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特開2024-45838イメージセンサーのカバー部材、観察システム、および観察方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024045838
(43)【公開日】2024-04-03
(54)【発明の名称】イメージセンサーのカバー部材、観察システム、および観察方法
(51)【国際特許分類】
   C12M 1/34 20060101AFI20240327BHJP
   C12M 1/00 20060101ALI20240327BHJP
   C12Q 1/00 20060101ALI20240327BHJP
   C12Q 1/04 20060101ALI20240327BHJP
   G01N 1/28 20060101ALI20240327BHJP
   G02B 5/00 20060101ALI20240327BHJP
【FI】
C12M1/34 B
C12M1/00 A
C12Q1/00
C12Q1/04
G01N1/28 F
G02B5/00 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022150871
(22)【出願日】2022-09-22
(71)【出願人】
【識別番号】000003078
【氏名又は名称】株式会社東芝
(71)【出願人】
【識別番号】598076591
【氏名又は名称】東芝インフラシステムズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110003708
【氏名又は名称】弁理士法人鈴榮特許綜合事務所
(72)【発明者】
【氏名】水内 理映子
(72)【発明者】
【氏名】今田 敏弘
(72)【発明者】
【氏名】橋本 勇太
(72)【発明者】
【氏名】松代 武士
(72)【発明者】
【氏名】平岡 由紀夫
【テーマコード(参考)】
2G052
2H042
4B029
4B063
【Fターム(参考)】
2G052AA28
2G052AA33
2G052AA36
2G052AB16
2G052AD06
2G052AD26
2G052AD46
2G052AD55
2G052DA12
2G052DA33
2G052GA09
2G052GA31
2H042AA06
2H042AA20
2H042AA22
4B029AA07
4B029FA03
4B063QA18
4B063QQ05
4B063QR74
4B063QS39
4B063QX01
(57)【要約】
【課題】 イメージセンサーの上に載置される試料について明瞭な画像を得ること。
【解決手段】 実施形態のイメージセンサーのカバー部材は、撮像装置に備えられるイメージセンサーの上の試料載置空間に載置される液状の試料の表面が平らになるように当該試料の表面を押える押え部を有する。
【選択図】 図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
撮像装置に備えられるイメージセンサーの上の試料載置空間に載置される液状の試料の表面が平らになるように当該試料の表面を押える押え部を有する、イメージセンサーのカバー部材。
【請求項2】
前記押え部は、前記試料と接する平らな面を有する、
請求項1に記載の、イメージセンサーのカバー部材。
【請求項3】
前記カバー部材のうち、少なくとも前記押え部およびその鉛直方向にある部分は、光を透過する材質で形成されている、
請求項1に記載の、イメージセンサーのカバー部材。
【請求項4】
前記押え部は、前記イメージセンサーの被写界深度の範囲内に前記試料が収まるように当該試料の表面を押える、
請求項1に記載の、イメージセンサーのカバー部材。
【請求項5】
前記押え部は、前記イメージセンサーの被写界深度の範囲内に前記試料が収まるようにする鉛直方向長さを有する、
請求項1に記載の、イメージセンサーのカバー部材。
【請求項6】
前記押え部は、前記試料載置空間の水平方向の断面形状および寸法に合わせた形状および寸法を有する、
請求項1に記載の、イメージセンサーのカバー部材。
【請求項7】
前記カバー部材は、前記試料が前記押え部により押えられたときに余剰となる前記試料の一部を外部に排出させる排水路を備えている、
請求項1に記載の、イメージセンサーのカバー部材。
【請求項8】
請求項1乃至7のいずれか1項に記載の、イメージセンサーのカバー部材と、
前記カバー部材が適用される前記撮像装置と
を具備する、観察システム。
【請求項9】
撮像装置に備えられるイメージセンサーの上の試料載置空間に、液状の試料を滴下する工程と、
前記試料の表面が平らになるように当該試料の表面を押える押え部を有するカバー部材を前記撮像装置に配置する工程と、
前記撮像装置により前記試料を撮影して画像を取得する工程と
を含む、観察方法。
【請求項10】
撮像装置に備えられるイメージセンサーの上の試料載置空間に、液状の試料を滴下する工程と、
前記試料を乾燥させる工程と、
前記撮像装置により前記試料を撮影して画像を取得する工程と
を含む、観察方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、イメージセンサーのカバー部材、観察システム、および観察方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、安価で性能の良いイメージセンサーが開発されており、これらを使って微生物や細胞を観察する方法が知られている。
【0003】
さらに、オンチップイメージセンサーと呼ばれる撮像装置(センサー上に直接試料を乗せて画像を取得できるようにしたもの)も開発されている。オンチップイメージセンサーでは、イメージセンサー上のある一定距離(例えば数10μm)で明瞭な画像が得られるため、焦点合わせの作業が不要となる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特表2022-510388号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
オンチップイメージセンサーと呼ばれる撮像装置では、例えば液状の試料をマイクロピペット等でイメージセンサーの上に何回か滴下した上で、試料の撮影を行い、撮影で得られた画像から試料の中に含まれる観察対象物(微生物等)を観察する。その際に、明瞭な画像が得られないことがある。その理由としては、以下が挙げられる。
【0006】
・軽い観察対象物の場合、当該観察対象物がイメージセンサーの被写界深度の範囲内に収まらず、その観察対象物が画像では不鮮明に映る
・観察対象物の種類によって沈み方が異なり、沈ににくい観察対象物は、イメージセンサーの被写界深度の範囲内に収まらず、その観察対象物が画像では不鮮明に映る
・滴下した試料が表面張力等の影響でイメージセンサー全面に十分に行きわたっていない
本発明が解決しようとする課題は、イメージセンサーの上に載置される試料について明瞭な画像を得ることを可能にする、イメージセンサーのカバー部材、観察システム、および観察方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
実施形態のイメージセンサーのカバー部材は、撮像装置に備えられるイメージセンサーの上の試料載置空間に載置される液状の試料の表面が平らになるように当該試料の表面を押える押え部を有する。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1図1は、実施形態のイメージセンサーのカバー部材を含むシステム全体の構成の一例を示す図である。
図2図2は、図1中に示されるカバー部材4を、撮像装置1に取り付けた状態で上から見たときの構造の一例を示す図である。
図3図3は、カバー部材4を撮像装置1に取り付ける前の試料Sの状態の一例を示す図である。
図4図4は、カバー部材4を撮像装置1に取り付けた後の試料Sの状態の一例を示す図である。
図5図5は、カバー部材4の構造の例(その1)を示す図である。
図6図6は、カバー部材4の構造の例(その2)を示す図である。
図7図7は、カバー部材4の構造の例(その3)を示す図である。
図8図8は、図7に示されるカバー部材4の縦断面形状を示す図である。
図9図9は、カバー部材4を取り付けない状態で撮影を行った場合にイメージセンサー11から得られる画像の一例を示す図である。
図10図10は、カバー部材4を取り付けた状態で撮影を行った場合にイメージセンサー11から得られる画像の一例を示す図である。
図11図11は、変形例1に係るカバー部材4を撮像装置1に取り付けた状態で上から見たときの構造の一例を示す図である。
図12図12は、変形例1に係るカバー部材4を撮像装置1に取り付けたときの試料Sの状態の一例を示す図である。
図13図13は、変形例2に係るカバー部材4を撮像装置1に取り付けたときの試料Sの状態の一例を示す図である。
図14図14は、試料Sを乾燥する前の画像の一例を示す図である。
図15図15は、試料Sを乾燥した後の画像の一例を示す図である。
図16図16は、試料Sの観察方法の例(その1)を示すフローチャートである。
図17図17は、試料Sの観察方法の例(その2)を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、図面を参照して、実施の形態について説明する。
【0010】
(システム構成)
図1に、実施形態のイメージセンサーのカバー部材を含むシステム全体の構成の一例を示す。また、図2に、図1中に示されるカバー部材4を、撮像装置1に取り付けた状態で上から見たときの構造の一例を示す。
【0011】
図1には、撮像装置1、情報処理装置2、水処理施設3、カバー部材4、および照明5が示されている。少なくとも撮像装置1およびカバー部材4は、観察システムを構成する。
【0012】
撮像装置1は、オンチップイメージセンサーに相当するものであり、内部にイメージセンサー11を備えるとともに、イメージセンサー11の周囲に配置されるフレーム1Bを備え、イメージセンサー11およびフレーム1Bの上に液状の試料Sを載置できるよう試料載置空間1Aを備える。
【0013】
試料載置空間1Aは、撮像装置1の本体の上側の一部に凹状に形成された窪みに相当し、液状の試料Sを収容する。試料Sは、例えば、微生物を含む活性汚泥の水(汚泥水)、もしくは、フロックを含む処理水などである。
【0014】
カバー部材4は、試料載置空間1Aに載置される液状の試料Sの表面が平らになるように当該試料Sの表面を押える押え部4Aを有する。押え部4Aは、試料Sと接する平らな面を有する。
【0015】
カバー部材4のうち、少なくとも押え部4Aおよびその鉛直方向にある部分は、光を透過する材質で形成されている。ここでは、押え部4Aを含めてカバー部材4全体が同一の材質で形成されている例を示す。カバー部材4は、石英ガラス、もしくはCOP(Cyclo-Olefin Polymer)などの樹脂である。
【0016】
カバー部材4を上から見ると、図2に示されるように、イメージセンサー11およびフレーム1Bが透けて見える。なお、図2の例では、カバー部材4の形状が円形になっているが、カバー部材4の形状はこの例に限らず、例えば後述するように正方形であってもよいし、それ以外の形であってもよい。
【0017】
照明5は、撮像装置1に取り付けられるカバー部材4の上方から、カバー部材4へ向けて光を放つ。照明5の光は、カバー部材4を透過し、試料Sを照らす。照明5は、例えば白色LED(Light Emitting Diode)である。ただし、この例に限らず、カバー部材4を透過する光を放つものであれば、どのような種類の照明を採用してもよい。
【0018】
イメージセンサー11は、試料Sを被写体として撮影し、撮影した結果を二次元画像として出力する。撮像装置1は、イメージセンサー11から得られる画像の情報を情報処理装置2へ伝送する。
【0019】
情報処理装置2は、コンピュータに相当するものであり、撮像装置1から伝送されてくる画像の情報を表示装置に表示したり、画像に映っている試料Sに含まれる各種の観察対象物、例えば微生物やフロックなど(以降、「微生物等」と称す。)を解析したり、その解析結果を水処理施設3に伝送したりする。
【0020】
情報処理装置2は、例えば、試料Sが汚泥水である場合には、画像から汚泥水に含まれる各種の微生物の種類や単位容積当たりの量を判定したり、判定した微生物の種類や単位容積当たりの量を示す情報を水処理施設3(例えば、下水処理場)に伝送したりする。また、情報処理装置2は、例えば、試料Sがフロックを含む被処理水である場合には、被処理水に含まれるフロックの大きさや単位容積当たりの量を判定したり、判定したフロックの大きさや単位容積当たりの量を示す情報を水処理施設3(例えば、浄水処理場)に伝送したりする。
【0021】
水処理施設3は、情報処理装置2から伝送される情報に基づいて、所定の制御対象を制御する。例えば、水処理施設3が下水処理場の場合は、汚泥水に含まれる微生物の種類や単位容積当たりの量に応じて所定の槽の脱気量を制御したりする。また、例えば、水処理施設3が浄水処理場の場合は、被処理水に含まれるフロックの大きさや単位容積当たりの量に応じて所定の水処理用の池(例えば、混和池)に注入する薬剤(例えば、凝集剤)を制御したりする。
【0022】
(カバー部材4の構造的特徴)
図3に、カバー部材4を撮像装置1に取り付ける前の試料Sの状態の一例を示す。また、図4に、カバー部材4を撮像装置1に取り付けた後の試料Sの状態の一例を示す。
【0023】
図3に示される試料載置空間1Aの鉛直方向の長さ(撮像装置1の上側表面からイメージセンサー11表面までの深さ)をaとし、イメージセンサー11の被写界深度をxとする。aは例えば4~5mmであり、xは例えば数10μmである。
【0024】
図3に示されるように、観察対象物Tを含む液状の試料Sは、イメージセンサー11の上の試料載置空間1Aにマイクロピペット等を用いて所定量が滴下される。
【0025】
このとき、例えば試料Sの一部がイメージセンサー11の被写界深度xの範囲に収まらない状態になる場合がある。そのような状態では、イメージセンサー11からは明瞭な画像が得られない。例えば、観察対象物Tが軽い微生物等や沈みにくい微生物等である場合、その微生物等がイメージセンサー11の被写界深度xの範囲内に収まらず、イメージセンサー11の二次元画像ではぼやけた状態で映るため、軽い微生物等を適切に観察することができない。
【0026】
また、例えば表面張力の影響で、試料Sがイメージセンサー全面に十分に行きわたらない状態になる場合がある。また、表面に丸みがある試料Sは、揺らぎやすい。そのような状態では、イメージセンサー11からは明瞭な画像が得られない。例えば、イメージセンサー11の二次元画像の周縁部の画像部分が不鮮明となり、そこに映っているはずの観察対象物Tを適切に観察することができない。
【0027】
図4に示されるように、カバー部材4は、撮像装置1に取り付けられ。具体的には、カバー部材4の凸状の部分(すなわち、押え部4A)が、撮像装置1の凹状の部分(すなわち、試料載置空間1A内の試料Sを除いた部分)に入る。このとき、撮像装置1の引っ掛け部1C(撮像装置1の上側の表面の一部)に、押え部4Aの周囲の部分(カバー部材4の表面の一部)が乗る形となる。
【0028】
図4から理解できるように、押え部4Aの押え部4Aは、試料Sと接する部分が平らな面になっており、試料Sの表面が平らになるように当該試料Sの表面を押える。このとき、押え部4Aが試料Sと接する面は、イメージセンサー11の表面と平行である。
【0029】
押え部4Aは、イメージセンサー11の被写界深度xの範囲内に試料Sが収まるように当該試料Sの表面を押える。具体的には、押え部4Aは、イメージセンサー11の被写界深度xの範囲内に試料Sが収まるようにする鉛直方向の長さa-xを有する。この「押え部4Aの鉛直方向の長さa-x」は、前述した「試料載置空間1Aの鉛直方向の長さa」から「イメージセンサー11の被写界深度x」を差し引いた長さである。これにより、カバー部材4は、試料Sの表面が平らになるように当該試料Sの表面を押すことになる。
【0030】
また、押え部4Aは、図2に示されるように、試料載置空間1Aの水平方向の断面形状および寸法に合わせた断面形状および寸法を有する。例えば、試料載置空間1Aの水平方向の断面形状が正方形でm×mの寸法を有する場合、押え部4Aの水平方向の断面形状が正方形でm×mの寸法とほぼ同じ寸法を有する。ただし、双方の形状や寸法は、押え部4Aが試料載置空間1Aに無理なく且つ隙間を生ずることなく入るように調整されていることが望ましい。
【0031】
(カバー部材4の様々な形状)
カバー部材4の形状は、カバー部材4が取り付けられる撮像装置1の構造や、カバー部材4が使用される環境や用途に応じて適宜変えてもよい。
【0032】
図5図6、および図7に、カバー部材4の様々な構造の例を斜視図にて示す。図8は、図7に示されるカバー部材4の縦断面形状を示したものである。
【0033】
図5は、図1及び図2で説明したカバー部材4と同様の構造を有するものを示している。すなわち、図5に示されるカバー部材4は、押え部4Aを形成している四角柱状の構造物41と、前述した撮像装置1の引っ掛け部1Cに当接する面がある平板状の構造物42とを含む。平板状の構造物42は、上から見た形が円形である。
【0034】
このような円形の構造物42は、鋭い角の部分が無く、カバー部材4を扱う上で手などが傷つくことを防止することができる。
【0035】
図6に示されるカバー部材4は、前述した撮像装置1と表面形状が異なる。すなわち、図6に示されるカバー部材4は、押え部4Aを形成している四角柱状の構造物41と、前述した撮像装置1の引っ掛け部1Cに当接する面がある平板状の構造物43とを含む。平板状の構造物43は、上から見た形が正方形である。
【0036】
このような正方形の構造物42は、比較的製造しやすく、製造上の取り扱いもしやすい。
【0037】
図7及び図8に示されるカバー部材4は、前述した撮像装置1と表面形状が異なるもの、例えば、引っ掛け部1Cが階段状に二段になっている撮像装置(例えば一段目の引っ掛け部1Cに加え、更にその上側に二段目の引っ掛け部1Dがある撮像装置)に適用される。なお、この種の構造の撮像装置については後で述べる。
【0038】
図7及び図8に示されるカバー部材4は、押え部4Aを形成している四角柱状の構造物41と、一段目の引っ掛け部1Cに当接する面がある筒状の構造物44と、二段目の引っ掛け部1Dに当接する面がある平板状の構造物45とを含む。筒状の構造物44の内側は空洞になっており、構造物41の上方には何もない空間46が形成されている。平板状の構造物45は、上から見ると、その中央に筒状の構造物44で囲まれた空間46があり、その奥に構造物41がある。なお、構造物44,45の材質は、光を透過しない材質であってもよい。
【0039】
このような構造のカバー部材4は、イメージセンサー11および試料載置空間1Aが撮像装置上側表面から深いところに設けられている場合にも対応することができる。また、押え部4Aを形成している四角柱状の構造物41の鉛直方向の厚みを増やす必要がないため、画像の鮮明度を低減させることがなく、また、軽くて持ち運びがしやすい。
【0040】
(カバー部材4の利点)
カバー部材4の押え部4Aを図4で示したような構造とすることにより、試料Sの全てがイメージセンサー11の被写界深度xの範囲に収まる状態になる。例えば、観察対象物Tが軽い微生物等や沈みにくい微生物等も、イメージセンサー11の被写界深度xの範囲内に収まり、イメージセンサー11の二次元画像に明瞭に映るため、軽い微生物等を適切に観察することができる。また、表面張力の影響を受けず、試料Sがイメージセンサー全面に十分に行きわたるため、イメージセンサー11の二次元画像の周縁部の画像部分も鮮明となり、そこに映っている観察対象物Tも適切に観察することができる。また、試料Sの揺らぎも生じないため、安定した状態で観察を行うことができる。
【0041】
図9に、カバー部材4を取り付けない状態で撮影を行った場合にイメージセンサー11から得られる画像の一例を示す。また、図10に、カバー部材4を取り付けた状態で撮影を行った場合にイメージセンサー11から得られる画像の一例を示す。
【0042】
カバー部材4を取り付けない場合は、図9に示されるように、軽い微生物等や沈みにくい微生物等は、イメージセンサー11の被写界深度xの範囲内に収まらず、ぼやけた状態で映っている。そのため、軽い微生物等を適切に観察することができない。
【0043】
一方、カバー部材4を取り付けた場合は、図10に示されるように、軽い微生物等や沈みにくい微生物等も含め、全ての微生物等は、イメージセンサー11の被写界深度xの範囲内に収まっているため、殆どの微生物等の形状や大きさを確認することができ、それらを適切に観察することができる。
【0044】
(カバー部材4の変形例1)
次に、図1図4で説明したカバー部材4の変形例1について説明する。
【0045】
図11に、変形例1に係るカバー部材4を撮像装置1に取り付けた状態で上から見たときの構造の一例を示す。また、図12に、変形例1に係るカバー部材4を撮像装置1に取り付けたときの試料Sの状態の一例を示す。
【0046】
図11および図12に示されるように、変形例1に係るカバー部材4は、試料Sが押え部4Aにより押えられたときに余剰となる試料Sの一部を外部に排出させる排水路4Bを備えている。
【0047】
図11に示されるように、カバー部材4を上から見ると、排水路4Bは複数カ所に設けられている。また、図12に示されるように、カバー部材4を横から見ると、各排水路4Bは、押え部4Aの縁の部分および引っ掛け部1Cと当たる部分に設けられており、イメージセンサー11の撮影領域に入らないようになっている。
【0048】
排水路4Bを図11のように各カ所に分散して設けることにより、カバー部材4を押し下げた際に各カ所から余剰となる試料Sを無理なく効率的に排出させることができる。また、図12に示されるようにイメージセンサー11の撮影領域に入らないように設けることにより、試料Sの撮影に悪影響を与えずに済む。
【0049】
(カバー部材4の変形例2)
次に、図1図4で説明したカバー部材4の変形例2について説明する。
【0050】
図13に、変形例2に係るカバー部材4を撮像装置1に取り付けたときの試料Sの状態の一例を示す。図13に示されるカバー部材4の構造は、図7及び図8で説明したカバー部材4の構造に相当する。また、このカバー部材4が適用される撮像装置1の構造は、前述したように引っ掛け部1Cが階段状に二段になっている。すなわち、一段目の引っ掛け部1Cに加え、更にその上側に二段目の引っ掛け部1Dがある。
【0051】
このように、変形例2に係るカバー部材4は、複数段の引っ掛け部を有するタイプの撮像装置1に取り付けることが可能である。また、前述したように、押え部4Aの鉛直方向の厚みを増やす必要がないため、画像の鮮明度を低減させることがなく、また、軽くて持ち運びがしやすいという利点がある。
【0052】
このように、上述した構造のカバー部材4を使用することにより、イメージセンサー11の被写界深度xの範囲内に試料Sが収まるようにすることができ、鮮明な画像を得ることができる。一方、以下に説明する方法によっても、イメージセンサー11の被写界深度xの範囲内に試料Sが収まるようにすることができ、鮮明な画像を得ることができる。
【0053】
(試料Sの乾燥)
カバーを取り付ける前の撮像装置1においては、図3で説明したように、試料Sの一部がイメージセンサー11の被写界深度xの範囲に収まらない状態になる場合があり、そのような状態では、イメージセンサー11からは明瞭な画像が得られない。そこで、例えばカバー部材4を取り付けずに、当該試料Sを乾燥させる処理を行う。これにより、軽い微生物等や沈みにくい微生物等も含め、全ての微生物等は、イメージセンサー11のすぐ上の位置に集まる(被写界深度xの範囲内に入る)ため、殆どの微生物等の形状や大きさを確認することができ、それらを適切に観察することができる。
【0054】
図14に、試料Sを乾燥する前の画像の一例を示す。また、図15に、試料Sを乾燥した後の画像の一例を示す。
【0055】
試料Sを乾燥する前は、図14に示されるように、軽い微生物等や沈みにくい微生物等は、イメージセンサー11の被写界深度xの範囲内に収まらず、ぼやけた状態で映っている。
【0056】
一方、試料Sを乾燥した後は、図15に示されるように、軽い微生物等や沈みにくい微生物等も含め、全ての微生物等は、イメージセンサー11のすぐ上の位置にあるため、殆どの微生物等の形状や大きさを確認することができ、それらを適切に観察することができる。
【0057】
(観察方法の例(その1))
次に、図16を参照して、試料Sの観察方法の例(その1)について説明する。
【0058】
ここでは、鮮明な画像を得られるようにするため、カバー部材4が使用される。
【0059】
最初に、試料Sを規定量測り取り(ステップS11)、規定量の試料Sをイメージセンサー11上の試料載置空間1Aに滴下する(ステップS12)。
【0060】
次に、カバー部材4を撮像装置1に配置し、イメージセンサー11上の試料載置空間1Aに載置された試料Sの表面を平らにする(ステップS13)。
【0061】
次に、照明5をカバー部材4の上の方に設置し、照明5の光がカバー部材4を透過して試料Sを照らすようにする(ステップS14)。
【0062】
最後に、試料Sを撮影してイメージセンサー11から出力される画像を情報処理装置2により取得し、取得した画像を表示装置に表示し、当該画像から試料Sに含まれる微生物等の観察を行う(ステップS15)。
【0063】
これにより、試料Sの含まれる全ての微生物等は、イメージセンサー11の被写界深度xの範囲内に収まっているため、殆どの微生物等の形状や大きさを確認することができ、それらを適切に観察することができる。
【0064】
(観察方法の例(その2))
次に、図17を参照して、試料Sの観察方法の例(その2)について説明する。
【0065】
ここでは、鮮明な画像を得られるようにするため、試料Sの乾燥が行われる。
【0066】
最初に、試料Sを規定量測り取り(ステップS21)、規定量の試料Sをイメージセンサー11上の試料載置空間1Aに滴下する(ステップS22)。
【0067】
次に、試料Sを乾燥させる(ステップS23)。
【0068】
次に、照明5をカバー部材4の上の方に設置し、照明5の光が試料Sを照らすようにする(ステップS24)。
【0069】
最後に、試料Sを撮影してイメージセンサー11から出力される画像を情報処理装置2により取得し、取得した画像を表示装置に表示し、当該画像から試料Sに含まれる微生物等の観察を行う(ステップS25)。
【0070】
これにより、試料Sの含まれる全ての微生物等は、イメージセンサー11のすぐ上の位置に集まっている(被写界深度xの範囲内に入っている)ため、殆どの微生物等の形状や大きさを確認することができ、それらを適切に観察することができる。
【0071】
以上詳述したように、実施形態によれば、イメージセンサーの上に載置される試料について明瞭な画像を得ることができる。
【0072】
本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0073】
1…撮像装置、1A…試料載置空間、1B…フレーム、1C…引っ掛け部、1D…引っ掛け部、11…イメージセンサー、2…情報処理装置、3…水処理施設、4…カバー部材、4A…押え部、4B…排水路、41~45…構造物、5…照明、P1…範囲、P2…範囲、S…試料、T…観察対象物。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
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図15
図16
図17