(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024045810
(43)【公開日】2024-04-03
(54)【発明の名称】ドナー監視装置及びドナー監視方法
(51)【国際特許分類】
A61B 5/00 20060101AFI20240327BHJP
【FI】
A61B5/00 102A
【審査請求】未請求
【請求項の数】13
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022150802
(22)【出願日】2022-09-22
(71)【出願人】
【識別番号】000109543
【氏名又は名称】テルモ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100077665
【弁理士】
【氏名又は名称】千葉 剛宏
(74)【代理人】
【識別番号】100116676
【弁理士】
【氏名又は名称】宮寺 利幸
(74)【代理人】
【識別番号】100191134
【弁理士】
【氏名又は名称】千馬 隆之
(74)【代理人】
【識別番号】100136548
【弁理士】
【氏名又は名称】仲宗根 康晴
(74)【代理人】
【識別番号】100136641
【弁理士】
【氏名又は名称】坂井 志郎
(74)【代理人】
【識別番号】100180448
【弁理士】
【氏名又は名称】関口 亨祐
(72)【発明者】
【氏名】佐々木 道弘
【テーマコード(参考)】
4C117
【Fターム(参考)】
4C117XB01
4C117XB04
4C117XD04
4C117XD14
4C117XE13
4C117XE15
4C117XE37
4C117XE43
4C117XE48
4C117XE71
4C117XJ01
4C117XP03
(57)【要約】
【解決手段】ドナー監視装置14は、ドナーの体調を判定するために使用される体調情報を取得する取得部46と、取得された体調情報に基づいてドナーの体調を判定する判定部48とを備える。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
献血するドナーを監視するドナー監視装置であって、
前記ドナーの体調を判定するために使用される体調情報を取得する取得部と、
取得された前記体調情報に基づいて前記ドナーの体調を判定する判定部と、
を備える、ドナー監視装置。
【請求項2】
請求項1に記載のドナー監視装置であって、
採血中の前記ドナーに前記体調情報を問い合わせる確認部を備え、
前記取得部は、問い合わせに対する前記ドナーの回答を取得し、
前記判定部は、前記ドナーの回答に基づいて前記ドナーの体調を判定する、
ドナー監視装置。
【請求項3】
請求項2に記載のドナー監視装置であって、
前記確認部は、クローズドクエスチョンを問い合わせる、
ドナー監視装置。
【請求項4】
請求項1~3のいずれか1項に記載のドナー監視装置であって、
前記取得部は、前記ドナーの画像を複数取得し、
前記判定部は、複数の前記画像に基づいて前記ドナーの体調を判定する、
ドナー監視装置。
【請求項5】
請求項4に記載のドナー監視装置であって、
前記取得部は、前記ドナーの顔の前記画像を複数取得し、
前記判定部は、複数の前記画像から発汗の変化と、顔色の変化と、表情の変化の少なくとも一つを検出し、検出結果に基づいて前記ドナーの体調を判定する、
ドナー監視装置。
【請求項6】
請求項5に記載のドナー監視装置であって、
前記判定部は、時間経過に伴う各々の前記画像の変化から発汗の変化と、顔色の変化と、表情の変化の少なくとも一つを検出し、検出結果に基づいて前記ドナーの体調を判定する、
ドナー監視装置。
【請求項7】
請求項4に記載のドナー監視装置であって、
前記取得部は、前記ドナーの穿刺部分の前記画像を複数取得し、
前記判定部は、複数の前記画像から前記穿刺部分の色の変化と、前記穿刺部分の形状の変化の少なくとも一つを検出し、検出結果に基づいて前記ドナーの体調を判定する、
ドナー監視装置。
【請求項8】
請求項1~3のいずれか1項に記載のドナー監視装置であって、
前記取得部は、採血中の前記ドナーのバイタルデータを取得し、
前記判定部は、前記バイタルデータに基づいて前記ドナーの体調を判定する、
ドナー監視装置。
【請求項9】
請求項8に記載のドナー監視装置であって、
前記取得部は、前記バイタルデータとして、血圧と脈拍と血液中の酸素飽和度との少なくとも一つを取得する、
ドナー監視装置。
【請求項10】
請求項1~3のいずれか1項に記載のドナー監視装置であって、
前記取得部は、採血中の採血用のチューブの内圧データを取得し、
前記判定部は、前記内圧データに基づいて前記ドナーの体調を判定する、
ドナー監視装置。
【請求項11】
請求項1~3のいずれか1項に記載のドナー監視装置であって、
体調判定の結果を所定の端末装置に通知する通知部を備える、
ドナー監視装置。
【請求項12】
請求項11に記載のドナー監視装置であって、
前記通知部は、前記体調判定の結果が前記ドナーの異変を示す場合に前記端末装置に通知する、
ドナー監視装置。
【請求項13】
献血するドナーを監視するドナー監視方法であって、
プロセッサは、前記ドナーの体調を判定するために使用される体調情報を取得する工程と、
取得された前記体調情報に基づいて前記ドナーの体調を判定する工程と、
を実行する、ドナー監視方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、献血するドナーを監視するドナー監視装置及びドナー監視方法に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、献血のために使用される移動採血車が示される。特許文献1で示されるように、献血現場では、看護師は、採血中のドナーに付き添い、ドナーの体調を監視する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
昨今の感染症の感染リスクを減らすために、献血現場では、看護師とドナーとの対面機会を減らすことが望まれる。
【0005】
本発明は上述した課題を解決することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
第1発明は、(1)献血するドナーを監視するドナー監視装置であって、前記ドナーの体調を判定するために使用される体調情報を取得する取得部と、取得された前記体調情報に基づいて前記ドナーの体調を判定する判定部と、を備える。
【0007】
上記構成によれば、ドナー監視装置が看護師の代わりにドナーを監視するため、採血中にドナーと看護師とが対面する機会を減らすことができる。従って、昨今の感染症の感染リスクを減らすことができる。
【0008】
(2)上記(1)の装置は、採血中の前記ドナーに前記体調情報を問い合わせる確認部を備え、前記取得部は、問い合わせに対する前記ドナーの回答を取得し、前記判定部は、前記ドナーの回答に基づいて前記ドナーの体調を判定することが好ましい。
【0009】
(3)上記(2)の装置において、前記確認部は、クローズドクエスチョンを問い合わせることが好ましい。
【0010】
(4)上記(1)~(3)のいずれか1つの装置において、前記取得部は、前記ドナーの画像を複数取得し、前記判定部は、複数の前記画像に基づいて前記ドナーの体調を判定することが好ましい。
【0011】
(5)上記(4)の装置において、前記取得部は、前記ドナーの顔の前記画像を複数取得し、前記判定部は、複数の前記画像から発汗の変化と、顔色の変化と、表情の変化の少なくとも一つを検出し、検出結果に基づいて前記ドナーの体調を判定することが好ましい。
【0012】
(6)上記(5)の装置において、前記判定部は、時間経過に伴う各々の前記画像の変化から発汗の変化と、顔色の変化と、表情の変化の少なくとも一つを検出し、検出結果に基づいて前記ドナーの体調を判定することが好ましい。
【0013】
(7)上記(4)の装置において、前記取得部は、前記ドナーの穿刺部分の前記画像を複数取得し、前記判定部は、複数の前記画像から前記穿刺部分の色の変化と、前記穿刺部分の形状の変化の少なくとも一つを検出し、検出結果に基づいて前記ドナーの体調を判定することが好ましい。
【0014】
(8)上記(1)~(3)のいずれか1つの装置において、前記取得部は、採血中の前記ドナーのバイタルデータを取得し、前記判定部は、前記バイタルデータに基づいて前記ドナーの体調を判定することが好ましい。
【0015】
(9)上記(8)の装置において、前記取得部は、前記バイタルデータとして、血圧と脈拍と血液中の酸素飽和度との少なくとも一つを取得することが好ましい。
【0016】
(10)上記(1)~(3)のいずれか1つの装置において、前記取得部は、採血中の採血用のチューブの内圧データを取得し、前記判定部は、前記内圧データに基づいて前記ドナーの体調を判定することが好ましい。
【0017】
(11)上記(1)~(3)のいずれか1つの装置は、体調判定の結果を所定の端末装置に通知する通知部を備えることが好ましい。
【0018】
(12)上記(11)の装置において、前記通知部は、前記体調判定の結果が前記ドナーの異変を示す場合に前記端末装置に通知することが好ましい。
【0019】
第2発明は、(13)献血するドナーを監視するドナー監視方法であって、プロセッサは、前記ドナーの体調を判定するために使用される体調情報を取得する工程と、取得された前記体調情報に基づいて前記ドナーの体調を判定する工程と、を実行する。
【発明の効果】
【0020】
本発明によれば、ドナーと看護師とが対面する機会を減らすことができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【
図1】
図1は、ドナー監視システムの構成図である。
【
図2】
図2は、一般的な献血の手順を示す図である。
【
図3】
図3は、第1監視処理を示すフローチャートである。
【
図4】
図4は、第2監視処理及び第3監視処理を示すフローチャートである。
【
図5】
図5は、第4監視処理を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0022】
[1 ドナー監視システム10]
図1は、ドナー監視システム10の構成図である。本明細書で「ドナー」というのは、献血のドナーを意味する。ドナー監視システム10は、センサ群12と、ドナー監視装置14と、端末装置16とを備える。センサ群12は、第1カメラ18と、第2カメラ20と、血圧センサ22と、脈拍センサ24と、パルスオキシメータ26と、採血装置28とを含む。センサ群12の各構成要素とドナー監視装置14とは、互いに有線通信又は無線通信が可能である。ドナー監視装置14と端末装置16とは、互いに有線通信又は無線通信が可能である。
【0023】
第1カメラ18は、撮像位置がドナーの顔の位置となるように配置される。第1カメラ18は、サーモカメラであってもよい。第1カメラ18は、定期的に又は常時、ドナーの顔を撮像する。本明細書では、第1カメラ18が撮像する画像を、顔画像とも称する。第1カメラ18は、図示しない通信機を有する。第1カメラ18の通信機は、各々の顔画像をドナー監視装置14に送信する。
【0024】
第2カメラ20は、撮像位置がドナーの穿刺部分(肘関節)の位置となるように配置される。第2カメラ20は、サーモカメラであってもよい。第2カメラ20は、定期的に又は常時、ドナーの穿刺部分を撮像する。本明細書では、第2カメラ20が撮像した画像を、肘画像とも称する。第2カメラ20は、図示しない通信機を有する。第2カメラ20の通信機は、各々の肘画像をドナー監視装置14に送信する。
【0025】
血圧センサ22は、採血前にドナーに装着される。血圧センサ22は、採血中に定期的に又は常時、ドナーの血圧(バイタルデータ)を検出する。血圧センサ22は、図示しない通信機を有する。血圧センサ22の通信機は、血圧の検出値をドナー監視装置14に送信する。
【0026】
脈拍センサ24は、採血前にドナーに装着される。脈拍センサ24は、採血中に定期的に又は常時、ドナーの脈拍(バイタルデータ)を検出する。脈拍センサ24は、図示しない通信機を有する。脈拍センサ24の通信機は、脈拍の検出値をドナー監視装置14に送信する。
【0027】
パルスオキシメータ26は、献血前にドナーに装着される。パルスオキシメータ26は、採血中に定期的に又は常時、ドナーの血液中の酸素飽和度(バイタルデータ)を検出する。パルスオキシメータ26は、図示しない通信機を有する。パルスオキシメータ26の通信機は、酸素飽和度の検出値をドナー監視装置14に送信する。
【0028】
採血装置28は、全血献血の採血又は成分献血の採血のいずれか一方を行う。採血装置28は、図示しないプロセッサ及び通信機を有する。採血装置28は、採血の進捗状況を示す進捗情報をドナー監視装置14に送信する。例えば、全血献血用の採血装置28は、採血開始及び採血終了の各々のタイミングを示す進捗情報をドナー監視装置14に送信する。例えば、成分献血用の採血装置28は、採血開始、採血終了、返血開始及び返血終了の各々のタイミングを示す進捗情報をドナー監視装置14に送信する。また、採血装置28は、採血開始からの経過時間を示す進捗情報をドナー監視装置14に送信する。
【0029】
採血装置28は、圧力センサ30を有する。圧力センサ30は、採血針に接続されるチューブの内圧(内圧データ)を検出する。採血装置28は、圧力センサ30で検出された検出値をドナー監視装置14に送信する。
【0030】
ドナー監視装置14は、例えばロボット、タブレット端末、専用端末等である。ドナー監視装置14は、制御装置32と、記憶装置34と、入力装置36と、表示装置38と、音響装置40と、通信装置42とを有する。
【0031】
制御装置32は、処理回路を有する。処理回路は、CPU等のプロセッサであってもよい。処理回路は、ASIC、FPGA等の集積回路であってもよい。プロセッサは、不揮発性メモリに記憶されるプログラムを実行することによって各種の処理を実行可能である。例えば、プロセッサは、確認部44、取得部46、判定部48及び通知部50として機能する。
【0032】
確認部44は、採血中のドナーに体調情報を問い合わせる。取得部46は、ドナーの体調を判定するために使用される体調情報を取得する。判定部48は、取得された体調情報に基づいてドナーの体調を判定する。通知部50は、体調判定の結果を所定の端末装置16に通知する。各機能の詳細については、下記[3]で説明する。
【0033】
記憶装置34は、各種メモリ(揮発性メモリ、不揮発性メモリ等)を有する。揮発性メモリとしては、例えばRAM等が挙げられる。揮発性メモリは、プロセッサのワーキングメモリとして使用される。揮発性メモリは、処理又は演算に必要なデータ等を一時的に記憶する。不揮発性メモリとしては、例えばROM、フラッシュメモリ等が挙げられる。不揮発性メモリは、保存用のメモリとして使用される。不揮発性メモリは、プログラム、テーブル、マップ等を記憶する。不揮発性メモリは、下記[3]で説明する監視処理における問い合わせのタイミング、問い合わせの内容等を記憶する。不揮発性メモリは、各種の閾値を記憶する。
【0034】
入力装置36は、ドナーがドナー監視装置14に情報を入力するためのHMIである。入力装置36は、例えばマイク、タッチパネル、キーボード等を含む。
【0035】
表示装置38及び音響装置40は、ドナー監視装置14がドナーに情報を提示するためのHMIである。表示装置38は、例えばディスプレイとディスプレイの駆動回路とを含む。ディスプレイは、タッチパネル(入力装置36)と一体であってもよい。音響装置40は、例えばアンプとスピーカとを含む。
【0036】
通信装置42は、センサ群12の各構成要素が有する通信機と有線通信又は無線通信を行う。また、通信装置42は、端末装置16が有する通信機と有線通信又は無線通信を行う。例えば、通信装置42は、Wi-Fi(登録商標)、ブルートゥース(登録商標)等の近距離無線通信を行うための通信機等を有する。
【0037】
端末装置16は、例えば、採血所の職員(看護師等)が携帯する携帯端末(スマートフォン、タブレット端末等)である。又は、端末装置16は、採血所の職員が監視するモニタ装置であってもよい。端末装置16は、図示しない通信機及びディスプレイを有する。
【0038】
[2 献血の手順]
図2は、一般的な献血の手順を示す図である。ステップS1において、ドナーは、献血の受付を行う。ステップS2において、ドナーは、所定の質問に回答する。ステップS3において、ドナーは、問診を受ける。ステップS4において、ドナーは、血液検査を受ける。ここでは、血液検査のための採血が行われる。ステップS5において、ドナーは、採血される。採血は、採血装置28によって行われる。採血前には穿刺が行われ、採血後には抜針が行われる。ステップS6において、ドナーは、休憩をとる。以上で献血は終了する。
【0039】
[3 監視処理]
制御装置32は、
図2で示されるステップS5の採血中に、ドナーを監視する。制御装置32は、採血に起因してドナーに発生する幾つかの症状(副作用)を監視することができる。以下では、制御装置32が行う監視処理の代表例として、第1~第4監視処理を説明する。
【0040】
[3-1 第1監視処理]
第1監視処理の概要は、以下のとおりである。制御装置32は、ドナーに対して体調に関する問い合わせを行う。制御装置32は、問い合わせに対するドナーの回答に基づいて、ドナーに異変が発生したかを判定する。更に、制御装置32は、ドナーに異変が発生した場合に、端末装置16に通知する。
【0041】
図3は、第1監視処理を示すフローチャートである。第1監視処理によれば、クエン酸中毒、神経損傷等の異変の有無を判定することができる。看護師は、ドナーへの穿刺前に、図示しない操作装置を操作する。これにより、制御装置32は、第1監視処理を開始する。
【0042】
ステップS11において、確認部44は、問い合わせのタイミングが到来したかを判定する。確認部44は、採血装置28から送信される進捗情報に基づいて、採血の進捗状況を監視する。確認部44は、進捗状況が予め設定されたタイミングと一致する場合に、問い合わせのタイミングが到来したと判定する。問い合わせのタイミングは、確認する異変に応じて決められていてもよい。問い合わせのタイミングが到来した場合(ステップS11:YES)、処理はステップS12に移行する。一方、問い合わせのタイミングが到来していない場合(ステップS11:NO)、処理はステップS16に移行する。
【0043】
ステップS11からステップS12に移行すると、確認部44は、表示装置38と音響装置40の少なくとも一方を制御して、ドナーに問い合わせを行う。問い合わせの内容は、確認する異変に応じて定められている。確認部44は、ドナーにクエン酸中毒が発生しているかを確認するために、ドナーに「舌又は指先等に痺れがあるか」等の問い合わせを行う。また、確認部44は、ドナーに神経損傷が発生しているかを確認するために、ドナーに「疼痛があるか」等の問い合わせを行う。このように、確認部44は、ドナーが「はい」又は「いいえ」で答えることができる問い合わせ、所謂クローズドクエスチョンを行う。ステップS12が終了すると、処理はステップS13に移行する。
【0044】
ステップS13において、取得部46は、入力装置36からドナーの回答を取得する。ドナーの回答は、ドナーの体調を判定するために使用される体調情報である。ドナーは、ステップS12の問い合わせに対して、入力装置36を介して回答することができる。例えば、ドナーは、マイクを介して音声で回答することができる。又は、ドナーは、タッチパネルを操作して回答することができる。ステップS13が終了すると、処理はステップS14に移行する。
【0045】
ステップS14において、判定部48は、取得部46によって取得された回答に基づいてドナーに異変が発生しているかを判定する。判定部48は、取得部46が音声の回答を取得した場合に、音声認識によって回答を判定する。例えば、判定部48は、「舌又は指先等に痺れがあるか」という問い合わせに対して、「はい」という回答を取得した場合に、ドナーに異変(クエン酸中毒)が発生していると判定する。例えば、判定部48は、「疼痛があるか」という問い合わせに対して、「はい」という回答を取得した場合に、ドナーに異変(神経損傷)が発生していると判定する。ドナーに異変が発生している場合(ステップS14:YES)、処理はステップS15に移行する。一方、ドナーに異変が発生していない場合(ステップS14:NO)、処理はステップS16に移行する。
【0046】
ステップS14からステップS15に移行すると、通知部50は、通信装置42を制御して、端末装置16に対してドナーに異変が発生していることを通知する。通知部50は、ドナーに発生している異変の種類を通知してもよい。ステップS15が終了すると、一連の処理は終了する。
【0047】
ステップS11又はステップS14からステップS16に移行すると、取得部46は、採血が終了したかを判定する。例えば、取得部46は、採血装置28から採血終了を示す進捗情報を取得することにより、採血が終了したと判定することができる。採血が終了した場合(ステップS16:YES)、一連の処理は終了する。一方、採血が終了していない場合(ステップS16:NO)、処理はステップS11に戻り、一連の処理が継続される。
【0048】
第1監視処理によれば、ドナー監視装置14が看護師の代わりにドナーを監視するため、採血中にドナーと看護師とが対面する機会を減らすことができる。従って、昨今の感染症の感染リスクを減らすことができる。また、第1監視処理によれば、看護師の労力を減らすことができる。また、第1監視処理によれば、看護師等は、ドナーから離れた場所にいても、ドナーに異変が発生したことを知ることができる。このため、1人の看護師等はより多くのドナーに対応することができる。結果として、これまでよりも、必要な人員を少なくすることが可能になる。
【0049】
[3-2 第2監視処理]
第2監視処理の概要は、以下のとおりである。制御装置32は、ドナーの顔を監視する。制御装置32は、ドナーの顔の状態に基づいて、異変(異変の兆候)の有無を判定する。異変(異変の兆候)がある場合に、制御装置32は、ドナーに対して体調に関する問い合わせを行う。制御装置32は、問い合わせに対するドナーの回答に基づいて、ドナーに異変が発生したかを判定する。更に、制御装置32は、ドナーに異変が発生した場合に、端末装置16に通知する。
【0050】
図4は、第2監視処理を示すフローチャートである。第2監視処理によれば、貧血、VVR(Vaso Vagal Reaction)等の異変の有無を判定することができる。看護師は、ドナーへの穿刺前に、図示しない操作装置を操作する。これにより、制御装置32は、第2監視処理を開始する。
【0051】
ステップS21において、取得部46は、第1カメラ18から穿刺前の画像(顔画像)を取得する。第1カメラ18は、穿刺前に顔画像を撮像し、制御装置32に送信する。取得部46は、顔画像を取得し、記憶装置34に格納する。穿刺前の顔画像は、ドナーの体調を判定するために使用される体調情報である。ステップS21が終了すると、処理はステップS22に移行する。
【0052】
ステップS22において、取得部46は、第1カメラ18から採血中の画像(顔画像)を取得する。第1カメラ18は、採血中に顔画像を撮像し、制御装置32に送信する。取得部46は、顔画像を取得し、記憶装置34に格納する。採血中の顔画像は、ドナーの体調を判定するために使用される体調情報である。ステップS22が終了すると、処理はステップS23に移行する。
【0053】
ステップS23において、判定部48は、ステップS21及びステップS22にて取得された複数の顔画像を用いて画像判定を行う。判定部48は、穿刺前の顔画像及び最新の顔画像の各々を用いて画像認識を行い、最新の顔画像を穿刺前の顔画像と照合する。この照合により、判定部48は、穿刺前から現在までの発汗量の変化を検出する。また、判定部48は、穿刺前の顔画像及び最新の顔画像の各々を用いて色素マッピングを行い、最新の顔画像を穿刺前の顔画像と照合する。この照合により、判定部48は、穿刺前から現在までの顔色の変化を検出する。また、判定部48は、前回判定までに取得された1以上の顔画像と最新の顔画像の各々を用いて画像認識を行い、時間経過に伴う各々の顔画像の変化に基づいて、表情の変化を検出する。表情の変化としては、例えば、欠伸、震え、顔面硬直等が挙げられる。判定部48は、欠伸の回数をカウントしてもよい。ステップS23が終了すると、処理はステップS24に移行する。
【0054】
ステップS24において、判定部48は、画像判定の結果に基づいてドナーに異変が発生しているかを判定する。判定部48は、ドナーの発汗量が所定の閾値以上になっている場合に、ドナーに異変が発生していると判定する。また、判定部48は、ドナーの顔色が暖色から寒色に変化した場合、又は、寒色から暖色に変化した場合に、ドナーに異変が発生していると判定する。また、判定部48は、ドナーの欠伸の回数が所定の閾値を超えた場合、又は、ドナーが震えている場合、又は、ドナーの顔面が硬直している場合にドナーに異変が発生していると判定する。ドナーに異変が発生している場合(ステップS24:YES)、処理はステップS25に移行する。一方、ドナーに異変が発生していない場合(ステップS24:NO)、処理はステップS29に移行する。
【0055】
ステップS25~ステップS29の処理は、
図3で示されるステップS12~ステップS16の処理と実質的に同じである。但し、ステップS25における問い合わせの内容は、ステップS12における問い合わせの内容と異なる。確認部44は、ステップS24における判定結果に応じて、次の問い合わせを行う。
【0056】
例えば、ドナーの発汗量が閾値以上である場合に、確認部44は、ドナーに「部屋が暑いか」等の問い合わせを行う。ドナーの回答が「はい」の場合は、ドナーに異変はないと判定する。この場合、確認部44は、ネットワークで繋がる空調装置に、温度変更の指令を出力してもよい。一方、ドナーの回答が「いいえ」の場合は、確認部44は、ドナーに症状の問い合わせを行う。確認部44は、例えば「眠気があるか」、「頭痛があるか」、「めまいがあるか」等の問い合わせを行う。また、確認部44は、例えば「視界のぼやけがあるか」、「視界の暗化があるか」、「吐き気があるか」等の問い合わせを行ってもよい。
【0057】
例えば、ドナーの顔色が変化した場合、又は、ドナーの表情に変化がある場合に、確認部44は、ドナーに症状の問い合わせを行う。確認部44は、例えば「眠気があるか」、「頭痛があるか」、「めまいがあるか」等の問い合わせを行う。また、確認部44は、例えば「視界のぼやけがあるか」、「視界の暗化があるか」、「吐き気があるか」等の問い合わせを行ってもよい。
【0058】
なお、ステップS29において、採血が終了していない場合(ステップS29:NO)、処理はステップS22に戻り、一連の処理が継続される。ステップS27において、ドナーの回答が「いいえ」であって、且つ、ステップS29において、採血が終了していない場合、判定部48は、次にステップS24で行う判定の閾値を大きくする。これにより、ステップS24において、ドナーの状態が変わらないにもかかわらず、判定部48が再び異変発生と判定することがなくなる。
【0059】
第2監視処理によれば、第1監視処理と同等の効果を得ることができる。
【0060】
[3-3 第3監視処理]
第3監視処理の概要は、以下のとおりである。制御装置32は、ドナーの穿刺部分を監視する。制御装置32は、ドナーの穿刺部分の状態に基づいて、異変(異変の兆候)の有無を判定する。異変(異変の兆候)がある場合に、制御装置32は、ドナーに対して体調に関する問い合わせを行う。制御装置32は、問い合わせに対するドナーの回答に基づいて、ドナーに異変が発生したかを判定する。更に、制御装置32は、ドナーに異変が発生した場合に、端末装置16に通知する。
【0061】
第3監視処理の処理フローは、第2監視処理の処理フロー(
図4)と同じである。第3監視処理によれば、皮下出血等の異変の有無を判定することができる。看護師は、ドナーへの穿刺前に、図示しない操作装置を操作する。これにより、制御装置32は、第3監視処理を開始する。
【0062】
第3監視処理では、取得部46は、第2カメラ20から穿刺前の画像(肘画像)と採血中の画像(肘画像)とを取得する(ステップS21、ステップS22)。穿刺前の肘画像及び採血中の肘画像は、ドナーの体調を判定するために使用される体調情報である。判定部48は、穿刺前の肘画像及び最新の肘画像の各々を用いて画像認識を行い、最新の肘画像を穿刺前の肘画像と照合する。この照合により、判定部48は、穿刺前から現在までの穿刺部分の形状の変化(腫れ)を検出する(ステップS23)。また、判定部48は、穿刺前の肘画像及び最新の肘画像の各々を用いて色素マッピングを行い、最新の肘画像を穿刺前の肘画像と照合する。この照合により、判定部48は、穿刺前から現在までの穿刺部分の色の変化(皮下出血)を検出する(ステップS23)。例えば、穿刺部分に腫れがある場合、又は、穿刺部分の色に変化がある場合に、確認部44は、ドナーに「痛みがあるか」等の問い合わせを行う(ステップS25)。
【0063】
第3監視処理によれば、第1監視処理と同等の効果を得ることができる。
【0064】
[3-4 第4監視処理]
第4監視処理の概要は、以下のとおりである。制御装置32は、各種センサの検出値を監視する。制御装置32は、各種センサの検出値に基づいて、異変(異変の兆候)の有無を判定する。異変(異変の兆候)がある場合に、制御装置32は、ドナーに対して体調に関する問い合わせを行う。制御装置32は、問い合わせに対するドナーの回答に基づいて、ドナーに異変が発生したかを判定する。更に、制御装置32は、ドナーに異変が発生した場合に、端末装置16に通知する。
【0065】
図5は、第4監視処理を示すフローチャートである。第4監視処理によれば、貧血、VVR、採血針のはずれ等の異変の有無を判定することができる。看護師は、ドナーへの穿刺前に、図示しない操作装置を操作する。これにより、制御装置32は、第4監視処理を開始する。
【0066】
ステップS31において、取得部46は、各種センサの検出値を取得する。例えば、血圧センサ22、脈拍センサ24、パルスオキシメータ26及び圧力センサ30の各々は、定期的に又は常時、検出値を制御装置32に送信する。取得部46は、各種センサの検出値を取得し、記憶装置34に一時的に格納する。各種センサの検出値は、ドナーの体調を判定するために使用される体調情報である。ステップS31が終了すると、処理はステップS32に移行する。
【0067】
ステップS32において、判定部48は、各種センサの検出値に基づいてドナーに異変が発生しているかを判定する。判定部48は、血圧が所定の閾値以下である場合に、ドナーに異変が発生していると判定する。また、判定部48は、脈拍が所定の閾値以下である場合に、ドナーに異変が発生していると判定する。また、判定部48は、血液中の酸素飽和度が所定の閾値以下である場合に、ドナーに異変が発生していると判定する。また、判定部48は、チューブの内圧が所定の閾値以上である場合に、ドナーに異変が発生していると判定する。ドナーに異変が発生している場合(ステップS32:YES)、処理はステップS33に移行する。一方、ドナーに異変が発生していない場合(ステップS32:NO)、処理はステップS37に移行する。
【0068】
ステップS33~ステップS37の処理は、
図3で示されるステップS12~ステップS16の処理と実質的に同じである。但し、ステップS33における問い合わせの内容は、ステップS12における問い合わせの内容と異なる。確認部44は、ステップS32における判定結果に応じて、次の問い合わせを行う。
【0069】
例えば、判定部48が血圧と脈拍と酸素飽和度のいずれかによってドナーに異変があると判定した場合に、確認部44は、ドナーに症状の問い合わせを行う。確認部44は、例えば「眠気があるか」、「頭痛があるか」、「めまいがあるか」等の問い合わせを行う。また、確認部44は、例えば「視界のぼやけがあるか」、「視界の暗化があるか」、「吐き気があるか」等の問い合わせを行ってもよい。この問い合わせに対する回答により、判定部48は、貧血、VVR等が発生しているかを判定することができる。
【0070】
例えば、判定部48がチューブの内圧によってドナーに異変があると判定した場合に、確認部44は、ドナーに症状の問い合わせを行う。確認部44は、例えば、「腕に痛みがあるか」等の問い合わせを行う。この問い合わせに対する回答により、判定部48は、採血針がはずれているかを判定することができる。
【0071】
第4監視処理によれば、第1監視処理と同等の効果を得ることができる。
【0072】
なお、第1~第4監視処理の各々は、変形が可能である。例えば、第2~第4監視処理において、ドナーへの問い合わせが省略されてもよい。すなわち、
図4で示される第2、第3監視処理において、ステップS25~ステップS27が省略されてもよい。同様に、
図5で示される第4監視処理において、ステップS33~ステップS35が省略されてもよい。
【0073】
また、ドナーへの問い合わせ(ステップS12、ステップS25、ステップS33)に対するドナーの回答がない場合に、確認部44は、再度問い合わせを行ってもよい。又は、ドナーへの問い合わせ(ステップS12、ステップS25、ステップS33)に対するドナーの回答がない場合に、通知部50は、端末装置16に対して通知してもよい。
【0074】
なお、本発明は、上述した開示に限らず、本発明の要旨を逸脱することなく、種々の構成を採り得る。
【符号の説明】
【0075】
14…ドナー監視装置 16…端末装置
44…確認部 46…取得部
48…判定部 50…通知部