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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024045828
(43)【公開日】2024-04-03
(54)【発明の名称】移動式トイレ
(51)【国際特許分類】
   E03D 11/00 20060101AFI20240327BHJP
   E03D 5/00 20060101ALI20240327BHJP
   B60P 3/00 20060101ALN20240327BHJP
【FI】
E03D11/00 A
E03D5/00
B60P3/00 W
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022150844
(22)【出願日】2022-09-22
(71)【出願人】
【識別番号】504163612
【氏名又は名称】株式会社LIXIL
(74)【代理人】
【識別番号】110000497
【氏名又は名称】弁理士法人グランダム特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】楠目 真之
(72)【発明者】
【氏名】牧 道太郎
(72)【発明者】
【氏名】松本 ひとみ
(72)【発明者】
【氏名】渡邊 弘明
【テーマコード(参考)】
2D039
【Fターム(参考)】
2D039BA00
2D039CC00
2D039CC09
(57)【要約】
【課題】容易な移動を実現できる移動式トイレを提供する。
【解決手段】移動式トイレ1は、トイレ室20と、トイレ室20内に配置される衛生器具(汚物流し21、便器22、手洗器26、洗面器29)と、衛生器具に供給する清水を貯留する給水タンク12、及び衛生器具から排出される汚水を貯留する排水タンク13、の少なくとも一方と、を備える。移動式トイレ1は、移動時に、給水タンク12及び排水タンク13の少なくとも一方が、トイレ室20内に収納される。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
トイレ室と、
前記トイレ室内に配置される衛生器具と、
前記衛生器具に供給する清水を貯留する給水タンク、及び前記衛生器具から排出される汚水を貯留する排水タンク、の少なくとも一方と、
を備え、
移動時に、前記給水タンク及び前記排水タンクの少なくとも一方が、前記トイレ室内に収納される、移動式トイレ。
【請求項2】
前記給水タンクから供給される清水を前記衛生器具に搬送する給水ポンプ、及び前記衛生器具から排出される汚水を前記排水タンクに搬送する排水ポンプ、の少なくとも一方を備え、
移動時に、前記給水ポンプ及び前記排水ポンプの少なくとも一方が、前記トイレ室内に収納される、請求項1に記載の移動式トイレ。
【請求項3】
前記トイレ室は、前記給水タンク及び前記排水タンクの少なくとも一方を出し入れする開口部を有する、請求項1に記載の移動式トイレ。
【請求項4】
少なくとも移動時に前記給水タンク及び前記排水タンクの少なくとも一方を載せる架台を備える、請求項1及び請求項3のいずれか一項に記載の移動式トイレ。
【請求項5】
前記給水タンクから供給される清水を前記衛生器具に搬送する給水ポンプ、及び前記衛生器具から排出される汚水を前記排水タンクに搬送する排水ポンプ、の少なくとも一方を備え、
少なくとも移動時に、前記架台は、前記給水ポンプ及び前記排水ポンプの少なくとも一方を載せる、請求項4に記載の移動式トイレ。
【請求項6】
前記架台を前記トイレ室内に固定する固定部を備える、請求項4に記載の移動式トイレ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、移動式トイレに関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1は従来の移動式トイレを開示している。この移動式トイレは、筐体と、便器と、給水タンクと、汚物タンクと、を備えている。便器、給水タンク、及び汚物タンクのうち、便器は筐体内に配置され、給水タンク及び汚水タンクは、それぞれ筐体の外側に配置されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2018-112006号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1の移動式トイレを移動させる場合、筐体と、筐体外の給水タンク及び汚水タンクとを別々に移動させなければならず、煩雑である。
【0005】
本開示は、上記従来の実情に鑑みてなされたものであって、容易な移動を実現できる移動式トイレを提供することを解決すべき課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上述した課題を解決するために、本開示の一実施形態に係る移動式トイレは、トイレ室と、前記トイレ室内に配置される衛生器具と、前記衛生器具に供給する清水を貯留する給水タンク、及び前記衛生器具から排出される汚水を貯留する排水タンク、の少なくとも一方と、を備え、移動時に、前記給水タンク及び前記排水タンクの少なくとも一方が、前記トイレ室内に収納される。
【図面の簡単な説明】
【0007】
図1】実施形態1に係る移動式トイレの設置時の状態を模式的に示す横断面図である。
図2】実施形態1に係る移動式トイレの設置時の状態を模式的に示す縦断面図である。
図3】実施形態1に係るトイレ室を示す斜視図である。
図4】実施形態1に係る架台を示す側面図である。
図5】実施形態1に係る移動式トイレの移動時の状態を模式的に示す縦断面図である。
図6】実施形態1に係る移動式トイレの移動時の状態を模式的に示す横断面図である。
図7】他の実施形態に係る移動式トイレの設置時の状態を模式的に示す横断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
<実施形態1>
本開示の移動式トイレを具体化した実施形態1について、図面を参照しつつ説明する。以下の説明において、上下方向、左右方向、及び前後方向が次のように定義される。上下方向は、移動式トイレ1を設置する設置面S(図2参照)に対して直交する方向である。前後方向は、トイレ室20の出入口30Dの開口する方向である。左右方向は、これら上下方向及び前後方向のそれぞれに直交する方向である。各図に示すX軸、Y軸、及びZ軸は、それぞれ前後方向、左右方向、及び上下方向を表す。前方、左方、上方は、X軸、Y軸、及びZ軸の正方向である。
【0009】
移動式トイレ1は、トラックの荷台に積載する等して運搬することによって、移動と設置が自在である、多目的トイレである。移動式トイレ1は、図1から図3に示すように、トイレ室20と、後述する衛生器具としての汚物流し21、便器22、手洗器26、及び洗面器29と、給水タンク12と、排水タンク13とを備える。給水タンク12は、これらの衛生器具に清水を供給する。排水タンク13は、各衛生器具から排出される汚水を貯留する。
【0010】
図1及び図2に示すように、トイレ室20は、躯体50の内部に形成されている。トイレ室20内には、後述する衛生器具としての汚物流し21、便器22、手洗器26、及び洗面器29が配置されている。トイレ室20内には、これらの衛生器具を利用する車いす利用者が内部で自在に行動できる広さの空間Rが設けられている。空間Rは、例えば、トイレ室20を上方から見た平面視において、後述する衛生器具やそれに付帯するペーパーホルダ等の器具等、トイレ室20内の各器具に重ならない範囲の空間である。移動式トイレ1の移動時、給水タンク12及び排水タンク13はこの空間Rに収納される。
【0011】
図1から図3に示すように、本実施形態に係る移動式トイレ1は、本開示に係る衛生器具として、汚物流し21、便器22、手洗器26、及び洗面器29を備えている。汚物流し21、便器22、手洗器26、及び洗面器29は、それぞれトイレ室20内に配置されている。以下の説明では、汚物流し21、便器22、手洗器26、及び洗面器29を各衛生器具21,22,26,29ともいう。
【0012】
トイレ室20内には、各衛生器具21,22,26,29の他、第1キャビネット20A、第2キャビネット20B、背もたれ23、跳ね上げ手すり24、トイレットペーパーホルダー25,27等が配置されている。第1キャビネット20Aは、トイレ室20の前側に立ち上がる壁部に背面を接触させて設置されている。第2キャビネット20Bは、トイレ室20の左側に立ち上がる壁部に背面を接触させて設置されている。図1に示すように、トイレ室20の後側の壁部には、本開示に係る開口部としての出入口30Dが開口して形成されている。出入口30Dには扉30Eが設けられている。扉30Eは、左右方向にスライドすることによって出入口30Dを開閉する。扉30Eが全開された状態における出入口30Dの開口の上下左右の大きさは、後述する架台15の上下左右の大きさよりも大きい。
【0013】
図1に示すように、第1キャビネット20A及び第2キャビネット20Bの内部には、各衛生器具21,22,26,29とタンク12,13とを接続する給水路12A及び排水路13Aがそれぞれ形成されている。給水路12A及び排水路13Aは、躯体50の外部において各タンク12,13に接続される。具体的には、給水路12A及び排水路13Aは、躯体50の外部に設けられる給水ホース12B及び排水ホース13Bにそれぞれ接続されている。給水ホース12Bは、躯体50の外部に配置される給水タンク12に着脱自在に接続される。排水ホース13Bは、躯体50の外部に配置される排水タンク13に着脱自在に接続される。給水ホース12B及び排水ホース13Bは、屈曲自在な可撓性を有している。給水ホース12B及び排水ホース13Bは、それぞれ着脱部12C,13Cにおいて自在に着脱できる。着脱部12C,13Cは、例えばカプラ等の着脱手段を有して構成され得る。
【0014】
汚物流し21及び便器22は、それぞれ第2キャビネット20Bの正面に取り付けられている。汚物流し21及び便器22は、第2キャビネット20Bの正面において前後方向に並んで配置されている。ここでいう第2キャビネット20Bの正面とは、第2キャビネット20Bにおいて右向きの面である。背もたれ23は、第2キャビネット20Bの正面であって、便器22の上方に取り付けられている。跳ね上げ手すり24は、第2キャビネット20Bの正面であって、便器22と汚物流し21の間に取り付けられている。
【0015】
手洗器26及び洗面器29は、第1キャビネット20Aの上面に設けられている。手洗器26及び洗面器29は、第1キャビネット20Aの上面において左右方向に並んで配置されている。手洗器26の下方に位置する第1キャビネット20Aの正面には、トイレットペーパーホルダー27及び固定手すり28が取り付けられている。ここでいう第1キャビネット20Aの正面とは、第1キャビネット20Aにおいて後向きの面である。洗面器29は、第1キャビネット20Aの便器22から離れた位置に設けられている。
【0016】
使用者が、図示しない操作部を操作することによって、各衛生器具21,22,26,29に対し、給水タンク12に貯留された清水が供給される。例えば、操作部は、便器22においては、押しボタンや操作ハンドルである。手洗器26や洗面器29の水栓において、操作部は、使用者の手などの物体を検知するセンサである。各衛生器具21,22,26,29において使用された清水は、汚水として排水タンク13に貯留される。
【0017】
図1に示すように、給水タンク12及び排水タンク13は、移動式トイレ1の設置場所において、それぞれ躯体50の外部に配置される。給水タンク12及び排水タンク13は、それぞれ躯体50とは別体に設けられている。給水タンク12及び排水タンク13は、それぞれ各衛生器具21,22,26,29に接続される。詳細には、給水タンク12は、躯体50の外部の給水ホース12Bと、躯体50の内部の給水路12Aと、を介して各衛生器具21,22,26,29に接続される。排水タンク13は、躯体50の外部の排水ホース13Bと、躯体50の内部の排水路13Aと、を介して各衛生器具21,22,26,29に接続される。給水タンク12及び排水タンク13は、内部に貯留された清水及び汚水の量を計測する計測手段と、この計測手段の計測値に基づいてタンク12,13内の清水及び汚水の量が下限値、上限値等であることを報知する報知手段とをそれぞれ有している。
【0018】
給水タンク12に貯留される清水は、例えば、水道、井戸、プール、海、河川、池、沼、湖、ダム等、移動式トイレ1の設置場所における供給源から適宜供給される。排水タンク13に貯留された汚水は、通常は、移動式トイレ1の設置場所において排出される。例えば、排水タンク13内の汚水は、バキュームカー等の汚水回収手段によって回収される。例えば、排水タンク13内の汚水は、下水道に連通するマンホールがある場合には、ホース、ポンプ等の別途用意される汚水排出手段を介してマンホールに排出される。
【0019】
図1及び図2に示すように、本実施形態に係る移動式トイレ1は、給水ポンプ14及び排水ポンプ16を備えている。給水ポンプ14及び排水ポンプ16は、それぞれ圧送式のポンプである。給水ポンプ14は、給水タンク12及び排水タンク13と同様に、移動式トイレ1の設置場所においてそれぞれ躯体50の外部に配置される。本実施形態の場合、給水ポンプ14は、給水タンク12及び排水タンク13とともに、以下に説明する架台15に載せられている。排水ポンプ16は、躯体50内に配置される。具体的には、排水ポンプ16は、第2キャビネット20B内に配置される。
【0020】
図1及び図2に示すように、本実施形態に係る移動式トイレ1は架台15を備えている。架台15は、給水タンク12及び排水タンク13を載せる。給水タンク12及び排水タンク13は、架台15によってユニット化されている。これによって、給水タンク12及び排水タンク13は、移動式トイレ1の移動時には、架台15に載せられた状態でトイレ室20内に収納される。本実施形態の場合、給水タンク12及び排水タンク13は、移動式トイレ1の設置時においても架台15に載せられている。すなわち、給水タンク12及び排水タンク13は、移動式トイレ1の設置時においては、架台15に載せられた状態でトイレ室20の外部に配置される。
【0021】
図4に示すように、架台15は、上下2段をなす直方体状の枠体である。架台15は、上段に給水タンク12を固定し、下段に排水タンク13を固定している。架台15には、給水ポンプ14も固定されている。すなわち、移動式トイレ1は、給水タンク12及び排水タンク13に加えて、給水ポンプ14もユニット化している。
【0022】
架台15は、トイレ室20の出入口30Dの開口の大きさよりも小さく設けられている。具体的には、架台15の上下方向の大きさは、出入口30Dの開口の上下方向の大きさよりも小さい。架台15の平面視における短手方向の長さは、出入口30Dの開口の左右方向の幅よりも小さい。架台15はキャスター15Aを有している。キャスター15Aは、架台15の下端部の四隅に配置されている。これらキャスター15Aによって、架台15は、任意の位置へ自在に移動し得る。
【0023】
本実施形態に係る移動式トイレ1は固定部15Bを有している。固定部15Bは、架台15をトイレ室20に収納した状態において、架台15をトイレ室20内に固定する。図4に示すように、本実施形態の場合、固定部15Bは架台15に設けられている。固定部15Bは、架台15における上下の四隅に設けられている。各固定部15Bは、架台15から上下方向に出没自在である。固定部15Bは、架台15から突出した状態において、トイレ室20内の床面及び天井面のいずれかに接触することができる。
【0024】
上記構成の移動式トイレ1の作用及び効果について説明する。図5及び図6に示すように、移動式トイレ1は、移動時においては、躯体50とは別体の給水タンク12及び排水タンク13をトイレ室20内の空間Rに収納した積載状態にすることができる。移動式トイレ1は、移動時に、給水タンク12及び排水タンク13のみならず、給水ポンプ14及も空間Rに収納することができる。このように、移動式トイレ1は、躯体50の外部に配置される給水タンク12及び排水タンク13、並びに給水ポンプ14をトイレ室20内の空間Rに収納した積載状態にすることによって、移動時に、デッドスペースとなる空間Rを、有効活用して移動することができる。
【0025】
本実施形態の場合、移動式トイレ1は、給水タンク12及び排水タンク13を架台15でユニット化したことによって、給水タンク12及び排水タンク13の設置、移動等を容易に行うことができる。架台15は、給水タンク12及び排水タンク13に加え、給水ポンプ14もユニット化しているため、設置、移動等を一層容易に行うことができる。架台15は、トイレ室20の出入口30Dにおける開口よりも小さく設けられている。このため、架台15でユニット化されたタンク12,13及びポンプ14,16は、トイレ室20への出し入れに際して、分解したりすることなく架台15ごとそのまま出し入れ可能である。
【0026】
移動式トイレ1は、給水タンク12及び排水タンク13を躯体50とは別体に設けて躯体50の外部に配置し、これら給水タンク12及び排水タンク13を各衛生器具21,22,26,29に着脱自在に接続している。このため、移動式トイレ1は、例えば、排水タンク13の貯留量が上限に達するなどして使用不能になった場合には、他の排水タンク13に繋ぎ変えることによって継続して使用可能である。移動式トイレ1は、例えば、給水タンク12の貯留量が下限に達するなどして使用不能になった場合には、他の給水タンク12に繋ぎ変えることによって継続して使用可能である。このように、移動式トイレ1は、使用回数が制限されるのを容易に回避できる。移動式トイレ1は、設置場所において想定される使用回数に応じた大きさの給水タンク12及び排水タンク13を選択して用いることで、使用不能となることの回避を図る。
【0027】
移動式トイレ1は、トイレ室20を形成する躯体50の外部に給水タンク12及び排水タンク13を配置したことによって、躯体50内にこれらタンク12,13を設置するためのスペースを設ける必要がない。移動式トイレ1は、給水ポンプ14も躯体50の外部に配置している。このように、移動式トイレ1は、タンク12,13やこれに付随するポンプ14等の設備を設置するために従来必要であったスペースを躯体50内に設ける必要がない。
【0028】
移動式トイレ1は、従来必要であったタンク等の設備を設置するためのスペースを無くしたことによって、躯体50の小型化を実現している。移動式トイレ1において、トイレ室20の大きさは従来の多目的トイレにおけるトイレ室の大きさと同等である。しかし、移動式トイレ1は、設備設置用のスペースが躯体内にない分、従来と比較して小型化されている。
【0029】
移動式トイレ1のようにタンク等の設備を躯体の外部に配置する構成を採用すると、例えばこの不要となったスペースをトイレ室用に利用することができる。この場合、トイレ室の大きさが従来よりも大きな移動式トイレを、大型化を回避しつつ容易に実現することができる。このように、タンク等の設備を外部に配置する構成は、躯体内の空間効率の観点において極めて有効である。
【0030】
移動式トイレ1は、躯体50の外部に配置した給水ポンプ14、及び躯体50の内部に配置した排水ポンプ16を備えたことによって、給水及び排水の安定化を実現している。移動式トイレ1において、給水タンク12及び排水タンク13は、躯体50と別体であり、躯体50の外部に配置される。このように、トイレ室を形成する躯体と別体に設けられたタンクの場合、配置の自由度がある。一方、衛生器具が配置されている躯体内のトイレ室から離れすぎた場合には、重力を利用した自然流下による給排水が成立するのは困難である。移動式トイレ1は、ポンプ14,16を備えたことによって、タンクと衛生器具との間の清水及び汚水の安定した搬送を実現できる。
【0031】
移動式トイレ1は、排水ポンプ16を備えたことによって、例えば、排水タンク13の貯留水位の上限位置を、各衛生器具21,22,26,29の封止位置よりも上方に設定することができる。すなわち、移動式トイレ1では、排水ポンプ16によって汚水を搬送するため、各衛生器具21,22,26,29から排出される汚水を各衛生器具21,22,26,29よりも相対的に高い位置に搬送することができる。このため、移動式トイレ1は、排水タンク13に貯留する汚水の貯留量を容易に大きくすることができる。すなわち、移動式トイレ1は、排水勾配の影響を受けるポンプを有さない構成と比較して高さの高い排水タンク13を採用できるので、より多くの汚水を貯留できる構成を容易に得ることができる。
【0032】
なお、排水タンクの貯留水位の上限位置とは、例えば、タンク内の汚水の貯留量が所定量以上になった場合にタンク外部に汚水を排出するオーバーフロー部によって設定される水位の上限位置、計測手段としての水位センサ等に監視されることによって設定される水位の上限位置、タンクの物理的な大きさや形状等によって規定される水位の上限位置等が挙げられる。封止位置とは封止面の位置である。封止面は、配管の臭い上がり等を防止する。封止面は封止手段によって形成される。封止手段は、例えば、便器の封止手段としては、トラップ部によって形成される水封が一般的である。水封による封止では、封止面として封水面が形成される。移動式トイレ1における各衛生器具21,22,26,29における封止位置は、図示しないトラップ等によって、それぞれ同様の高さ位置に設定されている。
【0033】
本実施形態に係る移動式トイレ1のように排水ポンプを備える構成の移動式トイレは、トイレ室の低床化と排水タンクの容積確保との両立が容易である。例えば、排水ポンプを備えず、重力を利用した自然流下による排水を採用する移動式トイレは、衛生器具を排水タンクよりも上方に設ける必要がある。この場合、排水タンクの容量を大きくするために排水タンクを高さ方向に拡大しようとすると、衛生器具の配置高さ、ひいては床面高さを排水タンクの高さに合わせた高さにしなければならない。これに対し、排水ポンプを備えた移動式トイレでは、タンク容量と床面高さは、相関させることなくそれぞれ任意に設定することができる。このため、排水ポンプを備えた移動式トイレは、トイレ室の低床化と排水タンクの容積確保との両立を容易に実現できる。
【0034】
以上のように、実施形態1に係る移動式トイレ1は、トイレ室20と、このトイレ室20内に配置された各衛生器具21,22,26,29と、これら各衛生器具21,22,26,29に供給する清水を貯留する給水タンク12と、各衛生器具21,22,26,29から排出される汚水を貯留する排水タンク13と、を備えている。移動式トイレ1は、移動時に、給水タンク12及び排水タンク13がトイレ室20内に収納される。このため、移動式トイレ1は、タンクとトイレ室とを別々に運搬して移動する場合と比較して、容易な移動を実現できる。
【0035】
移動式トイレ1は、給水ポンプ14を備えている。給水ポンプ14は、トイレ室20を形成する躯体50の外部に配置され、給水タンク12から各衛生器具21,22,26,29に清水を搬送する。このため、移動式トイレ1は、各衛生器具21,22,26,29に清水を安定的に供給できる。
【0036】
移動式トイレ1は、排水ポンプ16を備えている。排水ポンプ16は、排水タンク13に各衛生器具21,22,26,29から排出される汚水を排水タンク13に搬送する。このため、移動式トイレ1は、各衛生器具21,22,26,29から排出される汚水を排水タンク13に安定的に搬送できる。
【0037】
移動式トイレ1において、トイレ室20は、給水タンク12及び排水タンク13を出し入れするための開口部としての出入口30Dを有している。この出入口30Dは、トイレ室20の使用者が出入りするための開口である。このように、移動式トイレ1は、給水タンク12及び排水タンク13をトイレ室20に出し入れするための開口部を使用者の出入りする開口である出入口30Dとして兼用している。このため、移動式トイレ1は、タンク用の開口部を別途設ける場合と比較して簡易な構成を実現できる。
【0038】
移動式トイレ1は架台15を備えている。架台15は、給水タンク12及び排水タンク13を載せる。すなわち、架台15は、移動式トイレ1の移動時にトイレ室20内に収納される給水タンク12と排水タンク13とをユニット化する。このため、移動式トイレ1は、架台15をトイレ室20内に収納することで、給水タンク12及び排水タンク13を纏めて収納することができる。
【0039】
架台15は、給水ポンプ14を載せる。すなわち、架台15は、移動式トイレ1の移動時にトイレ室20内に収納される給水ポンプ14を、給水タンク12及び排水タンク13とともにユニット化する。このため、移動式トイレ1は、架台15をトイレ室20内に収納することで、給水タンク12及び排水タンク13のみならず、給水ポンプ14も纏めて収納することができる。
【0040】
移動式トイレ1は固定部15Bを備えている。固定部15Bは、架台15をトイレ室20内に固定する。このため、移動式トイレ1は、移動時において、架台15をトイレ室20内に安定的に配置することができる。
【0041】
<他の実施形態>
本開示は上記記述及び図面によって説明した実施形態に限定されるものではなく、例えば次のような実施形態も技術的範囲に含まれる。
【0042】
本開示に係る移動式トイレにおいて、給水タンク及び排水タンクの両方を備えることは必須ではない。給水タンク及び排水タンクは、少なくとも一方が備えられていればよい。すなわち、本開示に係る移動式トイレは、(1)給水タンク及び排水タンクの両方を備える形態、(2)給水タンクのみを備える形態、及び(3)排水タンクのみを備える形態のいずれかの形態であることができる。
【0043】
上記(2)の場合、移動式トイレは、例えば、排水ホースをマンホールに落とし込んで下水道に直接排出する形態、排水ホースをバキュームカー等の汚水回収手段に直接接続して排出する形態等を採用できる。
【0044】
上記(3)の場合、移動式トイレは、例えば、給水ホースを水道等に接続して給水源から直接給水する形態等を採用できる。
【0045】
本開示に係る移動式トイレにおいて、給水ポンプを備えることは必須ではない。給水ポンプを備えない場合、移動式トイレは、例えば、給水タンクと衛生器具との間の水頭圧差によって給水される形態、水道等の給水源からの水圧によって給水される形態等を採用できる。給水ポンプを備える場合、移動式トイレは、給水ポンプを躯体内に配置してもよい。給水ポンプの種類は特に限定されない。
【0046】
本開示に係る移動式トイレにおいて、排水ポンプを備えることは必須ではない。排水ポンプを備えない場合、移動式トイレは、例えば、衛生器具と排水タンクとの間の水頭圧差によって排水される形態等を採用できる。排水ポンプを備える場合、移動式トイレは、排水ポンプを躯体の外部に配置してもよい。排水ポンプが躯体の外部に配置される場合、排水ポンプは、架台に載せられてもよい。排水ポンプの種類は特に限定されない。
【0047】
本開示に係る移動式トイレにおいて、架台を備えることは必須ではない。すなわち、本開示に係る給水タンク及び排水タンクは、移動式トイレの移動時においては、架台に載せられることなくトイレ室内に収納されてもよい。移動式トイレが架台を備える場合、給水タンク及び排水タンクは、常時架台上に載せられていてもよいし、移動時にのみ架台に載せられてもよい。移動式トイレが架台を備える場合、架台は、給水タンク及び排水タンク、並びに給水ポンプ及び排水ポンプのいずれか1つのみを載せるものであってもよい。
【0048】
移動式トイレが架台を備える場合、架台は、少なくとも2つをユニット化するものであるとよい。この場合、架台は、例えば、給水タンク及び排水タンクの組み合わせ、給水タンク及び給水ポンプの組み合わせ、排水タンク及び排水ポンプの組み合わせ、給水ポンプ及び排水ポンプの組み合わせ等、機能や水の系統に応じた組み合わせでユニット化されていることが好ましい。架台は、例えば、給水タンク及び排水タンク、並びに給水ポンプ及び排水ポンプのうちの1つのみを固定するものであってもよい。架台は、複数備えられていてもよい。架台がキャスターを有することは必須ではない。
【0049】
架台をトイレ室内に固定するための固定部を備える場合、その構成、固定方法等は上記実施形態に限定されない。固定部は、トイレ室側に設けられていてもよいし、トイレ室及び架台とは別体に設けられていてもよい。固定部は、トイレ室内の意匠性といった観点から、トイレ室側には設けられていないことが好ましい。固定部は、トイレ室の床面及び天井面に接触して架台を固定する形態に限らず、例えば、トイレ室の壁面に接触して架台を固定する形態であってもよいし、衛生器具、キャビネット等のトイレ室内の器具に対して接触して架台を固定する形態であってもよい。
【0050】
給水タンク及び排水タンクの容量は、いずれも特に限定されない。各タンクは、トイレ室の出入口における開口の大きさよりも小さいことが好ましい。この態様によれば、移動式トイレの使用者が出入りするための出入口を用いてタンクをトイレ室内に出し入れすることができる。移動式トイレは、例えば、タンクを出し入れするための開口部を出入口とは別に設けてもよい。
【0051】
給水タンク及び排水タンクを衛生器具に着脱自在に接続する形態は、上記実施形態に例示した着脱部の形態に限定されない。着脱部を設ける位置は特に限定されず、例えば、給水タンク及び排水タンク寄りの位置、躯体寄りの位置等に設けられていてもよい。着脱部は、例えば、給水及び排水のそれぞれの系統について、2箇所以上設けられていてもよい。
【0052】
排水タンクは、給水タンクよりも大きな容量であることが好ましい。排水タンクに貯留される汚水には、給水タンクから各衛生器具を経由して流入する使用後の清水の他に、し尿やロールペーパー等が流入するためである。給水タンク及び排水タンクの容量は同じであってもよい。この場合、給水タンクには、排水タンクの容量よりも少ない量の貯留水を貯留しておくとよい。これによって、給水タンクに貯留した全ての清水が、使用後にし尿やロールペーパー等とともに排水タンクに流入しても、排水タンクから汚水が溢れることを防止できる。
【0053】
本開示に係る移動式トイレにおいて、衛生器具は、一種類の衛生器具を一つ以上備える構成であればよい。例えば、図7に示す移動式トイレ201は、衛生器具として便器22のみを備えた一般的なトイレの形態である。衛生器具の種類は上記各実施形態に限定されない。衛生器具の封止方法についても特に限定されず、上記各実施形態において例示した水封の他、フラップ弁等による機械的な封止等、種々の方法を採用できる。
【0054】
本開示に係る移動式トイレの運搬方法は特に限定されない。移動式トイレは、例えば、走行するための車輪を有してもよい。すなわち、本開示に係る移動式トイレは、車輪を有して走行自在な車両型トイレであってもよい。
【符号の説明】
【0055】
1,201…移動式トイレ、12…給水タンク、13…排水タンク、14…給水ポンプ、15…架台、15B…固定部、16…排水ポンプ、20…トイレ室、21…汚物流し(衛生器具)、22…便器(衛生器具)、26…手洗器(衛生器具)、29…洗面器(衛生器具)、30D…出入口(開口部)
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7