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特開2024-45820印刷装置、印刷制御方法、及びプログラム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024045820
(43)【公開日】2024-04-03
(54)【発明の名称】印刷装置、印刷制御方法、及びプログラム
(51)【国際特許分類】
   B41J 2/355 20060101AFI20240327BHJP
   B41J 2/365 20060101ALI20240327BHJP
   B41J 3/36 20060101ALI20240327BHJP
【FI】
B41J2/355 P
B41J2/365
B41J3/36 T
【審査請求】有
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022150829
(22)【出願日】2022-09-22
(71)【出願人】
【識別番号】000001443
【氏名又は名称】カシオ計算機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110004185
【氏名又は名称】インフォート弁理士法人
(74)【代理人】
【識別番号】100121083
【弁理士】
【氏名又は名称】青木 宏義
(74)【代理人】
【識別番号】100138391
【弁理士】
【氏名又は名称】天田 昌行
(74)【代理人】
【識別番号】100074099
【弁理士】
【氏名又は名称】大菅 義之
(74)【代理人】
【識別番号】100182936
【弁理士】
【氏名又は名称】矢野 直樹
(72)【発明者】
【氏名】小川 直輝
【テーマコード(参考)】
2C055
2C066
【Fターム(参考)】
2C055CC00
2C055CC01
2C055CC03
2C055CC05
2C066AA18
2C066CA06
2C066CA23
2C066DA04
2C066DA08
2C066DA22
(57)【要約】
【課題】サーマルヘッドを備えた印刷装置で、スティッキングの発生を効率的に抑制する。
【解決手段】印刷装置(10)の制御装置(40)は、第1ドット群において、第1濃度以上の印字領域の割合が第1の閾値以上であること、及び、第1ドット群の第1濃度以上の印字領域と後続の第2ドット群の第1濃度よりも低い第2濃度を超える印字領域との比較結果が第2の閾値以上であること、を満たす場合に、第2ドット群を含むスティッキング対策対象ドット群セットを設定し、被印刷媒体(20)に印刷を行うための第1の通電制御期間(TA)とは別に、被印刷媒体に印刷を行うことなくサーマルヘッド(30)の温度変化を調整するための第2の通電制御期間(TB)を設定し、スティッキング対策対象ドット群セットの各ドット群における第2の通電制御期間において複数の発熱素子(30a)の少なくとも一部に通電するための対策データを生成する。
【選択図】図6
【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の発熱素子を有し、前記複数の発熱素子に対応した複数のドットからなるドット群ごとに被印刷媒体への印刷を行うサーマルヘッドと、
制御装置と、
を備え、
前記制御装置は、
第1ドット群において、第1濃度以上の印字領域の割合が第1の閾値以上であること、及び、
前記第1ドット群の前記第1濃度以上の印字領域と、前記第1ドット群よりも後続である第2ドット群で前記第1濃度よりも低い第2濃度を超える印字領域との比較結果が、第2の閾値以上であること、
を満たす場合に、少なくとも前記第2ドット群を含むスティッキング対策対象ドット群セットを設定し、
前記被印刷媒体に印刷を行うための第1の通電制御期間とは別に、前記被印刷媒体に印刷を行うことなく前記サーマルヘッドの温度変化を調整するための第2の通電制御期間を設定し、前記スティッキング対策対象ドット群セットの各ドット群における前記第2の通電制御期間において前記複数の発熱素子の少なくとも一部に通電するための対策データを生成する、
ことを特徴とする印刷装置。
【請求項2】
前記サーマルヘッドは3以上の階調で印刷可能であり、
前記第1濃度の印字領域は最大階調の印字領域であり、前記第2濃度の印字領域は非印字領域であり、
前記制御装置は、
前記スティッキング対策対象ドット群セットの各ドット群において、1つ前のドット群で最大階調で印字され且つ当該ドット群で非印字である印字領域について、前記第2の通電制御期間において前記発熱素子に通電を行うように前記対策データを生成する、
ことを特徴とする請求項1に記載の印刷装置。
【請求項3】
前記第1の閾値は、前記第1ドット群の印字領域全体の3分の2である、ことを特徴とする請求項1又は2に記載の印刷装置。
【請求項4】
前記第2の閾値は1.5倍である、ことを特徴とする請求項1又は2に記載の印刷装置。
【請求項5】
前記制御装置は、
前記複数の発熱素子のうち、前記第1ドット群で前記第1濃度以上であり、且つ前記スティッキング対策対象ドット群セットの各ドット群で前記第2濃度以下である印字領域に対応する前記発熱素子を、前記第2の通電制御期間で通電させるように前記対策データを生成する、
ことを特徴とする請求項1又は2に記載の印刷装置。
【請求項6】
前記制御装置は、
前記第2ドット群と、前記第2ドット群から連続して印刷される所定数の後続ドット群と、を前記スティッキング対策対象ドット群セットとして設定し、
前記第2ドット群において前記第2の通電制御期間で前記発熱素子に通電を行い、且つ前記後続ドット群において前記第2濃度以下である印字領域については、前記後続ドット群において前記第2の通電制御期間で前記発熱素子に通電を行い、
前記第2ドット群において前記第2の通電制御期間で前記発熱素子に通電を行い、且つ前記後続ドット群において前記第2濃度を超える印字領域については、前記後続ドット群において前記第2の通電制御期間で前記発熱素子に通電を行わないように前記対策データを生成する、
ことを特徴とする請求項1又は2に記載の印刷装置。
【請求項7】
複数の発熱素子を有するサーマルヘッドにより、前記複数の発熱素子に対応した複数のドットからなるドット群ごとに被印刷媒体への印刷を行わせるための印刷データに基づいて、
第1ドット群において、第1濃度以上の印字領域の割合が第1の閾値以上であること、及び、
前記第1ドット群の前記第1濃度以上の印字領域と、前記第1ドット群よりも後続である第2ドット群で前記第1濃度よりも低い第2濃度を超える印字領域との比較結果が、第2の閾値以上であること、
を満たす場合に、少なくとも前記第2ドット群を含むスティッキング対策対象ドット群セットを設定し、
前記被印刷媒体に印刷を行うための第1の通電制御期間とは別に、前記被印刷媒体に印刷を行うことなく前記サーマルヘッドの温度変化を調整するための第2の通電制御期間を設定し、
前記スティッキング対策対象ドット群セットの各ドット群における前記第2の通電制御期間において前記複数の発熱素子の少なくとも一部に通電するための対策データを生成する、
ことを特徴とする印刷制御方法。
【請求項8】
印刷装置が備えるコンピュータに、
複数の発熱素子を有するサーマルヘッドにより、前記複数の発熱素子に対応した複数のドットからなるドット群ごとに被印刷媒体への印刷を行わせるための印刷データに基づいて、
第1ドット群において、第1濃度以上の印字領域の割合が第1の閾値以上であること、及び、
前記第1ドット群の前記第1濃度以上の印字領域と、前記第1ドット群よりも後続である第2ドット群で前記第1濃度よりも低い第2濃度を超える印字領域との比較結果が、第2の閾値以上であること、
を満たす場合に、少なくとも前記第2ドット群を含むスティッキング対策対象ドット群セットを設定させ、
前記被印刷媒体に印刷を行うための第1の通電制御期間とは別に、前記被印刷媒体に印刷を行うことなく前記サーマルヘッドの温度変化を調整するための第2の通電制御期間を設定させ、
前記スティッキング対策対象ドット群セットの各ドット群における前記第2の通電制御期間において前記複数の発熱素子の少なくとも一部に通電するための対策データを生成させる、
ことを特徴とするプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、印刷装置、印刷制御方法、及びその処理に係るプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
サーマルヘッドから感熱式の発色剤やインクリボンに対して熱を加えて被印刷媒体への印刷を行う印刷装置(サーマルプリンタ)では、印字中にサーマルヘッドの貼り付き(スティッキング)が発生する場合がある。例えば、被印刷媒体に含まれる発色剤を加熱によって顕色化させる感熱式のサーマルプリンタでは、サーマルヘッドが被印刷媒体に貼り付いてスティッキングが発生する。インクリボンに塗布されたインクを加熱によって被印刷媒体に転写する熱転写式のサーマルプリンタでは、サーマルヘッドがインクリボンに貼り付いてスティッキングが発生する。スティッキングは印刷品質を低下させる原因になる。
【0003】
サーマルプリンタの印刷では、印字パターンに応じてサーマルヘッドに温度変化がもたらされる。そして、サーマルヘッドが高温から低温へ急激に温度変化した場合にスティッキングが生じやすい。
【0004】
特許文献1には、チョッパ制御によりスティッキングの発生を防止するサーマルプリンタが記載されている。チョッパ制御は、サーマルヘッドへの通電と非通電の切換を頻繁に行う技術であり、チョッパ制御を行うことでサーマルヘッドの急激な温度変化を防止する効果が得られる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2013-52539号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1に記載されるように、既存のスティッキング対策は、サーマルヘッドへの通電頻度を低下させないようにして、サーマルヘッドの温度変化(特に温度低下)を抑制することを骨子としている。しかし、特許文献1に記載の対策では、印刷表現によっては適切に対策できないおそれがあった。例えば、スティッキングの発生リスクが低い場合にも、スティッキング対策用の通電を行ってしまう場合がある。スティッキングの発生リスクが低い場合にサーマルヘッドにスティッキング対策用の通電を行うことは、エネルギーを無駄に消費する。また、サーマルヘッドにスティッキング対策用の通電を行っても、印刷品質に影響を及ぼさないことが求められる。つまり、スティッキングの発生リスクが高い状況を見極めて、過不足の無いスティッキング対策を実現するという課題がある。
【0007】
本発明は、サーマルヘッドのスティッキング発生を効率的に抑制可能な印刷装置、印刷制御方法、及びプログラムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の一態様に係る印刷装置は、複数の発熱素子を有し、前記複数の発熱素子に対応した複数のドットからなるドット群ごとに被印刷媒体への印刷を行うサーマルヘッドと、制御装置と、を備え、前記制御装置は、第1ドット群において、第1濃度以上の印字領域の割合が第1の閾値以上であること、及び、前記第1ドット群の前記第1濃度以上の印字領域と、前記第1ドット群よりも後続である第2ドット群で前記第1濃度よりも低い第2濃度を超える印字領域との比較結果が、第2の閾値以上であること、を満たす場合に、少なくとも前記第2ドット群を含むスティッキング対策対象ドット群セットを設定し、前記被印刷媒体に印刷を行うための第1の通電制御期間とは別に、前記被印刷媒体に印刷を行うことなく前記サーマルヘッドの温度変化を調整するための第2の通電制御期間を設定し、前記スティッキング対策対象ドット群セットの各ドット群における前記第2の通電制御期間において前記複数の発熱素子の少なくとも一部に通電するための対策データを生成する、ことを特徴とする。
【0009】
本発明の一態様に係る印刷制御方法は、複数の発熱素子を有するサーマルヘッドにより、前記複数の発熱素子に対応した複数のドットからなるドット群ごとに被印刷媒体への印刷を行わせるための印刷データに基づいて、第1ドット群において、第1濃度以上の印字領域の割合が第1の閾値以上であること、及び、前記第1ドット群の前記第1濃度以上の印字領域と、前記第1ドット群よりも後続である第2ドット群で前記第1濃度よりも低い第2濃度を超える印字領域との比較結果が、第2の閾値以上であること、を満たす場合に、少なくとも前記第2ドット群を含むスティッキング対策対象ドット群セットを設定し、前記被印刷媒体に印刷を行うための第1の通電制御期間とは別に、前記被印刷媒体に印刷を行うことなく前記サーマルヘッドの温度変化を調整するための第2の通電制御期間を設定し、前記スティッキング対策対象ドット群セットの各ドット群における前記第2の通電制御期間において前記複数の発熱素子の少なくとも一部に通電するための対策データを生成する、ことを特徴とする。
【0010】
本発明の一態様に係るプログラムは、印刷装置が備えるコンピュータに、複数の発熱素子を有するサーマルヘッドにより、前記複数の発熱素子に対応した複数のドットからなるドット群ごとに被印刷媒体への印刷を行わせるための印刷データに基づいて、第1ドット群において、第1濃度以上の印字領域の割合が第1の閾値以上であること、及び、前記第1ドット群の前記第1濃度以上の印字領域と、前記第1ドット群よりも後続である第2ドット群で前記第1濃度よりも低い第2濃度を超える印字領域との比較結果が、第2の閾値以上であること、を満たす場合に、少なくとも前記第2ドット群を含むスティッキング対策対象ドット群セットを設定させ、前記被印刷媒体に印刷を行うための第1の通電制御期間とは別に、前記被印刷媒体に印刷を行うことなく前記サーマルヘッドの温度変化を調整するための第2の通電制御期間を設定させ、前記スティッキング対策対象ドット群セットの各ドット群における前記第2の通電制御期間において前記複数の発熱素子の少なくとも一部に通電するための対策データを生成させる、ことを特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
以上の態様によれば、スティッキング対策の実施を必要最小限にして、スティッキングの発生を効率的に抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】印刷装置の正面図である。
図2】カセット収納部にテープカセットを収納した状態の正面図である。
図3】印刷装置のハードウェア構造を示したブロック図である。
図4】サーマルヘッドの1ドット周期の通電制御の例を示す図である。
図5】印刷装置の機能的構造を示したブロック図である。
図6】スティッキング発生推定ドット群の判定方法と対策データのパターン設定方法を説明するための図である。
図7】スティッキング対策処理のフローチャートである。
図8】スティッキング発生推定ドット群の判定処理のフローチャートである。
図9】別形態の印刷装置におけるスティッキング発生推定ドット群の判定方法と対策データのパターン設定方法を説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明を実施するための形態について図面を参照しながら詳細に説明する。図1は、本実施形態に係る印刷装置10の正面図である。印刷装置10は、印字部としてサーマルヘッド30(図2参照)を備えるサーマルプリンタであり、例えば、長尺の帯状の被印刷媒体であるテープ20に対して、シングルパス方式で印刷を行う。
【0014】
テープ20は、加熱によって発色する感熱式のテープである。例えば、テープ20は、接着層を有する基材、発色剤を含む発色層、基材の接着層に貼付された剥離可能な剥離紙、などを積層した構成である。
【0015】
印刷装置10は装置筐体11を有し、装置筐体11の上面手前側に入力部12を有し、装置筐体11の上面奥側に表示装置13と開閉蓋14を有している。
【0016】
入力部12は、複数の入力キーなどを備えており、入力部12への操作によって、印刷する文字や図形などの印刷内容の入力や、印刷の実行を含む各種動作に関する入力や、その他の機能や設定の選択などが行われる。なお、印刷装置10に対する印刷内容の入力は、メモリカードなどの記憶媒体や、外部機器との間の通信を用いて行ってもよい。
【0017】
表示装置13は、液晶表示パネルなどの表示手段を備えており、入力部12への入力に対応する文字や図形などの表示、各種設定のための選択メニューの表示、各種処理に関するメッセージ類の表示、印刷処理の進捗状況の表示などを行う。なお、表示装置13を入力受付可能なタイプ(タッチパネル入力方式など)にして、入力部12としての機能を表示装置13に持たせてもよい。
【0018】
開閉蓋14は、装置筐体11に対して開閉可能に取り付けられている。装置筐体11の内部には、閉じた状態の開閉蓋14により覆われるカセット収納部15(図2参照)が設けられている。カセット収納部15の内部構造については後述する。開閉蓋14は閉じた状態でロック可能であり、解除ボタン16を押し込むことにより、ロックを解除して開閉蓋14の開放動作が行われる。
【0019】
装置筐体11の側面には、カセット収納部15に通じる排出口17(図2参照)が形成されている。印刷装置10の内部で印刷が行われたテープ20は、排出口17を通って印刷装置10の外側へ排出される。
【0020】
図2は、印刷装置10のカセット収納部15に、テープカセット21を収納した状態を示している。テープカセット21は、箱状のカセットケース22の内部にテープコア23を備えており、ロール状のテープ20がテープコア23に支持されている。
【0021】
カセット収納部15の内部には、サーマルヘッド30が設けられている。サーマルヘッド30は、テープ20への印刷時に発熱制御される複数の発熱素子30a(図3参照)を備えている。サーマルヘッド30には、温度を測定するヘッド温度測定部としてサーミスタ31(図3参照)が埋め込まれている。また、カセット収納部15の内部には、プラテンローラ32とテープコア係合軸33が設けられている。
【0022】
カセット収納部15の内部にはさらに、テープカセット21を所定の位置に支持するための複数のカセット受け部34と、テープカセット21が収容するテープ20の幅を検出するためのテープ幅検出スイッチ35(図3参照)が設けられている。テープ幅検出スイッチ35は、テープカセット21の形状に基づいてテープ20の幅を検出する検出部である。
【0023】
装置筐体11の排出口17の近傍には、テープ20を幅方向に沿って切断するためのフルカッター36とハーフカッター37とが設けられている。フルカッター36は、剥離紙を含むテープ20の厚み全体を切断する。ハーフカッター37は、剥離紙を残してテープ20を切断する。
【0024】
テープカセット21がカセット収納部15に収納された状態では、テープカセット21のテープコア23がテープコア係合軸33に係合し、テープコア23から引き出されたテープ20がサーマルヘッド30とプラテンローラ32の間を通る。開閉蓋14を閉じると、サーマルヘッド30がプラテンローラ32に接近して、サーマルヘッド30とプラテンローラ32の間にテープ20が挟まれる。
【0025】
印刷装置10に印刷実行の指示が入力されると、プラテンローラ32が回転駆動され、テープ20がテープコア23から繰り出されて搬送される。そして、サーマルヘッド30とプラテンローラ32との間をテープ20が通過する際に、サーマルヘッド30から加熱された部分でテープ20の発色層が発色して印字される。
【0026】
サーマルヘッド30とプラテンローラ32の間を通過した印刷済みのテープ20は、フルカッター36又はハーフカッター37で切断(フルカット又はハーフカット)され、排出口17からカセット収納部15の外部へ排出される。
【0027】
図3は、印刷装置10のハードウェア構造を示したブロック図である。このブロック図は、上述した入力部12、表示装置13、サーマルヘッド30、サーミスタ31、プラテンローラ32、テープ幅検出スイッチ35、フルカッター36、ハーフカッター37、を含んでいる。印刷装置10はさらに、制御装置40、ROM(Read Only Memory)41、RAM(Random Access Memory)42、表示装置駆動回路43、ヘッド駆動回路44、搬送用モータ駆動回路45、ステッピングモータ46、カッターモータ駆動回路47、カッターモータ48、温度センサ49を備える。
【0028】
制御装置40は、CPU(Central Processing Unit)などのプロセッサ40aを含む。制御装置40は、ROM41に記憶されているプログラムを読み出してRAM42に展開し実行することで、印刷装置10の各部の動作を制御する。後述するスティッキング対策に関する一連の制御や処理についても、ROM41に記憶されているプログラムに基づいて行われる。なお、少なくとも制御装置40、ROM41、及びRAM42は、印刷装置10のコンピュータを構成している。
【0029】
ROM41は、テープ20に印刷を行う印刷プログラム、印刷プログラムの実行に必要な各種データ(例えば、フォント、通電テーブルなど)を記憶する。RAM42は、印刷内容のパターン(画像)を示す印刷データを記憶する印刷データ記憶部42a(図5参照)を含む。
【0030】
表示装置駆動回路43は、表示装置13を駆動するディスプレイドライバを備えている。RAM42に記憶された印刷データに基づく印刷内容や、印刷処理の進捗状況などが、表示装置駆動回路43の制御下で表示装置13に表示される。
【0031】
ヘッド駆動回路44は、制御装置40から供給された制御信号であるストローブ信号と印刷データと対策データとに基づいてサーマルヘッド30を駆動するヘッド駆動部である。ヘッド駆動回路44は、複数の発熱素子30aへの通電又は非通電を行う。
【0032】
サーマルヘッド30は、主走査方向(図6参照)に配列された複数の発熱素子30aを有する印刷ヘッドである。主走査方向は、テープ20の幅方向でもある。ヘッド駆動回路44が、制御装置40から供給されたストローブ信号の通電制御期間中に、印刷データ又は対策データに応じて、サーマルヘッド30の複数の発熱素子30aに電圧を選択的に印加することで、印刷データや対策データで指定された箇所の発熱素子30aが発熱する。
【0033】
テープ20は、主走査方向に対して垂直な副走査方向(図6参照)に長手方向を向けて、副走査方向への移動によりサーマルヘッド30の位置まで搬送される。そして、テープ20を副走査方向に搬送しながらサーマルヘッド30の各発熱素子30aの発熱を制御することで、サーマルヘッド30は、テープ20に対して、複数の発熱素子30aに対応した複数のドットからなるドット群ごとに印刷を行う。つまり、副走査方向へのサーマルヘッド30とテープ20の相対位置の変化と、サーマルヘッド30の各発熱素子30aの発熱制御とによって、テープ20には、複数のドット群が順次印刷される。
【0034】
搬送用モータ駆動回路45はステッピングモータ46を駆動し、ステッピングモータ46はプラテンローラ32を回転させる。プラテンローラ32は、ステッピングモータ46の動力によって回転し、テープ20を長手方向(副走査方向)に搬送する。ステッピングモータ46に入力するパルス数をカウントすることで、テープ20の搬送量に関する情報を得ることができる。
【0035】
カッターモータ駆動回路47は、カッターモータ48を駆動する。フルカッター36とハーフカッター37は、カッターモータ48の動力によって動作して、テープ20をフルカット又はハーフカットする。
【0036】
温度センサ49は、印刷装置10の周囲の温度を環境温度として測定する環境温度測定部である。
【0037】
印刷装置10で印刷を行う際に、サーマルヘッド30において高温状態から低温状態への急激な温度変化(温度低下)が生じると、サーマルヘッド30がテープ20に貼り付く現象であるスティッキングが生じる可能性がある。サーマルヘッド30におけるこのような急激な温度低下は、印字率の高い(発熱させる発熱素子30aの数が多い)ドット群から印字率の低い(発熱させる発熱素子30aの数が少ない)ドット群に急に切り替わる印刷内容である場合に生じやすい。すなわち、副走査方向で隣接又は近接する関係のドット群間で印字率が急減するような境界部分を印刷するときに、スティッキングが生じやすい。
【0038】
また、印刷装置10は、サーマルヘッド30の各発熱素子30aに対応する印字領域(ドット)ごとに3階調以上の異なる濃度で印字する多階調印刷に対応している。各印字領域での印字濃度が高いほど、発熱素子30aへの通電量が増えてサーマルヘッド30の温度が高くなりやすいので、ドット群における印字率に加えて、各ドットの印字濃度もスティッキングの発生に関係する。具体的には、印字濃度の高いドット群から印字濃度の低いドット群に急に切り替わる印刷内容である場合に、スティッキングが生じやすい。
【0039】
印刷装置10では、サーマルヘッド30の発熱素子30aへの通電制御によって、スティッキングの発生を抑制する。具体的には、各ドット群に対応する1ドット周期内に、テープ20に印刷を行うための第1の通電制御期間と、テープ20に印刷を行うことなくサーマルヘッド30の温度変化を調整するための第2の通電制御期間と、を設定し、第1の通電制御期間と第2の通電制御期間での発熱素子30aへの通電及び非通電を制御する。
【0040】
図4は、多階調印刷に対応した、サーマルヘッド30の各発熱素子30aの1ドット周期Tの通電制御の例を示す図である。第1の通電制御期間TAには、複数回の通電時間P1-P7が含まれる。各通電時間P1-P7におけるONが通電、OFFが非通電を意味する。通電回数は印字の階調に対応しており、全ての通電時間P1-P7で通電する場合に最大階調の濃度になる。通電回数が少なくなるにつれて印字の濃度が薄く(階調が低く)なり、最小の通電回数のみで通電する場合に、最も薄い濃度での印字になる。また、全ての通電時間P1-P7で非通電の場合には、印字を行わない非印字領域(白ドット)になる。つまり、図4の通電制御は、非印字から最大階調まで8段階の階調表現が可能なサーマルヘッド30において、最大階調(最も高い濃度)で印字する場合を例示している。
【0041】
第2の通電制御期間TBは、テープ20に印刷を行うことなくサーマルヘッド30の温度変化を調整するための期間であり、第1の通電制御期間TAよりも後に離間した期間として設定されている。第1の通電制御期間TAにおいて非通電である場合や通電時間が短い(通電回数が少ない)場合に、第2の通電制御期間TB中の通電時間P8で発熱素子30aに通電(ON)することによって、発熱素子30aの温度低下を抑制する作用が得られる。このように、印刷装置10は、第2の通電制御期間TBでのサーマルヘッド30への電圧の印加を利用してスティッキングの発生を抑制するものであり、その詳細を以下に説明する。
【0042】
図5は、スティッキングの発生抑制に関する印刷装置10の機能的構造を示したブロック図である。図5では主に、印刷装置10に含まれる制御装置40の機能的構造を示している。制御装置40は、判定部50、データ生成部60、ヘッド制御部70を備えている。なお、制御装置40では、図5に示す各機能ブロックに対応する個々の電子部品や回路を必ずしも備えるわけではなく、所定の電子部品や回路が複数の機能ブロックの役割を有する場合や、複数の電子部品や回路の協働によって1つの機能ブロックとして成立する場合もある。
【0043】
判定部50は、サーマルヘッド30により印刷する複数のドット群のそれぞれに対応する、複数のドット群データを含む印刷データに基づいて、第1ドット群よりも後続である(第1ドット群から所定回数後のドット周期である)第2ドット群を、スティッキングが発生する可能性が高いドット群(以降、スティッキング発生推定ドット群と記す)であるか否か判定する。スティッキングが発生する可能性が高いドット群とは、サーマルヘッド30の温度が急激に低下する可能性があるドット群である。判定部50が使用する印刷データは、RAM42の印刷データ記憶部42aから読み出される。本実施形態では、第1ドット群と第2ドット群が連続する2つのドット群である場合を例として説明し、第1ドット群を第(n-1)ドット群、第2ドット群を第nドット群(nは2以上の整数)として表す。
【0044】
判定部50は、先行ドット群判定部51と比較部52とを備えている。先行ドット群判定部51は、第nドット群の1つ前の第(n-1)ドット群におけるドット群データが所定の条件に合致するかを判定する。比較部52は、第(n-1)ドット群のドット群データと第nドット群のドット群データとを比較して、この2つのドット群の関係が所定の条件に合致するかを判定する。そして、先行ドット群判定部51と比較部52の両方で所定の条件に合致すると判定された場合に、判定部50は、第nドット群がスティッキング発生推定ドット群であると判定する。
【0045】
より詳細には、先行ドット群判定部51は、第(n-1)ドット群において、第1濃度以上の印字領域の割合が、第1の閾値以上であるか否かを判定する。例えば、印字の複数の階調(例えば、図4の通電制御で実現される8段階の階調)のうち最も濃度が高い最大階調を第1濃度に設定することが望ましい。また、テープ20の幅方向(主走査方向)の印字領域全体に対する3分の2を第1の閾値として設定することが望ましい。つまり、テープ20の幅方向の印字領域(1つのドット群を構成する全ドット数)のうち、最大階調の印字領域(最大階調で印字されるドット数)が3分の2以上である場合に、先行ドット群判定部51は、第(n-1)ドット群のドット群データがスティッキング発生の第1条件に合致すると判定する。テープ20の幅方向の印字領域については、ドット群データの他に、テープ幅検出スイッチ35で検出されるテープ幅の情報を参照してもよい。
【0046】
先行ドット群判定部51で判定する第1条件は、第(n-1)ドット群を印刷する際にサーマルヘッド30の温度がどの程度まで高くなるかに関するものである。第1条件を満たす場合、第(n-1)ドット群において高い階調での印字率が高いため、サーマルヘッド30の温度が高くなると推定される。
【0047】
比較部52は、第(n-1)ドット群の第1濃度以上の印字領域と、第nドット群で第1濃度よりも低い第2濃度を超える印字領域との比が、第2の閾値以上であるか否かを判定する。例えば、第2濃度の印字領域を非印字領域(白ドット)に設定することが望ましい。また、第2の閾値を1.5倍に設定することが望ましい。つまり、第(n-1)ドット群の最大階調の印字領域(最大階調で印字されるドット数)が、第nドット群で非印字領域以外の印字領域(最小階調から最大階調までのいずれかの濃度で印字されるドット数)と比べて、1.5倍以上である場合に、比較部52は、第(n-1)ドット群のドット群データと第nドット群のドット群データの関係がスティッキング発生の第2条件に合致すると判定する。
【0048】
比較部52で判定する第2条件は、第(n-1)ドット群の印刷から第nドット群の印刷に移行する際に、サーマルヘッド30の温度がどの程度低下するかに関するものである。第2条件を満たす場合、第(n-1)ドット群において印字率と階調を掛け合わせた印字レベルが、第nドット群において印字率と階調を掛け合わせた印字レベルを大きく上回っており、サーマルヘッド30の温度低下が著しくなると推定される。
【0049】
第1条件と第2条件の両方を満たす場合には、第(n-1)ドット群の印刷から第nドット群の印刷に移行する際に、サーマルヘッド30の温度が高い状態から急激に低下し、スティッキングが発生しやすいと推定される。従って、先行ドット群判定部51及び比較部52で第1条件及び第2条件に合致すると判定された場合に、判定部50は、第nドット群がスティッキング発生推定ドット群であると判定する。
【0050】
このように、互いに隣接して印刷される2つのドット群のそれぞれに対応する2つのドット群データに基づいて判定することで、互いに隣接して印刷される2つのドット群間で生じる急激な温度変化を予想し、スティッキング発生推定ドット群を決定することができる。特に、各ドット群の印字率だけではなく、印字領域の階調情報を含めて判定することによって、サーマルヘッド30の温度変化を高い精度で推定することができ、スティッキング対策の実施を必要最小限にする効果が得られる。
【0051】
なお、本実施形態では、第1濃度の印字領域を最大階調の印字領域とし、第2濃度の印字領域を非印字領域とし、第(n-1)ドット群と第nドット群との間で最も急激な温度低下が発生しやすい階調の違いを基準として判定するようにしているが、第1濃度や第2濃度を複数階調のうちの中間階調の濃度として設定することも可能である。つまり、少なくとも第1濃度よりも第2濃度の方が低い印字濃度(階調)であるという関係を満たしていればよい。
【0052】
また、比較部52で判定する第(n-1)ドット群と第nドット群との比較において、階調の絶対値(指定の印字濃度)ではなく、階調差に基づいて比較判断を行ってもよい。すなわち、第(n-1)ドット群と第nドット群との間において、所定以上の階調差のあるドット数がいくつあるかという基準で、スティッキング発生の第2条件を設定してもよい。一例として、0(非印字)から7(最大階調)までの8段階の階調の印刷において、第(n-1)ドット群よりも第nドット群の方がm階調以上(mは7以下の整数)低いドットの数がp個(pは任意の整数)以上有る場合に、比較部52は、スティッキング発生の第2条件に合致すると判定する。
【0053】
また、判定部50での上記判定における第1の閾値(本実施形態では3分の2)や第2の閾値(本実施形態では1.5倍)は、一例であり、異なる値であってもよい。例えば、これらの値は、温度センサ49で測定された環境温度に基づいて変更されてよい。一般的に、環境温度が低いほど、発熱素子の発熱時と非発熱時の温度差が大きくなりやすく、スティッキングが発生しやすいことから、環境温度に基づいて設定変更する場合には、環境温度が低いほど、第1の閾値や第2の閾値を下げることが望ましい。
【0054】
判定部50は、スティッキング発生推定ドット群を特定するデータ(以降、スティッキング発生推定ドット群データと記す)をデータ生成部60へ出力する。
【0055】
データ生成部60は、RAM42の印刷データ記憶部42aから読み出された印刷データと、判定部50で生成されたスティッキング発生推定ドット群データと、に基づいて、第2の通電制御期間TB中における複数の発熱素子30aへの通電又は非通電を指定する対策データを生成する。
【0056】
印刷装置10では、スティッキングを引き起こす可能性が高い温度低下が予想される期間において、印刷データとは別のデータである対策データに基づいて発熱素子30aを発熱させることでサーマルヘッド30の急激な温度低下を抑制し、スティッキングの発生を抑制する。データ生成部60は、印刷データに基づいて、スティッキング発生推定ドット群(第nドット群)を含むスティッキング対策対象ドット群セットにおいて、第2の通電制御期間TB中に複数の発熱素子30aの少なくとも一部へ電圧が印加されるように、対策データを生成する。
【0057】
データ生成部60は、ドット群数設定部61を備えている。ドット群数設定部61は、対策データにより第2の通電制御期間TB中に発熱素子30aに電圧が印加される対策対象ドット群セットに含まれるドット群の数を設定する。より具体的には、ドット群数設定部61は、印刷データに基づいて、少なくともスティッキング発生推定ドット群(第nドット群)をスティッキング対策対象ドット群セットに設定する。より望ましくは、ドット群数設定部61は、印刷データに基づいて、スティッキング発生推定ドット群(第nドット群)と、スティッキング発生推定ドット群から連続して印刷される所定数(少なくとも一つ)の後続ドット群と、を対策対象ドット群セットに設定する。
【0058】
ドット群数設定部61は、温度センサ49で検出した環境温度に基づいて、スティッキング対策対象ドット群セットに含まれるドット群の数を設定してもよい。一般に環境温度が低いほどスティッキングが発生しやすいことから、環境温度に基づいて設定する場合には、環境温度が低いほどスティッキング対策対象ドット群セットに含まれるドット群の数を増やして、環境温度の低下に起因する急激な温度低下を抑制することが望ましい。これにより、印刷装置10が置かれた環境によらずスティッキングの発生を抑制することができる。一方、環境温度が比較的高い環境ではスティッキングは発生し難くなる。そのため、環境温度が予め設定された閾値(例えば、40℃など)よりも高い場合には、スティッキング発生推定ドット群(第nドット群)のみをスティッキング対策対象ドット群セットにしてもよい。
【0059】
また、ドット群数設定部61は、印刷データに基づいて、スティッキング対策対象ドット群セットに含まれるドット群の数を設定してもよい。例えば、スティッキング発生推定ドット群(第nドット群)に続く後続ドット群において、第1の通電制御期間TAに十分な数の発熱素子30aに電圧が印加される場合には、スティッキング発生推定ドット群(第nドット群)に続くドット群では温度低下が生じず、第2の通電制御期間TBにおける通電制御は省略可能と判断できる。従って、ドット群数設定部61は、印刷データに基づいて、スティッキング発生推定ドット群(第nドット群)以降に、印字率が低い低印字率ドット群がいくつ連続して並んでいるかを算出し、算出した低印字率ドット群の連続数に基づいて、スティッキング対策対象ドット群セットに含めるドット群の数を設定してもよい。
【0060】
データ生成部60は、さらにパターン設定部62を備えている。パターン設定部62は、スティッキング対策対象ドット群セットに含まれる各ドット群の対策データの各々のパターンを設定する。
【0061】
図6は、スティッキング発生推定ドット群の判定方法と、対策データのパターン設定方法について説明するための図である。図6は、サーマルヘッド30の個々の発熱素子30aに対応する印字領域である各ドットQ1-Q8を、最大階調(濃)、中間階調(淡)、非印字(白)の3階調で印字可能な場合を例としている。本通電データとは、印刷データの一部であり、第1の通電制御期間TA中に印刷が行われるドット群に形成すべき印刷パターンを示す印刷データである。図6では、本通電データにおいて、最大階調の濃度に対応して発熱素子30aを発熱させる場合を黒丸で示し、中間階調の濃度に対応して発熱素子30aを発熱させる場合をグレーの丸で示し、発熱素子30aを発熱させずに非印字にする場合を白丸で示している。また、第2の通電制御期間TBでの通電に関する対策データにおいて、発熱素子30aに通電する場合を斜線付きの丸で示し、発熱素子30aに通電しない場合を破線の白丸で示している。
【0062】
判定部50は、第2ドット群である第nドット群について、スティッキング発生推定ドット群に該当するか否かを判定する。例えば、先行ドット群判定部51でのスティッキング発生の上記第1条件を、「第(n-1)ドット群における最大階調のドット数が、テープ20の幅方向の全ドット数の3分の2以上であること」に設定する。また、比較部52でのスティッキング発生の上記第2条件を、「第(n-1)ドット群の最大階調のドット数が、第nドット群の非印字ドット以外のドット数の1.5倍以上であること」に設定する。
【0063】
図6の例では、第1ドット群である第(n-1)ドット群の本通電データにおいて、最大階調のドット数が6であり、テープ20の幅方向の全ドット数が8であるため、第1条件を満たす。また、第(n-1)ドット群の本通電データにおいて最大階調のドット数が6であり、第nドット群の本通電データにおいて非印字ドット以外のドット数が2であるため、第2条件を満たす。従って、判定部50は、第nドット群がスティッキング発生推定ドット群であると判定する。そして、第nドット群を対象としたスティッキング発生推定ドット群データが判定部50からデータ生成部60に送られる。
【0064】
なお、図6は、第(n-1)ドット群、第nドット群、第(n+1)ドット群、第(n+2)ドット群の位置が、副走査方向で異なっていることを模式的に示している。各ドット群用の本通電データと対策データは、副走査方向において同じ印刷領域に対するデータであり、図6においては、便宜上、各ドット群用の本通電データと対策データを分けて示している。
【0065】
データ生成部60のドット群数設定部61は、スティッキング発生推定ドット群であると判定された第nドット群と、第nドット群の後に連続する2つの後続ドット群である第(n+1)ドット群及び第(n+2)ドット群とを、スティッキング対策対象ドット群セットに設定する。
【0066】
パターン設定部62は、注目する印字領域(発熱素子30a)について、第(n-1)ドット群での本通電データが最大階調に対応しており、且つ、スティッキング対策対象ドット群セットの各ドット群(n、n+1、n+2)での本通電データが非印字(非通電)である場合に、第2の通電制御期間TBで通電を行うように対策データを生成する。すなわち、複数の発熱素子30aのうち、第(n-1)ドット群で第1濃度以上であり、且つスティッキング対策対象ドット群セットの各ドット群で第2濃度以下である印字領域に対応する発熱素子30aを、第2の通電制御期間TBで通電させるように対策データを生成する。
【0067】
例えば、ドットQ1については、第(n-1)ドット群とスティッキング対策対象ドット群セットの各ドット群(n、n+1、n+2)はいずれも、本通電データが最大階調に対応するものである。従って、スティッキング対策対象ドット群セット(n、n+1、n+2)での発熱素子30aの急激な温度低下が発生しないので、パターン設定部62は、スティッキング対策対象ドット群セットの全てのドット群(n、n+1、n+2)において、ドットQ1を第2の通電制御期間TBでの通電の対象に含めない。
【0068】
ドットQ2については、第(n-1)ドット群及び第(n+1)ドット群で、本通電データが最大階調に対応し、第nドット群及び第(n+2)ドット群で、本通電データが中間階調に対応している。すなわち、ドットQ2は、最大階調で印字した次のドット群が非印字になることが無く、発熱素子30aにおける急激な温度低下が発生しないと推定されるため、パターン設定部62は、スティッキング対策対象ドット群セットの全てのドット群(n、n+1、n+2)において、ドットQ2を第2の通電制御期間TBでの通電の対象に含めない。
【0069】
ドットQ3及びドットQ4については、第(n-1)ドット群において本通電データが最大階調に対応し、第nドット群及び第(n+1)ドット群で本通電データが非印字(非通電)である。第(n-1)ドット群と第nドット群との階調差が大きく、発熱素子30aで急激な温度低下が発生しやすいと推定されるため、パターン設定部62は、第nドット群と第(n+1)ドット群について、ドットQ3及びドットQ4を第2の通電制御期間TBでの通電の対象に含める。
【0070】
また、第(n+2)ドット群では、ドットQ3及びドットQ4の本通電データが中間階調に対応する。中間階調の印字用に発熱素子30aを発熱させてスティッキングの発生可能性が低減するので、パターン設定部62は、第(n+2)ドット群について、ドットQ3及びドットQ4を第2の通電制御期間TBでの通電の対象に含めない。
【0071】
ドットQ5及びドットQ6については、第(n-1)ドット群における本通電データが最大階調に対応し、スティッキング対策対象ドット群セットの全てのドット群(n、n+1、n+2)における本通電データが非印字(非通電)である。そのため、発熱素子30aの急激な温度低下が発生しやすい条件であり、パターン設定部62は、スティッキング対策対象ドット群セットの全てのドット群(n、n+1、n+2)において、ドットQ5及びドットQ6を第2の通電制御期間TBでの通電の対象に含める。
【0072】
ドットQ7については、第(n-1)ドット群における本通電データが中間階調に対応するものであり、スティッキング対策対象ドット群セットの全てのドット群(n、n+1、n+2)における第1の通電制御期間TAでの本通電データが非印字(非通電)である。ドットQ7は、非印字の第nドット群の1つ前の第(n-1)ドット群が中間階調での印字であり、第(n-1)ドット群の印字の際に発熱素子30aがあまり高温にならず、その後の急激な温度低下が発生しないと推定される。そのため、パターン設定部62は、スティッキング対策対象ドット群セットの全てのドット群(n、n+1、n+2)において、ドットQ7を第2の通電制御期間TBでの通電の対象に含めない。
【0073】
ドットQ8については、第(n-1)ドット群とスティッキング対策対象ドット群セットの全てのドット群(n、n+1、n+2)における本通電データが非印字(非通電)である。そのため、発熱素子30aの急激な温度低下は発生せず、パターン設定部62は、スティッキング対策対象ドット群セットの全てのドット群(n、n+1、n+2)において、ドットQ8を第2の通電制御期間TBでの通電の対象に含めない。
【0074】
以上のようにして、パターン設定部62によって各ドット群での対策データが生成される。パターン設定部62による対策データのパターン設定をまとめると、スティッキング対策対象ドット群セットの各ドット群(n、n+1、n+2)において、1つ前のドット群で最大階調で印字され且つ当該ラインで非印字である印字領域について、第2の通電制御期間TBにおいて発熱素子30aに通電を行うように対策データを生成する。
【0075】
パターン設定部62による対策データのパターン設定を別の態様でまとめると、第nドット群において第2の通電制御期間TBで発熱素子30aに通電を行い、且つ後続ドット群において第2濃度以下である印字領域については、後続ドット群において第2の通電制御期間TBで発熱素子30aに通電を行う。具体的には、第(n+1)ドット群のドットQ3からドットQ6と、第(n+2)ドット群のドットQ5及びドットQ6が該当する。また、第nドット群において第2の通電制御期間TBで発熱素子30aに通電を行い、且つ後続ドット群において第2濃度を超える印字領域については、後続ドット群において第2の通電制御期間TBで発熱素子30aに通電を行わない。具体的には、第(n+2)ドット群のドットQ3及びドットQ4が該当する。
【0076】
本通電データが最大階調であるドットについては、1ドット周期中に最大階調での印字が行われた後に対策データに基づく発熱素子30aの通電を行っても、既に最大階調で印字されている当該ドットの印字表現が目立って変化することがなく、印刷品質に実質的な影響を及ぼさない。これに対し、本通電データが中間階調であるドットについては、1ドット周期中に対策データに基づく発熱素子30aの通電を行うと、発熱素子30aの加熱で当該ドットが本来の印字階調よりも濃くなるなどして、印刷品質に影響が及ぶ可能性がある。
【0077】
本実施形態のパターン設定部62における対策データの生成では、第1の通電制御期間TAでの本通電データが中間階調に対応するドットについては、第2の通電制御期間TBで発熱素子30aを非通電にしている。その結果、第2の通電制御期間TBでのスティッキング対策用の発熱素子30aの通電が印刷品質に影響を及ぼすことを防ぎ、多階調印刷におけるスティッキング対策と印刷品質の高さとを両立させることができる。
【0078】
なお、図6の例では、第(n-1)ドット群には第2の通電制御期間TBでの通電を行っていないが、ドット群数設定部61は、第(n-1)ドット群をスティッキング対策対象ドット群セットに含めてもよく、パターン設定部62は、第(n-1)ドット群用の対策データを生成してもよい。
【0079】
例えば、図6のドットQ3、ドットQ4、ドットQ5及びドットQ6については、第(n-1)ドット群で本通電データによる第1の通電制御期間TAでの発熱素子30aの通電を行った後に、第nドット群で対策データによる第2の通電制御期間TBでの発熱素子30aの通電を行うまでに、1ドット周期以上の期間が空くことになる。そこで、第(n-1)ドット群において、対策データによる第2の通電制御期間TBでの発熱素子30aの通電を行うことにより、第(n-1)ドット群と第nドット群との間での発熱素子30aの急激な温度低下を抑制しやすくなる。
【0080】
データ生成部60は、以上のようにして生成された対策データを、ヘッド制御部70へ出力する。
【0081】
ヘッド制御部70は、第1の通電制御期間TAと第2の通電制御期間TBの通電及び非通電を指定する制御信号であるストローブ信号を生成し、ヘッド駆動回路44へ出力する。ヘッド制御部70は、より詳細には、ROM41に記憶された通電テーブルから読み出した通電時間データとサーミスタ31で測定したヘッド温度とに基づいて、第1の通電制御期間TAの通電時間(例えば、図4の通電時間P1-P7のそれぞれ)と第2の通電制御期間TBの通電時間(例えば、図4の通電時間P8)を算出する。そして、通電時間に応じたストローブ信号(制御信号)と、印刷データと、データ生成部60で生成された対策データと、をヘッド駆動回路44へ出力する。
【0082】
以上のように構成及び制御される印刷装置10によれば、対策データに基づいて第2の通電制御期間TBにおける複数の発熱素子30aへの通電を制御することで、サーマルヘッド30の急激な温度低下を抑制することができる。従って、簡単な制御でスティッキングの発生を抑制することができ、スティッキングに起因する印刷品質の低下を回避することができる。
【0083】
特に、判定部50で、上記の第1条件及び第2条件に基づいてスティッキング発生推定ドット群を判定することによって、スティッキングが発生する状況を高精度に切り分けることが可能になっている。その結果、スティッキング発生対策(第2の通電制御期間TBでの発熱素子30aへの通電)の実施を必要最小限に抑えることができる。スティッキング発生対策の実施を必要最小限にすることで、電力消費を抑制する効果が得られる。
【0084】
また、従来の制御方法では、スティッキング発生対策が不要な状況でも、第2の通電制御期間TBにおいて発熱素子への通電が実行されてしまう場合があった。第2の通電制御期間TBでの発熱素子への通電は、印刷を行うことなくサーマルヘッドを温度調整するためのものであるが、発熱素子に加熱を行うことで印刷品質に影響が及ぶ可能性があるため、不要なスティッキング発生対策はできるだけ実施しないことが望ましい。特に、3階調以上の多階調で印刷可能な印刷装置では、中間階調での印字に続いてスティッキング発生対策用の通電を行うと、本来の印刷データよりも印字の濃度が高くなってしまうおそれがある。
【0085】
本実施形態の印刷装置10では、判定部50での判定に基づいてスティッキング発生対策の実施を必要最小限にすると共に、データ生成部60(パターン設定部62)によって、階調表現に影響が生じない設定(本通電データが中間階調での印字の場合に、スティッキング対策用の通電は行わない)で対策データを生成している。これにより、スティッキング発生対策が階調表現に影響を及ぼすことを防いで、優れた印刷品質を実現できる。
【0086】
図7は、印刷装置10におけるスティッキング対策処理のフローチャートである。図8は、スティッキング対策処理に含まれるスティッキング発生推定ドット群の判定処理のフローチャートである。図7及び図8を参照して、印刷装置10が行うスティッキング対策の流れについて説明する。
【0087】
印刷装置10の制御装置40は、印刷データが入力されると、図7に示すスティッキング対策処理を開始する。まず、スティッキング発生推定ドット群の判定処理(ステップS100)が実行される。
【0088】
スティッキング発生推定ドット群の判定処理は、図8に示すサブルーチンで実行される。判定部50は、印刷データの各ドット群のドット群データに含まれる、8ドット連続した印刷ドットを示すデータ“0xff”をカウントし、1つのドット群のドット数(0xff数)を取得する(ステップS200)。
【0089】
続いて、判定部50の先行ドット群判定部51は、第nドット群の1つ前の第(n-1)ドット群における第1濃度以上のドット数の割合が、第1の閾値以上であるかを判定する(ステップS201)。例えば、第(n-1)ドット群における最大階調のドット数と、第(n-1)ドット群の全ドット数とを比較して、前者のドット数が後者のドット数の3分の2(第1の閾値)以上であるか否かを判定する。
【0090】
ステップS201での判定結果がYES(第1の閾値以上)である場合、判定部50の比較部52は、第(n-1)ドット群の第1濃度以上の印字領域と、第nドット群で第1濃度よりも低い第2濃度を超える印字領域との比が、第2の閾値以上であるか否かを判定する(ステップS202)。例えば、第(n-1)ドット群における最大階調のドット数と、第nドット群における非印字ドット以外のドット数とを比較して、前者のドット数が後者のドット数の1.5倍(第2の閾値)以上であるか否かを判定する。
【0091】
ステップS202での判定結果がYES(第2の閾値以上)である場合、判定部50は、第nドット群がスティッキング発生推定ドット群であるというフラグをセットする(ステップS203)。
【0092】
続いて、制御装置40は、第nドット群が印刷データの最終ドット群であるか否かを判定する(ステップS204)。
【0093】
ステップS202及びステップS203での判定結果がNOである場合は、ステップS203のフラグセットを経ずに、ステップS204に直接進む。つまり、これらの場合は、第nドット群がスティッキング発生推定ドット群ではない、という判定結果になる。
【0094】
ステップS204での判定結果がNO(最終ドット群ではない)の場合は、制御装置40は、nの数を1つ増やすドット群の更新処理を行い(ステップS205)、ステップS200に戻る。
【0095】
ステップS204での判定結果がYES(最終ドット群である)の場合は、制御装置40は、図8のサブルーチンから抜けて図7のステップS100を完了する。ステップS100の完了段階で、印刷データの先頭ドット群以外の各ドット群について、スティッキング発生推定ドット群であるか否かが判別された状態にある。
【0096】
続いて、制御装置40は、第nドット群の本通電データを展開し(ステップS101)、本通電データを展開した当該第nドット群におけるスティッキング発生推定ドット群のフラグの有無を判定する(ステップS102)。
【0097】
ステップS102での判定結果がYES(第nドット群がスティッキング発生推定ドット群である)の場合、データ生成部60は、ステップS101で展開した本通電データに基づいて、第nドット群を含むスティッキング対策対象ドット群セットについて対策データを生成する(ステップS103)。
【0098】
ステップS103では、ドット群数設定部61によって、スティッキング対策対象ドット群セットに含まれるドット群の数を設定する。また、パターン設定部62によって、スティッキング対策対象ドット群セットの各ドット群の対策データを作成する。具体的には、パターン設定部62は、1つ前のドット群で最大階調で印字され且つ当該ドット群で非印字であるドットについて、第2の通電制御期間TBにおいて発熱素子30aに通電を行うように対策データを生成する。
【0099】
ステップS102での判定結果がNO(第nドット群がスティッキング発生推定ドット群ではない)の場合、第nドット群について新たな対策データの作成は行わず、既存の対策データを適用する(ステップS104)。つまり、第nドット群が、それよりも前のドット群に関するスティッキング対策対象ドット群セットに含まれる場合には、既に作成されている第nライン用の対策データをそのまま適用して、本通電データと組み合わせて、第nドット群の最終的なドット群データとして確定する。また、第nドット群が、それよりも前のドット群に関するスティッキング対策対象ドット群セットに含まれない場合には、第nドット群に関する対策データは存在しない(言い換えれば、第2の通電制御期間TBでいずれの発熱素子30aにも通電しないという対策データになっている)ので、本通電データを第nドット群の最終的なドット群データとして確定する。
【0100】
ステップS103又はステップS104に続いて、制御装置40は、第nドット群が印刷データの最終ドット群であるか否かを判定する(ステップS105)。
【0101】
ステップS105での判定結果がNO(最終ドット群ではない)の場合は、nの数を1つ増やすドット群の更新処理を行い(ステップS106)、ステップS101に戻る。
【0102】
ステップS105での判定結果がYES(最終ドット群である)の場合は、図7の処理を完了する。図7の処理が完了した段階で、印刷データの各ドット群について、対策データを含むドット群データが確定された状態にある。
【0103】
以上のフローチャートに沿った処理を行うことによって、スティッキング発生対策の実施を必要最小限にして、スティッキング発生対策による印刷品質への影響を抑制することができる。また、スティッキング発生対策に要する電力消費を抑えることができる。
【0104】
上記実施形態の印刷装置10は、3以上の多階調の印刷が可能であるが、本発明は2階調で印刷するタイプの印刷装置にも適用が可能である。
【0105】
図9を参照して、2階調で印刷する別形態の印刷装置における、スティッキング発生推定ドット群の判定方法と、対策データのパターン設定方法について説明する。この別形態の印刷装置は、上記実施形態の印刷装置10と同様の構成を備えており、各部の構成については詳細な説明を省略して、印刷装置10の構成と同じ符号で表現する。
【0106】
図9では、本通電データにおいて、発熱素子30aを発熱させて印字する場合を黒丸で示し、発熱素子30aを発熱させずに非印字にする場合を白丸で示している。また、対策データにおいて、発熱素子30aに通電する場合を斜線付きの丸で示し、発熱素子30aに通電しない場合を破線の白丸で示している。
【0107】
2階調での印刷の場合、判定部50は、本通電データにおける印字有りの箇所を第1濃度の印字領域、非印字の箇所を第2濃度の印字領域として扱う。従って、判定部50は、先行ドット群判定部51でのスティッキング発生の第1条件を、「第(n-1)ドット群における印字ドット数が、テープ20の幅方向の全ドット数の3分の2以上であること」に設定する。また、比較部52でのスティッキング発生の第2条件を、「第(n-1)ドット群の印字ドット数が、第nドット群の非印字ドット以外のドット数の1.5倍以上であること」に設定する。
【0108】
図9の例では、第(n-1)ドット群の本通電データにおいて、印字するドット数が6であり、テープ20の幅方向の全ドット数が8であるため、第1条件を満たす。また、第(n-1)ドット群の本通電データにおいて印字するドット数が6であり、第nドット群の本通電データにおいて非印字ドット以外のドット数が2であるため、第2条件を満たす。従って、判定部50は、第nドット群がスティッキング発生推定ドット群であると判定する。
【0109】
以上のようにして、判定部50によるスティッキング発生推定ドット群の判定を行うことで、スティッキング発生対策の実施を必要最小限にする効果が得られる。
【0110】
データ生成部60のドット群数設定部61は、スティッキング発生推定ドット群であると判定された第nドット群と、第nドット群の後に連続する2つのドット群である第(n+1)ドット群及び第(n+2)ドット群とを、スティッキング対策対象ドット群セットに設定する。
【0111】
パターン設定部62は、注目する印字領域(発熱素子30a)について、第(n-1)ドット群での本通電データが印字であり、第nドット群での本通電データが非印字(非通電)である場合に、第2の通電制御期間TBで通電を行うように、第nドット群における対策データを生成する。
【0112】
また、パターン設定部62は、第nドット群の後続ドット群である第(n+1)ドット群及び第(n+2)ドット群については、第nドット群の対策データと同じ対策データを適用する。
【0113】
第(n+2)ドット群の本通電データは、第nドット群及び第(n+1)ドット群の本通電データとは異なり、ドットQ1及びドットQ2に加えてドットQ3及びドットQ4でも印字するものとなっている。従って、第(n+2)ドット群では、ドットQ3及びドットQ4において、第1の通電制御期間TAでの本通電を行った後に、第2の通電制御期間TBでの対策用の通電を行う。2階調印刷の場合、本通電データが印字であるドットについては、同じ1ドット周期中に対策データに基づく発熱素子30aの通電を行っても、既に印字されている当該ドットの印字表現が目立って変化することがない。従って、第(n+2)ドット群の対策データを、第nドット群及び第(n+1)ドット群の対策データと同じ内容にしても、印刷品質に実質的な影響を及ぼさない。そして、スティッキング対策対象ドット群セットの各ドット群の対策データを共通化することで、対策データを生成するための処理負担を軽減できる。
【0114】
以上の実施形態は、発明の理解を容易にするために具体例を示したものであり、本発明はこの実施形態に限定されるものではなく、発明の要旨を逸脱しない範囲において、さまざまな変形、変更が可能である。
【0115】
例えば、上記実施形態では、発色層を含むテープ20を被印刷媒体とする感熱方式の印刷装置10に適用しているが、テープと重ねて搬送されるインクリボンを加熱してインクリボンのインクをテープに付着させる熱転写方式の印刷装置にも適用が可能である。熱転写方式の印刷装置は、図9を参照して説明した2階調タイプの印刷装置での採用が多い。
【0116】
上記実施形態の印刷装置10は、複数種類のテープ幅のテープ20に印刷することが可能であるが、一つの固定値のテープ幅のテープだけを印刷する印刷装置に本発明を適用することも可能である。この場合、テープ幅に対応してサーマルヘッドの発熱素子の数が一義的に決まる。そのため、判定部が行うスティッキング発生推定ドット群の判定の第2条件について、第(n-1)ドット群の第1濃度以上の印字領域と、第nドット群で第2濃度を超える印字領域との比ではなく、これらの各印字領域に対応する発熱素子の個数の差によって第2の閾値を決めることも可能である。従って、本発明において第2の閾値に関する比較結果は、上記2つのドット群の上記印字領域の比として求めてもよいし、あるいは上記2つのドット群の上記印字領域に対応する発熱素子の個数の差として求めてもよい。
【0117】
上記実施形態では、スティッキング対策制御において、先行の第1ドット群と後続である第2ドット群とが連続する場合に基づいて説明したが、第1ドット群と第2ドット群が連続しない場合、すなわち、第2ドット群が第1ドット群から2回以上後のドット周期である場合にも、本発明は適用が可能である。例えば、第1ドット群から2回後のドット周期に第2ドット群を設定する場合には、上記実施形態の第(n-1)ドット群を第(n-2)ドット群と読み替えることで適用可能である。
【0118】
また、本発明を適用する印刷装置や印刷方式は、上記実施形態や変形例には限定されず、スティッキングが発生する可能性があるものであればよい。
【符号の説明】
【0119】
10 :印刷装置
15 :カセット収納部
20 :テープ(被印刷媒体)
21 :テープカセット
30 :サーマルヘッド
30a :発熱素子
31 :サーミスタ
32 :プラテンローラ
40 :制御装置
40a :プロセッサ
41 :ROM
42 :RAM
44 :ヘッド駆動回路
49 :温度センサ
50 :判定部
51 :先行ドット群判定部
52 :比較部
60 :データ生成部
61 :ドット群数設定部
62 :パターン設定部
70 :ヘッド制御部
T :1ドット周期
TA :第1の通電制御期間
TB :第2の通電制御期間
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9