(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024045812
(43)【公開日】2024-04-03
(54)【発明の名称】蓄電デバイスの検査方法、蓄電デバイスの製造方法、及び、デバイススタックの製造方法
(51)【国際特許分類】
G01R 31/52 20200101AFI20240327BHJP
H01M 10/48 20060101ALI20240327BHJP
H01M 10/04 20060101ALI20240327BHJP
H01M 50/586 20210101ALI20240327BHJP
H01M 50/593 20210101ALI20240327BHJP
H01M 50/262 20210101ALI20240327BHJP
G01R 31/385 20190101ALI20240327BHJP
G01R 31/382 20190101ALI20240327BHJP
H01M 10/052 20100101ALN20240327BHJP
H01M 10/058 20100101ALN20240327BHJP
G01R 31/388 20190101ALN20240327BHJP
【FI】
G01R31/52
H01M10/48 P
H01M10/04 Z
H01M50/586
H01M50/593
H01M50/262 Z
G01R31/385
G01R31/382
H01M10/052
H01M10/058
G01R31/388
【審査請求】有
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022150808
(22)【出願日】2022-09-22
(71)【出願人】
【識別番号】520184767
【氏名又は名称】プライムプラネットエナジー&ソリューションズ株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】000003207
【氏名又は名称】トヨタ自動車株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】399107063
【氏名又は名称】プライムアースEVエナジー株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000291
【氏名又は名称】弁理士法人コスモス国際特許商標事務所
(72)【発明者】
【氏名】池田 博昭
(72)【発明者】
【氏名】後藤 周作
【テーマコード(参考)】
2G014
2G216
5H028
5H029
5H030
5H040
5H043
【Fターム(参考)】
2G014AA03
2G014AB55
2G014AB61
2G216BA01
2G216BB02
2G216BB23
2G216BB25
2G216CA01
2G216CA03
5H028AA10
5H028BB10
5H028BB12
5H028BB15
5H028CC01
5H028CC26
5H028HH10
5H029AJ12
5H029BJ02
5H029BJ14
5H029BJ27
5H029CJ16
5H029CJ28
5H030AA06
5H030AA10
5H030AS08
5H030BB01
5H030BB21
5H030FF43
5H030FF44
5H030FF52
5H040AA03
5H040AS07
5H040AT02
5H040CC34
5H040JJ08
5H040JJ09
5H043AA04
5H043AA13
5H043BA19
5H043CA04
5H043CA12
5H043GA22
5H043GA26
5H043JA15
5H043LA21
(57)【要約】
【課題】蓄電デバイスにおいて、適切に金属ケースと負極板との間の短絡の有無を判定できる蓄電デバイスの検査方法、この検査方法を用いた蓄電デバイスの製造方法、及び、この検査方法を用いたデバイススタックの製造方法を提供すること。
【解決手段】ケース11内に電極体30を絶縁フィルム50でケースと絶縁しつつ収容した電池10の検査方法は、電池を第1電圧VB1に調整する電圧調整工程S4と、ケース外に露出し負極板32に導通して負極電位PNとされている負極電位部材25とケースとの間に生じているケース-負極間電位差である第1電位差EF1を測定する第1測定工程S52と、24時間以上の待機期間IWTを空けて、ケース-負極間電位差である第2電位差EF2を測定する第2測定工程S55と、第1電位差及び第2電位差の大きさと、第1電位差と第2電位差との間の変化ΔF12から、ケースと負極板との間の短絡の有無を判定するケース-負極間短絡判定工程S57とを備える。
【選択図】
図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
金属ケース内に、正極板の厚み方向外側に負極板を配置した電極体を絶縁フィルムで前記金属ケースと絶縁しつつ収容した蓄電デバイスの検査方法であって、
前記蓄電デバイスを充電又は放電して第1デバイス電圧に調整する電圧調整工程と、 前記電圧調整工程以降の第1電位差測定時刻に、前記金属ケース外に露出し前記負極板に導通して負極電位とされている負極電位部材と前記金属ケースとの間に生じているケース-負極間電位差である第1電位差を測定する第1測定工程と、
前記第1電位差測定時刻から24時間以上の待機期間を空けた後の第2電位差測定時刻に、前記ケース-負極間電位差である第2電位差を測定する第2測定工程と、
前記第1電位差及び前記第2電位差の大きさと、前記第1電位差と前記第2電位差との間の変化から、前記金属ケースと前記負極板との間の短絡の有無を判定するケース-負極間短絡判定工程とを備える
蓄電デバイスの検査方法。
【請求項2】
蓄電デバイスの製造方法であって、
請求項1に記載の蓄電デバイスの検査方法のうち、
前記電圧調整工程は、
初充電及びその後の充放電を経た前記蓄電デバイスを充電又は放電して前記第1デバイス電圧に調整する電圧調整工程であり、
前記第1測定工程、前記第2測定工程及び前記ケース-負極間短絡判定工程を、個別の前記蓄電デバイスについて行う
蓄電デバイスの製造方法。
【請求項3】
請求項2に記載の蓄電デバイスの製造方法であって、
前記電圧調整工程の後に、前記蓄電デバイスの自己放電の状態を検査する自己放電検査工程をさらに備え、
前記自己放電検査工程は、
前記第1測定工程及び前記第2測定工程を、前記自己放電検査工程内で行う
蓄電デバイスの製造方法。
【請求項4】
請求項3に記載の蓄電デバイスの製造方法であって、
前記自己放電検査工程は、
前記電圧調整工程の後に、前記蓄電デバイスの放置前デバイス電圧を測定する放置前電圧測定工程と、
前記放置前デバイス電圧を測定した前記蓄電デバイスを、放置期間に亘り、端子開放状態で放置する放置工程と、
前記放置工程の後に、前記蓄電デバイスの放置後デバイス電圧を測定する放置後電圧測定工程と、
前記蓄電デバイスの前記放置前デバイス電圧と前記放置後デバイス電圧とを用いて、当該蓄電デバイスの自己放電の状態を検知する自己放電検知工程と、
前記電圧調整工程の後で、前記放置工程の前に、前記放置前電圧測定工程と並行して又は相前後して行う前記第1測定工程と、
前記放置工程の後で、前記自己放電検知工程の前に、前記放置後電圧測定工程と並行して又は相前後して行う前記第2測定工程と、を備え、
前記待機期間は前記放置期間に重なる
蓄電デバイスの製造方法。
【請求項5】
複数の前記蓄電デバイスを互いに絶縁しつつ積層すると共に積層方向に拘束部材で拘束し、前記蓄電デバイスである被拘束デバイス同士を互いに接続したデバイススタックの製造方法であって、
複数の前記蓄電デバイスを互いに絶縁しつつ積層すると共に前記積層方向に前記拘束部材で拘束して、複数の前記被拘束デバイスを含む未接続デバイススタックを構成する拘束工程を備え、
請求項1に記載の蓄電デバイスの検査方法のうち、
前記電圧調整工程は、前記拘束工程の前に、
初充電及びその後の充放電を経た複数の前記蓄電デバイスを充電又は放電して前記第1デバイス電圧に調整する電圧調整工程であり、
前記第1測定工程、前記第2測定工程及び前記ケース-負極間短絡判定工程を、前記拘束工程後に、前記未接続デバイススタックをなす各々の前記被拘束デバイスについて行う
デバイススタックの製造方法。
【請求項6】
請求項5に記載のデバイススタックの製造方法であって、
前記未接続デバイススタックをなす各々の前記被拘束デバイスの自己放電の状態を検査するスタック内自己放電検査工程をさらに備え、
前記スタック内自己放電検査工程は、
前記第1測定工程及び前記第2測定工程を、前記スタック内自己放電検査工程内で行う
デバイススタックの製造方法。
【請求項7】
請求項6に記載のデバイススタックの製造方法であって、
前記スタック内自己放電検査工程は、
前記拘束工程の後に、前記被拘束デバイスの拘束放置前デバイス電圧を測定する拘束放置前電圧測定工程と、
前記拘束放置前デバイス電圧を測定した各々の前記被拘束デバイスを、拘束放置期間に亘り、端子開放状態で放置する拘束放置工程と、
前記拘束放置工程の後に、前記被拘束デバイスの拘束放置後デバイス電圧を測定する拘束放置後電圧測定工程と、
前記被拘束デバイスの前記拘束放置前デバイス電圧と前記拘束放置後デバイス電圧とを用いて、当該被拘束デバイスの自己放電の状態を検知する拘束自己放電検知工程と、
前記拘束工程の後で、前記拘束放置工程の前に、前記拘束放置前電圧測定工程と並行して又は相前後して行う前記第1測定工程と、
前記拘束放置工程の後で、前記拘束自己放電検知工程の前に、前記拘束放置後電圧測定工程と並行して又は相前後して行う前記第2測定工程と、を備え、
前記待機期間は前記拘束放置期間に重なる
デバイススタックの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、蓄電デバイスの検査方法、蓄電デバイスの製造方法、及び、デバイススタックの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
二次電池などの蓄電デバイスを製造するに当たり、蓄電デバイスの金属ケースと電極体の負極板との間に微小短絡が生じているか否かを検査する場合が有る(例えば、特許文献1参照)。金属ケースと負極板との間に微小短絡が生じている蓄電デバイスでは、長期の使用する間に容量低下が顕著となったりし、品質低下の原因となり得るからである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
金属ケースと負極板との間の微小短絡の有無を判定する手法としては、金属ケースと負極板との間に生じている電位差(以下、ケース-負極間電位差という)を計測する手法が考えられる。両者が短絡している場合には、金属ケースと負極板とは概ね同電位となるからである。具体的には、金属ケースと負極板に導通して金属ケース外に露出している負極端子とに、内部抵抗が十分高い(例えば1MΩ以上の内部抵抗を有する)電圧計(例えばデジタルマルチメータ)に接続して、ケース-負極間電位差を測定し、測定されたケース-負極間電位差が、しきい値以下の場合、具体的には例えば0.4V以下の場合には、金属ケースと負極板との間に微小短絡が生じていると判定していた。
【0005】
しかしながら、このような蓄電デバイスでは、金属ケースと電極体(その負極板及び正極板)とは絶縁フィルム等によって絶縁されているため、負極板の負極電位及び正極板の正極電位に対し、金属ケースの電位は定まらず、フローティング電位となる。このため、上述のようにしてケース-負極間電位差を測定した場合において、金属ケースと負極端子との間に短絡が生じていない場合、得られるケース-負極間電位差にはバラツキが生じ易く、極端に小さな値となり、しきい値以下(例えば0.4V以下)となる場合もあり得る。即ち、実際には金属ケースと負極端子との間に短絡が生じていないにも拘わらず、金属ケースと負極板との間に微小短絡が生じていると誤判定される場合があり得た。
【0006】
本発明は、かかる現状に鑑みてなされたものであって、蓄電デバイスにおいて、適切に金属ケースと負極板との間の短絡の有無を判定できる蓄電デバイスの検査方法、この検査方法を用いた蓄電デバイスの製造方法、及び、この検査方法を用いたデバイススタックの製造方法を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
(1)上記課題を解決するための本発明の一態様は、金属ケース内に、正極板の厚み方向外側に負極板を配置した電極体を絶縁フィルムで前記金属ケースと絶縁しつつ収容した蓄電デバイスの検査方法であって、前記蓄電デバイスを充電又は放電して第1デバイス電圧に調整する電圧調整工程と、 前記電圧調整工程以降の第1電位差測定時刻に、前記金属ケース外に露出し前記負極板に導通して負極電位とされている負極電位部材と前記金属ケースとの間に生じているケース-負極間電位差である第1電位差を測定する第1測定工程と、前記第1電位差測定時刻から24時間以上の待機期間を空けた後の第2電位差測定時刻に、前記ケース-負極間電位差である第2電位差を測定する第2測定工程と、前記第1電位差及び前記第2電位差の大きさと、前記第1電位差と前記第2電位差との間の変化から、前記金属ケースと前記負極板との間の短絡の有無を判定するケース-負極間短絡判定工程とを備える蓄電デバイスの検査方法である。
【0008】
前述したように、金属ケースの電位は、負極電位に対してフローティング電位となるので、ケース-負極間電位差を測定した場合、その値にはバラツキが生じ易く、極端に小さな値となる場合もある。
しかしながら、金属ケースと負極板との間に微小短絡が生じている場合には、蓄電デバイスのデバイス電圧を第1デバイス電圧に調整する電圧調整工程の完了時点や第1電位差測定時刻には、ケース-負極間電位差は、ほぼ0Vを示す。又は、或る値を示すが、時間の経過と共に、0Vに向けて徐々に低下することが判ってきた。電圧調整工程の完了時点には、或る大きさのケース-負極間電位差が生じていたとしても、微小短絡が生じているために、時間の経過と共に金属ケースの電位が負極電位(負極板の電位)に徐々に近づき、ついには負極電位に等しく(電位差0V)になると考えられる。
【0009】
これに対し、金属ケースと負極板との間に短絡が生じていない場合には、ケース-負極間電位差には、例えば、アルミニウム製ケースのLiイオン二次電池では2.8V程度など、上限値が存在しており、電圧調整工程の完了時点や第1電位差測定時刻には、ケース-負極間電位差は、概ね上限値を示す。又は、ケース-負極間電位差が上限値よりも低い或る値を示す場合でも、電圧調整工程の完了時点からの時間の経過と共に徐々に増大して、上限値付近の値に落ち着くことが判ってきた。
【0010】
そこで、この蓄電デバイスの検査方法では、蓄電デバイスについて、デバイス電圧を第1デバイス電圧に調整した後の、或る第1電位差測定時刻と、その後、24時間以上の待機期間を空けた第2電位差測定時刻に、ケース-負極間電位差である第1電位差と第2電位差を測定する。そして、第1電位差及び第2電位差の大きさと、第1電位差と第2電位差との間の変化から、金属ケースと負極板との間の短絡の有無を判定する。このため、負極電位とこの負極電位に対してフローティング電位であるケース電位との間のケース-負極間電位差のバラツキの影響を抑制して、適切に金属ケースと負極板との間の短絡の有無を判定できる。
【0011】
「蓄電デバイス」としては、例えば、リチウムイオン二次電池等の二次電池や、リチウムイオンキャパシタ等のキャパシタなどが挙げられる。
「金属ケース」は、金属からなり、電極体を収容するケースであり、直方体形状や円筒状などの形状を採用できる。また、金属ケースの材質としては、アルミニウム、ステンレスなどが挙げられる。
「電極体」としては、正極板の厚み方向外側に負極板を配置した構成の電極体であれば良く、捲回型電極体、積層型電極体を挙げることができる。
【0012】
「第1電位差及び第2電位差の大きさと、第1電位差と第2電位差との間の変化から、金属ケースと負極板との間の短絡の有無を判定する」手法としては、例えば、下記の手法が挙げられる。先ず、第1電位差と第2電位差との間の変化を調査する。即ち、第1電位差及び第2電位差のいずれもが、下限範囲に含まれている電池は、ケース-負極間が短絡していると判定する。加えて、第1電位差は上限範囲よりも小さく、かつ、第1電位差よりも第2電位差が小さい、即ち、時間の経過と共に電位差が低下している電池も、ケース-負極間が短絡していると判定するという手法が挙げられる。
【0013】
(2)蓄電デバイスの製造方法であって、(1)に記載の蓄電デバイスの検査方法のうち、前記電圧調整工程は、初充電及びその後の充放電を経た前記蓄電デバイスを充電又は放電して前記第1デバイス電圧に調整する電圧調整工程であり、前記第1測定工程、前記第2測定工程及び前記ケース-負極間短絡判定工程を、個別の前記蓄電デバイスについて行う蓄電デバイスの製造方法とすると良い。
【0014】
この蓄電デバイスの製造方法では、個々の蓄電デバイスを製造するに当たり、前述の蓄電デバイスの検査方法のうち、電圧調整工程では、初充電及びその後の充放電を経た蓄電デバイスを充電又は放電して第1デバイス電圧に調整する。その上で、前述の第1測定工程、第2測定工程及びケース-負極間短絡判定工程を行うので、適切に金属ケースと負極板との間の短絡の有無を判定した蓄電デバイスを製造することができる。
【0015】
(3)さらに(2)に記載の蓄電デバイスの製造方法であって、前記電圧調整工程の後に、前記蓄電デバイスの自己放電の状態を検査する自己放電検査工程をさらに備え、前記自己放電検査工程は、前記第1測定工程及び前記第2測定工程を、前記自己放電検査工程内で並行して行う蓄電デバイスの製造方法とすると良い。
【0016】
この蓄電デバイスの製造方法では、電圧調整工程の後に行う自己放電検査工程内で、前述の蓄電デバイスの検査方法の第1測定工程及び第2測定工程をも行う。このため、自己放電検査工程とは別に第1測定工程及び第2測定工程を行う場合に比して、蓄電デバイスの製造に掛かる期間を短縮することができる。
【0017】
(4)さらに(3)に記載の蓄電デバイスの製造方法であって、前記自己放電検査工程は、前記電圧調整工程の後に、前記蓄電デバイスの放置前デバイス電圧を測定する放置前電圧測定工程と、前記放置前デバイス電圧を測定した前記蓄電デバイスを、放置期間に亘り、端子開放状態で放置する放置工程と、前記放置工程の後に、前記蓄電デバイスの放置後デバイス電圧を測定する放置後電圧測定工程と、前記蓄電デバイスの前記放置前デバイス電圧と前記放置後デバイス電圧とを用いて、当該蓄電デバイスの自己放電の状態を検知する自己放電検知工程と、前記電圧調整工程の後で、前記放置工程の前に、前記放置前電圧測定工程と並行して又は相前後して行う前記第1測定工程と、前記放置工程の後で、前記自己放電検知工程の前に、前記放置後電圧測定工程と並行して又は相前後して行う前記第2測定工程と、を備え、前記待機期間は前記放置期間に重なる蓄電デバイスの製造方法とすると良い。
【0018】
この蓄電デバイスの製造方法では、自己放電検査工程は、放置前電圧測定工程、放置工程、放置後電圧測定工程、自己放電検知工程のほか、第1測定工程及び第2測定工程を備えている。しかも、第1測定工程は、放置前電圧測定工程と並行して又は相前後して行う。また、第2測定工程は、放置後電圧測定工程と並行して又は相前後して行う。そして、待機期間は放置期間に重なっている。このため、自己放電検査工程により、蓄電デバイスの自己放電の状態を検査できるほか、これに並行して得た第1電位差及び第2電位差を用いて、確実に金属ケースと負極板との間の短絡の有無をも判定した蓄電デバイスを製造できる。
【0019】
なお、待機期間が放置期間に重なるとは、待機期間と放置期間とが時間軸において少なくとも一部で重なることをいう。
【0020】
(5)或いは、複数の前記蓄電デバイスを互いに絶縁しつつ積層すると共に積層方向に拘束部材で拘束し、前記蓄電デバイスである被拘束デバイス同士を互いに接続したデバイススタックの製造方法であって、複数の前記蓄電デバイスを互いに絶縁しつつ積層すると共に前記積層方向に前記拘束部材で拘束して、複数の前記被拘束デバイスを含む未接続デバイススタックを構成する拘束工程を備え、(1)に記載の蓄電デバイスの検査方法のうち、前記電圧調整工程は、前記拘束工程の前に、初充電及びその後の充放電を経た複数の前記蓄電デバイスを充電又は放電して前記第1デバイス電圧に調整する電圧調整工程であり、前記第1測定工程、前記第2測定工程及び前記ケース-負極間短絡判定工程を、前記拘束工程後に、前記未接続デバイススタックをなす各々の前記被拘束デバイスについて行うデバイススタックの製造方法とすると良い。
【0021】
このデバイススタックの製造方法では、デバイススタックを製造するに当たり、未接続デバイススタックを構成する拘束工程を行うほか、未接続デバイススタックをなし、被拘束の場合に比して拘束によって金属ケースと負極板との間の短絡が発生しやすい各々の被拘束デバイスについて、前述の蓄電デバイスの検査方法の各工程を行うので、各々の被拘束デバイスについて、適切に金属ケースと負極板との間の短絡の有無を判定したデバイススタックを製造することができる。
【0022】
ここで「デバイススタック」は、被拘束デバイスとなる蓄電デバイスを互いに絶縁しつつ積層すると共に積層方向に拘束部材で拘束し、被拘束デバイス同士を(直列回路や並列回路などの回路を構成するように)互いに接続した積層拘束体である。
被拘束デバイス(蓄電デバイス)同士の接続手法は、蓄電デバイスの正極端子及び負極端子の形状や構造に応じて適宜選択すれば良い。例えば、正極端子や負極端子の端子部にナットなどを用いてバスバを締結したり、端子部とバスバをレーザ溶接して接続することができる。
【0023】
電圧調整工程で第1デバイス電圧に調整した後の複数の蓄電デバイスを積層し拘束して、複数の被拘束デバイスを含む未接続デバイススタックを構成するに当たっては、蓄電デバイスを第1デバイス電圧に調整した後、速やかに拘束してデバイス拘束体としても良い。また、適宜の期間、無拘束下或いはデバイススタックでの拘束よりも弱い弱拘束下で各蓄電デバイスを放置し、この状態で短絡していると判定した蓄電デバイスを除去してから、未接続デバイススタックを構成するようにしても良い。
【0024】
(6)さらに(5)に記載のデバイススタックの製造方法であって、前記未接続デバイススタックをなす各々の前記被拘束デバイスの自己放電の状態を検査するスタック内自己放電検査工程をさらに備え、前記スタック内自己放電検査工程は、前記第1測定工程及び前記第2測定工程を、前記スタック内自己放電検査工程内で行うデバイススタックの製造方法とすると良い。
【0025】
このデバイススタックの製造方法では、スタック内自己放電検査工程内で、前述の蓄電デバイスの検査方法の第1測定工程及び第2測定工程をも行う。このため、スタック内自己放電検査工程とは別に第1測定工程及び第2測定工程を行う場合に比して、デバイススタックの製造に掛かる期間を短縮することができる。
【0026】
(7)さらに(6)に記載のデバイススタックの製造方法であって、前記スタック内自己放電検査工程は、前記拘束工程の後に、前記被拘束デバイスの拘束放置前デバイス電圧を測定する拘束放置前電圧測定工程と、前記拘束放置前デバイス電圧を測定した各々の前記被拘束デバイスを、拘束放置期間に亘り、端子開放状態で放置する拘束放置工程と、前記拘束放置工程の後に、前記被拘束デバイスの拘束放置後デバイス電圧を測定する拘束放置後電圧測定工程と、前記被拘束デバイスの前記拘束放置前デバイス電圧と前記拘束放置後デバイス電圧とを用いて、当該被拘束デバイスの自己放電の状態を検知する拘束自己放電検知工程と、前記拘束工程の後で、前記拘束放置工程の前に、前記拘束放置前電圧測定工程と並行して又は相前後して行う前記第1測定工程と、前記拘束放置工程の後で、前記拘束自己放電検知工程の前に、前記拘束放置後電圧測定工程と並行して又は相前後して行う前記第2測定工程と、を備え、前記待機期間は前記拘束放置期間に重なるデバイススタックの製造方法とすると良い。
【0027】
このデバイススタックの製造方法では、スタック内自己放電検査工程は、拘束放置前電圧測定工程、拘束放置工程、拘束放置後電圧測定工程、拘束自己放電検知工程のほか、第1測定工程及び第2測定工程を備えている。しかも、第1測定工程は、拘束放置前電圧測定工程と並行して又は相前後して行う。また、第2測定工程は、拘束放置後電圧測定工程と並行して又は相前後して行う。そして、待機期間は拘束放置期間に重なっている。このため、スタック内自己放電検査工程により、各々の被拘束デバイスの自己放電の状態を検査できるほか、これに並行して得た第1電位差及び第2電位差を用いて、各々の被拘束デバイスについて、確実に金属ケースと負極板との間の短絡の有無をも判定したデバイススタックを製造できる。
【0028】
なお、拘束待機期間が拘束放置期間に重なるとは、拘束待機期間と拘束放置期間とが時間軸において少なくとも一部で重なることをいう。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【
図1】実施形態1,2に係る電池の電池幅方向断面図である。
【
図2】実施形態1,2に係る電池の電池厚み方向断面図である。
【
図3】実施形態1,2に係り、電池或いは被拘束電池における、ケースと負極板との間の電位差の変化のパターンを説明するグラフである。
【
図4】実施形態1,2に係り、電池の製造工程を示すフローチャートである。
【
図5】実施形態2に係る電池スタックの説明図である。
【
図6】実施形態2に係る未接続電池スタックの説明図である。
【
図7】実施形態2に係る電池スタックの製造工程を示すフローチャートである。
【
図8】実施形態2に係る電池スタックの製造工程のうち、拘束短絡検査工程の内容を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0030】
(実施形態1)
以下、本発明の第1の実施形態を、図面を参照しつつ説明する。
図1,
図2に本実施形態1,2に係る電池(蓄電デバイス)10の電池幅方向BH及び電池厚み方向CHの縦断面図を示す。この電池10は、例えば、ハイブリッドカーやプラグインハイブリッドカー、電気自動車等の車両やドローン、各種機器に搭載される角型で密閉型のリチウムイオン二次電池である。
【0031】
電池10は、ケース11と、ケース11の内部に収容された電極体30と、ケース11に支持され、ケース11の内部で電極体30に接続すると共に、ケース11の外部(
図1において上方)に突出する正極端子21及び負極端子25等から構成されている。
【0032】
このうちケース11は、金属(本実施形態1ではアルミニウム)からなる直方体箱状である。このケース11は、電池高さ方向AHの上方AHUに開口12Pを有する有底角筒状のケース本体12と、開口12Pを封口する矩形板状の蓋体15とを有する。なお、電池高さ方向AH、電池幅方向BH、及び 電池厚み方向CHを、
図1,
図2に示す方向として説明する。
【0033】
蓋体15には、この蓋体15を貫通するアルミニウムからなる正極端子21が、正極絶縁部材24によって蓋体15と絶縁された状態で固設され、外部に露出する正極端子部21Tをなすと共に、電極体30の正極集電部35(後述する)に接続部21Cで接続している。また蓋体15には、蓋体15を貫通する銅からなる負極端子25が、負極絶縁部材28によって蓋体15と絶縁された状態で固設され、外部に露出する負極端子部25Tをなすと共に、電極体30の負極集電部36(後述する)に接続部25Cで接続している。
【0034】
ケース11内には、電極体30と共に電解液40が収容されており、その一部は電極体30内に含浸され、一部はケース11の底部に溜まっている。また電極体30は、電池高さ方向AHの上方AHUが開口した有底角袋状の絶縁フィルム50に覆われており、電極体30の次述する負極板32とケース11とを絶縁している。
【0035】
電極体30は、概略、扁平な直方体状であり、
図1,
図2に示すように、帯状の正極板31と、帯状の負極板32とを、これらの間に介在する樹脂製多孔質膜からなる2枚の帯状のセパレータ33と共に軸線30Xの周りに捲回し、押し潰して扁平化した扁平捲回型の電極体である。但し、正極板31よりも負極板32及びセパレータ33が長いので、負極板32及びセパレータ33共に捲回された正極板31の正極板厚み方向THの外側THO、即ち外周側には、負極板32が配置されており、さらに正極板31及び負極板32の外周側にはセパレータ33が配置されている。このため、電極体30とケース11との短絡にいては、負極板32とケース11との短絡を考慮すれば良い。
【0036】
図1に示すように、電極体30のうち、軸線30Xに沿う電池幅方向BHの一方側BH1(
図1において右方)には、正極板31の正極集電箔311が渦巻き状に巻かれつつ露出した正極集電部35が、他方側BH2(
図1において左方)には、負極板32の負極集電箔321が渦巻き状に巻かれつつ露出した負極集電部36が設けられている。電極体30のうち、正極集電部35と負極集電部36の間に挟まれた、電池幅方向BHの中央の部位が、本体部34である。
【0037】
本実施形態では、電極体30の正極集電部35は、接続部35Cにおいて、電池厚み方向CHに互いに密着して、正極端子21の接続部21Cにレーザ溶接され、正極端子21により、電池10外の回路部材と電気的に接続可能とされている。また、電極体30の負極集電部36は、接続部36Cにおいて、電池厚み方向CHに互いに密着して、負極端子25の接続部25Cにレーザ溶接され、負極端子25により、電池10外の回路部材と電気的に接続可能とされている。これにより電極体30は、正極端子21及び負極端子25を介して、蓋体15(ケース11)に支持されている。
【0038】
前述したように、電極体30の正極板31及び負極板32は、セパレータ33のほか絶縁フィルム50の介在によって、アルミニウムからなるケース11とは絶縁されている。しかしながら、例えば
図2に示すように、ケース本体12の開口12Pに蓋体15をレーザ溶接する際に生じたスパッタなどの異物FMが、ケース11内に進入し、ケース11と電極体30の本体部34との間に挟まる場合がある。このような場合、異物FMが、絶縁フィルム50及びセパレータ33を貫通して、ケース11に接触するほか、(正極板31よりも正極板厚み方向外側THOに位置する)負極板32にも接触して、両者を短絡(微小短絡)する場合がある。なお、容易に理解できるように、電池10(ケース11)を電池厚み方向CH(
図2において左右方向)に圧縮した場合に、異物FMを介して、ケース11と電極体30の負極板32とが短絡しやすい。
【0039】
そして、ケース11と電極体30の負極板32とが異物FMを介して短絡すると、本来、負極板32とは絶縁されており、負極板32の負極電位PNに対して、フローティング電位であったはずのケース11のケース電位PCが、負極電位PNに影響される。多くの場合には、ケース電位PCが負極電位PNに等しくなり、(負極電位PNを基準とした)ケース電位PCと負極電位PNとの電位差EF(ケース-負極間電位差)が0となる(EF=PC-PN=0)。このようにケース11と負極板32とが短絡していると、前述の不具合が生じるため、このような不良電池10Nを排除する必要がある。
【0040】
そこで、多数の電池10について、後述する初充電工程S1、高温エージング工程S2、容量検査工程S3、及び、電圧調整工程S4を行って、電池電圧VBを第1電圧VB1(VB1=3.750V)とする(
図4参照)。さらに、適宜のタイミングで、ケース11と負極端子25とに後述するデジタルマルチメータを接続して、ケース電位PCと負極電位PNの間の電位差EFを測定し、電位差EFの推移を調査した。但し前述したように、本来、電位差EF(ケース-負極間電位差)は、フローティング電位であるので、電位差EFの測定値にはバラツキを含む。さらに、電位差EFの推移調査を終えた各電池10について、ケース11と負極板32とが短絡しているか否かを、電池10を分解して確認した。これらから、電圧調整工程S4を完了した後の電池10において、ケース電位PCと負極電位PNの間の電位差EFの大きさ及び変化から、4通りのパターンPT1~PT4が存在すること、及び、これらのパターンPT1~PT4とケース-負極間の短絡の有無との関係が見出された。
【0041】
これらの関係を、
図3のグラフを参照して説明する。
図3のグラフのうち、横軸は電圧調整工程S4で電圧調整を完了した調整完了時Tc(後述する)からの経過時間KTであり、縦軸は電位差EF(或いは後述する拘束電位差EP)である。まず、第1のパターンPT1は、ケース-負極間が短絡していない電池10の多くが取るパターンであり、太実線で示すように、経過時間KTに拘わらず電位差EFが上限範囲内の値となるパターンである。なお、本実施形態の電池10では、上限範囲は2.1~2.9Vである。電位差EFの上限範囲が上述の値の範囲となる理由は明確ではないが、電解液40に対するケース11をなす金属(アルミニウム)の浸漬電位が概ね2.8Vであることに関連していると考えられ、
【0042】
第2のパターンPT2は、ケース-負極間が短絡していない電池10のうち、第1のパターンPT1の電池以外の電池が取るパターンであり、実線で囲む矢印で示すように、経過時間KTの早期には、電位差EFが上述の上限範囲の下限値を下回る大きさ(2.0V以下)であったが、経過時間KTの経過と共に、電位差EFが増加するパターンである。この第2のパターンPT2を示す電池10の電位差EFは、経過時間KTが十分経過した後には、上述の上限範囲内の値(本実施形態1では、2.1~2.9V)となる。
【0043】
第3のパターンPT3は、ケース-負極間が短絡している電池10の多くが取るパターンであり、太破線で示すように、経過時間KTに拘わらず電位差EFが下限範囲内の値となるパターンである。なお、本実施形態の電池10では、下限範囲は0.4V以下(0~0.4V)である。この第3のパターンPT3は、電位差EFがほぼ0Vとなるパターンである。電位差EFがほぼ0Vとなる理由は、ケース-負極間の短絡により、ケース電位PCが負極電位PNにほぼ等しくされたためと考えられる。
【0044】
第4のパターンPT4は、ケース-負極間が短絡している電池10のうち、第3のパターンの電池以外の電池が取るパターンであり、破線で囲む矢印で示すように、経過時間KTの早期には、電位差EFが前述の上限範囲よりも小さく、しかも、経過時間KTの経過と共に、電位差EFが減少するパターンである。なお、本実施形態の電池10では、経過時間KTの早期の電位差EFが2.1V未満の大きさであり、かつ、経過時間KTの経過と共に、電位差EFが減少するパターンである。電位差EFが経過時間KTの経過と共に減少する理由は、ケース-負極間の短絡により、ケース電位PCが負極電位PNに徐々に近づくためであると考えられる。
【0045】
そこでこの知見を利用して、電池10の製造において、以下のようにして、ケース-負極間の短絡の有無を検知する。なお、電池10の製造にあたっては、通常、電池10の自己放電の状態、具体的には、正極板31と負極板32との間の短絡の有無を検知する。そこで、本実施形態1では、以下のようにして電池10を製造する。
【0046】
電池10の製造について、
図4を参照して説明する。先ず、未充電の電池10を製造する。直方体状のケース11を有する密閉型の電池10の製造については、公知であるので説明を省略する。初充電工程S1(
図4参照)では、まず未充電の電池10に対し常温下でSOC60~100%とするCCCV充電による初充電を行う。本実施形態では、例えば、25℃の環境下で、定電流7C、カット電圧3.75V(SOC60%相当)、カット電流0.3CのCCCV充電を行う。次いで、高温エージング工程S2では、初充電した各電池10を開放状態で、50~80℃の環境下で10~200時間に亘り放置する高温エージング(本実施形態では、例えば70℃の環境下に18時間)を行う。電池10を冷却した後、更に、容量検査工程S3では、電池10をSOC100%まで充電し、その後、SOC0%まで電池10を放電させて電池10の容量(上述の手法による場合は放電容量)を測定する。
【0047】
ついで、電圧調整工程S4で、各電池10の電池電圧VBを常温下でSOC30~100%の範囲内の第1電圧VB1まで充電する。本実施形態では、例えば、25℃の環境下で、初充電工程S1と同じ、定電流7C、カット電圧3.75V(SOC60%相当)、カット電流0.3CのCCCV充電を行う。即ち、各電池10の電池電圧VBを、一旦、同じ第1電圧VB1(本実施形態では、VB1=3.75V)に揃える。なお、電圧調整工程S4により電池電圧VBを第1電圧VB1まで充電完了した調整完了時Tcから、経過時間KTを計時する。
【0048】
続いて個別短絡検査工程S5では、電圧調整工程S4を行った後の個々の電池10について短絡検査を行う。具体的にはまず、放置前電圧測定工程S51で、電池10の電池電圧VBである放置前第2電圧VB2aを測定する。
【0049】
続く第1電位差測定工程S52では、ケース11と負極端子部25Tとに、1MΩ以上の内部抵抗を有するデジタルマルチメータを接続して、ケース-負極間電位差である第1電位差EF1を測定する。この測定時刻を第1時刻TF1とする。
【0050】
なお、本実施形態1では、第1電位差測定工程S52を放置前電圧測定工程S51に引き続いて行った。しかし、
図4に破線で示すように、上述とは逆に、第1電位差測定工程S52を放置前電圧測定工程S51に先立って行うようにしても良い。また、
図4に一点鎖線で示すように、第1電位差測定工程S52を放置前電圧測定工程S51と並行して行うようにしても良い。
【0051】
次いで、個別放置工程S53において、正極端子21及び負極端子25を開放状態とした電池10を、無拘束或いは僅かに拘束した状態として、25℃の環境下で個別放置期間IH(本実施形態1では、IH≧5.0日(IH≧120時間))に亘り放置する。
その後、放置後電圧測定工程S54で、放置後の電池10の電池電圧VBである放置後第2電圧VB2bを測定する。
【0052】
さらに続く第2電位差測定工程S55では、ケース-負極間電位差である第2電位差EF2を、前述の第1電位差EF1と同様にして測定する。この測定時刻を第2時刻TF2とすると、第1時刻TF1から第2電位差EF2を測定する第2時刻TF2までの個別待機期間IWTは、個別放置期間IHに重なる。このため本実施形態1では、個別放置期間IHと同様、個別待機期間IWTも、IWT≧5.0日(IWT≧120時間)となる。
【0053】
なお、本実施形態1では、第2電位差測定工程S55を放置後電圧測定工程S54に引き続いて行った。しかし、
図4において破線で示すように、上述とは逆に、第2電位差測定工程S55を放置後電圧測定工程S54に先立って行うようにしても良い。また、
図4において一点鎖線で示すように、第2電位差測定工程S55を放置後電圧測定工程S54と並行して行うようにしても良い。
【0054】
そして、個別第1判定工程S56では、放置前第2電圧VB2a及び放置後第2電圧VB2bを用いて、電極体30の正極板31と負極板32との間の短絡の有無を判定する。具体的には、放置前第2電圧VB2a及び放置後第2電圧VB2bを用い、これらの差を個別放置期間IHで除して得た低下率((VB2a-VB2b)/IH)を、別途得ておいたしきい低下率と比較して、正極板-負極間の短絡の有無を判定する。そして、個別第1判定工程S56でNo、即ち、低下率がしきい低下率よりも小さい、つまり、電池電圧VBの低下が緩やかな場合には、電池10には短絡が生じていないとし、個別第2判定工程S57に進む。逆に、個別第1判定工程S56でYes、即ち、低下率がしきい低下率よりも大きい場合、つまり、電池電圧VBの低下が急な場合には、供試された電池10の正負極間は短絡していると判定し、電池排出工程S6に移行する。
【0055】
続く個別第2判定工程S57では、第1電位差EF1と第2電位差EF2の大きさと、これらの間の変化ΔF12(=EF2-EF1)から、ケース11と負極板32との間の短絡の有無を判定する 具体的には、前述の4つのパターンPT1~PT4の知見(
図3参照)を用いて、供試された電池10のケース-負極間が短絡しているか否かを判定する。さらに具体的には、個別第2判定工程S57では、前述の第3,第4のパターンPT3,PT4に該当する電池10を選別する。即ち、第1電位差EF1及び第2電位差EF2のいずれもが、下限範囲(本実施形態1では0.4V以下)に含まれている(EF1<0.4V,EF2<0.4V)電池10、或いは、第1電位差EF1が上限範囲(本実施形態1では2.1~2.9V)よりも小さく、且つ、第1電位差EF1よりも第2電位差EF2が小さい(EF1>EF2)電池10は、ケース-負極間が短絡している(Yes)と判定し、電池排出工程S6に移行させる。逆にこれ以外の場合には、供試された電池10には短絡が生じていない(No)と判定する。かくして、個別短絡検査工程S5を終了し、電池10を完成する。
【0056】
なお、本実施形態1では、個別第2判定工程S57を個別第1判定工程S56に引き続いて行った。しかし、
図4において破線で示すように、上述とは逆に、個別第2判定工程S57を個別第1判定工程S56に先立って行うようにしても良い。
【0057】
電池排出工程S6では、正負極間又はケース-負極間が短絡していると判断された不良電池10Nを製造工程から排出する。
【0058】
本実施形態1の電池10の検査方法及び製造方法では、個々の電池10について、負極電位PNとこの負極電位PNに対してフローティング電位であるケース電位PCとの間の電位差EFのバラツキの影響を抑制して、適切にケース11と負極板32との間の短絡の有無を判定できる。そして、適切にケース-負極間の短絡の有無を判定した電池10を製造することができる。具体的には、供試された電池10のうち、ケース-負極間が短絡している不良電池10Nを製造工程から排出するので、短絡していない電池10を適切に製造することができる。
【0059】
しかも、上述の電池10の製造方法では、電圧調整工程S4の後に行う個別短絡検査工程S5内で、電池10の検査方法である第1電位差測定工程S52及び第2電位差測定工程S55をも行う。このため、個別短絡検査工程S5とは別に第1電位差測定工程及び第2電位差測定工程を行う場合に比して、電池10の製造に掛かる期間を短縮することができる。
【0060】
また、本実施形態1の電池10の製造方法では、個別短絡検査工程S5は、放置前電圧測定工程S51、個別放置工程S53、放置後電圧測定工程S54、個別第1判定工程S56のほか、第1電位差測定工程S52及び第2電位差測定工程S55を備えている。しかも、第1電位差測定工程S52は、放置前電圧測定工程S51と並行して又は相前後して行う。また、第2電位差測定工程S55は、放置後電圧測定工程S54と並行して又は相前後して行う。そして、個別待機期間IWTは個別放置期間IHに重なっている。このため、個別短絡検査工程S5により、電池10の自己放電の状態、具体的には正負極間の短絡の有無を検査できるほか、これに並行して得た第1電位差EF1及び第2電位差EF2を用いて、確実にケース11と負極板32との間の短絡の有無をも判定した電池10を製造できる。
【0061】
(実施形態2)
以下、実施形態2に係る電池スタック1を、図面を参照しつつ説明する。
図5に本実施形態2に係る電池スタック(デバイススタック)1を示す。電池スタック1は、実施形態1の直方体状の電池(蓄電デバイス)10(
図1,
図2参照)を複数(例えば、本実施形態2では28個)積層し、拘束部材5で定寸に拘束してなる。この電池スタック1は、スペーサ2を介して複数の電池10を、互いに電池厚み方向CH(
図2において左右方向)に一致する積層方向SHに積層し、これらを拘束部材5で積層方向SHに押圧して拘束している。具体的には、複数の被拘束電池10P(電池10)とスペーサ2とを交互に積層し、これらを一対の拘束板51で挟み、積層方向SHに延び拘束板51の間に架け渡した拘束ボルト52、これに螺着したナット53及びワッシャ54を用いて積層方向SHに各被拘束電池10Pを押圧して拘束している。各被拘束電池10Pの正極端子21及び負極端子25)同士は、バスバ3を介して互いに接続されている。なお、本実施形態2の電池スタック1では、
図5に示すように、各被拘束電池10Pを交互に反転させて配置し、正極端子21と負極端子25とが積層方向SHに一列に且つ交互に並ぶようにしてあり、バスバ3の接続によって、各被拘束電池10Pは直列に接続されている。電池スタック1は、例えば、ハイブリッドカーやプラグインハイブリッドカー、電気自動車等の車両などに搭載されて使用される。
【0062】
なお前述の実施形態1では、初充電工程S1~電圧調整工程S4を行った個別の電池10における、負極電位PNとケース電位PCとの電位差EF(ケース-負極間電位差)と、ケース-負極間の短絡の有無との関係について、4つのパターンPT1~PT4に分けて説明するとした。また、これを利用して、個別第2判定工程S57では、供試された電池10のケース-負極間が短絡しているか否かを判定した。
さらに本実施形態2の電池スタック1を構成する複数の被拘束電池10Pにおける、負極電位PNとケース電位PCとの拘束電位差EP(ケース-負極間電位差)と、ケース-負極間の短絡の有無との関係についても、同様に、4つのパターンPT1~PT4に分けて説明できることが判ってきた(
図3参照)。
そこで下記する本実施形態2の製造方法では、実施形態1と同様にして、供試された個別の電池10のケース-負極間が短絡しているか否かを判定する。これに加え、電池スタック1の複数の被拘束電池10Pについても、同様の手法でケース-負極間が短絡しているか否かを判定する。
【0063】
電池スタック1の製造について、
図6~
図8を参照して、以下に説明する。公知の手法で未充電の電池10を製造しておく(
図7参照)。そして実施形態1と同様にして、初充電工程S1、高温エージング工程S2、及び、容量検査工程S3を行い、電圧調整工程S4で、各電池10を充電して、電池電圧VBを、一旦、第1電圧VB1に、具体的には、VB1=3.75Vに揃える。さらに、実施形態1と同様、個別短絡検査工程S5(
図4参照)を行い、個別第1判定工程S56で正負極間の短絡の有無を判定し、個別第2判定工程S57でケース-負極間の短絡の有無を判定する。これらの判定工程S56,S57で短絡と判定された不良電池10Nは、電池排出工程S6で製造工程から排出する。その一方、判定工程S56,S57で短絡していないと判定された電池10を得る。
【0064】
続く拘束工程S27(
図7参照)では、上述の個別短絡検査工程S5(個別第1判定工程S56及び個別第2判定工程S57)で短絡していないと判断された各電池10のほか、スペーサ2及び拘束部材5を用いて、公知の手法により、未接続電池スタック1M(
図6参照)を形成する。この未接続電池スタック1Mでは、各電池10は、積層方向SH(図中左右方向)に押圧され拘束された被拘束電池10Pとなっている。このため、被拘束電池10Pの電極体30では、正極板31及び負極板32がセパレータ33を介して積層方向SHに一致する厚み方向に圧縮される。但し、電池スタック1(
図5参照)と異なり、バスバ3は用いられておらず、各被拘束電池10Pの正極端子21及び負極端子25は開回路状態となっている。この未接続電池スタック1Mの状態で、拘束下の各被拘束電池10Pについて、正負極間の短絡の有無、及び、ケース-負極間の短絡の有無について検査を行う。この拘束工程S27以降は、単一の未接続電池スタック1M(或いは電池スタック1)に含まれる複数(例えば、本実施形態では28個)の被拘束電池10Pを一群として扱う。
【0065】
本実施形態2では、拘束工程S27に続いて、拘束短絡検査工程S28(
図8参照)において、未接続電池スタック1Mの状態で、拘束下(圧縮下)の各被拘束電池10Pについて2種類の短絡検査を行って短絡発生の有無を検知する。
【0066】
まず拘束短絡検査工程S28のうち放置前電圧測定工程S281(
図8参照)では、未接続電池スタック1Mをなす各々の被拘束電池10Pについて、被拘束電池10Pの電池電圧VBである放置前第3電圧VB3aをそれぞれ測定する。
【0067】
続く第1電位差測定工程S282では、第1電位差EF1と同様にして、ケース-負極間電位差である拘束第1電位差EP1を測定する。この測定時刻を拘束第1時刻TP1とする。
なお、本実施形態2では、第1電位差測定工程S282を放置前電圧測定工程S281に引き続いて行った。しかし、
図8に破線で示すように、上述とは逆に、第1電位差測定工程S282を放置前電圧測定工程S281に先立って行うようにしても良い。また、
図8に一点鎖線で示すように、第1電位差測定工程S282を放置前電圧測定工程S281と並行して行うようにしても良い。
【0068】
次いで、拘束放置工程S283において、未接続電池スタック1Mの各被拘束電池10Pを、開回路状態としつつ、25℃の環境下で拘束放置期間PH(本実施形態2では、PH≧5.0日(≧120時間))に亘り放置する。その後、放置後電圧測定工程S284で、放置後の被拘束電池10Pの電池電圧VBである放置後第3電圧VB3bをそれぞれ測定する。
【0069】
さらに続く第2電位差測定工程S285でも、拘束第1電位差EP1と同様にして、ケース-負極間電位差である拘束第2電位差EP2を測定する。この測定時刻を拘束第2時刻TP2とすると、拘束第1時刻TP1から拘束第2電位差EP2を測定する拘束第2時刻TP2までの拘束待機期間PWTは、拘束放置期間PHに重なる。このため本実施形態2では、拘束放置期間PHと同様、拘束待機期間PWTは、PWT≧5.0日(PWT≧120時間)となる。
【0070】
なお、本実施形態2では、第2電位差測定工程S285を放置後電圧測定工程S284に引き続いて行った。しかし、
図8において破線で示すように、上述とは逆に、第2電位差測定工程S285を放置後電圧測定工程S284に先立って行うようにしても良い。また、
図8において一点鎖線で示すように、第2電位差測定工程S285を放置後電圧測定工程S284と並行して行うようにしても良い。
【0071】
そして、拘束第1判定工程S286では、放置前第3電圧VB3a及び放置後第3電圧VB3bを用いて、被拘束電池10Pの電極体30の正負極間の短絡の有無を判定する。具体的には、放置前第3電圧VB3aと放置後第3電圧VB3bとの差を拘束放置期間PHで除して得た低下率((VB3a-VB3b)/PH)を、しきい低下率と比較して、正極板-負極間の短絡の有無を判定する。
【0072】
そして、拘束第1判定工程S286でNo、即ち、低下率がしきい低下率よりも小さい場合、つまり、電池電圧VBの低下が緩やかな場合には、供試された被拘束電池10Pの正負極間に短絡は生じていないとする。一方、拘束第1判定工程S286でYes、即ち、低下率がしきい低下率よりも大きい場合には、供試された被拘束電池10Pは正負極間が短絡していると判定する。なお、拘束第1判定工程S286では、電池スタック1に含まれる各々の被拘束電池10Pについて、上述の正負極間の短絡の有無を判定する。但し、各被拘束電池10Pは未接続電池スタック1Mとして拘束されているので、判定結果に拘わらず、いずれの被拘束電池10Pも拘束第2判定工程S287に進む。
【0073】
拘束第2判定工程S287では、拘束第1電位差EP1と拘束第2電位差EP2の大きさと、これらの間の変化ΔP12(=EP2-EP1)から、供試された被拘束電池10Pのケース11と負極板32との間の短絡の有無を判定する。具体的には、前述の知見(
図3参照)を用いて、供試された被拘束電池10Pのケース-負極間が短絡しているか否かを判定する。さらに具体的には、前述の第3,第4のパターンPT3,PT4に該当する電池10を選別する。即ち、拘束第1電位差EP1及び拘束第2電位差EP2のいずれもが、下限範囲(本実施形態2でも0.4V以下)に含まれている(EP1<0.4V,EP2<0.4V)被拘束電池10P、或いは、拘束第1電位差EP1が上限範囲(本実施形態2でも2.1~2.9V)よりも小さく、且つ、拘束第1電位差EP1よりも拘束第2電位差EP2が小さい(EP1>EP2)被拘束電池10Pを、ケース-負極間が短絡している(Yes)と判定し、除去工程S2Aに移行する。逆にこれ以外の場合には、供試された被拘束電池10Pには短絡が生じていない(No)と判定する。
【0074】
そこで、未接続電池スタック1Mを構成する複数の被拘束電池10Pのうち、少なくとも1つの被拘束電池10Pのケース-負極間が短絡している(Yes)と判定された場合には、当該被拘束電池10Pの属する未接続電池スタック1M毎に除去工程S2Aに移行させる。併せて、拘束第1判定工程S286で、少なくとも1つの被拘束電池10Pについて、正負極間が短絡している(S286でYes)と判定された未接続電池スタック1Mについても、拘束第2判定工程S287を経由して、除去工程S2Aに移行させる。要するに、正負極間が短絡している(S286でYes)またはケース-負極間が短絡している(S287でYes)被拘束電池10P(不良電池10N)を含む未接続電池スタック1Mは、除去工程S2Aに移行させる。
一方、未接続電池スタック1Mに含まれるすべての被拘束電池10Pが、正負極間で短絡しておらず(S286でNo)で、かつ、ケース-負極間が短絡していない(S287でYes)場合には、未接続電池スタック1M毎に接続工程S29に進む。
【0075】
なお、本実施形態2では、拘束第2判定工程S287を拘束第1判定工程S286に引き続いて行った。しかし、
図8において破線で示すように、上述とは逆に、拘束第2判定工程S287を拘束第1判定工程S286に先立って行うようにしても良い。
【0076】
接続工程S29では、未接続電池スタック1M(
図6参照)をなす一群の被拘束電池10Pの正極端子21及び負極端子25にバスバ3を接続し、被拘束電池10Pを相互に接続して、電池スタック1(
図5参照)を完成させる。
【0077】
かくして、本実施形態2の製造方法では、電池スタック1を製造するに当たり、未接続電池スタック1Mを構成する拘束工程S27を行うほか、未接続電池スタック1Mをなし、被拘束の場合に比して拘束によってケース11と負極板32との間の短絡が発生しやすい各々の被拘束電池10Pについて、第1電位差測定工程S282及び第2電位差測定工程S285を行うので、各々の被拘束電池10Pについて、適切にケース11と負極板32との間の短絡の有無を判定した電池スタック1を製造できる。
さらに本実施形態2の製造方法では、拘束短絡検査工程S28内で、第1電位差測定工程S282及び第2電位差測定工程S285をも行う。このため、拘束短絡検査工程S28とは別に第1電位差測定工程S282及び第2電位差測定工程S285を行う場合に比して、電池スタック1の製造に掛かる期間を短縮することができる。
【0078】
本実施形態2の電池スタック1の製造方法では、拘束短絡検査工程S28は、放置前電圧測定工程S281、拘束放置工程S283、放置後電圧測定工程S284、拘束第1判定工程S286のほか、第1電位差測定工程S282及び第2電位差測定工程S285を備えている。しかも、第1電位差測定工程S282は、放置前電圧測定工程S281と並行して又は相前後して行う。また、第2電位差測定工程S285は、放置後電圧測定工程S284と並行して又は相前後して行う。そして、拘束待機期間PWTは拘束放置期間PHに重なっている。このため、拘束短絡検査工程S28により、各々の被拘束電池10Pの正負極間の短絡などの自己放電の状態を検査できるほか、これに並行して得た拘束第1電位差EP1及び拘束第2電位差EP2を用いて、各々の被拘束電池10Pについて、確実にケース11と負極板32との間の短絡の有無をも判定した電池スタック1を製造できる。
【0079】
なお、除去工程S2Aでは、少なくとも1つの不良電池10Nが含まれている未接続電池スタック1Mから、不良電池10Nを除去する。具体的には、拘束部材5の拘束ボルト52とナット53との締結を緩め、未接続電池スタック1Mから不良電池10Nを除去し、製造工程から排出する。
【0080】
続く再拘束工程S2Bでは、不良電池10Nを除去した未接続電池スタック1Mに、不足数分の補充用電池10Hを補充し、拘束部材5を用いて、一群の被拘束電池10Pを再度拘束して、未接続電池スタック1M(
図6参照)を再構成する。補充用電池10Hとしては、別の未接続電池スタック1Mに含まれて、既に拘束短絡検査工程S28で正負極間及びケース-負極間に短絡を生じていないと判定されており、補充用として予め用意しておいた電池10を用いる。その後、再構成された未接続電池スタック1Mについて、再度、拘束短絡検査工程S28を行い、不良電池10Nが発生しなくなるまで補充用電池10Hを補充し未接続電池スタック1Mの再構成を繰り返す。拘束第2判定工程S287において、再構成した未接続電池スタック1Mに不良電池10Nが含まれていない場合には、前述と同様、再構成した未接続電池スタック1Mを接続工程S29に移行させる。
【0081】
その後、接続工程S29では、再構成された未接続電池スタック1Mをなす一群の被拘束電池10Pの正極端子21及び負極端子25にバスバ3を接続し、被拘束電池10Pを相互に接続して、電池スタック1(
図5参照)を完成させる。かくして、未接続電池スタック1M内に短絡を生じた電池10が含まれていた場合でも、容易に未接続電池スタック1Mを再構成して電池スタック1を製造することができる。
【0082】
なお、再拘束工程S2Bで、再拘束することで再構成した未接続電池スタック1Mにおいて不良電池10Nの発生する可能性が低い場合には、
図7において破線で示すように、第2接続工程S2Cで、再構成された未接続電池スタック1Mをなす一群の被拘束電池10Pの正極端子21及び負極端子25にバスバ3を接続し、被拘束電池10Pを相互に接続して、電池スタック1(
図7参照)を完成させようにしても良い。このようにすると、さらに容易に未接続電池スタック1Mを再構成して電池スタック1を製造することができる。
【0083】
以上において、本発明を実施形態1,2に即して説明したが、本発明は実施形態1,2に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で、適宜変更して適用できることは言うまでもない。
例えば、実施形態2の電池スタック1では、被拘束電池10P同士をバスバ3で電気的に直列接続した。しかし、被拘束電池10Pを電気的に並列接続した電池スタックとすることもできる。
【0084】
また、実施形態2では、電池スタック1の製造にあたり、個別短絡検査工程S5に第1電位差測定工程S52、第2電位差測定工程S55、及び、個別第2判定工程S57を設けて、個々の電池10についてケース-負極間の短絡の有無を検査した。更に重ねて、拘束短絡検査工程S28に第1電位差測定工程S282、第2電位差測定工程S285、及び、拘束第2判定工程S287を設けて、未接続電池スタック1M内の各々の被拘束電池10Pについても、ケース-負極間の短絡の有無を検査した。
【0085】
しかし、電池スタック1の製造にあたり、個別短絡検査工程S5における、個々の電池10についてのケース-負極間短絡の検査を省略し、拘束短絡検査工程S28における、未接続電池スタック1M内の各々の被拘束電池10Pについてのケース-負極間短絡の有無のみ検査するようにしても良い。電池10の積層方向SH(電池厚み方向CH)への拘束により、被拘束電池10Pでは、拘束していない電池10に比して、ケース-負極間短絡が発生しやすくなっているからである。
【符号の説明】
【0086】
1 電池スタック(デバイススタック)
1M 未接続電池スタック(未接続デバイススタック)
SH 積層方向
5 拘束部材
10 電池(二次電池、蓄電デバイス)
10N 不良電池
10H 補充用電池
10P 被拘束電池(被拘束デバイス)
11 ケース(金属ケース)
21 正極端子
25 負極端子(負極電位部材)
30 電極体
31 正極板
TH 正極板厚み方向
THO (正極板厚み方向の)外側
32 負極板
50 絶縁フィルム
VB 電池電圧
VB1 第1電圧(第1デバイス電圧)
VB2a 放置前第2電圧(放置前デバイス電圧)
VB2b 放置後第2電圧(放置後デバイス電圧)
VB3a 放置前第3電圧(拘束放置前デバイス電圧)
VB3a 放置後第3電圧(拘束放置後デバイス電圧)
PP 正極電位
PN 負極電位
PC ケース電位
EF 電位差(ケース-負極間電位差)
EF1 第1電位差(ケース-負極間電位差)
EF2 第2電位差(ケース-負極間電位差)
ΔF12 電位差変化量(第1電位差と第2電位差との間の変化)
EP 拘束電位差(ケース-負極間電位差)
EP1 拘束第1電位差(第1電位差,ケース-負極間電位差)
EP2 拘束第2電位差(第2電位差,ケース-負極間電位差)
ΔP12 拘束電位差変化量(第1電位差と第2電位差との間の変化)
PT1~PT4 パターン
Tc 調整完了時
KT 経過時間
TF1 第1時刻(第1電位差測定時刻)
TF2 第2時刻(第2電位差測定時刻)
TP1 拘束第1時刻(第1電位差測定時刻)
TP2 拘束第2時刻(第2電位差測定時刻)
S1 初充電工程
S4 電圧調整工程
S5 個別短絡検査工程(自己放電検査工程)
S51 放置前電圧測定工程
S52,S282 第1電位差測定工程(第1測定工程)
S53 個別放置工程(放置工程)
IH 個別放置期間(放置期間)
IWT 個別待機期間(待機期間)
S54 放置後電圧測定工程
S55,S285 第2電位差測定工程(第2測定工程)
S56 個別第1判定工程(自己放電検知工程)
S57 個別第2判定工程(ケース-負極間短絡判定工程)
S6 電池排出工程(排出工程)
S27 拘束工程
S28 拘束短絡検査工程(スタック内自己放電検査工程)
S281 放置前電圧測定工程(拘束放置前電圧測定工程)
S283 拘束放置工程
S284 放置後電圧測定工程(拘束放置後電圧測定工程)
PH 拘束放置期間(放置期間)
PWT 拘束待機期間(待機期間)
S286 拘束第1判定工程(拘束自己放電検知工程)
S287 拘束第2判定工程(ケース-負極間短絡判定工程)