにおける4個のリニアシャフトモータ10の配置が千鳥状であるのは第1の実施形態と同じである。
【0086】
第2の実施形態が第1の実施形態と異なる点は以下のとおりである。第1の実施形態では、
図18を参照して、第1のモータユニット50Aに取り付けられた第1の分注ヘッド支持部材60Aにおいては4組のガイド部44が、4個のリニアシャフトモータ10の配置に対してP1/2ピッチだけ配列方向にずれるように設置されている。これに対し、第2の実施形態では、
図26を参照して、第1のモータユニット50Aに取り付けられた第1の分注ヘッド支持部材60A´においては4組のガイド部44´が、4個のリニアシャフトモータ10の配置に対して並行するように設置されている。言い換えれば、4組のガイド部44´は、4個のリニアシャフトモータ11の中心から配列方向に直角な方向に延長した位置に4組のガイド部44´の中心が位置するように設置されている。第2の分注ヘッド支持部材60B´についても同様であるが、第1の分注ヘッド支持部材60A´における4組のガイド部44´の配置に対してP2(=P1/2)ピッチだけ配列方向にずれるように設置されている。
【0087】
第2の実施形態においても、第1のモータユニット50Aの4個のリニアシャフトモータ10の配置(ピッチP1)と第2のモータユニット50Bの4個のリニアシャフトモータ10の配置(ピッチP1)が平面視で千鳥状になるように組み合わされ、第1の分注ヘッド支持部材60A´の4組のガイド部44´と第2の分注ヘッド支持部材60B´の4組のガイド部44´とが平面視で隣接し、かつ交互に隣り合う(ピッチP2=P1/2)構成となっている。
【0088】
しかし、第2の実施形態では、第1のモータユニット50Aに組み合わされた第1の分注ヘッド支持部材60A´に設置される4組のガイド部44´を、第1のモータユニット50A´における4個のリニアシャフトモータ10のそれぞれのモータシャフト11に連結される4個の分注ヘッド40のガイド部44´としている。一方、第2のモータユニット50Bに組み合わされる第2の分注ヘッド支持部材60B´に設置される4組のガイド部44´を、第2のモータユニット50B´における4個のリニアシャフトモータ10のそれぞれのモータシャフト11に連結される4個の分注ヘッド40のガイド部44´としている。例えば、図中最も左側の分注ヘッドは、第1の分注ヘッド支持部材60A´に設置されたガイド部44´で支持されるが、この分注ヘッドは、図中最も左側の上側連結部材によって図中最も左側のリニアシャフトモータのモータシャフトに連結され、このリニアシャフトモータ10は第1のモータユニット50Aに設置されている。
【0089】
なお、第1の分注ヘッド支持部材60A´と第2の分注ヘッド支持部材60B´における上側ブリッジ、下側ブリッジへの上側ガイド、下側ガイドの設置構造は第1の実施形態と変わらないので図示説明は省略する。
【0090】
次に、
図27、
図28を参照して、上側連結部材32の上動位置(上限位置)を検出することで分注ヘッド40による液体の吐出、吸引のための位置制御に必要な位置検出手段について説明する。
図27は、
図1に示された8軸分注装置における上側連結部材32の上動位置を検出する検出器100を説明するための斜視図である。また、
図28は、
図27に示された検出器100の設置形態の一例を説明するための図であり、(a)は8軸分注装置の側面図、(b)は8軸分注装置の斜視図である。
【0091】
本例では、一対のホールセンサ83からの位置検出信号によるリニアシャフトモータ10の位置制御とは別に、上側連結部材32の上動位置を上限位置として検出することで同じ組の分注ヘッド40の上動位置を検出するようにしている。このために、
図27に示すように、それぞれの上側連結部材32において、その中央に近い上端面に中空軸状の被検出突起101を設け、被検出突起101が所定の位置まで上動した時に光が遮断されるようにフォトセンサ102をリミットセンサとして設けている。フォトセンサ102は、
図28(a)、(b)に示されるように、上側連結部材32の上動位置よりも高い位置に、第1、第2の分注ヘッド支持部材60A、60Bに固定された支持板110を介してセンサ設置基板111を固定配置し、8軸分注装置の8個の被検出突起101に対応するように8個のフォトセンサ102をセンサ設置基板111上に設置している。8軸分注装置において、リニアシャフトモータ10、分注ヘッド40、下側連結部材31及び上側連結部材32を可動部とした場合、センサ設置基板111(フォトセンサ102)は、一対のコイル固定部材50、第1、第2の分注ヘッド支持部材60A、60Bと共に固定部となる。
【0092】
なお、検出器100は、液体の吸引、吐出の分注作業に伴う分注ヘッド40の上動位置を検出する手段だけでなく、分注作業を開始する際の原点位置決めを行う手段としても利用される。原点位置決めというのは以下のとおりである。
【0093】
分注動作開始時、被検出突起101がフォトセンサ102の光路を遮断し、フォトセンサ102から検出信号が出力されるまで各分注ヘッド40の上動動作を行う。この動作によりフォトセンサ102から出力された検出信号を基準としてオフセット動作を行う。オフセットされた位置は、各軸同じ高さになるため、この位置を、後述するリニアシャフトモータ10の位置決め制御の基準点として利用する。
【0094】
また、
図27、
図28では、フォトセンサ102の一端側から信号伝送用のケーブル103が延びているが、便宜上、一部のみを残して切断して示している。
【0095】
[実施形態の効果]
(1)上述した第1、第2の実施形態による8軸分注装置は、隣り合うリニアシャフトモータの間に必要なピッチを確保したうえで、装置全体をコンパクトに構成することができる。その1つの理由は、以下の通りである。隣接配置された8個の分注ヘッドを、ガイド部で支持する場合、ボールスプライン等のガイド部の設置を同じ高さ位置にすると、ガイド部同士の干渉を防ぐために分注ヘッドの間隔を大きく取らなければならず、装置全体のコンパクト化の妨げとなる問題点がある。これに対し、8個の分注ヘッドのガイド部の設置形態を、
図23のように、交互に上下互い違いになるようにしたことにより、上記のような問題点は生じない。
【0096】
(2)上述した第1、第2の実施形態による8軸分注装置は、前述したように、8軸という多軸であってもリニアシャフトモータ10のピッチ(間隔)P1を小さくせずに済むので、その分、永久磁石12やコイル14のサイズを小さくせずに分注装置を構成することができる。これは、以下のような観点において有効である。
【0097】
多軸型の分注装置に対しては、分注ヘッド間のピッチ(間隔)を小さくすることが要求される。これは、分注ヘッド間のピッチを小さくすることで多軸型の分注装置全体をコンパクト化して移動可能範囲を増やすことができるからである。しかしながら、これまでの複数の分注ヘッドの一列配置による多軸型の分注装置の場合、分注ヘッド間のピッチを小さくするためにはリニアシャフトモータの直径を小さくしなければならず、そのためには、永久磁石の直径を小さくするか、あるいはコイルの直径、すなわちコイルの巻数を減らさなければならない。これは、各軸の推力が小さくなることを意味する。しかるに、分注ヘッドの上下動には、所定の推力が要求される。これは、例えば
図7を参照して、ノズル43の先端に取り付けられるチップ42の取外しを、液体の吸引、吐出場所とは別の場所において、チップ42とノズル43との間のくびれ部分をジグ(図示省略)で挟んだ状態にしてヘッド本体41を上動させることにより、自動化することが行われているからである。言い換えれば、分注ヘッドの上下動の推力が小さくなると、チップ42の自動取外しが困難になる。
【0098】
上記のような事情に対し、本実施形態に係る8軸独立制御型の分注装置によれば、分注ヘッド間のピッチを小さくしたうえで、リニアシャフトモータの直径を小さくせずに、分注ヘッドの上下動に際して所定の推力を得ることができるので、上記のような問題を生じることがない。
【0099】
(3)通常、リニアシャフトモータのコイル部は、コイル部毎にケーシングに収められている。これに対し、上気した第1、第2の実施形態では、複数のモータシャフト11を隣接させて配置する構造のため、複数組のコイル部15をまとめてユニット化しているので、コイルユニットにおける部品点数の削減、組立工数の削減、省スペース化を実現できる。
【0100】
(4)また、各コイル部15の軸方向の両側に磁気遮蔽板70を設置し、コイル部15の固定と磁気遮蔽板70の固定を、硬化性の樹脂75により同時に行うことができるようにしているので、この点からも、コイルユニットにおける部品点数の削減、組立工数の削減、省スペース化を実現できる。
【0101】
以上、本発明を8軸分注装置に適用した場合の好ましい実施形態について説明したが、本発明は上記の実施形態に制限されるものでないことは言うまでもない。すなわち、本発明は、2軸以上の多軸分注装置であれば各軸を個別に制御する独立制御型、複数軸に一括して同じ動作を実行させるように制御する同時制御型のいずれにも適用可能であり、更には、分注装置に限らず、多軸型のリニアモータアクチュエータ全般に適用可能である。
【符号の説明】
【0102】
10:リニアシャフトモータ、11:モータシャフト、12:永久磁石、13: 筒体、14:コイル、16:コイル一体化筒、31:下側連結部材、32:上側連結部材、40:分注ヘッド、41:ヘッド本体、42:チップ、43:ノズル、44:ガイド部、44-1:上側ガイド、44-2:下側ガイド、50:コイル固定部材、50A:第1のモータユニット、50B:第2のモータユニット、51:受入れ部、52:コイルエンド、60A:第1の分注ヘッド支持部材、60B:第2の分注ヘッド支持部材、61:第1、第2の取付け部、62-1:上側ブリッジ、62-11:上側突出部、62-2:下側ブリッジ、62-21:下側突出部、65,65´:連結板、70:磁気遮蔽板、80:回路基板、83:ホールセンサ、100:検出器、102:フォトセンサ、111:センサ設置基板