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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024045690
(43)【公開日】2024-04-02
(54)【発明の名称】ヘアアイロン
(51)【国際特許分類】
   A45D 1/00 20060101AFI20240326BHJP
【FI】
A45D1/00 507Z
A45D1/00 502B
A45D1/00 503A
A45D1/00 503B
【審査請求】有
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2024024586
(22)【出願日】2024-02-21
(62)【分割の表示】P 2023199120の分割
【原出願日】2019-03-18
(71)【出願人】
【識別番号】599083411
【氏名又は名称】株式会社 MTG
(74)【代理人】
【識別番号】100105957
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100068755
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 博宣
(72)【発明者】
【氏名】松下 剛
(57)【要約】
【課題】頭髪のダメージを抑制することができるヘアアイロンを提供する。
【解決手段】人体を加温するための発熱体38を設けたヘアアイロン30において、前記発熱体38上にケーシング40を設け、前記ケーシング40の上面を摩擦係数の小さなカバーシート41により被覆した。
【選択図】図9
【特許請求の範囲】
【請求項1】
人体を加温するための熱源を設けたヘアアイロンにおいて、
前記熱源上にケーシングを設け、前記ケーシングの上面を摩擦係数の小さなカバーシートにより被覆したヘアアイロン。
【請求項2】
前記カバーシートをポリテトラフルオロエチレンにより構成した請求項1に記載のヘアアイロン。
【請求項3】
前記熱源に遠赤外線発生体を付設し、前記遠赤外線発生体を前記ケーシング内に収容し、前記ケーシングには遠赤外線の通過部を設けた請求項1又は請求項2に記載のヘアアイロン。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、頭髪や頭皮など身体の一部を美容のために加温するようにしたヘアアイロンに関するものである。
【背景技術】
【0002】
頭髪や頭皮を乾燥させるためにヘアドライヤが、頭髪をストレートにするためにストレートアイロンが、頭髪をカールさせるためにカールアイロンがそれぞれ一般に使用されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】登録実用新案第3011964号公報
【特許文献2】特開2018-15539号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明の目的は、頭髪のダメージを抑制することができるヘアアイロンを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記の目的を達成するために、本発明においては、人体を加温するための熱源を設けたヘアアイロンにおいて、前記熱源上にケーシングを設け、前記ケーシングの上面を摩擦係数の小さなカバーシートにより被覆した。
【0006】
前記カバーシートをポリテトラフルオロエチレンにより構成した。
前記熱源に遠赤外線発生体を付設し、前記遠赤外線発生体を前記ケーシング内に収容し、前記ケーシングには遠赤外線の通過部を設けた。
【発明の効果】
【0007】
以上のように、本発明によれば、頭髪のダメージを抑制することができる効果を発揮する。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】ヘアドライヤの側面図。
図2】送風筒部分の断面図。
図3】成形体ユニットの部分を示す斜視図。
図4】成形体ユニットを示す分解斜視図。
図5】成形体ユニットを示す断面図。
図6】ストレートアイロンを示す斜視図。
図7】ストレートアイロンを示す側面図。
図8】遠赤外線発生ユニットの部分を示す平面図。
図9】アイロン片の部分の断面図。
図10】カールアイロンを示す側面図。
図11】カールアイロンを示す斜視図。
図12】加温部の部分の断面図。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明を具体化した実施形態を図面に基づいて説明する。
(第1実施形態)
図1図5に基づいて本発明をヘアドライヤ(以下、ドライヤという)10に具体化した第1実施形態を説明する。
【0010】
図1に示すように、ドライヤ10のハンドル11を有するハウジング12の基端部には、モータ(図示しない)及びそのモータによって回転されるシロッコファン(図示しない)を内蔵したモータ室13が配置されている。ハンドル11には、前記モータ及び後述の発熱体18を起動・停止させるとともに、発熱体18の発熱温度を調節するための調節スイッチ15が設けられている。その調節スイッチ15の近傍には、ドライヤ10を温風供給状態と冷風供給状態とに切り換えるための切換スイッチ14が設けられている。
【0011】
ハウジング12には、モータ室13から前方に向かって延びる送風筒16が形成されている。図2及び図3に示すように、この送風筒16の内部には断面十字状をなし、マイカなどの不燃性,耐熱性及び電気絶縁性を有する支持部材17が固定配置されている。支持部材17の外周には、ニクロム線よりなる発熱体18が支持部材17を内包するように螺旋状に巻き回されている。そして、モータの駆動によってモータ室13の側面の吸気口19から外部のエアがモータ室13内に吸引されて、そのエアが送風筒16内に送られる。このエアは送風筒16内において発熱体18によって加温されて、送風筒16の前端開口から外部に送出される。
【0012】
支持部材17の前端中心部であって、発熱体18の巻き回領域の軸心部には、ステー21が取り付けられており、このステー21の前端には人感センサである温度センサ22が支持されている。この温度センサ22は前方を指向していて、ドライヤ10の使用時に温度センサ22の前方に位置する使用者の頭皮や頭髪の温度を検出する。そして、その検出結果に応じて、発熱体18の発熱温度が自動的に調節される。このため、頭皮や頭髪などの1箇所に温風を供給し続けても、その箇所の過熱を防止できるとともに、温度検出にともない、高温と低温とが交互に供給されるようにすれば、キューティクルが引き締められてキューティクルの艶出し作用を確保できるとともに、頭皮の適切な血行促進が可能になる。
【0013】
温度センサ22の後部側には遠赤外線発生ユニット23が設置されている。図2図5に示すように、この遠赤外線発生ユニット23は、前後両端を開放した四角筒状のケーシング26と、そのケーシング26内に収容された成形体ユニット24とを備えている。なお、図2においては、温度センサ22の部分を断面にすることなく、遠赤外線発生ユニット23を断面にしている。ケーシング26は、炭素成分を含有するフェノール樹脂よりなり、前後を開放した四角筒状をなしている。ケーシング26の前側の開口が遠赤外線の通過部を構成する。
【0014】
成形体ユニット24は、直方体形状の炭素成形体(以下、単に成形体という)25と、その成形体25の周囲を被覆するカバーシート27とによって構成されている。成形体25は、高純度の黒鉛よりなる。カバーシート27は、フッ素と炭素との化合物であるポリテトラフルオロエチレン(以下、商標名であるテフロンと称する)よりなり、成形体25の上下両面及び前後両面を覆うように、成形体25の外周に巻き回されている。従って、ケーシング26の前後の開口部における成形体25の側面はカバーシート27によって塞がれるとともに、成形体25の外周面とケーシング26の内周面との間にはカバーシート27が介在されている。
【0015】
本実施形態のドライヤ10は以下のように作用する。
ドライヤ10の使用時には、発熱体18が発熱されるとともに、その発熱体18によって加温された温風が送風筒16の先端開口から前方に向かって放出される。このため、この温風を利用して、頭髪の乾燥やセットなどを行うことができる。このとき、成形体25は発熱体18によって四周を包囲されて、その発熱体18によって加熱されるため、成形体25から遠赤外線が発生される。そして、この遠赤外線はカバーシート27を透過してケーシング26の前側開口から外部に供給される。また、カバーシート27は、炭素成分を含有するため、発熱体18の熱及び成形体25からの遠赤外線によって加温されて遠赤外線を発生する。
【0016】
このようにして、ケーシング26の開口から使用者に向かって遠赤外線が供給される。さらに、ケーシング26は炭素成分を含有するフェノール樹脂によって構成されているため、ケーシング26も発熱体18からの熱によって遠赤外線を発生する。このため、この遠赤外線を温風の熱とともに頭髪の乾燥やセットなどに供することができる。
【0017】
従って、本実施形態のドライヤ10においては、以下の効果がある。
(1)本実施形態のドライヤ10においては、発熱体18による加温に際して、成形体25から発生される遠赤外線により頭髪乾燥や頭髪スタイルのセットなどをサポートできる。従って、発熱体18の発熱量を少なくできて、消費電力を節約できるとともに、頭皮や頭髪に対するダメージを低減できる。すなわち、頭髪や頭皮に対して電磁波の一種である遠赤外線が供給される状態においては、頭髪や頭皮の内部の水分が微振動共振によって加温されるため、発熱体18をそれほど高温発熱させなくても、乾燥や血行促進を有効に行うことができる。このように、頭髪乾燥やセットなどにおいて発熱体18による頭髪や頭皮の過昇温を防止して、低温乾燥や低温セットが可能になるため、頭髪や頭皮の熱によるダメージを回避できて、肌と髪のケアを促進できる。しかも、遠赤外線が温風の温度をサポートするため、温風が低温であっても、乾燥やセットを短時間で効率よく行うことができる。さらに、遠赤外線は、距離を隔てていても、頭皮に到達しやすく、頭皮を適度に暖めて、血行促進に有用である。
【0018】
(2)成形体25が脆性材料の黒鉛よって構成されていても、成形体25がフェノール樹脂よりなる硬質のケーシング26内に収容されているため、その成形体25に対する物理的な外力が作用することを抑えることができて、成形体25を保護でき、成形体25の脆性破壊を防止できる。従って、遠赤外線の発生機能が損なわれることがないとともに、破壊された黒鉛の粉体や粒体などによって肌などが汚れることを防止できる。また、成形体25の前面,すなわちケーシング26の前側開放部に位置する部分がカバーシート27によって覆われているため、成形体25を構成する炭素の一部の微粒子が煤状になって飛散することを回避でき、前記と同様に肌の汚れなどを防止できる。
【0019】
(3)成形体25とケーシング26との間には、ケーシング26より柔軟性を有するカバーシート27が介在されているため、このカバーシート27により成形体25に対する物理的外力が緩衝される。従って、成形体25に対する保護機能をさらに高めることができる。しかも、カバーシート27は、ケーシング26の開口部において成形体25をカバーしているため、成形体25をより確実に保護できる。このため、ドライヤ10を硬質の床面に落としたとしても、成形体25を割れたりすることなく、有効に保護できる。
【0020】
(4)カバーシート27は、炭素成分を含有するテフロンであるため、遠赤外線を透過するだけではなく、前記のように、発熱体18からの熱によって、カバーシート27からも遠赤外線が発生する。加えて、カバーシート27は、成形体25からの遠赤外線によって発熱されて、さらに遠赤外線を追加発生する。また、ケーシング26は炭素成分を含有するフェノール樹脂によって構成されているため、発熱体18からの熱によってケーシング26からも遠赤外線が発生される。従って、頭髪の乾燥やセットなどを遠赤外線によって適切にサポートできる。
【0021】
(5)カバーシート27は耐熱性を有するテフロン製であるため、耐久性に優れる。
(6)成形体25を有する成形体ユニット24は、発熱体18の巻き回域の中心に位置するので、成形体ユニット24が発熱体18上を通るエア流の障害になることはなく、円滑な温風の流れを得ることができる。しかも、成形体ユニット24は360度の範囲の周りからほぼ均等で、有効な輻射熱を得ることができるため、充分な量の遠赤外線を発生させることができる。
【0022】
(7)成形体25は、同体積の遠赤外線発生作用を有するセラミックより軽いため、ドライヤ10の軽量化に寄与できる。
(第2実施形態)
次に、本発明をヘアアイロンであるストレートアイロン30に具体化した第2実施形態を図6図9の図面に基づいて説明する。
【0023】
図6及び図7に示すように、ストレートアイロン30においては、一対のアイロン片31が基端部において開閉可能に連結されている。一方のアイロン片31には、起動スイッチ32と、後述の発熱体38の発熱温度を調節するための調節スイッチ33とが設けられている。
【0024】
図8及び図9に示すように、両アイロン片31の先端対向面には、凹部34が形成されており、それらの凹部34内には、遠赤外線発生ユニット35が収容固定されている。遠赤外線発生ユニット35は、凹部34の内底部側に位置するボトム部材36と、ボトム部材36の内部に位置する板バネ37と、その板バネ37上に位置するセラミックヒータよりなる発熱体38と、その発熱体38上に位置する成形体ユニット24とを備えている。成形体ユニット24は、遠赤外線発生ユニット35の一部を構成する。そして、成形体ユニット24は、板状の成形体39と、その成形体39上を覆い、ヒートシンク機能を有するケーシング40とを備えており、ケーシング40の上面にはテフロンよりなるカバーシート41が貼着されている。凹部34の内底面と遠赤外線発生ユニット35との間にはシリコーンゴムよりなる弾性塊体46が介在されている。
【0025】
成形体39は、前記実施形態と同様に高純度の黒鉛よりなり、ケーシング40は熱伝導の良好な金属,例えばアルミニウムまたはアルミニウム合金よりなる。ボトム部材36の両側には固定側ストッパ42が形成されるとともに、ケーシング40の両側には固定側ストッパ42の内面に対向する可動側ストッパ43が形成されている。そして、前記板バネ37により、発熱体38が成形体39に隙間なく押圧されるとともに、成形体39がケーシング40の内面の着座面45に隙間なく押圧され、さらに、ケーシング40が固定側ストッパ42によって位置規制されるまで突出側に付勢されている。ケーシング40には、発熱体38に対向する複数の透孔44が形成されている。この透孔44は遠赤外線の通過部を構成する。
【0026】
そして、ストレートアイロン30の使用時には、発熱体38の熱によってケーシング40が加熱されて、カバーシート41も加熱される。このとき、成形体39から遠赤外線が発生し、その遠赤外線は、ケーシング40の透孔44を通り、カバーシート41を透過し、外部に放出される。また、カバーシート41は、この遠赤外線と、発熱体38とによって加熱されて、遠赤外線を発生する。
【0027】
従って、アイロン片31を閉じて、頭髪を挟んだ状態でストレートアイロン30を頭髪の長さ方向に沿って梳くようにしてスライド移動させれば、その頭髪をストレートにすることができる。この場合、頭髪に無理な力が作用しないように、遠赤外線発生ユニット35は、板バネ37及び弾性塊体46の弾性変形と反発力とを利用してサスペンション的に昇降される。
【0028】
頭髪には、発熱体38による加温の温度に加えて、大量の遠赤外線が供給されるため、加温温度をそれほど高くすることなく、つまり、加熱温度が低くても、電磁波である遠赤外線により頭髪をその内部から有効に加温してストレートにセットすることができる。このため、頭髪の炭化を抑制して、頭髪が受けるダメージを極力少なくできる。
【0029】
従って、本実施形態においては、以下の効果を得ることができる。
(1)成形体39及びカバーシート41からの遠赤外線を頭髪のセットに利用できるため、前記のように、加温温度を高くすることなく頭髪を適切にセットできる。このため、このセットを短時間で行うことができるとともに、頭髪の水分蒸発を少なくして、水分量を適量に維持でき、頭髪のダメージを大幅に低減できる。従って、頭髪のツヤを保持できるとともに、枝毛や変色を極力回避できる。
【0030】
(2)ケーシング40の表面が摩擦係数の小さなテフロン製のカバーシート41によって覆われているため、頭髪を小さな抵抗でスムーズにのばすことができる。従って、前記のように、頭髪のダメージを抑制して、頭髪の艶を保持できて、枝毛や変色を極力回避できるとともに、アイロン動作に対する抵抗が小さくなって、セットをスムーズかつ容易に行うことができる。
【0031】
(3)ケーシング40に透孔44が形成されているため、成形体39から発生された遠赤外線が透孔44を通ってカバーシート41に容易に到達する。そのため、カバーシート41を透過して遠赤外線が放出されるだけではなく、その遠赤外線によってカバーシート41の発熱が促進されて、さらに大量の遠赤外線が発生されて、アイロンに供される。
【0032】
(4)ケーシング40の透孔44がカバーシート41によって塞がれるため、濡れた頭髪にアイロンをかける場合であっても、水滴や水分が透孔44からストレートアイロン30内に浸入することを防止できて、ストレートアイロン30内の電気部品を保護できる。
【0033】
(5)成形体39がケーシング40内に板バネ37を介して収容されて、そのケーシング40が柔軟性を有するカバーシート41によって被覆されている。さらには、成形体39を有する遠赤外線発生ユニット35がシリコーンゴムよりなる弾性塊体46によってアイロン片31に受けられている。従って、アイロン片31を粗雑に扱っても、例えば、アイロン片31を勢いよく閉じて、アイロン片31どうしを相互に衝突させても、その衝撃がカバーシート41や板バネ37及び弾性塊体46によって複数箇所で吸収されるため、成形体39の割れなどを適正に回避できる。
【0034】
(第3実施形態)
次に、本発明をヘアアイロンとしてのカールアイロン50に具体化した第3実施形態を図10図12の図面に基づいて説明する。
【0035】
図10及び図11に示すように、カールアイロン50は、周面を円筒にした棒状のアイロン本体51と、そのアイロン本体51に対して軸52により基端部において開閉可能に連結した押さえレバー53とを備えている。アイロン本体51は、ハンドル部54と遠赤外線発生ユニットを構成する加温部55とを備え、ハンドル部54には、起動スイッチ56と、後述の発熱体67の温度調節するための調節スイッチ57とが設けられている。押さえレバー53は、操作部58と、アイロン本体51の加温部55の外周面に沿う断面円弧状の押さえ部59とを有している。
【0036】
図11及び図12に示すように、加温部55は、熱伝導の良好な金属,例えばアルミニウムまたはアルミニウム合金によって構成されて、ヒートシンクを構成する半円筒状の一対のケーシング61を備え、ケーシング61の外周全体がテフロンよりなる円筒状のカバーシート60によって被覆されている。両ケーシング61の両側縁の間はバー状のシール材62によって塞がれている。両ケーシング61の幅方向の中央部には遠赤外線の通過部を構成する複数の透孔63が列設されている。透孔63の列設域の内側には着座面64が形成されている。
【0037】
両ケーシング61の内側には一対の受け部65が形成されており、両受け部65間には板バネ69を介して受け板66が支持されている。この受け板66上にはセラミックヒータよりなる板状の発熱体67が支持されるとともに、発熱体67上には黒鉛よりなる板状の成形体68が支持されている。そして、板バネ69のバネ力により、発熱体67が成形体68に隙間なく押圧され、成形体68が着座面64に隙間なく押圧されて、成形体68が着座面64に着座されている。そして、ケーシング61は成形体68のハウジングを構成している。
【0038】
本実施形態のカールアイロン50を用いて、頭髪をカールセットする場合には、180度隔てて配置された2箇所の発熱体67が発熱して、成形体68,ケーシング61及びカバーシート60の全体,すなわち加温部55全体が加温される。そして、頭髪をアイロン本体51の加温部55に巻き回するとともに、その頭髪を押さえレバー53によって加温部55との間において挟持すればよい。このようにすれば、頭髪が加温されてカール状態にセットされる。このとき、成形体68から遠赤外線が発生されて、その遠赤外線が透孔63を介してカバーシート60に到達し、そのカバーシート60を透過して、外部に放出される。また、この遠赤外線によってカバーシート60も発熱するとともに、発熱体67の熱によって加熱されて、遠赤外線を放出する。従って、頭髪をカールさせるセットに際して、発熱体67による直接加温に加えて、遠赤外線によるサポート加温を行うことができる。
【0039】
従って、本実施形態においては、前記第2実施形態と同様な作用及び効果を得ることができる。
(変更例)
本発明は、前記各実施形態の構成に限定されるものではなく、以下のような態様で具体化することもできる。
【0040】
・第1実施形態において、ケーシング26として、フェノール樹脂以外のもの、例えばテフロン,PPS(ポリフェニレンサルファイド樹脂),炭素強化樹脂などの遠赤外線を発生させる材質のものを用いること。
【0041】
・第1実施形態において、送風筒16の前端開口部のステー21及び温度センサ22を省いて、その部分に成形体25を有する遠赤外線発生ユニット23を設けること。
・第1実施形態においては、成形体25を直方体形状にしたが、立方体形状,球体形状,円柱形状,角柱形状,6面体以外の多面体形状など、成形体25の形状を変更すること。この場合、成形体25の形状に応じてケーシング26の形状を変更することが好ましい。
【0042】
・第1実施形態において、ケーシング26を前後を開放した四角筒状にしたが、このケーシング26は前側が開放されていればよく、後側が閉鎖されていてもよい。
・第3実施形態において、レバー側のケーシング61側にのみ成形体68を向けること。
【0043】
・第3実施形態において、成形体68をケーシング61の内周面に沿う断面円弧形状にすること。
・第1~第3各実施形態において、テフロンよりなるカバーシート27,41,60に代えて、遠赤外線を透過しやすい材質のもの、例えば高密度ポリエチレン製のものを用いること。
【0044】
・加温美容器具として、前記各実施形態のドライヤ10,ストレートアイロン30,カールアイロン50以外の加温美容器具,例えば、櫛を有し、櫛歯の根本部分からエアを放出するドライヤにおいて本発明を具体化すること。
【0045】
・成形体25,39,68として、黒鉛以外のもの,例えば、アルミナ樹脂などのセラミック製のものや、珪藻土のものを用いること。
以下は、原出願当初の明細書の段落0001、0002、0004-0008(分割直前明細書では段落0047)、原出願当初の特許請求の範囲の記載である。
【0046】
本技術思想は、頭髪や頭皮など身体の一部を美容のために加温するようにしたヘアドライヤやヘアアイロンなどの加温美容器具に関するものである。
頭髪や頭皮を乾燥させるためにヘアドライヤが、頭髪をストレートにするためにストレートアイロンが、頭髪をカールさせるためにカールアイロンがそれぞれ一般に使用されている。しかしながら、例えば、頭皮は加齢とともに分泌物の少なくなり、潤いがなくなる。従って、頭皮にドライヤの高い温度の温風を当てると、頭皮が乾燥しすぎて、かゆみなどの原因になる。また、頭髪は加齢に従って潤いが少なくなるとともに、細くなり、その結果、高い温度の加温によって変色したり、枝毛が生じたりする。これを防止するために、特許文献1及び特許文献2においては、ヘアドライヤにおいて、遠赤外線を発生するための炭素成形体を設けて、加温温度が低くても、遠赤外線によって加温効果をサポートするようにしている。
【0047】
しかしながら、炭素成形体は、脆弱であるために、衝撃や擦過などに弱い。従って、炭素成形体は、外力によって脆性破壊されて、割れたり、炭素の一部が粉状あるいは粒状になって分離したりすることがあって、このような場合には、使用者の肌などを黒く汚すおそれがある。特許文献1においては、このような問題に対応するために、炭素成形体をコーティング剤によって被覆しているが、コーティング剤は強度が充分ではないため、前記のようなおそれを払拭できない。また、コーティング剤の材質によっては、遠赤外線を遮蔽してしまうため、遠赤外線による加温サポート効果が大幅に減少する結果となる。
【0048】
本技術思想の目的は、炭素成形体などの遠赤外線発生体の破壊を防止できるとともに、遠赤外線による加温サポート作用を適切に得ることができる加温美容器具を提供することにある。
【0049】
上記の目的を達成するために、本技術思想においては、人体を加温するための熱源を設けるとともに、その熱源に遠赤外線発生体を付設した加温美容器具において、前記遠赤外線発生体をケーシング内に収容し、そのケーシングには遠赤外線の通過部を設けたことを特徴とする。
【0050】
以上の構成においては、熱源が発熱されると、その熱によって人体が加温されて、その温度が美容に供される。このとき、熱源の熱によって遠赤外線発生体から遠赤外線が発生される。そして、その遠赤外線は、遠赤外線の通過部を経て人体に到達する。従って、遠赤外線によって加温がサポートされる。しかも、遠赤外線は、エアを媒体にすることなく、人体に直接輻射されるものであるため、媒体エアを加熱したり、媒体エアを介して熱が拡散されたりするロスを生じることなく、加温を実行できて、加温効率を向上できる。そして、遠赤外線発生体はケーシング内に収容されているため、破損が回避される。
【0051】
以上のように、本技術思想によれば、遠赤外線発生体の破損を防止できるとともに、遠赤外線による加温効果を適切に得ることができる効果を発揮する。
原出願当初の請求項1は、人体を加温するための熱源を設けるとともに、その熱源に遠赤外線発生体を付設した加温美容器具において、前記遠赤外線発生体をケーシング内に収容し、そのケーシングには遠赤外線の通過部を設けた加温美容器具である。
【0052】
原出願当初の請求項2は、前記遠赤外線発生体を炭素成形体により構成し、その炭素成形体を遠赤外線が透過するカバーシートにより被覆した請求項1に記載の加温美容器具である。
【0053】
原出願当初の請求項3は、前記ケーシングに透孔を形成し、その透孔を覆うようにケーシングの外側面を遠赤外線が透過するカバーシートにより被覆した請求項1に記載の加温美容器具である。
【符号の説明】
【0054】
10…ヘアドライヤ、18…発熱源、23…発熱体、25…炭素成形体、26…ケーシング、27…カバーシート、30…ストレートアイロン、38…発熱体、39…成形体、40…ケーシング、41…カバーシート、44…透孔、50…カールアイロン、60…カバーシート、61…ケーシング、63…透孔、67…発熱体、68…成形体。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12