(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024045778
(43)【公開日】2024-04-02
(54)【発明の名称】車両用シート装置
(51)【国際特許分類】
B60N 2/14 20060101AFI20240326BHJP
B60N 2/56 20060101ALI20240326BHJP
B60N 2/90 20180101ALI20240326BHJP
A47C 7/74 20060101ALI20240326BHJP
A47C 3/18 20060101ALI20240326BHJP
A47C 7/02 20060101ALI20240326BHJP
B60N 2/68 20060101ALI20240326BHJP
【FI】
B60N2/14
B60N2/56
B60N2/90
A47C7/74 C
A47C3/18 Z
A47C7/02 A
B60N2/68
【審査請求】未請求
【請求項の数】1
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2024026691
(22)【出願日】2024-02-26
(62)【分割の表示】P 2019046309の分割
【原出願日】2019-03-13
(71)【出願人】
【識別番号】000220066
【氏名又は名称】テイ・エス テック株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001379
【氏名又は名称】弁理士法人大島特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】望月 治希
(57)【要約】
【課題】シートクッションフレームが取付けられる環状回転部材ならびに当該環状回転部材を回転可能に支持するベース部材を有する回転機構を備える車両用シート装置において、回転機構に加えてブロワーを含む送風構造を有しつつ、コンパクト化を可能とする。
【解決手段】平面視でシートクッションフレーム16の外周よりも内側に配置されるブロワー65に、吸入口もしくは吹き出し口となる開口部67を有するダクト66の一端部66aが接続され、開口部67の少なくとも一部が、平面視で環状回転部材30の径方向内側に配置される。
【選択図】
図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
シートクッション(11a)を支持するシートクッションフレーム(16)が取付けられる環状回転部材(30)ならびに当該環状回転部材(30)を回転可能に支持するベース部材(29)を有する回転機構(14)を備える車両用シート装置において、
平面視で前記シートクッションフレーム(16)の外周よりも内側に配置されるブロワー(65)と、吸入口もしくは吹き出し口となる開口部(67,73)を有して前記ブロワー(65)に一端部が接続されるダクト(66,72)とを含み、
前記シートクッションフレーム(16)に取付けたクッション側受圧部材(19)の前方で、前記環状回転部材(30)の上端よりも上方に前記ブロワー(65)を配置するとともに、前記一端部が前記環状回転部材(30)よりも上方で前記ブロワー(65)に接続された前記ダクト(66,72)の中間部の一部を、平面視で該中間部が前記クッション側受圧部材(19)と重なる位置で、前記環状回転部材(30)の中央部に形成された少なくとも上方に開放する円形の収容部(41)内に収容し、その収容された前記ダクト(66,72)の他端部側に配置した前記開口部(67,73)の少なくとも一部を、平面視で前記環状回転部材(30)の径方向内側に配置して、その開口部(67,73)の上端開口縁(67a)を、前記クッション側受圧部材(19)の上方に突出させたことを特徴とする車両用シート装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、シートクッションを支持するシートクッションフレームが取付けられる環状回転部材ならびに当該環状回転部材を回転可能に支持するベース部材を有する回転機構を備える車両用シート装置に関する。
【背景技術】
【0002】
フロアに対して回転可能であるシートに、フロア側からダクトを介してシートの着座面に送風するようにした車両用シート装置が、特許文献1によって知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記特許文献1で開示されたものでは、空気を送風するためのブロワーが回転機構の左右の幅方向外側に配置される構造であるため、シート装置の幅方向での大型化が避けられない。
【0005】
本発明は、かかる事情に鑑みてなされたものであり、回転機構に加えてブロワーを含む送風構造を有しつつ、コンパクト化を可能とした車両用シート装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するために、本発明は、シートクッションを支持するシートクッションフレームが取付けられる環状回転部材ならびに当該環状回転部材を回転可能に支持するベース部材を有する回転機構を備える車両用シート装置において、平面視で前記シートクッションフレームの外周よりも内側に配置されるブロワーと、吸入口もしくは吹き出し口となる開口部を有して前記ブロワーに一端部が接続されるダクトとを含み、前記開口部の少なくとも一部が、平面視で前記環状回転部材の径方向内側に配置されることを第1の特徴とする。
【0007】
また本発明は、第1の特徴の構成に加えて、前記環状回転部材の少なくとも径方向に沿う内側部分が、前記ベース部材と、少なくとも一部が前記ベース部材よりも上方に固定配置されて環状に形成される上方固定部材との間に挟まれ、前記開口部が、平面視で前記上方固定部材の径方向内側に配置されることを第2の特徴とする。
【0008】
本発明は、第1または第2の特徴の構成に加えて、前記開口部の上端開口縁が、側面視で前記環状回転部材よりも上方に配置されることを第3の特徴とする。
【0009】
本発明は、第1~第3の特徴の構成のいずれかに加えて、前記環状回転部材が、少なくとも上方に開放する円形の収容部を中央部に有するように形成され、前記ダクトの少なくとも一部が前記収容部に収容されることを第4の特徴とする。
【0010】
本発明は、第4の特徴の構成に加えて、前記ダクトの一端部は、前記環状回転部材の上端よりも上方で前記ブロワーに接続され、当該ダクトの少なくとも中間部が、側面視で前記環状回転部材と重なるように配置されることを第5の特徴とする。
【0011】
本発明は、第1~第5の特徴の構成のいずれかに加えて、前記ダクトの一端部は、平面視で前記環状回転部材と重なる位置で前記ブロワーに接続されることを第6の特徴とする。
【0012】
本発明は、第1~第6の特徴の構成のいずれかに加えて、前記ダクトは、前記シートクッション側に向けて開口して前記環状回転部材の径方向内側に少なくとも一部が配置される第1の開口部を他端部に有するダクト主部と、前記シートクッションの後部上方に配置されるシートバック側に向けて開口する第2の開口部を有して前記ダクト主部から分岐するダクト分岐部とを有するように構成されることを第7の特徴とする。
【0013】
本発明は、第7の特徴の構成に加えて、前記ダクト分岐部の一部が、平面視で前記環状回転部材の径方向内側に配置されることを第8の特徴とする。
【0014】
本発明は、第1の特徴の構成に加えて、前記シートバックを支持するシートバックフレームは、相互に離間した位置で並ぶように配置されて上下方向に延びる一対のシートバックサイドフレームと、それらのシートバックサイドフレームの上端部間を連結するアッパフレームと、一対の前記シートバックサイドフレームの下端部間を連結するロアフレームとを有し、前記シートクッションフレームは、直線状に延びるとともに前記環状回転部材に支持される一対のサイドフレームと、それらのサイドフレームの一端部間を連結する一端部連結部材と、一対の前記サイドフレームの他端部間を連結する他端部連結部材とを有し、前記シートクッションの上方からの荷重を受けるクッション側受圧部材が、金属線をジグザグに湾曲して成る複数のシートスプリングを有しつつ前記一端部連結部材および前記他端部連結部材間に掛け渡され、前記ブロワーが前記一端部連結部材の下部に取付け部材を介して取付けられ、前記シートクッション側に向けて開口した前記開口部が平面視で前記シートスプリング相互間に配置されることを第9の特徴とする。
【0015】
さらに本発明は、第9の特徴の構成に加えて、前記シートクッションに、吹き出し口となる前記開口部から吹き出された空気を流通させる通路が形成されることを第10の特徴とする。
【発明の効果】
【0016】
本発明の第1の特徴によれば、ブロワーが平面視で前記シートクッションフレームの外周よりも内側に在り、ブロワーに接続されるダクトの開口部の少なくとも一部が、平面視で環状回転部材の径方向内側に配置されるので、ブロワーおよびダクトを含む車両用シートをコンパクトに構成することができ、ダクトの開口部の環状回転部材との相対配置をコンパクト化することができる。
【0017】
また本発明の第2の特徴によれば、ダクトの開口部が、環状回転部材の少なくとも径方向に沿う内側部分をベース部材との間で挟む環状の上方固定部材の平面視で内側に在るので、上方固定部材で環状回転部材の少なくとも径方向に沿う内側部分が覆われる構成であっても上方固定部材との干渉を回避して開口部を配置することができる。
【0018】
本発明の第3の特徴によれば、開口部の上端開口縁が側面視で環状回転部材よりも上方に在るので、環状回転部材との干渉を回避しつつ、より乗員に近い側に開口部を配置することができる。
【0019】
本発明の第4の特徴によれば、環状回転部材が、その中央部に有する円形の収容部にダクトの少なくとも一部が収容されるので、ダクトの少なくとも一部が側面視で環状回転部材と重なる位置に配置されることになり、車両用シート装置の上下方向での大型化を抑制することができる。
【0020】
本発明の第5の特徴によれば、ダクトの一端部が環状回転部材の上端よりも上方でブロワーに接続され、ダクトの少なくとも中間部が側面視で環状回転部材と重なるので、車両用シート装置の上下方向での大型化を抑制することができる。
【0021】
本発明の第6の特徴によれば、ダクトの一端部が平面視で環状回転部材と重なる位置でブロワーに接続されるので、ブロワーを環状回転部材により近く配置して環状回転部材の径方向で車両用シート装置のコンパクト化を図ることができる。
【0022】
本発明の第7の特徴によれば、ダクトは、第1の開口部を他端部に有するダクト主部と、第2の開口部を有してダクト主部から分岐するダクト分岐部とを有し、第1の開口部がシートクッション側に向けて開口して環状回転部材の径方向内側に少なくとも一部が配置され、第2の開口部がシートクッションの後部上方に配置されるので、シートクッションおよびシートバックのいずれにも対応した空調機構をコンパクトに構成することができる。
【0023】
本発明の第8の特徴によれば、ダクト分岐部の一部が平面視で環状回転部材の径方向内側に配置されるので、ダクト分岐部の配置をコンパクト化することができる。
【0024】
本発明の第9の特徴によれば、シートクッションフレームの一部を構成する一端部連結部材および他端部連結部材間に、金属線をジグザグに湾曲して成る複数のシートスプリングを有するクッション側受圧部材が、前記シートクッションの上方からの荷重を受けるようにして掛け渡され、ブロワーが一端部連結部材の下部に取付け部材を介して取付けられ、シートクッション側に向けて開口した開口部が平面視でシートスプリング相互間に配置されるので、ブロワーのシートクッションフレームへの取付けを容易としつつ、ダクトの開口部での空気の流通にクッション側受圧部材が悪影響を及ぼすことを防止しつつ、ダクトの取付け状態を確認する際のクッション側受圧部材の上方からの視認性を高めることができる。
【0025】
さらに本発明の第10の特徴によれば、シートクッションに、吹き出し口となる開口部から吹き出された空気を流通させる通路が形成されるので、シートクッションの着座面から空気を吹き出すことができる。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【
図1】第1の実施の形態のシートフレームが回転機構上に在る状態を示す斜視図である。
【
図2】クッション側受圧部材および回転機構を上方から見た平面図である。
【
図4】スライドレールおよび回転機構を
図3の4矢視方向から見た図である。
【
図5】スライドレールおよび回転機構を
図3の5矢視方向から見た図である。
【
図7】シートクッションおよびシートバックの斜視図である。
【
図8】ロック部材がロック位置に在る状態(a)ならびにロック解除位置にある状態(b)を対比しつつ
図4の8-8線に沿って示す断面図である。
【
図10】第2の実施の形態の
図2に対応した平面図である。
【
図11】シートクッションおよびシートバックの斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0027】
以下、本発明の実施の形態について添付の図面を参照しながら説明する。以下の説明で「前後」、「左右」および「上下」は、座った乗員が前向きとなる姿勢にシートがある状態でで当該乗員から見た方向を言うものとする。
【0028】
本発明の第1の実施の形態について
図1~
図9を参照しながら説明すると、先ず
図1において、車両用シート装置は、シート11をスライド可能とするために左右方向に間隔をあけつつ相互に平行に並んで直線状に延びる一対のスライドレール13と、前記シート11を回転可能に支持しつつ前記スライドレール13に沿って移動可能な回転機構14とを含む。
【0029】
前記シート11のシートフレーム15は、シートクッション11aを支持するシートクッションフレーム16と、前記シートクッション11aの上方に配置されるシートバック11bを支持するようにして前記シートクッションフレーム16に連結されるシートバックフレーム17とを備える。
【0030】
シートクッションフレーム16は、相互に左右方向に離間した位置に並ぶようにして前後方向に直線状に延びるように配置される一対のサイドフレーム16aと、それらのサイドフレーム16aの前端部間を連結する一端部連結部材としてのパンフレーム16bと、一対の前記サイドフレーム16aの後端部間を連結する他端部連結部材としてのリヤパイプ16cとを有する。
【0031】
図2において、前記シートクッションフレーム16の前記パンフレーム16bおよび前記リヤパイプ16c間には、前記シートクッション11aの上方からの荷重を受けるクッション側受圧部材19が掛け渡される。このクッション側受圧部材19は、金属線を左右に蛇行するようにジグザグに湾曲して成る複数(この実施の形態では4個)のシートスプリング20を有し、それらのシートスプリング20は、隣接するシートスプリング20同士が左右対称となるように配置され、インサート成形によってそれらのシートスプリング20と一体に成形される樹脂製の複数の中間部連結部材21で、隣接のシートスプリング20同士が連結される。
【0032】
複数の前記シートスプリング20の前端部は、前記シートフレーム15における前記パンフレーム16bに設けられる係止部22にそれぞれ係合される。また相互に隣接するシートスプリング20の後端部は、前記シートフレーム15の前記リヤパイプ16cに係合されるとともに、インサート成形によってシートスプリング20と一体に成形される樹脂製の後端部連結部材23で連結されており、前記後端部連結部材23が、前記リヤパイプ16cを覆うように形成される。
【0033】
再び
図1に注目して、前記シートバックフレーム17は、相互に左右方向に離間した位置に並ぶようにして上下方向に延びる一対のシートバックサイドフレーム17aと、それらのシートバックサイドフレーム17aの上端部間を連結するアッパフレーム17bと、一対の前記シートバックサイドフレーム17aの下端部間を連結するロアフレーム17cとを有する。
【0034】
一対の前記シートバックサイドフレーム17a間には、樹脂等によって弾性変形可能に形成されるバック側受圧部材24が配置されており、このバック側受圧部材24は、上部連結ワイヤ25および下部連結ワイヤ26を介して左右の前記シートバックサイドフレーム17a間に架け渡される。
【0035】
図3~
図6を併せて参照して、前記シートクッションフレーム16は、前記回転機構14上に載置されており、この回転機構14は、前記スライドレール13に沿って移動可能なベース部材29と、前記シートフレーム15を支持して前記ベース部材29に回転可能に支持される回転部材30と、少なくとも一部が前記ベース部材29よりも上方に固定配置されて環状に形成されるとともに前記環状回転部材30の少なくとも回転方向に沿う内側部分を前記ベース部材39との間に挟む上方固定部材としてのカバー部材31とを備え、前記カバー部材31は前記ベース部材29に固定される。
【0036】
前記ベース部材29は、環状である第1底壁部29aと、第1底壁部29aの外周部から上方に立ち上がる円筒状の第1側壁部29bと、第1側壁部29bの上端部から外側方に張り出す第1鍔部29cとを有し、第1鍔部29cは矩形状に形成される。
【0037】
また前記カバー部材31は、前記ベース部材29の第1底壁部29aに上方から当接される環状の第2底壁部31aと、その第2底壁部31aの外周からわずかに上方に立ち上がる円筒状の第2側壁部31bと、上方に向かうにつれて大径となるように形成されて第2側壁部31bの上端部に連設される第1テーパ部31cと、第1テーパ部31cの上端部に連なる環状の第1平坦壁部31dと、第1平坦壁部31dの外周から上方に立ち上がる円筒状の第3側壁部31eとを有し、前記第2底壁部31aは前記ベース部材29の前記第1底壁部29aに複数のリベット32で結合される。
【0038】
前記回転部材30は、前記カバー部材31の前記第1テーパ部31cに外側方から対向する位置に配置されて上方に向かうにつれて大径となるように形成される第2テーパ部30aと、前記カバー部材31の前記第2側壁部31bに外側方から対向するようにして前記第2テーパ部30aの上端部から上方に立ち上がる円筒状の第4側壁部30bと、第4側壁部30bから外側方に張り出す第2鍔部30cとを有し、第2鍔部30cは矩形状に形成される。すなわち前記環状回転部材30の径方向に沿う内側部分である前記第2テーパ部30aが、前記カバー部材31および前記ベース部材29間に挟まれる。
【0039】
第2鍔部30cには、前記スライドレール13と平行に延びるブラケット33が複数ずつの第1のボルト34および第2のナット35で締結される。このブラケット33には、前記シートフレーム15における前記シートクッションフレーム16の前記サイドフレーム16aが結合され、当該サイドフレーム16aは、相互に離間した位置で並ぶようにしつつ直線状に延びて前記回転部材30の前記第2鍔部30c上に固定配置されることになる。
【0040】
前記回転部材30は、前記ベース部材29が有する環状の回転支持部36に軸受37を介して回転可能に支持されており、前記回転支持部36は、前記ベース部材29における第1底壁部29aと、前記第1側壁部29bとで横断面形状が略L字状となるように形成される。
【0041】
前記軸受37は、環状のリテーナ38の周方向複数箇所にボール39が保持されて成り、前記回転部材30における前記第1テーパ部31cには、前記ボール39を転動させるための環状凹部40が形成される。
【0042】
ところで、前記回転部材30の中央部には、当該回転部材30における前記第2テーパ部30aおよび前記第4側壁部30bによって構成される円形の収容部41が上方に開放するとともに下方にも開放するようにして形成されており、前記カバー部材31はその収容部41内に収容、配置される。
【0043】
ところで前記スライドレール13は、車両の前後方向に延びる固定レール45と、その固定レール45に摺動可能に嵌合される可動レール46とから成り、車両前後方向に沿う前記固定レール45の前部は車両の床面47に前部ブラケット48を介して固定され、前記固定レールの後部は前記床面47に後部ブラケット49を介して固定される。しかも前記前部ブラケット48は、前記後部ブラケット49よりも高く形成されており、前記固定レール45すなわち前記スライドレール13は、車両前後方向後方に向かうにつれて低くなるように傾斜して車両前後方向に延びる。
【0044】
図7および
図8を併せて参照して、前記回転部材30の前記ベース部材29および前記カバー部材31に対するロック状態ならびにロック状態解除は、前記回転部材30に支持されるロック部材52の操作で切替えられるものであり、このロック部材52の作動に連動するがたつき抑制部材53が前記カバー部材31および前記回転部材30間に配置される。
【0045】
前記カバー部材31が有する第1テーパ部31cと、前記回転部材30が有する第2テーパ部30aとの間には、上方に向かうにつれて大径となるテーパ状の押し出し部材54が配置される。この押し出し部材54の周方向に間隔をあけた複数箇所には、当該押し出し部材54の周方向に長く延びる収容孔55が設けられており、前記カバー部材31の前記第1テーパ部31cおよび前記回転部材30の第2テーパ部30a間に介在するがたつき抑制部材53が前記収容孔55に収容される。
【0046】
一方、前記回転部材30には、前記ロック部材52が鉛直な軸線を有する軸51を介して回動可能に支持されており、このロック部材52は、
図7(a)で示すように前記カバー部材31の前記第1テーパ部31cに係合して前記回転部材30の回転を阻止するロック位置と、
図7(b)で示すように前記第1テーパ部31cとの係合を解除して前記回転部材30の回転を許容するロック解除位置との間での回動が可能であり、ばね56によって前記ロック位置側に回動付勢される。
【0047】
前記ロック部材52が有する連結腕部52aは、前記回転部材30の前記第2テーパ部30aに形成された挿通孔57に挿通され、前記連結腕部52aの先端部は、前記押し出し部材54に形成される連結孔58に挿通可能であり、前記連結腕部52aの先端部を前記連結孔58に挿通させることで前記押し出し部材54に前記ロック部材52が連結される。この連結腕部52aは、
図7(b)で示すように、前記ロック部材52がロック解除位置となったときに前記連結孔58に連結され、前記押し出し部材54にその回動方向への押圧力が前記連結腕部52aから作用することになる。
【0048】
また前記ロック部材52が有する係合腕部52bは、
図7(a)で示す前記ロック位置では、前記回転部材30における前記第2テーパ部30aに形成された第1の貫通孔59と、前記カバー部材31の第1テーパ部31cに形成された第2の貫通孔60に係合するものの、
図7(b)で示すロック解除位置では前記第2の貫通孔60から離脱して前記カバー部材31との係合を解除するものであり、前記ロック位置および前記ロック解除位置間で前記係合腕部52bは前記押し出し部材54を跨ぐように作動する。
【0049】
前記回転部材30における前記第2テーパ部30aには、前記がたつき抑制部材53の一部を収容する凹部61が前記がたつき抑制部材53を緊密に嵌合させることを可能として形成される。
【0050】
前記がたつき抑制部材53は、前記ロック部材52の前記ロック解除位置から前記ロック位置側への作動に応じた前記押し出し部材54の移動方向62に進むにつれて高さが次第に低くなる斜面53aを有するようにして楔形に形成され、前記がたつき抑制部材53を緊密に嵌合させることを可能とした前記凹部61は、前記斜面53aに対向する凹部側斜面61aを有しつつ当該がたつき抑制部材53の一部を収容するようにして三角形状に形成される。
【0051】
また前記押し出し部材54に形成された前記収容孔55の長手方向両端部のうち前記移動方向62に沿う前端部と、前記がたつき抑制部材53との間には、コイルばね63が縮設されており、このコイルばね63が発揮するばね力で前記がたつき抑制部材53は前記移動方向62とは逆方向に付勢される。
【0052】
而して前記ロック部材52が前記ロック位置にあるときには、
図7(a)で示すように、前記がたつき抑制部材53の前記斜面53aが、前記凹部61の前記凹部側斜面61aに緊密に当接することで前記がたつき抑制部材52が前記回転部材30および前記カバー部材31に緊密に接触することになり、それにより前記回転部材30のがたつきが阻止される。
【0053】
また前記ロック部材52が前記ロック解除位置となったときには、
図7(b)で示すように、前記収容孔55の長手方向両端部のうち前記移動方向62に沿う後端部が前記がたつき抑制部材53に当接し、前記コイルばね63の勢力に抗して前記がたつき抑制部材53は前記移動方向62に押されることになり、前記がたつき抑制部材53の前記斜面53aが前記凹部側斜面61aから離反する側に前記がたつき抑制部材53が移動し、がたつき防止状態が解除されることになる。
【0054】
平面視で前記シートクッションフレーム16の外周よりも内側、この実施の形態では前記シートクッションフレーム16の前部を構成するパンフレーム16bの前端縁よりも後方にはブロワー65が配置されており、このブロワー65に一端部66aが接続されるダクト66の他端部66bに吹き出し口となる開口部67が形成される。
【0055】
前記ブロワー65は、前記パンフレーム16bの下部に取付け部材68を介して取付けられており、前記開口部67の少なくとも一部(この実施の形態では前部)は、平面視で前記環状回転部材30の径方向内側であって前記カバー部材31の径方向内側に配置される。しかも前記開口部67は、前記シートクッション11a側に向けて開口するものであり、平面視では
図2で明示するように、前記クッション側受圧部材19を構成する複数のシートスプリング20のうち相互に隣接する一対のシートスプリング20相互間に配置される。
【0056】
また前記ダクト66の他端部66bは、前記クッション側受圧部材19よりも上方にわずかに突出するものであり、前記開口部67の上端開口縁67aが、側面視で前記環状回転部材30よりも上方に配置される。すなわち
図3で示すように、前記環状回転部材30における第2鍔部30cの上面を通る仮想平面PLよりも上方に前記開口部67の上端開口縁67aが配置される。
【0057】
また前記ダクト66の少なくとも一部は、前記環状回転部材30がその中央部に有する円形の収容部41に収容される。この実施の形態では、前記ダクト66の一端部66aは、前記環状回転部材30の上端よりも上方すなわち前記仮想平面PLよりも上方で平面視では前記環状回転部材30と重なるようにして前記ブロワー65に接続され、当該ダクト66の少なくとも中間部(この実施の形態では中間部)が、側面視で前記環状回転部材30と重なるように配置されて前記収容部41に収容される。
【0058】
図9において、前記シートクッション11aは、積層された複数のパッドが表皮材で包まれてなるものであり、前記ダクト66の前記開口部67から吹き出された空気を流通させる通路69が前記複数のパッド間に形成され、その通路69に通じる通気孔70が表層のパッドに形成され、前記通気孔70からの空気は表皮材を透過して着座面から吹き出される。
【0059】
次にこの第1の実施の形態の作用について説明すると、シート11を回転させる回転機構14は、シートクッションフレーム16が取付けられる環状回転部材30と、当該環状回転部材30を回転可能に支持するベース部材29とを有し、平面視でシートクッションフレーム16の外周よりも内側に配置されるブロワー65に、吹き出し口となる開口部67を有するダクト66の一端部66aが接続され、前記開口部67の少なくとも一部が、平面視で前記環状回転部材30の径方向内側に配置されるので、ブロワー65およびダクト66を含む車両用シート装置をコンパクトに構成することができ、ダクト66の開口部67の環状回転部材30との相対配置をコンパクト化することができる。
【0060】
また前記環状回転部材30の少なくとも径方向に沿う内側部分が、前記ベース部材29と、少なくとも一部が前記ベース部材29よりも上方に固定配置されて環状に形成されるカバー部材31との間に挟まれ、前記開口部67が、平面視で前記カバー部材31の径方向内側に配置されるので、前記カバー部材31で環状回転部材30の少なくとも径方向に沿う内側部分が覆われる構成であっても前記カバー部材31との干渉を回避して前記開口部67を配置することができる。
【0061】
また前記開口部67の上端開口縁67aが、側面視で前記環状回転部材30よりも上方に配置されるので、環状回転部材30との干渉を回避しつつ、より乗員に近い側に前記開口部67を配置することができる。
【0062】
また前記環状回転部材30が、少なくとも上方に開放する円形の収容部41を中央部に有するように形成され、前記ダクト66の少なくとも一部が前記収容部41に収容されるので、前記ダクト66の少なくとも一部が側面視で環状回転部材30と重なる位置に配置されることになり、車両用シート装置の上下方向での大型化を抑制することができる。
【0063】
また前記ダクト66の一端部66aは、前記環状回転部材30の上端よりも上方で前記ブロワー65に接続され、当該ダクト66の少なくとも中間部が、側面視で前記環状回転部材30と重なるように配置されるので、車両用シート装置の上下方向での大型化を抑制することができる。
【0064】
また前記ダクト66の一端部66aは、平面視で前記環状回転部材30と重なる位置で前記ブロワー65に接続されるので、前記ブロワー65を前記環状回転部材により近く配置して前記環状回転部材30の径方向で車両用シート装置のコンパクト化を図ることができる。
【0065】
またシートクッション11aの上方からの荷重を受けるクッション側受圧部材19が、金属線をジグザグに湾曲して成る複数のシートスプリング20を有しつつシートクッションフレーム16のパンフレーム16bおよびリヤパイプ16c間に掛け渡され、前記ブロワー65が前記パンフレーム16bの下部に取付け部材68を介して取付けられ、前記シートクッション11a側に向けて開口した前記開口部67が平面視で前記シートスプリング20相互間に配置されるので、前記ブロワー65の前記シートクッションフレーム16への取付けを容易としつつ、前記ダクト66の開口部67での空気の流通に前記クッション側受圧部材19が悪影響を及ぼすことを防止しつつ、前記ダクト66の取付け状態を確認する際の前記クッション側受圧部材19の上方からの視認性を高めることができる。
【0066】
さらに前記シートクッション11aに、吹き出し口となる前記開口部67から吹き出された空気を流通させる通路69が形成されるので、シートクッション11aの着座面から空気を吹き出すことができる。
【0067】
本発明の第2の実施の形態について
図10および
図11を参照しながら説明するが、上記第1の実施の形態に対応する部分には同一の参照符号を付して図示するのみとし、詳細な説明は省略する。
【0068】
シートクッションフレーム16の前部を構成するパンフレーム16bの前端縁よりも後方にはブロワー65が配置されており、このブロワー65にダクト72が接続される。
【0069】
前記ダクト72は、一端部75aが前記ブロワー65に接続されるとともにシートクッション11a側に向けて開口して環状回転部材30の径方向内側に少なくとも一部が配置される第1の開口部73を他端部に有するダクト主部75と、前記シートクッション11aの後部上方に配置されるシートバック11b側に向けて開口する第2の開口部74を有して前記ダクト主部75から分岐するダクト分岐部76とを有するように構成される。
【0070】
前記第1の開口部73は、上記第1の実施の形態と同様に、前記シートクッション11a側に向けて開口するものであり、平面視では、クッション側受圧部材19を構成する複数のシートスプリング20のうち相互に隣接する一対のシートスプリング20相互間に配置される。
【0071】
また前記ダクト分岐部76の一端部76aは、前記第1の開口部73の近傍で前記ダクト主部72aに連設されており、前記ダクト主部72aから後方に延びて前記シートバック11bの後方まで延出され、このダクト分岐部76の他端部76bに前記第2の開口部74が形成されるのであるが、当該ダクト分岐部76の少なくとも一部(この実施の形態では一部)は、
図10で示すように、平面視で前記環状回転部材30の径方向内側に配置される。
【0072】
図11に注目して、前記シートバック11bは、シートバックパッド77が表皮材に包まれて成るものであり、前記シートバックパッド77は、パッド本体77aと。当該パッド本体77aに形成される凹部80に嵌合される表層パッド77bとを備え、吹き出し口となる前記第2の開口部74に通じる通路78を前記表層パッド77bとの間に形成する溝が前記パッド本体77aに形成され、前記表層パッド77bには、前記通路78に通じる複数の通気孔79が形成される。
【0073】
この第2の実施の形態によれば、ダクト72が、ブロワー65に一端部75aが接続されるとともにシートクッション11a側に向けて開口して環状回転部材30の径方向内側に少なくとも一部が配置される第1の開口部73を他端部75bに有するダクト主部75と、前記シートクッション11aの後部上方に配置されるシートバック11b側に向けて開口する第2の開口部74を有して前記ダクト主部75から分岐するダクト分岐部76とを有するように構成されるので、シートクッション11aおよびシートバック11bのいずれにも対応した空調機構をコンパクトに構成することができる。
【0074】
また前記ダクト分岐部76の一部が、平面視で前記環状回転部材30の径方向内側に配置されるので、ダクト分岐部76の配置をコンパクト化することができる。
【0075】
以上、本発明の実施の形態について説明したが、本発明は上記実施の形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載された本発明を逸脱することなく種々の設計変更を行うことが可能である。
【符号の説明】
【0076】
11a・・・シートクッション
11b・・・シートバック
14・・・回転機構
16・・・シートクッションフレーム
16b・・・一端部連結部材であるパンフレーム
16c・・・他端部連結部材でありリヤパイプ
17・・・シートバックフレーム
17a・・・シートバックサイドフレーム
17b・・・アッパフレーム
17c・・・ロアフレーム
19・・・クッション側受圧部材
20・・・シートスプリング
29・・・ベース部材
30・・・環状回転部材
31・・・上方固定部材であるカバー部材
41・・・収容部
65・・・ブロワー
66,72・・・ダクト
66a,75a・・・ダクトの一端部
67,73,74・・・開口部
67a・・・開口部の上端開口縁
69・・・通路74・・・第2の開口部
75・・・ダクト主部
75b・・・ダクト主部の他端部
76・・・ダクト分岐部