IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ アズビル金門株式会社の特許一覧 ▶ 学校法人幾徳学園の特許一覧

特開2024-4559流体圧力推定装置及び流体圧力推定方法
<>
  • 特開-流体圧力推定装置及び流体圧力推定方法 図1
  • 特開-流体圧力推定装置及び流体圧力推定方法 図2
  • 特開-流体圧力推定装置及び流体圧力推定方法 図3
  • 特開-流体圧力推定装置及び流体圧力推定方法 図4
  • 特開-流体圧力推定装置及び流体圧力推定方法 図5
  • 特開-流体圧力推定装置及び流体圧力推定方法 図6
  • 特開-流体圧力推定装置及び流体圧力推定方法 図7
  • 特開-流体圧力推定装置及び流体圧力推定方法 図8
  • 特開-流体圧力推定装置及び流体圧力推定方法 図9
  • 特開-流体圧力推定装置及び流体圧力推定方法 図10
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024004559
(43)【公開日】2024-01-17
(54)【発明の名称】流体圧力推定装置及び流体圧力推定方法
(51)【国際特許分類】
   G06Q 50/06 20240101AFI20240110BHJP
【FI】
G06Q50/06
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022104192
(22)【出願日】2022-06-29
(71)【出願人】
【識別番号】000142425
【氏名又は名称】アズビル金門株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】391022614
【氏名又は名称】学校法人幾徳学園
(74)【代理人】
【識別番号】110003166
【氏名又は名称】弁理士法人山王内外特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】増田 智紀
(72)【発明者】
【氏名】村上 英治
(72)【発明者】
【氏名】塩野 直志
【テーマコード(参考)】
5L049
【Fターム(参考)】
5L049CC06
(57)【要約】
【課題】流量計によって流量を取得する間隔よりも短い期間での導管網の圧力を取得することができる流体圧力推定装置を提供する。
【解決手段】流体圧力推定装置100は、流体を輸送するための導管網に配置された第1特定点の、第1期間における流体の流量を取得する流量取得部(105)と、第1特定点の第1期間における流体の流量と、予め取得した第1期間における流体の流量と第1期間よりも短い第2期間における流体の流量との関係を示す期間流量関係情報と、に基づいて、第1特定点の第2期間における流体の流量を推定する流量推定部(106)と、導管網に配置された第2特定点の、第2期間における流体の圧力を取得する圧力取得部(107)と、予め取得した導管網に関する情報と、第1特定点の第2期間における流体の流量と、第2特定点の第2期間における流体の圧力と、に基づいて、第1特定点の第2期間における流体の圧力を推定する圧力推定部(108)と、を備えた。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
流体を輸送するための導管網に配置された第1特定点の、第1期間における流体の流量を取得する流量取得部と、
前記第1特定点の前記第1期間における流体の流量と、予め取得した前記第1期間における流体の流量と前記第1期間よりも短い第2期間における流体の流量との関係を示す期間流量関係情報と、に基づいて、前記第1特定点の前記第2期間における流体の流量を推定する流量推定部と、
前記導管網に配置された第2特定点の、前記第2期間における流体の圧力を取得する圧力取得部と、
予め取得した前記導管網に関する情報と、前記第1特定点の前記第2期間における流体の流量と、前記第2特定点の前記第2期間における流体の圧力と、に基づいて、前記第1特定点の前記第2期間における流体の圧力を推定する圧力推定部と、を備えた
ことを特徴とする流体圧力推定装置。
【請求項2】
前記流量取得部は、前記第1特定点で前記第1期間において消費される流体の流量を取得し、
前記流量推定部は、前記第1特定点で前記第1期間において消費される流体の流量と、予め取得した前記期間流量関係情報と、に基づいて、前記第1特定点で前記第2期間において消費される流体の流量を推定する
ことを特徴とする請求項1記載の流体圧力推定装置。
【請求項3】
前記期間流量関係情報は、前記第1期間において消費される流体の流量の時間変化を示す情報である
ことを特徴とする請求項2記載の流体圧力推定装置。
【請求項4】
前記期間流量関係情報は、流体を消費する消費者の種別に応じた情報である
ことを特徴とする請求項3記載の流体圧力推定装置。
【請求項5】
前記期間流量関係情報は、流体を消費する消費者の種別と、当該消費者が前記第1期間において消費する流体の流量の時間変化を示す情報と、を含む教師データに基づいて生成された学習モデルによって、前記第1特定点で流体を消費する消費者の種別に応じて推論される
ことを特徴とする請求項4記載の流体圧力推定装置。
【請求項6】
前記流量取得部は、前記導管網に配置された第3特定点で、前記第1期間において消費される流体の流量の時間変化を示す情報を取得し、
前記教師データは、前記第3特定点で流体を消費する消費者の種別と、当該消費者が前記第1期間において消費する流体の流量の時間変化を示す情報と、を含む
ことを特徴とする請求項5記載の流体圧力推定装置。
【請求項7】
前記圧力取得部は、前記導管網に配置された第4特定点の、前記第2期間における圧力を取得し、
前記圧力推定部は、予め取得した前記導管網に関する情報と、前記第1特定点の前記第2期間における流体の流量と、前記第2特定点の前記第2期間における流体の圧力と、に基づいて、前記第4特定点の前記第2期間における流体の圧力を推定し、
前記圧力推定部は、前記圧力取得部が取得した前記第4特定点の前記第2期間における流体の圧力と、前記圧力推定部が推定した前記第4特定点の前記第2期間における流体の圧力と、の差が、予め設定された範囲外であった場合、前記導管網に関する情報及び前記圧力取得部が取得した前記第2特定点の前記第2期間における流体の圧力の少なくとも一方を補正する
ことを特徴とする請求項2記載の流体圧力推定装置。
【請求項8】
前記流量推定部は、前記第2期間の気象要素及び前記第2期間よりも後の期間である第3期間の気象要素に関する気象情報と、前記第1特定点の前記第2期間における流体の流量と、に基づいて、前記第1特定点の前記第3期間における流体の流量を推定し、
前記圧力取得部は、前記第2特定点の前記第3期間における流体の圧力を取得し、
前記圧力推定部は、予め取得した前記導管網に関する情報と、前記第1特定点の前記第3期間における流体の流量と、前記第2特定点の前記第3期間における流体の圧力と、に基づいて、前記第1特定点の前記第3期間における流体の圧力を推定する
ことを特徴とする請求項2記載の流体圧力推定装置。
【請求項9】
前記圧力推定部が推定した前記第1特定点の流体の圧力が、予め設定された範囲内であるか否かを判定する判定部を備えた
ことを特徴とする請求項1乃至8のいずれか1項記載の流体圧力推定装置。
【請求項10】
流量取得部と、流量推定部と、圧力取得部と、圧力推定部と、を備えた装置が行う流体圧力推定方法であって、
前記流量取得部が、流体を輸送するための導管網に配置された第1特定点の、第1期間における流体の流量を取得するステップと、
前記流量推定部が、前記第1特定点の前記第1期間における流体の流量と、予め取得した前記第1期間における流体の流量と前記第1期間よりも短い第2期間における流体の流量との関係を示す期間流量関係情報と、に基づいて、前記第1特定点の前記第2期間における流体の流量を推定するステップと、
前記圧力取得部が、前記導管網に配置された第2特定点の、前記第2期間における流体の圧力を取得するステップと、
前記圧力推定部が、予め取得した前記導管網に関する情報と、前記第1特定点の前記第2期間における流体の流量と、前記第2特定点の前記第2期間における流体の圧力と、に基づいて、前記第1特定点の前記第2期間における流体の圧力を推定するステップと、を備えた
ことを特徴とする流体圧力推定方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、流体圧力推定装置及び流体圧力推定方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、都市ガス等の流体を供給する導管網上に複数の圧力計及び複数の流量計を設け、これらによる測定情報に基づいて導管網解析を行うことで導管網の各箇所の圧力を算出し、圧力が規定の範囲内に入っていないなど、不適切に制御が行われている箇所を検出する導管網圧力制御装置が開示されている(特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2005-293236号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
一般に、流体を輸送する導管網においては、流体を消費する需要家毎に、消費した流体の流量、即ち消費量を測定するための積算流量計が設けられており、流体を各需要家へ輸送する事業者は、例えば、月に一度作業員が行う流量計の検針作業によって需要家毎の消費量を取得することができる。しかしながら、このように取得した消費量に基づいて導管網の圧力を算出する場合、作業員が行う検針作業の間隔よりも短い期間における導管網の圧力を取得することが出来ず、消費量も取得できないため導管網の圧力を計算することが出来ない。
【0005】
本開示は、上記課題を解決するものであって、流量計によって流量を取得する間隔よりも短い期間における導管網の圧力を取得することができる流体圧力推定装置及び流体圧力推定方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示に係る流体圧力推定装置は、流体を輸送するための導管網に配置された第1特定点の、第1期間における流体の流量を取得する流量取得部と、第1特定点の第1期間における流体の流量と、予め取得した第1期間における流体の流量と第1期間よりも短い第2期間における流体の流量との関係を示す期間流量関係情報と、に基づいて、第1特定点の第2期間における流体の流量を推定する流量推定部と、導管網に配置された第2特定点の、第2期間における流体の圧力を取得する圧力取得部と、予め取得した導管網に関する情報と、第1特定点の第2期間における流体の流量と、第2特定点の第2期間における流体の圧力と、に基づいて、第1特定点の第2期間における流体の圧力を推定する圧力推定部と、を備えたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0007】
本開示によれば、流量取得部によって取得した第1特定点の第1期間における流体の流量と、予め取得した期間流量関係情報と、に基づいて、第1特定点の第2期間における流体の消費量を推定し、第1特定点の第2期間における流体の消費量に基づいて、導管網の圧力を推定するので、流量取得部によって流量を取得する期間よりも短い期間における導管網の圧力を取得することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】実施の形態1に係る導管網の概略構成を示す模式図。
図2】実施の形態1に係る流体圧力管理システムの構成を示すブロック図。
図3】実施の形態1に係る流体圧力推定装置のハードウェア構成の例を示すブロック図。
図4】実施の形態1に係る流体圧力推定装置のハードウェア構成の例を示すブロック図。
図5】実施の形態1に係る流体圧力推定装置が行う第1消費量推定処理を示すフローチャート。
図6図6Aは、実施の形態1に係る消費量の第1類型を示す図、図6Bは、実施の形態1に係る消費量の第2類型を示す図、図6Cは、実施の形態1に係る消費量の第3類型を示す図。
図7】実施の形態1に係る流体圧力推定装置が行う圧力推定処理を示すフローチャート。
図8】実施の形態1に係る流体圧力推定装置が行う圧力予測処理を示すフローチャート。
図9】実施の形態1に係る流体圧力推定装置が行う第2消費量推定処理を示すフローチャート。
図10】実施の形態1に係る消費量の類型を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本開示に係る実施の形態について図面を参照しながら詳細に説明する。
実施の形態1.
まず、図1を参照して、実施の形態1に係る導管網Nの概略構成について説明する。図1は、実施の形態1に係る導管網Nの概略構成を示す模式図である。導管網Nは、互いに連通する複数の導管C1,C2によって網状に形成されており、所定の地域内において導管網Nに接続されるように配置された住居、店舗、事業所、公共施設等の施設に都市ガス等のガス燃料を輸送する。
【0010】
導管網Nは、ガス燃料の製造所またはガス燃料を貯蔵する基地からのガス燃料を輸送する中圧導管C1と、中圧導管C1によって輸送されたガス燃料を減圧する整圧器Gと、施設P1~P16へ整圧器Gによって減圧されたガス燃料を輸送する低圧導管C2と、を備えている。整圧器Gは、設定値を調節することによって、整圧器Gに対して低圧導管C2の側のガス燃料の圧力が設定値に応じた圧力となるように、ガス燃料の圧力を調節可能になっている。中圧導管C1及び低圧導管C2によって施設P1~P16へ輸送されたガス燃料は、各施設を使用する際にガス燃料を消費する消費者としての需要家によって消費される。なお、導管網Nは、1つの整圧器Gのみを備えているものに限らず、複数の整圧器Gを備えていてもよい。なお、図1は模式図であり、一般に、ガス燃料が輸送される施設は、導管網から分岐して各戸の敷地内に配置される事が多い。
【0011】
施設P1~P16は、それぞれの施設で消費したガス燃料の流量を測定可能になっている。例えば、施設P1~P16のうち、一部の施設である施設P1~P3、P7~P9及びP12~P16は、当該施設で各需要家が消費したガス燃料の流量(以下「消費した(ガス燃料(流体)の)流量」を、「消費量」ともいう。)を測定し、消費量の積算値を表示するメータ装置としての非スマートメータ(不図示)を備えている。例えば、非スマートメータは、作業員が所定の頻度で消費量の積算値の表示を目視確認する検針作業によって、消費量を記録するためのメータ装置である。例えば、所定の頻度は、1箇月に1度の頻度である。
【0012】
また、例えば、施設P1~P16のうち、他の施設であるP4~P5、P10~P11は、当該施設での各需要家による消費量及び当該施設に伝達されるガス燃料の圧力を測定して、所定の頻度で計測結果を外部へ出力するメータ装置としてのスマートメータ(図2参照)を備えている。例えば、スマートメータは、単位時間毎の消費量及び当該単位時間のガス燃料の圧力の測定結果を記憶し、測定結果を所定の頻度で通信ネットワーク(不図示)を介して外部へ送信する。具体的には、スマートメータは、1時間毎の消費量及び当該1時間のガス燃料の圧力の測定結果を記憶し、測定結果を数時間おきに、通信ネットワーク(不図示)を介して外部へ送信する。なお、スマートメータが測定結果を送信する頻度は、1時間毎でも数時間毎でもよく、後述する流体圧力推定装置100によって導管網Nのガス燃料の圧力を推定する際に必要なタイミングで送信するように構成されていればよい。また、単位時間は、1時間に限らず、特定期間よりも短い期間であればよい。また、特定期間における単位時間は、実施の形態1において、第2期間を構成する。
【0013】
次に、図2を参照して、実施の形態1に係る流体圧力管理システム1の構成について説明する。図2は、実施の形態1に係る流体圧力管理システム1の構成を示すブロック図である。流体圧力管理システム1は、導管網N(図1参照)におけるガス燃料の圧力を管理するためのシステムである。図2に示すように、流体圧力管理システム1は、流体圧力推定装置100と、気象データベース(以下「気象DB」という。)200、需要家データベース(以下「需要家DB」という。)300、外部コンピュータ400、及び上述したスマートメータM1~Mnを備えている。なお、流体圧力管理システム1は、複数のスマートメータを備えているものに限らず、1つのスマートメータのみを備えているものであってもよいし、スマートメータを備えていないものであってもよい。
【0014】
流体圧力推定装置100は、気象DB200、需要家DB300、外部コンピュータ400、及びスマートメータM1~Mnと情報通信可能に接続されている。流体圧力推定装置100は、気象DB200、需要家DB300、外部コンピュータ400、及びスマートメータM1~Mnからの情報に基づいて導管網Nの導管網解析を行うことによって、導管網Nの任意の点におけるガス燃料の圧力を推定するための装置である。導管網Nに配置されている各施設へガス燃料を安定して供給するためには、ガス燃料の圧力が所定の範囲内になるように管理される必要がある。流体圧力管理システム1は、流体圧力推定装置100によって導管網Nのガス燃料の圧力を推定し、必要に応じて整圧器G(図1参照)の設定値を調節することで、導管網Nのガス燃料の圧力の管理を可能としている。流体圧力推定装置100の詳細については、後述する。
【0015】
気象DB200は、気象に関する情報を蓄積して記憶する。例えば、気象DB200は、行政機関、NGO、民間企業等の団体によって測定または収集が行われた、気象に関する情報を蓄積して記憶する。具体的には、気象DB200は、導管網Nが形成されている地域において、日時に紐づけられた、気温、降雨量、積雪量、日照時間等の気象要素の統計情報及び予測情報を取得して記憶する。
【0016】
需要家DB300は、導管網Nによって輸送されたガス燃料を使用する需要家に関する情報を収集して記憶する。例えば、需要家DB300は、需要家の種別に関する情報を収集して記憶する。具体的には、需要家の種別は、需要家がガス燃料を使用する施設の種類、ガス燃料の用途、メータ装置の種類(スマートメータか非スマートメータか)、メータ装置の号数(容量)、契約最大流量、過去の消費量等、需要家を分類するための情報のうち、1つまたは複数の情報を含む。
【0017】
外部コンピュータ400は、流体圧力推定装置100及び需要家DB300と情報通信を行って、流体圧力推定装置100に各種情報を送信する処理を含む、導管網Nにおけるガス燃料の圧力を管理するための処理を行う。例えば、外部コンピュータ400は、情報の入力操作が可能なキーボード等の入力装置(不図示)、情報を表示可能な液晶ディスプレイ等の表示装置(不図示)、各種処理を行う処理回路(不図示)等を備えている。また、例えば、外部コンピュータ400は、作業員による入力装置の入力操作によって、非スマートメータを備えた施設の需要家の特定期間における消費量を取得して、取得した消費量を需要家DB300に記憶させる。なお、特定期間は、実施の形態1において、第1期間を構成する。
【0018】
例えば、特定期間とは、作業員の検針作業の間隔に相当する期間である。また、例えば、外部コンピュータ400は、作業員による入力装置の入力操作によって流体圧力推定装置100を操作し、流体圧力推定装置100による処理の結果を表示装置に表示させる。なお、流体圧力推定装置100及び外部コンピュータ400は、1台のコンピュータとして一体的に構成されていてもよい。
【0019】
次に、図2を参照して、実施の形態1に係る流体圧力推定装置100の構成について説明する。流体圧力推定装置100は、導管網情報取得部101、気象情報取得部102、需要家情報取得部103、需要家分類部104、消費量取得部105、消費量推定部106、圧力取得部107、圧力推定部108、特定圧力点抽出部109及び記憶部120を備えている。
【0020】
導管網情報取得部101は、導管網Nに関する情報を取得する。例えば、導管網情報取得部101は、外部コンピュータ400から、流体圧力推定装置100が導管網Nの導管網解析を行う際に必要な導管網Nに関する情報を取得する。導管網情報取得部101は、取得した導管網Nに関する情報を、記憶部120の導管網情報記憶部121に記憶させる。導管網解析を行う際に必要な導管網Nに関する情報の具体的な内容については、後述する。
【0021】
気象情報取得部102は、気象DB200から、導管網Nが形成されている地域の気象に関する情報を取得する。例えば、気象情報取得部102は、過去の特定の時間帯の気温に関する統計情報を取得する。また、例えば、気象情報取得部102は、将来の特定の時間帯の気象に関する予測情報を取得する。気象情報取得部102は、取得した気象に関する情報を、記憶部120の気象情報記憶部122に記憶させる。
【0022】
需要家情報取得部103は、需要家DB300から、各需要家の種別に関する情報を、需要家毎に取得する。需要家情報取得部103は、需要家DB300から取得した需要家の種別に関する情報を、記憶部120の需要家情報記憶部123に記憶させる。需要家分類部104は、需要家を分類するための学習モデルを生成し、需要家情報取得部103が取得した需要家の種別に関する情報に基づいて、学習モデルによって需要家を分類する。需要家分類部104は、生成した学習モデル及び需要家の分類結果を、需要家情報記憶部123に記憶させる。需要家分類部104の詳細は、後述する。
【0023】
消費量取得部105は、需要家DB300及びスマートメータM1~Mnから、各施設における需要家の消費量を取得する。例えば、消費量取得部105は、需要家DB300から、非スマートメータを備えた施設の需要家の特定期間における消費量を取得する。また、例えば、消費量取得部105は、スマートメータM1~Mnから、スマートメータM1~Mnを備えた施設の需要家の特定期間における所定時間毎(例えば、1時間毎)の消費量を取得する。消費量取得部105は、取得した需要家の消費量を、記憶部120の消費量記憶部124に記憶させる。なお、消費量取得部105は、スマートメータM1~Mnからの情報を直接取得するように構成されていてもよいし、需要家DB300または外部コンピュータ400を介して取得するように構成されていてもよい。また、以下の記載において、「非スマートメータを備えた施設の需要家」を「一般需要家」、「スマートメータを備えた施設の需要家」を「特定需要家」ともいう。また、消費量取得部105は、実施の形態1において、流量取得部を構成する。
【0024】
消費量推定部106は、消費量取得部105が取得した一般需要家の特定期間における消費量に基づいて、当該一般需要家の当該特定期間よりも短い期間における消費量を推定する。消費量推定部106は、推定した一般需要家の消費量を、記憶部120の消費量記憶部124に記憶させる。なお、消費量推定部106は、実施の形態1において、流量推定部を構成する。消費量推定部106の詳細については、後述する。
【0025】
圧力取得部107は、外部コンピュータ400及びスマートメータM1~Mnから、導管網Nのガス燃料の圧力を取得する。例えば、圧力取得部107は、外部コンピュータ400から整圧器G(図1参照)によるガス燃料の圧力の設定値である設定圧力に関する情報を取得する。また、例えば、圧力取得部107は、スマートメータM1~Mnから、スマートメータM1~Mnを備えている施設に伝達されるガス燃料の圧力の測定値を取得する。圧力取得部107は、取得した導管網Nのガス燃料の圧力を記憶部120の圧力記憶部125に記憶させる。
【0026】
圧力推定部108は、流体圧力推定装置100が取得した情報及びこれら情報に基づいた処理結果に基づいて、導管網Nの導管網解析を行うことによって、導管網Nの任意の点におけるガス燃料の圧力を推定する。圧力推定部108は、推定した導管網Nの任意の点におけるガス燃料の圧力を、記憶部120の圧力記憶部125に記憶させる。圧力推定部108の詳細については、後述する。
【0027】
特定圧力点抽出部109は、導管網Nにおいて、一般需要家のガス燃料の圧力の推定値、及び特定需要家のガス燃料の圧力の測定値のうち、予め設定された許容範囲外となる値となる点を抽出し、外部コンピュータ400へ出力する。例えば、低圧におけるガス燃料の圧力の予め設定された許容範囲は、ゲージ圧として1.0[kPa]以上かつ2.5[kPa]以下である。
【0028】
次に、図3及び図4を参照して、実施の形態1に係る流体圧力推定装置100のハードウェア構成について説明する。図3は、実施の形態1に係る流体圧力推定装置100のハードウェア構成の例を示すブロック図であり、図3は、実施の形態1に係る流体圧力推定装置100のハードウェア構成の図3とは異なる例を示すブロック図である。例えば、図3に示すように、流体圧力推定装置100は、プロセッサ100a、メモリ100b及びI/Oポート100cを有しており、メモリ100bに格納されているプログラムをプロセッサ100aが読み出して実行するように構成されている。
【0029】
また、例えば、図4に示すように、流体圧力推定装置100は、専用のハードウェアである処理回路100d及びI/Oポート100cを有している。処理回路100dは、例えば、単一回路、複合回路、プログラム化したプロセッサ、並列プログラム化したプロセッサ、ASIC(Application Specific Integrated Circuit)、FPGA(Field Programmable Gate Array)、又はこれらの組み合わせによって構成される。流体圧力推定装置100の各機能は、これらプロセッサ100a又は専用のハードウェアである処理回路100dがソフトウェアであるプログラムを実行することによって実現される。
【0030】
次に、図5及び図6を参照して、実施の形態1に係る流体圧力推定装置100が行う第1消費量推定処理について説明する。図5は、実施の形態1に係る流体圧力推定装置100が行う第1消費量推定処理を示すフローチャートである。第1消費量推定処理は、一般需要家の特定期間における消費量に基づいて当該一般需要家の当該特定期間よりも短い期間である単位時間における消費量を推定するための処理である。
【0031】
図5に示すように、第1消費量推定処理を開始すると、流体圧力推定装置100は、まず、導管網Nの各特定需要家の、過去の特定期間における単位時間毎の消費量の測定値を取得する(ステップST11)。この処理において、消費量取得部105は、スマートメータM1~Mnによって測定された各特定需要家の消費量を、特定期間における単位時間毎の変化が分かるように取得している。なお、過去の特定期間における単位時間毎の消費量の測定値を取得する特定需要家の施設は、実施の形態1において、第3特定点及び第4特定点を構成する。
【0032】
ステップST11の処理を行うと、流体圧力推定装置100は、各特定需要家の種別に関する情報を取得する(ステップST12)。この処理において、需要家情報取得部103は、需要家DB300の情報を参照し、各特定需要家を分類するための種別に関する情報を取得している。
【0033】
ステップST12の処理を行うと、流体圧力推定装置100は、需要家の消費量の時間変化の類型を示す情報を取得する(ステップST13)。需要家情報記憶部123には、予め、需要家の消費量の時間変化を示す複数の類型の情報が記憶されている。図6は、需要家情報記憶部123に記憶されている、需要家の消費量の時間変化の類型の例である。図6Aは、需要家が1日の特定の時刻において複数回の消費量のピークを有するようにガス燃料を消費する類型である第1類型を示す図であり、図6Bは、需要家が1日の昼間の時間帯のみにおいてガス燃料を消費する類型である第2類型を示す図であり、図6Cは、需要家が時刻によらず一定の割合でガス燃料を消費する類型である第3類型を示す図である。ステップST13の処理において、需要家分類部104は、需要家情報記憶部123に記憶されている情報を参照し、需要家の消費量の時間変化を示す複数の類型の情報を取得している。なお、需要家の消費量の時間変化の類型は、特定需要家の消費量の実測値であってもよいし、他の統計的手法によって生成されたものであってもよい。また、需要家の消費量の時間変化を示す類型の情報は、実施の形態1において、期間流量関係情報を構成する。
【0034】
ステップST13の処理を行うと、流体圧力推定装置100は、ステップST13で取得した複数の類型のうち、ステップST11で取得した各特定需要家の消費量の単位時間毎の変化に最も近い類型を特定需要家毎に選択する(ステップST14)。2つの波形の類似度の評価方法については、従来から多様な方法が開示されているため、各特定需要家の消費量の単位時間毎の変化に最も近い類型を選択する方法の説明は省略する。
【0035】
ステップST14の処理を行うと、流体圧力推定装置100は、ステップST12で取得した各特定需要家の種別に関する情報と、ステップST14で特定需要家毎に選択した消費量の類型と、を含む教師データに基づいて、需要家の種別の入力に対していずれかの消費量の類型を出力する学習モデルを生成する(ステップST15)。一般に、需要家の種別と、消費量の時間変化と、の間には、相関がある。言い換えると、消費量の時間変化の仕方は、需要家の種別に応じて変化する。例えば、需要家の種別として、需要家がガス燃料を使用する施設の種類に着目すると、需要家がガス燃料を使用する施設が住居である場合、消費量の時間変化は、図6Aに示す第1類型に近くなり、需要家がガス燃料を使用する施設が夜間の営業を行わない店舗または公共施設である場合、消費量の時間変化は、図6Bに示す第2類型に近くなり、需要家がガス燃料を使用する施設が24時間営業の店舗等、昼夜問わず連続稼働する施設である場合、消費量の時間変化は、図6Cに示す第3類型に近くなる。
【0036】
ステップST15の処理において、需要家分類部104は、特定需要家の種別と、特定需要家の消費量の時間変化を示す類型と、を含む教師データに基づいて、学習モデルを生成している。なお、流体圧力推定装置100は、導管網Nの特定需要家の種別に関する情報と、導管網Nの特定需要家毎に選択した消費量の類型と、を含む教師データに基づいて、需要家の種別の入力に対していずれかの消費量の類型を出力する学習モデルを生成するものに限らず、導管網N以外の地域の需要家の、種別及び消費量に基づいて学習モデルを生成するものであってもよい。
【0037】
ステップST15の処理を行うと、流体圧力推定装置100は、各一般需要家の特定期間における消費量の測定値を取得する(ステップST16)。この処理において、消費量取得部105は、需要家DB300の情報を参照し、各一般需要家に対する検針作業によって記録された特定期間における消費量を取得している。
【0038】
ステップST16の処理を行うと、流体圧力推定装置100は、各一般需要家の種別に関する情報を取得する(ステップST17)。この処理において、需要家情報取得部103は、需要家DB300の情報を参照し、各一般需要家を分類するための種別に関する情報を取得している。
【0039】
ステップST17の処理を行うと、流体圧力推定装置100は、各一般需要家の特定期間よりも短い単位時間毎の消費量の推定値を算出する(ステップST18)。この処理において、消費量推定部106は、ステップST15で生成した学習モデルと、ステップST16で取得した各一般需要家の特定期間における消費量の測定値と、ステップST17で取得した各一般需要家の種別に関する情報に基づいて、各一般需要家の特定期間よりも短い単位時間毎の消費量の推定値を算出している。例えば、ステップST18の処理において、需要家分類部104は、学習モデルに各一般需要家の種別を入力し、推論によって複数の類型のうち各一般需要家の消費量の時間変化に対応する類型を選択する。言い換えると、ステップST18の処理において、需要家分類部104は、複数の類型のうち対象となる一般需要家の種別に応じた類型を選択している。
【0040】
次に、ステップST18の処理において、消費量推定部106は、一般需要家の特定期間における消費量の測定値を特定期間の日数で除算し、一般需要家の1日あたりの消費量の平均値を算出する。更に、ステップST18の処理において、消費量推定部106は、当該平均値と選択された類型の1日あたりの消費量との比と、当該類型の単位時間あたりの消費量と、を乗算して、各一般需要家の特定期間における単位時間毎の消費量の推定値を算出する。例えば、消費量推定部106は、いずれかの一般需要家の1日当たりの消費量の平均値が、ステップST18の処理において選択された類型によって示される1日あたりの消費量の2倍である場合、当該類型の単位時間あたりの消費量の2倍の消費量を、当該一般需要家の特定期間における単位時間毎の消費量の推定値として算出する。ステップST18の処理を行うと、流体圧力推定装置100は、第1消費量推定処理を終了する。なお、消費量推定部は、特定期間における需要家の1日あたりの消費量の平均値によらず、互いに同じ類型である一方の需要家の単位時間毎における消費量の推定値に基づいて、他方の需要家の単位時間毎における消費量を推定してもよい。
【0041】
次に、図7を参照して、実施の形態1に係る流体圧力推定装置100が行う圧力推定処理について説明する。図7は、実施の形態1に係る流体圧力推定装置100が行う圧力推定処理を示すフローチャートである。圧力推定処理は、流体圧力推定装置100が、導管網解析によって導管網Nの特定の点におけるガス燃料の圧力を推定するための処理である。
【0042】
図7に示すように、圧力推定処理を開始すると、流体圧力推定装置100は、まず、導管網Nに関する情報を取得する(ステップST21)。この処理において、導管網情報取得部101は、例えば、外部コンピュータ400から、導管網解析を行うためのパラメータとしての導管網Nに関する情報を取得している。具体的には、導管網情報取得部101は、下記情報を取得する。
Z:導管網Nによって搬送されるガス燃料の圧縮係数の平均値(Z≒1)
T:導管網Nによって搬送されるガス燃料の温度[°K]
γ:導管網Nによって搬送されるガス燃料の比重(20℃空気比重を1にしたときの重量比)
f:導管網Nによって搬送されるガス燃料と低圧導管C2との摩擦係数
D:低圧導管C2の内径
L:導管網Nの各施設間の管長
【0043】
ステップST21の処理を行うと、流体圧力推定装置100は、各特定需要家の特定期間における単位時間毎の、ガス燃料の圧力の測定値を取得する(ステップST22)。この処理において、圧力取得部107は、スマートメータM1~Mnによって測定された各特定需要家の施設に伝達されたガス燃料の圧力を、特定期間における単位時間毎の変化が分かるように取得している。
【0044】
ステップST22の処理を行うと、流体圧力推定装置100は、各一般需要家の単位時間毎の消費量の推定値を取得する(ステップST23)。この処理において、圧力推定部108は、例えば、記憶部120に記憶されている情報を参照し、消費量推定処理によって算出した各一般需要家の単位時間毎の消費量の推定値を取得している。
【0045】
ステップST23の処理を行うと、流体圧力推定装置100は、導管網解析モデルによって導管網Nの導管網解析を行い、各一般需要家の単位時間毎の、ガス燃料の圧力の推定値を算出する(ステップST24)。記憶部120の演算モデル記憶部126には、予め導管網解析モデルが記憶されている。例えば、導管網解析モデル(流量方程式)は、ステップST21の処理で取得した導管網Nに関する情報をパラメータとして、以下の流量公式である数式(1)で表される。各パラメータは、予め記憶部120の導管網情報記憶部121に記憶されている。
=K・√((1/ZT)(1/f)(1/γ)(D/L)(P -P ))
・・・(1)
ただし、Kは、以下の数式(2)で表される。
(Kπ/8)・(√(gR/M))・(T/P)・・・(2)
また、Q、P、P、K、g、R、M、T、Pについては、以下の通りとする。
:T、Pにおけるガス燃料の流量[Nm/H]
:導管上流側圧力[kg/cmabs]
:導管上流側圧力[kg/cmabs]
:単位系で決まる係数
g:重力加速度[m/sec](≒9.81)
R:気体定数[kg・m/kmol・°K](≒847.83)
:空気分子重(kg/kmol)(=29.27)
:標準状態の温度[°K]
:標準状態の圧力[kg/cmabs]
なお、整圧器G(図1参照)の設定圧力Psは、予め記憶部120の圧力記憶部125に記憶されていてもよい。また、上記数式(1)及び(2)は、圧力を算出するための数式の一例であり、流体圧力推定装置は、他の数式及び公式等に基づいて圧力を算出するように構成されていてもよい。
【0046】
ステップST24の処理において、圧力推定部108は、上記導管網解析モデル及び流量均衡式に基づいて、整圧器Gから順に、各一般需要家及び各特定需要家の施設に伝達されたガス燃料の、圧力の推定値を算出する。
なお、流量均衡式は、以下の数式(3)で表される。
(特定点へのガス燃料の流入量)=(特定点からのガス燃料の流出量)+(特定点でのガス燃料の消費量)・・・(3)
例えば、ステップST24の処理において、圧力推定部108は、まず、導管網解析モデルに各パラメータを代入した式と、流量均衡式と、に基づいて、整圧器Gの下流に隣接する需要家の施設に伝達されたガス燃料の圧力の推定値を算出し、当該算出した推定値に基づいて、さらに下流に隣接する需要家の施設に伝達されたガス燃料の圧力の推定値を算出する、という手順を繰り返すことで、各一般需要家及び各特定需要家の施設に伝達されたガス燃料の、圧力の推定値を算出する。
また、導管網解析によってガス燃料の圧力の推定値を算出する対象となる需要家の施設は、実施の形態1において、第1特定点を構成する。また、導管網解析によって第1特定点のガス燃料の圧力の推定値を算出する際に、導管網Nにおいてガス燃料の圧力の値が既知である点は、実施の形態1において、第2特定点を構成する。例えば、第2特定点は、設定圧力の値が既知である整圧器G、スマートメータによってガス燃料の圧力の値が既知である特定需要家の施設、及び導管網解析によって既に圧力の推定値を算出済である一般需要家の施設が該当する。
【0047】
なお、導管網解析においては、複数の需要家をまとめて1つの需要家とみなすこともできる。例えば、図1に示す施設P1~P3をまとめて1つの施設Q1とみなし、施設P13~P16をまとめて施設Q2とみなし、施設Q1を使用する需要家を1つの需要家とみなした場合の施設Q1における消費量の合計、及び施設Q2を使用する需要家を1つの需要家とみなした場合の施設Q2における消費量の合計に基づいて、導管網解析を行ってもよい。なお、複数の需要家をまとめて1つの需要家とみなす場合、これら複数の需要家は、互いに種別情報に共通点を有する需要家であることが望ましい。
【0048】
ステップST24の処理を行うと、流体圧力推定装置100は、各特定需要家の施設に伝達されたガス燃料の圧力の測定値と推定値とを比較し、これら測定値と推定値との差が予め設定された許容範囲内であるか否かを判定する(ステップST25)。ステップST24の処理で算出した各需要家に伝達されたガス燃料の圧力の推定値は、上述した複数のパラメータに基づいて算出されるが、これら複数のパラメータの値が必ずしも正確であるとは限らない。例えば、整圧器Gの設定圧力Psの誤差、気温の誤差、その他定数の誤差等によって、各需要家に伝達されたガス燃料の圧力の推定値は、変化する。そこで、ステップST25の処理において、圧力推定部108は、各特定需要家の施設に伝達されたガス燃料の圧力の測定値と推定値との比較を行うことで、ガス燃料の圧力の推定値の誤差が許容範囲内であるか否かを判定している。
【0049】
ステップST25の処理において、ガス燃料の圧力の測定値と推定値との差が許容範囲外である場合(ステップST25のNO)、導管網解析モデルの各パラメータが適切な値に設定されていない可能性が考えられる。このため、ガス燃料の圧力の測定値と推定値との差が許容範囲外である場合、流体圧力推定装置100は、各パラメータの調整を行って(ステップST26)、再び導管網解析を行う(ステップST24)。ステップST26の処理において、圧力推定部108は、例えば、整圧器Gの設定圧力Psの調整を行って、再び導管網解析を行う。
【0050】
ステップST25の処理において、ガス燃料の圧力の測定値と推定値との差が許容範囲内である場合(ステップST25のYES)、流体圧力推定装置100は、一般需要家のガス燃料の圧力の推定値、及び特定需要家のガス燃料の圧力の測定値のうち、予め設定された許容範囲外となる値があるか否かを判定する(ステップST27)。この処理において、特定圧力点抽出部109は、導管網Nにおいてガス燃料の圧力が許容範囲外となる点の有無を判定することで、整圧器Gの設定圧力の調整等によるガス燃料の圧力を調節する必要の有無を判定している。なお、特定圧力点抽出部109は、実施の形態1において、判定部を構成する。
【0051】
ステップST27の処理において、一般需要家のガス燃料の圧力の推定値、及び特定需要家のガス燃料の圧力の測定値のうち、予め設定された許容範囲外となる値がある場合(ステップST27のYES)、流体圧力推定装置100は、当該許容範囲外となる値と、当該値に対応する需要家の情報と、を出力して(ステップST28)、圧力推定処理を終了する。例えば、この処理において、特定圧力点抽出部109は、ガス燃料の圧力が許容範囲外となる値と、当該値に対応する需要家の情報と、を外部コンピュータ400に出力し、外部コンピュータ400の表示装置に表示させる。この処理において、特定圧力点抽出部109は、ガス燃料の圧力が許容範囲外となる需要家の施設を可視化することで、導管網Nのガス燃料の圧力の管理を可能としている。なお、ステップST27の処理において、一般需要家のガス燃料の圧力の推定値、及び特定需要家のガス燃料の圧力の測定値のうち、予め設定された許容範囲外となる値がない場合(ステップST27のNO)、流体圧力推定装置100は、圧力推定処理を終了する。
【0052】
次に、図8を参照して、実施の形態1に係る流体圧力推定装置100が行う圧力予測処理について説明する。図8は、実施の形態1に係る流体圧力推定装置100が行う圧力予測処理を示すフローチャートである。圧力予測処理は、流体圧力推定装置100が、導管網Nの特定の点における将来のガス燃料の圧力を予測するための処理である。
【0053】
図8に示すように、圧力予測処理を開始すると、流体圧力推定装置100は、まず、導管網Nに関する情報を取得する(ステップST41)。この処理において、この処理において、導管網情報取得部101は、例えば、外部コンピュータ400から、導管網解析を行うためのパラメータとしての導管網Nに関する情報を取得して、記憶部120の導管網情報記憶部121に記憶させている。なお、ステップST41において、導管網情報取得部101は、将来の導管網Nに関する情報、例えば、導管の管長の変更予定、導管の内径の変更予定等を反映した導管網Nに関する情報を取得するようにしてもよい。
【0054】
ステップST41の処理を行うと、流体圧力推定装置100は、ガス燃料の圧力の予測対象となる期間の、気象に関する予測情報を取得する(ステップST42)。なお、実施の形態1において、「ガス燃料の圧力の予測対象となる期間」を「予測期間」ともいう。この処理において、気象情報取得部102は、気象DB200から、ガス燃料の圧力の予測対象となる時間帯における、予測対象となる導管が配置されている地域の気象に関する予測情報を取得する。例えば、予測期間は、特定期間よりも後の任意の単位時間である。なお、予測期間は、実施の形態1において、第3期間を構成する。
【0055】
ステップST42の処理を行うと、流体圧力推定装置100は、ステップST42で取得した気象に関する予測情報に基づいて、予測期間における各需要家の消費量の推定値(予測値)を算出する(ステップST43)。一般に、ガス燃料の消費量は、気象要素に応じて変化する傾向がある。例えば、冬季において気温が低下するとガス燃料の消費量が上昇するように、ガス燃料の消費量と気温との間には相関がある。このため、例えば、ガス燃料の消費量を目的変数とし、特定の気象要素を説明変数とする回帰分析を行うことによって、予測対象となる将来の期間における各需要家の消費量の推定値を算出することが可能になる。なお、流体圧力推定装置100は、気象要素に加えて、または気象要素に代えて、曜日、月日等の暦情報を説明変数とする回帰分析によって予測期間における消費量を推定するように構成されていてもよい。
【0056】
例えば、ステップST42の処理において、消費量推定部106は、対象となる需要家の特定期間における単位時間毎のガス燃料の消費量を目的変数とし、気温を説明変数とする回帰分析を行うことによって、予測期間における各需要家の消費量の推定値を算出する。この処理において、消費量推定部106は、特定期間における単位時間の気象要素及び当該単位時間よりも後の期間である予測期間の気象要素に関する気象情報と、対象となる需要家の上記単位時間におけるガス燃料の流量と、に基づいて、当該需要家の予測期間におけるガス燃料の流量を推定している。
【0057】
ステップST43の処理を行うと、流体圧力推定装置100は、圧力推定処理で使用した導管網解析モデル(数式(1))によって、導管網Nの導管網解析を行い、一般需要家及び特定需要家の単位時間毎の、ガス燃料の圧力の推定値を算出する(ステップST45)。この処理において、圧力推定部108は、予測対象となる将来の時間帯における各需要家の消費量に基づいて、予測対象となる将来の時間帯における各需要家の、ガス燃料の圧力の推定値を算出している。なお、ガス燃料の圧力の推定精度を向上させるため、圧力予測処理を行う前に圧力推定処理を行って、導管網解析モデルの各パラメータの調整を行うことが望ましい。
【0058】
ステップST45の処理を行うと、流体圧力推定装置100は、流体圧力推定装置100は、一般需要家及び特定需要家のガス燃料の圧力の推定値のうち、予め設定された許容範囲外となる値があるか否かを判定する(ステップST46)。ステップST46の処理において、一般需要家及び特定需要家のガス燃料の圧力の推定値のうち、予め設定された許容範囲外となる値がある場合(ステップST46のYES)、流体圧力推定装置100は、当該許容範囲外となる値と、当該値に対応する需要家の情報と、を出力して(ステップST47)、圧力予測処理を終了する。ステップST46及びステップST47の詳細は、圧力推定処理におけるステップST27及びステップST28と同様であるため、説明を省略する。
【0059】
以上、実施の形態1に係る流体圧力推定装置100は、ガス燃料を輸送するための導管網Nに配置された第1特定点の、特定期間におけるガス燃料の流量を取得する消費量取得部105と、第1特定点の特定期間におけるガス燃料の流量と、予め取得した特定期間におけるガス燃料の流量と特定期間よりも短い単位時間におけるガス燃料の流量との関係を示す類型の情報と、に基づいて、第1特定点の単位時間におけるガス燃料の流量を推定する消費量推定部106と、導管網Nに配置された第2特定点の、単位時間におけるガス燃料の圧力を取得する圧力取得部107と、予め取得した導管網Nに関する情報と、第1特定点の単位時間におけるガス燃料の流量と、第2特定点の単位時間におけるガス燃料の圧力と、に基づいて、第1特定点の単位時間におけるガス燃料の圧力を推定する圧力推定部108と、を備えた。
【0060】
このように構成されて、流体圧力推定装置100は、第1特定点の単位時間におけるガス燃料の流量を推定することで、消費量取得部105によってガス燃料の流量を取得する特定期間よりも短い単位時間における導管網Nの圧力を取得することができる。これにより、消費量取得部105によってガス燃料の流量を取得するよりも短い期間におけるガス燃料の圧力の細かい管理が可能になり、例えば、従来よりもガス燃料の圧力が許容範囲外になることを抑制することが可能になる。また、流体圧力推定装置100は、例えば、単位時間を一部の需要家でスマートメータによって流量を取得する間隔よりも短い期間にすることで、当該スマートメータによって流量を取得する間隔よりも短い期間の消費量と圧力が取得できることを活用し,導管網全体の圧力を推定することが可能になる。
【0061】
なお、実施の形態1において、流体圧力推定装置100は、需要者の種別と、当該需要家が特定期間において消費する流体の流量の時間変化を示す情報と、を含む教師データに基づいて生成された学習モデルを用いて一般需要家の消費量を推定する処理を行うが、これに限定されない。例えば、流体圧力推定装置100は、学習モデルを用いることなく一般需要家の消費量を推定することもできる。
【0062】
次に、図9及び図10を参照して、実施の形態1に係る流体圧力推定装置100が学習モデルを用いることなく一般需要家の消費量を推定する第2消費量推定処理の例について説明する。図9は、実施の形態1に係る流体圧力推定装置100が行う第2消費量推定処理を示すフローチャートである。第2消費量推定処理は、一般需要家の特定期間における消費量に基づいて当該一般需要家の単位時間における消費量を推定するための処理である。
【0063】
図9に示すように、第2消費量推定処理を開始すると、流体圧力推定装置100は、まず、需要家の消費量の時間変化の類型を示す情報を取得する(ステップST51)。需要家情報記憶部123には、予め、需要家の消費量の時間変化を示す類型の情報が記憶されている。図10は、実施の形態1に係る第2消費量推定処理に用いられる消費量の類型S1を示す図である。ステップST51の処理において、消費量推定部106は、需要家情報記憶部123に記憶されている情報を参照し、需要家の消費量の時間変化を示す類型の情報を取得している。
【0064】
ステップST51の処理を行うと、流体圧力推定装置100は、各一般需要家の特定期間における消費量の測定値を取得する(ステップST52)。この処理において、消費量取得部105は、需要家DB300の情報を参照し、各一般需要家に対する検針作業によって記録された特定期間における消費量を取得している。
【0065】
ステップST52の処理を行うと、流体圧力推定装置100は、各一般需要家の1日の流量平均値を算出する(ステップST53)。この処理において、消費量推定部106は、一般需要家の特定期間における消費量の測定値を特定期間の日数で除算し、一般需要家の1日あたりの消費量の平均値を算出する。
【0066】
ステップST53の処理を行うと、流体圧力推定装置100は、各一般需要家の単位時間毎の消費量の推定値を算出する(ステップST54)。この処理において、各一般需要家の平均値とステップST51の処理において取得された類型の1日あたりの消費量との比と、当該類型の単位時間あたりの消費量と、を乗算して、各一般需要家の特定期間における単位時間毎の消費量の推定値を算出する。例えば、消費量推定部106は、いずれかの一般需要家の1日当たりの消費量の平均値が、ステップST51の処理において取得された類型によって示される1日あたりの消費量の2倍である場合、当該類型の単位時間あたりの消費量の2倍の消費量を、当該一般需要家の特定期間における単位時間毎の消費量の推定値S2として算出し(図10参照)、第2消費量推定処理を終了する。
【0067】
このように、流体圧力推定装置100は、第2消費量推定処理を行うことによって、消費量取得部105によってガス燃料の流量を取得する特定期間よりも短い単位時間における一般需要家の消費量を推定し、単位時間における導管網Nのガス燃料の圧力を推定することが可能になる。
【0068】
なお、実施の形態1において、上述した第1消費量推定処理及び第2消費量推定処理のいずれも、特定期間における消費量の最大値を推定することが重要であるため、処理の結果が消費量の最大値を推定するために用いられない処理については、省略してもよい。例えば、図10において、類型S1の単位時間における消費量の最大値kに対し、対象となる一般需要家の消費量の最大値2kを推定可能であればよく、類型S1の消費量が最大となる時間帯以外の時間帯に対する一般需要家の消費量は算出しなくてもよい。
【0069】
また、実施の形態1において、低圧導管C2におけるガス燃料の圧力を推定する流体圧力推定装置100について説明したが、これに限らず、流体圧力推定装置は、何らかの流体を搬送する導管網において流体の圧力を推定するものであればよく、液体は水でもよいし、個体を含有するものであってもよいし、低圧導管C2以外の導管、例えば中圧導管において流体の圧力を推定するものであってもよい。また、消費量取得部は、各施設に設けられたスマートメータや需要家DBからガス燃料の流量を取得するものに限らず、導管網に各施設とは独立して設けられた流量計からガス燃料の流量を取得するものであってもよい。
【0070】
なお、本開示は、実施の形態の任意の構成要素の変形、若しくは実施の形態において任意の構成要素の省略が可能である。
【符号の説明】
【0071】
1 :流体圧力管理システム
100 :流体圧力推定装置
100a :プロセッサ
100b :メモリ
100c :I/Oポート
100d :処理回路
101 :導管網情報取得部
102 :気象情報取得部
103 :需要家情報取得部
104 :需要家分類部
105 :消費量取得部(流量取得部)
106 :消費量推定部(流量推定部)
107 :圧力取得部
108 :圧力推定部
109 :特定圧力点抽出部(判定部)
120 :記憶部
121 :導管網情報記憶部
122 :気象情報記憶部
123 :需要家情報記憶部
124 :消費量記憶部
125 :圧力記憶部
126 :演算モデル記憶部
200 :気象データベース
300 :需要家データベース
400 :外部コンピュータ
C1 :中圧導管(導管)
C2 :低圧導管(導管)
G :整圧器
M1~Mn :スマートメータ
N :導管網
P1~P16:施設
Q1、Q2 :施設
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10