(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024045652
(43)【公開日】2024-04-02
(54)【発明の名称】錠前装置
(51)【国際特許分類】
E05C 9/00 20060101AFI20240326BHJP
E05B 53/00 20060101ALI20240326BHJP
【FI】
E05C9/00 A
E05B53/00 A
【審査請求】有
【請求項の数】1
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2024023932
(22)【出願日】2024-02-20
(62)【分割の表示】P 2020087762の分割
【原出願日】2020-05-19
(71)【出願人】
【識別番号】592114703
【氏名又は名称】株式会社ベスト
(74)【代理人】
【識別番号】100160299
【弁理士】
【氏名又は名称】伊藤 卓
(72)【発明者】
【氏名】山本 淳一郎
(57)【要約】
【課題】 簡易な構造により、意図しない施錠動作を防止可能である錠前装置を提供する。
【解決手段】
デッドボルト11及びデッドボルト係合部21を有する施錠機構10と、操作レバー41、カム部50及びワイヤ部材31を有する施解錠操作手段30と、を備え、カム部50は、山型形状部52a,62aと谷型形状部52b,62bから構成されるカム面が設けられている第1カム部材51及び第2カム部材61とを有し、第1カム部材51と第2カム部材61は、第1カム体52及び第2カム体62を対向させ歯合するように配置され、第1カム部材51が、第2カム部材61に対して、回動自在となるように設けられている錠前装置Sとした。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
扉部材の上端部又は下端部から出没自在に設けられている施錠部材、及び、突出した前記施錠部材を係合するための施錠部材係合部を有する施錠手段と、
回動可能に構成されている操作機構と、前記操作機構と前記施錠部材を連結する連結部材と、を有し、前記施錠部材を出没動作させるための施解錠操作手段と、を備え、
前記扉部材の閉扉時に、前記施錠部材を前記施錠部材係合部に係合させることにより施錠する錠前装置において、
前記操作機構には、カム部が設けられており、
前記カム部は、
ぞれぞれに山型形状部と谷型形状部から構成されるカム面が設けられている第1カム部材及び第2カム部材を有し、
前記第1カム部材と前記第2カム部材は、前記各カム面を対向させ歯合するように配置され、前記第1カム部材又は前記第2カム部材が、前記第2カム部材又は前記第1カム部材に対して、回動自在となるように設けられていること、を特徴とする錠前装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、扉を施解錠する錠前装置に関する。
【背景技術】
【0002】
トイレ等の扉の施解錠装置として、回動レバーを回転させて受具に係止する打掛式錠前装置(打掛錠)及びデッドボルト(ロック部材)を係脱させて扉を施解錠するデッドボルト式錠前装置が存在する。
【0003】
例えば、従来、引戸の上端部に組み込むロック手段と、略中段位置の取手位置に組み込む施解錠操作手段と、上壁に取り付ける錠前受けを備えるデッドボルト式錠前装置が存在している。上記ロック手段は、ラッチ(ロック部材)を、引戸に埋設した固定筒内に、上向きの突出方向へばね付勢して、当該固定筒のラッチ突出口から出没自在に保持した構造となっている。また、施解錠操作手段とラッチの間をワイヤ部材で連結した回動操作レバーを備え、当該回動操作レバーの回動操作方向に応じて、ラッチをラッチ突出口から出没可能とする構造となっている(特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、従来のデッドボルト式錠前装置の施解錠操作手段では、解錠時において、扉が強く手荒に閉められた場合には、衝撃力が作用し、ラッチが施錠位置にまで回転することにより扉が施錠されてしまい、扉の外側から解錠操作ができなくなってしまうという問題を有していた。なお、上記課題は、従来の打掛錠においても同様であった。
【0006】
本発明は、上記問題点を解決するためになされたものであり、簡易な構造により、意図しない施錠動作を防止可能である錠前装置を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するために、本発明の錠前装置(以下、「本錠前装置」という。)は、取付対象(被取付体)である扉部材の上端部又は下端部から出没自在に設けられている施錠部材、及び、突出した上記施錠部材を係合するための施錠部材係合部を有する施錠手段と、回動可能に構成されている操作機構と、上記操作機構と上記施錠部材を連結する連結部材と、を有し、上記施錠部材を出没動作させるための施解錠操作手段と、を備え、上記扉部材の閉扉時に、上記施錠部材を上記施錠部材係合部に係合させることにより施錠する錠前装置において、上記操作機構には、カム部が設けられており、上記カム部は、ぞれぞれに山型形状部と谷型形状部から構成される立体的なカム面が設けられている第1カム部材及び第2カム部材を有し、上記第1カム部材と上記第2カム部材は、上記各カム面を対向させ歯合するように配置され、上記第1カム部材又は上記第2カム部材(一方の上記カム部材)が、上記第2カム部材又は上記第1カム部材(他方のカム部材)に対して、回動自在となるように設けられていること、を特徴としている。
【0008】
上記のように、本発明は、各種の錠前装置について適用可能であるが、特に、打掛式錠前装置及びデッドボルト式錠前装置に適用することが好適である。
また、本錠前装置は、引戸、折戸及び開き戸等の種々の扉部材に適用可能である。
【0009】
ここで、施錠部材は、取付対象である扉部材の上端部又は下端部から、少なくともその一部を突出させて、当該扉部材の移動を制止させるための部材であり、その効果を奏させることができるものであれば形状等に制限はない。
また、操作機構と施錠部材を連結する連結手段は、操作機構の施解錠の操作指示を施錠部材に伝達させることができれば、その形態に制限はなく、ワイヤ等の紐状部材及びロッド等の棒状部材等を用いることができる。
【0010】
また、第1カム部材と第2カム部材のカム面は、それぞれ山型形状部と谷型形状部から構成されており、当該第1カム部材及び第2カム部材は、各カム面が対向する向きに配置され、各山型形状部と谷型形状部が歯合することにより各回動自在に設けられている。そのため、第1カム部材と第2カム部材のカム面は、歯合可能となるよう、同一形状に形成されることが好適である。
【0011】
特に、第1カム部材及第2カム部材の上記カム面は、ぞれぞれ、四つの上記山型形状部と上記谷型形状部から構成されており、隣接する山型形状部が90度間隔となるように立設して形成されている構成とすれば、施錠部材(操作機構)に規則的な動作を奏させることが可能となるため好適である。
なお、第1カム部材と第2カム部材は、他の構成要素と結合して設けられているものでもよい。
【0012】
本錠前装置は、操作機構において、山型形状部と谷型形状部から構成されるカム面が設けられている第1カム部材及び第2カム部材と、施錠部材(操作部材)とを有し、当該第1カム部材と第2カム部材が、第2カム部材又は第1カム部材に対して、回動自在となるように設けられている。したがって、本錠前装置では、所定の大きさの回動力が作用しない場合には、いずれか一方のカム部材の山型形状部又は谷型形状部と、他方のカム部材の谷型形状部又は山型形状部が歯合せず、操作機構が回動動作しないことになる。そのため、解錠時において、施錠及び解除に至らない場合において、誤動作等により、扉部材が施錠されることを防止することができる。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、簡易な構造により、意図しない施錠動作を防止可能である錠前装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】本発明の錠前装置が取付けられている開き扉(解錠時)を示す一部を切り欠いた斜視図である。
【
図4】
図3と異なる方向から見た本発明の錠前装置を示す分解斜視図である。
【
図5】本発明の錠前装置を構成する施解錠操作手段におけるカム部を示す図であり、(a)は分解斜視図であり、(b)は、同図(a)と異なる方向から見た分解斜視図である。
【
図6】(a)は、本発明の錠前装置の解錠時の状態を示す斜視図であり、(b)は、同図(a)におけるA-A断面図である。
【
図7】本発明の錠前装置の施錠時の状態を示す斜視図であり、(b)は、同図(a)におけるB-B断面図である。
【
図8】本発明の錠前装置における施解錠操作手段が施錠及び解錠に至らない状態を示す正面図であり、(b)は、同図(a)におけるC-C断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、図面を参照しつつ、本錠前装置の一実施形態について、詳細に説明する。図面の説明においては、同一要素には同一符号を付し、重複する説明を省略する。
【0016】
本実施形態の本錠前装置Sは、デッドボルト式錠前装置に適用されたものである。
図1に示すように、本錠前装置Sは、トイレブースに設けられることを想定している。
このトイレブースは、天井部から所定高さに至るまで垂設されている上部パネル(図示せず)と、当該上部パネルと壁面に至る間において、上部パネルと垂直方向に設置されている2枚の横仕切りパネル(図示せず)と、入口部を形成するために所定の開口を設けた状態で、当該横仕切りパネルと直交する向きに設置されている左右のパネル(図示せず)により、平面視で長方形形状の一区画のスペースに区切られている。
【0017】
そして、入口部には、開き扉であるドアパネルD(扉部材)が、戸尻側の端部において軸釣装置等を用いて支持されることにより、回動自在に取り付けられている。
また、ドアパネルDの略中央高さであり、戸先側の端部から一定長さ戸尻側となる位置において、上端部から略中央高さに至る位置に、直方体形状である本錠前装置Sの取付空間(以下、単に「取付空間D1」という。)が形成されている。
【0018】
[本錠前装置]
図2~
図4に示すように、本錠前装置Sは、施錠機構10(施錠手段)と、ワイヤ部材31(連結部材)及び操作機構40を備える施解錠操作手段30を主要部としている。
【0019】
(施錠機構)
施錠機構10は、施錠部材であるデッドボルト11(施錠部材)と、デッドボルト取付部15とデッドボルト係合部21(施錠部材係合部)を備えている。
デッドボルト11は、断面寸法が異なる正方形断面の直方体を上下に連結した形状であり、下部が上部より小断面に形成されている。また、デッドボルト11の下端部には、下記ワイヤ部材31の取付孔11a(以下、単に「取付孔」という。)が設けられている。
【0020】
デッドボルト取付部15は、円筒形状の中空筒体16と上面に設けられている長方形形状の取付プレート17から構成されている。そして、中空筒体16は、ドアパネルDの取付空間D1の上部に収納されており、取付プレート17が、ドアパネルDの取付空間D1における上端面にネジ(図示せず)で取り付けられている(符号17aは、取付孔を示す)。デッドボルト11の小断面である下部には付勢バネ18(付勢部材)が巻装されることにより、常時、上向き(デッドボルト係合部21の方向)の付勢力が作用している。そして、この状態で、中空筒体16の中空部に、デッドボルト11の上部が上向きになるように挿通されている。
【0021】
デッドボルト係合部21は、上記デッドボルト11における上部の先端部を挿入するための正方形筒形状の係合筒体として形成されており、上部パネルの下側端面におけるデッドボルト11の真上部に埋設されている。
【0022】
(施解錠操作手段)
施解錠操作手段30は、操作機構40とワイヤ部材31を備えており、当該操作機構40は、上端部から略中央高さに至る位置である上記ドアパネルDの取付空間D1の下端部に設けられている。
【0023】
操作機構40は、操作部材である操作レバー41と、カバー42と、カム部50と、角芯44と、使用状況表示体45を主要部としている。
操作レバー41は、略かまぼこ錠の平面形状であり、基端部には、正方形断面形状である角芯44を取り付けるための角芯取付部41aが突出して設けられ、正方形断面形状の孔部41bが形成されている。また、操作レバー41のドアパネルD側における端面の基端部には、カバー42に取り付けるための段部41cが形成されている。
【0024】
カバー42は、円筒キャップ状に形成されており、中央部には中央孔42aが形成されている。カバー42の上面部には、操作レバー41の動作を規制するために、90度の凹状扇形部42bが形成されている。そして、カバー42の中空部には、薄型の八角形筒キャップ状である丸座43が挿設されている。丸座43には、カバー42の中央孔42aの位置と一致する位置に、角芯44を挿通するための中央孔43aが形成されており、その両側には、下記取付棒48を締結するための取付ネジ49の挿通孔(丸孔43b)が形成されている。
【0025】
図5(a),(b)に示すように、カム部50は、第1カム部材51を構成する筐体55に、取付体66を介して、第2カム部材61が取り付けられることにより形成されている。
【0026】
第1カム部材51は、筐体55と第1カム体52から構成されている。
上記筐体55は、操作レバー41と反対側の面に円形体56を有する円筒形状である。上記円形体56の中央部には、角芯44を挿通するための正方形形状の中央孔56aが形成されており、当該中央孔56aを中心として対称となるように、略90度の円弧状孔56bが形成されている。上記筐体55の周壁面の略中間部には、対称となる位置に、下記取付体66における取付片68の係止部68aを係止するための係止溝55cが形成されている。また、上記筐体55の周壁面において、一方の円弧状孔56bの中央部に対応する箇所の長さ方向に溝部55bが形成されており、その中間位置には、ワイヤ部材31の取付部55aが設けられている。
【0027】
上記円形体56における操作レバー41側の面に、第1カム体52が設けられている。上記第1カム体52は、円周上に、四つの山型形状部52aと谷型形状部52bが交互に連続するように、すなわち、山型形状部52aが90度の間隔となるようにカム面が設けられている。
【0028】
第2カム部材61は、円環63と当該円環63の一面に設けられている第2カム体62から形成されている。第2カム体62は、円環63における内側円の周縁に沿って、四つの山型形状部62aと谷型形状部62bが交互に連続するようにカム面が設けられており、第1カム部材51の第1カム体52と第2カム部材61の第2カム体62が歯合するようになっている。
【0029】
また、円環63の周縁部における直径上の両端部となる位置には、下記取付棒48を嵌装させるための半円弧状の嵌装部63bが形成されており、中央部には、角芯44を挿通するための正方形形状の中央孔63aが形成されている。
取付体66は、円筒キャップ部67と、下面部の両側面部にL字形状(側面視)に取り付けられている弾性変形可能である取付片68が設けられている。また、上記取付片68の先端部には、係止部68aが形成されている。なお、符号67aは、円筒キャップ部67に設けられている中央孔である。
【0030】
上記カム部50における第2カム部材61と第1カム部材51は、互いのカム面が歯合するように、各カム体62,52のカム面が対向して配置されている。上記第2カム部材61は、円環63と取付体66の間にリング64及び付勢バネ65(付勢手段)が介装された状態で、取付体66により筐体55に取り付けられており、付勢バネ65の付勢力により、第2カム体62が第1カム体52の向きに常時押圧されている。そのため、両カム面が当接した状態となっている。そして、取付体66における取付片68が筐体55の中空部に挿設されるとともに、当該取付片68の係止部68aが当該筐体55の係止溝55cに係止されており、第1カム部材51が第2カム部材61に対して回動自在となるように構成されている。
【0031】
使用状況表示体45は、円板46と表示変更体47から構成されている。
円板46はハット状に形成されており、中央部に正方形状の中央孔46aが形成されており、当該中央孔46aを挟んで対称となる位置に、円筒状である2本の取付棒48が延設されている。円板46の操作レバー41と反対側の面には、90度ごとに青色と赤色が交互に彩色されている。
【0032】
表示変更体47の中央には、角芯44を挿設するために、正方形形状の断面形状の中空部を有する突出部47aを有している(
図3)。また、表示変更体47における突出部47aの反対側の面には、対向して形成されている蝶ネクタイ形状部47bが形成されている。表示変更体47は、円板46の中央孔46aに、突出部47aが挿通されており、当該突出部47aに角芯44の端部44b(操作レバー41と反対側の端部)(以下、「一端部」という。)が嵌挿されることにより、当該角芯44の回動に連動して回動可能となっている。
【0033】
上記構成要素を備える操作機構40は、操作レバー41とカバー42が、ドアパネルDの内側に配置されており、使用状況表示体45は、当該ドアパネルDの外側に配置されている。他の構成要素は、取付空間D1に設けられている。
そして、ドアパネルDの内側から外側に向かい、操作レバー41、カバー42、丸座43、カム部50及び使用状況表示体45の順となるように配置されている。
【0034】
操作レバー41の角芯取付部41aは、カバー42及び丸座43の中央孔43aに、回動自在に挿通されている。角芯44の上記一端部側と反対側の端部44a(以下、「他端部」という。)は、角芯取付部41aの孔部41bに装着されている。そして、角芯44は、カバー42、丸座43及びカム部50(取付体66の円筒キャップ部67及び円形体56)の各中央孔42a,43a,67a,56aに挿通され、その一端部44bは、使用状況表示体45における表示変更体47の突出部47aに挿着されている。
【0035】
(全体構成)
ワイヤ部材31は、両端部に介装されているクランプ32により、施錠機構10におけるデッドボルト11の取付孔11aと、操作機構40を構成する第1カム部材51の筐体55における取付部55aに挿通されており、デッドボルト11と第1カム部材51がワイヤ部材31を介して連結されている。
【0036】
上記構成の操作機構40は、カバー42における凹状扇形部42bの範囲(90度の範囲)で、基端部を中心として操作レバー41を回動させることが可能であり、当該回動動作と連動して、角芯44を介して一体動作可能となっている第1カム部材51及び使用状況表示体45の表示変更体47が回動できるようになっている。
【0037】
また、施錠機構10では、操作レバー41を施錠状態の位置とした場合において、付勢バネ18の付勢力により、デッドボルト11がドアパネルDの上端面から突出し、デッドボルト係合部21に収容されることにより施錠されるようになっている。
一方、操作レバー41を解錠状態の位置にまで回動させた場合には、第1カム部材51の回動力がワイヤ部材31を介して、デッドボルト11に下向きの張力が作用する。そして、デッドボルト11が下方に移動し、デッドボルト係合部21から退出し、ドアパネルDの内部に収容されることにより解錠されるようになっている。
【0038】
また、上記表示変更体47の回動動作により、施錠時には、表示変更体47の蝶ネクタイ形状部47bでない部分から円板46の赤色領域が表示され、解錠時には青色領域が表示されるようになることから、ドアパネルDの施解錠状態を、外側から視認可能となっている。
【0039】
[本錠前装置の動作]
続いて、本錠前装置Sの動作について説明する。
なお、以下の説明において、本錠前装置Sは、ドアパネルDの所定位置に取り付けられているものとする。
【0040】
(施錠時及び解錠時)
操作機構40の操作レバー41の先端部を、解錠状態の位置となる真上部に回転させる。すると、第1カム部材51における第1カム体52の山型形状部52aと、第2カム部材61における第2カム体62の谷型形状部62bとが歯合しながら、第2カム体62に対して、第1カム体52が回転する。このとき、ワイヤ部材31を介した第1カム部材51の回転力により、デッドボルト11に下向きの張力が作用し、施錠機構10の付勢バネ18の付勢力を上回るため、当該デッドボルト11は下方に移動する。そして、デッドボルト11がデッドボルト係合部21から退出し、ドアパネルDの内部に収容されることにより解錠される(
図6(a),(b))。
【0041】
一方、操作機構40の操作レバー41を反時計回りで90度回転させ、施錠状態の位置にまで移動させる。すると、第1カム部材51における第1カム体52の山型形状部52aと、第2カム部材61における第2カム体62の谷型形状部62bとが歯合しながら、解錠時と反対方向に、第1カム体52が第2カム体62に対して回転する。このとき、デッドボルト11に作用していた下向きの張力の作用が生じなくなるため、施錠機構10の付勢バネ18の付勢力により、デッドボルト11が上向きに押圧され、ドアパネルDの上面から突出して、デッドボルト係合部21に収容されることにより施錠される(
図7(a),(b))。
【0042】
また、本錠前装置Sにおいて、操作レバー41に作用する回転力が所定大きさ以下であった場合には、第1カム部材51における第1カム体52の山型形状部52aと、第2カム部材61における第2カム体62の谷型形状部62bとが歯合せず、第1カム部材51が回動しないことになる。したがって、意図せずに、所定大きさ以下である想定外の外力が働いた場合であっても、第1カム部材51及び第2カム部材61の作用により、施錠機構10が動作しないことになり、施錠されることが防止される(
図8((a),(b))。
【0043】
[本錠前装置の作用効果]
本錠前装置Sによれば、施解錠操作手段30のカム部50において、第1カム部材51の第1カム体52及び第2カム部材61の第2カム体62は、各々四つの山型形状部52a,62aと谷型形状部52b,62bから構成されるカム面が設けられており、当該第1カム部材51と第2カム部材61は、各カム体52,62を対向させ歯合するように配置され、回動自在に設けられている。したがって、所定の大きさの回動力が作用しない場合には、第1カム体52の山型形状部52aと、第2カム体62の谷型形状部62bが歯合せず、操作レバー41が回動しないことになる。そのため、解錠及び解錠に至らない場合において、誤動作等によりドアパネルDが施錠されることを防止することができ、意図せずにトイレを使用することを防止することに資することになる。
【0044】
また、第1カム部材51の第1カム体52と第2カム部材61の第2カム体62は、円周上に、同一形状の山型形状部52a,62aと谷型形状部52b,62bが連続し、隣接する山型形状部52a,62aが90度間隔となるように立設して形成されている構成であることから、操作レバー41を規則的に動作させることが可能となる。
【0045】
以上、本発明について、好適な実施形態についての一例を説明したが、本発明は当該実施形態に限られず、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で、適宜設計変更が可能である。
特に、上記実施形態におけるデッドボルト式錠前装置では、扉部材の上端部から施錠部材が突出する構造としているが、扉部材の下端部から施錠部材が突出する構造とするものであってもよい。
【0046】
また、上記実施形態における打掛式錠前装置において、操作部材(施錠部材)を係止させるための操作部材の係止部材(レバー受け部材等)を、扉部材に隣接する構造部材の所定位置に設けるものであってもよい。
また、本錠前装置における施錠機構(施錠部材、施錠部材係合部)、施解錠操作手段(操作機構、連結部材)と、第1カム部材及び第2カム部材(山型形状部及び谷型形状部を含む)等は、基本的な構成を備え、その作用効果を奏するものであれば、種々の構成要素を用いることができる。
【符号の説明】
【0047】
S 錠前装置
D ドアパネル(扉部材)
D1 取付空間
10 施錠機構(施錠手段)
11 デッドボルト(施錠部材)
15 デッドボルト取付部
21 デッドボルト係合部(施錠部材係合部)
30 施解錠操作手段
31 ワイヤ部材(連結部材)
40 操作機構
41 操作レバー
42 カバー
44 角芯
45 使用状況表示体
50 カム部
51 第1カム部材
52 第1カム体
52a 山型形状部
52b 谷型形状部
55 筐体
56 円形体
61 第2カム部材
62 第2カム体
62a 山型形状部
62b 谷型形状部
63 円環
66 取付体