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特開2024-45719メチルフェニデートプロドラッグを含む組成物、その作製および使用方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024045719
(43)【公開日】2024-04-02
(54)【発明の名称】メチルフェニデートプロドラッグを含む組成物、その作製および使用方法
(51)【国際特許分類】
   C07D 401/12 20060101AFI20240326BHJP
   A61K 31/455 20060101ALI20240326BHJP
   A61K 9/48 20060101ALI20240326BHJP
   A61K 47/38 20060101ALI20240326BHJP
   A61K 47/12 20060101ALI20240326BHJP
   A61K 47/04 20060101ALI20240326BHJP
   A61K 47/02 20060101ALI20240326BHJP
   A61K 47/32 20060101ALI20240326BHJP
   A61P 25/00 20060101ALN20240326BHJP
   A61P 25/18 20060101ALN20240326BHJP
【FI】
C07D401/12 CSP
A61K31/455
A61K9/48
A61K47/38
A61K47/12
A61K47/04
A61K47/02
A61K47/32
A61P25/00
A61P25/18
【審査請求】有
【請求項の数】13
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2024025372
(22)【出願日】2024-02-22
(62)【分割の表示】P 2022551298の分割
【原出願日】2021-02-23
(31)【優先権主張番号】62/983,614
(32)【優先日】2020-02-29
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(71)【出願人】
【識別番号】522174100
【氏名又は名称】ケムファーム, インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100078282
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 秀策
(74)【代理人】
【識別番号】100113413
【弁理士】
【氏名又は名称】森下 夏樹
(74)【代理人】
【識別番号】100181674
【弁理士】
【氏名又は名称】飯田 貴敏
(74)【代理人】
【識別番号】100181641
【弁理士】
【氏名又は名称】石川 大輔
(74)【代理人】
【識別番号】230113332
【弁護士】
【氏名又は名称】山本 健策
(72)【発明者】
【氏名】スヴェン ギュンター
(72)【発明者】
【氏名】グオチェン チ
(72)【発明者】
【氏名】トラビス ミックル
(57)【要約】
【課題】メチルフェニデートプロドラッグを含む組成物、その作製および使用方法の提供。
【解決手段】本技術は、式を有する化合物を合成するためのセルデクスメチルフェニデート化合物および方法に関する。本技術は、特定のd-トレオ-メチルフェニデート(「d-MPH」、「d-メチルフェニデート」、「デクスメチルフェニデート」)結合体またはその医薬的に許容され得る塩を提供し、たとえば、非結合d-メチルフェニデートと比較した場合に即時および持続放出PKプロフィールの両方を提供することができる、非結合メチルフェニデートを含む組成物中のd-メチルフェニデート結合体の少なくとも1つの1日1回投与形態を提供する。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
式I:
【化1】

の化合物であって、前記式Iの化合物は、
(a)式II:
【化2】

を有する化合物を合成するステップ、
(b)式III:
【化3】

を有する第1の中間体化合物を合成するステップ、
(c)式IV:
【化4】

を有する第2の中間体化合物を合成するステップ、
(d)セルデクスメチルフェニデートクロリド化合物の粗生成物を合成するステップ、および
(e)ステップ(d)の前記化合物を精製して、式Iを有するセルデクスメチルフェニデートクロリド化合物を生成するステップ
を含むプロセスにより作製される、化合物。
【請求項2】
式I:
【化5】

の化合物であって、前記式Iの化合物は、
(a)式II:
【化6】

を有する化合物を合成するステップであって、
前記式IIを有する化合物の合成が、メチル-t-ブチルエーテルおよびアセトニトリル中のトリエチルアミンの存在下で、O-tert-ブチル-L-セリンtert-ブチルエステルヒドロクロリドおよびニコチン酸を反応させて溶液を形成することを含み、前記溶液をメチル-t-ブチルエーテルおよびn-ヘプタンを用いて結晶化させて、前記式IIを有する化合物を得る、ステップ、
(b)式III:
【化7】

を有する第1の中間体化合物を合成するステップであって、
前記第1の中間体化合物の合成が、(a)デクスメチルフェニデートHClをメチル-t-ブチルエーテルおよび2,6-ルチジンと反応させて反応混合物を得ること、ならびに(b)クロロメチルクロロホルメートを前記反応混合物に添加して、前記式IIIを有する第1の中間体化合物を得ることを含む、ステップ、
(c)式IV:
【化8】

を有する第2の中間体化合物を合成するステップであって、
前記第2の中間体化合物の合成が、(a)アセトニトリル、ジオキサン中HClおよび4-メチル-2-ペンタノンの存在下で、前記式IIを有する化合物を前記第1の中間体化合物と反応させて、反応混合物を得ること、ならびに(b)前記反応混合物にセルデクスメチルフェニデートクロリド種結晶を添加して、前記式IVの第2の中間体化合物を得ることを含む、ステップ、
(d)セルデクスメチルフェニデートクロリド化合物の粗生成物を合成するステップであって、
前記セルデクスメチルフェニデートクロリド化合物の前記粗生成物の合成が、(a)前記第2の中間体結晶性固体を無水1,4-ジオキサンおよびスルホランと反応させて反応混合物を生成すること、ならびに(b)前記反応混合物にセルデクスメチルフェニデートクロリド種結晶を添加して、前記セルデクスメチルフェニデートクロリド化合物の前記粗生成物を得ることを含む、ステップ、および
(e)ステップ(d)の前記化合物を精製して、式Iを有するセルデクスメチルフェニデートクロリド化合物を生成するステップであって、
前記セルデクスメチルフェニデートクロリド化合物の前記粗生成物を精製することが、(a)前記粗生成物をアセトンと反応させて反応混合物を生成すること、および(b)前記反応混合物にセルデクスメチルフェニデートクロリド種結晶を添加して、前記式Iを有するセルデクスメチルフェニデートクロリド化合物を得ることを含む、ステップ
を含むプロセスにより作製される、化合物。
【請求項3】
式I:
【化9】

の結晶性固体化合物であって、前記式Iの化合物は、
(a)式II:
【化10】

を有する化合物を合成するステップ、
(b)式III:
【化11】

を有する第1の中間体化合物を合成するステップ、
(c)式IV:
【化12】

を有する第2の中間体化合物を合成するステップ、
(d)セルデクスメチルフェニデートクロリド化合物の粗生成物を合成するステップ、
(e)ステップ(d)の前記化合物を精製して、前記式Iを有するセルデクスメチルフェニデートクロリド化合物を生成するステップ、および
(f)前記式Iを有するセルデクスメチルフェニデートクロリド化合物の純度レベルを決定し、不純物が検出された場合、(a)前記セルデクスメチルフェニデートクロリド化合物をイソプロピルアルコールと反応させて反応混合物を生成すること、および(b)前記反応混合物にセルデクスメチルフェニデートクロリド種結晶を添加して、前記式Iを有するセルデクスメチルフェニデートクロリド化合物を結晶性固体として得ることよって、前記式Iを有するセルデクスメチルフェニデートクロリド化合物をさらに精製するステップ
を含むプロセスにより作製される、結晶性固体化合物。
【請求項4】
式I:
【化13】

の結晶性固体化合物であって、前記式Iの化合物は、
(a)式II:
【化14】

を有する化合物を合成するステップであって、
前記式IIを有する化合物の合成が、メチル-t-ブチルエーテルおよびアセトニトリル中のトリエチルアミンの存在下で、O-tert-ブチル-L-セリンtert-ブチルエステルヒドロクロリドおよびニコチン酸を反応させて溶液を形成することを含み、前記溶液をメチル-t-ブチルエーテルおよびn-ヘプタンを用いて結晶化させて、前記式IIを有する化合物を得る、ステップ、
(b)式III:
【化15】

を有する第1の中間体化合物を合成するステップであって、
前記第1の中間体化合物の合成が、(a)デクスメチルフェニデートHClをメチル-t-ブチルエーテルおよび2,6-ルチジンと反応させて反応混合物を得ること、ならびに(b)クロロメチルクロロホルメートを前記反応混合物に添加して、前記式IIIを有する第1の中間体化合物を得ることを含む、ステップ、
(c)式IV:
【化16】

を有する第2の中間体化合物を合成するステップであって、
前記第2の中間体化合物の合成が、(a)アセトニトリル、ジオキサン中HClおよび4-メチル-2-ペンタノンの存在下で、前記式IIを有する化合物を前記第1の中間体化合物と反応させて、反応混合物を得ること、ならびに(b)前記反応混合物にセルデクスメチルフェニデートクロリド種結晶を添加して、前記式IVの第2の中間体化合物を得ることを含む、ステップ、
(d)セルデクスメチルフェニデートクロリド化合物の粗生成物を合成するステップであって、
前記セルデクスメチルフェニデートクロリド化合物の前記粗生成物の合成が、(a)前記第2の中間体結晶性固体を無水1,4-ジオキサンおよびスルホランと反応させて反応混合物を生成すること、ならびに(b)前記反応混合物にセルデクスメチルフェニデートクロリド種結晶を添加して、前記セルデクスメチルフェニデートクロリド化合物の前記粗生成物を得ることを含む、ステップ、
(e)ステップ(d)の前記化合物を精製して、前記式Iを有するセルデクスメチルフェニデートクロリド化合物を生成するステップであって、
前記セルデクスメチルフェニデートクロリド化合物の前記粗生成物を精製することが、(a)前記粗生成物をアセトンと反応させて反応混合物を生成すること、および(b)前記反応混合物にセルデクスメチルフェニデートクロリド種結晶を添加して、前記式Iを有するセルデクスメチルフェニデートクロリド化合物を得ることを含む、ステップ、および
(f)前記式Iを有するセルデクスメチルフェニデートクロリド化合物の純度レベルを決定し、不純物が検出された場合、(a)前記セルデクスメチルフェニデートクロリド化合物をイソプロピルアルコールと反応させて反応混合物を生成すること、および(b)前記反応混合物にセルデクスメチルフェニデートクロリド種結晶を添加して、前記式Iを有するセルデクスメチルフェニデートクロリド化合物を結晶性固体として得ることよって、前記式Iを有するセルデクスメチルフェニデートクロリド化合物をさらに精製するステップ
を含むプロセスにより作製される、結晶性固体化合物。
【請求項5】
セルデクスメチルフェニデートクロリドおよびデクスメチルフェニデートヒドロクロリドを含むカプセルであって、
(a)式I:
【化17】

を有するセルデクスメチルフェニデートクロリド化合物のある量、およびデクスメチルフェニデートヒドロクロリドのある量をブレンドすること、
(b)微結晶性セルロースの第1の量をブレンダに添加し、混合してプレブレンドを生成すること、
(c)微結晶性セルロースの第2の量およびクロスポビドンのある量を前記プレブレンドに添加して、粒内1次ブレンドを生成すること、
(d)前記粒内1次ブレンドを混合すること、
(e)マグネシウムステアレートの第1の量を前記粒内1次ブレンドに添加して、粒内潤滑ブレンドを生成すること、
(e)前記粒内潤滑ブレンドを混合すること、
(f)ローラコンパクタを使用して前記粒内潤滑ブレンドを造粒すること、
(g)前記粒内潤滑ブレンドを粉砕すること、
(h)コロイド状二酸化ケイ素およびタルクのある量を前記粉砕された粒内潤滑ブレンドに添加して、粒外1次ブレンドを生成すること、
(i)前記粒外1次ブレンドをマグネシウムステアレートの第2の量と混合して、粒外潤滑ブレンドを生成すること、
(j)前記粒外潤滑ブレンドを混合すること、ならびに
(k)前記粒外潤滑ブレンドをカプセルに封入すること
を含むプロセスにより生成される、カプセル。
【請求項6】
前記カプセルがサイズ3 HPMCカプセルである、請求項5に記載のカプセル。
【請求項7】
前記プレブレンドが130回転で混合される、請求項5または6に記載のカプセル。
【請求項8】
前記粒内1次ブレンドが260回転で混合される、請求項5~7のいずれか一項に記載のカプセル。
【請求項9】
前記粒内潤滑ブレンドが130回転で混合される、請求項5~8のいずれか一項に記載の方法。
【請求項10】
前記粒外1次ブレンドが260回転で混合される、請求項5~9のいずれか一項に記載のカプセル。
【請求項11】
前記粒外潤滑ブレンドが130回転で混合される、請求項5~10のいずれか一項に記載のカプセル。
【請求項12】
セルデクスメチルフェニデートクロリドおよびデクスメチルフェニデートヒドロクロリドを含むカプセルであって、
(a)式I:
【化18】

を有するセルデクスメチルフェニデートクロリド化合物のある量、およびデクスメチルフェニデートヒドロクロリドのある量をブレンドすること、
(b)微結晶性セルロースの第1の量をブレンダに添加し、約130回転で混合してプレブレンドを生成すること、
(c)微結晶性セルロースの第2の量およびクロスポビドンのある量を前記プレブレンドに添加して、粒内1次ブレンドを生成すること、
(d)前記粒内1次ブレンドを約260回転で混合すること、
(e)マグネシウムステアレートの第1の量を前記粒内1次ブレンドに添加して、粒内潤滑ブレンドを生成すること、
(e)前記粒内潤滑ブレンドを約130回転で混合すること、
(f)ローラコンパクタを使用して前記粒内潤滑ブレンドを造粒すること、
(g)前記粒内潤滑ブレンドを粉砕すること、
(h)コロイド状二酸化ケイ素およびタルクのある量を前記粉砕された粒内潤滑ブレンドに添加して、粒外1次ブレンドを生成することであって、得られた粒外1次ブレンドが約260回転で混合される、生成すること、
(i)前記粒外1次ブレンドをマグネシウムステアレートの第2の量と混合して、粒外潤滑ブレンドを生成すること、
(j)前記粒外潤滑ブレンドを約130回転で混合すること、ならびに
(k)前記粒外潤滑ブレンドをカプセルに封入すること
を含むプロセスにより生成される、カプセル。
【請求項13】
前記カプセルがサイズ3 HPMCカプセルである、請求項12に記載のカプセル。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
連邦政府支援の研究または開発
[適用なし]
【背景技術】
【0002】
背景
メチルフェニデートは、鎖置換アンフェタミン誘導体である精神刺激薬である。アンフェタミンおよびコカインと同様に、メチルフェニデートは中枢神経系、特にドパミン輸送体(DAT)およびノルエピネフリン輸送体(NET)を標的にする。メチルフェニデートは、ドパミン輸送体(DAT)およびノルエピネフリン輸送体(NET)の両方の結合能を有するので、シナプス間隙におけるドパミンおよびノルエピネフリンの濃度を増大させることによって作用すると考えられている。アンフェタミン誘導体ではあるが、アンフェタミンはドパミン輸送基質であるのに対して、メチルフェニデートはドパミン輸送遮断薬として働くため、メチルフェニデートとアンフェタミンの薬理学は異なる。メチルフェニデートはこのように、ノルエピネフリンおよびドパミン再取込み阻害薬として、ドパミンおよびノルエピネフリン(ノルアドレナリン)のシナプス前ニューロンへの再取込みを遮断し(おそらく、高用量でドパミン神経終末からのドパミン放出を刺激して)、これによりシナプスにおけるドパミンおよびノルエピネフリンのレベルを上昇させる。いくつかのインビトロ研究では、メチルフェニデートは、ドパミンと比較した場合、ノルエピネフリン取込み/再取込み阻害薬としてより強力であることが示されている。しかし、いくつかのインビボ研究は、メチルフェニデートがノルエピネフリン濃度よりも細胞外ドパミン濃度の増強においてより強力であることを示している。アンフェタミンとは異なり、メチルフェニデートは治療用量でこれらの2つのモノアミン神経伝達物質の放出を著しく促進しないようであることが科学および/または臨床研究団体において示唆されている。
【0003】
メチルフェニデートの4つの異性体:d-エリトロ-メチルフェニデート、l-エリトロ-メチルフェニデート、d-トレオ-メチルフェニデートおよびl-トレオ-メチルフェニデートが存在することが知られている。当初、メチルフェニデートは、2つのラセミ体、d/l-エリトロ-メチルフェニデートおよびd/l-トレオ-メチルフェニデートの混合物として市販されていた。その後の研究によって、混合物の所望の薬理活性の大部分がトレオ異性体に関連していることが示され、単離されたトレオ-メチルフェニデートのラセミ体が市場で販売されるようになった。後に科学界は、d-トレオ異性体が刺激活性の大部分を担っていると判断した。結果として、d-トレオ-メチルフェニデート(「d-トレオ-MPH」としても既知)のみを含有する新製品が開発された。
【0004】
メチルフェニデート(「MPH」)を含む刺激薬は、交感神経系および/または中枢神経系(CNS)の活性を増強すると考えられている。MPHならびにその多様な形態および誘導体などの刺激薬は、たとえば注意欠陥多動性障害(ADHD)、注意欠陥障害(ADD)、肥満、ナルコレプシー、食欲抑制、うつ病、不安および/または覚醒状態を主に包含する一連の症状および障害の処置に使用される。
【0005】
メチルフェニデートは現在、米国食品医薬品局(「FDA」)によって注意欠陥多動性障害およびナルコレプシーの処置について承認されている。メチルフェニデートはまた、うつ病、肥満および嗜眠を含むいくつかの適応外使用にも効力を示している。いくつかの態様では、本技術のプロドラッグは、注意欠陥多動性障害およびナルコレプシー、またはノルエピネフリンおよび/もしくはドパミン輸送体の遮断を必要とする任意の症状の処置に投与され得る。
【0006】
小児の注意欠陥多動性障害(ADHD)は長年、刺激薬によって処置されてきた。しかし、より最近では、成人人口におけるADHD治療の処方数の増加が、小児科市場の成長を時には上回ることがある。いくつかの刺激薬およびいくつかの非刺激薬を含めて、ADHDの処置に現在使用されている多様な薬物があるが、メチルフェニデート(たとえば、Novartis International AG(スイスのバーゼルに所在)から商標Ritalin(登録商標)で市販されている)が一般に処方されている。さらに、教室での試験中、非刺激薬は、アンフェタミン誘導体よりもADHD患児の行動および注意を改善する効果が低いことが示されている。
【0007】
ADHDを有する子供のかなりの部分において、典型的には午後または夕方に投薬が切れてくるにつれて、行動劣化(リバウンドまたは「クラッシュ」)が認められる。リバウンド症状としては、たとえば怒りっぽさ、不機嫌、非投薬状態よりも悪い多動性、悲しみ、泣き叫びおよびまれに精神病エピソードが挙げられる。症候は急速に鎮まり得るか、または数時間続き得る。一部の患者は、非常に重篤なリバウンド/クラッシュを経験し得るため、処置を中断する必要がある。リバウンド/クラッシュ効果は、予期されるリバウンド/クラッシュの負の転帰および副作用を予防しようとして、患者に追加用量の刺激薬を投与したくさせることによって、常習行為を引き起こすおそれもある。
【0008】
メチルフェニデートおよびアンフェタミンなどの刺激薬は、従来技術において、たとえば心拍数の増加、高血圧、動悸、頻脈、および孤立症例では心筋症、脳卒中、心筋梗塞および/または突然死を含む心血管イベントをもたらし得るノルアドレナリン作動性およびドパミン作動性の効果を示すことが示されている。その結果、現在利用可能な刺激薬は、既存の構造的心臓異常または他の重篤な心臓徴候を有する患者をさらに大きな健康リスクにさらし、この患者集団では頻繁に使用されない、または慎重に使用される。
【0009】
メチルフェニデートは、他の刺激薬およびアンフェタミン誘導体と同様に、中毒となるおそれがあり、物質乱用になりやすい。経口乱用が報告されており、鼻腔内投与および静脈内投与によって多幸を達成することができる。
【0010】
コカインなどの刺激薬への依存は、それらの強力な多幸効果のために、非常に短期間の使用後でも起こり得る。たとえば、コカイン依存の初期の徴候には、コカインが存在するまたは入手可能である場合に、コカインの使用を控えることが困難であることが含まれる。コカインを含む多くの刺激薬は、排出半減期が短く、このため「高」を維持するために頻繁な投与を必要とする。そのような刺激薬の治療的用量を超える慢性的な使用は、多くの精神的および/または身体的問題をもたらし得る。気分への影響としては、不安、焦燥感、優位感、多幸、パニック、苛立ちおよび恐怖が挙げられ得る。行動症候としては、極端に口数が多いこと、エネルギーが増加したこと、活力が増したこと、金銭を盗んだり借りたりすること、不安定または奇妙な行動、暴力、かつて楽しかった活動への不参加、無謀で危険な行動が挙げられるが、これらに限定されない。刺激薬依存の身体症状の例として、1またはそれを超える以下:睡眠の必要性の減少、頭痛、鼻出血、嗄声、心拍数の増加、筋収縮、栄養不良、体温上昇、鼻穿孔、不整脈、慢性鼻水、血管収縮、心拍数の増加、血圧上昇、性機能障害、食欲不振、瞳孔拡大、ヒト免疫不全ウイルス(HIV)に感染するリスク、C型肝炎および他の血液媒介疾患、腸壊疽、渇望、および振戦が挙げられ得る。刺激薬依存の心理的症候の例としては、1またはそれを超える以下:重篤なパラノイア、激しい気分変動、現実逃避、無気力、精神病、幻覚、健全な判断力の欠如、および薬物使用の正当化が挙げられ得る。刺激薬使用障害または刺激薬依存症を誘発するまたはその役割を果たすおそれがある様々な因子が存在する。一般に、これらの要因は、遺伝的、生物学的、および環境的の3つのカテゴリに分類することができる。研究により、嗜癖の問題を有する近親者を有する個体は、コカイン依存症を含む嗜癖を発症する可能性がより高いことが示されている。近親者が親である場合、刺激薬依存性になる可能性がより高い。脳機能の変化は、嗜癖の問題と相関する生物学的要因であり得る。たとえば、脳内のドパミンレベルが低いと、個人は、快感を達成する目的で物質を乱用することになり得る。環境要因としては、これに限定されないが、個人の家庭生活における予測不可能な状況;子供の虐待、愛する人の喪失または他のトラウマ的事象などのストレス要因が挙げられる。当分野では、ピーク濃度が達成されるまでメチルフェニデートの血中/脳内濃度をゆっくりと徐々に増加させる、またはピーク濃度後のメチルフェニデートの血中/脳内濃度をゆっくりと徐々に低下させる、またはその両方を有する、メチルフェニデートの形態が必要とされている。いかなる特定の理論にも拘束されることを望まないが、刺激薬濃度のゆっくりとした開始により心血管副作用を減少させることができ、ゆっくりとした除去によりリバウンド効果を低下させることができる。単位時間当たりのシナプスドパミンのより大きな増加(すなわち、より高い速度のドパミン増加)は、より強固で強い陶酔効果をもたらすことも示唆されている。メチルフェニデートの脳濃度のゆっくりとした増加は、シナプスのドパミンの低い増加速度を生成し、したがってより少ない報酬および補強効果が生じさせ得る。いかなる特定の理論にも束縛されることを望まないが、ドパミン輸送体受容体の高い占有率により、コカインのような刺激薬の追加用量の報酬および補強効果を減少され得ることも示唆されている。これは、たとえば、多幸をもたらさないゆっくりとした開始のメチルフェニデートの形態の大用量の反復投与によって達成され得る。
【0011】
当分野では、メチルフェニデートの血中/脳内濃度のより迅速な開始を提供することができるメチルフェニデートの形態も必要とされている。いかなる理論にも拘束されることを望まないが、ある適応症は、対象に十分な有効性を提供するためにメチルフェニデートの血中および/または脳内濃度の大きく迅速な初期スパイクを必要とし得るのに対して、他の適応症は、メチルフェニデートのより低い血中/脳内濃度を必要とし得るが、迅速な開始を伴うメチルフェニデートの形態の少量の治療量は、必要な場合に迅速な有効性を提供するために依然として有益であり得る。
【0012】
当分野では、投与計画に柔軟性を提供することができるメチルフェニデートの形態がさらに必要とされている。たとえば、即時放出および持続放出PKプロフィールの両方を提供することができる組成物中のメチルフェニデートの1日1回投与形態が非常に望ましいであろう。
【0013】
特に経口経路を介して投与された場合に薬理学的利益を維持することができるが、注射または鼻腔内投与経路を介して投与された場合に好ましくは薬理活性を全く有しないまたは実質的に低下した薬理活性を有するメチルフェニデートの形態が、当分野においてさらに必要とされている。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0014】
簡単な概要
本技術は、特定のd-トレオ-メチルフェニデート(「d-MPH」、「d-メチルフェニデート」、「デクスメチルフェニデート」)結合体またはその医薬的に許容され得る塩を提供し、たとえば、非結合d-メチルフェニデートと比較した場合に即時および持続放出PKプロフィールの両方を提供することができる、非結合メチルフェニデートを含む組成物中のd-メチルフェニデート結合体の少なくとも1つの1日1回投与形態を提供する。放出プロフィールはいくつかの例において、非結合d-メチルフェニデートと共に容易に利用されない投与計画を使用して投与されるプロドラッグまたは組成物の能力を提供する。いくつかの態様では、組成物中の非結合メチルフェニデートは、d-メチルフェニデート、l-メチルフェニデートもしくはそれらの混合物、および/またはその治療的もしくは医薬的に許容され得る塩であることができる。
【0015】
別の態様では、本技術は、式I:
【化1】
の構造を有するd-メチルフェニデートの少なくとも1つの結合体および非結合メチルフェニデートを含むプロドラッグ組成物を提供し、非結合メチルフェニデートはd-メチルフェニデートを含む。
【0016】
別の態様では、本技術は、少なくとも1つの結合体を含む少なくとも1つのプロドラッグ組成物を提供し、少なくとも1つの結合体は、d-メチルフェニデート-COCH-ニコチノイル-L-Ser(式I)またはその医薬的に許容され得る塩、および非結合メチルフェニデートである。
【0017】
さらなる態様では、本技術は、非結合メチルフェニデートおよび少なくとも1つの結合体を含む組成物を提供し、少なくとも1つの結合体は少なくとも2つまたはそれを超えるキラル中心を有し、組成物は光学活性である。
【0018】
さらに別の態様では、本技術は、d-メチルフェニデートを-COCH-ニコチノイル-L-Serリガンドに結合するための適切なステップを実施することによって、本技術のd-メチルフェニデート-COCH-ニコチノイル-L-Ser結合体を化学的に合成するための方法を提供する。
【0019】
さらなる態様では、(a)式Iの結合体および/またはその医薬的に許容され得る塩、ならびに(b)非結合メチルフェニデート(d-メチルフェニデートを含む)および/またはその医薬的に許容され得る塩を含む本技術の組成物のいくつかの態様は、予想外にも、未改質d-メチルフェニデートの等モル用量と比較して、Tmax後(またはそれ以降)にd-メチルフェニデートの血漿濃度の増加を示し、制御または持続放出プロフィールを生じる。
【0020】
別の態様では、(a)式Iの結合体および/またはその医薬的に許容され得る塩、ならびに(b)非結合メチルフェニデート(d-メチルフェニデートを含む)および/またはその医薬的に許容され得る塩を含む本技術の組成物のいくつかの態様は、Concerta(登録商標)から放出される非結合d-メチルフェニデートの経口投与等モル用量と比較して、経口投与後約0~約4時間でd-メチルフェニデートの血漿濃度の増加を示す。
【0021】
さらなる態様では、(a)式Iの結合体および/またはその医薬的に許容され得る塩、ならびに(b)非結合メチルフェニデート(d-メチルフェニデートを含む)および/またはその医薬的に許容され得る塩を含む本技術の組成物のいくつかの態様は、Concerta(登録商標)から放出される非結合d-メチルフェニデートの経口投与等モル用量と比較して、経口投与後約4時間までd-メチルフェニデートの血漿濃度の増加を示す。
【0022】
なおさらなる態様では、(a)式Iの結合体および/またはその医薬的に許容され得る塩、ならびに(b)非結合メチルフェニデートおよび/またはその医薬的に許容され得る塩を含む本技術の組成物のいくつかの態様は、驚くべきことに、非結合d-メチルフェニデートと比較して、経口薬物動態(PK)プロフィールにおける患者間変動が少ないことを示す。
【0023】
さらに別の態様では、本技術の組成物のいくつかの態様は、等モル用量で経口投与した場合、非結合d-メチルフェニデートと比較して、AUCの増加を提供するのに十分な量で提供される。
【0024】
なおさらなる態様では、本技術の組成物のいくつかの態様は、等モル用量で経口投与した場合、非結合d-メチルフェニデートと比較して、放出されたd-メチルフェニデートのTmax(またはそれ以降)後の期間にわたって、驚くほど低いCmaxおよびより低いAUCを提供するが、著しく増加した部分AUCを提供するのに十分な量で提供される。
【0025】
またさらなる態様では、本技術の組成物のいくつかの態様は、等モル用量で経口投与した場合、非結合d-メチルフェニデートと比較して、より低いCmaxおよび同様のAUCを提供するが、放出されたd-メチルフェニデートのTmax後(またはそれ以降)の期間の著しく増加した部分AUCを提供するのに十分な量で提供される。
【0026】
また代替的な態様では、本技術の組成物のいくつかの態様は、等モル用量で投与した場合、非結合d-メチルフェニデートと比較して副作用の低減がもたらされると考えられ、いくつかの別の態様では、非結合d-メチルフェニデートと比較して、乱用可能性の低減がもたらされることも考慮される。
【0027】
さらに、本技術の組成物のいくつかの態様はまた、予想外にも、等モル用量で投与した場合に非結合d-メチルフェニデートと比較して、持続されたTmaxを提供する、および/または等モル用量で経口投与した場合に非結合d-メチルフェニデートと比較して、同等のTmaxを提供するのに十分な量を提供すると考えられる。
【0028】
さらに、本技術の組成物のいくつかの態様はまた、Concerta(登録商標)から放出された経口投与等モル用量の非結合d-メチルフェニデートと比較した場合、より短いTmaxを提供するのに十分な量を予想外に提供すると考えられる。
【0029】
加えて、本技術の組成物のいくつかの態様はまた、Concerta(登録商標)から放出された経口投与等モル用量の非結合d-メチルフェニデートと比較して、より長い半減期(T1/2)を提供するのに十分な量を予想外に提供するとも考えられる。
【0030】
加えて、本技術の組成物のいくつかの態様は、等モル用量で経口投与した場合、非結合d-メチルフェニデートと比較して、より長いT1/2を提供するのに十分な量を予想外に提供するとも考えられる。
【0031】
さらに、本技術は、神経伝達物質の取込み/再取込みまたはホルモンの取込み/再取込みを制御、予防、制限または阻害することによって媒介される少なくとも1つの疾患、障害または症状を有する1またはそれを超える対象(ヒトもしくは動物)または患者(ヒトもしくは動物)を処置する少なくとも1つの方法であって、非結合メチルフェニデートおよび/またはその医薬的に許容され得る塩ならびに式Iの結合体および/またはその医薬的に許容され得る塩を含む、医薬および/または治療有効量の本技術の組成物を1またはそれを超える対象または患者に経口投与することを含む、方法を提供する。
【0032】
なおさらなる態様では、本技術は、対象の中枢神経系の刺激を必要とする少なくとも1つの障害または症状を有する対象(ヒトまたは動物)を処置する少なくとも1つの方法であって、非結合メチルフェニデートおよび/またはその医薬的に許容され得る塩ならびに式Iの結合体および/またはその医薬的に許容され得る塩を含む、医薬的有効量の本技術の組成物を経口投与することを含み、投与が対象の中枢神経系の刺激を必要とする少なくとも1つの障害または症状を処置する、方法を提供する。
【0033】
なおまたさらなる態様では、本技術は、対象の中枢神経系の刺激を必要とする少なくとも1つの障害または症状を有する対象(ヒトまたは動物)を処置する少なくとも1つの方法であって、非結合メチルフェニデートおよび/またはその医薬的に許容され得る塩ならびに式Iの結合体および/またはその医薬的に許容され得る塩を含む、治療有効量の本技術の組成物を経口投与することを含み、投与が対象の中枢神経系の刺激を必要とする少なくとも1つの障害または症状を処置する、方法を提供する。
【0034】
また別の態様では、本技術は、d-メチルフェニデートおよび非結合メチルフェニデートの少なくとも1つの結合体を含む組成物を対象に投与する1またはそれを超える方法であって、投与が非結合d-メチルフェニデートと比較して、産生される代謝産物の数および/または量を減少させる、方法を提供する。他の態様では、本技術の組成物を投与する1またはそれを超える方法は、非結合d-メチルフェニデートと比較して、リタリン酸への対象の曝露を減少させると考えられる。代謝産物の潜在的な二次薬理学的効果の結果としてなお起こり得る潜在的な副作用または毒性のために、意図された治療効果に著しく寄与しないリタリン酸などの代謝産物への曝露を最小限に抑えることが望ましい。いくつかの態様では、本技術の組成物は、リタリン酸への全体的な曝露を約25%~約75%低減し得る。
【0035】
またさらなる態様では、本技術の組成物は、非結合d-メチルフェニデートと比較して、d-メチルフェニデート系結合体またはプロドラッグの水溶性の増加を提供すると考えられる。別の態様では、水溶性の増加によって、組成物を非結合d-メチルフェニデートより高い濃度、投与強度またはより高い用量負荷容量で特定の剤形に形成することができると考えられる。いくつかの態様では、そのような剤形としては、たとえば経口薄型フィルムまたはストリップが挙げられる。
【0036】
なおまたさらなる態様では、d-メチルフェニデート結合体および非結合メチルフェニデートを含むd-メチルフェニデート系組成物の患者(ヒトまたは動物)への投与は、非結合d-メチルフェニデートと比較して、d-メチルフェニデート血漿濃度の患者間変動性の低減がもたらされると考えられ、安全性プロフィールの改善を有すると考えられる。
【0037】
また別の代替態様では、本技術は、注意欠陥多動性障害を処置する少なくとも1つの方法であって、少なくとも1つのd-メチルフェニデート結合体および非結合メチルフェニデートを含む、医薬および/または治療有効量の組成物を対象または患者に投与することを含み、投与が対象の注意欠陥多動性障害を処置する、方法を提供する。
【0038】
また別の代替態様では、本技術は、対象または患者における摂食障害、過食症、肥満、ナルコレプシー、慢性疲労、睡眠障害、日中の過剰な眠気(EDS)、コカイン依存または刺激薬依存を処置する少なくとも1つの方法であって、少なくとも1つのd-メチルフェニデート結合体および非結合メチルフェニデートを含む、医薬および/または治療有効量の組成物を対象または患者に投与することを含み、投与が対象または患者の摂食障害、過食症、肥満、ナルコレプシー、慢性疲労、睡眠障害、日中の過剰な眠気(EDS)、コカイン依存または刺激薬依存を処置する、方法を提供する。
【0039】
別のさらなる態様では、本技術は、対象の中枢神経系の刺激を必要とする障害または症状を有する少なくとも1つの対象または患者を処置するための組成物であって、組成物が非結合メチルフェニデートおよびd-メチルフェニデート結合体を含み、非結合d-メチルフェニデートと比較して、投与時の乱用可能性の低減を有する、組成物を提供する。
【0040】
さらなる態様では、本技術の組成物は、等モル量で投与された場合、遊離非結合d-メチルフェニデートと比較して、非経口経路による投与時に薬理活性の低減もしくは予防を示す、または鼻腔内、静脈内、筋肉内、皮下もしくは経直腸投与時に、放出されたd-メチルフェニデートの血漿もしくは血中濃度の低減を示すことが考慮される。
【0041】
いくつかの態様では、本技術の組成物は、等モル用量で経口投与した場合に非結合d-メチルフェニデートと比較した場合、放出されたd-メチルフェニデートの血漿濃度によって測定される持続放出または制御放出プロフィールを有する。いくつかの態様では、組成物の結合体から放出されたd-メチルフェニデートの血漿濃度は、経口投与後、よりゆっくりとより長期間にわたって増加し、非結合d-メチルフェニデートと比較した場合、放出されたd-メチルフェニデートのピーク血漿濃度の遅延およびより長い作用継続時間をもたらす。さらなる態様では、組成物のd-メチルフェニデートの制御放出プロフィールは、非結合d-メチルフェニデートにほぼ等しいTmaxを有するが、非結合d-メチルフェニデートと比較してより長期間持続されるd-メチルフェニデートの血漿濃度を提供する。
【0042】
他の態様では、組成物は、1日1回経口投与された非結合d-メチルフェニデートと比較して、1日1回経口投与された場合、より低いAUCおよびより低いCmaxを有するが、1日の後半に同等のTmaxおよびより高いd-メチルフェニデート血漿濃度を有する。
【0043】
別の態様では、本技術は、特定量の個別用量をパッケージ中に含む医薬キットであって、各用量が、d-メチルフェニデートおよび非結合メチルフェニデートの少なくとも1つの結合体を含む、医薬および/または治療有効量の組成物を含む、医薬キットを提供する。医薬キットは、使用説明書も含む。
【0044】
別のさらなる態様では、本技術は経口製剤を提供する。経口製剤は、治療用量の(a)d-トレオ-メチルフェニデート(S)-セリン結合体および/またはその医薬的に許容され得る塩、ならびに(b)非結合メチルフェニデートおよび/またはその医薬的に許容され得る塩を含み得る。
【0045】
ある態様では、非結合メチルフェニデートおよびd-メチルフェニデートの少なくとも1つの結合体を含む本技術の組成物は、ADHDを有する新生児、小児、青年、成人および/または老人の対象に使用することができる。たとえば、いくつかの態様では、本組成物は、ADHDを有する新生児、小児および/または青年の対象に有益であり得る属性である、潜在的に改善された発症および長い作用期間を伴う、1日1回の投薬に使用することができる。
【0046】
本開示の態様は、添付の図面を参照して、単なる例としてここで説明される。
【図面の簡単な説明】
【0047】
図1図1は、いくつかの態様による、(S)-tert-ブチル3-(tert-ブトキシ)-2-(ニコチンアミド)-プロパノエート合成100のフロー図を示す。一態様によれば、ニコチン酸を、MTBEおよびアセトニトリル中のトリエチルアミンの存在下で、L-Ser(‘Bu)O’Bu HCl(O-tert-ブチル-L-セリンtert-ブチルエステルヒドロクロリド)と反応させる。
【0048】
図2図2は、一態様による、第1のセルデクスメチルフェニデートクロリド中間体(第1のSDX中間体)合成のフロー図を示す。
【0049】
図3図3は、一態様による、第2のセルデクスメチルフェニデートクロリド中間体(第2のSDX中間体)合成のフロー図を示す。
【0050】
図4図4は、一態様による、粗セルデクスメチルフェニデートクロリド合成のフロー図を示す。
【0051】
図5図5は、一態様による、SDX原薬の精製および単離のための第1の再結晶化のフロー図を示す。
【0052】
図6図6は、一態様による、SDX原薬の精製および単離のための第2の再結晶化のフロー図を示す。
【0053】
図7図7は、一態様による結晶化されたSDX固体の再スラリーを示す。
【0054】
図8図8は、一態様によるSDX/d-MPHカプセルの製造方法を示す。
【発明を実施するための形態】
【0055】
発明の詳細な説明
様々な態様が図面を参照して詳細に説明され、同様の参照番号は、複数の図を通して同様の部品およびアセンブリを表す。本開示は、本明細書に記載の特定の方法論、プロトコルおよび試薬に限定されず、したがって変化し得ることを理解されたい。本明細書で使用される用語は、特定の実施形態を説明することのみを目的とし、本開示または添付の特許請求の範囲を限定するものではないことも理解されたい。
【0056】
本明細書および添付の特許請求の範囲において使用される場合、単数形「a」、「an」および「the」は、文脈が別途明らかに指摘しない限り、複数の指示対象を含む。
【0057】
別途定義しない限り、本明細書で使用されるすべての技術用語および科学用語は、本開示が属する技術分野の当業者に一般に理解されるのと同じ意味を有する。
【0058】
本技術は、セルデクスメチルフェニデートクロリド(SDX)を含む1またはそれを超える組成物を提供する。組成物は、本明細書にさらに記載される有益な特性を有する。
【0059】
本明細書における「メチルフェニデート」という用語の使用は、d-エリトロ-メチルフェニデート、l-エリトロ-メチルフェニデート、d-トレオ-メチルフェニデートおよびl-トレオ-メチルフェニデートの4つの立体異性体ならびにその塩および誘導体を含む、メチルフェニデートの立体異性体形態のいずれかを含むことを意味する。メチルフェニデートはメチルフェニル(ピペリジン-2-イル)アセテートと交換可能である。「メチルフェニデート」という用語は、すべての塩形態を含む。メチルフェニデートは、その商品名Concerta(登録商標)(ベルギー、BeerseのJanssen Pharmaceuticals,Inc.から市販されている)、Ritalin(登録商標)、Ritalin(登録商標)SR、Methylin(登録商標)、Methylin(登録商標)ER(すべてスイス、BasilのNovartis International AGから市販されている)によっても知られている。本技術で使用されるメチルフェニデートは、d-エリトロ-メチルフェニデート、l-エリトロ-メチルフェニデート、d-トレオ-メチルフェニデートおよびl-トレオ-メチルフェニデートを含むが、これらに限定されない、メチルフェニデートの任意の立体異性体であることができる。好ましい態様では、結合体は単一のd-トレオ-メチルフェニデート異性体を含む。別の態様では、プロドラッグ結合体はその光学活性単一異性体である。
【0060】
「非結合メチルフェニデート」という用語の使用は、メチル2-フェニル-2-(ピペリジン-2-イル)アセテートおよびその塩を意味する。
【0061】
以下で使用される立体異性体は、それらが同じ配列で連結された同じ原子でできているが、原子が空間的に異なる位置にある場合、2つの分子が互いの立体異性体として記載されることを意味する。2つの立体異性体間の違いは、分子の三次元配置を考慮したときにのみ見ることができる。
【0062】
以下で使用されるバイオアベイラビリティは、体内に導入されたときに経時的に循環に入る薬物または他の物質の割合を意味し、したがって活性効果を有することができる。
【0063】
以下で使用されるCmaxは、薬物動態学において使用される用語であり、薬物が投与された後および第2用量の投与の前に、薬物が身体の特定の区画または試験領域において達成する最大(またはピーク)血漿濃度を指す。
【0064】
以下で使用されるTmaxは、Cmaxが認められる時点を説明するために薬物動態学で使用される用語である。静脈内投与後、濃度は投与後に常に減少しているため、CmaxおよびTmaxは実験プロトコルに密接に依存している。
【0065】
当業者に既知であるように、「定常状態」という用語は、薬物の全摂取量がその排除とほぼ動的平衡にある状態を意味する。定常状態では、総薬物暴露量は連続投薬期間の間で著しく変化しない。定常状態は、典型的には、通常の投薬が開始された後の薬物の半減期の約4~5倍の期間の後に達成される。
【0066】
「用量」という用語の使用は、個々の対象によって毎回摂取される薬物または有効成分の総量を意味する。
【0067】
本明細書中で使用される場合、「対象」という用語は、ヒトまたは動物の患者を含むが、これらに限定されない、ヒトまたは動物を意味する。
【0068】
「患者」という用語は、処置を必要とするヒトまたは動物の対象を意味する。
【0069】
「患者間変動性」という用語の使用は、同じ薬物の同じ用量を投与されている異なる個体間の薬物動態変動のレベルの推定値を意味する。推定は、たとえばCmax、AUClast、AUCinfおよびTmaxを含む特定の薬物動態学パラメータの変動係数(CV)を計算することによって行うことができる。異なる薬物間または異なる製剤中の同じ薬物間の患者間変動を比較する場合、より低いCVは患者間変動の減少を示し、より高いCVは患者間変動の増加を示す。
【0070】
「変動係数」(CV)は、統計学で使用される用語であり、以下の式に基づいて計算される:CV=標準偏差/平均*100。
【0071】
AUClastは、時間=0(または投与前)から最後の測定可能な薬物濃度の時間までの時間に対する、血液、血清または血漿中の薬物濃度のプロットにおける曲線下面積を表すために、薬物動態学において使用される用語である。
【0072】
AUCinfは、時間=0(または投与前)から無限までの時間に対する、血液、血清または血漿中の薬物濃度のプロットにおける曲線下面積を表すために、薬物動態学において使用される用語である。
【0073】
以下で使用されるモル当量とは、ある質量(重量)または体積におけるモル数と同数の物質のモル数を意味し、たとえば、1日当たり約0.1mgのd-メチルフェニデートヒドロクロリドの用量とモル当量である用量のd-メチルフェニデートは、0.1mgのd-メチルフェニデートヒドロクロリドと同じモル数のd-メチルフェニデートを提供するであろう。
【0074】
本明細書で使用される場合、「減少した」、「低減された」、「減弱した」または「低下した」などの句は、薬理活性、曲線下面積(AUC)および/またはピーク血漿濃度(Cmax)における少なくとも約10%の変化を含むことを意味し、非結合メチルフェニデートと比較して、本技術の結合体の乱用可能性および過剰摂取可能性の低減には、より大きなパーセンテージ変化が好ましい。たとえば変化は、約10%、約15%、約20%、約25%、約35%、約45%、約55%、約65%、約75%、約85%、約95%、約96%、約97%、約98%、約99%またはその間の増分より大きくてもよい。
【0075】
本明細書で使用される「医薬有効量」は、薬理学的効果を有する量を意味する。本明細書で使用される「医薬的に許容され得る塩」は、d-メチルフェニデート結合体もしくは非結合メチルフェニデートまたはその両方の塩であり、それらは医薬有効量で使用される場合、少なくとも1つの薬理学的効果を有する。
【0076】
本明細書で使用される「治療有効量」は、疾患または症状を処置するのに有効な量を意味する。本明細書で使用される「治療的に許容され得る塩」は、本技術の組成物中のd-メチルフェニデート結合体もしくは非結合メチルフェニデートまたは両方の医薬的に許容され得る塩であり、治療有効量で使用される場合、疾患、症状または症候群を処置するのに有効である。
【0077】
本明細書中で使用される場合、「注意欠陥多動性障害」(ADHD)という用語は、たとえば多動もしくは衝動の弱い症状を示さない、またはわずかに示すだけの対象、またはたとえば主に不注意(以前の注意欠陥障害(ADD))である対象を含む様々なサブタイプのADHDを包含する。
【0078】
本明細書中で使用される場合、「プロドラッグ」という用語は、不活性である、または薬理活性が低減されているが、体内での化学的または生物学的反応によって活性薬物に変換される物質を指す。本技術において、プロドラッグは、少なくとも1つの薬物、d-メチルフェニデート、リンカーおよびニコチノイル-L-セリン部分の結合体である。したがって、本技術の結合体はプロドラッグであり、本技術のプロドラッグは結合体である。
【0079】
プロドラッグは、いくつかの態様では、親薬物よりも投与または加工が容易であり得るため、有用なことが多い。たとえばプロドラッグは経口投与によってよりバイオアベイラビリティがあり得るが、親薬物はそうではない。プロドラッグはまた、水および/または他の溶媒中で親薬物よりも向上した溶解性も有し得る。プロドラッグの一態様は、活性部分に代謝されるd-メチルフェニデート結合体であろう。ある態様では、プロドラッグはインビボ投与時に化学変換されて、化合物の生物学的、医薬的または治療的により活性な形態となる。ある態様では、プロドラッグは、1またはそれを超えるステップまたはプロセスによって酵素代謝されて、化合物の生物学的、医薬的または治療的に活性の形態となる。プロドラッグを生成するには、医薬的に活性な化合物を、インビボ投与時に活性化合物が再生するように改質する。プロドラッグは、ある態様では、薬物の代謝または輸送特性を変更し、変動は典型的には投与の経路によって変化して、他の別個の態様では、副作用または毒性を遮蔽し、バイオアベイラビリティおよび/もしくは水溶性を向上させ、薬物の風味を向上させ、または薬物の他の特徴もしくは特性を変更するために設計される。
【0080】
d-メチルフェニデートプロドラッグは、化学誘導体または塩を含む様々な異なる化学形態を有するように調製することができる。そのようなd-メチルフェニデートプロドラッグは、異なる物理的形態を有するように調製することもできる。たとえば、d-メチルフェニデートプロドラッグは、非晶質であり得て、異なる結晶多形体を有し得て、または半水和物、一水和物、水和物(nHO、nが0.5、1、2の場合)などの異なる溶媒和状態または水和状態で存在し得る。そのような多形体は、たとえば遊離塩基および塩形態を単離するために結晶化条件を使用することによって、ならびに/またはそのような形態をボールミル粉砕することによって生成することができる。
【0081】
d-メチルフェニデートプロドラッグの形態を変えることによって、その物性を変えることができる。たとえば、結晶多形体は、典型的には互いに異なる溶解度を有し、そのためより熱力学的に安定な多形体は、より熱力学的に安定していない多形体よりも溶解度が低い。医薬多形体は、貯蔵寿命、バイオアベイラビリティ、形態、蒸気圧、密度、色および圧縮率などの特性も異なる可能性がある。したがって、d-メチルフェニデートプロドラッグの結晶状態の変化は、その物性を調節する多くの方法の1つである。
【0082】
共結晶は、2またはそれを超える非同一分子を含有する多成分結晶であって、すべての成分がその純粋な形態である場合に周囲条件(即ち、22℃、1気圧)下で固体である、多成分結晶である。成分は、標的分子(すなわちd-メチルフェニデートプロドラッグ)および単結晶内の分子レベルで共結晶中に共存する分子共結晶形成剤を含む。
【0083】
周囲条件下で固体である2またはそれを超える分子を含む共結晶(共結晶形成剤)Jmarssonら、2004)は、古くから知られている種類の化合物(Wohler,1844参照)を表す。しかし、共結晶は比較的調べられていない。Cambridge Structural Database(CSD)(Allenら、1993)調査により、共結晶は公表されている結晶構造の0.5%未満に相当することが明らかになった。それにもかかわらず、医薬(たとえば栄養補助食品)製剤(Vishweshwarら、2006年;Liら、2006;Remenarら、2003;およびChildsら、2004)ならびにグリーンケミストリー(Anastasら、1998)に対するそれらの潜在的な影響は、話題であり、関心が高まっている。特に、すべての共結晶成分が周囲条件下で固体であるという事実が、重要な実用上の考慮事項を有するのは、共結晶の合成が固体技術(メカノケミストリー)(Shanら、2002)を介して達成され得て、化学者は、共結晶形成の選択中に分子認識、とりわけ水素結合を引き起こすことができるので、共結晶の組成に対してある程度の制御を実行することができるからである。これらの特徴により、共結晶は、多成分化合物の別の広く周知の群である溶媒和物から区別される。溶媒和物は、共結晶よりもはるかに広く特徴付けられる(たとえばCSDでは、1652個の共結晶が、10,575個の溶媒和物に対して報告されている;バージョン5.27(2006年5月)3D座標、RO.075、イオンなし、有機物のみ)。
【0084】
改善された特性を有するd-メチルフェニデートプロドラッグの新しい形態を有することは有利であろう。具体的には、水性および/または溶媒溶解性ならびに安定性の増加を含む、著しく改善された特性を示す、d-メチルフェニデートプロドラッグの改善された形態を同定することが望ましい。さらに、加工性または医薬製剤の調製を改善することが望ましい。たとえば、d-メチルフェニデートプロドラッグの針状結晶形態または晶癖は、d-メチルフェニデートプロドラッグが他の物質と混合される組成物においてさえも凝集を引き起こす可能性があり、そのため不均一な混合物が得られる。d-メチルフェニデートプロドラッグ含有医薬組成物の水または他の溶媒中での溶解速度を上昇または低下させ、経口投与される組成物のバイオアベイラビリティを上昇または低下させ、治療効果のより迅速なまたはより遅延した発現を提供することも望ましい。現在知られている形態のd-メチルフェニデートプロドラッグの同等量と比較した場合、対象への投与時に、より速くまたはより遅くピーク血漿レベルに達し、より長く持続する治療血漿濃度、およびより高いまたはより低い全曝露を有する、d-メチルフェニデートプロドラッグの形態を有することも望ましい。上記の改善された特性は、特定の治療効果のために特定のd-メチルフェニデートプロドラッグに最も有益な方法で変更することができる。
【0085】
本技術のd-メチルフェニデートプロドラッグまたは結合体および非結合メチルフェニデートは、正に帯電した(カチオン性)分子、または医薬的に許容され得るアニオン性もしくはカチオン性塩形態、または正成分と負成分との間の任意の比率を有する塩混合物のいずれかであることができる。これらのアニオン性塩形態としては、たとえばアセテート、l-アスパルテート、ベシレート、バイカーボネート、カーボネート、d-カムシレート、l-カムシレート、シトレート、エジシレート、ホルメート、フマレート、グルコネート、ヒドロブロミド/ブロミド、ヒドロクロリド/クロリド、d-ラクテート、l-ラクテート、d,l-ラクテート、d,l-マレート、l-マレート、メシレート、パモエート、ホスフェート、スクシネート、サルフェート、バイサルフェート、d-タートレート、l-タートレート、d,l-タートレート、メソ-タートレート、ベンゾエート、グルセプテート、d-グルクロネート、ヒベンゼート、イセチオネート、マロネート、メチルサルフェート、2-ナプシレート、ニコチネート、ニトレート、オロテート、ステアレート、トシレート、チオシアネート、アセフィリネート、アセチュレート、アミノサリチレート、アスコルベート、ボレート、ブチレート、カンホレート、カンホカーボネート、デカノエート、ヘキサノエート、コレート、シピオネート、ジクロロアセテート、エデンテート、エチルサルフェート、フレート、フシデート、ガラクタレート、ガラクツロネート、ガレート、ゲンチセート、グルタメート、グルタレート、グリセロホスフェート、ヘプタノエート、ヒドロキシベンゾエート、ヒプレート、フェニルプロピオネート、ヨージド、キシナホエート、ラクトビオネート、ラウレート、マレエート、マンデレート、メタンスルホネート、ミリステート、ナパジシレート、オレエート、オキサレート、パルミテート、ピクレート、ピバレート、プロピオネート、ピロホスフェート、サリチレート、サリチルサルフェート、スルホサリチレート、タンネート、テレフタレート、チオサリチレート、トリブロフェネート、バレレート、バルプロエート、アジペート、4-アセトアミドベンゾエート、カンシレート、オクタノエート、エストレート、エシレート、グリコレート、チオシアネートまたはウンデシレネートを挙げることができるが、これらに限定されない。好ましい態様では、アニオン性塩形態は、クロリド、水素カーボネート(バイカーボネート)、ヨージド、ブロミド、シトレート、アセテート、ホルメート、サリチレート、水素サルフェート(バイサルフェート)、ヒドロキシド、ニトレート、水素サルファイト(バイサルファイト)、プロピオネート、ベンゼンスルホネート、ヒポホスファイト、ホスフェート、ブロメート、ヨーデート、クロレート、フルオリド、ニトライトからなる群から選択される。
【0086】
いくつかの態様では、結合体の塩形態は、クロリド、水素カーボネート(バイカーボネート)、ヨージド、ブロミド、シトレート、アセテート、ホルメート、サリチレート、水素サルフェート(バイサルフェート)、ヒドロキシド、ニトレート、水素サルファイト(バイサルファイト)、プロピオネート、ベンゼンスルホネート、ヒポホスファイト、ホスフェート、ブロメート、ヨーデート、クロレート、フルオリドおよびニトライトからなる群から選択される。いくつかの態様では、非結合メチルフェニデートの塩形態は、ヒドロクロリド、ヒドロブロミド、ヒドロヨージド、ホルメート、メシレート、タートレート、サリチレート、サルフェート、シトレート、ニトレート、水素サルファイト、プロピオネート、ベンゼンスルホネートおよびアセテートからなる群から選択される。
【0087】
カチオン性塩形態としては、たとえばナトリウム、カリウム、カルシウム、マグネシウム、リチウム、コリネート、リジニウムまたはアンモニウムを挙げることができるが、これらに限定されない。
【0088】
以下の理論に限定されることを望むものではないが、本技術のプロドラッグ/結合体は、インビボで律速酵素加水分解を受け、その後、d-メチルフェニデートならびにそれぞれのリガンド、その代謝産物および/またはその誘導体の迅速な形成をもたらすカスケード反応につながると考えられる。本技術のプロドラッグ結合体は、所与の用量レベルで非毒性であるまたは非常に低い毒性を有し、好ましくは既知の薬物、天然産物、代謝産物またはGRAS(Generally Recognized As Safe(一般に安全と認められている))化合物(たとえば防腐剤、染料、香味料など)または非毒性ミメティックもしくはその誘導体である。
セルデクスメチルフェニデートクロリドを作製するための合成スキーム
【0089】
本技術の組成物の成分の略語には、以下が含まれる:SDXは、セルデクスメチルフェニデートクロリドを表す;MPHは、メチルフェニデートを表す;d-MPHは、メチルフェニデートヒドロクロリドを表す;CMCFは、クロロメチルクロロホルメートを表す;MTBEは、メチル-t-ブチルエーテルを表す;MIBKは、4-メチル-2-ペンタノンを表す;Buは、tert-ブチルを表す;Phは、フェニルを表す;TPは、プロピルホスホン酸無水物を表す;ACNはアセトニトリルを表す。
【0090】
いくつかの態様では、セルデクスメチルフェニデート結合体は、式I:
【化2】
によって表されるイオン塩セルデクスメチルフェニデートクロリドである。
【0091】
本技術の組成物の好ましい態様では、d-メチルフェニデート活性は、2つの供給源、セルデクスメチルフェニデートクロリドならびに非結合メチルフェニデートおよび/またはその医薬的に許容され得る塩に由来する。
【0092】
いくつかの態様では、セルデクスメチルフェニデートクロリドは、以下に示す、デクスメチルフェニデートヒドロクロリド(d-MPH)、クロロメチルクロロホルメート(CMCF)および(S)-tert-ブチル3-(tert-ブトキシ)-2-(ニコチンアミド)-プロパノエートから出発して、4段階で合成される。
【化3】
(S)-tert-ブチル3-(tert-ブトキシ)-2-(ニコチンアミド)-プロパノエートの調製
【0093】
いくつかの態様では、(S)-tert-ブチル3-(tert-ブトキシ)-2-(ニコチンアミド)-プロパノエートをスキーム1に従って調製する。
【0094】
スキーム1:
【化4】
【0095】
(S)-tert-ブチル3-(tert-ブトキシ)-2-(ニコチンアミド)-プロパノエートは、MTBEおよびアセトニトリル中のトリエチルアミン(EtN)の存在下で、O-tert-ブチル-L-セリンtert-ブチルエステルヒドロクロリドおよびニコチン酸を反応させることによって合成した。反応混合物にアセトニトリル中プロピルホスホン酸無水物(TP)を投入して撹拌した。得られたスラリーを水でクエンチし、有機層をナトリウムバイカーボネート水溶液で洗浄して、塩化アンモニウム水溶液で2回洗浄して、再び水で洗浄した。最終MTBE溶液を蒸留して、含水量を低減させた。(S)-tert-ブチル3-(tert-ブトキシ)-2-(ニコチンアミド)-プロパノエート-MTBE溶液を、MTBEおよびn-ヘプタンを使用して結晶化させて、S)-tert-ブチル3-(tert-ブトキシ)-2-(ニコチンアミド)-プロパノエートを単離固体として得た。
【0096】
図1は、いくつかの態様による、(S)-tert-ブチル3-(tert-ブトキシ)-2-(ニコチンアミド)-プロパノエート合成100のフロー図を示す。ニコチン酸を、MTBEおよびアセトニトリル中のトリエチルアミンの存在下で、L-Ser(‘Bu)O’Bu HCl(O-tert-ブチル-L-セリンtert-ブチルエステルヒドロクロリド)と反応させる。次いで、反応物に50%アセトニトリル中のTPを投入し、撹拌して反応混合物を生成する。ステップ102において、完了した反応を水でクエンチし、水相をMTBEで抽出する。有機層をNaCO、NHClで2回、水で1回洗浄して粗溶液を生成する。その後、粗溶液が、蒸留および冷却ステップ104、活性炭を用いた濾過および蒸留ステップ106、ならびにn-ヘプタンを用いた蒸留および冷却ステップ108を受ける。(S)-tert-ブチル3-(tert-ブトキシ)-2-(ニコチンアミド)-プロパノエート種結晶を撹拌および冷却ステップ110にて添加して、結晶化を開始する。濾過および洗浄ステップ112ならびに乾燥ステップ114の後、下流での使用のためのS)-tert-ブチル3-(tert-ブトキシ)-2-(ニコチンアミド)-プロパノエートが生成される。
第1の中間体の調製
【0097】
いくつかの態様では、第1のセルデクスメチルフェニデートクロリド中間体は、スキーム2に従って調製される。
【0098】
スキーム2:
【化5】
【0099】
MTBE(349.0±3.0kg)および2,6-ルチジン(2.8当量、52.4±0.5kg)を、反応器内のデクスメチルフェニデートヒドロクロリド(d-MPH)(1.0当量、47.1±0.2kg)に添加した。反応混合物を(20℃±5℃で少なくとも20分間)撹拌した後、クロロメチルクロロホルメート(1.6当量、35.8±0.3kg)を反応混合物の温度が30℃を超えないように反応器に添加した。反応混合物を25℃±5℃にて少なくとも8時間撹拌した。次いで、反応混合物の温度が30℃を超えないように、反応混合物を水約3体積(d-MPHに対して)でクエンチした。反応混合物を20±5℃にて少なくとも6時間撹拌し、水層を分離した。MTBE層をナトリウムバイカーボネート水溶液3体積、続いて水3体積で洗浄した。MTBE溶液を、59℃以下の内部温度にて大気圧で蒸留して、d-MPHに対して約4.3体積に達したら、50℃以下まで冷却した。次いで、MTBE溶液を20±5℃まで冷却し、含水量を求めた。MTBE溶液が0.2%以下の含水量に達したときに蒸留を完了した。収率は90~99%であった。
【0100】
図2は、いくつかの態様による、第1のセルデクスメチルフェニデートクロリド中間体(第1のSDX中間体)合成200のフロー図を示す。デクスメチルフェニデートHClを、MTBEおよび2,6-ルチジンを含む反応器に投入する。次いで、得られた反応混合物を撹拌ステップ202で20±5℃にて撹拌することができる。いくつかの態様では、撹拌ステップ202の継続時間は少なくとも20分であることができる。クロロメチルクロロホルメートを続いて反応器に添加して第1の中間体反応混合物を生成させ、次いでこれを25±5℃にて撹拌ステップ204で撹拌することができる。いくつかの態様では、撹拌ステップ204の継続時間は少なくとも8時間であることができる。反応が完了したら、第1の中間体反応混合物の温度が30℃を超えないように、第1の中間体反応混合物を水でクエンチする。撹拌ステップ206において、第1の中間体反応混合物を20±5℃にて撹拌し、水層を分離することができる。いくつかの態様では、撹拌ステップ206の継続時間は少なくとも6時間であることができる。洗浄ステップ208では、第1の中間体反応混合物のMTBE層をNaHCO水溶液および水で洗浄することができる。いくつかの態様では、MTBE層をNaHCO溶液3体積および水3体積で洗浄する。洗浄の完了208は、最終水相のpHによって判断することができ、このpHは6以上である。
【0101】
蒸留ステップ210において、第1の中間体反応混合物のMTBE溶液/層を大気圧で蒸留し、50℃以下まで冷却する。いくつかの態様では、MTBE溶液は、d-MPHに対して約4体積まで蒸留される。蒸留ステップ212において、MTBEを第1の中間体反応混合物のMTBE溶液に添加し、蒸留を繰り返す。蒸留212の後、MTBE溶液中の第1の中間体を20±5℃まで冷却する。
【0102】
様々な態様では、合成200は、プロセス内制御ステップ214、216、218および/または220を有することができる。プロセス内制御ステップ214は、撹拌ステップ204と206との間に行うことができ、HPLC分析によって反応混合物の完了を決定する。いくつかの態様では、デクスメチルフェニデート含有量が第1のSDX中間体に対して4%面積を下回る場合、反応は完了している。プロセス内制御216は、洗浄208と蒸留210との間に行うことができ、最終水相のpHを求める。pHが6を超える場合、MTBE層を、最終水相のpHが6以上になるまでNaHCO水溶液および水で再度洗浄する。プロセス内制御ステップ218は、蒸留212の後に行われ、カールフィッシャー分析によってMTBE溶液中の第1の中間体の含水量を測定する。いくつかの態様では、MTBE溶液中の第1の中間体の得られた含水量は0.2%以下である。KF結果が0.2%を超える場合、溶液に追加のMTBE(150±3.0kg)を投入し、含水量が0.2%以下になるまで蒸留を繰り返すことができる。プロセス内制御ステップ220は、MTBE溶液中の最後の第1の中間体を分析して、HPLCにより第1のSDX中間体の重量%および質量を求める。いくつかの態様では、第1のSDX中間体の収率は90~99%である。
第2の中間体の調製
【0103】
いくつかの態様では、第2のセルデクスメチルフェニデートクロリド中間体は、スキーム3に従って調製される。
【0104】
スキーム3
【化6】
【0105】
第1のセルデクスメチルフェニデートクロリド中間体溶液(1.2当量;第1の中間体の実際の質量48.0~51.2kg)を反応器内の(S)-tert-ブチル3-(tert-ブトキシ)-2-(ニコチンアミド)-プロパノエート(1.0当量、39.6~42.2kg)に添加し、撹拌器を始動させた。反応混合物にアセトニトリル9体積を投入し、59℃以下の内部温度で真空下にて約8体積まで蒸留した。次いで、溶液を20±5℃まで冷却し、含水量を求めた。溶液が0.15%以下の含水量に達したときに蒸留を完了した。反応混合物を60±3℃まで加熱し、少なくとも45時間撹拌した。(S)-tert-ブチル3-(tert-ブトキシ)-2-(ニコチンアミド)-プロパノエートの含有量が第2のセルデクスメチルフェニデートクロリド中間体に対して10%面積以下を下回った場合、反応が完了していた。反応混合物を20±5℃まで冷却し、ジオキサン中4.0M HCl溶液(0.15当量、4.85~5.15kg)を投入し、20±5℃にて少なくとも5分間撹拌した。次いで、12体積の4-メチル-2ペンタノン(MIBK)を反応混合物に添加した。
【0106】
反応混合物を、45℃以下の内部温度で大気圧にて蒸留し、アセトニトリルおよびMIBKを除去して、目的物10体積に達した。蒸留後、反応混合物の温度を50±5℃に調整した。固体を除去するために、n-ヘプタン16体積を2時間にわたって添加して、40~55℃の反応温度を維持した。固体が除去されたら、第2のセルデクスメチルフェニデートクロリド中間体種結晶((投入された(S)-tert-ブチル3-(tert-ブトキシ)-2-(ニコチンアミド)-プロパノエートの量に対して計算した第2のセルデクスメチルフェニデートクロリド中間体の理論収率に対して0.11重量%)を50±5℃にて反応混合物に添加して結晶化を開始させてから、n-ヘプタンを投入した。n-ヘプタンの添加後、反応混合物を20±5℃まで冷却し、少なくとも6時間撹拌して、濾過した。第2のセルデクスメチルフェニデートクロリド中間体固体をMIBKとn-ヘプタンの混合物(体積比3:1)で洗浄し、45℃以下にて少なくとも12時間乾燥させて(1.0%以下のLOD)、第2のセルデクスメチルフェニデートクロリド中間体結晶性固体を得た。
【0107】
図3は、いくつかの態様による、第2のセルデクスメチルフェニデートクロリド中間体(第2のSDX中間体)合成300のフロー図を示す。(S)-tert-ブチル3-(tert-ブトキシ)-2-(ニコチンアミド)-プロパノエートを反応器に投入し、第1のセルデクスメチルフェニデートクロリド中間体溶液(第1のSDX中間体)を添加して、撹拌器を始動させる。蒸留ステップ302では、得られた反応混合物にアセトニトリルを投入し、59℃以下の内部温度で真空下にて蒸留する。いくつかの態様では、反応混合物にアセトニトリル9体積を投入して、約8体積まで蒸留する。加熱ステップ304では、反応物を60±3℃まで加熱し、少なくとも45時間撹拌する。いくつかの態様では、反応混合物を59℃まで加熱する。反応が完了したら、冷却ステップ306において反応混合物を20±5℃まで冷却し、ジオキサン中のHClを投入して、20±5℃にて少なくとも5分間撹拌し、MIBKを反応混合物に添加する。いくつかの態様では、ジオキサン中4.0M HClを使用することができ、および/またはMIBK 12体積を使用することができる。
【0108】
次いで、蒸留ステップ308において、反応混合物を45℃以下の内部温度で大気圧にて蒸留して、アセトニトリルおよびMIBKを除去する。いくつかの態様では、反応混合物を蒸留して目的物10体積に達する。蒸留後、調整ステップ310で反応混合物の温度を50±5℃に調整する。次いで、反応混合物の固体を確認する。いくつかの態様では、固体が検出された場合、n-ヘプタンを少なくとも2時間にわたって添加して、40~55℃の反応温度を維持することができる。蒸留ステップ308の後に固体が検出されない場合、第2のSDX中間体種結晶を撹拌ステップ312で反応混合物に添加して結晶化を促進してから、n-ヘプタンを投入し、少なくとも5分間撹拌する。反応混合物を少なくとも6時間撹拌しながら20±5℃まで冷却し(冷却ステップ314)、濾過する(濾過316)。洗浄および乾燥ステップ318において、第2のSDX中間体固体をMIBKおよびn-ヘプタンで洗浄し、45℃以下にて少なくとも12時間乾燥させて、第2のSDX中間体を結晶性固体として得る。いくつかの態様では、第2のSDX中間体固体を3:1の比のMIBK:n-ヘプタンで洗浄する。いくつかの態様では、目標乾燥温度は40~45℃である。
【0109】
様々な態様では、合成300は、プロセス内制御ステップ320、322および/または324を有することができる。プロセス内制御ステップ320は、蒸留ステップ302と加熱ステップ304の間に行うことができ、カールフィッシャー分析によって反応混合物の含水量を測定する。いくつかの態様では、第2の中間体反応混合物の含水量が0.15%以下である場合、蒸留は完了していると見なされる。KF結果が0.15%を超える場合、溶液に追加のアセトニトリルを投入し、含水量が0.15%以下になるまで蒸留を繰り返すことができる。いくつかの態様では、溶液にアセトニトリル2.5体積を投入する。プロセス内制御ステップ322は、HPLCによって反応混合物の完了を判定する。いくつかの態様では、(S)-tert-ブチル3-(tert-ブトキシ)-2-(ニコチンアミド)-プロパノエートの含有量が第2のSDX中間体に対して10.0%以下の面積である場合に、反応が完了している。いくつかの態様では、サンプルがプロセス内基準を満たさない場合、再サンプリング前に撹拌を60±3℃にて少なくとも4時間続けることができる。プロセス内制御ステップ324は、第2のSDX中間体固体の乾燥減量を決定する。いくつかの態様では、結晶性固体としての第2のSDX中間体の収率は70~85%である。
粗セルデクスメチルフェニデートクロリドの調製
【0110】
いくつかの態様では、粗セルデクスメチルフェニデートクロリドは、スキーム4に従って調製される。
【0111】
スキーム4:
【化7】
【0112】
無水1,4-ジオキサン(3.4体積)およびスルホラン(4.6体積)を反応器内の第2のセルデクスメチルフェニデートクロリド中間体結晶性固体(63.5~68.8kg)に添加し、撹拌器を始動させた。ジオキサン中4.0M HCl(2.15当量53.98~59.86kg)を添加し、反応混合物を58±3℃まで加熱して、12~18時間撹拌し、20~25℃まで冷却した。反応が完了したら、反応混合物を40~45℃まで加熱し、2-ブタノンを添加した。反応混合物にSDX種結晶(第2のセルデクスメチルフェニデートクロリド中間体結晶性固体に対して計算した場合、粗SDXの理論収率に対して0.11重量%)を投入し、40~45℃にて少なくとも15分間撹拌した。固体を除去するために、追加の2-ブタノン(19.2体積)を3時間にわたって添加して、沈殿を促進した。固体が除去されたら、反応混合物を37~39℃まで冷却し、SDX種結晶(0.11重量%)を添加してから、追加の2-ブタノンを投入した。反応混合物を3時間の期間にわたって10℃以下まで冷却し、10℃以下にて2~8時間撹拌した。得られた固体を濾過し、2-ブタノン約2体積で洗浄し、50℃以下にて少なくとも10時間乾燥させて、粗SDXを結晶性固体として得た(1.0%以下のLOD)。単離された粗SDX固体の収率は60~75%であった。
【0113】
図4は、いくつかの態様による、粗セルデクスメチルフェニデートクロリド合成のフロー図を示す。第2のセルデクスメチルフェニデートクロリド中間体溶液(第2のSDX中間体)を反応器に投入し、無水1,4-ジオキサンおよびスルホランを添加し、撹拌器を始動させる。いくつかの態様では、無水1,4-ジオキサンおよびスルホランをそれぞれ3.4体積および4.6体積添加する。続いて、ジオキサン中HClを添加する。いくつかの態様では、ジオキサン中4.0M HClが使用される。加熱および撹拌ステップ402では、反応混合物を58±3℃まで加熱して、12~18時間撹拌する。いくつかの態様では、反応混合物を59℃まで加熱し、14時間撹拌する。反応混合物を冷却ステップ404において20~25℃まで冷却して、粗SDX反応混合物を生成する。反応が完了したら、粗SDX反応混合物を加熱ステップ406において40~45℃まで加熱し、2-ブタノンを添加する。いくつかの態様では、粗SDX反応混合物を41℃まで加熱する。直後に、反応混合物にSDX種結晶を投入する。
【0114】
撹拌ステップ408において、反応混合物を40~45℃にて少なくとも15分間撹拌し、固体の存在を確認する。固体が存在する場合、追加の2-ブタノンを少なくとも3時間の期間にわたって添加して、沈殿を促進する。固体が存在しない場合、反応物を37~39℃まで冷却し、追加のSDX種結晶を反応混合物に添加して結晶化を開始させてから、追加の2-ブタノンを投入する。その後、冷却ステップ410において反応混合物を10℃以下まで少なくとも3時間冷却し、次いで10℃以下にて2~8時間撹拌する。得られた固体を濾過し、濾過ステップ412において2-ブタノンで洗浄する。いくつかの態様では、2-ブタノン2体積を使用することができる。乾燥ステップ414では、粗SDX固体を乾燥させる。いくつかの態様では、目標乾燥温度は47℃であることができる。
【0115】
様々な態様では、合成400は、プロセス内制御ステップ416、418および420を有することができる。プロセス内制御ステップ416は、冷却404の後に行うことができ、HPLC分析によって反応の完了を決定する。いくつかの態様では、反応混合物のモノ-t-ブチルエーテルおよびモノ-t-ブチルエステル中間体の合計面積がSDXに対して2.3%以下を下回る場合に反応が完了している。いくつかの態様では、サンプルがこの基準を満たさない場合、反応混合物を再加熱し、2、4または6時間撹拌し、冷却してから再サンプリングする。サンプルがなお基準を満たさない場合、追加のジオキサン中HClを添加し、反応混合物を58±3℃まで加熱して反応完了を達成する。プロセス内制御ステップ418は、USP 731によって粗SDX固体の乾燥減量(LOD)を決定する。いくつかの態様では、LODが1.0%以下である場合、乾燥が完了している。LODが1.0%を超える場合、乾燥を47℃にて継続することができる。プロセス内制御420は、精製前にHPLCによって得られた粗SDX固体の不純物プロファイルを調べる。いくつかの態様では、粗SDX固体の収率は60~75%である。
粗セルデクスメチルフェニデートクロリドの精製
【0116】
いくつかの態様では、精製、単離されたセルデクスメチルフェニデートクロリドは、スキーム5に従って調製される。
【0117】
スキーム5:
【化8】
第1の再結晶(「RX1」)
【0118】
アセトン(6.3体積)および水(0.69体積)を反応器中の粗SDX固体(37.1~39.8kg)に添加し、撹拌した。混合物を加熱還流(54℃以上)し、固体が溶解するまで少なくとも20分間撹拌した。溶解後、溶液を45~48℃に調整し、フィルタカートリッジを通じて移した。次いで、溶液を38~45℃まで冷却し、SDX種結晶(粗SDX投入量に対して0.15重量%)を添加して結晶化を開始させた。反応混合物を38~45℃にて少なくとも15分間撹拌した。固体を除去するために、20±5℃まで冷却しながら、追加のアセトン(18体積)を少なくとも5時間の期間にわたって添加した。固体が除去されたら、混合物を2時間の期間にわたって10℃以下まで冷却し、少なくとも2時間撹拌した後、真空濾過してSDX RX1固体を単離した。得られた固体を濾過し、アセトンで2回(それぞれ3体積)洗浄し、HPLCによって不純物について分析した。単離したSDX RX1固体を50℃以下にて少なくとも10時間乾燥させ、GCによって残留アセトンについて分析した。残留アセトンが4500ppm以下であるとき、乾燥が完了した。SDX RX1固体の収率は75~85%であった。
【0119】
図5は、いくつかの態様による、SDX原薬の精製および単離のための第1の再結晶化のフロー図500を示す。粗SDX固体を反応器に投入し、アセトンおよび水を添加して、得られた混合物を撹拌する。いくつかの態様では、アセトン6.3体積および水0.69体積をそれぞれ添加する。加熱および撹拌ステップ502では、混合物を加熱還流(54℃以上)し、少なくとも20分間撹拌して固体を溶解する。いくつかの態様では、固体が溶液に残っている場合、撹拌を少なくともさらに20分間継続する。固体が依然として存在する場合、追加の水を投入して、撹拌を54℃以上にて少なくとも20分間継続する。いくつかの態様では、固体が残っている場合、追加の水0.01体積を添加する。冷却ステップ504において、溶液を45~48℃に調整し、フィルタカートリッジを通して別の反応器に移す。
【0120】
冷却ステップ506では、フィルタ溶液を撹拌し、さらに38~45℃まで冷却して、SDX種結晶を添加して結晶化プロセスを開始する。いくつかの態様では、溶液は、冷却ステップ506にて42℃まで冷却することができる。次いで、撹拌ステップ508において混合物を38~45℃にて少なくとも15分間撹拌し、固体の存在を確認する。固体が存在する場合、20±5℃まで冷却しながら、追加のアセトンを少なくとも5時間の期間にわたって添加する。固体が存在しない場合、反応物を32~37℃まで冷却し、追加のSDX種結晶を反応混合物に添加して結晶化を促進してから、追加のアセトンを投入する。冷却ステップ510において、混合物を2時間の期間にわたって10℃以下まで冷却し、次いで、少なくとも2時間撹拌してから、真空濾過してSDX RX1固体を単離する。いくつかの態様では、冷却ステップ510において、目標温度は5℃である。濾過および洗浄ステップ512において、SDX RX1固体を濾過して、アセトンで2回洗浄する。いくつかの態様では、アセトン3体積を使用することができる。乾燥ステップ514では、SDX RX1固体を50℃以下にて乾燥させる。
【0121】
様々な態様では、第1の再結晶化500は、プロセス内制御ステップ516、518および520を含むことができる。プロセス内制御ステップ516は、濾過および洗浄ステップ512の後に行うことができ、HPLCによって不純物を決定する。いくつかの態様では、すべての特定の不純物0.15%以下、すべての未知の不純物0.10%以下および総不純物1.0%以下のサンプルでは、単離SDX RX1固体を50℃以下にて少なくとも10時間乾燥させ、プロセス内制御ステップ518でGCによって残留アセトンについて分析する。いくつかの態様では、残留アセトン含有量は4500ppm以下であるべきである。特定の不純物が0.15%を超え、未知の不純物が0.10%を超え、および/または総不純物が1.0%を超える場合、単離SDX RX1固体を50℃以下にて少なくとも10時間乾燥させ、イソプロピルアルコールを使用して追加の再結晶手順(第2の再結晶;図6)に供する。プロセス内制御ステップ520は、USP 731によってSDX RX1固体の乾燥減量(LOD)を決定する。いくつかの態様では、LODが1.0%以下である場合、乾燥が完了している。LODが1.0%を超える場合、第2の再結晶化ステップの開始前に乾燥を継続することができる。いくつかの態様では、純SDX RX1固体の収率は75~85%である。
任意の第2の再結晶化(「RX2」)
【0122】
イソプロピルアルコール(7.4体積)および水(0.60体積)を反応器中の不純なSDX RX1固体(28.2~30.4kg)に添加し、撹拌した。混合物を加熱還流(75℃以上)し、固体が溶解するまで少なくとも20分間撹拌した。溶解後、溶液を63~66℃に調整し、フィルタカートリッジを通じて移した。次いで、溶液を58~63℃まで冷却し、SDX種結晶(SDX RX1固体投入量に対して0.15重量%)を添加して結晶化を開始させた。
【0123】
混合物を58~63℃にて少なくとも15分間撹拌した。固体を除去するために、25±5℃まで冷却しながら、追加のイソプロピルアルコール(13.8体積)を少なくとも5時間の期間にわたって添加した。固体が検出されなかった場合、混合物を52~56℃まで冷却した後、追加のSDX種結晶(0.15重量%)を添加してから、追加のイソプロピルアルコールを投入した。混合物を2時間の期間にわたって10℃以下までにさらに冷却し、少なくとも2時間撹拌した後、真空濾過してSDX RX2固体を単離した。
【0124】
得られた固体を濾過し、イソプロピルアルコールで2回(それぞれ3体積)洗浄し、HPLCによって不純物について分析した。単離したSDX RX2固体を50℃以下にて少なくとも10時間乾燥させ、GCによって残留アセトンおよびイソプロピルアルコールについて分析した。残留アセトンおよびイソプロピルアルコールが4500ppm以下である場合、乾燥が完了した。SDX RX2固体、すなわち精製SDX原薬の収率は84~94%であった。
【0125】
図6は、一態様による、SDX原薬の精製および単離のための第2の再結晶化のフロー図600を示す。不純なSDX RX1固体を反応器に投入し、イソプロピルアルコールおよび水を添加し、得られた混合物を撹拌する。いくつかの態様では、イソプロピルアルコール7.4体積および水0.60体積をそれぞれ添加する。加熱および撹拌ステップ602では、混合物を加熱還流(75℃以上)し、少なくとも20分間撹拌して固体を溶解する。いくつかの態様では、固体が溶液に残っている場合、撹拌を少なくともさらに20分間継続する。固体が依然として存在する場合、追加の水を投入して、撹拌を75℃以上にて少なくとも20分間継続する。いくつかの態様では、固体が残っている場合、追加の水0.01体積を添加する。冷却ステップ604において、溶液を63~66℃に調整し、フィルタカートリッジを通して別の反応器に移す。
【0126】
冷却ステップ606では、フィルタ溶液を撹拌し、さらに58~63℃まで冷却して、SDX種結晶を添加して結晶化プロセスを開始する。いくつかの態様では、溶液は、冷却ステップ606にて60℃まで冷却することができる。次いで、撹拌ステップ608において、反応混合物を58~63℃にて少なくとも15分間撹拌し、固体の存在を確認する。固体が存在する場合、25±5℃まで冷却しながら、追加のイソプロピルアルコールを少なくとも5時間の期間にわたって添加する。固体が存在しない場合、反応物を52~56℃まで冷却し、追加のSDX種結晶を反応混合物に添加して結晶化を開始させてから、追加のイソプロピルアルコールを投入する。いくつかの態様では、固体が存在しない場合、反応物を54℃まで冷却する。冷却ステップ610において、混合物を2時間の期間にわたって10℃以下まで冷却し、次いで、少なくとも2時間撹拌してから、真空濾してSDX RX2固体を単離する。いくつかの態様では、冷却ステップ610において、目標温度は5℃である。濾過および洗浄ステップ612において、SDX RX2固体を濾過し、イソプロピルアルコールで2回洗浄する。いくつかの態様では、イソプロピルアルコール3体積を使用することができる。乾燥ステップ614では、SDX RX2固体を50℃以下にて乾燥させる。
【0127】
様々な態様では、第2の再結晶化600は、プロセス内制御ステップ616および618を含むことができる。プロセス内制御ステップ616は、濾過および洗浄ステップ612の後に行うことができ、HPLCによって不純物を決定する。いくつかの態様では、すべての特定の不純物0.15%以下、すべての未知の不純物0.10%以下、および総不純物1.0%以下を有するサンプルでは、単離SDX RX2固体を50℃以下にて少なくとも10時間乾燥させ、プロセス内制御ステップ618においてGCによって残留アセトンおよびイソプロピルアルコールについて分析する。いくつかの態様では、残留アセトンイソプロピル含有量は4500ppm以下であるべきである。いくつかの態様では、純SDX RX2固体の収率は84~94%である。
【0128】
いくつかの態様では、残留溶媒がプロセス内基準を満たさない(4500ppm以下)場合、SDX RX2固体を以下に記載する再スラリー手順に供することができる。
結晶化SDX固体の任意の再スラリー
【0129】
単離SDX RX2固体およびn-ヘプタン/アセトンの3:1混合物(12体積)を反応器に投入し、スラリーを20~25℃にて少なくとも20時間撹拌した。スラリーを濾過し、5:1 n-ヘプタン/アセトンの混合物(5体積)で洗浄し、50℃以下にて少なくとも10時間乾燥させた。GCを使用してサンプル内プロセスを分析して、バッチが最終包装およびSDX原薬の放出試験のために乾燥器から排出される前に、残留溶媒レベル(アセトン、n-ヘプタン、イソプロピルアルコール)がプロセス内基準を満たすことを確認した。精製SDX原薬の収率は、再スラリー手順後に95~100%であった。
【0130】
図7は、一態様による結晶化されたSDX固体の再スラリー700を示す。結晶化されたSDX固体を反応器に投入し、n-ヘプタン/アセトンの混合物を添加する。いくつかの態様では、n-ヘプタン/アセトンの比は3:1である。加熱および撹拌ステップ702では、スラリーを20~25℃にて少なくとも20時間撹拌する。次いで、スラリーを濾過ステップ704で濾過し、n-ヘプタン/アセトンの混合物で洗浄する。いくつかの態様では、n-ヘプタン/アセトンの比は5:1である。次いで、スラリーを50℃以下にて少なくとも10時間乾燥させて、SDX固体を得る。いくつかの態様では、スラリーを47℃にて乾燥させる。プロセス内制御ステップ708は、GCによって残留溶媒含有量を分析する。いくつかの態様では、SDX固体の収率は95~100%である。
【0131】
いくつかの態様では、SDX RX2固体の不純物分析により、特定の不純物が0.15%を超え、未知の不純物が0.10%を超え、および/または総不純物が1.0%を超えると判定された場合、再処理を行うことができる。これらの態様では、単離SDX RX2固体を、第1の再結晶化500手順の後に水性アセトンを使用するが、91:9アセトン:水9体積および貧溶媒アセトン15体積を使用して残留プロセス不純物をさらに除去する、追加の再結晶化に供することができる。
セルデクスメチルフェニデートクロリドおよびデクスメチルフェニデートヒドロクロリドカプセルの製造
【0132】
いくつかの態様では、製剤は、カプセル中にセルデクスメチルフェニデートクロリドおよびデクスメチルフェニデートヒドロクロリド(SDX/d-MPH)を含む。ある態様では、カプセルは、42重量% SDXおよび9重量% d-MPHを含む。いくつかの態様では、SDX/d-MPHカプセル800の製造方法を図8に示す。
プレブレンドの調製
【0133】
いくつかの態様では、SDXおよびd-MPH原薬の調剤量を、20メッシュふるいを備えた振動式ふるいを用いてふるい分けし、トートブレンダに添加する。いくつかの態様では、微結晶性セルロースの一部は、20メッシュふるいを通してトートブレンダに入れる。ある態様では、微結晶性セルロースのバッチ量の50%が添加される。SDX-d-MPH-セルロースプレブレンドを混合する。いくつかの態様では、APIプレブレンド(ブレンド#1)を130回転で混合する。
粒内1次および粒内潤滑ブレンドの調製
【0134】
いくつかの態様では、微結晶性セルロースの残留部分およびクロスポビドンの一定量を20メッシュふるいに通し、プレブレンドに添加して、得られた粒内1次ブレンド(ブレンド#2)を混合する。いくつかの態様では、粒内1次は260回転で消失する。マグネシウムステアレートの一部を30メッシュふるいに通し、ブレンダに添加する。ある態様では、マグネシウムステアレートのバッチ量の50%を添加する。得られた粒内潤滑ブレンド(ブレンド#3)を混合する。いくつかの態様では、ブレンド#3を130回転で混合する。
乾式造粒ステップ802および粉砕ステップ804
【0135】
いくつかの態様では、ローラー圧縮を使用して粒内潤滑ブレンドを粒状化し、続いて粉砕して、得られた細粒の密度およびブレンド流特性を改善する。ある態様では、2個のローラーで構成されたローラコンパクタを利用し、得られたリボンをスクリーニングミルに通して、粒外ブレンドのための粉砕細粒を得る。
粒外1次および潤滑ブレンドの調製
【0136】
粉砕804の後、コロイド状二酸化ケイ素およびタルクのある量を30メッシュふるいに通し、粒内潤滑ブレンドの粉砕細粒と共にブレンダに添加する。この粒外1次ブレンド(ブレンド#4)を混合し、残りのマグネシウムステアレートを30メッシュふるいに通し、ブレンダに添加して、粒外潤滑ブレンド(ブレンド#5)を得る。いくつかの態様では、粒外1次ブレンドを260回転で混合する。粒外潤滑ブレンドをさらに130回転で混合する。
カプセル化
【0137】
最終粒外潤滑ブレンドは、カプセル化装置製品ホッパに装入され、カプセルに充填される。いくつかの態様では、カプセルはサイズ3 HPMCカプセルである。
【0138】
いくつかの態様では、さらなる処理ステップ810は、カプセルの除塵/金属検出、重量選別および/またはバルク包装を含む。
【0139】
いくつかの態様では、方法800は、粒外潤滑ブレンドのPSDふるい分析を含む、プロセス内制御ステップ812を含む。いくつかの態様では、プロセス内制御ステップ814は方法800の一部であり、得られたカプセルの外観検査および/または重量チェックを含む。本発明は、以下の段落でさらに説明される。
【0140】
式I:
【化9】
を有するセルデクスメチルフェニデートクロリド化合物を製造するための方法であって、
(a)式II:
【化10】
を有する化合物を合成すること、
(b)式III:
【化11】
を有する第1の中間体化合物を合成すること、
(c)式IV:
【化12】
を有する第2の中間体化合物を合成すること、
(d)セルデクスメチルフェニデートクロリド化合物の粗生成物を合成すること、
(e)式Vを有する化合物を精製して、式Iを有するセルデクスメチルフェニデートクロリド化合物を生成すること
を含む、方法。
【0141】
式IIを有する化合物の合成が、メチル-t-ブチルエーテルおよびアセトニトリル中のトリエチルアミンの存在下で、O-tert-ブチル-L-セリンtert-ブチルエステルヒドロクロリドおよびニコチン酸を反応させることを含む、上記の方法。
【0142】
メチル-t-ブチルエーテルおよびアセトニトリル中のトリエチルアミンの存在下でのO-tert-ブチル-L-セリンtert-ブチルエステルヒドロクロリドおよびニコチン酸の反応後、得られた溶液をメチル-t-ブチルエーテルおよびn-ヘプタンを用いて結晶化させて、式IIを有する化合物を得る、上記の方法。
【0143】
第1の中間体化合物の合成が、
(a)デクスメチルフェニデートHClをメチル-t-ブチルエーテルおよび2,6-ルチジンと反応させて反応混合物を得ること、ならびに
(b)クロロメチルクロロホルメートを反応混合物に添加して、第1の中間体化合物を得ることを含む、上記の方法。
【0144】
第2の中間体化合物の合成が、
(a)アセトニトリル、ジオキサン中HClおよび4-メチル-2-ペンタノンの存在下で式IIを有する化合物を第1の中間体化合物と反応させて、反応混合物を得ること、ならびに
(b)反応混合物にセルデクスメチルフェニデートクロリド種結晶を添加して、第2の中間体化合物を結晶性固体として得ることを含む、上記の方法。
【0145】
式Vを有するセルデクスメチルフェニデートクロリド化合物の粗生成物の合成が、
(a)第2の中間体結晶性固体を無水1,4-ジオキサンおよびスルホランと反応させて反応混合物を生成すること、ならびに
(b)反応混合物にセルデクスメチルフェニデートクロリド種結晶を添加して、式Vを有するセルデクスメチルフェニデートクロリド化合物の粗生成物を得ることを含む、上記の方法。
【0146】
セルデクスメチルフェニデートクロリド化合物の粗生成物を精製することが、
(a)粗生成物をアセトンと反応させて反応混合物を生成すること、および
(b)反応混合物にセルデクスメチルフェニデートクロリド種結晶を添加して、式Iを有するセルデクスメチルフェニデートクロリド化合物を結晶性固体として得ることを含む、上記の方法。
【0147】
(f)式Iを有する前記セルデクスメチルフェニデートクロリド化合物の純度レベルを決定することをさらに含む、上記の方法。
【0148】
不純物が検出された場合、セルデクスメチルフェニデートクロリド化合物が、
(a)セルデクスメチルフェニデートクロリド結晶性固体をイソプロピルアルコールと反応させて反応混合物を生成すること、および
(b)反応混合物にセルデクスメチルフェニデートクロリド種結晶を添加して、式Iを有するセルデクスメチルフェニデートクロリド化合物を結晶性固体として得ることを含む、追加のステップを受ける、上記の方法。
【0149】
セルデクスメチルフェニデートクロリドおよびデクスメチルフェニデートヒドロクロリドカプセルを製造する方法であって、
(a)式I:
【化13】
を有するセルデクスメチルフェニデートクロリド化合物のある量、およびデクスメチルフェニデートヒドロクロリドのある量をブレンドすること、
(b)微結晶性セルロースの第1の量をブレンダに添加し、混合してプレブレンドを生成すること、
(c)微結晶性セルロースの第2の量およびクロスポビドンのある量をプレブレンドに添加して、粒内1次ブレンドを生成すること、
(d)粒内1次ブレンドを混合すること、
(e)マグネシウムステアレートの第1の量を粒内1次ブレンドに添加して、粒内潤滑ブレンドを生成すること、
(e)粒内潤滑ブレンドを混合すること、
(f)ローラコンパクタを使用して粒内潤滑ブレンドを造粒すること、
(g)粒内潤滑ブレンドを粉砕すること、
(h)コロイド状二酸化ケイ素およびタルクのある量を粉砕された粒内潤滑ブレンドに添加して、粒外1次ブレンドを生成すること、
(i)粒外1次ブレンドをマグネシウムステアレートの第2の量と混合して、粒外潤滑ブレンドを生成すること、
(j)粒外潤滑ブレンドを混合すること、ならびに
(k)粒外潤滑ブレンドをカプセルに封入することを含む、方法。
【0150】
カプセルがサイズ3 HPMCカプセルである、上記の方法。
【0151】
プレブレンドが130回転で混合される、上記の方法。
【0152】
粒内1次ブレンドが260回転で混合される、上記の方法。
【0153】
粒内潤滑ブレンドが130回転で混合される、上記の方法。
【0154】
粒外1次ブレンドが260回転で混合される、上記の方法。
【0155】
粒外潤滑ブレンドが130回転で混合される、上記の方法。
【0156】
本明細書に記載の技術は、技術が属する分野のいずれの当業者もその技術を実施できるように、完全、明瞭、簡潔かつ正確な用語で説明される。上記が本技術の好ましい態様を説明し、添付の特許請求の範囲に記載された本発明の趣旨または範囲から逸脱することなく修正が行われ得ることを理解されたい。
本発明は、例えば、以下の項目を提供する。
(項目1)
式I:
【化14】

を有するセルデクスメチルフェニデートクロリド化合物を製造するための方法であって、前記方法が、
(a)式II:
【化15】

を有する化合物を合成すること、
(b)式III:
【化16】

を有する第1の中間体化合物を合成すること、
(c)式IV:
【化17】

を有する第2の中間体化合物を合成すること、
(d)前記セルデクスメチルフェニデートクロリド化合物の粗生成物を合成すること、
(e)式Vを有する前記化合物を精製して、式Iを有する前記セルデクスメチルフェニデートクロリド化合物を生成することを含む、方法。
(項目2)
(f)式Iを有する前記セルデクスメチルフェニデートクロリド化合物の純度レベルを決定することをさらに含む、項目1に記載の方法。
(項目3)
不純物が検出された場合、前記セルデクスメチルフェニデートクロリド化合物が、
(a)セルデクスメチルフェニデートクロリド結晶性固体をイソプロピルアルコールと反応させて反応混合物を生成すること、および
(b)前記反応混合物にセルデクスメチルフェニデートクロリド種結晶を添加して、式Iを有する前記セルデクスメチルフェニデートクロリド化合物を結晶性固体として得ること
を含む、追加のステップを受ける、項目1または項目2に記載の方法。
(項目4)
式IIを有する前記化合物の合成が、メチル-t-ブチルエーテルおよびアセトニトリル中のトリエチルアミンの存在下で、O-tert-ブチル-L-セリンtert-ブチルエステルヒドロクロリドおよびニコチン酸を反応させることを含む、先行する項目のいずれかに記載の方法。
(項目5)
メチル-t-ブチルエーテルおよびアセトニトリル中のトリエチルアミンの存在下でのO-tert-ブチル-L-セリンtert-ブチルエステルヒドロクロリドおよびニコチン酸の前記反応後、得られた溶液をメチル-t-ブチルエーテルおよびn-ヘプタンを用いて結晶化させて、前記式IIを有する化合物を得る、項目4に記載の方法。
(項目6)
前記第1の中間体化合物の合成が、
(a)デクスメチルフェニデートHClをメチル-t-ブチルエーテルおよび2,6-ルチジンと反応させて反応混合物を得ること、ならびに
(b)クロロメチルクロロホルメートを前記反応混合物に添加して、前記第1の中間体化合物を得ることを含む、先行する項目のいずれかに記載の方法。
(項目7)
前記第2の中間体化合物の合成が、
(a)アセトニトリル、ジオキサン中HClおよび4-メチル-2-ペンタノンの存在下で、式IIを有する前記化合物を前記第1の中間体化合物と反応させて、反応混合物を得ること、ならびに
(b)前記反応混合物にセルデクスメチルフェニデートクロリド種結晶を添加して、前記第2の中間体化合物を結晶性固体として得ることを含む、先行する項目のいずれかに記載の方法。
(項目8)
式Vを有する前記セルデクスメチルフェニデートクロリド化合物の前記粗生成物の合成が、
(a)前記第2の中間体結晶性固体を無水1,4-ジオキサンおよびスルホランと反応させて反応混合物を生成すること、ならびに
(b)前記反応混合物にセルデクスメチルフェニデートクロリド種結晶を添加して、式Vを有する前記セルデクスメチルフェニデートクロリド化合物の前記粗生成物を得ることを含む、先行する項目のいずれかに記載の方法。
(項目9)
前記セルデクスメチルフェニデートクロリド化合物の前記粗生成物を精製することが、
(a)前記粗生成物をアセトンと反応させて反応混合物を生成すること、および
(b)前記反応混合物にセルデクスメチルフェニデートクロリド種結晶を添加して、式Iを有する前記セルデクスメチルフェニデートクロリド化合物を結晶性固体として得ることを含む、先行する項目のいずれかに記載の方法。
(項目10)
セルデクスメチルフェニデートクロリドおよびデクスメチルフェニデートヒドロクロリドカプセルを製造する方法であって、
(a)式I:
【化18】

を有するセルデクスメチルフェニデートクロリド化合物のある量、およびデクスメチルフェニデートヒドロクロリドのある量をブレンドすること、
(b)微結晶性セルロースの第1の量をブレンダに添加し、混合してプレブレンドを生成すること、
(c)微結晶性セルロースの第2の量およびクロスポビドンのある量を前記プレブレンドに添加して、粒内1次ブレンドを生成すること、
(d)前記粒内1次ブレンドを混合すること、
(e)マグネシウムステアレートの第1の量を前記粒内1次ブレンドに添加して、粒内潤滑ブレンドを生成すること、
(e)前記粒内潤滑ブレンドを混合すること、
(f)ローラコンパクタを使用して前記粒内潤滑ブレンドを造粒すること、
(g)前記粒内潤滑ブレンドを粉砕すること、
(h)コロイド状二酸化ケイ素およびタルクのある量を前記粉砕された粒内潤滑ブレンドに添加して、粒外1次ブレンドを生成すること、
(i)前記粒外1次ブレンドをマグネシウムステアレートの第2の量と混合して、粒外潤滑ブレンドを生成すること、
(j)前記粒外潤滑ブレンドを混合すること、ならびに
(k)前記粒外潤滑ブレンドをカプセルに封入することを含む、方法。
(項目11)
前記カプセルがサイズ3 HPMCカプセルである、項目10に記載の方法。
(項目12)
前記プレブレンドが130回転で混合される、項目10または11に記載の方法。
(項目13)
前記粒内1次ブレンドが260回転で混合される、項目10~12のいずれか一項に記載の方法。
(項目14)
前記粒内潤滑ブレンドが130回転で混合される、項目10~13のいずれか一項に記載の方法。
(項目15)
前記粒外1次ブレンドが260回転で混合される、項目10~14のいずれか一項に記載の方法。
(項目16)
前記粒外潤滑ブレンドが130回転で混合される、項目10~15のいずれか一項に記載の方法。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
【外国語明細書】