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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024004571
(43)【公開日】2024-01-17
(54)【発明の名称】シート成形口金
(51)【国際特許分類】
   B29C 48/305 20190101AFI20240110BHJP
   B29C 48/25 20190101ALI20240110BHJP
【FI】
B29C48/305
B29C48/25
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022104223
(22)【出願日】2022-06-29
(71)【出願人】
【識別番号】000003159
【氏名又は名称】東レ株式会社
(72)【発明者】
【氏名】宮地 彼方
(72)【発明者】
【氏名】井ノ本 健
【テーマコード(参考)】
4F207
【Fターム(参考)】
4F207AJ08
4F207AM03
4F207AR02
4F207AR12
4F207KA01
4F207KA17
4F207KL57
4F207KL62
4F207KL63
4F207KL99
4F207KM18
(57)【要約】
【課題】
本発明は、シート材料の漏れを防止することができるシート成形口金を提供する。
【解決手段】
本発明は、シート材料を供給するダイホッパ、当該ダイホッパの下面に設置された対向する一対のリップ、ならびに当該一対のリップのそれぞれの両端部および上記ダイホッパの下面に固定されて設置された側板を備えたシート成形口金であって、上記側板の下面にはシート厚み方向に延びる溝が形成されており、上記側板の、上記溝によってシート幅方向に分割された2つの部分のうち、シート幅方向の外側にある一方を押付部、他方を被押付部として、上記押付部に、上記溝を形成している壁面のうち上記被押付部にある壁面を押すことで上記被押付部を上記一対のリップへ押しつける押付機構が備えられている。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
シート材料を供給するダイホッパ、当該ダイホッパの下面に設置された対向する一対のリップ、ならびに当該一対のリップのそれぞれの両端部および前記ダイホッパの下面に固定されて設置された側板を備えたシート成形口金であって、
前記側板の下面にはシート厚み方向に延びる溝が形成されており、
前記側板の、前記溝によってシート幅方向に分割された2つの部分のうち、シート幅方向の外側にある一方を押付部、他方を被押付部として、
前記押付部に、前記溝を形成している壁面のうち前記被押付部にある壁面を押すことで前記被押付部を前記一対のリップへ押しつける押付機構が備えられている、
シート成形口金。
【請求項2】
前記被押付部のシート幅方向の長さをL1[mm]、前記一対のリップと前記被押付部との接合面の最下部から前記押付機構までのシート流れ方向の距離をH1[mm]とすると、0.2≦H1/L1≦1.0である、請求項1のシート成形口金。
【請求項3】
前記側板のシート幅方向の外側の側面に、当該側面から前記溝の底面まで至る切り込みが形成された、請求項1のシート成形口金。
【請求項4】
前記側板と前記リップとの最小接触面圧が20MPa以上である、請求項1のシート成形口金。
【請求項5】
シート材料を供給するダイホッパ、当該ダイホッパの下面に設置された対向する一対のリップ、ならびに当該一対のリップのそれぞれの両端部および前記ダイホッパの下面に固定されて設置された側板を備えたシート成形口金であって、
前記側板のシート幅方向の外側に、当該側板に固定されて、または当該側板を介して前記一対のリップに固定されて押付部材が設置されており、
前記押付部材に、前記側板のシート幅方向の外側の側面を押すことで当該側板を前記一対のリップへ押しつける押付機構が備えられている、
シート成形口金。
【請求項6】
前記側板と前記リップとの接合面から前記側板のシート幅方向の外側の側面までのシート幅方向の距離をL2[mm]、前記一対のリップと前記側板との接合面の最下部から前記押付機構までのシート流れ方向の距離をH2[mm]とすると、0.2≦H2/L2≦1.0である、請求項5のシート成形口金。
【請求項7】
前記側板と前記リップとの最小接触面圧が20MPa以上である、請求項5のシート成形口金。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、シート成形口金に関する。
【背景技術】
【0002】
シート成形口金は、押出機などで溶融したシート材料(典型的には溶融樹脂など)を吐出口から吐出して、シートを成形する。シート成形口金は複数の部品でシート材料を流す流路を形成するため、その部品間の接合面からシート材料が漏れてシートに付着し、破れや欠点などを引き起こす問題がある。
【0003】
シート成形口金の部品構成には様々あるが、運用性に優れた一般的なシート成形口金の構造を説明する。図4は一般的なシート成形口金の正面図および下面図である。一般的なシート成形口金は、供給口17からシート材料を供給するダイホッパ3と、ダイホッパ3の下面に設置された対向する一対のリップ1、一対のリップ1のそれぞれの両端部およびダイホッパ3の下面に固定されて設置された側板2から構成されている。一対のリップ1は、シート材料を吐出する吐出口4を形成するため、傷つくとシートに厚みムラを引きこすことから、頻繁に修繕または交換が必要となる。本構造のシート成形口金は、リップ1が小型であることから、リップ1を安価かつ短納期で修繕または交換することができ、運用性に優れている。また、側板2は、締結ボルト5でリップ1との接合面7に、締結ボルト6でダイホッパ3との接合面8に面圧を付与して、シート材料の漏れを防止している。しかし、接合面7の吐出口4付近は、流路が邪魔で締結ボルト5を配置することができないため、面圧が弱く、シート材料が漏れることがある。
【0004】
この吐出口付近からのシート材料の漏れを防止する技術として、リップと側板との間に配置したブロックを押しボルトで押しつける方法がある。特許文献1にこの方法を適用した一例が記載されている。図5は、特許文献1に記載されたシート成形口金の正面図および下面図である。特許文献1には、ダイホッパ3のシート幅方向寸法をリップ1に合わせて一つの面となった接合面7と8に、ブロック9と側板2を設置したシート成形口金が示されている。側板2に設置された押しボルト10でブロック9をリップ1に押しつけることで、締結ボルトが配置できない吐出口4付近も面圧を強くすることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2002-187189号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1の技術は、リップとダイホッパとの温度差で生じるシート幅方向の熱膨張差によって接合面7と8との間に段差が生まれ、面圧が弱くなり、シート材料が漏れる懸念がある。
【0007】
そこで本発明は、リップ、側板、ダイホッパとの接合面に十分な面圧を付与して、シート材料の漏れを防止することができるシート成形口金を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0008】
[1] 上記課題を解決する本発明の第一のシート成形口金は、シート材料を供給するダイホッパ、当該ダイホッパの下面に設置された対向する一対のリップ、ならびに当該一対のリップのそれぞれの両端部および前記ダイホッパの下面に固定されて設置された側板を備えたシート成形口金であって、
前記側板の下面にはシート厚み方向に延びる溝が形成されており、
前記側板の、前記溝によってシート幅方向に分割された2つの部分のうち、シート幅方向の外側にある一方を押付部、他方を被押付部として、
前記押付部に、前記溝を形成している壁面のうち前記被押付部にある壁面を押すことで前記被押付部を前記一対のリップへ押しつける押付機構が備えられている。
【0009】
本発明の第一のシート成形口金は、下記[2]~[4]のいずれかの態様であることが好ましい。
[2] 上記被押付部のシート幅方向の長さをL1[mm]、上記一対のリップと上記被押付部との接合面の最下部から上記押付機構までのシート流れ方向の距離をH1[mm]とすると、0.2≦H1/L1≦1.0である、上記 [1]のシート成形口金。
[3] 上記側板のシート幅方向の外側の側面に、上記側面から上記溝の底面まで至る切り込みが形成された、上記[1]または[2]のシート成形口金。
[4] 上記側板と上記リップとの最小接触面圧が20MPa以上である、上記[1]~[3]のいずれかのシート成形口金。
【0010】
[5] 上記課題を解決する本発明の第二のシート成形口金は、シート材料を供給するダイホッパ、当該ダイホッパの下面に設置された対向する一対のリップ、ならびに当該一対のリップのそれぞれの両端部および前記ダイホッパの下面に固定されて設置された側板を備えたシート成形口金であって、
前記側板のシート幅方向の外側に、当該側板に固定されて、または当該側板を介して前記一対のリップに固定されて押付部材が設置されており、
前記押付部材に、前記側板のシート幅方向の外側の側面を押すことで当該側板を前記一対のリップへ押しつける押付機構が備えられている。
【0011】
本発明の第二のシート成形口金は、下記 [6]または[7]のいずれかの態様であることが好ましい。
[6] 上記側板と上記リップとの接合面から前記側板のシート幅方向の外側の側面までのシート幅方向の距離をL2[mm]、上記一対のリップと上記側板との接合面の最下部から上記押付機構までのシート流れ方向の距離をH2[mm]とすると、0.2≦H2/L2≦1.0である、上記[5]のシート成形口金。
[7] 上記側板と上記リップとの最小接触面圧が20MPa以上である、上記[5]または[6]のシート成形口金。
【0012】
[用語説明]
次に、本発明における各用語の意味を説明する。
「シート材料」とは、シートを構成する材料をいう。シート材料としては、たとえば、ポリエチレン・ポリプロピレン・ポリスチレン・ポリメチルペンテンなどのポリオレフィン樹脂、脂環族ポリオレフィン樹脂、ナイロン6・ナイロン66などのポリアミド樹脂、アラミド樹脂、ポリエチレンテレフタレート・ポリブチレンテレフタレート・ポリプロピレンテレフタレート・ポリブチルサクシネート・ポリエチレン-2,6-ナフタレートなどのポリエステル樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリアリレート樹脂、ポリアセタール樹脂、ポリフェニレンサルファイド樹脂、4フッ化エチレン樹脂・3フッ化エチレン樹脂・3フッ化塩化エチレン樹脂・4フッ化エチレン-6フッ化プロピレン共重合体・フッ化ビニリデン樹脂などのフッ素樹脂、アクリル樹脂、メタクリル樹脂、ポリアセタール樹脂、ポリグリコール酸樹脂、ポリ乳酸樹脂、などを溶媒に溶かすか溶融するなどして流動化したものを用いることができる。またこれらの熱可塑性樹脂としてはホモ樹脂であってもよく、共重合または2種類以上のブレンドであってもよい。また、各熱可塑性樹脂中には、各種添加剤、例えば、酸化防止剤、帯電防止剤、結晶核剤、無機粒子、有機粒子、減粘剤、熱安定剤、滑剤、赤外線吸収剤、紫外線吸収剤、屈折率調整のためのドープ剤などが添加されていてもよい。
【0013】
「シート成形口金」とは、シート材料を吐出口から吐出して、シートを成形する装置をいう。
「シート厚み方向」とは、シート材料がシートに成形されたときの厚み方向と一致する方向をいう。
「シート幅方向」とは、シート材料がシートに成形されたときの幅方向と一致する方向をいう。
「シート流れ方向」とは、シート材料がシート成形口金内を流れる方向と一致する方向をいい、本発明では「下」と表記している場合がある。
【0014】
「ダイホッパ」とは、シート成形口金にシート材料を供給するシート成形口金の一部材をいう。
「リップ」とは、ダイホッパの下面に設置された対向する一対の、シート成形口金の一部材をいう。
「側板」とは、一対のリップのそれぞれの両端部およびダイホッパの下面に固定されて設置された、シート成形口金の一部材をいう。
「吐出口」とは、一対のリップで形成された、シート材料を吐出する部分をいう。
「溝」とは、側板の下面に形成された、シート厚み方向に延びる凹部をいう。
「押付部」とは、溝によってシート幅方向に分割された側板の2つの部分のうち、シート幅方向の外側にある部分をいう。
「被押付部」とは、溝によってシート幅方向に分割された側板の2つの部分のうち、シート幅方向の内側にある部分をいう。
「押付機構」とは、押付部に設けられ、溝を形成している壁面のうち被押付部にある壁面を押すことで被押付部を一対のリップへ押しつける機構をいう。または押付部材に設けられ、側板のシート幅方向の外側の側面を押すことで側板を一対のリップへ押し付ける機構をいう。
「接合面」とは、2つの部材が接している面をいう。
「切り込み」とは、側板のシート幅方向の外側の側面に形成され、溝の底面まで至る凹部をいう。
「押付部材」とは、側板のシート幅方向の外側に設置され、側板または側板を介して一対のリップに固定された部材をいう。
「供給口」とは、ダイホッパの上部に形成された、シート材料が供給される部分をいう。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、シート材料の漏れを防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】本発明の第一のシート成形口金の正面図および下面図
図2】側板に切り込みが形成された、本発明の第一のシート成形口金の正面図および下面図
図3】本発明の第二のシート成形口金の正面図および下面図
図4】一般的なシート成形口金の正面図および下面図
図5】特許文献1に記載されたシート成形口金の正面図および下面図
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下に本発明について詳細に述べるが、本発明は以下の実施例を含む実施形態に限定されるものではない。図1~3は本発明のシート成形口金に関する図である。なお、従来の技術と同じ用途および機能を有している部材については、同じ符号を有している場合がある。
【0018】
[第一のシート成形口金]
図1を参照して、本発明の第一のシート成形口金を説明する。図1は本発明の第一のシート成形口金の正面図および下面図である。図1に示すように、本発明の第一のシート成形口金は、供給口17からシート材料を供給するダイホッパ3と、ダイホッパ3の下面に設置された対向する一対のリップ1と、一対のリップ1のそれぞれの両端部およびダイホッパ3の下面に固定されて設置された側板2と、を備えている。側板2の下面にはシート厚み方向に延びる溝11が形成されている。溝11によってシート幅方向に分割された側板2の2つの部分のうち、シート幅方向の外側にある一方が押付部12、他方が被押付部13である。押付部12に設けられた押付機構14は、溝11を形成している壁面のうち被押付部13にある壁面を押すことで、被押付部13を一対のリップ1へ押しつけることができる。
【0019】
ここで、各接合面の面圧について説明する。本発明の第一のシート成形口金は、従来技術と同様に、締結ボルト5、6で接合面7、8それぞれに面圧を付与するが、締結ボルト5だけでは接合面7の吐出口4付近の面圧が弱い。そこで本発明の第一のシート成形口金では、押付機構14で被押付部13を一対のリップ1へ押し付けることで、他の接合面の面圧を下げることなく、接合面7の吐出口4付近に強い面圧を付与することができる。ゆえに、本発明の第一のシート成形口金は、接合面7、8の全面に十分な面圧を付与して、シート材料の漏れを防止することができる。
【0020】
本発明の第一のシート成形口金は、図1に示すように、被押付部13のシート幅方向の長さをL1[mm]、接合面7の最下部から押付機構14までのシート流れ方向の距離をH1[mm]とすると、0.2≦H1/L1≦1.0であることが好ましい。ここで、「押付機構14まで」とは、シート成形口金を正面から見たときにおいて、押付機構14が溝11の壁面を押している範囲の中心位置までを意味する。H1は、一対のリップ1の下面が被押付部13の下面よりもシート搬送方向に突き出ていれば、被押付部13の下面から押付機構14までのシート流れ方向の距離となり、被押付部13の下面が一対のリップ1の下面よりもシート搬送方向に突き出ていれば、一対のリップ1の下面から押付機構14までのシート流れ方向の距離となる。
【0021】
押付機構14で接合面7に付与する面圧は、L1が大きいと付与される範囲は広いが、面圧自体は弱い。また、シート材料の漏れを防止するために面圧を付与したい範囲は押付機構14から接合面7の最下部までの距離、つまりH1である。H1/L1を0.2以上にすることで、強い面圧を付与することができる。またH1/L1を1.0以下にすることで、面圧を接合面7の最下部まで付与することができる。ゆえに、0.2≦H1/L1≦1.0にすることで、接合面7の最下部まで強い面圧を付与し、さらにシート材料の漏れを防止することができる。より好ましくは、0.2≦H1/L1≦0.5である。
【0022】
図2を参照して、本発明の第一のシート成形口金の別態様を説明する。本発明の第一のシート成形口金は、側板2のシート幅方向の外側の側面18に、側面18から溝11の底面まで至る切り込み15が形成されていることが好ましい。図2は、側板2に切り込み15が形成された、本発明の第一のシート成形口金の正面図および下面図である。切り込み15が形成されていることで、押付機構14の反力が押付部12から側板2に伝播するのが抑制され、接合面7の面圧が均一になりやすくなり、シート材料の漏れを防止する効果が高まる。
【0023】
本発明の第一のシート成形口金は、側板2とリップ1との最小接触面圧が20MPa以上であることが好ましい。最小接触面圧を20MPaにすることで、温度やシート材料の状態などに関わらず、さらにシート材料の漏れを防止することができる。より好ましくは、最小接触面圧が30MPa以上である。
【0024】
[第二のシート成形口金]
図3を参照して、本発明の第二のシート成形口金を説明する。図3は本発明の第二のシート成形口金の正面図および下面図である。図3に示すように、本発明の第二のシート成形口金は、本発明の第一のシート成形口金と同様にダイホッパ3と、一対のリップ1と、側板2と、を備えている。側板2のシート幅方向の外側には、ボルト19によって側板2に固定されて押付部材16が設置されている。押付部材16に設けられた押付機構14は、側板2のシート幅方向の外側の側面18を押すことで、側板2を一対のリップ1へ押しつけることができる。ボルト19は側板2を介して一対のリップ1に固定されてもよい。
【0025】
ここで、各接合面の面圧について説明する。本発明の第二のシート成形口金は、従来技術および本発明の第一のシート成形口金と同様に、締結ボルト5、6で接合面7、8それぞれに面圧を付与するが、締結ボルト5だけでは接合面7の吐出口4付近の面圧が弱い。そこで本発明の第二のシート成形口金では、押付機構14で側板2を一対のリップ1へ押し付けることで、他の接合面の面圧を下げることなく、接合面7の吐出口4付近に強い面圧を付与することができる。ゆえに、本発明の第二のシート成形口金は、接合面7、8の全面に十分な面圧を付与して、シート材料の漏れを防止することができる。
【0026】
本発明の第二のシート成形口金は、図3に示すように、側板2とリップ1との接合面7から側板2のシート幅方向の外側の側面18までのシート幅方向の距離をL2[mm]、接合面7の最下部から押付機構14までのシート流れ方向の距離をH2[mm]とすると、0.2≦H2/L2≦1.0であることが好ましい。ここで、「押付機構14まで」とは、シート成形口金を正面から見たときにおいて、押付機構14が側板2の側面18を押している範囲の中心位置までを意味する。H2は、一対のリップ1の下面が側板2の下面よりもシート搬送方向に突き出ていれば、側板2の下面から押付機構14までのシート流れ方向の距離となり、側板2の下面が一対のリップ1の下面よりもシート搬送方向に突き出ていれば、一対のリップ1の下面から押付機構14までのシート流れ方向の距離となる。
【0027】
押付機構14で接合面7に付与する面圧は、L2が大きいと付与される範囲は広いが、面圧自体は弱い。また、シート材料の漏れを防止するために面圧を付与したい範囲は押付機構14から接合面7の最下部までの距離、つまりH2である。H2/L2を0.2以下にすることで、強い面圧を付与することができる。またH2/L2を1.0以上にすることで、面圧を接合面7の最下部まで付与することができる。ゆえに、0.2≦H2/L2≦1.0にすることで、接合面7の最下部まで強い面圧を付与し、さらにシート材料の漏れを防止することができる。より好ましくは、0.2≦H2/L2≦0.5である。
【0028】
本発明の第二のシート成形口金は、側板2とリップ1との最小接触面圧が20MPa以上であることが好ましい。最小接触面圧を20MPaにすることで、温度やシート材料の状態などに関わらず、さらにシート材料の漏れを防止することができる。より好ましくは、最小接触面圧が30MPa以上である。
【実施例0029】
[実施例1]
図1に示すシート成形口金を用いて、実際にシートを成形し、リップ端面からのシート材料の漏れを評価した結果を説明する。本実施形態における具体的なシート成形口金の仕様、シート製造方法、および漏れの評価方法は以下の通りである。
(1)シート材料:ポリプロピレン。
(2)押出:シート材料を190℃設定の押出機に供給し、ギヤポンプ、フィルターを介した後、流量100から500kg/hまで増量しながら、シート成形口金に供給した。
(3)シート成形口金:吐出幅は900mmとした。側板に形成された溝のシート厚み方向寸法は100mm、深さは50mm、押付機構として押付部にM12の止めねじを設け、被押付部のシート幅方向の長さL1は25mm、一対のリップと被押付部との接合面の最下部から押付機構までのシート流れ方向の距離H1は30mm(H1/L1=1.2)、側板とリップとの最小接触面圧は10MPaであった。
(4)成形:シート成形口金からシート状に押出した後、キャスティングドラムで冷却固化し、成形した。
(5)漏れの評価:目視で確認できるシート材料の漏れが発生しない最大の吐出量(以下、限界吐出量とする)を確認した。
【0030】
[実施例2]
H1を10mm(H1/L1=0.4)に変更した以外は、実施例1と同様にしてシートを成形した。
【0031】
[実施例3]
側板のシート幅方向の外側の側面に、側面から溝の底面まで至る切り込みを形成した以外は、実施例1と同様にしてシートを成形した。切込みのシート厚み方向寸法は100mm、シート流れ方向寸法は3mmであった。
【0032】
[実施例4]
側板とリップの最小接触面圧を35MPaとした以外は、実施例1と同様にしてシートを成形した。
【0033】
[実施例5]
図3に示すシート成形口金を用いた以外は、実施例1と同様にしてシートを成形した。側板のシート幅方向の外側に押付部材を固定し、押付機構として押付部材にM12の止めねじを設け、側板とリップとの接合面から側板のシート幅方向外側の側面までのシート幅方向の距離L2は25mm、一対のリップと側板との接合面の最下部から押付機構までのシート流れ方向の距離H2は30mm(H2/L2=1.2)、側板とリップとの最小接触面圧は10MPaであった。
【0034】
[実施例6]
H2を10mm(H2/L2=0.4)に変更した以外は、実施例5と同様にしてシートを成形した。
【0035】
[実施例7]
側板とリップとの最小接触面圧を35MPaとした以外は、実施例5と同様にしてシートを成形した。
【0036】
[比較例1]
側板に溝、押付機構を形成していない以外は、実施例1と同様にしてシートを成形した。
【0037】
[実施例、比較例の結果評価]
各実施例のシート材料の漏れ防止効果は、限界吐出量が比較例1の100kg/hに対してどの程度増加できたかで評価した。
【0038】
側板に溝と押付機構を備えた実施例1は、限界吐出量が200kg/hと2倍に増加し、比較例1に比べてシート材料の漏れ防止効果が増大した。さらにH1/L1を0.4にした実施例2は、限界吐出量が300kg/hと3倍、切込みを形成した実施例3は、限界吐出長が400kg/hと4倍、側板とリップとの最小接触面圧を35MPaにした実施例4は、限界吐出量が500kg/hと5倍に増加し、いずれも実施例1と比べてもシート材料の漏れ防止効果がさらに増大した。
【0039】
一方、押付部材、押付機構を備えた実施例5は、限界吐出量が300kg/hと3倍に増加し、比較例1に比べてシート材料の漏れ防止効果が増大した。さらにH2/L2を0.4にした実施例6は、限界吐出量が400kg/hと4倍、側板とリップとの最小接触面圧を35MPaにした実施例7は、限界吐出量が500kg/hと5倍に増加し、いずれも実施例1と比べてもシート材料の漏れ防止効果がさらに増大した。
【産業上の利用可能性】
【0040】
本発明によれば、シート成形口金において、押付機構を用いて側板とリップの接合面の吐出口付近の面圧を向上し、シート材料の漏れを防止できる。
【符号の説明】
【0041】
1 一対のリップ
2 側板
3 ダイホッパ
4 吐出口
5、6 締結ボルト
7、8 接合面
9 ブロック
10 押しボルト
11 溝
12 押付部
13 被押付部
14 押付機構
15 切り込み
16 押付部材
17 供給口
18 側板のシート幅方向の外側の側面
19 ボルト
図1
図2
図3
図4
図5