(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024045716
(43)【公開日】2024-04-02
(54)【発明の名称】温度制御されたパルスRFアブレーション
(51)【国際特許分類】
A61B 18/12 20060101AFI20240326BHJP
【FI】
A61B18/12
【審査請求】有
【請求項の数】13
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2024025346
(22)【出願日】2024-02-22
(62)【分割の表示】P 2019130877の分割
【原出願日】2019-07-16
(31)【優先権主張番号】16/037,455
(32)【優先日】2018-07-17
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(71)【出願人】
【識別番号】511099630
【氏名又は名称】バイオセンス・ウエブスター・(イスラエル)・リミテッド
【氏名又は名称原語表記】Biosense Webster (Israel), Ltd.
(74)【代理人】
【識別番号】100088605
【弁理士】
【氏名又は名称】加藤 公延
(74)【代理人】
【識別番号】100130384
【弁理士】
【氏名又は名称】大島 孝文
(72)【発明者】
【氏名】イスラエル・ジルバーマン
(72)【発明者】
【氏名】アサフ・ゴバリ
(72)【発明者】
【氏名】ギリ・アティアス
(57)【要約】
【課題】高周波(RF)アブレーションのためのシステムを提供すること。
【解決手段】記載された実施形態は、高周波電流(RF電流)発生器と、プロセッサと、を備える、システムを含む。プロセッサは、RF電流発生器に、被験者の組織に印加するためのRF電流の複数のパルスを発生させるように構成され、パルスの各々は、80W超の最大値及び10秒未満の持続時間を有する電力を有し、パルスのうちの連続するパルス間のインターミッションは、10秒未満である。プロセッサは、パルスの各々が組織に印加されている間に、組織の測定温度を示す少なくとも1つの信号を受信し、かつ、測定された温度に応答して、パルスの電力を制御するように更に構成されている。他の実施形態もまた、記載される。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
システムであって、
高周波電流(RF電流)発生器と、
前記RF電流発生器に動作可能に接続された電極と、
プロセッサと、を備え、前記プロセッサは、
前記RF電流発生器に、被験者の組織に印加するためのRF電流の複数のパルスを発生させることであって、前記パルスの各々が、80W超の最大値及び10秒未満の持続時間を有する電力を有し、連続するパルス間のインターミッションが10秒未満である、発生させることと、
前記パルスの各々が前記組織に印加されている間に、前記プロセッサに動作可能に接続された温度測定装置から、前記組織の測定温度を示す少なくとも1つの信号を受信することと、
前記パルスの前記電力が事前定義された目標電力に到達するまで、前記パルスの前記電力を増加させることと、
前記目標電力に到達後、前記パルスの前記電力を分数変化させることによって増減させることと、
前記パルスの前記持続時間が事前定義されたパルス持続時間に到達すると、前記パルスの前記電力を0に低減させることと、を行うように構成され、
前記分数変化の量は、前記測定温度又は前記パルスの前記電力に基づいて計算される、システム。
【請求項2】
前記分数変化の量が、現在の測定温度Tt、直前の測定温度Tt-1、閾値温度T、及び、定数a、bを用いた式、a(Tt-1-Tt)/T+b(T-Tt)/Tの値と、現在のパルス電力値Ptと目標電力値Pを用いた式、(P-Pt)/Pの値のうちの最小値である、請求項1に記載のシステム。
【請求項3】
前記プロセッサが、前記RF電流発生器を駆動して、7個未満のパルスを印加するように構成されている、請求項1に記載のシステム。
【請求項4】
前記インターミッションが、2~5秒である、請求項1に記載のシステム。
【請求項5】
各パルスの前記持続時間が、2~5秒である、請求項1に記載のシステム。
【請求項6】
前記プロセッサは、前記パルスの前記電力が最初に前記最大値まで上昇し、次いで、前記最大値で横ばい状態になるように、前記RF電流発生器を駆動して、前記パルスの各々を印加させるように構成されている、請求項1に記載のシステム。
【請求項7】
前記最大値が、100W超である、請求項1に記載のシステム。
【請求項8】
前記最大値が、120W超である、請求項7に記載のシステム。
【請求項9】
前記最大値が、事前定義された目標電力値に等しい、請求項1に記載のシステム。
【請求項10】
前記プロセッサは、前記測定温度が閾値温度に近付くことに応答して、前記パルスの前記電力を低減することによって、前記パルスの前記電力を制御するように構成されている、請求項1に記載のシステム。
【請求項11】
前記閾値温度が、40℃~65℃である、請求項10に記載のシステム。
【請求項12】
前記閾値温度が、40℃~55℃である、請求項11に記載のシステム。
【請求項13】
前記インターミッション中に、前記組織にRFエネルギーが印加されない、請求項1に記載のシステム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、心不整脈の治療などの高周波(RF)アブレーションの分野に関する。
【背景技術】
【0002】
高周波(Radiofrequency、RF)アブレーションは、熱によって不要な組織を死滅させる治療法である。RFアブレーションは、1980年代の心不整脈治療から始まり、多くの疾患における臨床的応用を見出し、現在では特定の種類の心不整脈及び特定の癌に対する一般的な治療法である。RFアブレーション中、典型的には、医学的画像ガイダンスの下で、電極が標的部位に近接して挿入される。その後、標的領域内の電極を包囲する組織は、RF電流によって加熱することにより破壊される。
【0003】
米国特許第9,072,518号には、組織をアブレーションし、損傷を形成するために高電圧パルスを使用するアブレーションシステム及び方法が記載されている。カテーテル、外科用プローブ、及びクランプなどの様々な異なる電気生理学デバイスを使用して、1つ又は2つ以上の電極を標的位置に位置付けることができる。電極は、電源ラインに接続することができ、場合によっては、電極への電力を電極毎に制御することができる。高電圧パルスシーケンスは、典型的には、熱ベースの高周波エネルギーアブレーションプロトコルで観察されるものよりも少ない合計量の加熱をもたらす。
【0004】
国際公開第1996/010950号には、電極カテーテルを心室に挿入することを含む、心室頻脈を治療するための方法が記載されている。心臓の心室壁は、異常な電気経路が位置付けられた部位でアブレーション電極に接触される。高周波は、異常な電気経路の部位を確認し、組織を予熱するのに十分な時間、アブレーション電極を通して組織に送達される。次いで、短い高電圧電気パルスが、同じ電極を介して組織に送達されて、それによって非伝導性損傷が形成される。
【0005】
参照によりその開示内容が本明細書に組み込まれる、Govariらの米国特許出願公開第2017/0209208号には、70W~100Wの範囲で電極によって送達される第1の最大高周波(RF)電力を選択することと、20W~60Wの範囲で電極によって送達される第2の最大RF電力を選択することと、を含む、方法が記載されている。この方法はまた、電極上への許容力を5g~50gの範囲で選択することと、アブレーションされる組織の最大許容温度を55℃~65℃の範囲で選択することと、電極に灌注流体を供給するための灌注速度を8~45mL/分の範囲で選択することと、を含む。この方法は、最初に第1の電力を使用することによって、選択された値を使用して、組織のアブレーションを実行することと、3秒~6秒の事前定義された時間の後に第2の電力に切り替えることと、10秒~20秒のアブレーションの合計時間の後にアブレーションを終了することと、を更に含む。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明のいくつかの実施形態によれば、高周波電流(RF電流)発生器及びプロセッサを含むシステムが提供される。プロセッサは、RF電流発生器に、被験者の組織に印加するためのRF電流の複数のパルスを発生させるように構成されており、パルスの各々は、80W超の最大値及び10秒未満の持続時間を有する電力を有し、連続するパルス間のインターミッションは、10秒未満である。プロセッサは、パルスの各々が組織に印加されている間に、組織の測定温度を示す少なくとも1つの信号を受信し、かつ、測定された温度に応答して、パルスの電力を制御するように更に構成されている。
【0007】
いくつかの実施形態では、プロセッサは、RF電流発生器を駆動して、7個未満のパルスを印加するように構成されている。
【0008】
いくつかの実施形態では、インターミッションは、2~5秒である。
【0009】
いくつかの実施形態では、各パルスの持続時間は、2~5秒である。
【0010】
いくつかの実施形態では、プロセッサは、パルスの電力が最初に最大値まで上昇し、次いで、最大値で横ばい状態になるように、RF電流発生器を駆動して、パルスの各々を印加するように構成されている。
【0011】
いくつかの実施形態では、最大値は、100W超である。
【0012】
いくつかの実施形態では、最大値は、120W超である。
【0013】
いくつかの実施形態では、最大値は、事前定義された目標電力値に等しい。
【0014】
いくつかの実施形態では、プロセッサは、パルスの電力を交互に低減及び増加させることによって、パルスの電力を制御するように構成されている。
【0015】
いくつかの実施形態では、プロセッサは、測定温度が閾値温度に近付くことに応答して、パルスの電力を低減することによって、パルスの電力を制御するように構成されている。
【0016】
いくつかの実施形態では、閾値温度は、40℃~65℃である。
【0017】
いくつかの実施形態では、閾値温度は、40℃~55℃である。
【0018】
いくつかの実施形態では、インターミッション中に、組織にRFエネルギーが印加されない。
【0019】
本発明のいくつかの実施形態によれば、方法が更に提供され、被験者の組織に印加するための複数の高周波(RF)電流のパルスを発生させることを含み、パルスの各々は、80W超である最大値及び10秒未満である持続時間を有する電力を有し、パルスのうちの連続するパルス間のインターミッションは、10秒未満である。この方法は、パルスの各々を組織に印加している間に、組織の測定温度を示す少なくとも1つの信号を受信することと、測定された温度に応答して、パルスの電力を制御することと、を更に含む。
【0020】
いくつかの実施形態では、組織は、被験者の心臓組織を含む。
【0021】
以下の本開示の実施形態の詳細な説明を図面と併せ読むことで、本開示のより完全な理解が得られるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【
図1】本発明の一実施形態による、アブレーション処置を行うために使用されるアブレーションシステムの概略図である。
【
図2A】本発明の一実施形態による、システムで使用されるプローブの遠位端を概略的に示す。
【
図2B】本発明の一実施形態による、システムで使用されるプローブの遠位端を概略的に示す。
【
図2C】本発明の一実施形態による、システムで使用されるプローブの遠位端を概略的に示す。
【
図2D】本発明の一実施形態による、システムで使用されるプローブの遠位端を概略的に示す。
【
図3】本発明のいくつかの実施形態による、パルスRFアブレーションの印加の概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
概説
従来技術のシステムでの高周波(RF)アブレーションは、典型的には、約1分間の灌注下約10gの接触力で、20~50ワット程度の継続的な電力レベルで行われる。このようなプロトコルは、一般に、5mm程度の損傷深さをもたらす。6~10mmなどのより大きな深さを達成するためには、典型的には、RF電流が印加される持続時間を増加させること、又は電流の電力レベルを増加させることが必要である。しかしながら、これらの選択肢の両方共、例えば、組織内にスチームポップが形成される可能性に起因して、望ましくないことがある。
【0024】
この課題に対処するために、米国特許出願公開第2017/0209208号には、約100ワットの連続電力の印加を容易にする接触力及び灌注速度の値の範囲が記載されている。アブレーション処置中、アブレーションされる組織の温度が慎重に監視され、かつ高速で記録される。監視された温度が事前設定された最大温度限界を超過する場合は、組織に供給されるRF電力が低減される。代替的に又は追加的に、組織に供給されるRFエネルギーに対するインピーダンスを監視することができ、インピーダンスが事前設定された値を超えて増加する場合は、RFエネルギーの供給を停止することができる。RF電流の高電力は、RF電流の持続時間を1分未満まで短くすることを容易にする。加えて、組織温度及び/又はインピーダンスの監視により、スチームポップが形成されるリスクはほとんどない。
【0025】
本発明の実施形態は、連続電流ではなく、複数の短い高電力パルス、典型的には100W以上の複数の短い高電力パルスでRFエネルギーを印加することによって、アブレーション処置の有効性及び安全性を更に高める。各パルスに続く中断は、後続のパルスが再び高電力で印加され得るように、組織が冷却することを可能にする。各パルスの間、組織の温度を上記のように監視することができ、パルスの振幅はそれに応じて調節され得る。有利なことに、このプロトコルは、比較的大きな損傷深さを迅速かつ安全に達成することを容易にする。
【0026】
システムの説明
最初に、本発明の一実施形態によるアブレーション処置を行うために使用されるアブレーションシステム12の概略図である
図1を参照する。例として、この処置は、ヒト患者18の心臓16の心筋の一部分のアブレーションを含むことが想定される。しかしながら、本発明の実施形態は、生体組織上の任意のアブレーション処置に同様に適用することができることが理解されるであろう。
【0027】
アブレーションを行うために、医師14は、プローブ20を患者18の内腔に挿入し、そのため、プローブ20の遠位端22が患者の心臓16に入る。
図2A~2Dを参照して以下により詳細に説明される遠位端22は、医師によって心筋のそれぞれの位置に接触するようにされる1つ又は2つ以上の電極24を備える。プローブ20は、ポート又はソケットなどの好適な電気的インターフェースを介して操作コンソール48に接続される近位端28を更に備える。
【0028】
システム12は、典型的に操作コンソール48に位置付けられているシステムプロセッサ46によって制御される。概して、プロセッサ46は、単一のプロセッサとして具現化されてもよく、又は連携してネットワーク化若しくはクラスタ化された一組のプロセッサ群として具現化されてもよい。プロセッサ46は、典型的には、中央処理装置(CPU)、ランダムアクセスメモリ(RAM)、ハードドライブ若しくはCD ROMドライブなどの不揮発性二次記憶装置、ネットワークインタフェース、及び/又は周辺機器を含むプログラマブルデジタル演算装置である。ソフトウェアプログラムを含めたプログラムコード、及び/又はデータは、当該技術分野において公知のとおり、CPUによる実行及び処理のためにRAMにロードされ、表示、出力、送信又は格納のために結果が生成される。プログラムコード及び/又はデータは、例えば、ネットワークを通じて電子形式でコンピュータにダウンロードされてもよく、又は代替的に若しくは追加的に、磁気、光学又は電子メモリなどの非一過性有形媒体上に提供及び/若しくは格納されてもよい。このようなプログラムコード及び/又はデータが、プロセッサに提供されると、本明細書に記載されているタスクを行うように構成されている、機械又は専用コンピュータが実現する。
【0029】
処置の間、プロセッサ46は、当該技術分野において公知である任意の好適な方法を用いてプローブの遠位端22の位置及び配向を追跡するのが一般的である。例えば、プロセッサ46は、患者18の体外にある磁気送信器がプローブの遠位端に位置付けられたコイルで信号を発生させる、磁気追跡方法を使用してもよい。Biosense Websterにより製造されるCarto(登録商標)システムは、このような追跡方法を使用する。遠位端22の行路は、典型的には、画面62上に、患者18の心臓の3次元表示60で表示される。アブレーション処置の進行は、典型的には、画面62に、グラフィック64及び/又は英数字データ66としても表示される。
【0030】
システム12の関連する構成要素を制御するために、プロセッサ46は、メモリ50に格納された関連するソフトウェアモジュールをロード及び実行することができる。典型的には、メモリ50は、温度モジュール52と、電力制御モジュール54と、力モジュール56と、灌注モジュール58と、を格納しており、これらの機能については以下で説明する。(一般に、以下に説明される任意の関連する処理機能は、プロセッサ、又はプロセッサによって実行されて機能を実行するモジュールのどちらかによって実行されると言ってよい。)
【0031】
コンソール48は、アブレーション処置に使用されるRF電流を発生させるように構成されたRF電流発生器47を備える。コンソール48は、プロセッサ46と通信するために医師14によって使用される、制御手段49を更に備える。コンソール48は、プロセッサ46とプローブ20との間の通信を容易にするために、任意の他の好適なハードウェア又はソフトウェア要素を更に備えてよい。
【0032】
ここで、本発明の一実施形態による、プローブ20の遠位端22を概略的に示している
図2A~2Dを参照する。
図2Aはプローブの長さに沿った断面図であり、
図2Bは
図2Aに記された切断線IIB-IIBに沿った横断面図であり、
図2Cは遠位端の一区間の斜視図であり、
図2Dは遠位端の近位部分92の中に組み込まれた力センサ90の概略的横断面図である。
【0033】
図2Aに示すように、挿入管70は、プローブの長さに沿って延在し、その遠位端の終端部において、アブレーションに使用される伝導性キャップ電極24Aに接続されている。(伝導性キャップ電極24Aは、本明細書において「焼灼電極」又は単に「キャップ」とも称される。)キャップ電極24Aは、その遠位端に略平坦な導電面84を有し、その近位端に実質的に円形の縁部86を有する。焼灼電極24Aの近位には、典型的に、リング電極24Bなどの他の電極がある。典型的に、挿入管70は、可撓性の生体適合性ポリマーを含み、一方、電極24A及び24Bは、例えば、金又は白金などの生体適合性金属を含む。焼灼電極24Aは、通常は潅注開口72のアレイにより穿孔されている。一実施形態では、電極24Aの上に均等に分布する36個の開口72がある。
【0034】
導電体74は、高周波(RF)電気エネルギーをコンソール48(
図1)から挿入管70を通って電極24Aに伝達し、したがって、電極が接触している心筋組織をアブレーションするために電極に通電する。以下に説明するように、電力制御モジュール54は、電極24Aを介して消散されるRF電力のレベルを制御する。アブレーション処置の間、開口72を通って流出する潅注流体が、治療中の組織を洗浄し、流体の流速は潅注モジュール58によって制御される。潅注流体は、挿入管70内の管(図示せず)によって電極24Aに送出される。
【0035】
軸方向にも円周方向にも、プローブの遠位先端部の周りに配列された場所において、温度センサ78が、導電キャップ電極24A内に取り付けられている。本明細書で考察される開示の一実施形態では、キャップ24Aは6つのそのようなセンサを含み、3つのセンサからなる一方の群は、先端部に近い遠位位置にあり、3つのセンサからなる他方の群は、それよりもわずかに近位側の位置にある。この分布は単に例として示されるが、より多い又はより少ない数のセンサが、キャップ内の任意の好適な位置に取り付けられてよい。センサ78は、熱電対、サーミスタ、又は任意の他の好適な種類の小型温度センサを備えてもよい。センサ78は、挿入管70の長さ全体にわたって延びるリード(略図には図示せず)によって接続されている。したがって、温度信号は、リード上で、温度モジュール52に搬送される。
【0036】
開示された実施形態において、キャップ24Aは、温度センサ78と先端部の中央空洞75の内側の潅注流体との間に所望の断熱性がもたらされるように、0.5mm厚程度の比較的厚い側壁73を備えている。潅注流体は、開口72を通って空洞75から出る。センサ78は、側壁73の長手方向の内径部79に嵌入されるロッド77上に取り付けられている。ロッド77は、ポリイミドなどの好適なプラスチック材を含むことができ、かつ、エポキシなどの好適な接着剤81により遠位端において所定の位置に保持することができる。参照により本明細書に組み込まれる米国特許第9,445,725号では、先述したものと類似の構成で取り付けられた温度センサを有するカテーテルが記載されている。
【0037】
先述した構成は、6つのセンサ78の配列を提供するが、センサの他の構成及び他の数が当業者には明らかとなり、すべてのそのような構成及び数は本発明の範囲内に含まれる。
【0038】
本明細書における説明において、遠位端部22は、xyz直交軸線のセットを画定するものと想定され、このセットのz軸に対応するのが、遠位端部の軸95である。簡単にするため、また一例として、y軸を紙の平面内にあると想定し、xy平面を本明細書では縁部86で画定された平面に対応するものと想定し、xyzの軸の原点を円の中心であると想定する。
【0039】
図2Dは、本発明の一実施形態による、力センサ90の概略断面図である。センサ90はばね94を備え、このばねは本明細書において、キャップ24Aを近位部分92に接続する複数の螺旋体96を備えると想定される。位置センサ98がばね94の遠位側に固定されており、本明細書では、伝導体100によって力モジュール56に結合された1つ以上のコイルを備えると想定される。
【0040】
典型的にはコイルであるRF送信機102は、ばね94の近位側に固定され、送信機102のためのRFエネルギーが、力モジュール56の制御下で、コンソール48から伝導体104を介して供給される。送信機からのRFエネルギーはセンサ98を通過し、センサの伝導体100内に対応する信号を生成する。
【0041】
動作の際、力がキャップ24Aに及ぼされると、センサ98は送信機102に対して移動し、その移動がセンサの信号の変化を引き起こす。力モジュール56はセンサの信号の変化を用いて、キャップ24Aにかかる力の測定基準を提供する。この測定基準は通常、力を大きさ及び方向で示すものである。
【0042】
センサ90に類似したセンサの更に詳細な説明が、参照によって本明細書に組み込まれる米国特許出願第2011/0130648号に記載されている。
【0043】
図1に戻るが、温度モジュール52は、キャップ24A内の6つの温度センサ78から信号を受信し、それらの信号を用いて、6つの測定温度のうちの最高値を決定する。温度モジュールは、典型的には、例えば20~40ミリ秒毎などの固定速度で最大温度を計算するように構成される。いくつかの実施形態では、最高温度は少なくとも30Hzの周波数で決定される。算出された最高温度は、本明細書では測定温度とも称され、この測定温度は、アブレーションされている組織の温度として登録される。温度モジュールは、電力制御モジュールが測定温度に応答してRF電流を制御できるように、測定温度値を電力制御モジュール54に渡す。
【0044】
電力制御モジュール54は、1Wから130W、140W、又は150Wまでの範囲などの任意の好適な範囲で、キャップ24AにRF電力を供給することができる。電力制御モジュールはまた、キャップ24Aのインピーダンス、すなわち、キャップ24Aから送られたRF電流に対するインピーダンスを測定する。インピーダンスは、典型的には、例えば400~600ミリ秒毎などの事前定義された速度で測定される。インピーダンスが、7Ωなどの事前設定された値を超えて以前のインピーダンス測定値から増加する場合は、インピーダンスの増加が、炭化又はスチームポップなどのアブレーションされている組織の望ましくない変化を示すことがあるため、電力制御モジュールは、キャップ24AへのRF送達を停止することができる。
【0045】
典型的には、アブレーション処置の前に、医師は、パルスの数、各パルスの最大(又は「標的」)電力、各パルスの持続時間、及び連続パルス間の時間などの関連パラメータを選択することによって、RFパルスプロファイルを定義する。次いで、電力制御モジュールは、定義されたプロファイルに従って、RF発生器47に、被験者の組織に印加するためのRF電流の複数のパルスを発生させる。これらのパルスの各々は、発生器によってプローブ20に供給される。
図3を参照して以下で更に説明されるように、プローブがパルスを印加する間、電力制御モジュールは、温度モジュール52から受信した測定温度に応答してパルスの電力を制御する。例えば、電力制御モジュールは、アブレーションされる組織内の炭化、キャップ24A上の凝固、及び/又はスチームポップなどの望ましくない影響の可能性を低減するためなどに、医師14によって設定された閾値温度に近付いている測定温度に応答して、送達される電力を低減させることができる。
【0046】
典型的には、アブレーションセッション中、プロセッサ46は、画面62に、医師によって選択されたパラメータの値を表示させる。プロセッサ46はまた、当該技術分野において既知の方法により、画面62に、RF送達の進行を医師に表示させることもできる。進行状況の表示は、アブレーションによって生成される際の損傷の寸法のシミュレーションなどの図形によるもの、及び/又は英数字からなるものであってよい。
【0047】
上で説明したように、力モジュール56は、キャップ24Aにかかる力を測定する。ある実施形態において、アブレーションに対する許容力は、5g~35gの範囲にある。同様に、灌注モジュール58は、プローブ先端部に灌注流体が送達される速度を管理する。本発明のいくつかの実施形態では、この速度は8~45mL/分の範囲で設定され得る。
【0048】
パルスRFアブレーション
概説において、及び
図1を参照して、上で説明したように、本明細書に記載される実施形態は、比較的短時間で比較的深い損傷を達成するためなどに、RF電流の短い高出力パルスを被験者の組織(例えば、心臓組織)への安全な印加を提供する。この点に関して言えば、ここで、本発明のいくつかの実施形態による、パルスRFアブレーションの適用の概略図である
図3を参照する。
【0049】
図3は、第1のパルス106a、第2のパルス106b、及び第3のパルス106cを含む複数のRF電流パルス106を示す。パルス106は、プロセッサ46によって、RF発生器47及びプローブ20を使用して患者18の組織に印加される。
【0050】
図3は、パルス106の印加中に測定されるときの、組織とプローブ20との間の境界面での温度108を更に示す。
図1を参照して上述したように、「組織の温度」としてより簡潔に説明することができる温度108は、温度センサ78から受信した個々の測定値の最大値を取ることによって、温度モジュール52によって計算することができる。
【0051】
図3は、パルス106の電力110を更に示す。以下に詳細に記載されるように、各パルス106の振幅、したがって電力は、測定温度108に応答してプロセッサ46によって制御される。
【0052】
パルス106の温度108及び電力110は、共通の時間軸に沿ってプロットされ、特に重要な時間t0~t8が記されている。
図3のデータは、実施された実際の実験手順の結果に基づいているが、一般性を保つために、特定の数値は
図3から省略されている。
【0053】
典型的には、各パルス106は、最大値が80W超、例えば、100W超又は120W超の電力を有する。(換言すれば、各パルスの電力は、パルスの印加中の少なくとも1つの瞬間、80W、100W、又は120Wを超過することがある。)典型的には、各パルスの持続時間は、10秒未満であり、例えば、パルスの持続時間は、2~5秒であり得る。したがって、例えば、第1のパルス106aが始まる時間t0と第1のパルスが終わる時間時間t7との間の持続時間は、2~5秒であり得る。
【0054】
連続するパルスの各対は、インターミッションによって分離され、その間、典型的には、組織にエネルギーが印加されない。典型的には、インターミッションは、10秒未満、例えば、2~5秒である。例えば、時間t7と第2のパルスが始まる時間t8との間の持続時間は、2~5秒であり得る。概説において上で説明したように、インターミッションは、パルス印加の間に組織の冷却を促進する。
【0055】
典型的には、パルスの各々は、パルスの電力が最初に前述の最大電力値まで上昇し、その後、前述の最大電力値で横ばい状態になるように印加される。典型的には、この最大値は、事前定義された目標電力値Pに等しく、これは、上述したように、80W超、100W超、又は120W超であり得る。この初期の横ばい状態に続いて、パルスの電力は、すぐ後で更に詳細に説明するように、パルスが組織の測定温度に応じて制御されるとき、典型的には振動する。
【0056】
各パルスが印加される間、プロセッサ46は、測定温度108に応答してパルスの電力を制御する。例えば、プロセッサは、例えば、40℃から65℃(例えば、40℃から55℃)であり得る閾値温度Tに近付く、到達する、又は超過する測定温度に応答して、パルスの電力を低減させることができる。同様に、プロセッサは、Tよりも十分に低い測定温度に応答して、パルスの電力を増加させることができる。したがって、典型的には、プロセッサは、温度108に応答して、各パルスの電力を交互に低減及び増加させる。
【0057】
いくつかの実施形態では、プロセッサは、各パルスを制御するために、温度読み取り値を継続的に使用して電力の所要のわずかな変化を計算し、次いで、この所要の変化だけパルスの電力を調整する。例えば、米国特許出願公開第2017/0209208号に記載されるように、所要のわずかな変化は、
【0058】
【数1】
の最小値であり得、式中、Ttは、現在の測定温度であり、Tt-1は、以前の測定温度であり、Ptは、パルスの電流電力であり、a及びbは、定数である。(一実施形態では、例えば、a=10及びb=1である。)
【0059】
図3は、上述の制御技法の使用を実証する。具体的には、第1のパルスの電力は、時間t0から、時間t1において目標電力に達するまで上昇する。その後、
【0060】
【数2】
のヌル値により、電力は更に増加しない。時間t2において、温度108は、
【0061】
【数3】
が負になるように十分にTに近く、したがって電力は低減される。電力は、時間t3まで低減され続ける。時間t3で、計算された所要の電力変化が再び正になるように温度が十分に低下し、そのため、電力は、時間t4で目標電力に再び達するまで、再び増加される。続いて、電力は、高温に起因して再び低減される前に、第2の時間の間一時的に横ばい状態になる。時間t5で、電力は再び増加される。最後に、時間t6において、プロセッサは、パルスの持続時間が事前定義されたパルス持続時間を超過しないように、電力を急速にゼロに低減させる。第2及び第3のパルスについて、同様の電力110の振動が観察され得る。
【0062】
一般に、アブレーション処置は、1つを超える任意の数のパルスの印加を含むことができる。しかしながら、典型的には、所望の損傷深さは、7個未満(例えば、6個未満)のパルスが印加されるように、7個未満のパルスで到達され得る。各パルスの間、電力110は、任意の回数、目標電力Pに到達し得る。
【0063】
典型的には、各パルスが印加される間、プロセッサは、
図1を参照して上述したように、パルスに対するインピーダンスを測定する。更に上述したように、プロセッサは、この測定インピーダンスの著しい増加に応答して、RF電流の印加を停止することができる。
【0064】
上に述べた実施形態は例として挙げたものであり、本発明は上記に具体的に示し、説明したものに限定されない点は理解されよう。むしろ、本発明の範囲は、本明細書の上文に記載された様々な特徴の組み合わせ及び部分的組み合わせの両方、並びに前述の説明を一読すると当業者が想起すると思われる、先行技術に開示されていないそれらの変形及び改変を含む。
【0065】
〔実施の態様〕
(1) システムであって、
高周波電流(RF電流)発生器と、
前記RF電流発生器に動作可能に接続された電極と、
プロセッサと、を備え、前記プロセッサは、
前記RF電流発生器に、被験者の組織に印加するためのRF電流の複数のパルスを発生させることであって、前記パルスの各々が、80W超の最大値及び10秒未満の持続時間を有する電力を有し、連続するパルス間のインターミッションが10秒未満である、発生させることと、
前記パルスの各々が前記組織に印加されている間に、前記プロセッサに動作可能に接続された温度測定装置から、前記組織の測定温度を示す少なくとも1つの信号を受信し、かつ、前記測定温度に応答して、前記パルスの前記電力を制御することと、を行うように構成されている、システム。
(2) 前記プロセッサが、前記RF電流発生器を駆動して、7個未満のパルスを印加するように構成されている、実施態様1に記載のシステム。
(3) 前記インターミッションが、2~5秒である、実施態様1に記載のシステム。
(4) 各パルスの前記持続時間が、2~5秒である、実施態様1に記載のシステム。
(5) 前記プロセッサは、前記パルスの前記電力が最初に前記最大値まで上昇し、次いで、前記最大値で横ばい状態になるように、前記RF電流発生器を駆動して、前記パルスの各々を印加させるように構成されている、実施態様1に記載のシステム。
【0066】
(6) 前記最大値が、100W超である、実施態様1に記載のシステム。
(7) 前記最大値が、120W超である、実施態様6に記載のシステム。
(8) 前記最大値が、事前定義された目標電力値に等しい、実施態様1に記載のシステム。
(9) 前記プロセッサが、前記パルスの前記電力を交互に低減及び増加させることによって、前記パルスの前記電力を制御するように構成されている、実施態様1に記載のシステム。
(10) 前記プロセッサは、前記測定温度が閾値温度に近付くことに応答して、前記パルスの前記電力を低減することによって、前記パルスの前記電力を制御するように構成されている、実施態様1に記載のシステム。
【0067】
(11) 前記閾値温度が、40℃~65℃である、実施態様10に記載のシステム。
(12) 前記閾値温度が、40℃~55℃である、実施態様11に記載のシステム。
(13) 前記インターミッション中に、前記組織にRFエネルギーが印加されない、実施態様1に記載のシステム。
(14) 方法であって、
高周波電流(RF電流)発生器で被験者の組織に印加するための高周波(RF)電流の複数のパルスを発生させることであって、前記パルスの各々が、80W超の最大値及び10秒未満の持続時間を有する電力を有し、連続するパルス間のインターミッションが10秒未満である、発生させることと、
前記組織に接触した関係にあり、かつ前記RF電流発生器に動作可能に接続された電極を介して、前記組織に前記パルスを印加することと、
前記パルスの各々が前記組織に印加されている間に、温度感知装置から、前記組織の測定温度を示す少なくとも1つの信号を受信し、かつ、前記測定温度に応答して、前記パルスの前記電力を制御することと、を含む、方法。
(15) 前記インターミッションが、2~5秒である、実施態様14に記載の方法。
【0068】
(16) 各パルスの前記持続時間が、2~5秒である、実施態様14に記載の方法。
(17) 前記組織が、前記被験者の心臓組織を含む、実施態様14に記載の方法。
(18) 前記パルスを印加することは、前記パルスの前記電力が最初に前記最大値まで上昇し、次いで、前記最大値で横ばい状態になるように、前記パルスの各々を印加することを含む、実施態様14に記載の方法。
(19) 前記パルスの前記電力を制御することは、前記測定温度が閾値温度に近付くことに応答して、前記パルスの前記電力を低減させることを含む、実施態様14に記載の方法。
(20) 前記閾値温度が、40℃~65℃である、実施態様19に記載の方法。
【外国語明細書】