(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024045822
(43)【公開日】2024-04-03
(54)【発明の名称】電子機器及び時計
(51)【国際特許分類】
G04B 37/18 20060101AFI20240327BHJP
【FI】
G04B37/18 L
【審査請求】有
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022150831
(22)【出願日】2022-09-22
(71)【出願人】
【識別番号】000001443
【氏名又は名称】カシオ計算機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001254
【氏名又は名称】弁理士法人光陽国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】黒川 智康
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 隆之
(57)【要約】
【課題】外観の意匠性を向上させることができる。
【解決手段】電子機器としての時計100が、アンテナ6や各種の電子部品81等を含むモジュール10を収納する筒状の機器ケース1と、機器ケース1の外側に設けられ、ベゼル2や裏蓋部材5等の樹脂製部材は複数パーツからなる樹脂製部材と、を備え、これらの樹脂製部材(ベゼル2や裏蓋部材5等)は、少なくとも機器ケース1の周面及び底面側が外部に露出しないように構成されている。
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
モジュールを収納する筒状の機器ケースと、
前記機器ケースの外側に設けられた樹脂製部材と、
を備え、
前記樹脂製部材は、少なくとも前記機器ケースの周面及び底面側が外部に露出しないように構成されている、
ことを特徴とする電子機器。
【請求項2】
前記樹脂製部材は複数パーツからなる、
ことを特徴とする請求項1に記載の電子機器。
【請求項3】
前記樹脂製部材は、裏蓋部材を含んでおり、
前記裏蓋部材は、前記機器ケースの裏面側を覆うとともに、少なくとも側面の一部を覆うように前記裏面側の面から立ち上がる立設部を有している、
ことを特徴とする請求項1に記載の電子機器。
【請求項4】
前記裏蓋部材を形成する材料は、強化剤が添加された樹脂を含んでいる、
ことを特徴とする請求項3に記載の電子機器。
【請求項5】
前記樹脂製部材は、加飾用の外装部材を含んでおり、
前記外装部材は、前記機器ケースの表面側に配置されるとともに、少なくとも側面の一部を覆うように前記表面側から垂設される垂設部を有している、
ことを特徴とする請求項1に記載の電子機器。
【請求項6】
前記機器ケースの表面側は風防部材によって閉塞されており、
前記風防部材の少なくとも一部には、目隠し用の加飾が施されている、
ことを特徴とする請求項1に記載の電子機器。
【請求項7】
前記モジュールは、アンテナを含んでいる、
ことを特徴とする請求項1に記載の電子機器。
【請求項8】
前記樹脂製部材の外側には、ユーザが入力操作を行う操作ボタンが設けられている、
ことを特徴とする請求項1に記載の電子機器。
【請求項9】
請求項1から請求項8のいずれか一項に記載の電子機器を備えている、
ことを特徴とする時計。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電子機器及び時計に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、各種電子部品を含むモジュールを内部に収納する機器ケースを備える時計等の電子機器が知られている。
例えば特許文献1には、金属材の被覆部材と内側に配する鋳込可能な注入材とを複合一体化して形成された時計ケースが記載されている。時計ケースの裏面側には金属又は樹脂で形成された裏蓋部材が取り付けられている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、外装部材を有する時計の場合、機器ケースと外装部材とは別部材のため、材料が異なり機器ケースの色と外装部材の色とが互いに異なることが一般的である。
このため、機器ケースが外観に露出すると意匠性を損なうという問題があった。
【0005】
本発明はこうした課題を解決するためのものであり、外観の意匠性を向上させることができる電子機器及び時計を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
前記課題を解決するために、本発明に係る電子機器は、
モジュールを収納する筒状の機器ケースと、
前記機器ケースの外側に設けられた樹脂製部材と、
を備え、
前記樹脂製部材は、少なくとも前記機器ケースの周面及び底面側が外部に露出しないように構成されていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、外観の意匠性を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図2】
図1に示す時計の一部を断面にして示した斜視図である。
【
図3】
図1におけるA-A線に沿う時計の断面図である。
【
図4】
図1におけるB-B線に沿う時計の断面であり、内部に収容されているモジュールを取り除いた状態を示す要部断面図である。
【
図5】
図1におけるC-C線に沿う時計の断面であり、内部に収容されているモジュールを取り除いた状態を示す要部断面図である。
【
図6】
図5において破線で囲んで示すVI部分の要部拡大断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
図面を参照しつつ、本発明に係る電子機器及び時計の一実施形態について説明する。本実施形態では電子機器が使用者の腕に装着して用いられる時計である場合を例示して説明する。
なお、以下に述べる実施形態には、本発明を実施するために技術的に好ましい種々の限定が付されているが、本発明の範囲を以下の実施形態及び図示例に限定するものではない。
【0010】
[構成]
図1は、本実施形態における時計の正面図であり、
図2は、
図1に示す時計の一部を断面にして示した斜視図である。また
図3は、
図1におけるA-A線に沿う時計の断面図であり、
図4は、
図1におけるB-B線に沿う時計の断面図であり、
図5は、
図1におけるC-C線に沿う時計の断面図である。
図6は、
図5において一点鎖線で囲ったVI部分の拡大図である。なお、
図3以外の図面において、機器ケース1内部に収納されたモジュール10(モジュール10を構成する回路基板8等)の図示を省略している。
【0011】
図1から
図6に示すように、本実施形態における時計100は、機器ケース1を有している。
本実施形態の機器ケース1は、上下が開口した中空の短柱形状に形成された筒状の部材である。機器ケース1内部の中空部分は、時計100のモジュール10等、各種部品を収納する収納空間を構成している。
機器ケース1は、例えばバイオマスプラスチック、エンジニアリング・プラスチック、スーパーエンジニアリング・プラスチック等の比較的硬質の合成樹脂によって形成されている。なお、機器ケース1を形成する材料はここに例示したものに限定されない。
【0012】
機器ケース1が樹脂製のケースである場合、機器ケース1を形成する樹脂材料に、各種添加物を添加してもよい。後述するように本実施形態において機器ケース1内部に収納されるモジュール10(
図3参照)には、例えばアンテナ6(アンテナ6のアンテナ素子(アンテナエレメント)部分)が含まれている。
機器ケース1内にアンテナ6が含まれる場合、機器ケース1を形成する樹脂材料に添加される添加物としては、例えば樹脂材料の誘電率の調整等、アンテナ感度の向上のための添加物が考えられる。なお添加される添加物の種類や添加する量等は、必要な調整の内容によって適宜設定される。
また、機器ケース1の耐水圧性・耐衝撃性等の強度を向上させるために、機器ケース1を形成する樹脂材料に例えばガラス繊維やカーボン繊維等の各種強化剤を添加してもよい。
【0013】
機器ケース1の外側面であって
図1における上下位置(アナログ時計における12時位置と6時位置)には、バンド111が取り付けられる一対のバンド取付け部11(
図1参照)が設けられている。
また、機器ケース1の
図1における左右側部等には、ユーザが各種入力操作を行う各種操作ボタン12(押ボタンやりゅうず等)が設けられている。即ち、操作ボタン12は、機器ケース1の外側に設けられた樹脂製部材(ベゼル2や加飾部品23等)の外側に設けられている。このため、機器ケース1が樹脂製部材でほぼ覆われている場合でも操作ボタン12の操作性を損なわない。
図1等に示す例では機器ケース1の側部であって、アナログ時計におけるほぼ2時位置、4時位置、8時位置、9時位置、10時位置に、それぞれ操作ボタン12として押ボタンが設けられている。
【0014】
また機器ケース1の表面側(時計における視認側)の開口部は、風防部材3により閉塞されている。風防部材3は、例えばガラス材料や可視光に対して透明な樹脂材料等により形成された透明な部材(カバーカラス)である。
図1から
図5に示すように、風防部材3は機器ケース1の開口部を塞ぐことが可能な径を有する円盤状に形成されている。本実施形態における機器ケース1の表面側の開口部には、内周に沿って段部15(
図6等参照)が形成されており、風防部材3は、この段部15上に配置される。
【0015】
また後述するように機器ケース1の表面側には、外装部材としてのベゼル2が配置されている。
図1から
図6に示すように、ベゼル2は、風防部材3の外周縁の少なくとも一部を覆うように設けられ、風防部材3は、機器ケース1又はベゼル2に接着されている。また風防部材3は、機器ケース1の段部15の表面とベゼル2との間に挟み込まれており、これにより確実に固定される。なお、風防部材3が機器ケース1又はベゼル2に接着されていることは必須でなく、機器ケース1とベゼル2との間に挟み込まれることで固定されてもよい。
このように本実施形態では、風防部材3は、接着やベゼル2と機器ケース1との間に挟まれることで固定されるため、機器ケース1に圧入固定する場合等と比較して、機器ケース1の強度、剛性に依存しない構成となっている。
【0016】
風防部材3の裏面側(すなわち機器ケース1の内側に配置される側)にはソーラーパネル4が貼着されている。
ソーラーパネル4は、光を受光することで発電する太陽電池であり、ソーラーパネル4による光発電によって得られた発電電力は機器ケース1に収容されている二次電池に蓄えられ、時計100各部の動力源となる。
図1に示すように、本実施形態のソーラーパネル4は、時計100を正面から見た場合の平面視において、中空のリング状(環状)に形成されたパネルである。ソーラーパネル4の内径及び外径をどの程度とするかは、ソーラーパネル4による発電が必要とされる発電量等によって適宜設定される。ただリング状(環状)のソーラーパネル4の内側は、後述する表示部7による表示エリアArv(
図1に一点鎖線で示す)となる。このため、ソーラーパネル4の内径は、表示エリアArvとして確保したい範囲に応じて、表示エリアArv内にかからないように設定される。
【0017】
またソーラーパネル4は、例えば黒色等の部材であり、風防部材3を通して視認されることは外観意匠の観点から好ましくない。さらにソーラーパネル4は前述のように必要な発電量に応じた幅で設けられ、必ずしも風防部材3の外周端まで設けられるわけではない。
風防部材3しか設けられない部分(すなわち、風防部材3の下方に表示部7が配置される表示エリアArv内及びソーラーパネル4が配置されている部分以外の部分)では機器ケース1の内部が透明な風防部材3越しに視認される可能性がある。機器ケース1の内部が視認されると意匠的に好ましくない。
【0018】
このため本実施形態では、風防部材3の少なくとも一部に、目隠し用の加飾が施されている。具体的には風防部材3の外周側に加飾部31が設けられており、外部から視認できないように目隠しが施される。
目隠し用の加飾部31は例えばシルク印刷によって形成される。なお加飾部31を設ける手法は特に限定されない。例えば各種蒸着やメッキ等によって加飾部31を設けてもよいし、シール等を貼着することで設けてもよい。
【0019】
目隠し用の加飾部31は風防部材3の少なくとも一部に設けられればよく、具体的な位置、範囲は限定されないが、本実施形態では、風防部材3の裏面側(機器ケース1の内側に配置される側)であって、ソーラーパネル4が設けられている部分よりも外側(すなわち、表示エリアArvとの境界であるソーラーパネル4の内周辺41(
図1参照)よりも外周側)に目隠し用の加飾部31が設けられる。なお、
図1等に示す図示例において、風防部材3の外周端縁では上面が面取り加工されて斜面となっており、網掛けで示す加飾部31はソーラーパネル4の内周辺41よりも外周側であって斜面の手前まで設けられている例を示している。しかし加飾部31は、風防部材3の外周端縁の傾斜した部分も含む範囲に広く設けられていてもよい。
これにより、時計100の表面側(視認側)から時計100を見た場合、面方向の中央部分から順に、表示部7の表示エリアArv、ソーラーパネル4、目隠し用の加飾部31が配置され、ガラス等の透明部材である風防部材3越しに機器ケース1内が透けて見えるのを防いで、美しい外観とすることができる。
【0020】
また、前述のように機器ケース1の表面側には、加飾用の外装部材としてのベゼル2が配置されている。ベゼル2は、例えばねじ9(
図1参照)等によって取り付けられる。なおベゼル2を取り付ける手法(固定手法)は特に限定されず、ねじ9以外の各種取り付け手段(固定手段)を用いることができる。ベゼル2は、風防部材3の外周端縁を囲んで風防部材3を上方から押さえるように配置される。ベゼル2は、例えばウレタン等の柔軟性(弾性)を有する樹脂材料で形成されており、時計100を視認側からの方向から見た場合に、ほぼ環状に形成された部材である。
ベゼル2をウレタン等の樹脂材料で形成することで、ベゼル2の軽量化を実現することができるとともに、金属加工による場合よりも加工が容易であり、また形状の自由度も向上する。さらに、樹脂材料(特にウレタン等の柔軟性(弾性)を有する材料)のベゼル2を時計100の外装部材として設けることで、外部からの衝撃をベゼル2で受けることができ、機器ケース1が直接衝撃を受けるのを防ぐことができる。このため、金属材料でベゼル2を形成した場合と比べて、時計100の耐衝撃性も向上する。
【0021】
本実施形態において外装部材としてのベゼル2は、機器ケース1の表面側に配置されるとともに、少なくとも側面の一部を覆うように表面側から垂設される垂設部を有している。
具体的には本実施形態のベゼル2は、第一ベゼル21と、第一ベゼル21に保持された第二ベゼル22とを含んでいる。例えば
図1等に示すように、第一ベゼル21は、ベゼル2の周方向に沿って、アナログ時計における3時位置、6時位置、9時位置、12時位置の4箇所等において他の部分よりも突出しており、第一ベゼル21がこの突出した部分において第二ベゼル22を挟み込むことで第一ベゼル21と第二ベゼル22とが一体化されている。
【0022】
ベゼル2の表面(上面)は、第一ベゼル21の4箇所の突出部分と、第二ベゼル22のうち第一ベゼル21(第一ベゼル21の突出部分)によって覆われずに露出している部分によって構成されている。
また、
図1におけるA-A断面、B-B断面、C-C断面のいずれにおいても、ベゼル2の一部は、機器ケース1の表面(上面)側から機器ケース1の少なくとも側面の一部を覆うように表面側から垂設されている。例えば
図2及び
図3から
図6に示す例では、第一ベゼル21の一部が機器ケース1の側面側に回り込んでいる。機器ケース1の側面側に回り込んでいる部分がベゼル2における垂設部となる。
【0023】
なお、ベゼル2が第一ベゼル21と第二ベゼル22とで構成されていることは必須ではない。ベゼル2は機器ケース1の表面側から側面側まで回り込むように形成された一体の部材であってもよい。また本実施形態では前述のように機器ケース1の側面の複数個所に操作ボタン12が取り付けられており、ベゼル2は操作ボタン12を避けるように配置されているが、操作ボタン12を設けることは必須ではない。操作ボタン12を設けない場合には機器ケース1の表面側から側面側までを一つながりに覆うようなベゼル2を設けてもよい。
【0024】
機器ケース1の裏面側(時計における非視認側)の開口部分は、裏蓋部材5により閉塞されている。
図2、
図3等に示すように、裏蓋部材5は、例えば防水リング5a等を介して機器ケース1に取り付けられている。防止リング5a等を介して裏蓋部材5を取り付けることで、機器ケース1内の防水性(気密性)を確保した状態で、機器ケース1の裏面側(時計における非視認側)の開口部分を閉塞することができる。
【0025】
裏蓋部材5は、例えばバイオマスプラスチック、エンジニアリング・プラスチック、スーパーエンジニアリング・プラスチック等の比較的硬質の合成樹脂によって形成されている。
本実施形態において裏蓋部材5を形成する樹脂材料には、例えばガラス繊維やカーボン繊維等の各種強化剤が添加されている。裏蓋部材5を形成する樹脂材料にカーボン繊維等の強化剤を添加することで、裏蓋部材5の強度が向上し、大きな水圧等の外圧がかかった場合にも撓みや変形を生じないようにすることができる。また圧力がかかっても割れたりひびが入ったりしにくくなり、時計100の耐水圧性、耐衝撃性等を高めることができる。
【0026】
裏蓋部材5は、ほぼ皿状の部材であり、機器ケース1の裏面側を覆う裏蓋本体51を有するとともに、少なくとも機器ケース1の側面の一部を覆うように裏面側の面(すなわち裏蓋本体51)から立ち上がる立設部52を有している。立設部52は裏蓋本体51の外周端縁から立ち上がるが、外周に沿う全周において同じ高さで立ち上がる必要はない。例えば
図3等に示す例では、操作ボタン12が設けられている部分(
図3において左側参照)では立設部52はほとんど立ち上がらず、操作ボタン12が設けられていない部分(
図3において右側参照)では機器ケース1の表面側から垂設されるベゼル2と接するくらいの高さまで立設部52が立ち上がっている。
【0027】
さらに本実施形態では、機器ケース1の表面側から垂設されるベゼル2(ベゼル2の垂設部)と裏蓋部材5(裏蓋部材5の立設部52)との間に、加飾部品23が配置されている。加飾部品23は視認側からの平面視でほぼリング状(環状)に形成されている。
加飾部品23は、例えばベゼル2と同様のウレタン等の柔軟性(弾性)を有する樹脂材料で形成されており、ベゼル2や裏蓋部材5とは異なる色に着色されている。加飾部品23はベゼル2の垂設部と裏蓋部材5の立設部52との間に挟み込まれることで固定されており、ベゼル2と裏蓋部材5との間に部分的に覗くことで挿し色を加え、時計100の外観の意匠性を高めることができる。
またベゼル2や加飾部品23といった機器ケース1の表面側や側面に設けられる部材をウレタン等、柔軟性(弾性)を有する材料で形成することで、これらの部材によって囲まれた機器ケース1に対して直接的に強い衝撃が加わるのを防ぐことができる。これにより時計100を耐衝撃性に優れる構造とすることができる。
【0028】
本実施形態では、ウレタン等で形成されたベゼル2や加飾部品23と、高剛性の樹脂材料で形成された裏蓋部材5とが全て機器ケース1の外側に設けられた樹脂製部材となる。
そして裏蓋部材5が機器ケース1の裏面側から側面の一部を覆い、環状の加飾部品23を介して、機器ケース1の表面側(視認側)から設けられたベゼル2と一体化され、風防部材3の設けられている部分を除いて機器ケース1の周りをほぼ覆うような構造となっている。これにより樹脂製部材によって、少なくとも機器ケース1の周面(側面)及び底面側が外部に露出しないように構成されている。
また機器ケース1を取り囲む樹脂製部材は、ベゼル2、加飾部品23、裏蓋部材5という複数パーツから構成されている。
なお、加飾部品23はベゼル2と一体的に形成された一部品であってもよい。さらに、裏蓋部材5からベゼル2までを一体的に形成された一部品としてもよく、この場合には機器ケース1を取り囲む樹脂製部材を、繋ぎ目のない一体構造とできる分、より高度な耐水性、耐水圧性、耐衝撃性等を実現することができる。
【0029】
また前述のように、中空の機器ケース1内部には、図示しない各種モータ等を含む時計ムーブメント等を含むモジュール10(
図3参照)が収納されている。本実施形態においてモジュール10は、例えばアンテナ6、表示部7、回路基板8等を備えている。
表示部7は、例えば液晶ディスプレイ(LCD:Liquid Crystal Display)等を備える液晶パネルユニットである。本実施形態では、表示部7が表示エリアArv内において時刻表示や日付表示、その他各種の情報を表示させるようになっている。なお、表示部7は、液晶パネルユニットに限定されない。例えば有機エレクトロルミネッセンスディスプレイその他のフラットディスプレイ等で構成されていてもよい。また表示部7はデジタル方式で表示するものに限定されず、指針を有するアナログ方式や、デジタルとアナログのハイブリット方式で表示するものでもよい。
また回路基板8は、各種の電子部品81(
図3参照)等をその表側又は裏側の面に実装している。
【0030】
本実施形態におけるアンテナ6は、例えば、GPS等(GPSの他、GLONASS等複数種類を含むが以下においては単に「GPS」とする)衛星から送信されるGNSS(GPS/GLONASS/QZSS/SBAS)信号を受信可能なGPSアンテナである。
本実施形態では機器ケース1の表面側の開口部近傍に、機器ケース1の内周面からケース内側に向って張り出した内向きのフランジ部16(
図6等参照)が形成されており、アンテナ6(アンテナ6のアンテナ素子(アンテナエレメント)部分)はフランジ部16上に配置されている。
【0031】
GPSアンテナにおいて所望の周波数帯は、L1帯(1.6GHz付近)、L5帯(1.2GHz付近)等であり、アンテナ6には、これらの周波数帯におけるアンテナ性能(特に右旋偏波に対応したアンテナ利得)が高いことが望まれる。しかし本実施形態のアンテナ6は、機器ケース1内に収められるためにアンテナ6(アンテナ6のアンテナ素子(アンテナエレメント)部分)のサイズや長さが小さく形成されており、電気的な距離(電気長)が短い。このため、アンテナ6で受信しやすい周波数、放射しやすい周波数が所望の周波数帯(すなわち、前述のようにGNSS(GPS)信号が送信されるL1帯(1.6GHz付近)、L5帯(1.2GHz付近)等の周波数帯)よりも高くなってしまう。
【0032】
この点、アンテナ6(アンテナ6のアンテナ素子(アンテナエレメント)部分)が収納されている機器ケース1は誘電体である樹脂材料で形成されているところ、アンテナ6が誘電体に囲まれている場合には、誘電体の比誘電率に応じて電波の波長が短くなるという現象が確認されている。すなわち誘電体中では波長自体の、もともとの一周期分の長さ(1波長分の長さ)が短くなる「電波の波長短縮」効果が認められる。
このため前述したように、本実施形態の機器ケース1には比誘電率を高めるための物質を添加物として添加することが好ましい。これにより効果的に「電波の波長短縮」効果を得ることができ、機器ケース1内に収納するためにアンテナ6(アンテナ6のアンテナ素子(アンテナエレメント)部分)を小型化しても低い周波数帯(前述のL1帯、L5帯等の所望の周波数帯)に共振させることができる。
【0033】
[作用]
前述のように本実施形態では、アンテナ6を含むモジュール10を収納する機器ケース1の外側を、ベゼル2、裏蓋部材5、加飾部品23といった樹脂製部材で取り囲み、少なくとも機器ケース1の周面及び底面側が外部に露出させないようにしている。
本実施形態では、アンテナ6の、所望の周波数帯(例えばGPSアンテナであればL1帯、L5帯等)におけるアンテナ性能(アンテナ利得)が高くなるように、機器ケース1を形成する樹脂材料には比誘電率を高める添加物を添加する。
また、機器ケース1には、その剛性を高めるために例えばガラス繊維やカーボン繊維等の強化剤が添加される場合もある。
【0034】
機器ケース1を形成する樹脂材料に添加物を添加すると、機器ケース1の色が添加物の色に左右されてしまう。
また例えばカーボン繊維は黒色であり、剛性向上のために機器ケースを形成する樹脂材料にカーボン繊維を添加した場合には、機器ケース1の色がカーボン繊維の色にも左右される。
【0035】
この点、本実施形態では前述のように機器ケース1の周面及び底面側を包み込むようにベゼル2や裏蓋部材5等の樹脂製部材を設けている。このため機器ケース1自体が外部に露出せず、外観意匠的なことを考慮する必要がない。このため機能的に望ましい材料(各種添加剤、強化剤等を添加した材料)を用いて機器ケース1を形成することができる。
【0036】
[効果]
以上のように本実施形態における電子機器である時計100は、モジュール10を収納する筒状の機器ケース1と、機器ケース1の外側に設けられた樹脂製部材と、を備え、樹脂製部材によって、少なくとも機器ケース1の周面及び底面側が外部に露出しないように構成している。
これにより、例えば機器ケース1を形成する樹脂材料に比誘電率を高めるための添加物を添加したり、剛性を高めるためのカーボン繊維等の強化剤を添加することで、機器ケース1の色等の外観的な自由度が制限されるような場合でも、機器ケース1が外部から視認されない。このため、外観意匠的な観点を考慮することなく、機能的に好ましい材料によって機器ケース1を形成することができる。
また、このように機器ケース1について意匠的な配慮がいらないため、機器ケース1に各種の塗装、メッキ、蒸着等を施す必要がなく、せっかく調整したアンテナ特性が、塗装等の後工程によってあとからずれてしまうのを防ぐこともできる。
【0037】
また本実施形態において、樹脂製部材はベゼル2、裏蓋部材5、加飾部品23といった複数のパーツからなる。
このため、製造や組立が比較的容易であり、簡易に機器ケース1を樹脂製部材で包み込むことができる。
【0038】
また本実施形態において、樹脂製部材は裏蓋部材5を含んでおり、裏蓋部材5は、機器ケース1の裏面側を覆う裏蓋本体51を有するとともに、少なくとも側面の一部を覆うように裏面側の面から立ち上がる立設部52を有している。
このように裏蓋部材5が機器ケース1の裏面(底面)側だけでなく、側面(周面)の少なくとも一部を覆うことで、継ぎ目を少なくして裏蓋部材5により機器ケース1を裏面(底面)側から包み込むことができる。これにより隙間ができるのを防いで防水性を高めることができるほか、耐衝撃性、高剛性に優れた構成を実現することができる。
【0039】
また本実施形態では、裏蓋部材5を形成する材料が、カーボン繊維やガラス繊維といった強化剤が添加された樹脂を含んでいる。
このため時計100に高い水圧等がかかった場合でも裏蓋部材5が撓んだり割れたりしにくく、耐水圧性が高いとともに、破損しにくく高剛性に優れる。
【0040】
また本実施形態において、樹脂製部材は、加飾用の外装部材であるベゼル2を含んでおり、ベゼル2は、機器ケース1の表面側(本実施形態では表面側の開口部分の周り)に配置されるとともに、少なくとも側面の一部を覆うように表面側から垂設される垂設部を有している。
このように、ベゼル2が機器ケース1の表面側だけでなく、側面(周面)の少なくとも一部を覆うことで、ベゼル2により機器ケース1を広範囲に包み込むことができる。本実施形態のベゼル2はウレタン等の柔軟性(弾性)を有する材料で形成されているため、耐衝撃性に優れ、機器ケース1及び機器ケース1内に収納されている表示部7や各種の電子部品81等を含むモジュール10をより効果的に保護することができる。
【0041】
また本実施形態において、機器ケース1の表面側は風防部材3によって閉塞されており、風防部材3の少なくとも一部には、目隠し用の加飾部31が施されている。
これにより、透明部材である風防部材3を介して機器ケース1や機器ケース1内部の各種構造物が目視されるのを防ぐことができ、優れた外観意匠を実現することができる。
【0042】
また本実施形態では機器ケース1内に収納されるモジュール10がアンテナ6を含んでいる。
所望の周波数帯(例えばGPSアンテナであればL1帯、L5帯等)におけるアンテナ性能(アンテナ利得)が高いアンテナ6を実現するためには、アンテナ6の周囲に配置される機器ケース1の比誘電率を高めることが好ましい。しかし比誘電率を高めるための添加物は、白色等であることが多く、機器ケース1を形成する樹脂材料に添加物を添加すると、機器ケース1の色が添加物の色に左右されてしまう。
このような場合でも、機器ケース1を樹脂製部材で囲んで外観に現れないようにするため、時計100等の電子機器の外観意匠を損なうことなく、所望の周波数帯において優れたアンテナ性能を実現するアンテナ6を備えることができる。これにより例えばGPS信号に含まれる時刻情報等を良好に取得して正確な時刻修正等を行うことが可能となる。
【0043】
本願では、機器ケース1の外側に設けられた樹脂製部材(ベゼル2,裏蓋部材5)が、少なくとも機器ケース1の周面及び底面側が外部に露出しないように構成されている。このため、機器ケース1の強度向上と外観の意匠性向上とを両立させることができる。
即ち、機器ケース1の内部に収容されたモジュール10等を保護するため、機器ケース1を形成する樹脂にガラス繊維やカーボン繊維等の各種強化剤を添加して、耐水圧性・耐衝撃性等の強度を向上させる場合、カーボン繊維は黒色である。また、機器ケース1の内部に搭載されたアンテナ6の感度を向上させるために、機器ケース1を形成する樹脂に比誘電率を高める添加剤を添加する場合があるが、比誘電率を高めるための添加物は白色の場合があるため、機器ケース1が外観に露出すると意匠性を損なうという問題がある。この点、機器ケース1を樹脂製部材で覆うことで、これらの問題を解決することができる。言い換えれば、機器ケース1の外周側面及び底面を他の部材で覆うことで、機器ケース1の強度や内部のアンテナ6等の電子部品への影響と時計100の外観意匠性とを両立させることが可能となる。
【0044】
また時計100が本実施形態の電子機器の構成を備えている場合には、樹脂製部材によって機器ケース1を取り囲むことで、機器ケース1自体の外観意匠を気にすることなく、アンテナ6等、機器ケース1内部に収容された部材の機能性を高めることのできる構成としながら時計100としては優れた外観意匠を実現することができる。
【0045】
[変形例]
なお、以上本発明の実施形態について説明したが、本発明は、かかる実施形態に限定されず、その要旨を逸脱しない範囲で、種々変形が可能であることは言うまでもない。
【0046】
例えば本実施形態では、機器ケース1の外側を、ベゼル2、裏蓋部材5、加飾部品23といった複数パーツからなる樹脂製部材で取り囲み、機器ケース1を外部に露出させない構成としたが、樹脂製部材は複数パーツからなるものに限定されない。
例えば裏蓋部材5における立設部52が、機器ケース1の表面側まで機器ケース1の周面全体を取り囲むように設けられていてもよい。この場合には、裏蓋部材5のみで機器ケース1の外側を取り囲む樹脂製部材が構成される。
この場合には樹脂製部材としてベゼル2等を設ける必要がないため、部品点数を少なくして簡易な構成とすることができる。
【0047】
さらに、機器ケース1は円筒形状に限定されない。例えば内部に収納されるモジュール等に応じた形状の異形とし、時計100としての外観とは異なる形状となっていてもよい。この場合でも、機器ケース1を樹脂製材料によって包み込んで外部に露出させないようにすることで、時計としての優れた外観を実現することができる。
【0048】
また例えば本実施形態は、電子機器が時計100である場合を例示し、ベゼル2や裏蓋部材5等の樹脂製部材によって機器ケース1を取り囲む構造が、時計100に搭載された場合を例示したが、樹脂製部材によって機器ケース1を取り囲む構造を適用可能な電子機器はこれに限定されない。
例えば各種のスマートウォッチ、スポーツウォッチ等のウェアラブル機器、時刻の他、心拍や血流の情報等の生体情報を表示させる心拍計や血圧計、気温や気圧等の環境情報を表示させる機器等、各種データを表示させるような電子機器に広く適用することが可能である。
【0049】
以上本発明のいくつかの実施形態を説明したが、本発明の範囲は、上述の実施の形態に限定するものではなく、特許請求の範囲に記載された発明の範囲とその均等の範囲を含む。
【符号の説明】
【0050】
1 機器ケース
2 ベゼル
23 加飾部品
3 風防部材
31 加飾部
4 ソーラーパネル
5 裏蓋部材
51 裏蓋本体
52 立設部
6 アンテナ
7 表示部
8 回路基板
100 時計(電子機器)