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特開2024-45650炭化珪素半導体装置および炭化珪素半導体装置の製造方法
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  • 特開-炭化珪素半導体装置および炭化珪素半導体装置の製造方法 図1
  • 特開-炭化珪素半導体装置および炭化珪素半導体装置の製造方法 図2
  • 特開-炭化珪素半導体装置および炭化珪素半導体装置の製造方法 図3
  • 特開-炭化珪素半導体装置および炭化珪素半導体装置の製造方法 図4
  • 特開-炭化珪素半導体装置および炭化珪素半導体装置の製造方法 図5A
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  • 特開-炭化珪素半導体装置および炭化珪素半導体装置の製造方法 図7
  • 特開-炭化珪素半導体装置および炭化珪素半導体装置の製造方法 図8
  • 特開-炭化珪素半導体装置および炭化珪素半導体装置の製造方法 図9
  • 特開-炭化珪素半導体装置および炭化珪素半導体装置の製造方法 図10
  • 特開-炭化珪素半導体装置および炭化珪素半導体装置の製造方法 図11
  • 特開-炭化珪素半導体装置および炭化珪素半導体装置の製造方法 図12
  • 特開-炭化珪素半導体装置および炭化珪素半導体装置の製造方法 図13
  • 特開-炭化珪素半導体装置および炭化珪素半導体装置の製造方法 図14
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024045650
(43)【公開日】2024-04-02
(54)【発明の名称】炭化珪素半導体装置および炭化珪素半導体装置の製造方法
(51)【国際特許分類】
   H01L 29/78 20060101AFI20240326BHJP
   H01L 29/12 20060101ALI20240326BHJP
   H01L 29/861 20060101ALI20240326BHJP
   H01L 21/336 20060101ALI20240326BHJP
   H01L 21/822 20060101ALI20240326BHJP
【FI】
H01L29/78 652F
H01L29/78 652T
H01L29/78 657C
H01L29/78 657F
H01L29/78 652Q
H01L29/78 653A
H01L29/78 652J
H01L29/78 652D
H01L29/78 652M
H01L29/91 C
H01L29/78 658A
H01L29/78 658E
H01L27/04 H
【審査請求】有
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2024023820
(22)【出願日】2024-02-20
(62)【分割の表示】P 2020085491の分割
【原出願日】2020-05-14
(71)【出願人】
【識別番号】000005234
【氏名又は名称】富士電機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100104190
【弁理士】
【氏名又は名称】酒井 昭徳
(72)【発明者】
【氏名】星 保幸
(57)【要約】
【課題】オン抵抗を低減させることができる炭化珪素半導体装置および炭化珪素半導体装置の製造方法を提供すること。
【解決手段】メイン半導体素子11は、トレンチゲート構造の縦型MOSFETであり、トレンチ37aの底面の電界緩和用の第1,2p+型領域61a,62aを有する。第1p+型領域61aは、深さ方向Zにトレンチ37aの底面に対向し、ゲート電極39aが延在する方向と同じ第1方向Xに点在する。第2p+型領域62aは、互いに隣り合うトレンチ37a間において第1方向Xに、トレンチ37aと略同じ長さで直線状に延在する。p++型コンタクト領域36aは、前記第1方向に点在する。メイン半導体素子11は、第1方向Xに隣接する2つのp++型コンタクト領域36a間のn+型ソース領域35aと、第1方向Xに隣接する2つの第1p+型領域61a間のn型電流拡散領域33aと、が設けられた、第1方向Xに垂直な第1断面を含む。
【選択図】図5B
【特許請求の範囲】
【請求項1】
炭化珪素からなる半導体基板と、
前記半導体基板のおもて面において前記半導体基板のおもて面に平行な第1方向に延在してトレンチゲート構造をなすトレンチと、
前記半導体基板のおもて面の上に設けられたソース電極と、
前記半導体基板のおもて面側に前記トレンチの側壁に隣接して設けられ、前記ソース電極に接続された第1導電型のソース領域と、
前記半導体基板のおもて面側に前記第1方向において選択的に設けられ、前記ソース電極に接続された第2導電型のコンタクト領域と、
前記第1方向において所定の間隔で設けられ、前記トレンチの底面と深さ方向において対向する、前記半導体基板のおもて面に平行でかつ前記第1方向と直交する第2方向に前記トレンチの底面よりも幅が広い第2導電型の底面領域と、
を備え、
前記第1方向に隣接する2つの前記コンタクト領域間の第1領域と、前記第1方向に隣接する2つの前記底面領域間の第2領域と、が設けられた、前記第1方向に垂直な第1断面を含むことを特徴とする炭化珪素半導体装置。
【請求項2】
前記コンタクト領域と前記底面領域とが設けられた、前記第1方向に垂直な第2断面を含むことを特徴とする請求項1に記載の炭化珪素半導体装置。
【請求項3】
前記半導体基板の内部に前記第1方向において選択的に設けられ、前記底面領域を電気的に前記コンタクト領域に接続する第2導電型の連結領域を備えることを特徴とする請求項2に記載の炭化珪素半導体装置。
【請求項4】
前記第1断面におけるJFET抵抗は、前記第2断面におけるJFET抵抗よりも低いことを特徴とする請求項2または3に記載の炭化珪素半導体装置。
【請求項5】
前記トレンチに沿った部分にチャネルが形成される第2導電型のベース領域と、
前記ベース領域の、前記ソース電極側に対して反対側に設けられ、前記チャネルを通って流れる主電流の電流経路を構成する第1導電型の電流経路領域と、
を備え、
前記底面領域は、前記第2断面において、前記電流経路を前記第1断面よりも狭めていることを特徴とする請求項2から4のいずれか1項に記載の炭化珪素半導体装置。
【請求項6】
前記第2領域には、前記電流経路領域が設けられることを特徴とする請求項5に記載の炭化珪素半導体装置。
【請求項7】
前記第1領域には、前記ソース領域が設けられることを特徴とする請求項1から6のいずれか1項に記載の炭化珪素半導体装置。
【請求項8】
前記ソース領域は、前記コンタクト領域の周囲を囲む梯子状の平面形状をなすことを特徴とする請求項1から7のいずれか1項に記載の炭化珪素半導体装置。
【請求項9】
前記コンタクト領域の前記第1方向の幅は、前記底面領域の前記第1方向の幅よりも広いことを特徴とする請求項1から8のいずれか1項に記載の炭化珪素半導体装置。
【請求項10】
炭化珪素からなる半導体基板と、前記半導体基板のおもて面において前記半導体基板のおもて面に平行な第1方向に延在してトレンチゲート構造をなすトレンチと、前記半導体基板のおもて面の上に設けられたソース電極と、前記半導体基板のおもて面側に前記トレンチの側壁に隣接して設けられ、前記ソース電極に接続された第1導電型のソース領域と、前記ソース電極に接続された第2導電型のコンタクト領域と、前記トレンチの底面と深さ方向において対向する、前記半導体基板のおもて面に平行でかつ前記第1方向と直交する第2方向に前記トレンチの底面よりも幅が広い第2導電型の底面領域と、を備える炭化珪素半導体装置の製造方法であって、
前記半導体基板に第2導電型の不純物をイオン注入し、前記半導体基板の内部に前記第1方向において所定の間隔で前記底面領域を形成する工程と、
前記第1方向に隣接する2つの前記コンタクト領域間の第1領域と、前記第1方向に隣接する2つの前記底面領域間の第2領域と、が設けられた、前記第1方向に垂直な第1断面を含むように前記半導体基板に第2導電型の不純物をイオン注入し、前記半導体基板のおもて面側に前記第1方向において選択的に前記コンタクト領域を形成する工程と、
を含むことを特徴とする炭化珪素半導体装置の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、炭化珪素半導体装置および炭化珪素半導体装置の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、高電圧や大電流を制御するパワー半導体装置には、例えば、バイポーラトランジスタやIGBT(Insulated Gate Bipolar Transistor:絶縁ゲート型バイポーラトランジスタ)、MOSFET(Metal Oxide Semiconductor Field Effect Transistor:金属-酸化膜-半導体の3層構造からなる絶縁ゲート(MOSゲート)を備えたMOS型電界効果トランジスタ)など複数種類あり、これらは用途に合わせて使い分けられている。
【0003】
例えば、バイポーラトランジスタやIGBTは、MOSFETと比べて電流密度が高く大電流化が可能であるが、高速にスイッチングさせることができない。具体的には、バイポーラトランジスタは数kHz程度のスイッチング周波数での使用が限界であり、IGBTは数十kHz程度のスイッチング周波数での使用が限界である。一方、MOSFETは、バイポーラトランジスタやIGBTに比べて電流密度が低く大電流化が難しいが、数MHz程度までの高速スイッチング動作が可能である。
【0004】
また、MOSFETは、IGBTと異なり、半導体基板(半導体チップ)の内部にp型ベース領域とn-型ドリフト領域とのpn接合で形成される寄生ダイオードを内蔵しており、自身を保護するための還流ダイオードとしてこの寄生ダイオードを使用可能である。このため、MOSFETをインバータ用デバイスとして用いた場合に、MOSFETに外付けの還流ダイオードを追加して接続することなく使用することができ、経済性の面でも注目されている。
【0005】
パワー半導体装置の構成材料として、シリコン(Si)が用いられている。市場では大電流と高速性とを兼ね備えたパワー半導体装置への要求が強く、IGBTやMOSFETはその改良に力が注がれ、現在ではほぼ材料限界に近いところまで開発が進んでいる。このため、パワー半導体装置の観点からシリコンに代わる半導体材料が検討されており、低オン電圧、高速特性、高温特性に優れた次世代のパワー半導体装置を作製(製造)可能な半導体材料として炭化珪素(SiC)が注目を集めている。
【0006】
炭化珪素は、化学的に非常に安定した半導体材料であり、バンドギャップが3eVと広く、高温でも半導体として極めて安定的に使用することができる。また、炭化珪素は、最大電界強度もシリコンより1桁以上大きいため、オン抵抗を十分に小さくすることができる半導体材料として期待される。このような炭化珪素の特長は、炭化珪素だけでなく、シリコンよりもバンドギャップの広いすべての半導体(以下、ワイドバンドギャップ半導体とする)も同様に有する。
【0007】
また、MOSFETでは、大電流化に伴い、半導体チップのおもて面に沿ってチャネル(反転層)が形成されるプレーナゲート構造とする場合と比べて、トレンチの側壁に沿って半導体チップのおもて面と直交する方向にチャネルが形成されるトレンチゲート構造とすることはコスト面で有利である。その理由は、トレンチゲート構造が単位面積当たりの単位セル(素子の構成単位)密度を増やすことができるため、単位面積当たりの電流密度を増やすことができるからである。
【0008】
単位面積当たりの電流密度を増加させた分、単位セルの占有体積に応じた温度上昇率が高くなるため、放電効率の向上と信頼性の安定化とを図るために両面冷却構造が必要になる。さらに、パワー半導体装置の主動作を行うメイン半導体素子と同一の半導体基板に、当該メイン半導体素子を保護・制御するための回路部として電流センス部、温度センス部および過電圧保護部等の高機能部を配置した高機能構造とすることで信頼性を向上させたパワー半導体装置が提案されている。
【0009】
従来の半導体装置の構造について説明する。図13は、従来の半導体装置の構造を示す断面図である。図13には、図14の切断線AA-AA’における断面構造を示す。図14は、従来の半導体装置の一部を半導体基板のおもて面側から見たレイアウトを示す平面図である。図14には、メイン半導体素子のトレンチ237の底面にかかる電界を緩和させる第1,2p+型領域261,262(ハッチング部分)のレイアウトを示す。
【0010】
図13,14に示す従来の半導体装置220は、メイン半導体素子として、炭化珪素からなる半導体基板(半導体チップ)210のおもて面側に一般的なトレンチゲート構造のMOSゲートを備えた縦型MOSFETを備える。半導体基板210は、炭化珪素からなるn+型出発基板271のおもて面上にn-型ドリフト領域232およびp型ベース領域234となる各炭化珪素層272,273を順にエピタキシャル成長させてなる。
【0011】
半導体基板210の、p型炭化珪素層273側の主面をおもて面とし、n+型出発基板271側の主面を裏面とする。MOSゲートは、p型ベース領域234、n+型ソース領域235、p++型コンタクト領域236、トレンチ237、ゲート絶縁膜238およびゲート電極239で構成される。トレンチ237は、半導体基板210のおもて面に平行な第1方向X(図14の縦方向)に延在するストライプ状に配置されている。
【0012】
半導体基板210の内部において、p型ベース領域234よりもn+型ドレイン領域231に近い位置に、トレンチ237の底面にかかる電界を緩和させる第1,2p+型領域261,262が設けられている。第1p+型領域261は、p型ベース領域234と離れて設けられ、トレンチ237が延在する方向と同じ第1方向Xに直線状に延在して、深さ方向Zにトレンチ237の底面全体に対向する。
【0013】
第2p+型領域262は、互いに隣り合うトレンチ237間に、第1p+型領域261およびトレンチ237と離れて設けられ、かつp型ベース領域234に接する。第2p+型領域262は、トレンチ237が延在する方向と同じ第1方向Xに直線状に延在する。ソース電極として機能する金属シリサイド膜241、バリアメタル246およびソースパッド221は半導体基板210のおもて面に順に積層されている。
【0014】
ソースパッド221上の配線構造と、半導体基板210の裏面のドレイン電極251に接合された冷却フィン(不図示)と、で両面冷却構造が構成される。符号233,240,240aはそれぞれn型電流拡散領域、層間絶縁膜およびコンタクトホールである。符号242~245は、バリアメタル246を構成する金属膜である。符号247~250は、ソースパッド221上の配線構造を構成する各部である。
【0015】
従来のトレンチゲート構造の縦型MOSFETとして、トレンチ(ゲートトレンチ)の深さをp型ベース領域の深さよりも浅くし、トレンチの底面にn型ドリフト領域に達するn型領域を設けた装置が提案されている(例えば、下記特許文献1参照。)。下記特許文献1では、トレンチよりも深い位置にp型ベース領域とn型ドリフト領域とのpn接合を形成して、当該pn接合に電界を集中させ、トレンチの底面コーナー部に電界を集中させないことで、ゲート絶縁膜の破壊耐量を向上させて高耐圧化を図っている。
【0016】
従来のトレンチゲート構造の縦型MOSFETとして、p型ベース領域を、低不純物濃度で幅が狭い第1領域と、高不純物濃度で幅が広い第2領域と、で構成した装置が提案されている(例えば、下記特許文献2参照。)。下記特許文献2では、p型ベース領域を、第1領域で幅を狭くし、かつ不純物濃度を低くすることで低オン抵抗化し、さらに第1領域で幅を狭くし、かつ第2領域で幅を広くすることでパンチスルーを防止して耐圧を維持し、高不純物濃度で幅が広い第2領域でソース電極とオーミック接触させている。
【0017】
従来のトレンチゲート構造の縦型MOSFETとして、短いピッチで配置された一部の互いに隣り合うトレンチ(ゲートトレンチ)間を、寄生トランジスタが存在しない領域とした装置が提案されている(例えば、下記特許文献3参照。)。下記特許文献3では、一部の互いに隣り合うトレンチ間のピッチを短くして、当該トレンチの底面のp型フローティング領域にアバランシェ発生時に流れる正孔電流を集中させ、この電流集中箇所を寄生トランジスタが存在しない領域とすることで、アバランシェ耐量を向上させている。
【0018】
従来のトレンチゲート構造の縦型MOSFETとして、n-型ドリフト領域とp型ベース領域との間に設けられた、トレンチ(ゲートトレンチ)底面にかかる電界を緩和させる複数のp+型領域間にn型領域を有する装置が提案されている(例えば、下記特許文献4参照。)。下記特許文献4では、p+型領域間のn型領域を当該p+型領域よりもドレイン側に深くし、互いに隣り合うp+型領域間を通ってチャネルを流れる電流の経路を狭くなりにくくすることで、耐圧を維持したまま、オン抵抗を低減させている。
【0019】
従来のトレンチゲート構造の縦型MOSFETとして、n-型ドリフト領域とp型ベース領域との間に、トレンチ(ゲートトレンチ)底面にかかる電界を緩和させる複数のp+型領域を有し、互いに隣り合うトレンチ間のp+型領域の一部をp型ベース領域側へ延在させてp型ベース領域に接続した装置が提案されている(例えば、下記特許文献5参照。)。下記特許文献5では、互いに隣り合うトレンチ間のp+型領域を部分的に間引くことで、アバランシェ発生時に流れる正孔電流をソース電極へ吐き出しやすくしている。
【0020】
従来のトレンチゲート構造の縦型MOSFETとして、n-型ドリフト領域とp型ベース領域との間に、トレンチ(ゲートトレンチ)底面にかかる電界を緩和させる複数のp+型領域を有し、これらp+型領域のうち、互いに隣り合うトレンチ間のp+型領域がすべてトレンチと同じ方向に直線状に延在し、トレンチの底面よりもドレイン側に深い位置に、トレンチと直交する方向に延在するストライプ状にp+型領域が配置された装置が提案されている(例えば、下記特許文献6参照。)。
【0021】
下記特許文献6では、半導体基板のおもて面に平行な方向に隣り合うトレンチとp+型領域との間、および、トレンチの底面よりもドレイン側に深い位置にトレンチと離れて配置され互いに隣り合うp+型領域間に、n-型ドリフト領域よりも高不純物濃度のn型領域が配置されている。このn型領域によって、n-型ドリフト領域とp型ベース領域との間にp+型領域を部分的に配置したとしても、チャネルを流れる電流の経路を狭くなりにくく、耐圧を維持したまま、オン抵抗が低減される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0022】
【特許文献1】特許第4678902号公報
【特許文献2】特開2011-023675号公報
【特許文献3】特開2017-098403号公報
【特許文献4】国際公開第2017/064948号
【特許文献5】特開2019-102555号公報
【特許文献6】特開2019-046908号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0023】
しかしながら、従来の半導体装置220のメイン半導体素子(図13,14参照)では、単位セルの微細化とともに、n-型ドリフト領域232の、第1,2p+型領域261,262間の幅w101が狭くなる。この幅w101が狭くなった部分でJFET(Junction FET)抵抗が高くなり、オン抵抗が高くなるため、動作損失(電力損失)が大きくなる。特に、半導体装置220を高機能構造とする場合、メイン半導体素子を低オン抵抗化して、半導体装置220の総動作損失を低下させることが必要となる。
【0024】
半導体装置220を高機能構造とした場合、メイン半導体素子は、短絡耐量等を超えないように、電流センス部や温度センス部等の高機能部(不図示)の出力信号に基づいて外部回路により動作制御される。メイン半導体素子単体では、メイン半導体素子の定格電流の4倍程度の電流が流れる印加電圧を許容印加電圧(実力値)とすれば十分である。このため、半導体装置220の総動作損失が大きくなると、メイン半導体素子に実力値を超える電圧が印加され、メイン半導体素子が破壊や誤作動するからである。
【0025】
この発明は、上述した従来技術による課題を解消するため、オン抵抗を低減させることができる炭化珪素半導体装置および炭化珪素半導体装置の製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0026】
上述した課題を解決し、本発明の目的を達成するため、この発明は、次の特徴を有する。炭化珪素からなる半導体基板のおもて面において前記半導体基板のおもて面に平行な第1方向に延在してトレンチゲート構造をなすトレンチと、前記半導体基板のおもて面の上に設けられたソース電極と、前記半導体基板のおもて面側に前記トレンチの側壁に隣接して設けられ、前記ソース電極に接続された第1導電型のソース領域と、前記半導体基板のおもて面側に前記第1方向において選択的に設けられ、前記ソース電極に接続された第2導電型のコンタクト領域と、前記第1方向において所定の間隔で設けられ、前記トレンチの底面と深さ方向において対向する、前記半導体基板のおもて面に平行でかつ前記第1方向と直交する第2方向に前記トレンチの底面よりも幅が広い第2導電型の底面領域と、を備え、前記第1方向に隣接する2つの前記コンタクト領域間の第1領域と、前記第1方向に隣接する2つの前記底面領域間の第2領域と、が設けられた、前記第1方向に垂直な第1断面を含む。
【0027】
または、炭化珪素からなる半導体基板のおもて面において前記半導体基板のおもて面に平行な第1方向に延在してトレンチゲート構造をなすトレンチと、前記半導体基板のおもて面の上に設けられたソース電極と、前記ソース電極に接続された第1導電型のソース領域と、前記ソース電極に接続された第2導電型のコンタクト領域と、前記トレンチの底面と深さ方向において対向する、前記半導体基板のおもて面に平行でかつ前記第1方向と直交する第2方向に前記トレンチの底面よりも第2導電型の底面領域と、を備える炭化珪素半導体装置の製造方法であって、次の特徴を有する。前記半導体基板に第2導電型の不純物をイオン注入し、前記半導体基板の内部に前記第1方向において所定の間隔で前記底面領域を形成する工程と、前記第1方向に隣接する2つの前記コンタクト領域間の第1領域と、前記第1方向に隣接する2つの前記底面領域間の第2領域と、が設けられた、前記第1方向に垂直な第1断面を含むように前記半導体基板に第2導電型の不純物をイオン注入し、前記半導体基板のおもて面側に前記第1方向において選択的に前記コンタクト領域を形成する工程と、を含む。
【発明の効果】
【0028】
本発明にかかる炭化珪素半導体装置および炭化珪素半導体装置の製造方法によれば、オン抵抗を低減させることができるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0029】
図1】実施の形態にかかる半導体装置を半導体基板のおもて面側から見たレイアウトを示す平面図である。
図2図1の活性領域の断面構造を示す断面図である。
図3図1の活性領域の断面構造を示す断面図である。
図4図1の活性領域の断面構造を示す断面図である。
図5A図1の活性領域の一部を半導体基板のおもて面側から見たレイアウトを示す平面図である。
図5B図1の活性領域の一部を半導体基板のおもて面側から見たレイアウトの別の一例を示す平面図である。
図5C図1の活性領域の一部を半導体基板のおもて面側から見たレイアウトの別の一例を示す平面図である。
図6】実施の形態にかかる半導体装置の製造途中の状態を示す断面図である。
図7】実施の形態にかかる半導体装置の製造途中の状態を示す断面図である。
図8】実施の形態にかかる半導体装置の製造途中の状態を示す断面図である。
図9】実施の形態にかかる半導体装置の製造途中の状態を示す断面図である。
図10】実施の形態にかかる半導体装置の製造途中の状態を示す断面図である。
図11】実施の形態にかかる半導体装置の製造途中の状態を示す断面図である。
図12】実施例の耐圧特性およびオン抵抗特性を示す特性図である。
図13】従来の半導体装置の構造を示す断面図である。
図14】従来の半導体装置の一部を半導体基板のおもて面側から見たレイアウトを示す平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0030】
以下に添付図面を参照して、この発明にかかる炭化珪素半導体装置および炭化珪素半導体装置の製造方法の好適な実施の形態を詳細に説明する。本明細書および添付図面においては、nまたはpを冠記した層や領域では、それぞれ電子または正孔が多数キャリアであることを意味する。また、nやpに付す+および-は、それぞれそれが付されていない層や領域よりも高不純物濃度および低不純物濃度であることを意味する。なお、以下の実施の形態の説明および添付図面において、同様の構成には同一の符号を付し、重複する説明を省略する。
【0031】
(実施の形態)
実施の形態にかかる半導体装置は、シリコン(Si)よりもバンドギャップが広い半導体(ワイドバンドギャップ半導体)を半導体材料として用いて構成される。ここでは、実施の形態にかかる半導体装置を構成するワイドバンドギャップ半導体材料として炭化珪素(SiC)を用いた場合を例に、実施の形態にかかる半導体装置の構造について説明する。図1は、実施の形態にかかる半導体装置を半導体基板のおもて面側から見たレイアウトを示す平面図である。
【0032】
図1に示す実施の形態にかかる半導体装置20は、炭化珪素からなる同一の半導体基板(半導体チップ)10の活性領域1に、メイン半導体素子11と、当該メイン半導体素子11を保護・制御するための1つ以上の回路部と、を有する。活性領域1は、半導体基板10の略中央(チップ中央)に設けられている。メイン半導体素子11は、半導体装置20の主動作を行う縦型MOSFETであり、後述するソースパッド21aにより互いに並列接続された複数の単位セル(素子の機能単位)で構成される。
【0033】
メイン半導体素子11は、活性領域1の有効領域(以下、メイン有効領域とする)1aに配置されている。メイン有効領域1aは、メイン半導体素子11のオン時に、半導体基板10の裏面からおもて面に向かう方向(深さ方向Zに対して反対方向)にメイン半導体素子11の主電流(ドリフト電流)が流れる領域である。メイン有効領域1aは、例えば略矩形状の平面形状を有し、活性領域1の大半の表面積を占める。略矩形状の平面形状のメイン有効領域1aの3辺が後述するエッジ終端領域2に隣接する。
【0034】
メイン半導体素子11を保護・制御するための回路部は、例えば、電流センス部12、温度センス部13、過電圧保護部(不図示)および演算回路部(不図示)等の高機能部であり、活性領域1のメイン無効領域1bに配置される。メイン無効領域1bは、メイン半導体素子11の単位セルが配置されていない領域であり、メイン半導体素子11として機能しない。メイン無効領域1bは例えば略矩形状の平面形状を有し、略矩形状の平面形状のメイン有効領域1aの残りの1辺とエッジ終端領域2との間に配置される。
【0035】
エッジ終端領域2は、活性領域1と半導体基板10の端部(チップ端部)との間の領域であり、活性領域1に隣接して、活性領域1の周囲を囲み、半導体基板10のおもて面側の電界を緩和して耐圧を保持する機能を有する。エッジ終端領域2には、例えばフィールドリミッティングリング(FLR:Field Limiting Ring)や接合終端(JTE:Junction Termination Extension)構造等の一般的な耐圧構造(不図示)が配置される。耐圧とは、半導体装置が誤動作や破壊を起こさない限界の電圧である。
【0036】
メイン半導体素子11のソースパッド(電極パッド)21aは、メイン有効領域1aにおいて半導体基板10のおもて面上に配置される。メイン半導体素子11のソースパッド21aは、当該ソースパッド21a以外の電極パッドと離れて配置されている。メイン半導体素子11は、他の回路部に比べて電流能力が大きい。このため、メイン半導体素子11のソースパッド21aは、メイン有効領域1aと略同じ平面形状を有し、メイン有効領域1aのほぼ全面を覆う。
【0037】
ソースパッド21a以外の電極パッドは、メイン無効領域1bにおいて半導体基板10のおもて面上に互いに離れて配置される。ソースパッド21a以外の電極パッドとは、メイン半導体素子11のゲートパッド21b、電流センス部12の電極パッド(OCパッド)22、温度センス部13の電極パッド(アノードパッドおよびカソードパッド)23a,23b、過電圧保護部の電極パッド(以下、OVパッドとする:不図示)、および演算回路部の電極パッド(不図示)等である。
【0038】
ソースパッド21a以外の電極パッドは、例えば略矩形状の平面形状を有し、後述する端子ピン48b~48d(図3,4参照)やワイヤー(不図示)の接合に必要な表面積を有する。図1には、ソースパッド21a以外の電極パッドがメイン無効領域1bとエッジ終端領域2との境界に沿った第1方向Xに1列に配置された場合を示す。図1には、ソースパッド21a、ゲートパッド21b、OCパッド22、アノードパッド23aおよびカソードパッド23bを、それぞれS、G、OC、AおよびKと付した矩形状に図示する。
【0039】
電流センス部12は、メイン半導体素子11に並列接続され、メイン半導体素子11と同じ条件で動作して、メイン半導体素子11に流れる過電流(OC:Over Current)を検出する機能を有する。電流センス部12は、メイン半導体素子11と離れて配置されている。電流センス部12は、メイン半導体素子11と同一構成の単位セルを、メイン半導体素子11の単位セルの個数(例えば1千個以上程度)よりも少ない個数(例えば10個程度)で備えた縦型MOSFETであり、メイン半導体素子11よりも表面積が小さい。
【0040】
電流センス部12の単位セルは、半導体基板10の、OCパッド22で覆われた領域の一部の領域(以下、センス有効領域とする)12aに配置されている。電流センス部12の単位セルは、半導体基板10のおもて面に平行な方向に互いに隣接して配置される。電流センス部12の単位セルが互いに隣接する方向は、例えば、メイン半導体素子11の単位セルが互いに隣接する方向と同じである。電流センス部12の単位セルは、OCパッド22により互いに並列接続されている。
【0041】
また、半導体基板10の、OCパッド22で覆われた領域のうち、センス有効領域12aを除く領域は、電流センス部12として機能しないセンス無効領域12bである。センス無効領域12bには、電流センス部12の単位セルが配置されていない。メイン無効領域1bの、センス有効領域12aを除く領域のほぼ全域において、半導体基板10のおもて面の表面領域に、センス有効領域12aから後述するp型ベース領域34b(図2,3参照)が延在している。
【0042】
温度センス部13は、ダイオードの温度特性を利用してメイン半導体素子11(半導体基板10)の温度を検出する機能を有する。温度センス部13は、アノードパッド23aおよびカソードパッド23bの直下に配置されている。温度センス部13は、例えば、半導体基板10のおもて面の層間絶縁膜40上に設けられたポリシリコン(poly-Si)層で構成されたポリシリコンダイオードであってもよいし、半導体基板10の内部に形成されたp型領域とn型領域とのpn接合で形成された拡散ダイオードであってもよい。
【0043】
過電圧保護部(不図示)は、例えばサージ等の過電圧(OV:Over Voltage)からメイン半導体素子11を保護するダイオードである。電流センス部12、温度センス部13および過電圧保護部は、演算回路部により制御される。演算回路部は、電流センス部12、温度センス部13および過電圧保護部の出力信号に基づいてメイン半導体素子11を制御する。演算回路部は、CMOS(Complementary MOS:相補型MOS)回路など複数の半導体素子で構成される。
【0044】
次に、実施の形態にかかる半導体装置20の断面構造について説明する。図2~4は、図1の活性領域の断面構造を示す断面図である。図5Aは、図1の活性領域の一部を半導体基板のおもて面側から見たレイアウトを示す平面図である。図5B,5Cは、図1の活性領域の一部を半導体基板のおもて面側から見たレイアウトの別の一例を示す平面図である。図2には、メイン有効領域1aおよび電流センス部12の断面構造(図1の切断線X1-X2-X3-X4における断面構造)を示す。図3には、メイン有効領域1a、センス有効領域12aおよび温度センス部13の断面構造(図1の切断線X1-X2、切断線X3-X4および切断線Y1-Y2における断面構造)を示す。
【0045】
図2,3のメイン有効領域1aおよびセンス有効領域12aにはそれぞれ一部の単位セルを示す。図2,3のメイン有効領域1aの断面構造は、図5Aの切断線A-A’における断面構造に相当する。図2,3には、メイン有効領域1aの最も第2方向Y側の単位セルを示しており、メイン有効領域1aの外周部分である最外周のトレンチ37aの外側にはn+型ソース領域35aを有していない構成としている。また、図5Aに示すように、メイン有効領域1aにおける断面構造は互いに隣り合うすべてのトレンチ37a間にn+型ソース領域35aを有する。
【0046】
図4には、図5Aの切断線B-B’における断面構造を示す。図5A~5Cには、メイン半導体素子11のトレンチ37aの底面にかかる電界を緩和させる第1p+型領域61a(第1高濃度領域:破線の矩形で囲むハッチング部分)および第2p+型領域62a(第2高濃度領域:破線の縦線間のハッチング部分)のレイアウトを示す。図5A~5Cには、第1,2p+型領域61a,62aの平面的な配置が明確になるように、第1,2p+型領域61a,62aの他に、n+型ソース領域35a、p++型コンタクト領域36aおよびトレンチ37a等を図示している。
【0047】
メイン半導体素子11は、メイン有効領域1aにおいて半導体基板10のおもて面側に、p型ベース領域34a、n+型ソース領域35a、p++型コンタクト領域36a、トレンチ37a、ゲート絶縁膜38aおよびゲート電極39aで構成されたトレンチゲート構造のMOSゲート(金属-酸化膜-半導体の3層構造からなる絶縁ゲート)を有する。半導体基板10は、炭化珪素からなるn+型出発基板71のおもて面上にn-型ドリフト領域(第1半導体領域)32およびp型ベース領域(第2半導体領域)34aとなる各炭化珪素層72,73を順にエピタキシャル成長させてなる。
【0048】
+型出発基板71は、メイン半導体素子11および電流センス部12のn+型ドレイン領域31となる。半導体基板10の、p型炭化珪素層73側の主面をおもて面とし、n+型出発基板71側の主面(n+型出発基板71の裏面)を裏面とする。ここでは、メイン半導体素子11、および、メイン半導体素子11を保護・制御する回路部がピン状の配線部材(後述する端子ピン48a~48d)を用いた同一構成の配線構造を有する場合を例に説明するが、ピン状の配線部材に代えて、ワイヤーを用いた配線構造としてもよい。
【0049】
トレンチ37aは、半導体基板10のおもて面から深さ方向Zにp型炭化珪素層73を貫通してn-型炭化珪素層72に達する。トレンチ37aは、半導体基板10のおもて面に平行な方向(ここでは第1方向X)に延在するストライプ状に配置される。トレンチ37aの短手方向(ここでは第2方向Y)の幅は、例えば1.0μm程度である。トレンチ37aの内部に、ゲート絶縁膜38aを介してゲート電極39aが設けられている。ゲート電極39aは、トレンチ37aの内部において、トレンチ37aが延在する第1方向Xに直線状に延在する。
【0050】
互いに隣り合うトレンチ37a間において、半導体基板10のおもて面の表面領域に、p型ベース領域34a、n+型ソース領域(第3半導体領域)35aおよびp++型コンタクト領域36aがそれぞれ選択的に設けられている。n+型ソース領域35aおよびp++型コンタクト領域36aは、半導体基板10のおもて面とp型ベース領域34aとの間に、p型ベース領域34aに接してそれぞれ選択的に設けられている。n+型ソース領域35aおよびp++型コンタクト領域36aは、半導体基板10のおもて面に露出されている。
【0051】
+型ソース領域35aおよびp++型コンタクト領域36aが半導体基板10のおもて面に露出とは、n+型ソース領域35aおよびp++型コンタクト領域36aが後述する層間絶縁膜40の第1コンタクトホール40aの内部で後述するNiSi膜41aに接することである。n+型ソース領域35aとp++型コンタクト領域36aとは、互いに隣り合うトレンチ37a間において、ゲート電極39aが延在する方向と同じ第1方向Xに交互に繰り返し配置されている。
【0052】
+型ソース領域35aはトレンチ37aの側壁においてゲート絶縁膜38aに接し、p++型コンタクト領域36aはトレンチ37aから離れた位置においてn+型ソース領域35aに接する。n+型ソース領域35aは、互いに隣り合うトレンチ37a間においてp++型コンタクト領域36aの周囲を囲む梯子状の平面形状をなす。このため、n+型ソース領域35aは、トレンチ37aの側壁に沿って第1方向Xに延在する部分と、第1方向Xに互いに隣り合うp++型コンタクト領域36a間に挟まれた部分と、を有する。
【0053】
++型コンタクト領域36aは設けられていなくてもよい。この場合、p++型コンタクト領域36aに代えて、p型ベース領域34aが半導体基板10のおもて面に達して露出され、p型ベース領域34aの、半導体基板10のおもて面に露出された表面領域の周囲をn+型ソース領域35aが囲む。半導体基板10の内部において、p型ベース領域34aとn+型ドレイン領域31(n+型出発基板71)との間に、p型ベース領域34aおよびn+型ドレイン領域31に接して、n-型ドリフト領域32が設けられている。
【0054】
p型ベース領域34aとn-型ドリフト領域32との間に、これらの領域に接して、n型電流拡散領域(電流経路領域)33aが設けられていてもよい。n型電流拡散領域33aは、キャリアの広がり抵抗を低減させる、いわゆる電流拡散層(Current Spreading Layer:CSL)である。また、半導体基板10の内部において、トレンチ37aの底面よりもn+型ドレイン領域31に近い位置に、トレンチ37aの底面にかかる電界を緩和させる第1,2p+型領域61a,62aが設けられている。
【0055】
第1,2p+型領域61a,62aはn型電流拡散領域33aの内部で終端し、n型電流拡散領域33aに周囲を囲まれていてもよい(不図示)。第1,2p+型領域61a,62aは、ドレイン側にn型電流拡散領域33aと同じ位置で終端して、n-型ドリフト領域32に接していてもよい(不図示)。または、第1,2p+型領域61a,62aは、n型電流拡散領域33aよりもドレイン側に延在して、n-型ドリフト領域32の内部で終端していてもよい(図2~4参照)。言い換えれば、n型電流拡散領域33aは、第1,2p+型領域61a,62aよりも深く形成しても浅く形成してもよい。
【0056】
第1p+型領域61aは、p型ベース領域34aと離れて設けられ、深さ方向Zにトレンチ37aの底面に対向する。第1p+型領域61aは、トレンチ37aの底面と接していてもよいし、接していなくてもよい。第1p+型領域61aは、ゲート電極39aが延在する方向と同じ第1方向Xに点在する(図5A参照)。深さ方向Zにトレンチ37aの底面に対向する部分で、第1方向Xに、第1p+型領域61aとn型電流拡散領域33aとが交互に繰り返し配置されている。これにより、第1p+型領域61aによるトレンチ37aの底面での電界緩和効果を得るとともに、低オン抵抗化を図ることができる。
【0057】
第1p+型領域61aは、例えば略矩形状の平面形状を有する。第1方向Xに互いに隣り合う第1p+型領域61a間の間隔w2は、例えば1.0μm以下程度である。第1p+型領域61aの第1方向Xの幅w12は、例えばイオン注入による加工限界値以上で1.0μm以下程度であり、好ましくは第1方向Xに互いに隣り合う第1p+型領域61a間の間隔w2と略同じ寸法であることがよい。また、第1p+型領域61aの第1方向Xの幅w12は、例えば第1p+型領域61aの第2方向Yの幅w21よりも狭いことがよい。
【0058】
このように、第1p+型領域61aの配置および寸法を設定することで、後述するように所定耐圧と所定の低オン抵抗とを満たすことができる(図12参照)。所定耐圧を維持するためには、第1p+型領域61aの第2方向Yの幅w21は、トレンチ37aの短手方向の幅に対して最低限50%以上が必要であり、100%以上とすることがより好ましい。また、低オン抵抗とするためには、第1p+型領域61aの第2方向Yの幅w21は、トレンチ37aの短手方向の幅に対して150%以下であることが好ましい。第1,2p+型領域61a,62aの第2方向Yの幅w21,w22は略同じである。幅が略同じとは、プロセスのばらつきによる許容誤差を含む範囲で同じ幅であることを意味する。
【0059】
第2p+型領域62aは、互いに隣り合うトレンチ37a間に、第1p+型領域61aおよびトレンチ37aと離れて設けられ、かつp型ベース領域34aに接する。第2p+型領域62aは、トレンチ37aが延在する方向と同じ第1方向Xに、トレンチ37aと略同じ長さで直線状に延在する(図5A参照)。第2p+型領域62aは、第2方向Yに、n型電流拡散領域33aを介して第1p+型領域61aに対向し、第1p+型領域61aに対向しない部分でn型電流拡散領域33aを介してトレンチ37aに対向する。
【0060】
したがって、n型電流拡散領域33aは、第1,2p+型領域61a,62aと同じ深さ位置において、第2p+型領域62aと第1p+型領域61aとの間の第1部分63aよりも、第2p+型領域62aとトレンチ37aとの間の第2部分64aで第2方向Yの幅w11が広くなっている(w11>w1)。これにより、メイン半導体素子11のオン時に、n型電流拡散領域33aの第1部分63aよりも第2部分64aで、メイン半導体素子11のJFET抵抗を低くすることができる。
【0061】
また、上述したように第2p+型領域62aは、互いに隣り合うトレンチ37a間に第1方向Xにトレンチ37aと略同じ長さで延在している。このため、トレンチ37aの底面に対向する第1p+型領域61aが部分的に間引かれて配置されていても、当該第1p+型領域61aが存在しない部分においては、第2p+型領域62aによってトレンチ37aの底面にかかる電界を緩和することができる。これにより、トレンチ37aの底面に部分的に高電界がかかることを抑制することができる。
【0062】
図5Aでは第1p+型領域61aはすべてフローティング電位となっているが、第2p+型領域62aに電気的に接続することで、第1p+型領域61aをソースパッド21aの電位に固定してもよい。第1p+型領域61aをソースパッド21aの電位に固定にすることで、確実にトレンチ37aの底面にかかる電界を緩和させることができる。このような変形例を図5B,5Cに示す。例えば、図5Bに示すように、互いに隣り合う第1,2p+型領域61a,62a同士を連結するp+型領域65(第1,2p+型領域61a,62aと異なるハッチング部分:連結領域)が選択的に設けられていてもよい。図5Bでは、第1p+型領域61aが3本あるごとに、第1p+型領域61aと第2p+型領域62aとを電気的に接続するp+型領域65を設けた構成となっている。
【0063】
また、図5Cに示すように、第1p+型領域61aを第2方向Yに延在させて、第1p+型領域61aの端部を第2p+型領域62aとつなげることで、第1,2p+型領域61a,62aが格子状に配置されてもよい。このような構成にすることで、安全動作領域が広いというメリットがある。ここで、第1p+型領域61aをすべてソースパッド21aの電位に固定しているので、第1p+型領域61aがフローティング電位の場合(図5A参照)よりも第1方向Xに互いに隣り合う第1p+型領域61a間の間隔w2を広げて、JFET抵抗を低減する領域を広くしてもよい。第1方向Xに互いに隣り合う第1p+型領域61a間の間隔w2は、例えば0.5μm以上1.5μm以下程度である。
【0064】
層間絶縁膜40は、半導体基板10のおもて面のほぼ全面に設けられ、メイン有効領域1aにおいてゲート電極39aを覆う。すべての単位セルのゲート電極39aがゲートパッド21b(図1参照)に電気的に接続されている。メイン有効領域1aにおいて深さ方向Zに層間絶縁膜40を貫通する第1コンタクトホール40aが設けられている。第1コンタクトホール40aには、n+型ソース領域35aおよびp++型コンタクト領域36aが露出されている。
【0065】
ニッケルシリサイド(NiSi、Ni2Siまたは熱的に安定なNiSi2:以下、まとめてNiSiとする)膜41aは、第1コンタクトホール40aの内部において半導体基板10にオーミック接触し、n+型ソース領域35aおよびp++型コンタクト領域36aに電気的に接続されている。p++型コンタクト領域36aが設けられていない場合、p++型コンタクト領域36aに代えて、p型ベース領域34aが第1コンタクトホール40aに露出され、NiSi膜41aに電気的に接続される。
【0066】
メイン有効領域1aにおける層間絶縁膜40およびNiSi膜41aの表面全体に、層間絶縁膜40およびNiSi膜41aの表面に沿ってバリアメタル46aが設けられている。バリアメタル46aは、バリアメタル46aの各金属膜間またはバリアメタル46aを挟んで対向する領域間での相互反応を防止する機能を有する。バリアメタル46aは、例えば、第1窒化チタン(TiN)膜42a、第1チタン(Ti)膜43a、第2TiN膜44aおよび第2Ti膜45aを順に積層した積層構造を有していてもよい。
【0067】
第1TiN膜42aは、層間絶縁膜40の表面全体を覆う。第1TiN膜42aは、NiSi膜41aが形成された部分における半導体基板10のおもて面上には設けられていない。第1Ti膜43aは、第1TiN膜42aおよびNiSi膜41aの表面に設けられている。第2TiN膜44aは、第1Ti膜43aの表面に設けられている。第2Ti膜45aは、第2TiN膜44aの表面に設けられている。第2Ti膜45aの表面全面にソースパッド21aが設けられている。
【0068】
ソースパッド21aは、バリアメタル46aおよびNiSi膜41aを介してn+型ソース領域35aおよびp++型コンタクト領域36aに電気的に接続されている。ソースパッド21aは、例えば、5μm程度の厚さのアルミニウム(Al)膜、アルミニウム-シリコン(Al-Si)膜またはアルミニウム-シリコン-銅(Al-Si-Cu)膜であってもよい。ソースパッド21a、バリアメタル46aおよびNiSi膜41aはメイン半導体素子11のソース電極として機能する。
【0069】
ソースパッド21aの上には、めっき膜47aおよびはんだ層(不図示)を介して、端子ピン48aの一方の端部が接合されている。端子ピン48aの他方の端部は、半導体基板10のおもて面に対向するように配置された金属バー(不図示)に接合されている。また、端子ピン48aの他方の端部は、半導体基板10を実装したケース(不図示)の外側に露出し、外部装置(不図示)と電気的に接続される。端子ピン48aは、半導体基板10のおもて面に対して略垂直に立てた状態でめっき膜47aにはんだ接合されている。
【0070】
端子ピン48aは、所定直径を有する丸棒状(円柱状)の配線部材であり、外部の接地電位(最低電位)に接続される。端子ピン48aは、ソースパッド21aの電位を外部に取り出す外部接続用端子である。第1,2保護膜49a,50aは例えばポリイミド(polyimide)膜である。第1保護膜49aは、ソースパッド21aの表面のめっき膜47a以外の部分を覆う。第2保護膜50aは、めっき膜47aと第1保護膜49aとの境界を覆う。
【0071】
ドレイン電極51は、半導体基板10の裏面(n+型出発基板71の裏面)全面にオーミック接触している。ドレイン電極51上には、例えば、Ti膜、ニッケル(Ni)膜および金(Au)膜を順に積層した積層構造でドレインパッド(電極パッド:不図示)が設けられている。ドレインパッドは、絶縁基板の例えば銅(Cu)箔等で形成された金属ベース板(不図示)にはんだ接合され、当該金属ベース板を介して冷却フィン(不図示)のベース部に少なくとも一部が接触している。
【0072】
このように半導体基板10のおもて面のソースパッド21aに端子ピン48aを接合し、かつ裏面のドレインパッドを絶縁基板の金属ベース板に接合することで、半導体基板10は両主面それぞれに冷却構造を備えた両面冷却構造となっている。半導体基板10で発生した熱は、半導体基板10の裏面のドレインパッドに接合された金属ベース板を介して冷却フィンのフィン部から放熱され、かつ半導体基板10のおもて面の端子ピン48aを接合した金属バーから放熱される。
【0073】
電流センス部12は、メイン半導体素子11の対応する各部と同じ構成のp型ベース領域34b、n+型ソース領域35b、p++型コンタクト領域36b、トレンチ37b、ゲート絶縁膜38b、ゲート電極39bおよび層間絶縁膜40を備える。電流センス部12のMOSゲートの各部は、メイン無効領域1bのセンス有効領域12aに設けられている。p型ベース領域34bは、半導体基板10のおもて面の表面領域のn-型領域32aにより、メイン半導体素子11のp型ベース領域34aと分離されている。
【0074】
p型ベース領域34bは、例えばセンス有効領域12aからメイン無効領域1bのほぼ全域に延在している。電流センス部12は、n型電流拡散領域33bおよび第1,2p+型領域61b,62bを有していてもよい。この場合、n型電流拡散領域33bおよび第2p+型領域62bは、メイン半導体素子11と同様に配置される。第1p+型領域61bは、メイン半導体素子11と同様に第1方向Xに点在していてもよいし、従来構造(図14の符号261参照)と同様に第1方向Xに直線状に延在していてもよい。
【0075】
第1p+型領域61bを第1方向Xに点在させる場合、第1p+型領域61bの配置および寸法は、メイン半導体素子11と同様であってもよい。p++型コンタクト領域36bは、設けられていなくてもよい。この場合、メイン半導体素子11と同様に、p++型コンタクト領域36bに代えて、p型ベース領域34bが半導体基板10のおもて面に露出される。すべての単位セルのゲート電極39bは、ゲートパッド21b(図1参照)に電気的に接続されている。ゲート電極39bは、層間絶縁膜40に覆われている。
【0076】
センス有効領域12aにおいて層間絶縁膜40には、深さ方向Zに貫通して半導体基板10に達する第2コンタクトホール40bが設けられ、n+型ソース領域35bおよびp++型コンタクト領域36bが露出されている。センス有効領域12aにおいて半導体基板10のおもて面には、メイン半導体素子11と同様に、NiSi膜41bおよびバリアメタル46bが設けられている。符号42b~45bは、それぞれバリアメタル46bを構成する第1TiN膜、第1Ti膜、第2TiN膜および第2Ti膜である。
【0077】
NiSi膜41bは、第2コンタクトホール40bの内部において半導体基板10にオーミック接触し、n+型ソース領域35bおよびp++型コンタクト領域36bに電気的に接続されている。p++型コンタクト領域36bが設けられていない場合、p++型コンタクト領域36bに代えて、p型ベース領域34bが第2コンタクトホール40bに露出され、NiSi膜41bに電気的に接続される。バリアメタル46bは、センス無効領域12bにおける層間絶縁膜40上に延在している。
【0078】
バリアメタル46bの表面全面に、ソースパッド21aと離れて、OCパッド22が設けられている。OCパッド22は、バリアメタル46bおよびNiSi膜41bを介してn+型ソース領域35bおよびp型ベース領域34bに電気的に接続されている。OCパッド22は、例えば、ソースパッド21aと同じ材料で、ソースパッド21aと同時に形成される。OCパッド22、バリアメタル46bおよびNiSi膜41bは、電流センス部12のソース電極として機能する。
【0079】
OCパッド22上に、ソースパッド21a上の配線構造と同じ配線構造で、端子ピン48bが接合される。端子ピン48bは、端子ピン48aよりも小さい直径を有する丸棒状(円柱状)の配線部材である。端子ピン48bは、例えばOCパッド22の電位を外部に取り出す外部接続用端子であり、外部の抵抗体(不図示)を介してOCパッド22を接地電位に接続する。符号47b,49b,50bは、それぞれOCパッド22上の配線構造を構成するめっき膜および第1,2保護膜である。
【0080】
メイン有効領域1aのp型ベース領域34aおよびセンス有効領域12aのp型ベース領域34bは、半導体基板10の表面領域の図示省略するn-型領域により、素子分離のためのp型領域(不図示)と分離されている。素子分離のためのp型領域とは、エッジ終端領域2に活性領域1の周囲を囲む略矩形状に設けられ、活性領域1とエッジ終端領域2とを電気的に分離する寄生ダイオードをn-型ドリフト領域32とのpn接合で形成するフローティングのp型領域である。
【0081】
温度センス部13は、例えば、p型アノード領域であるp型ポリシリコン層81とn型カソード領域であるn型ポリシリコン層82とのpn接合で形成されたポリシリコンダイオードである(図3)。p型ポリシリコン層81およびn型ポリシリコン層82は、メイン無効領域1bにおいて、層間絶縁膜40上に設けられている。温度センス部13は、層間絶縁膜40により、半導体基板10、メイン半導体素子11および電流センス部12と電気的に絶縁されている。
【0082】
アノードパッド23aおよびカソードパッド23bは、それぞれ、これらを覆う層間絶縁膜83の第3,4コンタクトホール83a,83bにおいてp型ポリシリコン層81およびn型ポリシリコン層82に接する。アノードパッド23aおよびカソードパッド23bは、例えば、ソースパッド21aと同じ材料で、ソースパッド21aと同時に形成される。アノードパッド23a上およびカソードパッド23b上には、それぞれ、ソースパッド21a上の配線構造と同じ配線構造で端子ピン48c,48dが接合されている。
【0083】
端子ピン48c,48dは、それぞれアノードパッド23aおよびカソードパッド23bの電位を外部に取り出す外部接続用端子であり、温度センス部13の電流能力に応じた所定の直径を有する丸棒状の配線部材である。符号47c,47dは、それぞれアノードパッド23a上の配線構造およびカソードパッド23b上の配線構造を構成するめっき膜である。符号49c,50cは、それぞれ温度センス部13上の配線構造を構成する第1,2保護膜である。温度センス部13にバリアメタルは設けられていない。
【0084】
また、メイン無効領域1bには、メイン半導体素子11のゲートパッド21bを配置したゲートパッド部14が設けられている(図1参照)。ゲートパッド21bは、メイン無効領域1bにおける層間絶縁膜40上に、他の電極パッドと離れて設けられている。ゲートパッド21bは、例えば、ソースパッド21aと同じ材料で、ソースパッド21aと同時に形成される。ゲートパッド21b上には、ソースパッド21a上の配線構造と同じ配線構造で、端子ピン(不図示)が接合されている。
【0085】
実施の形態にかかる半導体装置20の動作について説明する。メイン半導体素子11のソース電極(ソースパッド21a)に対して正の電圧(順方向電圧)がドレイン電極51に印加された状態で、メイン半導体素子11のゲート電極39aにゲート閾値電圧以上の電圧が印加されると、メイン半導体素子11のp型ベース領域34aのトレンチ37aに沿った部分にチャネル(n型の反転層)が形成される。それによって、メイン半導体素子11のn+型ドレイン領域31からチャネルを通ってn+型ソース領域35aへ向かう電流が流れ、メイン半導体素子11がオンする。
【0086】
n型電流拡散領域33aの第1,2部分63a,64a(JFET領域)は、メイン半導体素子11のオン時にチャネルを通って流れる電流の経路となる。メイン半導体素子11のオン時、第1,2p+型領域61a,62aとn型電流拡散領域33aとのpn接合からn型電流拡散領域33aの第1,2部分63a,64aに空乏層が広がるが、n型電流拡散領域33aの第1部分63aよりも第2部分64aで電流の経路となる部分(n型電流拡散領域33aの空乏層が広がっていない部分)を広く残すことができる。
【0087】
その理由は、第1p+型領域61aがない領域においてn型電流拡散領域33aの第1,2部分63a,64aのうちの一部(第2部分64a)の第2方向Yの幅w11が広いからである。このn型電流拡散領域33aの第2部分64aの第2方向Yの幅w11が広がった分だけ電流が流れる領域が広がるので、n型電流拡散領域33aの第2部分64aを通って電流が流れやすくなる。さらには、メイン半導体素子11の単位セルの微細化とともに、互いに隣り合う第1,2p+型領域61a,62a間の幅(n型電流拡散領域33aの第1部分63aの第2方向Yの幅w1)が加工限界(例えば0.2μm程度)まで狭くなったとしても、メイン半導体素子11のJFET抵抗を低減させることができる。また、第1方向Xに互いに隣り合う第1p+型領域61a間の間隔w2を1.0μm以内に抑えているので、スイッチング時に正孔がゲート絶縁膜38aに達することはない。このため、トレンチ37aの底面にかかる電界を緩和させる能力は維持することができる。
【0088】
メイン半導体素子11と同じ条件で、電流センス部12のソース電極(OCパッド22)に対して正の電圧(順方向電圧)がドレイン電極51に印加された状態で、電流センス部12のゲート電極39bにゲート閾値電圧以上の電圧が印加されると、電流センス部12のp型ベース領域34bのトレンチ37bに沿った部分にチャネル(n型の反転層)が形成される。それによって、電流センス部12のn+型ドレイン領域31からn+型ソース領域35bへ向かって電流(以下、センス電流とする)が流れ、電流センス部12がオンする。
【0089】
メイン半導体素子11のオン時に、電流センス部12をオンさせた状態とする。電流センス部12にセンス電流が流れることで、電流センス部12のn+型ソース領域35bと接地点との間に接続された抵抗体(不図示)で電圧降下が生じる。メイン半導体素子11に流れる電流の大きさに応じて電流センス部12のセンス電流が大きくなるため、当該抵抗体での電圧降下も大きくなる。したがって、この抵抗体での電圧降下の大きさを監視することで、メイン半導体素子11での過電流を検知可能である。
【0090】
一方、メイン半導体素子11は、ゲート電極39aにゲート閾値電圧未満の電圧が印加されたときに、第1,2p+型領域61a,62aおよびp型ベース領域34aと、n型電流拡散領域33aおよびn-型ドリフト領域32とのpn接合が逆バイアスされることで、オフ状態を維持する。電流センス部12のゲート電極39bにもゲート閾値電圧未満の電圧が印加され、電流センス部12は、第1,2p+型領域61b,62bおよびp型ベース領域34bと、n型電流拡散領域33bおよびn-型ドリフト領域32とのpn接合が逆バイアスされることで、オフ状態を維持する。
【0091】
第1,2p+型領域61a,62aとn型電流拡散領域33aおよびn-型ドリフト領域32とのpn接合がトレンチ37aの底面よりもドレイン側に位置することで、メイン半導体素子11のオフ時にトレンチ37aの底面にかかる電界が緩和される。第1,2p+型領域61b,62bとn型電流拡散領域33bおよびn-型ドリフト領域32とのpn接合がトレンチ37bの底面よりもドレイン側に位置することで、電流センス部12のオフ時にトレンチ37bの底面にかかる電界が緩和される。
【0092】
また、メイン半導体素子11のオフ時に、ソース電極(ソースパッド21a)に対して負の電圧をドレイン電極51に印加することで、第1,2p+型領域61a,62aとn型電流拡散領域33aおよびn-型ドリフト領域32とのpn接合で形成される寄生のダイオードに順方向に電流を流すことができる。例えば、メイン半導体素子11自身を保護するための還流ダイオードとして、この半導体基板10の内部に内蔵される寄生のダイオードを使用可能である。
【0093】
メイン半導体素子11の動作時、温度センス部13には、常時、アノードパッド23aから、アノード領域(p型ポリシリコン層81)とカソード領域(n型ポリシリコン層82)とのpn接合を経てカソードパッド23bへ向かって順方向電流を流し続ける。温度センス部13の順方向電流Ifと順方向電圧Vfとの関係を示す曲線(順方向電圧特性)は温度に依存し、高温度になるほど順方向電圧Vfが小さくなる。そこで、温度センス部13の順方向電圧特性を予め取得して例えば記憶部(不図示)に保存しておく。
【0094】
メイン半導体素子11の動作時、例えば、演算回路部によって、常温(例えば25℃程度)での温度センス部13のアノードパッド23aとカソードパッド23bとの間で生じる順方向電圧Vf(温度センス部13での電圧降下)を監視し続ける。温度センス部13の順方向電圧Vfが低下したときに、メイン半導体素子11(半導体基板10)に高温度の部分が生じているとして、演算回路部によってメイン半導体素子11へのゲート電圧の供給を停止して、メイン半導体素子11の動作を停止する。
【0095】
次に、実施の形態にかかる半導体装置20の製造方法について説明する。図6~11は、実施の形態にかかる半導体装置の製造途中の状態を示す断面図である。図6~11には、メイン半導体素子11の図5Aの切断線A-A’における断面構造の製造途中の状態のみを示すが、同一の半導体基板10に作製される半導体素子(図1~3を参照)の各部はメイン半導体素子11の各部と同じ不純物濃度および深さの各部と同時に形成される。
【0096】
まず、図6に示すように、炭化珪素からなるn+型出発基板(半導体ウエハ)71として、例えば窒素(N)ドープの炭化珪素単結晶基板を用意する。次に、n+型出発基板71のおもて面に、n+型出発基板71よりも低濃度に窒素がドープされたn-型炭化珪素層72をエピタキシャル成長させる。メイン半導体素子11が耐圧3300Vクラスである場合、n-型炭化珪素層72の厚さt1は、例えば30μm程度であってもよい。
【0097】
次に、図7に示すように、フォトリソグラフィおよび例えばAl等のp型不純物のイオン注入により、メイン有効領域1aにおいてn-型炭化珪素層72の表面領域に、第1p+型領域61aおよびp+型領域91をそれぞれ選択的に形成する。第1p+型領域61aおよびp+型領域91は、第2方向Y(図5A参照)に交互に繰り返し配置する。第1p+型領域61aは、第1方向X(図5A参照)に所定の間隔w2で点在して配置する。
【0098】
次に、フォトリソグラフィおよび例えば窒素等のn型不純物のイオン注入により、メイン有効領域1aの全域にわたってn-型炭化珪素層72の表面領域にn型領域92を形成する。n型領域92は、第1p+型領域61aとp+型領域91との間に、これらp+型領域61a,91に接して形成する。n型領域92と、p+型領域61a,91と、の形成順序を入れ替えてもよい。
【0099】
互いに隣り合うp+型領域61a,91間の距離d2は例えば1.5μm程度である。p+型領域61a,91は、例えば深さd1および不純物濃度がそれぞれ0.5μm程度および5.0×1018/cm3程度である。n型領域92の深さd3および不純物濃度は、例えば、それぞれ0.4μm程度および1.0×1017/cm3程度である。n-型炭化珪素層72の、イオン注入されていない部分がn-型ドリフト領域32となる。
【0100】
次に、図8に示すように、n-型炭化珪素層72上にさらに例えば窒素等のn型不純物をドープしたn-型炭化珪素層を例えば0.5μm程度の厚さt2でエピタキシャル成長させて、n-型炭化珪素層72の厚さを厚くする。これによって、n-型炭化珪素層72の厚さが所定厚さになる。n-型炭化珪素層72の厚さを増した部分72aの不純物濃度は、例えば3×1015/cm3であってもよい。
【0101】
次に、フォトリソグラフィおよびAl等のp型不純物のイオン注入により、n-型炭化珪素層72の厚さを増した部分72aに、p+型領域91に達するp+型領域93を選択的に形成する。次に、フォトリソグラフィおよび例えば窒素などのn型不純物のイオン注入により、n-型炭化珪素層72の厚さを増した部分72aに、n型領域92に達するn型領域94を選択的に形成する。
【0102】
これによって、深さ方向Zに隣接するp+型領域91,93同士が連結されて第2p+型領域62aが形成される。深さ方向Zに隣接するn型領域92,94同士が連結されてn型電流拡散領域33aが形成される。p+型領域93およびn型領域94の不純物濃度等の条件は、例えばそれぞれp+型領域91およびn型領域92と同様である。p+型領域93とn型領域94との形成順序を入れ替えてもよい。
【0103】
次に、図9に示すように、n-型炭化珪素層72上に、例えばAl等のp型不純物をドープしたp型炭化珪素層73をエピタキシャル成長させる。p型炭化珪素層73の厚さt3および不純物濃度は、例えば、それぞれ1.3μm程度および4.0×1017/cm3程度である。ここまでの工程により、n+型出発基板71上にn-型炭化珪素層72およびp型炭化珪素層73を順に積層した半導体基板10(半導体ウエハ)が作製される。
【0104】
次に、フォトリソグラフィおよびイオン注入を1組とする工程を異なる条件で繰り返し行い、メイン有効領域1aにおいてp型炭化珪素層73の表面領域に、n+型ソース領域35aおよびp++型コンタクト領域36aをそれぞれ選択的に形成する。メイン有効領域1aのp型炭化珪素層73の、n+型ソース領域35aおよびp++型コンタクト領域36aと、n-型炭化珪素層72と、の間の部分がp型ベース領域34aとなる。
【0105】
次に、イオン注入で形成した拡散領域(第1,2p+型領域61a,62a、n型電流拡散領域33a、n+型ソース領域35aおよびp++型コンタクト領域36a)について、例えば1700℃程度の温度で2分間程度の熱処理(活性化アニール)により不純物活性化を行う。活性化アニールは、すべての拡散領域の形成後にまとめて1回行ってもよいし、イオン注入により拡散領域を形成するごとに行ってもよい。
【0106】
次に、図10に示すように、フォトリソグラフィおよびエッチングにより、半導体基板10のおもて面からn+型ソース領域35aおよびp型ベース領域34aを貫通してn型電流拡散領域33aに達し、深さ方向Z(図2,3参照)に第1p+型領域61aに対向するトレンチ37aを形成する。トレンチ37aは、例えば、第1p+型領域61aに達して、第1p+型領域61aの内部で終端してもよい。
【0107】
次に、図11に示すように、半導体基板10のおもて面およびトレンチ37aの内壁に沿ってゲート絶縁膜38aを形成する。ゲート絶縁膜38aは、例えば、酸素(O2)雰囲気中において1000℃程度の温度で半導体表面を熱酸化することで形成した熱酸化膜であってもよいし、高温酸化(HTO:High Temperature Oxide)による堆積膜であってもよい。
【0108】
次に、トレンチ37aの内部に埋め込むように、半導体基板10のおもて面に例えばリン(P)ドープのポリシリコン層を堆積(形成)する。次に、フォトリソグラフィおよびエッチングにより、当該ポリシリコン層を選択的に除去して、当該ポリシリコン層の、ゲート電極39aとなる部分のみをトレンチ37aの内部に残す。
【0109】
また、上述したようにメイン半導体素子11のMOSゲートの各部を形成する際に、同一の半導体基板10に作製される半導体素子(電流センス部12、過電圧保護部(不図示)および演算回路部(不図示)等の高機能部:図2,3参照)の各部について、メイン半導体素子11の各部と同じ不純物濃度や深さの各部と同時に形成すればよい。
【0110】
メイン半導体素子11は、半導体基板10のおもて面の表面領域に形成された島状のp型ベース領域34a内に配置することで、p型ベース領域34aとn-型ドリフト領域32とのpn接合分離により、同一の半導体基板10に作製される他の半導体素子と分離される。電流センス部12は、メイン半導体素子11と同じ構造で、半導体基板10のおもて面の表面領域に形成された島状のp型ベース領域34b内に配置すればよい。
【0111】
次に、ゲート電極39aを覆うように、半導体基板10のおもて面全面に、例えばBPSG(Boro Phospho Silicate Glass)等やPSG(Phospho Silicate Glass)等の層間絶縁膜40を例えば1μmの厚さで形成する。温度センス部13は、層間絶縁膜40上にp型ポリシリコン層81およびn型ポリシリコン層82(図3参照)を形成し、層間絶縁膜83で覆えばよい。
【0112】
次に、フォトリソグラフィおよびエッチングにより、深さ方向Zに層間絶縁膜40およびゲート絶縁膜38aを貫通する第1,2コンタクトホール40a,40bを形成する。深さ方向Zに層間絶縁膜83を貫通する第3,4コンタクトホール83a,83bを形成する。第1コンタクトホール40aには、メイン半導体素子11のn+型ソース領域35aおよびp++型コンタクト領域36aを露出させる。
【0113】
第2コンタクトホール40bには、電流センス部12のn+型ソース領域35bおよびp++型コンタクト領域36bを露出させる。第3,4コンタクトホール83a,83bには、それぞれ温度センス部13のp型ポリシリコン層81およびn型ポリシリコン層82を露出させる。次に、熱処理により層間絶縁膜40,83を平坦化(リフロー)する。
【0114】
次に、層間絶縁膜40のみを覆う第1TiN膜42aを形成する。次に、半導体基板10のおもて面の、第1コンタクトホール40aに露出される部分にNiSi膜41aを形成する。次に、NiSi膜41aおよび第1TiN膜42aを覆うように、第1Ti膜43a、第2TiN膜44aおよび第2Ti膜45aを順に積層してバリアメタル46aを形成する。次に、第2Ti膜45a上にソースパッド21aを堆積する。
【0115】
また、第2コンタクトホール40b内にも、NiSi膜41aおよびバリアメタル46aと同時に、これらの金属膜と同じ構成で、それぞれNiSi膜41bおよびバリアメタル46bを形成する。第2~4コンタクトホール40b,83a,83b内にも、ソースパッド21aと同時に、ソースパッド21aと同じ構成で、それぞれ、OCパッド22、アノードパッド23aおよびカソードパッド23bを形成する。
【0116】
また、半導体基板10の裏面にオーミック接触するドレイン電極51を形成し、ドレイン電極51の表面に例えばTi膜、Ni膜および金(Au)膜を順に積層してドレインパッド(不図示)を形成する。
【0117】
次に、半導体基板10のおもて面にポリイミドからなる第1保護膜49a~49cを選択的に形成し、これら第1保護膜49a~49cの開口部にそれぞれ異なる各電極パッド21a,22,23a,23bを露出させる。次に、一般的なめっき前処理の後、一般的なめっき処理により、電極パッド21a,22,23a,23bの、第1保護膜49a~49cの開口部に露出する部分にめっき膜47a~47dを形成する。
【0118】
次に、熱処理(ベーク)によりめっき膜47a~47dを乾燥させる。次に、ポリイミドからなる第2保護膜50a~50cを形成し、めっき膜47a~47dと第1保護膜49a~49cとの各境界を覆う。次に、熱処理(キュア)によりポリイミド膜(第1保護膜49a~49cおよび第2保護膜50a~50c)の強度を向上させる。次に、めっき膜47a~47d上に、それぞれはんだ層により端子ピン48a~48dを接合する。
【0119】
図示省略するが、ゲートパッド21bの上にも、電極パッド21a,22,23a,23b上の配線構造と同時に、第1保護膜、めっき膜および第2保護膜を順に形成し、はんだ層により端子ピンを接合した配線構造を形成する。その後、半導体基板10(半導体ウエハ)をダイシング(切断)して個々のチップ状に個片化することで、図1~5に示す半導体装置20が完成する。
【0120】
以上、説明したように、実施の形態によれば、トレンチの底面にかかる電界を緩和させる第1,2p+型領域のうち、深さ方向にトレンチの底面に対向する第1p+型領域を第1方向に点在して配置することで、第1p+型領域を従来構造と比べて部分的に間引いている。これにより、メイン半導体素子のオン時に流れる電流の経路がJFET領域において部分的に広くなるため、メイン半導体素子の単位セルの微細化とともに、互いに隣り合う第1,2p+型領域間の幅が狭くなったとしても、メイン半導体素子のJFET抵抗が低減され、オン抵抗が低減される。
【0121】
また、実施の形態によれば、トレンチの底面にかかる電界を緩和させる第1,2p+型領域のうち、互いに隣り合うトレンチ間に配置された第2p+型領域を第1方向にトレンチと略同じ長さで延在させる。また、トレンチの底面に対向する部分に第1p+型領域が存在しない部分の幅を1.0μm以下に制限している。これにより、トレンチの底面に対向する部分に第1p+型領域が部分的に存在しなくても、当該第1p+型領域が存在しない部分において、第2p+型領域によってトレンチの底面にかかる電界が緩和される。このため、トレンチの底面に部分的に高電界がかかることを抑制することができる。
【0122】
したがって、第1,2p+型領域によってトレンチの底面全体を保護して所定耐圧を得ることができるとともに、第1p+型領域を部分的に間引いて配置することによってメイン半導体素子のオン抵抗を低減し、メイン半導体素子の電流能力を向上させることができる。また、トレンチ底面に高電界がかかることを抑制することで、ターンオフ時にn-型ドリフト領域32中をソース電極へ向かって流れる正孔電流がソース電極に吐き出される電流量(遮断電流量)が低下することを抑制することができる。
【0123】
また、シリコンを半導体材料としたMOSFETでは、単位セルの微細化、かつJFET抵抗をなくして、オン抵抗を低減させるために、トレンチゲート構造が適用されている。トレンチゲート構造としたとしても、p型ベース領域とn-型ドリフト領域とのpn接合で電界を負担することができ、トレンチ底面のゲート絶縁膜に高電界がかからない。このため、従来構造(図13,14参照)のように、トレンチ底面にかかる電界を緩和する第1,2p+型領域を設ける必要がない。
【0124】
一方、炭化珪素を半導体材料としたMOSFETでは、トレンチゲート構造とすることで、単位セルが微細化され、かつチャネル移動度が大きくなり、オン抵抗が低減される。また、チャネル移動度が大きくなることで、半導体基板に積層するエピタキシャル層の厚さを薄くすることができる。その反面、シリコンよりもバンドギャップが3eVと広いことで、p型ベース領域とn-型ドリフト領域とのpn接合で電界を負担することができず、トレンチ底面のゲート絶縁膜に高電界がかかる。
【0125】
そこで、従来構造のようにトレンチ底面にかかる電界を緩和する第1,2p+型領域を半導体基板のおもて面に延在するストライプ状に設けた構成が提案されているが、第1,2p+型領域とn型電流拡散領域とのpn接合によりJFET抵抗が生じ、単位セルを微細化するほどJFET抵抗が高くなる。実施の形態によれば、上述したように第1,2p+型領域を設けたとしてもJFET抵抗が低減され、低オン抵抗化を実現するとともに、炭化珪素の特長による諸特性(低オン電圧、高速特性、高温特性)を得ることができる。
【0126】
また、実施の形態によれば、トレンチ底面にかかる電界を緩和する第1,2p+型領域を形成するためのイオン注入用マスクのパターンを変えるだけで、従来構造と同様の製造工程を用いることができるため、メイン半導体素子の作製が容易である。
【0127】
(実施例)
メイン半導体素子11の耐圧特性およびオン抵抗特性について検証した。図12は、実施例の耐圧特性およびオン抵抗特性を示す特性図である。図12の横軸には、第1方向Xに互いに隣り合う第1p+型領域61a間の間隔w2を示す。図12の縦軸には、左側にオン抵抗を示し、右側に耐圧を示す。
【0128】
上述した実施の形態にかかる半導体装置20のメイン半導体素子11(図2~5参照)の構造を有する複数の試料(以下、実施例とする)について耐圧およびオン抵抗を測定した結果を図12に示す。実施例は耐圧1200Vクラスとした。実施例の複数の試料は、第1方向Xに互いに隣り合う第1p+型領域61a間の間隔w2がそれぞれ異なる。
【0129】
比較として、従来の半導体装置220のメイン半導体素子(以下、従来例とする:図13,14参照)の耐圧およびオン抵抗を測定した結果も図12に示す。従来例が実施例と異なる点は、第1p+型領域261がトレンチ237と同じ長さで第1方向Xに直線状に延在する点である。従来例の耐圧クラスは実施例と同様である。図12の横軸の間隔=0μmの試料が従来例である。
【0130】
図12に示す結果から、実施例は、従来例と比べて、オン抵抗を低減することができることが確認された。その理由は、深さ方向Zにトレンチ37aに対向する第1p+型領域61aが部分的に間引かれていることで、第1p+型領域61aの存在しない部分でオン時に流れる電流の経路が広くなり、チャネル抵抗を低減することができるからである。
【0131】
また、実施例は、第1方向Xに互いに隣り合う第1p+型領域61a間の間隔w2を広くするほど、オン抵抗を低減することができることが確認された。その一方で、実施例は、第1方向Xに互いに隣り合う第1p+型領域61a間の間隔w2を広くするほど、従来例よりも耐圧が低下することが確認された。
【0132】
その理由は、第1方向Xに互いに隣り合う第1p+型領域61a間の間隔w2を広くするほど、第1p+型領域61aの存在しない部分でトレンチ37aの底面に高電界がかかりやすいからである。また、トレンチ37aの底面の高電界が集中した箇所に、ターンオフ時にn-型ドリフト領域32中をソース電極へ向かって流れる正孔電流が集中する。
【0133】
これによって当該正孔電流がソース電極に吐き出される電流量(遮断電流量)が低下してしまう。このため、第1方向Xに互いに隣り合う第1p+型領域61a間の間隔w2は、第1p+型領域61aの存在しない部分でトレンチ37aの底面に高電界がかかることを抑制し、かつ所定のオン抵抗を確保可能な間隔に設定することがよい。
【0134】
具体的には、逆バイアス安全動作領域(RBSOA:Reverse Bias Safe Operating Area)を広めに取り、第1方向Xに互いに隣り合う第1p+型領域61a間の間隔w2を1.0μm以下程度(破線の縦線よりも左側)として、耐圧クラスの1.2倍以上程度の耐圧(例えば1500V程度)を確保することがよい。
【0135】
図示省略するが、実施例の所定の耐圧クラスを種々変更した場合においても図12に示す結果を同様に得ることができる。
【0136】
以上において本発明は、上述した実施の形態に限らず、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で種々変更可能である。例えば、炭化珪素を半導体材料にすることに代えて、炭化珪素以外のワイドバンドギャップ半導体とした場合においても本発明を適用可能である。また、本発明は、導電型(n型、p型)を反転させても同様に成り立つ。
【産業上の利用可能性】
【0137】
以上のように、本発明にかかる炭化珪素半導体装置および炭化珪素半導体装置の製造方法は、高電圧や大電流を制御するパワー半導体装置に有用である。
【符号の説明】
【0138】
1 活性領域
1a メイン有効領域
1b メイン無効領域
2 エッジ終端領域
10 半導体基板
11 メイン半導体素子
12 電流センス部
12a センス有効領域
12b センス無効領域
13 温度センス部
14 ゲートパッド部
20 半導体装置
21a ソースパッド(電極パッド)
21b ゲートパッド(電極パッド)
22 OCパッド(電極パッド)
23a アノードパッド(電極パッド)
23b カソードパッド(電極パッド)
31 n+型ドレイン領域
32 n-型ドリフト領域
32a n-型領域
33a,33b n型電流拡散領域
34a,34b p型ベース領域
35a,35b n+型ソース領域
36a,36b p++型コンタクト領域
37a,37b トレンチ
38a,38b ゲート絶縁膜
39a,39b ゲート電極
40,83 層間絶縁膜
40a,40b,83a,83b コンタクトホール
41a,41b NiSi膜
42a,42b 第1TiN膜
43a,43b 第1Ti膜
44a,44b 第2TiN膜
45a,45b 第2Ti膜
46a,46b バリアメタル
47a~47d めっき膜
48a~48d 端子ピン
49a~49c 第1保護膜
50a~50c 第2保護膜
51 ドレイン電極
61a,61b トレンチ底面の電界を緩和する第1p+型領域
62a,62b トレンチ底面の電界を緩和する第2p+型領域
63a n型電流拡散領域の、第2p+型領域と第1p+型領域との間の第1部分
64a n型電流拡散領域の、第2p+型領域とトレンチとの間の第2部分
65 第1,2p+型領域をつなぐp+型領域
71 n+型出発基板
72 n-型炭化珪素層
72a n-型炭化珪素層の厚さを増した部分
73 p型炭化珪素層
81 p型ポリシリコン層
82 n型ポリシリコン層
91,93 p+型領域
92,94 n型領域
d1 p+型領域の深さ
d2 互いに隣り合うp+型領域間の距離
d3 n型領域の深さ
t1 n-型炭化珪素層の、n+型出発基板上に最初に積層する厚さ
t2 n-型炭化珪素層の、厚さを増した部分の厚さ
t3 p型炭化珪素層の厚さ
w1 n型電流拡散領域の第1部分の第2方向Yの幅
w2 第1方向に互いに隣り合う第1p+型領域間の間隔
w11 n型電流拡散領域の第2部分の第2方向Yの幅
w12 第1p+型領域の第1方向の幅
w21 第1p+型領域の第2方向の幅
w22 第2p+型領域の第2方向の幅
X,Y 半導体基板のおもて面に平行な一方向
Z 深さ方向
図1
図2
図3
図4
図5A
図5B
図5C
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14