(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024045796
(43)【公開日】2024-04-03
(54)【発明の名称】印刷装置
(51)【国際特許分類】
B41J 2/01 20060101AFI20240327BHJP
【FI】
B41J2/01 107
B41J2/01 201
B41J2/01 401
B41J2/01 451
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022150778
(22)【出願日】2022-09-22
(71)【出願人】
【識別番号】000250502
【氏名又は名称】理想科学工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110004185
【氏名又は名称】インフォート弁理士法人
(74)【代理人】
【識別番号】100121083
【弁理士】
【氏名又は名称】青木 宏義
(74)【代理人】
【識別番号】100138391
【弁理士】
【氏名又は名称】天田 昌行
(74)【代理人】
【識別番号】100074099
【弁理士】
【氏名又は名称】大菅 義之
(72)【発明者】
【氏名】工藤 賢治
【テーマコード(参考)】
2C056
【Fターム(参考)】
2C056EA04
2C056EB13
2C056EB29
2C056EC07
2C056EC37
2C056FB08
2C056HA29
(57)【要約】
【課題】印刷装置において、被印刷物の搬送方向を迅速かつ正確に判別し、搬送方向に基づく印刷部の制御を行う。
【解決手段】印刷装置(インクジェット印刷装置1)は、被印刷物Mに印刷を行う印刷部(インクジェットヘッド10)と、被印刷物Mを搬送する搬送装置(コンベア100)に設けられたエンコーダ110の位相差に基づいて被印刷物Mの搬送方向D1,D2を判別し、この判別した搬送方向D1,D2に基づいて印刷部を制御する制御部21とを備える。
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
被印刷物に印刷を行う印刷部と、
前記被印刷物を搬送する搬送装置に設けられたエンコーダの位相差に基づいて前記被印刷物の搬送方向を判別し、当該判別した搬送方向に基づいて前記印刷部を制御する制御部と
を備えることを特徴とする印刷装置。
【請求項2】
前記搬送方向における前記印刷部の一方側に配置され、前記被印刷物を検知する第1センサと、
前記搬送方向における前記印刷部の他方側に配置され、前記被印刷物を検知する第2センサとを更に備え、
前記制御部は、前記第1センサ及び前記第2センサのうちの前記搬送方向における上流側の一方が前記被印刷物を検知した検知時間に基づいて前記印刷部を制御する
ことを特徴とする請求項1記載の印刷装置。
【請求項3】
前記印刷部は、少なくとも前記搬送方向に配列されインクを吐出する複数の吐出部を有し、
前記複数の吐出部のうち前記搬送方向の両端に位置する吐出部は、下地印刷用インクを吐出する
ことを特徴とする請求項1又は2記載の印刷装置。
【請求項4】
前記印刷部は、インクを吐出する吐出部を有し、
前記印刷装置は、
前記搬送方向における前記吐出部の一方側から、当該吐出部が吐出するインクのミストを吸引する第1ファンと、
前記搬送方向における前記吐出部の他方側から、前記ミストを吸引する第2ファンと
を更に備え、
前記制御部は、前記搬送方向に基づいて前記第1ファン及び前記第2ファンを制御する
ことを特徴とする請求項1又は2記載の印刷装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、判別した搬送方向に基づいて被印刷物に印刷を行う印刷装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、印刷ヘッドの主走査方向の両端部のうち、一方の端部側を印刷の基準位置とする第1の印刷モードと、他方の端部側を印刷の基準位置とする第2の印刷モードとを選択的に用い、第1の印刷モードと第2の印刷モードとで画像の印刷方向を反転して印刷させる印刷装置が提案されている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、段ボールなどの被印刷物を搬送するコンベアなどの搬送装置において、被印刷物の搬送方向を左右で切り替えることが可能な搬送装置がある。このような搬送装置によって搬送される被印刷物に印刷を行う印刷装置では、印刷部の配置に制限が発生したり、左方向専用の印刷部と右方向専用の印刷部とで2つの印刷部を準備する必要が生じたりする。
【0005】
なお、センサによって検知された被印刷物の位置に基づいて被印刷物の搬送方向を判別し、印刷部の制御を行うことが考えられるが、このような被印刷物の位置に基づく印刷部の制御は、検知センサを印刷部の直前に配置することになるため、被印刷物の検知信号を取得してからの画像処理が追いつかないことがある。また、例えば、被印刷物の搬送開始から搬送方向を判別するまでに時間を要し、被印刷物の搬送開始直後に印刷部の制御を行うことができないなどの問題がある。
【0006】
本発明の目的は、被印刷物の搬送方向を迅速かつ正確に判別し、搬送方向に基づく印刷部の制御を行うことができる印刷装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
1つの態様では、印刷装置は、被印刷物に印刷を行う印刷部と、前記被印刷物を搬送する搬送装置に設けられたエンコーダの位相差に基づいて前記被印刷物の搬送方向を判別し、当該判別した搬送方向に基づいて前記印刷部を制御する制御部とを備える。
【発明の効果】
【0008】
前記態様によれば、被印刷物の搬送方向を迅速かつ正確に判別し、搬送方向に基づく印刷部の制御を行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】一実施の形態におけるインクジェット印刷装置(搬送方向が左方向)を示す斜視図である。
【
図2】一実施の形態におけるインクジェット印刷装置(搬送方向が右方向)を示す斜視図である。
【
図3】一実施の形態におけるインクジェット印刷装置の制御構成を示すブロック図である。
【
図4】一実施の形態におけるエンコーダの位相差を説明するための説明図である。
【
図5】一実施の形態におけるインクジェットヘッドの制御を説明するためのフローチャートである。
【
図6A】一実施の形態におけるインクジェットヘッドの制御(搬送方向が左方向)を説明するための説明図である。
【
図6B】一実施の形態におけるインクジェットヘッドの制御(搬送方向が右方向)を説明するための説明図である。
【
図7】一実施の形態における画像データの基準位置を説明するための説明図である。
【
図8】一実施の形態の変形例におけるインクジェットヘッドを説明するための説明図である。
【
図9】他の実施の形態におけるインクジェットヘッドを示す正面図である。
【
図10】他の実施の形態におけるインクジェット印刷装置の制御構成を示すブロック図である。
【
図11A】他の実施の形態における第1ファン及び第2ファンの制御を説明するための説明図(その1)である。
【
図11B】他の実施の形態における第1ファン及び第2ファンの制御を説明するための説明図(その2)である。
【
図11C】他の実施の形態における第1ファン及び第2ファンの制御を説明するための説明図(その3)である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明の実施の形態に係る印刷装置について、インクジェット印刷装置を一例として図面を参照しながら説明する。
【0011】
<一実施の形態>
図1及び
図2は、インクジェット印刷装置1を示す斜視図である。
【0012】
図3は、インクジェット印刷装置1の制御構成を示すブロック図である。
【0013】
なお、
図1及び
図2、並びに後述する
図6A、
図6B、
図8、
図9、及び
図11A~
図11Cにおける前後、左右、及び上下の各方向は、コンベア100の搬送方向D1,D2を左方向及び右方向とした場合の説明の便宜上の一例であり、前後方向及び左右方向が水平方向であり、上下方向が鉛直方向である。
【0014】
図1~
図3に示すように、インクジェット印刷装置1は、インクジェットヘッド10と、第1センサ31と、第2センサ32とを備える。また、
図3に示すように、インクジェット印刷装置1は、制御部21と、記憶部22と、インターフェース部23とを更に備える。インクジェット印刷装置1は、コンベア100の前部側に配置されている。ここで、インクジェット印刷装置1(印刷装置)と、コンベア100(搬送装置)とを備えるシステムを印刷システムと呼ぶことができる。
【0015】
インクジェットヘッド10は、後述する
図6A及び
図6Bに示すように、それぞれにインクを吐出する複数のノズル11aが設けられた複数のヘッド11を有する。ノズル11aは、吐出部の一例である。なお、インクジェットヘッド10は、プリントバーと呼ぶこともできる。また、インクジェットヘッド10は、インク循環部などのインク供給部に接続され、インクを供給されるとよい。
【0016】
インクジェットヘッド10は、被印刷物Mに印刷を行う印刷部の一例であり、ノズル11aが横方向(後方)にインクを吐出することによって、コンベア100上を搬送される被印刷物Mに印刷を行う。なお、ノズル11aがインクを吐出する横方向は、鉛直方向(
図1における上下方向)と、被印刷物Mの搬送方向D1,D2(左右方向)とに交差する方向であり、例えば水平方向である。但し、横方向は、水平方向に限らず、水平方向に対して上下に傾斜した方向であってもよい。また、インクジェットヘッド10は、下方にインクを吐出することによって被印刷物Mに印刷を行うものであってもよい。また、インクジェットヘッド10を一例とする印刷部は、例えば感熱方式等の、インクジェット方式以外の印刷部が用いられてもよい。この場合、本実施の形態に係る印刷装置は、インクジェット印刷装置1以外の印刷装置となる。
【0017】
図6A及び
図6Bに示すように、インクジェットヘッド10(背面側に位置するヘッド11を表すため、想像線である2点鎖線で図示)は、複数のヘッド11を有する。例えば、インクジェットヘッド10は、12個のヘッド11を有する。この12個のヘッド11のうち右側の6個のヘッド11のそれぞれには、ブラック(K)のインクを吐出するノズル11aが上下方向に配列されたノズル列と、シアン(C)のインクを吐出するノズル11aが上下方向に配列されたノズル列とが設けられている。12個のヘッド11のうち左側の6個のヘッド11のそれぞれには、マゼンタ(M)のインクを吐出するノズル11aが上下方向に配列されたノズル列と、イエロー(Y)のインクを吐出するノズル11aが上下方向に配列されたノズル列とが設けられている。上記の6個ずつのヘッド11は、千鳥状に左右方向(搬送方向D1,D2)の位置を異ならせながら高さ方向に配列されている。この結果、インクジェットヘッド10において、各ヘッド11に設けられた複数のノズル11aは、搬送方向D1,D2及び上下方向に配列されている。
【0018】
そして、一例ではあるが、インクジェットヘッド10は、ブラック(K)、シアン(C)、マゼンタ(M)、及びイエロー(Y)の4色(フルカラー)で、
図1及び
図2に示すように、「〇〇リンゴ」、「収穫日*月*日」などの文字(*についてはバリアブル印刷)や、2つのリンゴの模様などの所定の画像の印刷を被印刷物Mの側面(前面)に行う。
【0019】
コンベア100は、被印刷物Mを搬送する搬送装置の一例であり、例えば、製函機の一部として配置されるベルトコンベアである。被印刷物Mは、例えば、段ボール(箱体)などの立体物であるが、特に制限されない。コンベア100は、左方向である搬送方向D1と、右方向である搬送方向D2とに搬送方向D1,D2を切り替えることができる。コンベア100には、エンコーダ110が設けられている。このエンコーダ110は、例えば、コンベア100の搬送部材(ベルト、プーリなど)、この搬送部材を駆動する駆動源(モータなど)、この駆動源が発生させる動力を伝達する伝達機構(ギアなど)などに取り付けられるとよい。なお、コンベア100は、ベルトコンベアではなくローラコンベアであってもよい。また、
図1及び
図2には図示しないが、コンベア100上を搬送される被印刷物Mを、コンベア100の後部側に配置された搬送ガイドによってガイドし、ガイドされた被印刷物Mにインクジェットヘッド10が印刷を行うとよい。
【0020】
図3に示す制御部21は、インクジェット印刷装置1全体の動作を制御する演算処理装置として機能するプロセッサ(例えばCPU:Central Processing Unit)を有し、インクジェットヘッド10などの各部を制御する。
【0021】
記憶部22は、例えば、所定の制御プログラムが予め記録されている読み出し専用半導体メモリであるROM(Read Only Memory)、プロセッサが各種の制御プログラムを実行する際に必要に応じて作業用記憶領域として使用される随時書き込み読み出し可能な半導体メモリであるRAM(Random Access Memory)などのメモリを有する。
【0022】
インターフェース部23は、コンベア100(エンコーダ110)、印刷制御装置、ユーザ端末などの外部機器との間で各種情報の授受を行う。例えば、インターフェース部23は、エンコーダ110の出力信号や、印刷対象の画像データ(例えば、
図7に示す「B」の文字の画像データ)を含む印刷ジョブを受信する。
【0023】
第1センサ31は、左右方向(搬送方向D1,D2)におけるインクジェットヘッド10の右側(一方側の一例)に配置され、第2センサ32は、左右方向(搬送方向D1,D2)におけるインクジェットヘッド10の左側(他方側の一例)に配置されている。例えば、第1センサ31及び第2センサ32は、光学式センサであり、被印刷物Mを検知する。この場合、制御部21は、第1センサ31及び第2センサ32が出力する被印刷物Mの有無の検知信号(検知結果)に基づいて、被印刷物Mの通過などの搬送状態を判別することができる。
【0024】
例えば、
図1に示すように被印刷物Mが左方向である搬送方向D1に搬送される場合、第1センサ31は、搬送方向D1におけるインクジェットヘッド10の上流側に位置するため、供給側センサ(給紙センサ)として機能し、第2センサ32は、搬送方向D1におけるインクジェットヘッド10の下流側に位置するため、排出側センサ(排紙センサ)として機能する。
【0025】
また、
図2に示すように被印刷物Mが右方向である搬送方向D2に搬送される場合、第1センサ31は、搬送方向D2におけるインクジェットヘッド10の下流側に位置するため、排出側センサとして機能し、第2センサ32は、搬送方向D2におけるインクジェットヘッド10の上流側に位置するため、供給側センサとして機能する。
【0026】
制御部21は、第1センサ31及び第2センサ32のうちの搬送方向D1,D2における上流側の一方(供給側センサ)が被印刷物Mを検知した検知時間に基づいてインクジェットヘッド10を制御するとよい。また、制御部21は、第1センサ31及び第2センサ32のうちの搬送方向D1,D2における下流側の一方(排出側センサ)が被印刷物Mを検知したことに基づいて被印刷物Mの搬送が正常に行われていることを判別するとよい。
【0027】
図4は、エンコーダ110の位相差を説明するための説明図である。
【0028】
図4に示す例では、エンコーダ110は、コンベア100の回転を検出するロータリーエンコーダである。コンベア100が正転する場合には、エンコーダ110が出力する出力信号において、A相が立ち上がった後にB相が立ち上がる。一方、コンベア100が逆転する場合には、エンコーダ110が出力する出力信号において、B相が立ち上がった後にA相が立ち上がる。そのため、制御部21は、エンコーダ110から取得する位相差に基づいて被印刷物Mの搬送方向D1,D2を判別することができる。なお、制御部21は、エンコーダ110の位相差に基づいてコンベア100側の機器が判別した搬送方向D1,D2の情報を取得することで、搬送方向D1,D2を判別してもよい。また、エンコーダ110は、コンベア100の水平移動を検出するリニアエンコーダであってもよい。
【0029】
図5は、インクジェットヘッド10の制御を説明するためのフローチャートである。
【0030】
図6A及び
図6Bは、インクジェットヘッド10の制御を説明するための説明図である。
【0031】
図5に示すように、被印刷物Mの搬送及び印刷が開始される場合、まず、制御部21は、エンコーダ110の位相差から搬送方向D1,D2を判別する(ステップS1)。
【0032】
制御部21は、
図6Aに示すように被印刷物Mの搬送方向D1が左方向であることを判別した場合(ステップS1:D1)、搬送方向D1におけるインクジェットヘッド10の上流側に位置する第1センサ31が被印刷物Mを検知した検知時間等に基づいてインクジェットヘッド10を制御し(ステップS2)、印刷を開始させる(ステップS4)。
【0033】
例えば、制御部21は、ヘッド11ごとに第1センサ31との搬送方向D1における距離a,b,c,dが異なるため、この距離a,b,c,dに応じてヘッド11のノズル11aからの吐出タイミングを調整する。なお、ヘッド11ごとに2列のノズル11aが設けられているため、この2列のノズル11a同士でも第1センサ31との搬送方向D1における距離が異なるため、同一ヘッド11であっても列ごとにノズル11aの吐出タイミングが異なってもよい。
【0034】
次に、制御部21が、
図6Bに示すように被印刷物Mの搬送方向D2が右方向であることを判別した場合(ステップS1:D2)、搬送方向D2におけるインクジェットヘッド10の上流側に位置する第2センサ32が被印刷物Mを検知した検知時間等に基づいてインクジェットヘッド10を制御し(ステップS3)、印刷を開始させる(ステップS4)。
【0035】
例えば、制御部21は、ヘッド11ごとに第2センサ32との搬送方向D2における距離a,b,c,dが異なり、また同一ヘッド11でも
図6Aの例(第1センサ31との距離)とは距離a,b,c,dが異なるため、
図6Bの距離a,b,c,dに応じてヘッド11のノズル11aからの吐出タイミングを調整する。
【0036】
ところで、
図6Aの搬送方向D1が左方向の例のように、ブラック(K)、シアン(C)、マゼンタ(M)、イエロー(Y)の順にインクが吐出される場合と、
図6Bの搬送方向D2が右方向の例のように、その逆の順にインクが吐出される場合とで、印刷された画像の色味が異なることになる。そのため、制御部21は、各搬送方向D1,D2の制御(ステップS2,S3)において、インクの吐出タイミングの変更のみならず、カラープロファイルの設定によって、搬送方向D1,D2に応じて色味を合わせるとよい。
【0037】
また、制御部21は、
図6Aの搬送方向D1が左方向の例では、
図7に示す画像データの左端の基準位置P1(
図6Aに示す下側の右端のヘッド11の基準位置P1に対応)から画像データの読み出しを行うのに対し、
図6Bの搬送方向D2が右方向の例では、
図7に示す画像データの右端の基準位置P2(
図6Bに示す下側の左端のヘッド11の基準位置P2に対応)から画像データの読み出しを行う。
【0038】
制御部21は、被印刷物Mの印刷が終了すると、次の被印刷物Mがあるかを判定し(ステップS5)、次の被印刷物Mがあれば(ステップS5:YES)、印刷処理(ステップS4)に戻る。また、制御部21は、次の被印刷物Mが無ければ(ステップS5:NO)、
図5に示す処理を終了する。
【0039】
以上説明した一実施の形態では、印刷装置の一例であるインクジェット印刷装置1は、被印刷物Mに印刷を行う印刷部の一例であるインクジェットヘッド10と、被印刷物Mを搬送する搬送装置の一例であるコンベア100に設けられたエンコーダ110の位相差に基づいて被印刷物Mの搬送方向D1,D2を判別し、この判別した搬送方向D1,D2に基づいてインクジェットヘッド10を制御する制御部21とを備える。
【0040】
このように、制御部21は、エンコーダ110の位相差から判別される被印刷物Mの搬送方向D1,D2に基づいて、インクジェットヘッド10を制御することができる。そのため、搬送方向D1,D2のそれぞれに専用のインクジェットヘッド10を計2つ配置する態様と比較してインクジェット印刷装置1の構成を簡素にしたりコスト削減を図ったりすることができる。また、搬送方向D1,D2に応じたインクジェット印刷装置1の配置の制限や設定の変更などを省略することができるため、インクジェット印刷装置1のレイアウト変更が容易になる。更には、被印刷物Mの位置を検知するセンサの検知結果に基づいて被印刷物Mの搬送方向D1,D2を判別する態様と比較して、被印刷物Mの搬送開始直後に迅速かつ正確に搬送方向D1,D2を判別することができる。よって、本実施の形態によれば、被印刷物Mの搬送方向D1,D2を迅速かつ正確に判別し、搬送方向D1,D2に基づくインクジェットヘッド10(印刷部)の制御を行うことができる。
【0041】
また、本実施の形態では、インクジェット印刷装置1は、搬送方向D1,D2におけるインクジェットヘッド10の右側(一方側の一例)に配置され、被印刷物Mを検知する第1センサ31と、搬送方向D1,D2におけるインクジェットヘッド10の左側(他方側の一例)に配置され、被印刷物Mを検知する第2センサ32とを更に備える。制御部21は、第1センサ31及び第2センサ32のうちの搬送方向D1,D2における上流側の一方が被印刷物Mを検知した検知時間に基づいてインクジェットヘッド10を制御する。
【0042】
これにより、搬送方向D1,D2によらず第1センサ31及び第2センサ32のうちの片方を供給側センサ(給紙センサ)として機能させ、ノズル11aのインクの吐出タイミングを調整することができる。また、第1センサ31及び第2センサ32のうちのもう一方を排出側センサ(排紙センサ)として機能させ、被印刷物Mの搬送が正常に行われているかを判別することなどに利用することもできる。
【0043】
<一実施の形態の変形例>
図8は、変形例におけるインクジェットヘッド50を説明するための説明図である。
【0044】
本変形例におけるインクジェットヘッド50のヘッド51の吐出部の一例である複数のノズル51aは、上述の
図6A及び
図6Bに示すインクジェットヘッド10のノズル11aが吐出するブラック(K)、シアン(C)、マゼンタ(M)、及びイエロー(Y)の4色のインクに加えて、下地印刷用インクの一例であるホワイト(W)のインクを吐出する。
【0045】
図8に示すように、インクジェットヘッド50(背面側に位置するヘッド51を表すため、想像線である2点鎖線で図示)は、複数のヘッド51を有する。例えば、インクジェットヘッド50は、それぞれがホワイト(W)及びブラック(K)のインクを吐出する2列のノズル51aが設けられた6つのヘッド51と、シアン(C)及びマゼンタ(M)のインクを吐出する2列のノズル51aが設けられた6つのヘッド51と、イエロー(Y)及びホワイト(W)のインクを吐出する2列のノズル51aが設けられた6個のヘッド51とを有する。上記の6個ずつのヘッド51は、千鳥状に左右方向の位置を異ならせながら高さ方向に配列されている。この結果、インクジェットヘッド50において、各ヘッド51に設けられたノズル51aは、搬送方向D1,D2(左右方向)及び上下方向に配列されている。
【0046】
また、インクジェットヘッド50において、複数のノズル51aのうち搬送方向D1,D2の両端(左端及び右端)に位置するノズル51aは、ホワイト(W)のインクを吐出する。そのため、搬送方向D1,D2が左右方向のどちらであっても、インクジェットヘッド50は、ホワイト(W)のインクを他のインクよりも先に吐出することができる。
【0047】
以上説明した本変形例では、印刷部の一例であるインクジェットヘッド50は、少なくとも搬送方向D1,D2に配列されインクを吐出する複数の吐出部の一例である複数のノズル51aを有する。複数のノズル51aのうち搬送方向D1,D2の両端に位置するノズル51aは、下地印刷用インクの一例であるホワイト(W)のインクを吐出する。
【0048】
これにより、搬送方向D1,D2が左右方向のどちらであっても、インクジェットヘッド50のノズル51aは、ホワイト(W)のインクを他のインクよりも先に吐出し、下地印刷を行うことができる。
【0049】
<他の実施の形態>
図9は、他の実施の形態におけるインクジェットヘッド10を示す正面図である。
【0050】
図10は、他の実施の形態におけるインクジェット印刷装置2の制御構成を示すブロック図である。
【0051】
本実施の形態におけるインクジェット印刷装置2は、第1ダクト61、第2ダクト62、第1ファン71、及び第2ファン72を更に備えることを除いて、上述の一実施の形態におけるインクジェット印刷装置1と同一にすることができる。そのため、詳細な説明は省略する。
【0052】
図9に示す第1ダクト61は、搬送方向D1,D2におけるインクジェットヘッド10(吐出部の一例である
図6A及び
図6Bに示すノズル11a)の右側(一方側の一例)に配置され、
図10に示す第1ファン71が吸引するエアの流路を形成する。第2ダクト62は、搬送方向D1,D2におけるインクジェットヘッド10(ノズル11a)の左側(他方側の一例)に配置され、第2ファン72が吸引するエアの流路を形成する。
【0053】
第1ファン71は、第1ダクト61を介して、インクジェットヘッド10の右側から、ノズル11aが吐出するインクのミストを吸引する。第2ファン72は、第2ダクト62を介して、インクジェットヘッド10の左側から、ノズル11aが吐出するインクのミストを吸引する。なお、第1ダクト61及び第2ダクト62は、インクジェットヘッド10の内部に1つずつ、又は複数ずつ(例えば、搬送方向D1,D2に並ぶ4列のヘッド11のそれぞれの上流側及び下流側)設けられていてもよい。この場合でも、第1ファン71及び第2ファン72は、搬送方向D1,D2におけるノズル11aの両側からミストを吸引することができる。なお、第1ファン71及び第2ファン72は、上述の
図8に示す変形例におけるインクジェットヘッド50(ノズル51a)の搬送方向D1,D2の両側からミストを吸引してもよい。
【0054】
制御部21は、搬送方向D1,D2に基づいて第1ファン71及び第2ファン72を制御する。例えば、
図11A~
図11Cに示すように搬送方向D1が左方向の場合を例に説明すると、制御部21は、
図11Aに示すようにインクジェットヘッド10がインクを吐出しているときには、被印刷物Mの搬送に伴う気流でインクジェットヘッド10から搬送方向D1(左方向)に流れるミストを吸引するために、搬送方向D1の下流側に位置する第2ダクト62に接続された第2ファン72にミストを吸引させる(第1制御)。この第1制御では、搬送方向D1の上流側からもミストが吸引されると、気流乱れによるインクの着弾精度が悪化するため、制御部21は、搬送方向D1の上流側に位置する第1ダクト61に接続された第1ファン71を停止させるとよい。
【0055】
また、
図11Bに示すように、インクジェットヘッド10に対向する被印刷物Mが存在しないときには、制御部21は、拡散したミストを吸引するために、搬送方向D1の上流側の第1ダクト61に接続された第1ファン71と、搬送方向D1の下流側の第2ダクト62に接続された第2ファン72との両方にミストを吸引させる(第2制御)。
【0056】
また、
図11Cに示すように、インクジェットヘッド10がインクを吐出しておらず、かつ、インクジェットヘッド10の上流側の第1ダクト61に対向する位置に被印刷物Mが進入しているときには、制御部21は、下流側の第2ダクト62からミストを吸引しつつ、この第2ダクト62からのミストの吸引を補助(アシスト)するために、第1ダクト61に接続された第1ファン71にエアを吹き出させ、被印刷物Mとの間の隙間を通る気流を生じさせてもよい(第3制御)。この場合、第1ファン71のエアの吹き出しによって、被印刷物Mに付着した塵埃などを吹き飛ばすこともできる。
【0057】
なお、制御部21は、1つの被印刷物Mが搬送されるごとに、第1制御、第2制御、及び第3制御を繰り返し行うか、或いは、第1制御及び第2制御のみを繰り返し行うとよい。また、第1ファン71及び第2ファン72は、エア(ミスト)の吸引及びエアの吹き出しのうち少なくとも吸引を行うことができるとよいが、吹き出しのみを行うものであってもよい。この場合、制御部21は、例えば、搬送方向D1,D2におけるノズル11aの少なくとも上流側に位置する第1ファン71及び第2ファン72にエアを吹き出させることによって被印刷物Mに付着した塵埃を吹き飛ばすとよい。
【0058】
以上説明した他の実施の形態では、上述の一実施の形態と同様の事項に関しては同様の効果、すなわち、被印刷物Mの搬送方向D1,D2を迅速かつ正確に判別し、搬送方向D1,D2に基づくインクジェットヘッド10(印刷部)の制御を行うことができるなどの効果を得ることができる。
【0059】
また、本実施の形態では、印刷部の一例であるインクジェットヘッド10は、インクを吐出する吐出部(
図6A及び
図6Bに示すノズル11a)を有する。インクジェット印刷装置1は、搬送方向D1,D2におけるノズル11a(インクジェットヘッド10)の一方側から、ノズル11aが吐出するインクのミストを吸引する第1ファン71と、搬送方向D1,D2におけるノズル11aの他方側から、ミストを吸引する第2ファン72とを更に備える。制御部21は、搬送方向D1,D2に基づいて第1ファン71及び第2ファン72を制御する。
【0060】
これにより、搬送方向D1,D2が左右方向のどちらであっても、例えば、
図11Aに示すように搬送方向D1,D2におけるノズル11aの下流側のみからミストを吸引する制御などを行うことができる。
【0061】
なお、本発明は、上述の実施の形態そのままに限定されるものではなく、実施段階でその要旨を逸脱しない範囲で構成要素を変形して具体化することができる。また、上述の実施の形態に開示されている複数の構成要素の適宜な組み合わせにより、種々の発明を形成することができる。例えば、各実施形態に示される全構成要素を適宜組み合わせてもよい。このような、発明の趣旨を逸脱しない範囲内において種々の変形や応用が可能であることはもちろんである。以下に、本願の出願当初の特許請求の範囲に記載された発明を付記する。
【0062】
[付記1]
被印刷物に印刷を行う印刷部と、
前記被印刷物を搬送する搬送装置に設けられたエンコーダの位相差に基づいて前記被印刷物の搬送方向を判別し、当該判別した搬送方向に基づいて前記印刷部を制御する制御部と
を備えることを特徴とする印刷装置。
【0063】
[付記2]
前記搬送方向における前記印刷部の一方側に配置され、前記被印刷物を検知する第1センサと、
前記搬送方向における前記印刷部の他方側に配置され、前記被印刷物を検知する第2センサとを更に備え、
前記制御部は、前記第1センサ及び前記第2センサのうちの前記搬送方向における上流側の一方が前記被印刷物を検知した検知時間に基づいて前記印刷部を制御する
ことを特徴とする付記1記載の印刷装置。
【0064】
[付記3]
前記印刷部は、少なくとも前記搬送方向に配列されインクを吐出する複数の吐出部を有し、
前記複数の吐出部のうち前記搬送方向の両端に位置する吐出部は、下地印刷用インクを吐出する
ことを特徴とする付記1又は2記載の印刷装置。
【0065】
[付記4]
前記印刷部は、インクを吐出する吐出部を有し、
前記印刷装置は、
前記搬送方向における前記吐出部の一方側から、当該吐出部が吐出するインクのミストを吸引する第1ファンと、
前記搬送方向における前記吐出部の他方側から、前記ミストを吸引する第2ファンと
を更に備え、
前記制御部は、前記搬送方向に基づいて前記第1ファン及び前記第2ファンを制御する
ことを特徴とする付記1又は2記載の印刷装置。
【符号の説明】
【0066】
1,2 インクジェット印刷装置
10 インクジェットヘッド
11 ヘッド
11a ノズル
21 制御部
22 記憶部
23 インターフェース部
31 第1センサ
32 第2センサ
50 インクジェットヘッド
51 ヘッド
51a ノズル
61 第1ダクト
62 第2ダクト
71 第1ファン
72 第2ファン
100 コンベア
110 エンコーダ
D1,D2 搬送方向
M 被印刷物
P1,P2 基準位置