(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024045825
(43)【公開日】2024-04-03
(54)【発明の名称】電池冷却装置
(51)【国際特許分類】
B60K 1/04 20190101AFI20240327BHJP
H01M 10/613 20140101ALI20240327BHJP
H01M 10/625 20140101ALI20240327BHJP
H01M 10/6563 20140101ALI20240327BHJP
B60K 11/04 20060101ALI20240327BHJP
B60K 11/06 20060101ALI20240327BHJP
【FI】
B60K1/04 Z
H01M10/613
H01M10/625
H01M10/6563
B60K11/04 G
B60K11/06
【審査請求】未請求
【請求項の数】1
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022150840
(22)【出願日】2022-09-22
(71)【出願人】
【識別番号】000002967
【氏名又は名称】ダイハツ工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110003465
【氏名又は名称】弁理士法人OHSHIMA&ASSOCIATES
(74)【代理人】
【識別番号】100106024
【弁理士】
【氏名又は名称】稗苗 秀三
(72)【発明者】
【氏名】平野 聖門
【テーマコード(参考)】
3D038
3D235
5H031
【Fターム(参考)】
3D038AA05
3D038AA09
3D038AB01
3D038AC04
3D038AC11
3D038AC20
3D038AC22
3D235AA01
3D235BB45
3D235CC15
3D235DD35
3D235EE63
3D235FF38
3D235FF43
3D235HH02
3D235HH07
3D235HH16
3D235HH44
5H031KK08
(57)【要約】
【課題】空調装置から発生するドレン水を電池パックの冷却に利用する。
【解決手段】車両のフロアパネル1に電池を収容した電池パック2が搭載され、空調装置2から発生したドレン水が浸入する冷却部材11が電池パック2の表面に設けられ、冷却部材11の少なくとも一部が風に当たるように露出される。ドレン水が冷却部材11に浸入して、ドレン水の熱が電池パックに伝わり、内部の電池が冷却される。冷却部材11に風が当たることにより、浸入したドレン水が気化して、その気化熱により電池パック2が冷やされ、電池が冷却される。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両のフロアパネルに電池を収容した電池パックが搭載され、空調装置を利用して電池を冷却する電池冷却装置であって、空調装置のドレン水が浸入する冷却部材が電池パックの表面に設けられ、冷却部材の少なくとも一部が風に当たるように露出されたことを特徴とする電池冷却装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両の空調装置を利用して、フロアに搭載された電池パックを冷却する電池冷却装置に関する。
【背景技術】
【0002】
電気自動車等の車両では、フロアに電池パックが搭載され、電池の効率的な使用および電池の寿命を延ばすために、電池が高温にならないように電池を冷却する必要がある。例えば、走行風を利用した空冷方式では、冷却のために電力は消費しないが、停車中には冷却効果が得られず、外気温が高いと、冷却効率が低下する。そのため、電力は消費するが、空調装置を利用した冷却方式が採用されることが多い。例えば特許文献1に記載のように、空調装置に、電池パックに連通するダクトが設けられ、ダクトに設けられた開閉バルブの開放により空調装置で発生した冷風が電池パックに供給され、電池パック内に収容された電池が冷却される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
空調装置では、空調運転に伴ってドレン水が発生する。特許文献1に記載のように、ドレン水は、一時的に貯留されてから排出される。このドレン水を利用して、インバータ等の高温になる部材を冷却することが行われている。
【0005】
そこで、本発明は、上記に鑑み、空調装置から発生するドレン水を電池パックの冷却に利用した電池冷却装置の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の電池冷却装置は、車両のフロアパネルに電池を収容した電池パックが搭載され、空調装置を利用して電池を冷却するものであって、空調装置のドレン水が浸入する冷却部材が電池パックの表面に設けられ、冷却部材の少なくとも一部が風に当たるように露出される。
【0007】
ドレン水が冷却部材に浸入して、ドレン水の熱が電池パックに伝わり、内部の電池が冷却される。また、冷却部材に風が当たることにより、浸入したドレン水が気化して、その気化熱により電池パックが冷やされ、電池が冷却される。
【発明の効果】
【0008】
本発明によると、空調装置の使用によって発生するドレン水を電池パックの表面に導いて、ドレン水の熱および気化熱を利用することにより、電池を効率よく冷却することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】本発明の実施形態の電池冷却装置を備えた車両の概略図
【
図2】電池パックの表面に設けられた冷却部材を示す図
【発明を実施するための形態】
【0010】
本発明の実施形態に係る電池冷却装置を備えた車両を
図1に示す。モータを走行用の駆動源とする電気自動車やハイブリッド車などの車両では、フロアパネル1に電池パック2が搭載され、フロアパネル1の上方に空調装置3が設置されている。電池パック2の内部には複数の電池が収容され、電池パック2がフロアパネル1の下面に取り付けられ、電池パック2の下面は外部に露出している。
【0011】
図2に示すように、電池を冷却するために、空調装置3を利用した電池冷却装置が設けられる。空調装置3には、車室内に吹出風を導くダクトとは別に、電池パック2に連通する冷却ダクト4が設けられ、冷却ダクト4に開閉バルブ5が配設されている。図示しない制御装置により、電池の温度に基づいて開閉バルブの開閉が制御され、開閉バルブ5の開放により冷却ダクト4を通じて空調装置3からの冷風が電池パック2に送り込まれる。冷却ダクト4は電池パック2の前面に接続され、電池パック2の後面に排出ダクト6が設けられ、冷却ダクト6から吹き出された冷風は、電池パック2内の電池を冷却した後、排出ダクト6から外部に排出される。
【0012】
空調装置3では、冷房運転に伴ってエバポレータの表面に結露した水滴が滴下してドレン水が発生し、ドレン水はドレンホース10を通じて排出される。そこで、電池冷却装置では、このドレン水を活用して電池を冷却するために、ドレン水が浸入する冷却部材11が電池パック2の表面に設けられ、ドレンホース10の先端が冷却部材11に接触あるいは近接し、流れてきたドレン水が冷却部材11に供給される。なお、ドレンホース10には、非常用開口12が形成されている。冬季にドレンホース10内のドレン水が凍結して、ドレンホース10が塞がる場合があり、その場合には溜まったドレン水が非常用開口12から外部に排出される。
【0013】
冷却部材11は、浸透力の高い布やスポンジなどの生地とされ、電池パック2の下面に貼り付けられて、電池パック2の下面全体を覆う。冷却部材11の下面の前側部分を覆うように、断熱カバー13が電池パック2に取り付けられる。冷却部分11の下面の後側部分は露出して、冷却部材11の一部に走行風などの風が当たる。
【0014】
ドレンホース10を通じて供給されたドレン水は冷却部材11に浸入し、毛細管現象によって冷却部材11全体に浸透していく。冷たいドレン水を含んだ冷却部材11によって電池パック2の表面が冷やされ、内部の電池が冷却される。このとき、冷却部材11の前側部分は断熱カバー13に覆われているので、冷却部材11の前側部分に風が当たらず、冷却部材11の冷熱は電池パックに伝達される。すなわち、断熱カバー13に覆われた前側部分は、ドレン水の熱を電池パック2に伝達して電池を冷却する熱伝達エリアとされる。これにより、浸透したドレン水が気化することはなく、ドレン水によって電池パック2の表面を効率よく冷やすことができ、電池を冷却できる。
【0015】
浸透したドレン水は電池パック2に熱を奪われて、温度が上がり、水冷却部材11の後側部分に浸透していく。この後側部分は断熱カバー13に覆われていないので、冷却部材11に風が当たってドレン水が気化する。すなわち、断熱カバー13に覆われていない後側部分は、気化熱エリアとされ、ドレン水が気化するときの気化熱により電池パック2が冷やされ、電池を冷却できる。しかも、ドレン水が蒸発して冷却部材11が乾くので、前側部分からドレン水が浸透しやすくなり、ドレン水の供給が促進される。
【0016】
このように、空調装置3から生じたドレン水およびその気化熱を利用することにより、効率よく電池を冷却することができる。これにより、電池を冷却するためだけに空調装置3を作動させることを減らすことができ、空調装置3における電力消費を低減して省エネを促進でき、燃費や電費を向上させることができる。
【0017】
また、冷却部材11において、前側部分の熱伝導エリアと後側部分の気化熱エリアとに分けることにより、ドレン水による電池の冷却を効果的に行うことができる。なお、寒冷地などの外気温が低い場合、浸透力の高い生地では、氷の膜が形成されるので、氷の断熱性により電池の熱が外部に逃げるのを防ぐとともに、外部の熱の侵入を防ぐことができ、電池の温度の低下を低減できる。
【0018】
他の実施形態の電池冷却装置を
図3に示す。ドレン水を溜める貯水槽20が設けられ、貯水槽20と冷却部材11をつなぐドレンホース21に給水バルブ22が設けられ、給水バルブ22により冷却部材11へのドレン水の供給が調整される。図示しない制御装置により、貯水槽20内の水量、外気温、湿度、電池の温度に応じて給水バルブ22の開閉量が制御され、電池の温度が適正な範囲になるように冷却部材11への給水量が調整される。
【0019】
なお、本発明は、上記実施形態に限定されるものではなく、本発明の範囲内で上記実施形態に多くの修正および変更を加え得ることは勿論である。電池パック2をフロアパネル1の上面に搭載してもよい。その他の構成は上記実施形態と同じである。このとき、冷却部材11に走行風は当たらないので、ファンにより強制的に送風して、ドレン水を気化させる。ファンとして、ラジエターファンや空調装置のファンを利用したり、専用のファンを設けてもよい。また、冷却部材11として、吸水性を有する金属やセラミックスの多孔質体であってもよく、熱伝導性のよい金属やプラスチック製のチューブを電池パック2の表面に接触させて配設してもよく、チューブの後側部分に開口を設けて、風がチューブ内に流れ込むようにするとよい。
【0020】
空調装置3からの冷却ダクト4の配置に応じて、冷却部材11の熱伝導エリアと気化熱エリアを設定してもよい。例えば、電池パック2の車幅方向の一側面に冷却ダクト4が接続される場合、冷却部材11の車幅方向の一側面側が熱伝達エリアとされ、車幅方向の他側面側が気化熱エリアとされる。電池パック2の後面に冷却ダクト4が接続される場合、冷却部材11の後側部分が熱伝達エリアとされ、前側部分が気化熱エリアとされる。
【0021】
冷却部材11は、電池パック2の少なくとも一面を覆うように設ければよく、電池パック2の下面に限らず、上面、側面などの他の一面あるいは複数の面を覆うように設けてもよい。また、冷却部材11は電池パック2の一面全体を覆わずに一面の半分、例えば後側部分だけを覆うように設けてもよい。この場合、冷却部材11を断熱カバー13で覆わずに露出させる。また、冷却部材11全体を断熱カバー13で覆わずに、全て露出させてもよい。
【符号の説明】
【0022】
1 フロアパネル
2 電池パック
3 空調装置
4 冷却ダクト
5 開閉バルブ
6 排出ダクト
10 ドレンホース
11 冷却部材
13 断熱カバー
20 貯水槽