(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024045608
(43)【公開日】2024-04-02
(54)【発明の名称】制御性RNAを発現させるためのベクターシステム
(51)【国際特許分類】
C12N 15/867 20060101AFI20240326BHJP
C12N 5/10 20060101ALI20240326BHJP
C12N 5/0775 20100101ALI20240326BHJP
C12N 15/113 20100101ALI20240326BHJP
C12N 15/86 20060101ALI20240326BHJP
C12N 7/01 20060101ALI20240326BHJP
A61P 35/00 20060101ALI20240326BHJP
A61K 35/28 20150101ALI20240326BHJP
A61K 35/76 20150101ALI20240326BHJP
A61K 48/00 20060101ALI20240326BHJP
【FI】
C12N15/867 Z
C12N5/10 ZNA
C12N5/0775
C12N15/113 130Z
C12N15/86 Z
C12N7/01
A61P35/00
A61K35/28
A61K35/76
A61K48/00
【審査請求】有
【請求項の数】1
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2024022729
(22)【出願日】2024-02-19
(62)【分割の表示】P 2021523916の分割
【原出願日】2019-11-05
(31)【優先権主張番号】62/755,985
(32)【優先日】2018-11-05
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(71)【出願人】
【識別番号】517428713
【氏名又は名称】アメリカン ジーン テクノロジーズ インターナショナル インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100078282
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 秀策
(74)【代理人】
【識別番号】100113413
【弁理士】
【氏名又は名称】森下 夏樹
(74)【代理人】
【識別番号】100181674
【弁理士】
【氏名又は名称】飯田 貴敏
(74)【代理人】
【識別番号】100181641
【弁理士】
【氏名又は名称】石川 大輔
(74)【代理人】
【識別番号】230113332
【弁護士】
【氏名又は名称】山本 健策
(72)【発明者】
【氏名】テイラー ラフーゼン
(72)【発明者】
【氏名】リンジ シャオ
(72)【発明者】
【氏名】チャールズ デイビッド パウザ
(57)【要約】
【課題】制御性RNAを発現させるためのベクターシステムの提供。
【解決手段】ウイルスベクター、レンチウイルス粒子、および改変された細胞が開示される。それらは、KIF11遺伝子を標的化することができるスモールRNAをコードまたは発現する。実施形態では、ウイルスベクターおよびレンチウイルス粒子は、その非コード領域がスモールRNAによる活性に対して抵抗性であるように改変されているKIF11遺伝子をさらに含む。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
明細書に記載の発明。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願への相互参照
本出願は、2018年11月5日に出願され、「VECTOR SYSTEM FOR
EXPRESSING REGULATORY RNA」との表題の米国仮特許出願第62/755,985号(この開示は、参照により本明細書に援用される)への優先権を主張する。
【0002】
分野
本開示は、一般に、遺伝子療法、具体的には、制御性RNAをコードまたは発現するベクターおよび改変された細胞の使用に関する遺伝子療法の分野に関する。
【背景技術】
【0003】
背景
悪性または新生物性細胞は、細胞成長の不可欠な機構を遮断することができる制御性RNA、特に阻害RNA(RNAi)により制御され得る。部分的には、間葉系幹細胞(MSC)はRNAiを産生するので、それらは細胞療法のためにますます使用されており、がん処置用の細胞送達ビヒクルとして想定される。MSCはまた、TGF-βなどの免疫阻害性サイトカインを産生し、in vivoで短い半減期を有するので、同種異系細胞療法のための良好な候補である。さらに、MSCは、腫瘍細胞膜上のコネキシン細孔と相互作用することができる形質膜細孔を作製するコネキシンファミリーの遺伝子を発現する。これらの細孔は、RNAiなどの細胞質材料の交換を可能とし、腫瘍細胞中に成長阻害性RNAiを送達するために活用され得る。MSC療法は、再生医療のためおよび自己免疫性または炎症性疾患と戦うために現在使用されている。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0004】
ある態様では、KIF11の宿主コピーの非コード領域に結合することができるスモールRNAをコードする第1のヌクレオチド配列を含むウイルスベクターが提供される。
【0005】
実施形態では、KIF11の宿主コピーの非コード領域は、3’非翻訳領域または5’非翻訳領域である。実施形態では、スモールRNAは、配列番号1、配列番号2、または配列番号3のうちの少なくとも1つと少なくとも80%の配列同一性を有する配列を含む。実施形態では、スモールRNAは、配列番号1、配列番号2、または配列番号3のうちの少なくとも1つを含む。実施形態では、ウイルスベクターは、KIF11遺伝子またはそのバリアントをコードする第2のヌクレオチド配列をさらに含み、KIF11遺伝子またはそのバリアントは、少なくとも1つの配列部分を欠いている。実施形態では、配列部分は、KIF11遺伝子またはそのバリアントのコード領域または非コード領域を含む。配列部分が非コード領域を含む場合、配列部分は、KIF11遺伝子またはそのバリアントの5’非翻訳領域または3’非翻訳領域のうちの少なくとも1つを含み得る。
【0006】
別の態様では、パッケージング細胞によって生産され、標的細胞を感染させることができるレンチウイルス粒子が提供され、レンチウイルス粒子は、標的細胞に感染することができるエンベロープタンパク質、およびKIF11の宿主コピーの非コード領域に結合することができるスモールRNAをコードする第1のヌクレオチド配列を含む。
【0007】
実施形態では、非コード領域は、KIF11の宿主コピーの3’非翻訳領域または5’非翻訳領域である。実施形態では、スモールRNAは、配列番号1、配列番号2、または配列番号3のうちの少なくとも1つと少なくとも80%の配列同一性を有する配列を含む。実施形態では、スモールRNAは、配列番号1、配列番号2、または配列番号3のうちの少なくとも1つを含む。実施形態では、レンチウイルス粒子は、KIF11遺伝子またはそのバリアントをコードする第2のヌクレオチド配列をさらに含み、KIF11遺伝子またはそのバリアントは、少なくとも1つの配列部分を欠いている。実施形態では、配列部分は、KIF11遺伝子またはそのバリアントのコード領域または非コード領域を含む。配列部分が非コード領域を含む場合、配列部分は、KIF11遺伝子またはそのバリアントの5’非翻訳領域または3’非翻訳領域のうちの少なくとも1つを含み得る。実施形態では、標的細胞は間葉系幹細胞である。
【0008】
別の態様では、レンチウイルス粒子に感染した間葉系幹細胞を含む改変された間葉系幹細胞であって、レンチウイルス粒子が、間葉系幹細胞に感染することができるエンベロープタンパク質、およびKIF11の宿主コピーの非コード領域に結合することができるスモールRNAをコードする第1のヌクレオチド配列を含む、改変された間葉系幹細胞が提供される。
【0009】
実施形態では、非コード領域は、KIF11の宿主コピーの3’非翻訳領域または5’非翻訳領域である。実施形態では、スモールRNAは、配列番号1、配列番号2、または配列番号3のうちの少なくとも1つと少なくとも80%の配列同一性を有する配列を含む。実施形態では、スモールRNAは、配列番号1、配列番号2、または配列番号3のうちの少なくとも1つを含む。実施形態では、第1のヌクレオチド配列は、改変された間葉系幹細胞中に1細胞あたり約1~約10コピーで存在する。
【0010】
実施形態では、レンチウイルス粒子は、KIF11遺伝子またはそのバリアントをコードする第2のヌクレオチド配列をさらに含み、KIF11遺伝子またはそのバリアントは、少なくとも1つの配列部分を欠いている。実施形態では、配列部分は、KIF11遺伝子またはそのバリアントのコード領域または非コード領域を含む。配列部分が非コード領域を含む場合、配列部分は、KIF11遺伝子またはそのバリアントの5’非翻訳領域または3’非翻訳領域のうちの少なくとも1つを含み得る。
【0011】
別の態様では、改変された間葉系幹細胞を生産する方法であって、間葉系幹細胞を有効量のレンチウイルス粒子に感染させることを含み、レンチウイルス粒子が、間葉系幹細胞に感染することができるエンベロープタンパク質、およびKIF11の宿主コピーの非コード領域に結合することができるスモールRNAをコードする第1のヌクレオチド配列を含む、方法が提供される。
【0012】
実施形態では、非コード領域は、KIF11の宿主コピーの3’非翻訳領域または5’非翻訳領域である。実施形態では、スモールRNAは、配列番号1、配列番号2、または配列番号3のうちの少なくとも1つと少なくとも80%の配列同一性を有する配列を含む。実施形態では、スモールRNAは、配列番号1、配列番号2、または配列番号3のうちの少なくとも1つを含む。実施形態では、第1のヌクレオチド配列は、改変された間葉系幹細胞中に1細胞あたり約1~約10コピーで存在する。
【0013】
実施形態では、レンチウイルス粒子は、KIF11遺伝子またはそのバリアントをコードする第2のヌクレオチド配列をさらに含み、KIF11遺伝子またはそのバリアントは、少なくとも1つの配列部分を欠いている。実施形態では、配列部分は、KIF11遺伝子またはそのバリアントのコード領域または非コード領域を含む。配列部分が非コード領域を含む場合、配列部分は、KIF11遺伝子またはそのバリアントの5’非翻訳領域または3’非翻訳領域のうちの少なくとも1つを含み得る。
【0014】
別の態様では、対象においてがんを処置する方法が提供される。方法は、治療有効量の任意の本明細書に記載の改変された間葉系幹細胞を対象に投与することを含む。実施形態では、改変された間葉系幹細胞は、対象にとって同種異系である。実施形態では、改変された間葉系幹細胞は、対象にとって自家である。実施形態では、がんは、癌腫、肉腫、骨髄腫、リンパ腫、混合型、またはそれらの混合物のうちのいずれか1つまたは複数から選択される。
【0015】
別の態様では、本明細書に記載の改変された間葉系幹細胞のいずれかを含む、がんを処置するための、改変された間葉系幹細胞の使用が提供される。
【0016】
別の態様では、対象においてがんを処置する方法であって、治療有効量の任意の本明細書に記載のレンチウイルス粒子を対象に投与することを含む、方法が提供される。
【0017】
実施形態では、がんは、癌腫、肉腫、骨髄腫、リンパ腫、混合型、またはそれらの混合物のうちのいずれか1つまたは複数から選択される。実施形態では、レンチウイルス粒子は、感染した標的細胞を介して対象に投与される。実施形態では、標的細胞は体細胞を含む。実施形態では、体細胞は肝細胞またはリンパ球を含む。実施形態では、体細胞はリンパ球を含み、リンパ球は腫瘍特異的T細胞を含む。実施形態では、標的細胞は幹細胞を含む。実施形態では、幹細胞は人工多能性幹細胞または間葉系幹細胞を含む。
本発明の実施形態において、例えば以下の項目が提供される。
(項目1)
レンチウイルス粒子に感染した間葉系幹細胞を含む改変された間葉系幹細胞であって、前記レンチウイルス粒子が、
前記間葉系幹細胞に感染することができるエンベロープタンパク質、および
KIF11の宿主コピーの非コード領域に結合することができるスモールRNAをコードする第1のヌクレオチド配列
を含む、改変された間葉系幹細胞。
(項目2)
KIF11の前記宿主コピーの前記非コード領域が3’非翻訳領域または5’非翻訳領域である、項目1に記載の改変された間葉系幹細胞。
(項目3)
前記スモールRNAが、配列番号1、配列番号2、または配列番号3のうちの少なくとも1つと少なくとも80%の配列同一性を有する配列を含む、項目1に記載の改変された間葉系幹細胞。
(項目4)
前記スモールRNAが、配列番号1、配列番号2、または配列番号3のうちの少なくとも1つを含む、項目3に記載の改変された間葉系幹細胞。
(項目5)
スモールRNAをコードする前記第1のヌクレオチド配列が、前記改変された間葉系幹細胞中に1細胞あたり約1~約10コピーで存在する、項目1に記載の改変された間葉系幹細胞。
(項目6)
改変された間葉系幹細胞を生産する方法であって、
間葉系幹細胞に有効量のレンチウイルス粒子を感染させることを含み、前記レンチウイルス粒子が、
前記間葉系幹細胞に感染することができるエンベロープタンパク質、および
KIF11の宿主コピーの非コード領域に結合することができるスモールRNAをコードする第1のヌクレオチド配列
を含む、方法。
(項目7)
KIF11の前記宿主コピーの前記非コード領域が3’非翻訳領域または5’非翻訳領域である、項目6に記載の方法。
(項目8)
前記スモールRNAが、配列番号1、配列番号2、または配列番号3のうちの少なくとも1つと少なくとも80%の配列同一性を有する配列を含む、項目6に記載の方法。
(項目9)
前記スモールRNAが、配列番号1、配列番号2、または配列番号3のうちの少なくとも1つを含む、項目8に記載の方法。
(項目10)
前記第1のヌクレオチド配列が、前記改変された間葉系幹細胞中に1細胞あたり約1~約10コピーで存在する、項目6に記載の方法。
(項目11)
対象においてがんを処置する方法であって、治療有効量の項目1に記載の改変された間葉系幹細胞を前記対象に投与することを含む、方法。
(項目12)
前記改変された間葉系幹細胞が、前記対象にとって同種異系である、項目11に記載の方法。
(項目13)
前記改変された間葉系幹細胞が、前記対象にとって自家である、項目11に記載の方法。
(項目14)
前記がんが、癌腫、肉腫、骨髄腫、リンパ腫、混合型、またはそれらの混合物のうちのいずれか1つまたは複数から選択される、項目11に記載の方法。
(項目15)
がんを処置するための、項目1に記載の改変された間葉系幹細胞の使用。
(項目16)
KIF11の宿主コピーの非コード領域に結合することができるスモールRNAをコードする第1のヌクレオチド配列を含む、ウイルスベクター。
(項目17)
KIF11の前記宿主コピーの前記非コード領域が3’非翻訳領域または5’非翻訳領域である、項目16に記載のウイルスベクター。
(項目18)
前記スモールRNAが、配列番号1、配列番号2、または配列番号3のうちの少なくとも1つと少なくとも80%の配列同一性を有する配列を含む、項目16に記載のウイルスベクター。
(項目19)
前記スモールRNAが、配列番号1、配列番号2、または配列番号3のうちの少なくとも1つを含む、項目18に記載のウイルスベクター。
(項目20)
KIF11遺伝子またはそのバリアントをコードする第2のヌクレオチド配列をさらに含み、前記KIF11遺伝子または前記そのバリアントが、少なくとも1つの配列部分を欠いている、項目17に記載のウイルスベクター。
(項目21)
前記配列部分が、前記KIF11遺伝子の非コード領域中にあり、前記KIF11遺伝子の前記非コード領域が、5’非翻訳領域または3’非翻訳領域のうちの少なくとも1つの中にある、項目20に記載のウイルスベクター。
(項目22)
パッケージング細胞により産生され、標的細胞に感染することができるレンチウイルス粒子であって、前記レンチウイルス粒子が、
前記標的細胞に感染することができるエンベロープタンパク質、および
KIF11の宿主コピーの非コード領域に結合することができるスモールRNAをコードする第1のヌクレオチド配列
を含む、レンチウイルス粒子。
(項目23)
KIF11の前記宿主コピーの前記非コード領域が3’非翻訳領域または5’非翻訳領域である、項目22に記載のレンチウイルス粒子。
(項目24)
前記スモールRNAが、配列番号1、配列番号2、または配列番号3のうちの少なくとも1つと少なくとも80%の配列同一性を有する配列を含む、項目22に記載のレンチウイルス粒子。
(項目25)
前記スモールRNAが、配列番号1、配列番号2、または配列番号3のうちの少なくとも1つを含む、項目24に記載のレンチウイルス粒子。
(項目26)
前記レンチウイルス粒子が、KIF11遺伝子またはそのバリアントをコードする第2のヌクレオチド配列をさらに含み、前記KIF11遺伝子または前記そのバリアントが、少なくとも1つの配列部分を欠いている、項目23に記載のレンチウイルス粒子。
(項目27)
前記配列部分が、前記KIF11遺伝子の非コード領域中にあり、前記KIF11遺伝子の前記非コード領域が、5’非翻訳領域または3’非翻訳領域のうちの少なくとも1つの中にある、項目26に記載のウイルスベクター。
(項目28)
前記標的細胞が間葉系幹細胞である、項目22に記載のレンチウイルス粒子。
(項目29)
対象においてがんを処置する方法であって、治療有効量の項目22に記載のレンチウイルス粒子を前記対象に投与することを含む、方法。
(項目30)
前記がんが、癌腫、肉腫、骨髄腫、リンパ腫、混合型、またはそれらの混合物のうちのいずれか1つまたは複数から選択される、項目29に記載の方法。
(項目31)
前記レンチウイルス粒子が、感染した標的細胞を介して前記対象に投与される、項目29に記載の方法。
(項目32)
前記標的細胞が体細胞を含む、項目31に記載の方法。
(項目33)
前記体細胞が肝細胞またはリンパ球を含む、項目32に記載の方法。
(項目34)
前記体細胞がリンパ球を含み、前記リンパ球が腫瘍特異的T細胞を含む、項目33に記載の方法。
(項目35)
前記標的細胞が幹細胞を含む、項目31に記載の方法。
(項目36)
前記幹細胞が人工多能性幹細胞または間葉系幹細胞を含む、項目35に記載の方法。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【
図1】
図1は、環状の例示的な3ベクターレンチウイルスベクターシステムを示す。
【0019】
【
図2】
図2は、環状の例示的な4ベクターレンチウイルスベクターシステムを示す。
【0020】
【
図3】
図3は、環状の、KIF11 shRNA標的化配列およびKIF11コード配列を発現するレンチウイルスベクターを示す。
【0021】
【
図4】
図4は、KIF11 shRNA標的化配列およびKIF11コード配列を発現するレンチウイルスベクターの線形マップを示す。
【0022】
【
図5】
図5は、ヒトKIF11非翻訳領域を標的化するレンチウイルス送達性shRNAベースRNA干渉の効果を実証するデータを示す。
【0023】
【
図6】
図6は、ヒトKIF11非翻訳領域およびKIF11遺伝子を標的化する両方のshRNAベースRNAのレンチウイルス送達性の共発現後のKIF11 mRNAレベルに対する効果を実証するデータを示す。
【0024】
【
図7】
図7は、PC3細胞の増殖に対するKIF11ノックダウンの効果を実証するデータを示す。
【0025】
【
図8】
図8は、ヒトKIF11非翻訳領域およびKIF遺伝子を標的化する両方のshRNAベースRNAのレンチウイルス送達性の共発現後のPC3細胞の増殖に対する効果を実証するデータを示す。
【0026】
【
図9】
図9は、GFPを発現するレンチウイルスベクターの間葉系幹細胞への形質導入を実証するデータを示す。
【0027】
【
図10】
図10は、KIF11に対するshRNAを発現する様々なレンチウイルスベクターを用いた形質導入後の間葉系幹細胞のベクターコピー数を実証するデータを示す。
【0028】
【
図11A】
図11Aおよび
図11Bは、(A)KIF11に対するshRNA単独、ならびに(B)KIF11に対するshRNAおよびKIF11コード配列を発現するレンチウイルスベクターを用いた形質導入後の間葉系幹細胞中のKIF11 mRNA発現を示すデータを示す。
【
図11B】
図11Aおよび
図11Bは、(A)KIF11に対するshRNA単独、ならびに(B)KIF11に対するshRNAおよびKIF11コード配列を発現するレンチウイルスベクターを用いた形質導入後の間葉系幹細胞中のKIF11 mRNA発現を示すデータを示す。
【0029】
【
図12】
図12は、KIF11を標的化するshRNAを発現するベクターまたはKIF11を標的化するshRNAおよびKIF11コード配列を共発現するベクターを用いた形質導入後の間葉系幹細胞の細胞数を示すデータを示す。
【発明を実施するための形態】
【0030】
詳細な説明
本開示の概観
一態様では、本開示は、KIF11の宿主細胞コピーに結合することができるスモールRNAをコードまたは発現するベクターおよび改変された細胞に関する。実施形態では、ベクターはウイルスベクターである。実施形態では、改変された細胞は、改変された間葉系幹細胞である。
【0031】
別の態様では、本開示は、(i)KIF11の宿主コピーに結合することができるスモールRNA、および(ii)スモールRNAに対して抵抗性の改変されたKIF11をコードまたは発現するベクターおよび改変された細胞に関する。実施形態では、ベクターはウイルスベクターである。実施形態では、改変された細胞は間葉系幹細胞である。
【0032】
別の態様では、本開示は、(i)KIF11の宿主コピーに結合することができるスモールRNA、および(ii)スモールRNAに対して抵抗性の外因性KIF11遺伝子をコードまたは発現するベクターおよび改変された細胞に関する。実施形態では、ベクターはウイルスベクターである。実施形態では、改変された細胞は間葉細胞である。実施形態では、スモールRNAは、例えば5’UTRまたは3’UTR中で、KIF11の宿主コピーの非コード領域に結合することができる。実施形態では、外因性KIF11遺伝子は、標的配列の少なくとも部分(例えば、その配列部分)を欠いている。そのような実施形態では、外因性KIF11は、スモールRNAによる活性に対して、例えば、外因性KIF11に結合するスモールRNAの能力に対して抵抗性である。そのような実施形態では、外因性KIF11の発現をモジュレートするスモールRNAの能力は、減少および/または予防される。
【0033】
定義および解釈
本明細書中で別様に定義しない限り、本開示との関連で使用する科学技術用語は、当業者によって一般に理解される意味を有する。さらに、文脈上別様に要求されない限り、単数の語は複数を包含し、複数の語は単数を包含する。一般に、本明細書中に記載する細胞および組織の培養、分子生物学、免疫学、微生物学、遺伝学、ならびにタンパク質および核酸の化学およびハイブリダイゼーションとの関連で使用する学術用語およびそれらの技術は周知であり、当該技術分野において一般に使用されている。本開示の方法および技術は、別段の記載がなければ、当該技術分野において周知の、本明細書全体で引用し議論する様々な一般的およびより具体的な参考文献に記載される従来の方法にしたがって一般に行われる。例えば、Sambrook J.およびRussell D.、Molecular Cloning: A Laboratory Manual、第3版、Cold Spring Harbor Laboratory Press、Cold Spring Harbor、N.Y.(2000年);Ausubelら、Short Protocols in Molecular Biology: A Compendium of Methods from Current Protocols in
Molecular Biology、Wiley, John&Sons, Inc.(2002年);HarlowおよびLane、Using Antibodies:
A Laboratory Manual;Cold Spring Harbor Laboratory Press、Cold Spring Harbor、N.Y.(1998年);およびColiganら、Short Protocols in Protein Science、Wiley, John&Sons, Inc.(2003年)を参照。あらゆる酵素反応または精製技術は、当該技術分野において一般に遂行されるように、または本明細書中に記載するように、製造業者の仕様にしたがって行われる。本明細書中に記載する分析化学、合成有機化学、医薬品化学、および製薬化学との関連で使用する学術用語、ならびに実験の手順および技術は、当該技術分野において周知であり一般に使用されるものである。
【0034】
本明細書および添付の特許請求の範囲において使用する場合、単数形「1つの(a)」、「1つの(an)」、および「その(the)」は交換可能に使用し、文脈が明確にそうでないと示さない限り、複数形も包含すること、およびそれぞれの意味の範囲内に包含されることを意図する。また、本明細書中で使用する場合、「および/または」は、挙げた項目の1つまたは複数のあらゆる全ての可能な組み合わせ、ならびに、選択肢(「または」)として解釈する場合には組み合わせないことを指し、およびこれらを包含する。
【0035】
例えば、pH、温度、時間、濃度、および分子量といった、範囲などの数値による全ての指定は、0.1の増分で(+)または(-)に変動する近似値である。必ずしも明示的には述べないが、数値による全ての指定には「約」という用語が先行することを理解するべきである。「約」という用語は、「X+0.1」または「X-0.1」などの「X」の小さな増分に加えて、「X」という正確な値も包含する。必ずしも明示的には述べないが、本明細書中に記載する試薬は単に例示的なものであり、そのようなものの同等物が当該技術分野で公知であることも理解するべきである。
【0036】
本明細書中で使用する場合、「約」という用語は、当業者によって理解され、また、それが使用される文脈に応じてある程度変動する。使用されている文脈を考慮すると当業者に明確でない用語が使用されている場合、「約」は、特定の用語のプラスまたはマイナス10%までを意味する。
【0037】
活性剤の「投与」または活性剤を「投与する」という用語は、処置を必要とする被験体に対して活性剤を、治療的に有用な形態かつ治療有効量でその個体の体内に導入できる形態で与えることを意味すると理解するべきである。
【0038】
本明細書で使用される場合、「同種異系」という用語は、処置において使用されるドナー細胞または組織がドナー細胞または組織で処置されている対象に由来しない処置を指す。よって、「対象にとって同種異系の」処置は、ドナー細胞または組織が対象に由来しない処置を指す。
【0039】
本明細書で使用される場合、「自家の」という用語は、処置において使用されるドナー細胞または組織がドナー細胞または組織で処置されている対象に由来する処置を指す。よって、「対象にとって自家の」処置は、ドナー細胞または組織が対象に由来する処置を指す。
【0040】
本明細書で使用される場合、「相補的な」という用語は、2つのヌクレオチド配列間の1つまたは複数のピリミジンとの1つまたは複数のプリンの水素結合を通じて互いにハイブリダイズする2つのヌクレオチド配列の能力を指す。アデニン(プリン)は、チミン(ピリミジン)およびウラシル(ピリミジン)の両方への水素結合の能力を有する。グアニン(プリン)は、シトシン(ピリミジン)への水素結合の能力を有する。「相補的な」という用語は、1つのヌクレオチド配列上の各核酸塩基が他のヌクレオチド配列上のその対応物核酸塩基に水素結合した完璧に「相補的な」2つのヌクレオチド配列を含む。「相補的な」という用語は、1つのヌクレオチド配列上の少なくとも1つの核酸塩基が他のヌクレオチド配列上のその対応物核酸塩基に水素結合しない不完全に「相補的な」2つのヌクレオチド配列を含む。不完全に「相補的」であることは、ヌクレオチド配列のうちの1つにおける核酸塩基が他のヌクレオチド配列上のその対応物核酸塩基に水素結合する能力を有しない場合に起こる。例えば、ヌクレオチド配列のうちの1つにおけるアデニンへの対応物がグアニンである場合、または、例えば、ヌクレオチド配列のうちの1つにおけるウラシルへの対応物がシトシンである場合である。「相補的な」2つのヌクレオチド配列は、mRNAのヌクレオチド配列に「相補的な」スモールRNAのヌクレオチド配列を含み得る。スモールRNAのヌクレオチド配列は、mRNAのヌクレオチド配列に完璧に「相補的」または不完全に「相補的」であり得る。
【0041】
本明細書中で使用する場合、「含む」という用語は、組成物および方法が、記載した要素を含むが、他の要素を除外しないことを意味することを意図する。組成物および方法を定義するために使用する場合、「から本質的になる」は、組成物または方法に対して何らかの本質的な重要性を持つその他の要素を除外することを意味する。「からなる」は、特許請求される組成物および実体的な方法ステップにとって軽微ではないその他の成分の要素を除外することを意味する。これらの移行句のそれぞれによって定義される実施形態は、本開示の範囲内にある。したがって、方法および組成物は、追加のステップおよび成分を含み得るか(含む)、あるいは重要でないステップおよび組成物を含むか(から本質的になる)、あるいは記載した方法ステップまたは組成物のみを意図する(からなる)ことが意図される。
【0042】
本明細書中で使用する場合、「発現」、「発現される」、または「コードする」とは、ポリヌクレオチドがmRNAに転写される過程、および/または、転写されたmRNAがその後にペプチド、ポリペプチド、またはタンパク質に翻訳される過程をいう。発現は、真核細胞中でのmRNAのスプライシング、または転写後修飾もしくは翻訳後修飾というその他の形態を包含し得る。
【0043】
「個体」、「被験体」、および「患者」という用語は本明細書中では交換可能に使用され、任意の個体である哺乳動物被験体(例えば、マウス、ブタ、ウシ、イヌ、ネコ、ウマ、非ヒト霊長類またはヒト霊長類)を指す。
【0044】
「KIF11」という用語は、キネシン-5としても公知の、遺伝子キネシンファミリーメンバー11を指す。KIF11は、有糸分裂紡錘体との相互作用を通じて有糸分裂において機能する。用語KIF11は、ヌクレオチド配列およびペプチド配列の両方を含む、全ての野生型およびバリアントKIF11配列を含む。非限定的に、用語KIF11は、配列番号4への参照を含み、それと少なくとも約80%の同一性を有するバリアントをさらに含む。
【0045】
「miRNA」という用語はマイクロRNAを指し、本明細書において「miR」とも称され得る。
【0046】
「非コード配列」または「非コード領域」という用語は、タンパク質をコードしない遺伝子の部分を指す。該用語は、遺伝子の5’非翻訳配列または領域、遺伝子の3’非翻訳配列または領域、および遺伝子のイントロンを非限定的に指す。
【0047】
「パッケージング細胞株」という用語は、レンチウイルス粒子を発現するために使用できる任意の細胞株を指す。
【0048】
2つまたはそれより多くの核酸配列またはポリペプチド配列の文脈における「同一性パーセント」という用語は、下記する配列比較アルゴリズム(例えば、BLASTPおよびBLASTN、または当業者に利用可能なその他のアルゴリズム)の1つを使用して、または目視検査によって測定されるように、最大の一致のために比較およびアラインメントした時に同一となるヌクレオチドまたはアミノ酸残基を特定のパーセンテージで有する2つまたはそれより多くの配列または部分配列を指す。適用に応じて、「同一性パーセント」は、比較されている配列の一領域にわたり(例えば、機能ドメインにわたり)存在し得るか、あるいは比較される2つの配列の全長にわたり存在し得る。配列比較のために、通常は1つの配列が、試験配列がそれに対して比較される参照配列の役目を持つ。配列比較アルゴリズムを使用する場合、試験配列および参照配列をコンピューターに入力し、部分配列座標を指定し、必要であれば配列アルゴリズムプログラムのパラメーターを指定する。次いで、配列比較アルゴリズムは、指定されたプログラムパラメーターに基づいて、参照配列に対する試験配列の配列同一性パーセントを計算する。
【0049】
比較のための配列の最適なアラインメントは、例えば、SmithおよびWaterman、Adv. Appl. Math.2巻:482頁(1981年)の局所相同性アルゴリズム、NeedlemanおよびWunsch、J. Mol. Biol.48巻:443頁(1970年)の相同性アラインメントアルゴリズム、PearsonおよびLipman、Proc. Nat’l. Acad. Sci. USA 85巻:2444頁(1988年)の類似性検索法、これらのアルゴリズムのコンピューターによる実行(GAP、BESTFIT、FASTA、およびTFASTA;Wisconsin Genetics Software Package、Genetics Computer Group、575 Science Dr.、Madison、Wis.)、または目視検査(一般には後述のAusubelらを参照)によって実行することができる。
【0050】
配列同一性パーセントおよび配列類似性パーセントを決定するために好適なアルゴリズムの一例は、Altschulら、J. Mol. Biol.215巻:403~410頁(1990年)に記載されるBLASTアルゴリズムである。BLAST解析を行うためのソフトウェアは、National Center for Biotechnology Informationのウェブサイトを通じて公開されている。
【0051】
2つのヌクレオチド配列間の同一性パーセントは、GCGソフトウェアパッケージ(http://www.gcg.comにおいて利用可能)中のGAPプログラムを使用し、NWSgapdna.CMPマトリックス、ならびに40、50、60、70、または80のギャップ重み付け、および1、2、3、4、5、または6の長さ重み付けを使用して決定することができる。また、2つのヌクレオチド配列間またはアミノ酸配列間の同一性パーセントは、ALIGNプログラム(バージョン2.0)に組み込まれたE. MeyersおよびW. Miller(CABIOS、4巻:11~17頁、(1989年))のアルゴリズムを使用し、PAM120重み付け残基表、ギャップ長さペナルティーとして12、およびギャップペナルティーとして4を使用して決定することもできる。加えて、2つのアミノ酸配列間の同一性パーセントは、GCGソフトウェアパッケージ(http://www.gcg.comにおいて利用可能)中のGAPプログラムに組み込まれたNeedlemanおよびWunsch(J. Mol. Biol.(48巻):444~453頁(1970年))のアルゴリズムを使用し、Blossum 62マトリックスまたはPAM250マトリックスのいずれか、ならびに16、14、12、10、8、6、または4のギャップ重み付け、および1、2、3、4、5、または6の長さ重み付けを使用して決定することができる。
【0052】
本開示の核酸配列およびタンパク質配列は、例えば関連配列を同定するために、公共データベースに対して検索を行うための「クエリ配列」としてさらに使用することができる。そのような検索は、Altschulら(1990年)、J. Mol. Biol.215巻:403~10頁のNBLASTおよびXBLASTプログラム(バージョン2.0)を使用して行うことができる。BLASTヌクレオチド検索は、本開示中に提供される核酸分子に相同的なヌクレオチド配列を得るために、NBLASTプログラムをスコア=100、ワード長=12で用いて行うことができる。BLASTタンパク質検索は、本開示のタンパク質分子に相同的なアミノ酸配列を得るために、XBLASTプログラムをスコア=50、ワード長=3で用いて行うことができる。比較目的のギャップ付きアラインメントを得るために、Altschulら(1997年)Nucleic Acids Res.25巻(17号):3389~3402頁に記載されるようにGapped
BLASTを利用することができる。BLASTプログラムおよびGapped BLASTプログラムを利用する場合、各プログラム(例えば、XBLASTおよびNBLAST)のデフォルトのパラメーターを使用することができる。http://www.ncbi.nlm.nih.gov.を参照。
【0053】
本明細書中で使用する場合、「薬学的に許容される」とは、妥当な医学的判断の範囲内で、合理的な利益/リスク比に見合うように、過度の毒性、刺激、アレルギー反応、またはその他の問題もしくは合併症を起こすことなくヒトおよび動物の組織、臓器、および/または体液との接触に使用するために好適な化合物、材料、組成物、および/または剤形を指す。
【0054】
本明細書中で使用する場合、「薬学的に許容される担体」は、生理学的に適合性の、あらゆる全ての溶媒、分散媒、コーティング、抗菌剤および抗真菌剤、等張剤、および吸収遅延剤などを指す、およびそれらを包含する。組成物は、薬学的に許容される塩、例えば酸付加塩または塩基付加塩を含み得る(例えば、Bergeら、(1977年)J Pharm Sci 66巻:1~19頁を参照)。
【0055】
本明細書中で使用する場合、「配列番号(SEQ ID NO)」という用語は、「配列ID番号(Sequence ID No.)」という用語と同義である。
【0056】
本明細書中で使用する場合、「スモールRNA」とは、一般に約200ヌクレオチドまたはそれ未満の長さの、サイレンシング機能または干渉機能を持つノンコーディングRNAをいう。その他の実施形態では、スモールRNAは、約175ヌクレオチドまたはそれ未満、約150ヌクレオチドまたはそれ未満、約125ヌクレオチドまたはそれ未満、約100ヌクレオチドまたはそれ未満、あるいは約75ヌクレオチドまたはそれ未満の長さである。そのようなRNAとしては、マイクロRNA(miRNA)、低分子干渉RNA(siRNA)、二本鎖RNA(dsRNA)、および短鎖ヘアピンRNA(shRNA)が挙げられる。本開示の「スモールRNA」は、一般に、標的遺伝子のmRNAの破壊を生じさせる経路を通じて、標的遺伝子の遺伝子発現を阻害することまたはノックダウンすることができるべきである。
【0057】
本明細書で使用される場合、「標的細胞」は、ベクターまたはプラスミドなどの生化学的剤が結合することができる、細胞表面受容体などの表面分子を含有する任意の細胞である。表面分子および生化学的剤の間の相互作用があると、「標的細胞」は、例えば形質導入を手段として、生化学的剤の取込みが可能である。生化学的剤の取込みは、「標的細胞」の遺伝子型、表現型、または遺伝子型および表現型の両方に対する改変を生じさせ得る。
【0058】
本明細書で使用される場合、「標的配列」という用語は、スモールRNAなどの核酸に相補的な遺伝子またはそのバリアント上の配列部分を指す。「標的配列」は、遺伝子のコード領域上の配列部分を含み得る。あるいは、「標的配列」は、3’UTRまたは5’UTRなどの遺伝子の非コード領域上の配列部分を含み得る。例えば、「標的配列」は、KIF11遺伝子の3’UTRまたは5’UTR上の配列部分を含み得る。
【0059】
「治療有効量」という用語は、所与の病気、傷害、疾患、または状態に罹患した患者に見られる症状、進行、または合併症の発症を処置し、または防止するために好適な組成物中および好適な剤形中の本開示の活性剤の十分な量を指す。治療有効量は、患者の状態の状況またはその重篤度、および処置される被験体の年齢、体重などに応じて変化する。治療有効量は、例えば、投与経路、被験体の状態などのいくつかの要因、ならびに当業者によって理解されるその他の要因のいずれかに応じて変化し得る。
【0060】
本明細書で使用される場合、「治療ベクター」という用語は、組込みベクターまたは非組込みベクターなどの任意の好適なウイルスベクターを非限定的に含む。ある特定の実施形態では、レンチウイルスベクターまたはAAVベクターが使用される。ある特定の実施形態では、レトロウイルス、麻疹ウイルス、流行性耳下腺炎ウイルス、アレナウイルス、ピコルナウイルス、ヘルペスウイルス、またはポックスウイルスが使用される。さらに、レンチウイルスベクターシステムに関して本明細書中で使用する場合、「ベクター」という用語は、「プラスミド」と同義である。例えば、2ベクターおよび3ベクターのパッケージングシステムを含む3ベクターシステムおよび4ベクターシステムは、3プラスミドシステムおよび4プラスミドシステムとも称され得る。
【0061】
「処置」は、疾患状態を標的化し、それと戦うこと、すなわち、疾患状態を改善し、または予防することを意図する。よって、特定の処置は、標的化される疾患状態、ならびに医薬療法および治療アプローチの現在または将来の状況に依存する。処置は、関連する毒性を有し得る。
【0062】
「処置」または「処置すること」という用語は、一般に、処置されている被験体の自然経過を変えようとする介入を指し、予防のため、または臨床病理の経過の間に行われ得る。望ましい効果としては、疾患の発生または再発の予防、症状の軽減、疾患の任意の直接的または間接的な病理学的帰結の抑制、減少、または阻害、疾患状態の改善または緩和、および寛解または予後改善の惹起が挙げられるが、これらに限定されない。
【0063】
本明細書において使用される「UTR」または「非翻訳領域」という用語は、遺伝子のコード領域の5’または3’にある遺伝子の領域を表す。
【0064】
本明細書で使用される場合、「3’UTR」または「3’非翻訳領域」という用語は、遺伝子のコード領域の3’にある「UTR」または「非翻訳領域」である。
【0065】
本明細書で使用される場合、「5’UTR」または「5’非翻訳領域」という用語は、遺伝子のコード領域の5’にある「UTR」または「非翻訳領域」である。
【0066】
本明細書において使用される「バリアント」という用語は、本明細書において、類似体または変形とも表され得る。バリアントは、ヌクレオチド配列に対するあらゆる置換、欠失または付加を表す。
本開示の態様および実施形態の説明
【0067】
一態様では、KIF11の宿主コピーの非コード領域に結合することができるスモールRNAをコードする第1のヌクレオチド配列を含む、ウイルスベクターが提供される。
【0068】
一態様では、本明細書に記載のウイルスベクター粒子はウイルスに由来する。実施形態では、ウイルスは、麻疹ウイルス、ピコルナウイルス、流行性耳下腺炎ウイルス、アレナウイルスまたは本明細書に記載の任意の他のウイルスのうちのいずれかである。実施形態では、ウイルスは、miRNA、siRNA、dsRNA、shRNA、リボザイム、およびpiRNAのうちのいずれか1つまたは複数を含むスモールRNAをコードする。
【0069】
一態様では、本明細書に記載のウイルスベクター粒子はレトロウイルスに由来する。実施形態では、レトロウイルスはHIVウイルスである。実施形態では、レトロウイルスは、本明細書に記載の任意のレトロウイルスである。実施形態では、レトロウイルスは、miRNA、siRNA、shRNA、リボザイム、およびpiRNAのうちのいずれか1つまたは複数を含むスモールRNAをコードする。
【0070】
実施形態では、非コード領域はKIF11の宿主コピーの3’非翻訳領域または5’非翻訳領域である。実施形態では、スモールRNAは、配列番号1、配列番号2、または配列番号3のうちの少なくとも1つと少なくとも80%の配列同一性を有する配列を含む。実施形態では、スモールRNAは、配列番号1、配列番号2、または配列番号3のうちの少なくとも1つを含む。実施形態では、ウイルスベクターは、KIF11遺伝子またはそのバリアントをコードする第2のヌクレオチド配列をさらに含み、KIF11遺伝子またはそのバリアントは、少なくとも1つの配列部分を欠いている。実施形態では、配列部分は、KIF11遺伝子の非コード領域中にある。実施形態では、KIF11遺伝子の非コード領域は、5’非翻訳領域または3’非翻訳領域のうちの少なくとも1つの中にある。
【0071】
実施形態では、スモールRNAはshRNAである。実施形態では、スモールRNAはマイクロRNAである。実施形態では、スモールRNAはsiRNAである。実施形態では、スモールRNAはdsRNAである。実施形態では、スモールRNAはpiRNAである。実施形態では、スモールRNAはリボザイムである。
【0072】
実施形態では、スモールRNAは、配列番号1、配列番号2または配列番号3のうちの少なくとも1つと少なくとも80%、81%、82%、83%、84%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、または100%の配列同一性を有する配列を含む。
【0073】
実施形態では、KIF11遺伝子またはそのバリアントは、1つより多くの定義された標的配列を欠いており、例えば、KIF11遺伝子またはそのバリアントは、2個の定義された標的配列を欠いており、3個の定義された標的配列を欠いており、4個の定義された標的配列を欠いており、5個の定義された標的配列を欠いており、6個の定義された標的配列を欠いており、7個の定義された標的配列を欠いており、8個の定義された標的配列を欠いており、9個の定義された標的配列を欠いており、または10個の定義された標的配列を欠いている。実施形態では、KIF11遺伝子またはそのバリアントは、10個より多くの定義された標的配列を欠いている。
【0074】
別の態様では、パッケージング細胞によって生産され、標的細胞を感染させることができるレンチウイルス粒子が提供され、レンチウイルス粒子は、標的細胞に感染することができるエンベロープタンパク質、およびKIF11の宿主コピーの非コード領域に結合することができるスモールRNAをコードする第1のヌクレオチド配列を含む。
【0075】
実施形態では、レンチウイルス粒子はGagタンパク質をさらに含む。実施形態では、レンチウイルス粒子はPolタンパク質をさらに含む。
【0076】
実施形態では、非コード領域は3’非翻訳領域または5’非翻訳領域である。実施形態では、スモールRNAは、配列番号1、配列番号2、または配列番号3のうちの少なくとも1つと少なくとも80%の配列同一性を有する配列を含む。実施形態では、スモールRNAは、配列番号1、配列番号2、または配列番号3のうちの少なくとも1つを含む。実施形態では、レンチウイルス粒子は、KIF11遺伝子またはそのバリアントをコードする第2のヌクレオチド配列をさらに含み、KIF11遺伝子またはそのバリアントは、少なくとも1つの配列部分を欠いている。実施形態では、配列部分は、KIF11遺伝子の非コード領域中にある。実施形態では、KIF11遺伝子の非コード領域は、5’非翻訳領域または3’非翻訳領域のうちの少なくとも1つの中にある。実施形態では、標的細胞は間葉系幹細胞である。
【0077】
実施形態では、スモールRNAはshRNAである。実施形態では、スモールRNAはマイクロRNAである。実施形態では、スモールRNAはsiRNAである。実施形態では、スモールRNAはdsRNAである。実施形態では、スモールRNAはpiRNAである。実施形態では、スモールRNAはリボザイムである。
【0078】
実施形態では、スモールRNAは、配列番号1、配列番号2または配列番号3のうちの少なくとも1つと少なくとも80%、81%、82%、83%、84%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、または100%の配列同一性を有する配列を含む。
【0079】
実施形態では、KIF11遺伝子またはそのバリアントは、2個の定義された標的配列を欠いており、3個の定義された標的配列を欠いており、4個の定義された標的配列を欠いており、5個の定義された標的配列を欠いており、6個の定義された標的配列を欠いており、7個の定義された標的配列を欠いており、8個の定義された標的配列を欠いており、9個の定義された標的配列を欠いており、または10個の定義された標的配列を欠いている。実施形態では、KIF11遺伝子またはそのバリアントは、10個より多くの定義された標的配列を欠いている。
【0080】
別の態様では、レンチウイルス粒子に感染した間葉系幹細胞を含む改変された間葉系幹細胞であって、レンチウイルス粒子が、間葉系幹細胞に感染することができるエンベロープタンパク質、およびKIF11の宿主コピーの非コード領域に結合することができるスモールRNAをコードする第1のヌクレオチド配列を含む、改変された間葉系幹細胞が提供される。
【0081】
実施形態では、レンチウイルス粒子はGagタンパク質をさらに含む。実施形態では、レンチウイルス粒子はPolタンパク質をさらに含む。
【0082】
実施形態では、非コード領域は3’非翻訳領域または5’非翻訳領域である。実施形態では、スモールRNAは、配列番号1、配列番号2、または配列番号3のうちの少なくとも1つと少なくとも80%の配列同一性を有する配列を含む。実施形態では、スモールRNAは、配列番号1、配列番号2、または配列番号3のうちの少なくとも1つを含む。実施形態では、第1のヌクレオチド配列は、改変された間葉系幹細胞中に1細胞あたり約1~約10コピーで存在する。
【0083】
実施形態では、スモールRNAをコードするヌクレオチド配列は、1細胞あたり1コピー、1細胞あたり2コピー、1細胞あたり3コピー、1細胞あたり4コピー、1細胞あたり5コピー、1細胞あたり6コピー、1細胞あたり7コピー、1細胞あたり8コピー、1細胞あたり9コピー、または1細胞あたり10コピーで存在する。実施形態では、スモールRNAをコードするヌクレオチド配列は、1細胞あたり約10~約20コピーで存在する。
【0084】
実施形態では、スモールRNAはshRNAである。実施形態では、スモールRNAはマイクロRNAである。実施形態では、スモールRNAはsiRNAである。実施形態では、スモールRNAはdsRNAである。実施形態では、スモールRNAはpiRNAである。実施形態では、スモールRNAはリボザイムである。
【0085】
実施形態では、スモールRNAは、配列番号1、配列番号2または配列番号3のうちの少なくとも1つと少なくとも80%、81%、82%、83%、84%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、または100%の配列同一性を有する配列を含む。
【0086】
別の態様では、改変された間葉系幹細胞を生産する方法であって、有効量のレンチウイルス粒子で間葉系幹細胞を感染させることを含み、レンチウイルス粒子が、間葉系幹細胞に感染することができるエンベロープタンパク質、およびKIF11の宿主コピーの非コード領域における少なくとも1つの相補性領域に結合することができるスモールRNAをコードする第1のヌクレオチド配列を含む、方法が提供される。
【0087】
実施形態では、レンチウイルス粒子はGagタンパク質をさらに含む。実施形態では、レンチウイルス粒子はPolタンパク質をさらに含む。
【0088】
実施形態では、非コード領域は3’非翻訳領域または5’非翻訳領域である。実施形態では、スモールRNAは、配列番号1、配列番号2、または配列番号3のうちの少なくとも1つと少なくとも80%の配列同一性を有する配列を含む。実施形態では、スモールRNAは、配列番号1、配列番号2、または配列番号3のうちの少なくとも1つを含む。実施形態では、第1のヌクレオチド配列は、改変された間葉系幹細胞中に1細胞あたり約1~約10コピーで存在する。
【0089】
実施形態では、スモールRNAをコードするヌクレオチド配列は、1細胞あたり1コピー、1細胞あたり2コピー、1細胞あたり3コピー、1細胞あたり4コピー、1細胞あたり5コピー、1細胞あたり6コピー、1細胞あたり7コピー、1細胞あたり8コピー、1細胞あたり9コピー、または1細胞あたり10コピーで存在する。実施形態では、スモールRNAをコードするヌクレオチド配列は、1細胞あたり約10~約20コピーで存在する。
【0090】
実施形態では、スモールRNAはshRNAである。実施形態では、スモールRNAはマイクロRNAである。実施形態では、スモールRNAはsiRNAである。実施形態では、スモールRNAはdsRNAである。実施形態では、スモールRNAはpiRNAである。実施形態では、スモールRNAはリボザイムである。
【0091】
実施形態では、スモールRNAは、配列番号1、配列番号2または配列番号3のうちの少なくとも1つと少なくとも80%、81%、82%、83%、84%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、または100%の配列同一性を有する配列を含む。
【0092】
実施形態では、KIF11遺伝子またはそのバリアントは、2個の定義された標的配列を欠いており、3個の定義された標的配列を欠いており、4個の定義された標的配列を欠いており、5個の定義された標的配列を欠いており、6個の定義された標的配列を欠いており、7個の定義された標的配列を欠いており、8個の定義された標的配列を欠いており、9個の定義された標的配列を欠いており、または10個の定義された標的配列を欠いている。実施形態では、KIF11遺伝子またはそのバリアントは、10個より多くの定義された標的配列を欠いている。
【0093】
別の態様では、対象においてがんを処置する方法であって、治療有効量の任意の本明細書に記載の改変された間葉系幹細胞を対象に投与することを含む、方法が提供される。
【0094】
実施形態では、改変された間葉系幹細胞は、対象にとって同種異系である。実施形態では、改変された間葉系幹細胞は、対象にとって自家である。
【0095】
実施形態では、がんは、癌腫、肉腫、骨髄腫、リンパ腫、混合型、またはそれらの混合物のうちのいずれか1つまたは複数から選択される。実施形態では、がんは、本明細書に記載の任意のがんである。
【0096】
別の態様では、本明細書に記載の改変された間葉系幹細胞のいずれかを含む、がんを処置するための、改変された間葉系幹細胞の使用が提供される。
【0097】
別の態様では、対象においてがんを処置する方法であって、治療有効量の任意の本明細書に記載のレンチウイルス粒子を対象に投与することを含む、方法が提供される。
【0098】
実施形態では、がんは、癌腫、肉腫、骨髄腫、リンパ腫、混合型、またはそれらの混合物のうちのいずれか1つまたは複数から選択される。
【0099】
実施形態では、レンチウイルス粒子は、感染した標的細胞を介して対象に投与される。実施形態では、標的細胞は体細胞を含む。施形態では、体細胞は、骨細胞、軟骨細胞、神経細胞、上皮細胞、筋肉細胞、血液細胞、導電性細胞、結合性細胞、腺細胞、または支持性細胞を含む。
【0100】
実施形態では、体細胞は肝細胞を含む。
【0101】
実施形態では、体細胞はリンパ球を含む。実施形態では、リンパ球はB細胞を含む。実施形態では、リンパ球はT細胞を含む。実施形態では、T細胞は腫瘍特異的T細胞を含む。
【0102】
実施形態では、標的細胞は幹細胞を含む。実施形態では、幹細胞は胚性幹細胞を含む。実施形態では、幹細胞は体性幹細胞を含む。実施形態では、幹細胞は人工多能性幹細胞を含む。実施形態では、幹細胞は間葉系幹細胞を含む。
【0103】
別の態様では、ウイルスベクターであって、(i)コード領域、および5’非翻訳領域および3’非翻訳領域のうちの少なくとも1つを含む、コードされるKIF11遺伝子であって、5’非翻訳領域または3’非翻訳領域のうちの少なくとも1つにおける少なくとも1つの定義された標的配列を欠いている、KIF11遺伝子、ならびに(ii)KIF11の宿主コピーの非コード領域中の少なくとも1つの相補的な領域に結合することができるスモールRNAであって、コードされるKIF11遺伝子の発現が、スモールRNAによる活性に対して抵抗性である、スモールRNAを含むウイルスベクターが提供される。
【0104】
実施形態では、KIF11遺伝子は、5’非翻訳領域中の少なくとも1つの定義された標的配列を欠いている。実施形態では、KIF11遺伝子は、3’非翻訳領域中の少なくとも1つの定義された標的配列を欠いている。実施形態では、KIF11遺伝子は、5’非翻訳領域および3’非翻訳領域の両方における少なくとも1つの定義された標的配列を欠いている。
【0105】
実施形態では、KIF11遺伝子は、1つより多くの定義された標的配列を欠いており、例えば、KIF11遺伝子は、2個の定義された標的配列を欠いており、3個の定義された標的配列を欠いており、4個の定義された標的配列を欠いており、5個の定義された標的配列を欠いており、6個の定義された標的配列を欠いており、7個の定義された標的配列を欠いており、8個の定義された標的配列を欠いており、9個の定義された標的配列を欠いており、または10個の定義された標的配列を欠いている。実施形態では、KIF11遺伝子は、10個より多くの定義された標的配列を欠いている。
【0106】
実施形態では、KIF11遺伝子は、KIF11の宿主コピーと比べてその非コード領域の部分中にバリアントを含む。実施形態では、バリアントは、KIF11のヌクレオチド配列中の置換を含む。実施形態では、バリアントは、KIF11のヌクレオチド配列中の欠失を含む。実施形態では、バリアントは、KIF11のヌクレオチド配列への付加を含む。実施形態では、バリアントは、KIF11遺伝子の3’非翻訳領域中にある。実施形態では、バリアントは、KIF11遺伝子の5’非翻訳領域中にある。実施形態では、バリアントは、KIF11遺伝子が少なくとも1つの標的配列(例えば、その配列部分)を欠くことを引き起こす。
【0107】
実施形態では、KIF11遺伝子またはそのバリアントは、配列番号4と少なくとも80%、81%、82%、83%、84%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、または100%の配列同一性を有する配列を含む。
【0108】
実施形態では、スモールRNAはshRNAである。実施形態では、shRNAは、配列番号1、配列番号2、および配列番号3のうちの少なくとも1つと少なくとも80%、81%、82%、83%、84%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、または100%の配列同一性を有する配列を含む。
【0109】
実施形態では、スモールRNAは、同じレンチウイルスベクターの遺伝子発現構築物中に存在しない配列を標的化して、ベクターまたはベクター構成成分をコードするプラスミドの遺伝子内組換えの可能性を回避させる。実施形態では、タンパク質コード領域が少数の突然変異により異なる場合に、スモールRNAは、同じレンチウイルスベクターの遺伝子発現構築物中に存在しない配列を標的化する。
【0110】
実施形態では、少数の突然変異は20個未満の突然変異である。実施形態では、少数の突然変異は15個未満の突然変異である。実施形態では、少数の突然変異は10個未満の突然変異である。実施形態では、少数の突然変異は5個未満の突然変異である。実施形態では、少数の突然変異は4個の突然変異である。実施形態では、少数の突然変異は3個の突然変異である。実施形態では、少数の突然変異は2個の突然変異である。実施形態では、少数の突然変異は1個の突然変異である。
【0111】
実施形態では、スモールRNAはマイクロRNAである。実施形態では、スモールRNAはsiRNAである。実施形態では、スモールRNAはdsRNAである。実施形態では、スモールRNAはpiRNAである。実施形態では、スモールRNAはリボザイムである。
【0112】
実施形態では、ウイルスベクターはレンチウイルスベクターである。実施形態では、ウイルスベクターはAAVベクターである。
【0113】
別の態様では、パッケージング細胞により産生されるレンチウイルス粒子が提供される。実施形態では、レンチウイルス粒子は、293T/17 HEKパッケージング細胞系中で産生される。実施形態では、レンチウイルス粒子は、レンチウイルス粒子を産生することができる当該技術分野において公知の任意の細胞中で産生される。
【0114】
実施形態では、レンチウイルス粒子は、標的細胞に感染することができるエンベロープタンパク質を含む。実施形態では、レンチウイルス粒子は、(i)コード領域、および5’非翻訳領域および3’非翻訳領域のうちの少なくとも1つを含む、KIF11遺伝子であって、5’非翻訳領域または3’非翻訳領域のうちの少なくとも1つにおける少なくとも1つの定義された標的配列を欠いている、KIF11遺伝子、ならびに(ii)KIF11の宿主コピーの非コード領域中の少なくとも1つの相補的な領域に結合することができるスモールRNAであって、レンチウイルス粒子中のKIF11遺伝子が、スモールRNAによる活性に対して抵抗性である、スモールRNAを含む。
【0115】
実施形態では、レンチウイルス粒子中のKIF11遺伝子は、5’非翻訳領域中の少なくとも1つの定義された標的配列を欠いている。実施形態では、レンチウイルス粒子中のKIF11遺伝子は、3’非翻訳領域中の少なくとも1つの定義された標的配列を欠いている。実施形態では、レンチウイルス粒子中のKIF11遺伝子は、5’非翻訳領域および3’非翻訳領域の両方における少なくとも1つの定義された標的配列を欠いている。
【0116】
実施形態では、レンチウイルス粒子中のKIF11遺伝子は、1つより多くの定義された標的配列を欠いており、例えば、レンチウイルス粒子中のKIF11遺伝子は、2個の定義された標的配列を欠いており、3個の定義された標的配列を欠いており、4個の定義された標的配列を欠いており、5個の定義された標的配列を欠いており、6個の定義された標的配列を欠いており、7個の定義された標的配列を欠いており、8個の定義された標的配列を欠いており、9個の定義された標的配列を欠いており、または10個の定義された標的配列を欠いている。実施形態では、レンチウイルス粒子中のKIF11遺伝子は、10個より多くの定義された標的配列を欠いている。
【0117】
実施形態では、レンチウイルス粒子中のKIF11遺伝子は、KIF11遺伝子の宿主コピーと比べてその非コード配列の部分中にバリアントを含む。実施形態では、バリアントは、KIF11の非コード配列中の置換を含む。実施形態では、バリアントは、KIF11の非コード配列中の欠失を含む。実施形態では、バリアントは、KIF11の非コード配列への付加を含む。実施形態では、バリアントは、レンチウイルス粒子中のKIF11遺伝子の3’非翻訳領域中にある。実施形態では、バリアントは、レンチウイルス粒子中のKIF11遺伝子の5’非翻訳領域中にある。実施形態では、バリアントは、KIF11遺伝子が少なくとも1つの標的配列(例えば、その配列部分)を欠くことを引き起こす。
【0118】
実施形態では、レンチウイルス粒子中のKIF11遺伝子またはそのバリアントは、配列番号4と少なくとも80%、81%、82%、83%、84%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、または100%の配列同一性を有する配列を含む。
【0119】
実施形態では、スモールRNAはshRNAである。実施形態では、shRNAは、配列番号1、配列番号2、または配列番号3のうちの少なくとも1つと少なくとも80%、81%、82%、83%、84%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、または100%の配列同一性を有する配列を含む。
【0120】
実施形態では、スモールRNAはsiRNAである。実施形態では、スモールRNAはマイクロRNAである。実施形態では、スモールRNAはdsRNAである。実施形態では、スモールRNAはpiRNAである。実施形態では、スモールRNAはリボザイムである。
【0121】
別の態様では、免疫療法ベースの組成物を使用して対象においてがんを処置する方法が提供される。実施形態では、方法は、治療有効量の免疫療法ベースの組成物を対象に投与すること、またはそれが投与されていることを含む。
【0122】
実施形態では、免疫療法ベースの組成物は、改変された細胞を含む。実施形態では、改変された細胞は、改変された間葉系幹細胞である。
【0123】
実施形態では、免疫療法ベースの組成物はレンチウイルス粒子をさらに含み、レンチウイルス粒子は、(i)がん細胞に感染することができるエンベロープタンパク質、(ii)コード領域、および5’非翻訳領域および3’非翻訳領域のうちの少なくとも1つを含む、KIF11遺伝子であって、5’非翻訳領域および3’非翻訳領域のうちの少なくとも1つにおける少なくとも1つの定義された標的配列を欠いている、KIF11遺伝子、ならびに(iii)KIF11遺伝子の宿主コピーの非コード領域中の少なくとも1つの相補的な領域に結合することができるスモールRNAであって、レンチウイルス粒子中のKIF11遺伝子が、スモールRNAによる活性に対して抵抗性である、スモールRNAを含む。
【0124】
実施形態では、レンチウイルス粒子中のKIF11遺伝子は、5’非翻訳領域中の少なくとも1つの定義された標的配列を欠いている。実施形態では、レンチウイルス粒子中のKIF11遺伝子は、3’非翻訳領域中の少なくとも1つの定義された標的配列を欠いている。実施形態では、レンチウイルス粒子中のKIF11遺伝子は、5’非翻訳領域および3’非翻訳領域の両方における少なくとも1つの定義された標的配列を欠いている。
【0125】
実施形態では、レンチウイルス粒子中のKIF11遺伝子は、1つより多くの定義された標的配列を欠いており、例えば、レンチウイルス粒子中のKIF11遺伝子は、2個の定義された標的配列を欠いており、3個の定義された標的配列を欠いており、4個の定義された標的配列を欠いており、5個の定義された標的配列を欠いており、6個の定義された標的配列を欠いており、7個の定義された標的配列を欠いており、8個の定義された標的配列を欠いており、9個の定義された標的配列を欠いており、または10個の定義された標的配列を欠いている。実施形態では、レンチウイルス粒子中のKIF11遺伝子は、10個より多くの定義された標的配列を欠いている。
【0126】
実施形態では、レンチウイルス粒子中のKIF11遺伝子は、KIF11の宿主コピーと比べてその非コード配列の部分中にバリアントを含む。実施形態では、バリアントは、KIF11のヌクレオチド配列中の置換を含む。実施形態では、バリアントは、KIF11のヌクレオチド配列中の欠失を含む。実施形態では、バリアントは、KIF11のヌクレオチド配列への付加を含む。実施形態では、バリアントは、第1のヌクレオチド配列の3’非翻訳領域中にある。実施形態では、バリアントは、第1のヌクレオチド配列の5’非翻訳領域中にある。実施形態では、バリアントは、KIF11遺伝子が少なくとも1つの標的配列(例えば、その配列部分)を欠くことを引き起こす。
【0127】
実施形態では、レンチウイルス粒子中のKIF11遺伝子は、配列番号4と少なくとも80%、81%、82%、83%、84%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、または100%の配列同一性を有する配列を含む。
【0128】
実施形態では、スモールRNAはshRNAである。実施形態では、shRNAは、配列番号1、配列番号2、および配列番号3のうちの少なくとも1つと少なくとも80%、81%、82%、83%、84%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、または100%の配列同一性を有する配列を含む。
【0129】
実施形態では、スモールRNAはマイクロRNAである。実施形態では、スモールRNAはsiRNAである。実施形態では、スモールRNAはdsRNAである。実施形態では、スモールRNAはpiRNAである。実施形態では、スモールRNAはリボザイムである。
【0130】
別の態様では、KIF11遺伝子のコード領域を含む改変された細胞であって、KIF11遺伝子が、5’非翻訳領域または3’非翻訳領域のうちの少なくとも1つにおける少なくとも1つの定義された標的配列を欠いている、改変された細胞が提供される。実施形態では、改変された細胞は、KIF11遺伝子の宿主コピーの非コード領域中の少なくとも1つの相補的な領域に結合することができるスモールRNAを発現する。
【0131】
実施形態では、改変された細胞は、当該技術分野において公知の任意の細胞の改変された細胞である。実施形態では、改変された細胞は、改変された骨細胞である。実施形態では、改変された細胞は、改変された軟骨細胞である。実施形態では、改変された細胞は、改変された神経細胞である。実施形態では、改変された細胞は、改変された上皮細胞である。実施形態では、改変された細胞は、改変された筋肉細胞である。実施形態では、改変された細胞は、改変された血液細胞である。実施形態では、改変された細胞は、改変された導電性細胞である。実施形態では、改変された細胞は、改変された結合性細胞である。実施形態では、改変された細胞は、改変された腺細胞である。実施形態では、改変された細胞は、改変された支持性細胞である。
【0132】
実施形態では、改変された細胞は、改変された間葉系幹細胞である。
【0133】
実施形態では、改変された細胞は、それが拡大増殖および/または増殖して、療法において使用することができる細胞のシードストックを作製するように培養される。
【0134】
実施形態では、改変された細胞またはシードストックは、がんを処置するために使用される。実施形態では、改変された細胞またはシードストックは、本明細書に記載のがんのいずれかを処置するために使用される。
【0135】
実施形態では、改変された細胞またはシードストックは、腫瘍を処置するために使用される。実施形態では、腫瘍は固形腫瘍である。実施形態では、腫瘍は良性腫瘍である。実施形態では、腫瘍は転移性腫瘍である。実施形態では、腫瘍は流体充満(fluid-filled)腫瘍である。
【0136】
実施形態では、改変された細胞またはシードストックは、改変された細胞またはシードストックとは異なる細胞または細胞の群を処置するために使用される。
【0137】
実施形態では、改変された細胞またはシードストックは、細胞療法において使用される。実施形態では、細胞療法は同種異系細胞療法である。実施形態では、細胞療法は自家細胞療法である。
【0138】
実施形態では、改変された細胞中で外因的に発現されるKIF11遺伝子は、5’非翻訳領域中の少なくとも1つの定義された標的配列を欠いている。実施形態では、改変された細胞中で外因的に発現されるKIF11遺伝子は、3’非翻訳領域中の少なくとも1つの定義された標的配列を欠いている。実施形態では、改変された細胞中で外因的に発現されるKIF11遺伝子は、5’非翻訳領域および3’非翻訳領域の両方における少なくとも1つの定義された標的配列を欠いている。
【0139】
実施形態では、改変された細胞中で外因的に発現されるKIF11遺伝子は、非翻訳領域中に、1つより多くの定義された標的配列を欠いており、例えば、2個の定義された標的配列を欠いており、3個の定義された標的配列を欠いており、4個の定義された標的配列を欠いており、5個の定義された標的配列を欠いており、6個の定義された標的配列を欠いており、7個の定義された標的配列を欠いており、8個の定義された標的配列を欠いており、9個の定義された標的配列を欠いており、または10個の定義された標的配列を欠いている。実施形態では、改変された細胞中で外因的に発現されるKIF11遺伝子は、10個より多くの定義された標的配列を欠いている。
【0140】
実施形態では、改変された細胞中で外因的に発現されるKIF11遺伝子は、KIF11遺伝子の宿主コピーと比べてその非コード配列の部分中にバリアントを含む。実施形態では、バリアントは、KIF11のヌクレオチド配列中の置換を含む。実施形態では、バリアントは、KIF11のヌクレオチド配列中の欠失を含む。実施形態では、バリアントは、KIF11のヌクレオチド配列への付加を含む。実施形態では、バリアントは、第1のヌクレオチド配列の3’非翻訳領域中にある。実施形態では、バリアントは、改変された細胞中で外因的に発現されるKIF11遺伝子の5’非翻訳領域中にある。実施形態では、バリアントは、KIF11遺伝子が少なくとも1つの標的配列(例えば、その配列部分)を欠くことを引き起こす。
【0141】
実施形態では、改変された細胞中で外因的に発現されるKIF11遺伝子は、配列番号4と少なくとも80%、81%、82%、83%、84%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、または100%の同一性を有する配列を含む。
【0142】
実施形態では、制御性RNAはshRNAである。実施形態では、shRNAは、配列番号1、配列番号2、および配列番号3のうちの少なくとも1つと少なくとも80%、81%、82%、83%、84%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、または100%の配列同一性を有する配列を含む。
【0143】
実施形態では、スモールRNAはsiRNAである。実施形態では、スモールRNAはマイクロRNAである。実施形態では、スモールRNAはdsRNAである。実施形態では、スモールRNAはpiRNAである。実施形態では、スモールRNAはリボザイムである。
【0144】
実施形態では、スモールRNAは、遺伝子の3’非翻訳領域への結合を通じてKIF11遺伝子の宿主コピーの発現を阻害する。
【0145】
実施形態では、スモールRNAは、細胞療法の部分としてがん細胞に送達される。実施形態では、細胞療法は自家細胞療法である。実施形態では、細胞療法は同種異系細胞療法である。
【0146】
実施形態では、がん細胞は、当該技術分野において公知の任意の種類のがん細胞である。実施形態では、がん細胞は、本明細書に記載の任意のがんに由来する。
【0147】
実施形態では、スモールRNAは、対照処置と比べてKIF11 mRNA発現における低減を生じさせる。実施形態では、KIF11 mRNA発現における低減は、対照処置と比べて1%またはより大きい、例えば、5%より大きい、10%より大きい、15%より大きい、20%より大きい、20%より大きい、25%より大きい、30%より大きい、35%より大きい、40%より大きい、45%より大きい、50%より大きい、55%より大きい、60%より大きい、70%より大きい、75%より大きい、80%より大きい、85%より大きい、90%より大きい、または95%より大きい。
【0148】
実施形態では、KIF11 mRNA発現における低減は、対照処置と比べて細胞数の低減を生じさせる。実施形態では、細胞数は、1%より大きく、5%より大きく、10%より大きく、15%より大きく、20%より大きく、25%より大きく、30%より大きく、35%より大きく、40%より大きく、45%より大きく、50%より大きく、55%より大きく、60%より大きく、65%より大きく、70%より大きく、75%より大きく、80%より大きく、85%より大きく、90%より大きく、または95%より大きく低減される。
【0149】
別の態様では、(i)スモールRNAおよび(ii)KIF11遺伝子を共発現するレンチウイルスベクターが提供される。実施形態では、スモールRNAは、KIF11遺伝子の宿主コピーを標的化し、レンチウイルスベクターにより発現されるKIF11遺伝子は、スモールRNAに対して抵抗性である。実施形態では、レンチウイルスベクターにより発現されるKIF11遺伝子は切断されている。実施形態では、切断は3’非翻訳領域におけるものである。実施形態では、切断は5’非翻訳領域におけるものである。実施形態では、レンチウイルスベクターにより発現されるKIF11遺伝子は突然変異している。実施形態では、突然変異は3’非翻訳領域中にある。実施形態では、突然変異は5’非翻訳領域中にある。
【0150】
実施形態では、スモールRNAはshRNAである。実施形態では、shRNAは、配列番号1、配列番号2、および配列番号3のうちの少なくとも1つと少なくとも80%、81%、82%、83%、84%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、または100%の配列同一性を有する配列を含む。
【0151】
実施形態では、レンチウイルスベクターは、細胞療法の部分としてがん細胞に送達される。実施形態では、がん細胞は、当該技術分野において公知の任意のがん細胞である。実施形態では、細胞療法は同種異系細胞療法である。実施形態では、細胞療法は自家細胞療法である。
【0152】
実施形態では、KIF11遺伝子は、KIF11遺伝子の宿主コピーと比べてその3’非翻訳領域中に少なくとも1つのバリアントを有する。実施形態では、バリアントは、KIF11遺伝子のヌクレオチド配列中の置換を含む。実施形態では、バリアントは、KIF11遺伝子のヌクレオチド配列中の欠失を含む。実施形態では、バリアントは、KIF11遺伝子のヌクレオチド配列への付加を含む。
【0153】
実施形態では、遺伝材料を有するベクターシステムは2構成成分ベクターシステムである。実施形態では、遺伝材料を有するベクターシステムは3構成成分ベクターシステムである。
【0154】
別の態様では、改変された間葉系幹細胞が提供される。実施形態では、改変された間葉系幹細胞は、KIF11に対する阻害RNAを産生する。実施形態では、改変された間葉系幹細胞は、KIF11の外因性発現を通じてそれらの成長能力を保持する。実施形態では、外因的に発現されるKIF11は、スモールRNAにより標的化され得る非コード配列を欠いている。
【0155】
実施形態では、間葉幹(mesenchymal stems)は、2構成成分レンチウイルスベクターシステムを使用して遺伝子改変される。実施形態では、2構成成分レンチウイルスベクターシステムは、KIF11を標的化する阻害RNAを送達する。実施形態では、2構成成分レンチウイルスベクターシステムは、外因性KIF11遺伝子を送達する。
【0156】
実施形態では、改変された間葉細胞は、腫瘍細胞との細胞間接触に従事することを可能とする特別な特性を有する。実施形態では、細胞間接触は、コネキシンタンパク質により形成される入口を介してがん細胞にKIF11を標的化するスモールRNAの送達を可能とする。
【0157】
がん
本明細書中に提供する組成物および方法は、がんを処置するために使用される。細胞、組織、または標的は、がん細胞であり得、がん性組織であり得、がん性組織を有し得、あるいは疾患または状態を発症していると診断されたまたはそのリスクがある被験体または患者であり得る。ある特定の態様では、細胞は、上皮細胞、内皮細胞、中皮細胞、グリア細胞、間質細胞、または粘膜細胞であり得る。がん細胞集団は、脳細胞、神経細胞、血液細胞、子宮内膜細胞、髄膜細胞、食道細胞、肺細胞、心臓血管細胞、肝細胞、リンパ細胞、乳房細胞、骨細胞、結合組織細胞、脂肪細胞、網膜細胞、甲状腺細胞、腺細胞、副腎細胞、膵臓細胞、胃細胞、腸細胞、腎臓細胞、膀胱細胞、結腸細胞、前立腺細胞、子宮細胞、卵巣細胞、子宮頸部細胞、精巣細胞、脾臓細胞、皮膚細胞、平滑筋細胞、心筋細胞、または横紋筋細胞を含み得るが、これらに限定されず、前述のもののいずれかに由来するがん細胞集団も含むことができ、癌腫、肉腫、骨髄腫、リンパ腫、混合型、または前述のものの混合物の1つまたは複数に関連することもできる。他のさらなる態様では、がんとしては、星状細胞腫、急性骨髄性未分化大細胞リンパ腫、血管肉腫、B細胞リンパ腫、バーキットリンパ腫、乳癌、膀胱癌、頭頸部癌、子宮頸癌、結腸直腸癌、子宮内膜癌、食道扁平上皮癌、ユーイング肉腫、線維肉腫、神経膠腫、膠芽腫、ガストリノーマ、胃癌、胚芽腫、肝細胞癌、カポジ肉腫、ホジキンリンパ腫、喉頭扁平上皮癌、喉頭癌、平滑筋肉腫、脂肪腫、脂肪肉腫、黒色腫、マントル細胞リンパ腫、髄芽腫、中皮腫、粘液線維肉腫、粘膜関連リンパ組織B細胞リンパ腫、多発性骨髄腫、高リスク骨髄異形成症候群、鼻咽腔癌、神経芽腫、神経線維腫、高悪性度非ホジキンリンパ腫、非ホジキンリンパ腫、肺癌、非小細胞肺癌、卵巣癌、食道癌、骨肉腫、膵臓癌、褐色細胞腫、前立腺癌、腎細胞癌、網膜芽腫、横紋筋肉腫、唾液腺腫瘍、シュワン細胞腫(Schwanomma)、小細胞肺がん、頭頸部の扁平上皮癌、精巣腫瘍、甲状腺癌、尿路上皮癌、およびウィルムス腫瘍が挙げられるが、これらに限定されない。
【0158】
本明細書中に提供する組成物および方法は、NSCLC(非小細胞肺がん)、小児悪性疾患、ヒトパピローマウイルス(HPV)によって惹起または助長される子宮頸部およびその他の腫瘍、黒色腫、バレット食道(前悪性症候群)、副腎がん、および皮膚がん、ならびに自己免疫疾患、腫瘍性皮膚疾患を処置するためにも使用される。
【0159】
遺伝子医薬
遺伝子医薬は、疾患の治療または予防を目的として、遺伝子構築物を宿主細胞に送達するために使用されるウイルスベクターへの言及を含む。遺伝子薬としては、細胞が該細胞への遺伝子構築物の送達を通じて改変されている細胞療法が挙げられる。
【0160】
遺伝子構築物には、既存の欠陥を修正または補完する機能的遺伝子または遺伝子の一部、調節タンパク質をコードするDNA配列、アンチセンス、低分子相同性RNA(short homology RNA)、長い非コードRNA、低分子干渉RNAまたはその他を含む制御性RNA分子をコードするDNA配列、ならびに病状を変化させるために、重大な細胞因子について競合するように設計されたRNAまたはタンパク質のいずれかをコードするデコイ配列が含まれ得るが、これらに限定されない。遺伝子構築物としては、遺伝子発現をノックダウンすることができる調節配列をコードまたは発現する構築物が挙げられる。遺伝子医薬は、特定の疾患の処置または緩和を与えるために、直接的にまたは細胞療法を介してのいずれかでこれらの治療的遺伝子構築物を標的細胞へ送達することを含む。
治療ベクター
【0161】
本明細書における種々の態様および実施形態に従うレンチウイルスのビリオン(粒子)は、ビリオン(ウイルス粒子)を産生するために必要なウイルスタンパク質をコードするベクターシステムによって発現される。種々の実施形態では、レンチウイルスのPolタンパク質をコードする核酸配列を含有する1つのベクターは、プロモーターに作動可能に連結されて、逆転写および組込みのために提供される。別の実施形態では、polタンパク質は、複数のベクターによって発現される。別の実施形態では、プロモーターに作動可能に連結された、ウイルスカプシドを形成するためのレンチウイルスのGagタンパク質をコードする核酸配列を含有するベクターが提供される。実施形態では、このgagの核酸配列は、polの核酸配列の少なくとも一部とは別のベクター上にある。他の実施形態では、gagの核酸は、polタンパク質をコードする全てのpolの核酸配列とは別のベクター上にある。
【0162】
野生型復帰変異体を得る機会をさらに最小化するための粒子の作製に使用される多数の改変を、本明細書におけるベクターに対して行うことができる。これらとしては、LTRのU3領域の欠失、tatの欠失、およびマトリックス(MA)の欠失が挙げられるが、これらに限定されない。実施形態では、gag、pol、およびenvのベクターは、レンチウイルスパッケージング配列と称される、レンチウイルスRNAをパッケージングするレンチウイルスゲノム由来のヌクレオチドを含有しない。
【0163】
粒子を形成するベクターは、好ましくは、エンベロープタンパク質を発現するレンチウイルスゲノム由来の核酸配列を含有しない。好ましくは、プロモーターに作動可能に連結されたエンベロープタンパク質をコードする核酸配列を含有する別のベクターが使用される。このenvベクターもまた、レンチウイルスパッケージング配列を含有しない。一実施形態では、envの核酸配列は、レンチウイルスのエンベロープタンパク質をコードする。
【0164】
別の実施形態では、エンベロープタンパク質は、レンチウイルス由来のものではなく、異なるウイルスに由来する。そのような例では、生じる粒子は、シュードタイプ化粒子と称される。エンベロープの適切な選択により、実質的にあらゆる細胞に「感染」することができる。例えば、エンドサイトーシス区画を標的化するエンベロープタンパク質をコードするenv遺伝子を使用することができる。そのようなenv遺伝子およびエンベロープタンパク質が由来し得るウイルスの例としては、インフルエンザウイルス(例えば、インフルエンザAウイルス、インフルエンザBウイルス、インフルエンザCウイルス、インフルエンザDウイルス、イサウイルス、クアランジャウイルス、およびトゴトウイルス)、ベシクロウイルス(例えば、インディアナベシクロウイルス)、アルファウイルス(数ある中でも例えば、セムリキフォレストウイルス、シンドビスウイルス、アウラウイルス、バーマフォレストウイルス、ベバルウイルス、カバソウウイルス(Cabassou virus)、ゲタウイルス、ハイランズJウイルス、トロカラウイルス(Trocara virus)、ウナウイルス、ヌドゥムウイルス、およびミドルブルグウイルス)、アレナウイルス(例えば、リンパ球性脈絡髄膜炎ウイルス、マチュポウイルス、フニンウイルスおよびラッサ熱ウイルス)、フラビウイルス(数ある中でも例えば、ダニ媒介性脳炎ウイルス、デングウイルス、C型肝炎ウイルス、GBウイルス、アポイウイルス、バガザウイルス、エッジヒルウイルス、ジュグラウイルス(Jugra virus)、カダムウイルス(Kadam virus)、ダカールコウモリウイルス、モドックウイルス、ポワッサンウイルス、ウスツウイルス、およびサルビエハウイルス(Sal Vieja virus))、ラブドウイルス(例えば、水疱性口内炎ウイルス、狂犬病ウイルス)、パラミクソウイルス(例えば、流行性耳下腺炎または麻疹)およびオルトミクソウイルス(例えば、インフルエンザウイルス)が挙げられる。
【0165】
好ましく使用され得る他のエンベロープタンパク質としては、内在性レトロウイルス(例えば、ネコ内在性レトロウイルスおよびヒヒ内在性レトロウイルス)ならびに密接に関連するガンマレトロウイルス(数ある中でも例えば、モロニー白血病ウイルス、MLV-E、MLV-A、テナガザル白血病ウイルス、GALV、ネコ白血病ウイルス、コアラレトロウイルス、トレーガーアヒル脾臓壊死ウイルス、クサリヘビレトロウイルス、ヒヨコ合胞体ウイルス(Chick syncytial virus)、ガードナー-アーンスタインネコ肉腫ウイルス、およびブタC型がんウイルス)に由来するものが挙げられる。これらのガンマレトロウイルスは、初代細胞を標的化するためのenv遺伝子およびエンベロープタンパク質の供給源として使用することができる。宿主細胞が初代細胞である場合、ガンマレトロウイルスは特に好ましい。
【0166】
エンベロープタンパク質は、特定の所望の宿主細胞を標的化するために選択することができる。例えば、ドーパミン受容体などの特定の受容体を標的化することは、脳送達のために使用することができる。別の標的は血管内皮であり得る。これらの細胞は、フィロウイルス科の任意のウイルス(例えば、クウェバウイルス、ディアンロウイルス(Dianloviruses)、エボラウイルス、およびマールブルグウイルス)に由来するエンベロープタンパク質を使用して標的化することができる。エボラウイルスの種としては、タイフォレストエボラウイルス、ザイールエボラウイルス、スーダンエボラウイルス、ブンディブギョエボラウイルス、およびレストンエボラウイルスが挙げられる。
【0167】
追加的に、実施形態では、糖タンパク質は、転写後修飾を起こすことができる。例えば、一実施形態では、エボラのGPは、翻訳後に修飾されてGP1およびGP2糖タンパク質になることができる。別の実施形態では、シュードタイプ化エンベロープを有する異なるレンチウイルスカプシドを使用することができる(例えば、FIVまたはSHIV[米国特許第5,654,195号])。SHIVシュードタイプ化ベクターは、サルなどの動物モデルにおいて容易に使用することができる。
【0168】
本明細書中で提供される通りのレンチウイルスベクターシステムは、通常、gag遺伝子、pol遺伝子、またはrev遺伝子のうちの少なくとも1つを含む少なくとも1つのヘルパープラスミドを含む。gag遺伝子、pol遺伝子、およびrev遺伝子のそれぞれが個々のプラスミド上に提供されてもよいし、あるいは1つまたは複数の遺伝子が一緒に同一のプラスミド上に提供されてもよい。一実施形態では、gag遺伝子、pol遺伝子、およびrev遺伝子は、同一のプラスミド上に提供される(例えば、
図1)。別の実施形態では、gag遺伝子およびpol遺伝子は第1のプラスミド上に提供され、rev遺伝子は第2のプラスミド上に提供される(例えば、
図2)。したがって、3ベクターシステムおよび4ベクターシステムの両方が、本明細書中に記載するようなレンチウイルスを製造するために使用され得る。実施形態では、治療ベクター、少なくとも1つのエンベローププラスミド、および少なくとも1つのヘルパープラスミドは、パッケージング細胞、例えば、パッケージング細胞株中にトランスフェクトされる。パッケージング細胞株の非限定的な例は、293T/17 HEK細胞株である。治療ベクター、エンベローププラスミド、および少なくとも1つのヘルパープラスミドがパッケージング細胞株中にトランスフェクトされた時に、レンチウイルス粒子が最終的に生産される。
【0169】
別の態様では、レンチウイルス粒子を発現するためのレンチウイルスベクターシステムが開示される。システムは、本明細書中に記載するレンチウイルスベクター、細胞に感染するために最適化されたエンベロープタンパク質を発現するためのエンベローププラスミド、ならびにgag遺伝子、pol遺伝子、およびrev遺伝子を発現するための少なくとも1つのヘルパープラスミドを含み、レンチウイルスベクター、エンベローププラスミド、および少なくとも1つのヘルパープラスミドがパッケージング細胞株中にトランスフェクトされた時に、レンチウイルス粒子がパッケージング細胞株によって生産され、レンチウイルス粒子は、KIF11の生産を阻害し、かつ/または内因性KIF11の発現を阻害することができる。
【0170】
別の態様では、また
図1および
図2に詳述されるように、治療ベクターとしても本明細書において言及されるレンチウイルスベクターは、以下のエレメントを含み得る:ハイブリッド5’末端反復配列(RSV/5’LTR)(配列番号5および配列番号6)、プサイ配列(RNAパッケージング部位)(配列番号7)、RRE(Rev応答エレメント)(配列番号8)、cPPT(ポリプリントラクト)(配列番号9)、H1プロモーター(配列番号10)、KIF11のshRNA(配列番号1、配列番号2または配列番号3)、ウッドチャック転写後調節エレメント(WPRE)(配列番号11)、および3’デルタLTR(配列番号12)。別の態様では、置換、欠失、付加、または変異による配列変化が、本明細書中で言及する配列を改変するために使用され得る。
【0171】
別の態様では、本明細書において治療ベクターとも称され得るレンチウイルスベクターは、以下のエレメント:5’長鎖末端反復配列、RRE(Rev応答エレメント)、cPPT(ポリプリントラクト)、H1プロモーター、KIF11 shRNA、CMVプロモーター、IgG1 Fcと融合したトランスフェリン受容体膜貫通領域、ウッドチャック転写後調節エレメント(WPRE)、および3’デルタLTRを含むことができる。
【0172】
別の態様では、本明細書中に詳述するように、ヘルパープラスミドは、以下のエレメントを含むように設計されている:CAGプロモーター(配列番号13)、HIV構成成分gag(配列番号14)、HIV構成成分pol(配列番号15)、HIVのInt(配列番号16)、HIVのRRE(配列番号17)、およびHIVのRev(配列番号18)。
【0173】
別の態様では、ヘルパープラスミドは、以下のエレメント:CMVエンハンサー、ニワトリベータアクチンプロモーター、ウサギベータグロビンイントロン、HIV構成成分gag、HIV構成成分pol、HIV Int、HIV RRE、HIV Rev、およびウサギベータグロビンポリAを含むように設計されている。
【0174】
別の態様では、ヘルパープラスミドは、gag遺伝子およびpol遺伝子を発現するための第1のヘルパープラスミド、ならびにrev遺伝子を発現するための第2の別のプラスミドを含むように改変され得る。別の態様では、置換、欠失、付加、または変異による配列変化が、本明細書中で言及する配列を改変するために使用され得る。
【0175】
別の態様では、レンチウイルスのパッケージングのために使用されるプラスミドは、類似のエレメントを用いて改変することができ、また、イントロン配列は、ベクター機能を失うことなく取り除くことが可能であり得る。例えば、以下のエレメントは、パッケージングシステムを構成するプラスミド中の類似のエレメントの代わりとなり得る:伸長因子-1(EF-1)、ホスホグリセリン酸キナーゼ(PGK)、およびユビキチンC(UbC)プロモーターは、CMVプロモーターまたはCAGプロモーターの代わりとなり得る。SV40ポリAおよびbGHポリAは、ウサギベータグロビンポリAの代わりとなり得る。ヘルパープラスミド中のHIV配列は、異なるHIVの株またはクレードから構築され得る。VSV-G糖タンパク質は、HERV-Wを含むヒト内因性レトロウイルス、ヒヒ内因性レトロウイルスBaEVネコ内因性ウイルス(RD114)、テナガザル白血病ウイルス(GALV)、狂犬病(FUG)、リンパ球性脈絡髄膜炎ウイルス(LCMV)、A型インフルエンザ家禽ペストウイルス(influenza A fowl plague virus)(FPV)、ロスリバーアルファウイルス(RRV)、マウス白血病ウイルス10A1(MLV)、またはエボラウイルス(EboV)由来の膜糖タンパク質で置換することができる。
【0176】
なお、レンチウイルスパッケージングシステムは市販のものを入手でき(例えば、Lenti-vpak packaging kit、OriGene Technologies,Inc.、Rockville、MD)、また本明細書中に記載するように設計することもできる。さらに、レンチウイルスパッケージングシステムの態様を置換または改変して、レンチウイルス粒子の生産効率などのいくつもの関連因子を向上させることは当業者の技術的範囲内である。
【0177】
別の態様では、アデノ随伴ウイルス(AAV)ベクターもまた使用することができる。
【0178】
AAVベクターの構築。KIF11配列(配列番号4)またはKIF11 shRNA配列(例えば、配列番号1、配列番号2、もしくは配列番号3)をpAAVプラスミド(Cell Biolabs)に挿入することができる。BamHIおよびEcoRI制限部位を含有するKIF11オリゴヌクレオチド配列をEurofins MWG Operonにより合成する。重複するセンスおよびアンチセンスオリゴヌクレオチド配列を混合し、70℃から室温へと冷却しながらアニーリングさせる。37℃で1時間、制限酵素BamHIおよびEcoRIを用いてpAAVを消化する。消化したpAAVプラスミドをアガロースゲル電気泳動により精製し、Thermo ScientificのDNAゲル抽出キットを使用してゲルから抽出する。DNA濃度を決定し、ベクターをオリゴに混合し(3:1の比)、アニーリングおよびライゲートさせる。ライゲーション反応は、室温で30分間、T4 DNAリガーゼを用いて行う。2.5マイクロリットルのライゲーション混合物を25マイクロリットルのSTBL3コンピテント細菌細胞に加える。42℃での熱ショック後に形質転換は達成される。アンピシリンを含有する寒天プレート上に細菌細胞を広げ、薬物抵抗性コロニー(アンピシリン抵抗性プラスミドの存在を指し示す)を回収し、LBブロス中で拡大増殖させる。オリゴ配列の挿入を確認するために、Thermo ScientificのDNAミニプレップキットを用いて、回収した細菌培養物からプラスミドDNAを抽出する。pAAVプラスミド中へのshRNA配列の挿入は、shRNAの発現を調節するために使用されるプロモーター用の特異的プライマーを使用してDNAシークエンシングにより検証する。
【0179】
AAV粒子の産生。AAV-KIF11 shRNAプラスミドをプラスミドpAAV-RC2(Cell Biolabs)およびpHelper(Cell Biolabs)と合わせる。pAAV-RC2プラスミドはRepおよびAAV2カプシド遺伝子を含有し、pHelperはアデノウイルスE2A、E4、およびVA遺伝子を含有する。AAV粒子を産生するために、これらのプラスミドを比1:1:1(pAAV-shKIF11:pAAV-RC2:pHelper)で293T細胞にトランスフェクトする。150mmディッシュ(BD Falcon)中での細胞のトランスフェクションのために、10マイクログラムの各プラスミドを1mlのDMEMに共に加える。別のチューブ中で、60マイクロリットルのトランスフェクション試薬PEI(1マイクログラム/ml)(Polysciences)を1mlのDMEMに加える。2つのチューブを共に混合し、15分間インキュベートさせる。次いでトランスフェクション混合物を細胞に加え、細胞を3日後に収集する。凍結/解凍溶解により細胞をドライアイス/イソプロパノールに溶解する。37℃で30分間、ベンゾナーゼヌクレアーゼ(Sigma)を細胞溶解液に加える。4℃で15分間の12,000rpmでの遠心分離により細胞デブリを次いでペレット化する。上清を収集した後、標的細胞に加える。
投薬量および剤形
間葉系幹細胞
【0180】
実施形態では、ベクター組成物は間葉系幹細胞(MSC)に投与され得る。MSCは、骨髄、胎盤、および臍帯などの複数の供給源から単離され得る。単離の後に、MSCは遺伝子改変され、拡大増殖されてシードストックが作製される。シードストックは次いで、自家または同種異系細胞療法において使用され得る。MSCの単離の方法、MSCの拡大増殖、およびMSCの投与は以下に記載される。
【0181】
MSCの単離および拡大増殖:MSCを単離および拡大増殖するための多数の方法が当該技術分野において公知である。実施形態では、MSCは胎盤から単離され、胎盤を満期新生児のための選択的帝王切開による出産後に回収する。胎盤をリン酸緩衝食塩水(PBS)中で洗浄し、母系脱落膜を除去する。約1cm3または4グラムの湿潤重量の組織部分を胎児境界部の絨毛から解剖する。組織部分を再びPBS中で洗浄し、1mg/mlのコラゲナーゼA溶液を用いて37℃で60分間処理する。消化した材料を遠心分離により収集し、トリプシン/EDTA溶液に37℃で10分間再懸濁する。トリプシン処理した材料を再び遠心分離により収集し、1回洗浄し、1%のペニシリン-ストレプトマイシン溶液+5mMのL-グルタミンを含むBio-AMF-1培地(Biological Industries、Israel)に再懸濁する。細胞をT-25培養フラスコに移し、加湿雰囲気中37℃で5%のCO2と共にインキュベートする。MSCがT-25フラスコ中でコンフルエンスに達した時に、それらをトリプシン/EDTAで処理してプラスチックに結合した細胞を解放させ、培地で希釈し、新たなT-25フラスコ中に再プレーティングする。
【0182】
当該技術分野において公知のMSCを単離および拡大増殖する他の方法を使用することができる。MSCを単離および拡大増殖するための詳細なプロトコールは以下の参考文献に記載されており、これらは参照により全体が本明細書に援用される:(i)Huang
Q, Yang Y, Luo C, Wen Y, Liu R, Li S, Chen T, Sun H, and Tang L. 2019. An efficient protocol to generate placental chorionic plate-derived mesenchymal stem cells with superior proliferative and immunomodulatory properties. Stem Cell Research & Therapy 10:301、(ii)Hassan G, Kasem I, Antaki, R, Mohammad MB, AlKadry R, and Aljamali M. 2019. Isolation of umbilical cord mesenchymal stem cells using blood derivatives accompanied with explant method. Stem Cell Investigation 6:29。
【0183】
MSCの表現型の同定:MSC表現型は起源の組織にしたがって変動する。絨毛MSCについて、細胞素性の主要な表現型マーカーとしては、CD44、CD73、CD105、CD90、アルファ-SMA、およびStro-1が挙げられる。これらの細胞表面マーカーを検出するための抗体染色およびフローサイトメトリーはMSCの存在を裏付け、絨毛MSCに最も類似した細胞の画分をさらに指し示す。遺伝子発現の特定のパターンもまたMSCについて同定されている。絨毛MSCはSOX-2を発現するがNANOGもPOU5F1も発現しない。これらの遺伝子の3つ全ての発現は、胚性幹細胞多能性の共通のマーカーであり、SOX-2に限定された発現はMSCの部分的に多能性の表現型と合致する。
【0184】
レンチウイルスベクターの生産:レンチウイルスベクターは、ビリオン酵素および構造タンパク質、エンベロープ糖タンパク質、ならびに治療用導入遺伝子をコードする3つ(実験室の目的のため)または4つ(臨床使用のため)のプラスミドをトランスフェクトしたパッケージング細胞から生産される。典型的には、エンベロープ糖タンパク質は、水疱性口内炎ウイルスからの糖タンパク質Gである。VSV-Gを補完した典型的なレンチウイルスベクターは、MSC形質導入および安定な遺伝子改変のために好適である。
【0185】
MSCのレンチウイルスベクター遺伝子改変:MSCの遺伝子改変のためのいくつかのアプローチが当該技術分野において公知である。レンチウイルスベクターはMSCの安定な遺伝子改変のための好ましい方法であり、骨髄由来および他の種類のMSCの短期および長期培養において評価されている。マーカータンパク質(緑色または赤色蛍光タンパク質)およびピューロマイシンアセチルトランスフェラーゼ(ピューロマイシンへの抵抗性を付与する)の両方を発現するレンチウイルスベクターの作製は、表現型変化、細胞モビリティの変更、または長期培養における細胞増幅の能力についての多数の試験後に非改変MSCと同一であるらしい遺伝子改変されたMSCの薬物選択を可能とする。
【0186】
レンチウイルスベクター粒子形質導入は、3つのステップにおいて行うことができる:
【0187】
ステップ1:コンフルエントなMSCをトリプシン処理し、1:3で希釈し、2日間再プレーティングする。
【0188】
ステップ2:PBS+8ug/mLのポリブレン中のレンチウイルスベクターストックをMSC細胞単層上に4時間重層し、次いで細胞を培地ですすぐことにより除去する。
【0189】
ステップ3:規定された長さの期間にわたりMSCを培養する。期間は、適宜、1日未満、1日、または1日より長くであり得る。
【0190】
ステップ4:トリプシン溶液を用いてMSCをプレートから剥がし、形質導入の効率を測定するDNA、RNA、またはタンパク質抽出のために使用する。
【0191】
ほとんどのレンチウイルスベクターについて、5に等しい多重感染度を有する形質導入は、>80%のMSCが遺伝子改変されることを生じさせる。改変は安定であり、導入遺伝子発現は多くの世代にわたり持続する。
【0192】
臨床使用のための遺伝子改変されたMSCの大規模製造のために、1000万~5000万の形質導入されたMSCを含有するシードストックを連続継代を通じて拡大し、懸濁培養に適合させる。最終の細胞培養体積は100~200Lに達し得、細胞収率は5×109/リットルに接近し得る。細胞を遠心分離および/または濾過により回収し、洗浄し、in vivo投与のために培地に再懸濁する。MSCの大規模拡大増殖は、GMP条件下で200Lまでの懸濁培養物中で行うことができる。
細胞組成物(細胞療法)の投与
【0193】
MSCの遺伝子改変および拡大増殖は、シードストックの作製を生じさせ、これを次いで細胞療法の部分として使用することができる。対象は、同種異系または自家細胞療法を投与され得る。
【0194】
細胞療法は、1日に1回または2回、あるいは任意のその他の好適な期間で定期的に投与され得る。例えば、細胞組成物は、週に1回、2週間に1回、3週間に1回、1カ月に1回、2カ月毎、3カ月毎、6カ月毎、9カ月毎、1年に1回、18カ月毎、2年毎、30カ月毎、または3年毎に、必要とする被験体に投与され得る。
【0195】
実施形態では、細胞組成物は、医薬組成物として投与される。実施形態では、医薬組成物は、多様な剤形に製剤化され得、これらの剤形としては、臨床適用のための経鼻、経肺、経口、局所、または非経口の剤形が挙げられるが、これらに限定されない。各剤形は、様々な可溶化剤、崩壊剤、界面活性剤、充填剤、増粘剤、結合剤、湿潤剤などの希釈剤、またはその他の薬学的に許容される賦形剤を含み得る。医薬組成物は、注射、ガス注入(insufflation)、注入、または皮内曝露用にも製剤化され得る。例えば、注射製剤は、好適なpHおよび張度の水性または非水性の溶液中に細胞組成物を含み得る。
【0196】
細胞組成物は、腫瘍部位中へのまたは感染部位における直接の注射を介して被験体に投与され得る。実施形態では、細胞組成物は、全身投与され得る。実施形態では、細胞組成物は、腫瘍または感染の部位のすぐ周囲の組織へのガイドされたカニューレ挿入を介して投与され得る。
【0197】
細胞組成物は、例えば、鼻腔内投与、口腔内投与、舌下投与、経口投与、直腸投与、眼投与、非経口(静脈内、皮内、筋肉内、皮下、腹腔内)投与、経肺投与、腟内投与、局所投与、局部投与、乱切後の局部投与、粘膜投与、エアロゾルを介して、アガロースまたはゼラチンなどの半固体媒体中で、あるいは口腔内または経鼻噴霧製剤を介してなど、任意の薬学的に許容される方法を使用して投与され得る。
【0198】
さらに、細胞組成物は、例えば、カプセル剤、液体分散物、ゲル剤、エアロゾル剤、肺エアロゾル剤、鼻エアロゾル剤、軟膏剤、クリーム剤、半固体剤形、液剤、乳剤、および懸濁剤などの任意の薬学的に許容される剤形に製剤化され得る。さらに、医薬組成物は、経皮送達システムであり得る。
【0199】
実施形態では、医薬組成物は、舌下剤形または口腔内剤形として製剤化され得る。そのような剤形は、舌下に投与される舌下錠または舌下溶液組成物を含む。
【0200】
実施形態では、医薬組成物は、経鼻剤形として製剤化され得る。そのような剤形としては、経鼻送達用の溶液組成物、懸濁物組成物、およびゲル組成物が挙げられる。
【0201】
実施形態では、医薬組成物は、懸濁剤、乳剤、またはシロップ剤などの経口投与用の液体剤形として製剤化され得る。実施形態では、液体剤形は、水および液体パラフィンなどの一般に使用される単純な希釈剤に加えて、保湿剤、甘味剤、芳香剤、または防腐剤などの様々な賦形剤を含み得る。実施形態では、医薬組成物は、小児患者への投与のために好適となるように製剤化され得る。
【0202】
実施形態では、医薬組成物は、滅菌水性液剤、懸濁剤、乳剤、非水性液剤、または坐剤などの非経口投与用剤形として製剤化され得る。
【0203】
医薬組成物の投与量は、患者の体重、年齢、性別、投与の時間および様式、排泄速度、ならびに疾患の重篤度に応じて変化し得る。
【0204】
実施形態では、がんの処置は、針を使用した腫瘍中への細胞組成物のガイド下の直接注射、または血管内カニューレ挿入によって達成される。実施形態では、ベクター組成物は、静脈もしくは動脈へのカニューレ挿入または注射、皮内送達、筋肉内送達、または疾患部位近くの排液臓器(draining organ)中への注射によって、脳脊髄液、血液、またはリンパ循環中に投与される。
【実施例0205】
以下の実施例は、本発明の実施形態の態様の実例を挙げるために与えたものである。しかしながら、実施形態は、これらの実施例に記載する特定の条件または詳細に限定されないことを理解するべきである。本明細書中で参照する全ての出版物は、参照することにより具体的に組み込まれる。
【0206】
(実施例1:レンチウイルスベクターシステムの開発)
図1および
図2に要約するように、レンチウイルスベクターシステムを開発した(環状形態)。治療ベクター、エンベローププラスミド、およびヘルパープラスミドのトランスフェクション後に、293T/17 HEK細胞(American Type Culture Collection、Manassas、VAより購入)中でレンチウイルス粒子を生産した。293T/17 HEK細胞のトランスフェクションにより、機能的なウイルス粒子が生産できる。このトランスフェクションには、プラスミドDNAの取込み効率を増加させるために試薬ポリ(エチレンイミン)(PEI)を使用する。最初に、血清を含まない培養培地中にプラスミドおよびDNAを3:1の比(DNAに対するPEIの質量比)で別々に加える。2~3日後、細胞培地を回収し、高速遠心分離および/または濾過とその後の陰イオン交換クロマトグラフィーによってレンチウイルス粒子を精製する。レンチウイルス粒子の濃度は、形質導入単位/ml(TU/ml)で表すことができる。TUの決定は、培養液中のHIV p24レベルの測定(p24タンパク質はレンチウイルス粒子中に組み込まれる)、定量PCRによる細胞あたりのウイルスDNAコピー数の測定、または細胞の感染および光の使用(ベクターがルシフェラーゼまたは蛍光タンパク質マーカーをコードする場合)によって達成する。
【0207】
上記の通り、3プラスミドシステム(すなわち、2プラスミドのレンチウイルスパッケージングシステム)をレンチウイルス粒子を生産するために設計した。3プラスミドシステムの概略図を
図1に示す。
図1に関して簡潔に述べれば、一番上のベクターはヘルパープラスミドであり、これはこの場合、Revを含み、中央に見られるベクターはエンベローププラスミドであり、一番下のベクターは、本明細書中に記載する治療ベクターである。
【0208】
図1をより詳細に参照して、ヘルパープラスRevプラスミドは、CAGエンハンサー(配列番号19)、CAGプロモーター(配列番号13)、ニワトリベータアクチンイントロン(配列番号20)、HIV gag(配列番号14)、HIV Pol(配列番号15)、HIV Int(配列番号16)、HIV RRE(配列番号17)、HIV Rev(配列番号18)、およびウサギベータグロビンポリA(配列番号21)を含む。ヘルパープラスRevプラスミドは、CMVエンハンサー、ニワトリベータアクチンプロモーター、ウサギベータグロビンイントロン、HIV gag、HIV Pol、HIV Int、HIV RRE、HIV Rev、およびウサギベータグロビンポリAを含む。
【0209】
エンベローププラスミドは、CMVプロモーター(配列番号22)、ベータグロビンイントロン(配列番号23)、VSV-G(配列番号24)、およびウサギベータグロビンポリA(配列番号25)を含む。
【0210】
ヘルパー(プラスRev)プラスミドおよびエンベローププラスミドを含む2ベクターレンチウイルスパッケージングシステムの合成
【0211】
材料および方法:
ヘルパープラスミドの構築:Gag、Pol、およびインテグラーゼ遺伝子を含有するpNL4-3 HIVプラスミド(NIH Aids Reagent Program)由来のDNA断片の初期PCR増幅によってヘルパープラスミドを構築した。pCDNA3プラスミド(Invitrogen)中の同じ部位に挿入するために使用され得るEcoRIおよびNotI制限部位を有する断片を増幅するためのプライマーを設計した。フォワードプライマーは(5’-TAAGCAGAATTCATGAATTTGCCAGGAAGAT-3’)(配列番号44)であり、リバースプライマーは(5’-CCATACAATGAATGGACACTAGGCGGCCGCACGAAT-3’)(配列番号45)であった。
【0212】
Gag、Pol、インテグラーゼの断片の配列は以下の通りであった:
【化1-1】
【化1-2】
【化1-3】
【0213】
次に、XbaIおよびXmaI隣接制限部位と共にRev、RRE、およびウサギベータグロビンポリAの配列を含有するDNA断片は、MWG Operonによって合成された。次いで、XbaIおよびXmaI制限部位においてDNA断片をプラスミドに挿入した。DNA配列は以下の通りであった:
【化2-1】
【化2-2】
【0214】
最後に、pCDNA3.1のCMVプロモーターをCAGエンハンサー/プロモータープラスニワトリベータアクチンイントロン配列で置換した。MluIおよびEcoRI隣接制限部位と共にCAGエンハンサー/プロモーター/イントロン配列を含有するDNA断片は、MWG Operonによって合成された。次いで、MluIおよびEcoRI制限部位においてDNA断片をプラスミドに挿入した。DNA配列は以下の通りであった:
【化3-1】
【化3-2】
【0215】
VSV-Gエンベローププラスミドの構築:
水疱性口内炎インディアナウイルス糖タンパク質(VSV-G)配列は、隣接EcoRI制限部位を用いてMWG Operonによって合成された。次いで、EcoRI制限部位においてDNA断片をpCDNA3.1プラスミド(Invitrogen)に挿入し、CMV特異的プライマーを使用するシークエンシングによって正しい配向であることを決定した。DNA配列は以下の通りであった:
【化4-1】
【化4-2】
【0216】
本明細書中に記載する方法および材料を使用して、4ベクターシステム(すなわち、3ベクターレンチウイルスパッケージングシステム)も設計し、生産した。4ベクターシステムの概略図を
図2に示す。
図2に関して簡潔に述べれば、上のベクターはヘルパープラスミドであり、これはこの場合、Revを含まず、上から2つ目のベクターは別個のRevプラスミドであり、下から2つ目のベクターはエンベローププラスミドであり、下のベクターは、前に記載した治療ベクターである。
【0217】
図1に示されるように、ヘルパープラスミドは、CAGエンハンサー(配列番号19)、CAGプロモーター(配列番号13)、ニワトリベータアクチンイントロン(配列番号20)、HIV gag(配列番号14)、HIV Pol(配列番号15)、HIV Int(配列番号16)、HIV RRE(配列番号17)、およびウサギベータグロビンポリA(配列番号21)を含む。ヘルパープラスミドは、CMVエンハンサー、ニワトリベータアクチンプロモーター、ウサギベータグロビンイントロン、HIV gag、HIV Pol、HIV Int、HIV RRE、およびウサギベータグロビンポリAを含む。
【0218】
図2に示すように、Revプラスミドは、RSVプロモーター(配列番号29)、HIV Rev(配列番号18)、およびウサギベータグロビンポリA(配列番号21)を含む。
【0219】
図1および
図2に示されるように、エンベローププラスミドは、CMVプロモーター(配列番号22)、ベータグロビンイントロン(配列番号23)、VSV-G(配列番号24)、およびウサギベータグロビンポリA(配列番号25)を含む。
【0220】
ヘルパープラスミド、Revプラスミド、およびエンベローププラスミドを含む3ベクターシステムの合成
材料および方法:
Revを含まないヘルパープラスミドの構築:
RREおよびウサギベータグロビンポリA配列を含有するDNA断片を挿入することによって、Revを含まないヘルパープラスミドを構築した。この配列は、隣接XbaIおよびXmaI制限部位を用いてMWG Operonによって合成された。次いで、XbaIおよびXmaI制限部位においてRRE/ウサギポリAベータグロビン配列をヘルパープラスミドに挿入した。DNA配列は以下の通りである:
【化5】
【0221】
Revプラスミドの構築:
RSVプロモーターおよびHIV Rev配列は、隣接MfeIおよびXbaI制限部位を用いて、MWG Operonによって単一のDNA断片として合成された。次いで、CMVプロモーターがRSVプロモーターで置換されたMfeIおよびXbaI制限部位において、DNA断片をpCDNA3.1プラスミド(Invitrogen)に挿入した。DNA配列は以下の通りであった:
【化6】
【0222】
2ベクターおよび3ベクターのパッケージングシステムのためのプラスミドは、類似のエレメントを用いて改変することができ、また、イントロン配列は、ベクター機能を失うことなく取り除くことが可能であった。例えば、以下のエレメントは、2ベクターおよび3ベクターのパッケージングシステム中の類似のエレメントの代わりとなることができた:
【0223】
プロモーター:伸長因子-1(EF-1)(配列番号31)、ホスホグリセリン酸キナーゼ(PGK)(配列番号32)、およびユビキチンC(UbC)(配列番号33)は、CMVプロモーター(配列番号22)またはCAGプロモーター(配列番号13)の代わりとなり得る。これらの配列を、付加、置換、欠失、または変異によってさらに変化させることもできる。
【0224】
ポリA配列:SV40ポリA(配列番号34)およびbGHポリA(配列番号35)は、ウサギベータグロビンポリA(配列番号21)の代わりとなり得る。これらの配列を、付加、置換、欠失、または変異によってさらに変化させることもできる。
【0225】
HIV Gag、Pol、およびインテグラーゼ配列:ヘルパープラスミド中のHIV配列は、異なるHIVの株またはクレードから構築することができる。例えば、Bal株由来のHIV Gag(配列番号14)、HIV Pol(配列番号15)、およびHIV Int(配列番号16)を、本明細書中に概説したように、ヘルパー/ヘルパープラスRevプラスミド中に含有されるgag、pol、およびint配列と交換することができる。これらの配列を、付加、置換、欠失、または変異によってさらに変化させることもできる。
【0226】
エンベロープ:VSV-G糖タンパク質は、ネコ内因性ウイルス(RD114)(配列番号36)、テナガザル白血病ウイルス(GALV)(配列番号37)、狂犬病(FUG)(配列番号38)、リンパ球性脈絡髄膜炎ウイルス(LCMV)(配列番号39)、A型インフルエンザ家禽ペストウイルス(FPV)(配列番号40)、ロスリバーアルファウイルス(RRV)(配列番号41)、マウス白血病ウイルス10A1(MLV)(配列番号42)、またはエボラウイルス(EboV)(配列番号43)由来の膜糖タンパク質と置換することができる。これらのエンベロープの配列は、本明細書中の配列の表として特定される。さらに、これらの配列を、付加、置換、欠失、または変異によってさらに変化させることもできる。
【0227】
要約すると、3ベクターシステムと4ベクターシステムとを以下の通りに、部分的に、比較および対比することができる。3ベクターレンチウイルスベクターシステムは以下を含有する:1.ヘルパープラスミド:HIV Gag、Pol、インテグラーゼ、およびRev/Tat;2.エンベローププラスミド:VSV-G/FUGエンベロープ;および3.治療ベクター:RSV 5’LTR、プサイパッケージングシグナル、Gag断片、RRE、Env断片、cPPT、WPRE、および3’δ LTR。4ベクターレンチウイルスベクターシステムは以下を含有する:1.ヘルパープラスミド:HIV Gag、Pol、およびインテグラーゼ;2.Revプラスミド:Rev;3.エンベローププラスミド:VSV-G/FUGエンベロープ;および4.治療ベクター:RSV 5’LTR、プサイパッケージングシグナル、Gag断片、RRE、Env断片、cPPT、WPRE、および3’デルタLTR。上記エレメントと対応する配列は、本明細書中の配列表の部分として特定される。
(実施例2)
ヒトKIF11(Eg5)非翻訳領域を標的化するレンチウイルス粒子送達性shRNAベースRNA干渉はKIF11 mRNAの有意に低減したレベルを生じさせる。
【0228】
H1プロモーターならびに非標的化shRNA(対照として使用)(配列番号56)または3つの異なるKIF11 shRNA配列:KIF11 shRNA配列#1(配列番号1)、KIF11 shRNA配列#2(配列番号2)、およびKIF11 shRNA配列#3(配列番号3)のうちのいずれか1つを含有するレンチウイルスベクター粒子をPC3ヒト前立腺癌細胞に感染させた。
【0229】
PC3ヒト前立腺癌細胞を24ウェルプレートに5×104細胞/ウェルで播種した。24時間後、H1プロモーターおよび3つの異なるKIF11 UTR shRNA配列(配列番号1、配列番号2、もしくは配列番号3)のうちの1つを含有するレンチウイルスベクター粒子またはGFPのみを発現するレンチウイルスベクター粒子を用いて5MOIで細胞への形質導入を行った。72時間後、RNeasyキット(Qiagen)を用いてRNAを細胞から抽出し、SuperScript VILO(Thermo)を用いてcDNAに変換した。FAM標識KIF11 TaqManプローブ(配列番号48)およびKIF11用のプライマー(フォワードプライマー(配列番号46);リバースプライマー(配列番号47))を使用して定量PCRによりKIF11 cDNAの発現を決定した。KIF11 RNA発現を各試料についてアクチンレベルに対して正規化した(アクチンフォワードプライマー(配列番号49);アクチンリバースプライマー#1(配列番号50);アクチンプローブ(配列番号52))。
【0230】
LV-GFP%と比べたKIF11 mRNAのレベルを
図5に示す。LV-GFP形質導入細胞と比較した場合に、KIF11 RNAは、(i)KIF11 shRNA配列#1(配列番号1)を使用して63%減少し(shKIF11-1を用いた形質導入後のKIF11 mRNA発現を示すバーを参照)、(ii)KIF11 shRNA配列#2(配列番号2)を使用して69%減少し(shKIF11-2を用いた形質導入後のKIF11 mRNA発現を示すバーを参照)、(iii)KIF11 shRNA配列#3(配列番号3)を使用して79%減少した(shKIF11-3を用いた形質導入後のKIF11 mRNA発現を示すバーを参照)。
(実施例3)
(i)ヒトKIF11非翻訳領域を標的化するshRNAベースRNA干渉および(ii)KIF11コード配列の両方のレンチウイルス粒子送達性共発現はKIF11の高い発現レベルを生じさせる。
【0231】
KIF11 shRNA(KIF11 shRNA配列#3(配列番号3))の発現を調節するH1プロモーターを含有するレンチウイルスベクター粒子ならびに(i)KIF11 shRNA(KIF11 shRNA配列#3)(配列番号3))の発現を調節するH1プロモーター、および(ii)そのコード配列および切断された3’UTRを含むKIF11配列(配列番号4)の発現を調節するCMVプロモーターの両方を含有するレンチウイルスベクター粒子をPC3ヒト前立腺癌細胞に感染させた。この実験において使用したベクターの一実施形態を
図3(環状)および
図4(直鎖状)に提供する。
【0232】
PC3ヒト前立腺癌細胞を24ウェルプレートに5×104細胞/ウェルで播種した。24時間後、KIF11 UTR shRNA #3(配列番号3)およびKIF11コード配列(配列番号4)の発現を調節するCMVプロモーターを発現するレンチウイルスベクター粒子を用いて5MOIで細胞への形質導入を行った。72時間後、RNeasyキット(Qiagen)を用いてRNAを細胞から抽出し、SuperScript VILO(Thermo)を用いてcDNAに変換した。FAM標識KIF11 TaqManプローブ(配列番号48)およびKIF11用のプライマー(フォワードプライマー(配列番号46);リバースプライマー(配列番号47))を使用して定量PCRによりKIF11 cDNAの発現を決定した。KIF11発現を各試料についてアクチンレベルに対して正規化した(アクチンフォワードプライマー(配列番号49);アクチンリバースプライマー#1(配列番号50);およびアクチンプローブ(配列番号52))。
【0233】
図6に示すように、対照処理LV-GFP処理細胞と比べて、KIF11 mRNAは、(i)KIF11 shRNA配列#3(配列番号3)を発現するベクターを用いて細胞への形質導入を行った場合に77%減少し(shKIF11を用いた形質導入後のKIF11 mRNA発現を示すバーを参照)、(ii)KIF11 shRNA配列#3(配列番号3)およびKIF11配列(配列番号4)を発現するベクターを用いて細胞への形質導入を行った場合に14.5倍に増加した(shKIF11+CMV KIF11を用いた形質導入後のKIF11 mRNA発現を示すバーを参照)。これは、shRNAは内因性KIF11 mRNAを抑制しており、導入遺伝子からのKIF11の発現に影響していないことを示す。
(実施例4)
ヒトKIF11(Eg5)非翻訳領域を標的化するレンチウイルス粒子送達性shRNAベースRNA干渉は生存細胞の数の低減を生じさせる。
【0234】
H1プロモーターおよびKIF11 shRNA配列#2(配列番号2)または配列#3(配列番号3)のいずれかを含有するレンチウイルスベクター粒子を用いてPC3ヒト前立腺癌細胞への形質導入を行った。
【0235】
PC3ヒト前立腺癌細胞を24ウェルプレートに5×104細胞/ウェルで播種した。24時間後、KIF11 UTR shRNA #2または#3(それぞれ配列番号2または配列番号3)のいずれかを発現するレンチウイルスベクター粒子を用いて5MOIで細胞への形質導入を行った。4日後、MTT試薬(Sigma)を用いて570nmで細胞数を決定した。MTT試薬はテトラゾリウム色素(3-(4,5,-ジメチルチアゾール-2-イル)-2,5-ジフェニルテトラゾリウムブロミドである。代謝的に活性の生存細胞においてNAD(P)H依存性オキシドレダクターゼ酵素は、紫色であるホルマザンとして公知のその不溶性形態へのMTT試薬の還元を引き起こす。細胞生存能のためのMTTアッセイは、MTT試薬を細胞懸濁液に加え、次いで顕微鏡下で細胞を調べて紫色で現れる割合を数え上げることにより行った。MTTアッセイの自動化バージョンでは、細胞をプラスチックプレートの個々のウェルに分布させ、続いて比色分析により紫色の強度を測定する。
【0236】
図7に示すように、LV-GFP形質導入細胞と比較した場合に、細胞の数は、(i)KIF11 shRNA #2配列(配列番号2)を用いて形質導入を行った細胞において46%減少し(shKIF11-2を用いた形質導入後の細胞数%を示すバーを参照)、(ii)KIF11 shRNA #3配列(配列番号3)を用いて形質導入を行った細胞において70%減少した(shKIF11-3を用いた形質導入後の細胞数%を示すバーを参照)。これは、KIF11はがん細胞増殖を低減するための有効な標的であることを示唆する。
(実施例5)
(i)ヒトKIF11非翻訳領域を標的化するshRNAベースRNA干渉および(ii)KIF11コード配列の両方のレンチウイルス粒子送達性共発現は細胞数の高いレベルの維持を生じさせる。
【0237】
(i)GFP(対照)、(ii)shKIF11(UTR)、および(iii)shKIF11(UTR)ならびにCMVプロモーターにより駆動されるKIF11をコードする配列(配列番号4)を発現するレンチウイルスベクター粒子を用いてPC3ヒト前立腺癌細胞への形質導入を行った。レンチウイルスベクター粒子のそれぞれにおいて使用したshKIF11(UTR)配列はKIF shRNA配列#3(配列番号3)であった。KIF11をコードする配列(配列番号4)は、KIF11遺伝子の3’UTRにおいて切断を含んでいた。
【0238】
PC3ヒト前立腺癌細胞を24ウェルプレートに5×104細胞/ウェルで播種した。24時間後、単独またはKIF11コード配列との共発現でKIF11 UTR shRNA #3(配列番号3)を発現するレンチウイルスベクター粒子の他に、GFPのみを発現するレンチウイルスベクター粒子(対照)を用いて5MOIで細胞への形質導入を行った。4日後、生細胞中に暗青色ホルマザン生成物を生じるMTT試薬((3-(4,5-ジメチルチアゾール-2-イル)-2,5-ジフェニルテトラゾリウムブロミド)(SigmaMillipore)との培養により細胞数を決定した。MTTアッセイは、実施例4に記載したように実行した。
【0239】
図8に示すように、LV-GFP形質導入細胞と比較した場合に(LV-GFPを用いた形質導入後の細胞数%を示すバーを参照)(対照ベクターを100%に設定)、細胞の数は、KIF11 shRNA配列#3(配列番号3)を用いて形質導入を行った細胞において42%減少した(LV-shKIF11(UTR)を用いた形質導入後の細胞数%を示すバーを参照。細胞の数におけるこの低減は、KIF11 shRNA配列#3(配列番号3)およびKIF11コード配列を発現するベクターを用いて形質導入を行った細胞において9%のみの減少までレスキューされた(LV-shKIF11(UTR)-CMV-KIF11を用いた形質導入後の細胞数%を示すバーを参照)。したがって、切断された3’UTRを含有する外因性KIF11を発現させた場合にPC3の増殖はKIF11 shRNAにより最小に影響された。
(実施例6)
間葉系幹細胞は、2構成成分レンチウイルスベクターを使用することにより、要求される細胞周期タンパク質に対する阻害RNAを産生し、成長能力を保持するように改変され得る。
【0240】
この実施例は、細胞成長のために不可欠な機能を遮断する高いレベルの阻害RNAも発現しながら培養において増殖する間葉系幹細胞生成物の、シードストックからのバルク製造を可能にする2構成成分レンチウイルスベクターの使用の実例を示す。
【0241】
キネシンファミリーメンバータンパク質KIF11は、紡錘体形成および有糸分裂のために要求される。KIF11のレベルを低減することができる阻害RNAは悪性腫瘍成長を低減することが観察されている。結果として、腫瘍微環境へのそのような阻害RNAの送達は治療的な価値を持つ。阻害RNAを送達する1つの方法は間葉系幹細胞の使用を伴う。細胞は、腫瘍細胞との細胞間接触に従事し、コネキシンタンパク質により形成された入口を介して様々な分子を送達するための特別な特性を有する。
【0242】
間葉系幹細胞の治療用量のための通常の製造は、高度に特徴付けられた細胞のシードストックを用いて開始され、該シードストックは数日の細胞成長を通じて拡大増殖されて、in vivo療法のために要求される細胞の数が達成される。明確なことに、腫瘍細胞成長を抑制することが運命付けられた高いレベルの阻害RNAを産生するようにプログラムされた遺伝子改変された間葉系幹細胞の治療用量を製造するために代替的な戦略が必要とされる。
【0243】
2構成成分レンチウイルスベクターシステムは、改変された間葉系幹細胞の製造の問題を克服する。この実施形態では、レンチウイルスベクターは、正常タンパク質コード配列を含有するが、メッセンジャーRNA中に通常見出される3’非翻訳領域を欠いた改変バージョンのKIF11遺伝子を発現する。別々のカセットから、同じレンチウイルスベクターはまた、正常KIF11 mRNAの3’非翻訳領域に対して標的化されたsiRNA、shRNA、またはマイクロRNAの形態の1つまたは複数の阻害RNAを発現する。このようにして改変された間葉系幹細胞は十分なレベルのKIF11タンパク質を発現して細胞成長を維持し、そしてまたコネキシンチャネルを介して腫瘍細胞にエクスポートされ得る高いレベルの阻害RNAを産生し、腫瘍細胞において阻害RNAは悪性成長を抑制する。これは、シードストックから改変された間葉系幹細胞の大細胞用量を製造する能力を犠牲にすることなく達成される。そのため、シードストックは、臨床使用のために適格であり、複数の腫瘍種のための細胞および遺伝子療法として利用可能な、事前に特徴付けられた2構成成分レンチウイルスベクターにより改変されている。
(実施例7)
GFPを発現するレンチウイルスベクター粒子を用いた間葉系幹細胞(MSC)の形質導入はGFP発現における用量依存的な増加を生じさせる。
【0244】
MSCを3回継代し、次いで24ウェルプレートに2×10
4細胞/ウェルで播種した。24時間後、4および20の多重感染度(MOI)(293Tの力価値に基づく)でGFPを発現するレンチウイルスベクター(LV)粒子を用いて細胞への形質導入を行った。3日後、細胞をGFP蛍光についてイメージングした。
図9に示すように、細胞のGFP明度における用量依存的な増加があった。中央パネル(LV-GFP 4MOI)に示すように、MSCの約80%はGFPについて陽性に染色された。右パネル(LV-GFP 20MOI)に示すように、MSCの100%近くはGFPについて陽性に染色された。
(実施例8)
4に等しい多重感染度は1個の間葉系幹細胞(MSC)あたり10個のベクターゲノムを達成するために十分であった。
【0245】
MSCを3回継代し、次いで6ウェルプレートに1×105細胞/ウェルで播種した。24時間後、KIF11 shRNA配列#3(配列番号3)単独、またはKIF11配列(配列番号4)と共にKIF11 shRNA配列#3(配列番号3)を発現するレンチウイルスベクター粒子を用いて細胞への形質導入を行った。ベクター粒子はまた、形質導入マーカーとしてGFPを発現した。72時間後、DNeasyキット(Qiagen)を用いてゲノムDNAを抽出した。ベクター特異的Gagプライマー(Gagフォワードプライマー(配列番号53);Gagリバースプライマー(配列番号54))およびFAM標識プローブ(配列番号55))ならびに細胞対照としてアクチンプライマー(アクチンフォワードプライマー(配列番号49);アクチンリバースプライマー#2(配列番号51))およびVIC標識プローブ(配列番号52))を使用してQuantStudio 3 qPCR装置で25および50ngのDNAを用いてデュプレックスPCR反応を行った。Gagおよびアクチン配列を含有するレンチウイルスプラスミドを使用して標準曲線を用いて細胞試料からのベクターコピーの数を決定した。式:(Gag配列の量平均/アクチン配列の量平均)を使用してベクターコピー数を算出した。
【0246】
ベクターコピー数を示す結果を
図10に示す。4MOIを使用したベクター粒子のそれぞれにおいて、ベクターコピー数は7~20であった((i)GFP 4MOI、(ii)shKIF11 GFP 4MOI、(iii)shKIF11 CMV KIF11
GFP 4MOI、(iv)shKIF11 4MOI、および(iv)shKIF11 CMV KIF11 4MOIの4MOIで形質導入されたベクターのベクターコピー数を示すバーを参照)。20MOIを使用したベクターのそれぞれにおいて、ベクターコピー数は60~100であった((i)GFP 20MOI、(ii)shKIF11
GFP 20MOI、(iii)shKIF11 CMV KIF11 GFP 20MOI、(iv)shKIF11 20MOI、および(v)shKIF11 CMV KIF11 20MOIの20MOIで形質導入されたベクターのベクターコピー数を示すバーを参照)。
【0247】
好ましいベクターコピー数は1~10に及び、5またはそれ未満が典型的には標的である。ベクターコピー数の理想的な標的は、ベクターの機能的な効率により影響される。例えば、標的に対するshRNAを発現するベクターは、5またはそれ未満のベクターコピー数を用いて標的遺伝子発現を80%より大きく低減するはずである。しかしながら、10より多いベクターコピー数は遺伝毒性を引き起こし得ることが公知である。そのため、データは、20MOIの使用は高すぎることを指し示す。
(実施例9)
KIF11 UTR標的化shRNAを発現するレンチウイルスベクター粒子は間葉系幹細胞(MSC)においてKIF11 mRNAレベルを低減し、mRNAレベルは、切断されたKIF11およびUTR標的化shRNAを共発現するレンチウイルスを用いて形質導入された細胞において回復される。
【0248】
MSCを3回継代し、次いで6ウェルプレートに1×105細胞/ウェルで播種した。24時間後、KIF11 shRNA配列#3(配列番号3)単独、またはKIF11 shRNA配列#3(配列番号3)およびKIF11コード配列(配列番号4)のいずれかを発現するレンチウイルスベクター粒子を用いて細胞への形質導入を行った。ある特定のレンチウイルスベクター粒子はまた、形質導入マーカーとしてGFPを発現した。72時間後、RNeasyキット(Qiagen)を用いてRNAを細胞から抽出し、SuperScript VILO(Thermo)を用いてcDNAに変換した。TaqManプローブ(配列番号48)およびKIF11用(KIF11フォワードプライマー(配列番号46);KIF11リバースプライマー(配列番号47))およびアクチン用(アクチンフォワードプライマー(配列番号49;アクチンリバースプライマー#1(配列番号50))のプライマー、およびVIC標識プローブ(配列番号52)を使用して定量PCRによりKIF11 cDNAの発現を決定した。KIF11発現を各試料についてアクチンレベルに対して正規化した。
【0249】
図11Aは、非形質導入細胞(LV無し)のパーセンテージとしてのKIF11 RNA発現を表す。非形質導入MSCと比較した場合に、KIF11 shRNA配列#3(配列番号3)およびGFPを含有するベクターは、4MOI(shKIF11 GFP 4MOIを用いた形質導入後のKIF11 mRNAのデータを示すバーを参照)および20MOI(shKIF11 GFP 20MOIを用いた形質導入後のKIF11 mRNAのデータを示すバーを参照)でそれぞれKIF11 RNAにおける79パーセントの減少およびKIF11 RNAにおいて92.5%の減少を生じさせた。非形質導入MSCと比較した場合に、GFPなしでKIF11 shRNA配列#3(配列番号3)を含有するベクターは、4MOI(shKIF11 4MOIを用いた形質導入後のKIF11 mRNAのデータを示すバーを参照)および20MOI(shKIF11 20MOIを用いた形質導入後のKIF11 mRNAのデータを示すバーを参照)でそれぞれKIF11 RNAにおける59パーセントの減少およびKIF11 RNAにおける85パーセントの減少を生じさせた。そのため、KIF11 shRNAを発現する両方のベクターにおいて、MOIの増加は、ベクターがGFPを発現するかどうかにかかわらず、KIF11 mRNA発現におけるより大きい減少を生じさせた。
【0250】
注記として、GFPのみを含有するベクターを用いた形質導入はKIF11 mRNAの低減を生じさせた。例えば、非形質導入MSCと比較した場合に、ベクターを20MOIで形質導入した場合に、GFPのみを発現するベクターはKIF11 mRNAにおける59パーセントの減少を生じさせた(GFP 20MOIを用いた形質導入後のKIF11 mRNAのデータを示すバーを参照)。KIF11 mRNAにおけるそのような減少が観察された理由は明確でない。しかしながら、ベクターコピー数データ(
図10を参照)から明らかにされるように、20MOIは高いベクターコピー数を生じさせる。この高いベクターコピー数が毒性を引き起こしている可能性があり、したがって、KIF11 mRNAに対するそのshRNA非依存性効果を説明する可能性がある。
【0251】
図11Bは、非形質導入細胞(LV無し)と比べた倍数変化としてのKIF11 mRNA発現を表す。KIF11 shRNA配列#3(配列番号3)、KIF11コード配列(配列番号4)、およびGFPを発現するベクターにおいて、KIF11 mRNAおよびKIF11コード配列において9.8倍の増加があった(shKIF11 CMV KIF11 GFP 4MOIを用いた形質導入後のKIF11 mRNAを示すバーを参照)。KIF11 shRNA配列#3(配列番号3)、KIF11コード配列(配列番号4)、および無GFPを発現するベクターにおいて、KIF11 mRNAおよびKIF11コード配列における121倍の増加があった(shKIF11 CMV KIF11 4MOIを用いた形質導入後のKIF11 mRNAを示すバーを参照)。これは、ベクターの複雑性の増加(すなわち、GFPの追加)はベクター発現KIF11における低減を引き起こすことを指し示す。
【0252】
(実施例10)
KIF11 UTR標的化shRNAは単一細胞継代の間の間葉系幹細胞(MSC)の増殖に対して効果を有しない。
【0253】
MSCを3回継代し、次いで24ウェルプレートに2×104細胞/ウェルで播種した。24時間後、KIF11 shRNA配列#3(配列番号3)単独、またはKIF11
shRNA配列#3(配列番号3)およびKIF11コード配列(配列番号4)のいずれかを発現するレンチウイルスベクター粒子を用いて細胞への形質導入を行った。6日後、MTT試薬(Sigma)との2時間のインキュベーションおよびプレートリーダーを用いた570nmでの検出後に細胞数を決定した。
【0254】
図12に示すように、KIF11 shRNA配列を単独で発現するレンチウイルスベクター粒子(shKIF11 4MOIおよびshKIF11 20MOIを用いた形質導入後の細胞数を示すバーを参照)またはKIF11 shRNA配列およびKIF11コード配列を発現するレンチウイルスベクター粒子(shKIF11 CMV KIF11 4MOIおよびshKIF11 CMV KIF11 20MOIを用いた形質導入後の細胞数を示すバーを参照)のいずれかを用いた形質導入は、対照処理(GFP 4MOIおよびGFP 20MOIのいずれかを用いた形質導入後の細胞数を示すバーを参照)と比較した場合にMSCにおける最小の変化を生じさせた。このデータは、間葉系幹細胞の生存を維持するためにベクターはKIF11コード配列を共発現する必要はないことを示唆し得る。あるいは、KIF11 shRNAの発現は、MSCを大きい商業的規模の細胞体積まで拡大増殖しようとする場合に間葉系幹細胞の生存に対して負の影響を有し得る。そのため、大規模の拡大増殖は、MSCの細胞収率を維持するKIF11の外因性共発現の利益を明らかにし得る。
【0255】
(実施例11)
材料および方法
【0256】
本明細書においてデータを生成するために使用された(i)レンチウイルスベクター発現KIF11 shRNAを生成し、(ii)KIF11 shRNA配列を生成し、(iii)KIF11 RNA発現を測定し、(iv)ベクターコピー数を測定し、(v)細胞増殖を測定する詳細な方法を以下に記載する。
【0257】
KIF11 shRNAを発現するレンチウイルスベクター粒子の生成
【0258】
Broad InstituteのshRNA設計プログラムまたはThermo ScientificのBLOCK-iTTM RNAi Designerを用いて選択された候補から潜在的なRNA干渉配列を選択した。BamHIおよびEcoRI制限部位を含有するショートヘアピンオリゴヌクレオチド配列をEurofins Genomicsにより合成した。70℃でインキュベートし、次いで室温に1時間冷却することによりオリゴヌクレオチド配列をアニーリングさせた。並行して、制限酵素BamHIおよびEcoRIを用いて37℃で1時間レンチウイルスベクターを消化した。消化したレンチウイルスベクターをアガロースゲル電気泳動により精製し、DNAゲル抽出キット(Thermo Scientific)を使用してゲルから抽出した。DNA濃度をそれぞれについて決定し、50ngのベクターを2マイクロリットルのアニーリングしたオリゴに加えた。ライゲーション反応は、室温で30分間、T4 DNAリガーゼを用いて行った。2.5マイクロリットルのライゲーション混合物を25マイクロリットルのStbl3コンピテント細菌細胞に加えた。形質転換を42℃での熱ショックステップと共に行った。アンピシリンを含有する寒天プレート上に細菌細胞を塗り付け、選択されたコロニーをLBブロス中で拡大増殖させた。オリゴ配列の挿入を確認するために、DNAミニプレップキット(Thermo Scientific)を用いて、回収した細菌培養物からプラスミドDNAを抽出した。レンチウイルスベクター中へのshRNA配列の挿入は、H1プライマーを使用してDNAシークエンシングにより検証した。shRNA配列を含有するレンチウイルスベクターをレンチウイルス粒子にパッケージングして、KIF11
RNAをノックダウンするそれらの能力について試験した。
【0259】
KIF11 shRNA配列の生成
【0260】
Homo sapiensキネシンファミリーメンバー11(KIF11)(Eg5)(NM_004523.4)mRNAの配列を使用して、ヒト細胞におけるKIF11レベルを低減するための潜在的なshRNA候補を検索した。検索により3つのKIF11 shRNA候補(配列番号1、配列番号2、および配列番号3)が同定された。
【0261】
KIF11 RNA発現の測定
【0262】
レンチウイルスベクターを用いた形質導入後のmRNA発現を測定することによりKIF11発現に対する3つの異なるKIF11 shRNA配列の効果を決定した。5のMOI(293T力価に基づく)のレンチウイルスベクターおよび8μg/mLのポリブレン(MilliporeSigma)を細胞に加え、終夜インキュベートすることによりPC3細胞への形質導入を行った。24時間後、培地を交換し、細胞をさらに72時間培養した。72時間後、細胞を溶解し、RNeasyミニキットを使用してRNAを抽出した。SuperScript VILO cDNA合成キットを使用して100ngのRNAからcDNAを合成した。TaqMan Fast Advanced Master Mixを使用してPCR反応を行い、次いでApplied Biosystems
QuantStudio3 qPCR装置(Thermo Scientific)を使用して定量PCR(qPCR)により試料を分析した。KIF11プライマー/プローブ(KIF11フォワードプライマー(配列番号46);KIF11リバースプライマー(配列番号47);KIF11プローブ(配列番号48))を使用してKIF11発現を検出し、アクチン(アクチンフォワードプライマー(配列番号49;アクチンリバースプライマー#1(配列番号50);アクチンプローブ(配列番号52)に対して正規化した。KIF11の相対発現をそのCt値により決定し、各試料についてアクチンのレベルに対して正規化した。
【0263】
ベクターコピー数の測定
【0264】
レンチウイルスベクターおよび8μg/mLのポリブレン(MilliporeSigma)を細胞に加え、終夜インキュベートすることによりMSCへの形質導入を行った。24時間後、培地を交換し、細胞をさらに48~72時間培養した。次いで細胞をPBSで2回洗浄し、細胞ペレットを収集し、DNeasyキット(Qiagen)を用いてゲノムDNAを抽出した。ゲノムDNAの50ng/mLの溶液を調製した。形質導入細胞からのゲノムDNA上のレンチウイルスベクター、Gag(Gagフォワードプライマー(配列番号53);Gagリバースプライマー(配列番号54);Gagプローブ(配列番号55)、および細胞ベータアクチン遺伝子(アクチンフォワードプライマー(配列番号49);アクチン(Acting)リバースプライマー#2(配列番号51);アクチン(Acting)プローブ(配列番号52))によりコードされる配列用のプライマーおよびプローブセットを、gagおよびベータアクチンをコードするプラスミドを使用して作製された標準曲線試料と共に用いてqPCRを行うことによりベクターコピー数を決定した。TaqMan Fast Advanced Master Mixを使用してPCR反応を行い、次いでApplied Biosystems QuantStudio3 qPCR装置(Thermo Scientific)を使用してqPCRにより試料を分析した。組み込まれたレンチウイルスのコピー数を、qPCRにより決定されたCt値に基づいて算出した。以下の式を使用してベクターコピー数を測定した:ベクターコピー数=(Gag配列の量平均/アクチン配列の量平均)。
【0265】
細胞増殖の測定
PC3およびMSC細胞を24ウェルプレートに播種した。指定された培養時間後、培地を除去し、0.5mg/mLのMTTを含有する0.5mLのDMEMを細胞に加えた。プレートを37℃のインキュベーターにPC3細胞について30分間、MSCについて2時間戻した。培地を除去し、0.5mLのイソプロパノールをウェルに加えた。プレートを低速度で5分間ロッカーに置き、Bio-Tekプレートリーダーを用いて570nmの吸光度で色を検出した。
【0266】
(実施例12)
MSCの単離、精製、拡大増殖、および特徴付け
【0267】
単離、精製および拡大増殖:MSCを単離および拡大増殖するための多数の方法が当該技術分野において公知である。実施形態では、MSCは胎盤から単離され、胎盤を満期新生児のための選択的帝王切開による出産後に回収する。胎盤をリン酸緩衝食塩水(PBS)中で洗浄し、母系脱落膜を除去する。約1cm3または4グラムの湿潤重量の組織部分を胎児境界部の絨毛から解剖する。組織部分を再びPBS中で洗浄し、1mg/mlのコラゲナーゼA溶液を用いて37℃で60分間処理する。消化した材料を遠心分離により収集し、トリプシン/EDTA溶液に37℃で10分間再懸濁する。トリプシン処理した材料を再び遠心分離により収集し、1回洗浄し、1%のペニシリン-ストレプトマイシン溶液+5mMのL-グルタミンを含むBio-AMF-1培地(Biological Industries、Israel)に再懸濁する。細胞をT-25培養フラスコに移し、加湿雰囲気中37℃で5%のCO2と共にインキュベートする。MSCがT-25フラスコ中でコンフルエンスに達した時に、それらをトリプシン/EDTAで処理してプラスチックに結合した細胞を解放させ、培地で希釈し、新たなT-25フラスコ中に再プレーティングする。
【0268】
臨床使用のための遺伝子改変されたMSCの大規模製造のために、1000万~5000万の形質導入されたMSCを含有するシードストックを連続継代を通じて拡大し、懸濁培養に適合させる。最終の細胞培養体積は100~200Lに達し得、細胞収率は5×109/リットルに接近し得る。細胞を遠心分離および/または濾過により回収し、洗浄し、in vivo投与のために培地に再懸濁する。MSCの大規模拡大増殖は、GMP条件下で200Lまでの懸濁培養物中で行うことができる。
【0269】
当該技術分野において公知のMSCを単離および拡大増殖する他の方法を使用することができる。MSCを単離および拡大増殖するための詳細なプロトコールは以下の参考文献に記載されており、これらは参照により全体が本明細書に援用される:(i)Huang
Q, Yang Y, Luo C, Wen Y, Liu R, Li S, Chen T, Sun H, and Tang L. 2019. An efficient protocol to generate placental chorionic plate-derived mesenchymal stem cells with superior proliferative and immunomodulatory properties. Stem Cell Research & Therapy 10:301、(ii)Hassan G, Kasem I, Antaki, R, Mohammad MB, AlKadry R, and Aljamali M. 2019. Isolation of umbilical cord mesenchymal stem cells using blood derivatives accompanied with explant method. Stem Cell Investigation 6:29。
【0270】
特徴付け:MSC表現型は起源の組織にしたがって変動する。絨毛MSCについて、細胞素性の主要な表現型マーカーとしては、CD44、CD73、CD105、CD90、アルファ-SMA、およびStro-1が挙げられる。これらの細胞表面マーカーを検出するための抗体染色およびフローサイトメトリーはMSCの存在を裏付け、絨毛MSCに最も類似した細胞の画分をさらに指し示す。遺伝子発現の特定のパターンもまたMSCについて同定されている。絨毛MSCはSOX-2を発現するがNANOGもPOU5F1も発現しない。これらの遺伝子の3つ全ての発現は、胚性幹細胞多能性の共通のマーカーであり、SOX-2に限定された発現はMSCの部分的に多能性の表現型と合致する。
【0271】
(実施例13)
MSCのレンチウイルス粒子遺伝子改変
【0272】
レンチウイルスベクターはMSCの安定な遺伝子改変のための好ましい方法であり、骨髄由来および他の種類のMSCの短期および長期培養において評価されている。マーカータンパク質(緑色または赤色蛍光タンパク質)およびピューロマイシンアセチルトランスフェラーゼ(ピューロマイシンへの抵抗性を付与する)の両方を発現するレンチウイルスベクターの作製は、表現型変化、細胞モビリティの変更、または長期培養における細胞増幅の能力についての多数の試験後に非改変MSCと同一であるらしい遺伝子改変されたMSCの薬物選択を可能とする。
【0273】
レンチウイルスベクター粒子形質導入は、3つのステップにおいて行うことができる:
【0274】
ステップ1:コンフルエントなMSCをトリプシン処理し、1:3で希釈し、2日間再プレーティングする。
【0275】
ステップ2:PBS+8ug/mLのポリブレン中のレンチウイルスベクターストックをMSC細胞単層上に4時間重層し、次いで細胞を培地ですすぐことにより除去する。
【0276】
ステップ3:トリプシン溶液を用いてMSCをプレートから剥がし、形質導入の効率を測定するDNA、RNA、またはタンパク質抽出のために使用する。
【0277】
ほとんどのレンチウイルスベクターについて、5に等しい多重感染度を有する形質導入は、>80%のMSCが遺伝子改変されることを生じさせる。改変は安定であり、導入遺伝子発現は多くの世代にわたり持続する。
【0278】
配列
【0279】
以下の配列を本明細書において参照する。
【表1-1】
【表1-2】
【表1-3】
【表1-4】
【表1-5】
【表1-6】
【表1-7】
【表1-8】
【表1-9】
【表1-10】
【表1-11】
【表1-12】
【表1-13】
【表1-14】
【表1-15】
【表1-16】
【表1-17】