(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024045845
(43)【公開日】2024-04-03
(54)【発明の名称】修理時期提案システムおよび修理時期提案方法
(51)【国際特許分類】
G06Q 10/20 20230101AFI20240327BHJP
G05B 23/02 20060101ALI20240327BHJP
【FI】
G06Q10/00 300
G05B23/02 T
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022150881
(22)【出願日】2022-09-22
(71)【出願人】
【識別番号】000005234
【氏名又は名称】富士電機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110004185
【氏名又は名称】インフォート弁理士法人
(74)【代理人】
【識別番号】100121083
【弁理士】
【氏名又は名称】青木 宏義
(74)【代理人】
【識別番号】100138391
【弁理士】
【氏名又は名称】天田 昌行
(74)【代理人】
【識別番号】100132067
【弁理士】
【氏名又は名称】岡田 喜雅
(74)【代理人】
【識別番号】100131521
【弁理士】
【氏名又は名称】堀口 忍
(72)【発明者】
【氏名】真鍋 章
【テーマコード(参考)】
3C223
5L049
【Fターム(参考)】
3C223AA01
3C223BB09
3C223FF05
3C223FF46
3C223GG01
3C223GG03
3C223HH05
3C223HH13
5L049CC15
(57)【要約】
【課題】設備の異常を検知したときに、その設備を修理すべき好適な時期を提案する。
【解決手段】負荷にエネルギーを供給する設備の修理時期を提案する修理時期提案システムは、異常検知部、余寿命推定部、保存部、および提案部を備える。異常検知部は、設備の近傍でモニタされる音に基づいて設備の異常を検知する。余寿命推定部は、設備の異常が検知されたときに、設備が故障するまでの期間を表す余寿命を推定する。保存部には、負荷が必要とするエネルギーの予測値を表す負荷変動予測データ、設備が生成すべきエネルギーを表す運用計画データ、および設備の異常を修理するために要する修理時間を表す修理時間データが保存される。提案部は、設備の異常が検知されたときに、負荷変動予測データ、運用計画データ、および修理時間データに基づいて、余寿命が終了するまでの期間内で設備を修理すべき時期を決定して提案する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
負荷にエネルギーを供給する設備の修理時期を提案する修理時期提案システムであって、
前記設備の近傍でモニタされる音に基づいて前記設備の異常を検知する異常検知部と、
前記異常検知部により前記設備の異常が検知されたときに、前記設備が故障するまでの期間を表す余寿命を推定する余寿命推定部と、
前記負荷が必要とするエネルギーの予測値を表す負荷変動予測データ、前記負荷変動予測データに対して作成される、前記設備が生成すべきエネルギーを表す運用計画データ、および前記異常検知部により検知された前記設備の異常を修理するために要する修理時間を表す修理時間データを保存する保存部と、
前記異常検知部により前記設備の異常が検知されたときに、前記負荷変動予測データ、前記運用計画データ、および前記修理時間データに基づいて、前記余寿命が終了するまでの期間内で前記設備を修理すべき時期を決定して提案する提案部と、
を備える修理時期提案システム。
【請求項2】
前記異常検知部は、前記設備を構成する複数の機器それぞれの近傍でモニタされる音に基づいて各機器の異常を検知し、
前記余寿命推定部は、前記複数の機器の中で前記異常検知部により異常が検知された対象機器の余寿命を推定し、
前記提案部は、前記対象機器の余寿命が終了するまでの期間内で前記対象機器を修理すべき時期を決定する
ことを特徴とする請求項1に記載の修理時期提案システム。
【請求項3】
前記提案部は、指定された目的パラメータが最適化されるように、前記設備を修理すべき時期を決定する
ことを特徴とする請求項1に記載の修理時期提案システム。
【請求項4】
前記目的パラメータは、前記設備が前記負荷にエネルギーを供給するためのコストであり、
前記提案部は、前記コストが最小になるように、前記設備を修理すべき時期を決定する
ことを特徴とする請求項3に記載の修理時期提案システム。
【請求項5】
前記提案部は、
前記余寿命が終了するまでの期間全体にわたって、前記設備が正常に動作するときに前記設備が前記負荷変動予測データに従って前記負荷にエネルギーを供給するためのコストを表す第1のコストと、前記異常検知部により検知された前記設備の異常を修理している状態で前記設備が前記負荷変動予測データに従って前記負荷にエネルギーを供給するためのコストを表す第2のコストとを比較し、
前記修理時間データが表す修理時間内に発生する、前記第1のコストに対する前記第2のコストの増加分が最小になるように、前記設備を修理すべき時期を決定する
ことを特徴とする請求項4に記載の修理時期提案システム。
【請求項6】
負荷にエネルギーを供給する設備の修理時期を提案する修理時期提案方法であって、
前記設備の近傍でモニタされる音に基づいて前記設備の異常を検知し、
前記設備の異常が検知されたときに、前記設備が故障するまでの期間を表す余寿命を推定し、
前記設備の異常が検知されたときに、前記負荷が必要とするエネルギーの予測値を表す負荷変動予測データ、前記負荷変動予測データに対して作成される、前記設備が生成すべきエネルギーを表す運用計画データ、および前記設備の異常を修理するために要する修理時間を表す修理時間データに基づいて、前記余寿命が終了するまでの期間内で前記設備を修理すべき時期を決定して提案する
ことを特徴とする修理時期提案方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、産業プラント等の設備の修理時期を提案するシステムおよび方法に係わる。
【背景技術】
【0002】
近年、産業プラント等の大規模な設備の状態をモニタして異常を検知する技術が実用化されている。例えば、特許文献1に記載されている異常検知/診断方法は、プラント等の設備において、異常を高感度かつ早期に検知するための手順を含む。具体的には、作業履歴、交換部品情報などの過去の事例からなる保守履歴情報を、キーワードベースで相互に関連づけておく。そして、設備に付加した多次元センサの出力信号に基づいて異常を検知し、検知した異常と関連づけられた保守履歴情報を検索することにより、発生した異常に対してなすべき診断または処置を明らかにする。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
このように、設備の異常を検知し、検知した異常に対して実行すべき処理を提示する方法が知られている。ただし、従来技術においては、検知した異常に対して、どのようなタイミングで設備の修理を行うことが好ましいのかを判定していない。このため、適切でないタイミングで設備の修理を行うと、経済的な損失が増加したり、設備全体として効率が低下したりすることがある。
【0005】
本発明の1つの側面に係わる目的は、設備の異常を検知したときに、損失が小さくなるように、又は、設備の効率が改善するように、好適な修理時期を提案することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の1つの態様の修理時期提案システムは、負荷にエネルギーを供給する設備の修理時期を提案する。この修理時期提案システムは、前記設備の近傍でモニタされる音に基づいて前記設備の異常を検知する異常検知部と、前記異常検知部により前記設備の異常が検知されたときに、前記設備が故障するまでの期間を表す余寿命を推定する余寿命推定部と、前記負荷が必要とするエネルギーの予測値を表す負荷変動予測データ、前記負荷変動予測データに対して作成される、前記設備が生成すべきエネルギーを表す運用計画データ、および前記異常検知部により検知された前記設備の異常を修理するために要する修理時間を表す修理時間データを保存する保存部と、前記異常検知部により前記設備の異常が検知されたときに、前記負荷変動予測データ、前記運用計画データ、および前記修理時間データに基づいて、前記余寿命が終了するまでの期間内で前記設備を修理すべき時期を決定して提案する提案部と、を備える。
【発明の効果】
【0007】
上述の態様によれば、設備の異常を検知したときに、損失が小さくなるように、又は、設備の効率が改善するように、好適な修理時期を提案できる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】本発明の実施形態に係わる修理時期提案システムの一例を示す図である。
【
図3】異常検知部が異常の有無を判定する処理の一例を示す図である。
【
図5】余寿命/修理時間データの一例を示す図である。
【
図8】運用計画データおよびコストデータの一例を示す図である。
【
図9】異常が検知された熱機器の余寿命および修理時間を特定する方法の一例を示す図である。
【
図10】異常検知データベースの一例を示す図である。
【
図11】異常検知及び余寿命計算結果を表示する管理端末の画面の一例を示す図である。
【
図12】対象熱機器を停止させたと仮定したときの運用計画データおよびコストデータの一例を示す図である。
【
図13】好適な修理時期を決定する方法の一例を示す図である。
【
図14】再計算された運用計画およびコストを表示する管理端末の画面の一例を示す図である。
【
図15】提案された修理時期を表示する管理端末の画面の一例を示す図である。
【
図16】本発明の実施形態に係わる修理時期提案方法の準備手順の一例を示すフローチャートである。
【
図17】異常兆候検知装置の処理の一例を示すフローチャートである。
【
図18】余寿命推定システムの処理の一例を示すフローチャートである。
【
図19】最適運用システムの処理の一例を示すフローチャートである。
【
図20】修理時期提案システムのハードウェア構成の一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
図1は、本発明の実施形態に係わる修理時期提案システムの一例を示す。本発明の実施形態に係わる修理時期提案システム1は、集音マイク10、異常兆候検知装置20、余寿命推定システム30、および最適運用システム40を備える。そして、修理時期提案システム1は、産業プラントの1つである熱供給設備100において故障の兆候が検知されたときに、好適な修理時期を提案する。熱供給設備100は、この実施例では、複数の熱機器を備えており、不図示の需要設備に熱エネルギーを供給する。なお、以下の記載において、熱供給設備100から熱エネルギーの供給を受ける需要設備を「負荷」と呼ぶことがある。
【0010】
図2は、熱供給設備100の一例を示す。この実施例では、熱供給設備100は、蒸気ボイラシステム101、排熱ヒートポンプシステム102、蒸気ヘッダ103、ドレン水ヘッダ104、およびタンク105を備え、需要設備300に蒸気を供給する。
【0011】
蒸気ボイラシステム101は、1または複数の蒸気ボイラを備え、購買電力を利用して液化天然ガス(LNG)を燃焼させることで高温蒸気を生成する。排熱ヒートポンプシステム102は、1または複数の排熱ヒートポンプを備え、ドレン水ヘッダ104を介して供給される温水、及び/又は、ドレン水ヘッダ104およびタンク105を介して供給される温水を利用して高温蒸気を生成する。すなわち、排熱を利用して高温蒸気が生成される。なお、排熱ヒートポンプシステム102も購買電力を利用して動作する。蒸気ヘッダ103は、蒸気ボイラシステム101および排熱ヒートポンプシステム102により生成される高温蒸気を需要設備300に導く。なお、需要設備300には洗浄水が供給され、需要設備300から排出される蒸気ドレン水はドレン水ヘッダ104に導かれる。
【0012】
図1の説明に戻る。集音マイク10は、熱供給設備100の近傍に設置され、熱供給設備100から発生する音を収集する。ここで、集音マイク10は、熱供給設備100を構成する各熱機器に対して設置される。また、各熱機器を構成する各部品に対して集音マイク10をそれぞれ設置してもよい。
【0013】
異常兆候検知装置20は、ソフトウェアプログラムにより実現される異常検知部21を備える。また、異常兆候検知装置20のメモリには、異常の有無を判定するための閾値データが保存されている。なお、異常兆候検知装置20は、ネットワークに接続する機能を備える。
【0014】
異常検知部21は、集音マイク10により収集される音に基づいて熱供給設備100の異常(或いは、故障の兆候)を検知する。すなわち、異常検知部21は、熱供給設備100を構成する各熱機器(または、各熱機器を構成する各部品)の近傍でモニタされる音に基づいて、各熱機器の異常を検知する。このとき、異常検知部21は、閾値データを参照して、各熱機器において故障の兆候が発生しているか否かを判定する。
【0015】
図3は、異常検知部21が異常の有無を判定する処理の一例を示す。この実施例では、異常検知部21は、正常動作音データを利用して異常の有無を判定する。正常動作音データは、熱供給設備100を構成する各熱機器が正常に動作しているときに集音マイク10により収集された音を表す。すなわち、正常動作音データは、事前に作成されて、異常兆候検知装置20が備えるメモリに保存されている。他方、異常検知部21は、常時、集音マイク10を利用して熱供給設備100を構成する各熱機器の動作音をモニタする。そして、異常検知部21は、各熱機器について、現在の動作音を表すモニタ音データと正常動作音データとを比較する。
【0016】
このとき、異常検知部21は、例えば、モニタ音データに対してスペクトログラム変換を行って画像データを生成する。この画像データは、事前に学習済みのAIモデルに入力される。AIモデルは、正常動作音データに基づいて作成されているものとする。学習のためのAI技術は、例えば、オートエンコーダ等の抽象的な特徴を自己学習するディープラーニングにより実現される。そして、このAIモデルは、各熱機器について、現在の動作音が正常時の動作音からどれだけ異なっているかを表す異常スコアを出力する。異常スコアは、この実施例では、「セロ」から「1」の間のスカラー値である。具体的には、異常スコアは、現在の動作音と正常時の動作音との差異が小さいほど「ゼロ」に近い値を表し、現在の動作音と正常時の動作音との差異が大きいほど「1」に近い値を表す。なお、現在の動作音と正常時の動作音とを比較する方法は、上述の実施例に限定されるものではなく、任意の方法で実現可能である。
【0017】
続いて、異常検知部21は、閾値データを利用して閾値判定を行う。すなわち、異常検知部21は、各熱機器について、比較処理により生成された異常スコアと対応する閾値とを比較する。
【0018】
図4は、閾値データの一例を示す。閾値データは、この実施例では、熱供給設備100を構成する各熱機器について、名称、メーカー、型式、および閾値を表す。閾値は、例えば、過去の事例に基づいて作成される。一例としては、過去に熱機器の故障が発生したときに、その故障の直前に集音マイク10により収集された音に対応する異常スコアに基づいて閾値が決定される。なお、
図4に示す例では、熱機器ごとに閾値が設定されるが、複数の異なる動作音を取集できるケースにおいては、熱機器を構成する部品ごとに閾値を設定してもよい。
【0019】
上述の閾値データを使用するケースにおいて、例えば、排熱ヒートポンプAA-10の近傍の音に対応する異常スコアが「0.55」より小さいときには、異常検知部21は、この熱機器が正常であると判定する。一方、例えば、排熱ヒートポンプB-10の近傍の音に対応する異常スコアが「0.30」より大きいときには、異常検知部21は、この熱機器において何らかの異常が発生している(或いは、故障の兆候が生じている)と判定する。
【0020】
異常を検知したときには、異常兆候検知装置20は、余寿命推定システム30にその旨を通知する。具体的には、異常が検知され時刻および異常が検知された熱機器を識別する情報が余寿命推定システム30に通知される。
【0021】
なお、
図1に示す実施例では、異常兆候検知装置20は、熱供給設備100の近傍に設けられ、ネットワークを介してサーバコンピュータと通信する。ただし、本発明の実施形態は、この構成に限定されるものではない。例えば、異常兆候検知装置20は、サーバコンピュータ内に実装されてもよい。この場合、集音マイク10により収集される音データが、ネットワークを介してサーバコンピュータに送信される。そして、サーバコンピュータ内に実装される異常兆候検知装置20が、ネットワークを介して受信する音データに基づいて、各熱機器の異常の有無を判定する。
【0022】
余寿命推定システム30は、ソフトウェアプログラムにより実現される余寿命推定部31を備える。また、余寿命推定システム30のメモリには、異常が検知された熱機器の余寿命を推定するための余寿命/修理時間データが保存されている。なお、余寿命推定システム30は、ネットワークに接続する機能を備えることが好ましい。
【0023】
図5は、余寿命/修理時間データの一例を示す。余寿命/修理時間データは、この例では、各熱機器についての余寿命および修理時間を表す。余寿命は、例えば、過去の事例に基づいて作成される。具体的には、監視対象の熱機器の近傍で異常を示す音が検出されたときからその熱機器が実際に故障したときまでの期間に係わる情報を収集し、収集した情報に基づいて余寿命が設定される。また、修理時間は、例えば、対象となる熱機器を停止して故障した部品を交換するために要する時間を表す。なお、
図5に示す例では、熱機器ごとに余寿命および修理時間が設定されているが、複数の異なる動作音を取集できるケースにおいては、熱機器を構成する部品ごとに余寿命および修理時間を設定してもよい。また、
図5に示す例では、説明を簡潔にするために、修理時間は部品を交換するために要する時間を想定しているが、修理の種類に応じて修理時間を設定してもよい。
【0024】
図5に示す余寿命/修理時間データを使用するケースにおいて、例えば、排熱ヒートポンプAA-10において異常が発生したことを表す通知を受信したときには、余寿命推定部31は、「余寿命:336時間」および「修理時間:10時間」を出力する。なお、「余寿命:336時間」は、現在時刻から336時間が経過したときに排熱ヒートポンプAA-10が故障すると推定されることを表す。「修理時間:10時間」は、排熱ヒートポンプAA-10を修理するために要する時間が10時間であることを表す。
【0025】
このように、余寿命推定システム30は、熱供給設備100内で異常が検知された熱機器を表す通知を受信すると、その熱機器の余寿命および修理時間を特定する。そして、余寿命推定システム30は、異常が検知され時刻、異常が検知された熱機器、およびその熱機器の余寿命および修理時間を最適運用システム40に通知する。そうすると、最適運用システム40は、熱供給設備100の運用計画を再計算すると共に、異常が検知された熱機器の修理時期を提案する。
【0026】
最適運用システム40は、ソフトウェアプログラムにより実現される最適化制御部41を備える。さらに、最適運用システム40のメモリには、設備構成データ、機器性能データ、負荷変動予測データ、および運用計画データが保存されている。なお、最適運用システム40は、ネットワークに接続する機能を備えることが好ましい。
【0027】
設備構成データは、監視対象の設備である熱供給設備100の構成を表す。この実施例では、設備構成データは、
図2に示す蒸気ボイラシステム101および排熱ヒートポンプシステム102の構成を表す。機器性能データは、設備構成データにより表される各熱機器(各蒸気ボイラおよび各排熱ヒートポンプ)の性能を表す。この実施例では、機器性能データは、
図6に示すように、各熱機器の最大出力(蒸気量)、および各熱機器が所定量の蒸気(例えば、1kg)を生成するために必要となる電力/LNGの消費量およびコストを表す。なお、
図6では、消費量およびコストが空欄になっているが、実際には対応する値が設定される。また、コストは、この実施例では、経済的なコスト(即ち、価格)を表す。よって、コストは、常時、最新の値に更新されることが好ましい。
【0028】
負荷変動予測データは、
図2に示す需要設備300が要求するエネルギー量(この実施例では、蒸気量)の予測値を表す。蒸気量の予測値は、例えば、需要設備300の運用者から予め通知される。また、負荷変動予測データは、例えば、
図7(a)に示すように1日単位で蒸気量の予測値を設定してもよいし、
図7(b)に示すように1時間単位で蒸気量の予測値を設定してもよい。なお、蒸気量の予測値は、所望の時間単位で設定することができる。
【0029】
運用計画データは、熱供給設備100が生成すべきエネルギー量(この実施例では、蒸気量)を表す。ここで、需要設備300からの要求を満たすためには、熱供給設備100が生成すべき蒸気量を、需要設備300が要求する蒸気量と実質的に同じにする必要がある。したがって、最適化制御部41は、負荷変動予測データを満足するように運用計画データを作成する。このとき、最適化制御部41は、指定された目的パラメータが最適化されるように、各熱機器の出力を決定することが好ましい。目的パラメータは、例えば、熱供給設備100が蒸気を生成するためのコストである。この場合、最適化制御部41は、
図6に示す機器性能データを参照し、コストが最小になるように各熱機器の出力を決定する。
【0030】
図8(a)は、最適化制御部41により作成された運用計画データの一例を示す。運用計画データは、例えば、熱供給設備100全体としてコストが最小になるように作成される。ここで、
図8(a)においては、蒸気ボイラシステム101の蒸気量および排熱ヒートポンプシステム102の蒸気量が表されているが、実際には、熱供給設備100を構成する各熱機器について、生成すべき蒸気量が設定される。すなわち、運用計画データは、各熱機器が生成すべき蒸気の量を表す。
【0031】
ここで、各熱機器に対して、生成すべき蒸気量を決定すると、必要となる電力量(蒸気ボイラにおいては、必要となる電力量およびLNG量)が決まる。また、電気料金およびLNGの価格は、事前に設定されているものとする。よって、最適化制御部41は、運用計画が実行されたときに生じるコストを算出できる。最適化制御部41により作成されるコストデータの一例を
図8(b)に示す。コストデータは、
図1においては、運用計画データの一部として最適運用システム40のメモリに保存される。
【0032】
なお、運用計画を作成する際には、各熱機器の運転率などの他の条件も考慮することが好ましい。また、必ずしもすべての熱機器を稼働させる必要はなく、コストを最小化するために、1または複数の熱機器を停止する運用計画が作成されることもある。さらに、運用計画データおよびコストデータは、負荷変動予測データと同様に、所望の時間単位で設定することができる。
【0033】
このように、最適運用システム40は、設備構成データ、機器性能データ、および負荷変動予測データを利用して、熱供給設備100を構成する各熱機器の動作を表す運用計画データ(コストデータを含む)を作成する。そして、最適運用システム40は、作成した運用計画データに従って熱供給設備100の運転を制御する。
【0034】
上記構成に加えて、最適運用システム40は、ソフトウェアプログラムにより実現される提案部42を含む。提案部42は、異常検知部21により熱供給設備100を構成する熱機器の異常が検知されたときに、負荷変動予測データ、運用計画データ、および余寿命/修理時間データに基づいて、余寿命が終了するまでの期間内で熱供給設備100の異常を修理すべき時期を決定して提案する。このとき、提案部42は、指定された目的パラメータが最適化されるように、異常が検知された熱機器の修理時期を決定する。目的パラメータは、例えば、熱供給設備100が蒸気を生成するためのコストである。この場合、提案部42は、熱供給設備100が需要設備300に蒸気を供給するためのコストが最小化されるように、対応する熱機器の修理時期を決定する。
【0035】
提案部42が決定した修理時期を表す提案情報は、ネットワークを介して
図1に示す管理端末50に送信される。なお、異常検知部21により異常が検知された熱機器に対して余寿命推定部31が余寿命を推定したときには、推定した余寿命を表す余寿命情報も管理端末50に送信される。管理端末50は、熱供給設備100を管理する設備保全管理者が使用する情報処理装置である。そして、管理端末50は、余寿命情報および提案情報を表示することができる。これにより、設備保全管理者は、異常が検知された熱機器の余寿命および推奨される修理時期を認識できる。
【0036】
次に、熱供給設備100を構成する複数の熱機器の中の1つが異常検知部21により異常が発生していると判定されたときの余寿命推定システム30および最適運用システム40の動作を説明する。なお、異常検知部21は、定期的に、熱供給設備100を構成する各熱機器の近傍で収集される音データを取得し、熱機器ごとに異常スコアを計算する。そして、各熱機器について
図9に示す異常スコアが算出されるものとする。
【0037】
異常検知部21は、各熱機器について、異常スコアと対応する閾値とを比較する。
図9に示す例では、排熱ヒートポンプB-10に対して算出された異常スコアが「0.45」であり、対応する閾値「0.30」より大きい。また、他の熱機器に対して算出された異常スコアは、それぞれ対応する閾値より小さい。この場合、異常検知部21は、排熱ヒートポンプB-10において異常が発生していると判定し、排熱ヒートポンプB-10を識別する情報を余寿命推定システム30に送信する。このとき、異常検知部21は、異常を検知した時刻を余寿命推定システム30に通知する。
【0038】
余寿命推定システム30において余寿命推定部31は、異常検知部21からの通知により、排熱ヒートポンプB-10において異常が発生していることを認識する。そうすると、余寿命推定部31は、余寿命/修理時間データを参照することにより、排熱ヒートポンプB-10に対して設定されている余寿命および修理時間を特定する。
図9に示す実施例では、「余寿命:504時間」および「修理時間:8時間」が特定される。そして、余寿命推定システム30は、排熱ヒートポンプB-10において異常が検知されたことを、
図10に示す異常検知データベースに登録する。
図10に示す例では、異常検知データベースの5番目のレコードに、排熱ヒートポンプB-10に異常に係わる情報が登録されている。
【0039】
余寿命推定システム30は、排熱ヒートポンプB-10において異常が検知されたことを表す情報、異常が検知された時刻を表す情報、および対応する余寿命および修理時間を表す情報を管理端末50に送信する。そうすると、管理端末50は、余寿命推定システム30から受信した情報を表示する。
【0040】
図11は、異常検知及び余寿命計算結果を表示する管理端末50の画面の一例を示す。この画面においては、異常が検知された熱機器の名称、メーカー、および型式が表示される。また、熱供給設備100の構成図が表示され、その中で異常が検知された熱機器が強調表示されている。
図11に示す例では、異常が検知された熱機器は、黒色で塗りつぶされている。さらに、異常が検知された日時、余寿命時間、修理時間、および故障停止予測日時が表示される。異常が検知された日時は、異常検知部21が異常を検知した日時を表す。余寿命時間および修理時間は、余寿命推定部31により特定された値を表す。故障停止予測日時は、異常が検知された日時に余寿命時間を加算することで算出され、検知された熱機器が故障して停止すると推定される日時を表す。
【0041】
管理端末50のユーザである設備保全管理者は、
図11に示す画面により、排熱ヒートポンプB-10を「2022年6月29日の10時」まで修理する必要がある旨を認識できる。加えて、設備保全管理者は、この熱機器を修理するために要する時間が「8時間」であることを認識できる。
【0042】
余寿命推定システム30は、排熱ヒートポンプB-10において異常が検知されたことを表す情報、異常が検知された時刻を表す情報、および対応する余寿命および修理時間を表す情報を最適運用システム40にも送信する。そうすると、最適運用システム40において提案部42は、その熱機器を修理する時期を決定する。具体的には、提案部42は、以下のようにして熱機器の修理時期を決定する。なお、以下の記載では、異常検知部21により異常が検知された熱機器を「対象熱機器」と呼ぶことがある。また、現在時刻(または、異常が検知された時刻)から故障停止予測日時までの期間を「余寿命期間」と呼ぶことがある。
【0043】
まず、提案部42は、余寿命期間全体にわたって、対象熱機器を停止させたと仮定した場合における運用計画データおよびコストデータを再計算する。この実施例では、提案部42は、
図2に示す排熱ヒートポンプシステム102を構成する複数の排熱ヒートポンプの中の1つ(
図9に示す例では、排熱ヒートポンプB-10)を停止させたと仮定した場合における運用計画データおよびコストデータを再計算する。ただし、以下の記載においては、説明を簡潔にするために、排熱ヒートポンプの修理時には、排熱ヒートポンプシステム102全体を停止させるものとする。
【0044】
ここで、熱供給設備100は、対象熱機器の修理時であっても、需要設備300が必要とする蒸気量を供給し続けることが好ましい。よって、最適化制御部41は、負荷変動予測データを変更しない。そして、運用計画データは、負荷変動予測データが表す蒸気量を満足するように作成されるので、正常運転時および対象熱機器の修理時において、運用計画データが表す各時間帯の蒸気量は互いに同じである。但し、対象熱機器の修理時には、排熱ヒートポンプシステム102が停止するので、
図12(a)に示すように、需要設備300が必要とする蒸気量はすべて蒸気ボイラシステム101により供給される。
【0045】
この場合、正常運転時と比較して、対象熱機器の修理時においては、排熱ヒートポンプシステム102が使用する電力が不要となるが、蒸気ボイラシステム101が使用するLNGおよび電力が増加する。ここで、正常運転時は、最適化制御部41により、需要設備300に供給する蒸気を生成するための総コストが最小化されるように運用計画データが作成されている。したがって、正常運転時と比較して、対象熱機器の修理時においては、需要設備300に供給する蒸気を生成するための総コストが増加すると考えられる。例えば、
図8(b)に示す正常運転時のコストデータによれば、1時間当たりのコストは、ピーク時であっても約2万円である。これに対して、対象熱機器の修理時においては、
図12(b)に示すように、1時間当たりのコストは最大で約2万5千円に達している。
【0046】
続いて、提案部42は、
図8(b)に示す正常運転時のコストデータと
図12(b)に示す対象熱機器の修理時のコストデータとを比較する。具体的には、提案部42は、
図13に示すように、余寿命期間全体にわたって、正常運転時のコストデータと対象熱機器の修理時のコストデータとの差分を計算する。この差分は、対象熱機器を停止して修理を行うことによるコストの増加分を表す。
【0047】
さらに、提案部42は、余寿命期間内のどのタイミングで対象熱機器を修理すればコストの増加分が最小になるのかを計算する。このとき、提案部42は、
図13において、対象熱機器を修理時間ΔTだけ停止させたときに生じるコストの増加分を計算する。修理時間ΔTは、対象熱機器に対して設定されている「修理時間」であり、余寿命推定部31から通知される。
図9~
図11に示す実施例では、修理時間ΔTは、排熱ヒートポンプB-10の修理時間であり、「8時間」である。
【0048】
具体的には、提案部42は、異常が検知された時刻T0を起点として修理時間ΔTが経過するまでの期間におけるコストの増加分を計算する。続いて、提案部42は、時刻T0の1時間後の時刻を起点として修理時間ΔTが経過するまでの期間におけるコストの増加分を計算する。以下同様に、提案部42は、起点時刻を1時間ずつシフトさせながら、それぞれコストの増加分を計算する。そして、提案部42は、コストの増加分が最小となるタイミングを検出する。
図13に示す例では、時刻Txを起点するときに、対象熱機器を停止して修理を行うことによるコストの増加分が最小になる。
【0049】
提案部42は、コストの増加分が最小になるタイミングを「対象熱機器を修理すべき時期」と決定する。そして、提案部42は、この結果を管理端末50に通知する。
図13に示す例では、「時刻Txから8時間の間に排熱ヒートポンプB-10を修理することが好ましい」を表す情報が管理端末50に送信される。これにより、管理端末50は、対象熱機器を修理すべき時期を表す情報を取得する。
【0050】
管理端末50のユーザ(すなわち、設備保全管理者)は、異常検知部21により熱機器の異常が検知された後、提案部42による提案を閲覧することができる。例えば、管理端末50が
図11に示す画面を表示しているものとする。この場合、設備保全管理者は、画面上に表示されている操作ボタン「最適運用再計算」を指示する。そうすると、管理端末50は、最適運用システム40と通信することにより、対象熱機器が運転を停止したと仮定した場合の運用計画データおよびコストデータを取得する。そして、管理端末50は、
図14に示すように、負荷変動予測データと共に、最適運用システム40から取得した運用計画データおよびコストデータを表示する。なお、設備保全管理者は、画面上で、表示単位および表示期間を指定することができる。
【0051】
設備保全管理者は、対象熱機器の修理時期についての提案を閲覧するときには、
図14に示す画面上に表示されている操作ボタン「修理時期表示」を指示する。そうすると、管理端末50は、最適運用システム40と通信することにより、提案部42により決定された修理時期を表す情報を取得する。そして、管理端末50は、
図15に示すように、対象熱機器の修理時期に係わる情報を表示する。この実施例では、2022年6月10日の20時から2022年6月11日の4時までの期間に修理を行うと、コストの増加分が最小になることを示している。
【0052】
なお、修理時期の提案を表示する画面は、需要変動予測データ、運用計画データ、およびコストデータを表示してもよい。この場合、提案されている修理期間だけでなく、修理期間を含む所定の期間(例えば、24時間)のデータを表示することが好ましい。
【0053】
また、
図15に示す例では、設備保全管理者が優先項目として「コスト」を選択し、コストの増加分を最小にする修理時期が提案されるが、本発明の実施形態はこのような提案に限定されるものではない。すなわち、設備保全管理者は、予め用意されている優先項目の中から所望の項目を選択できる。例えば、設備保全管理者が優先項目として「二酸化炭素の排出量」を選択したときには、二酸化炭素の排出量を最小にする修理時期が提案される。ただし、この場合、最適運用システム40において二酸化炭素の排出量を最小にする修理時期が決定されているものとする。
【0054】
このように、本発明の実施形態に係わる修理時期提案方法によれば、異常検知部21により熱機器の異常が検知されると、その熱機器を修理すべき時期についての提案が管理端末50に表示される。よって、設備保全管理者は、好ましいタイミングで熱機器を修理することができる。例えば、修理に起因して発生する燃料コストの増加分が最小になるように修理時期が提案されるケースでは、燃料コストを抑えながら熱供給設備を修理することができる。
【0055】
図16は、本発明の実施形態に係わる修理時期提案方法の準備手順の一例を示すフローチャートである。準備手順は、例えば、設備保全管理者によりまたは設備保全管理者の指示に応じて行われる。
【0056】
S1において、設備保全管理者は、監視対象となる熱供給設備の基本情報および負荷変動予測を最適運用システム40に登録する。基本情報は、監視対象となる熱供給設備の構成を表す設備構成データおよび
図6に示す機器性能データ等を含む。また、負荷変動予測は、需要設備の運用者から取得する。なお、最適運用システム40は、登録された情報に基づいて、熱供給設備の運用計画を作成することができる。
【0057】
S2において、設備保全管理者は、監視すべき熱機器に対して集音マイクを設置する。なお、熱機器を構成する部品ごとに異常を検知したいときは、各部品の近傍にそれぞれ集音マイクを設置してもよい。S3において、設備保全管理者は、熱供給設備が正常に動作しているときに集音マイクが収集する音データを「正常動作音データ」として取得する。すなわち、監視対象の各熱機器または各部品の正常動作音データが取得される。正常動作音データは、例えば、異常兆候検知装置20が備える記憶装置に保存される。
【0058】
S4において、設備保全管理者は、監視対象の各熱機器または各部品に対して、異常の有無を判定するための閾値を設定する。閾値は、例えば、過去の事例等に基づいて決定することが好ましい。そして、閾値は、異常兆候検知装置20が備える記憶装置に保存される。
【0059】
S5において、設備保全管理者は、監視対象の各熱機器または各部品に対して、余寿命および修理時間を設定する。余寿命は、熱機器の異常が検知された時刻から、その熱機器が実際に故障すると推定される時刻までの期間を表し、過去の事例等に基づいて決定することが好ましい。修理時間も、過去の事例等に基づいて決定することが好ましい。
【0060】
図17は、異常兆候検知装置20の処理の一例を示すフローチャートである。このフローチャートの処理は、定期的にまたは継続的に実行される。また、このフローチャートの処理は、各集音マイクに対してそれぞれ実行される。
【0061】
S11において、異常兆候検知装置20は、集音マイク10から出力される音データを取得する。S12において、異常兆候検知装置20は、対応する正常動作音データを利用して、取得した音データの異常スコアを計算する。すなわち、集音マイク10に対応する熱機器についての異常スコアが計算される。
【0062】
S13において、異常兆候検知装置20は、S12で計算した異常スコアと対応する閾値とを比較する。そして、異常スコアが閾値以下であるときには、異常兆候検知装置20は、対応する熱機器において異常が発生していないと判定する。この場合、異常兆候検知装置20の処理はS11に戻る。すなわち、異常兆候検知装置20は、集音マイク10から出力される音データを取得する処理を継続する。
【0063】
異常スコアが閾値より大きいときには、異常兆候検知装置20は、対応する熱機器において異常が発生していると判定する。この場合、異常兆候検知装置20は、S14において、異常が検知されたことを余寿命推定システム30に通知する。このとき、異常兆候検知装置20が異常を検知した時刻、および異常が検知された熱機器を識別する情報が、余寿命推定システム30に送信される。
【0064】
図18は、余寿命推定システム30の処理の一例を示すフローチャートである。このフローチャートの処理は、異常兆候検知装置20により熱機器の異常が検知されたときに実行される。
【0065】
S21において、余寿命推定システム30は、異常兆候検知装置20からの通知に基づいて、異常が検知された熱機器を特定する。S22において、余寿命推定システム30は、余寿命/修理時間データを参照することにより、異常が検知された熱機器の余寿命および修理時間を特定する。
図9に示す実施例では、異常兆候検知装置20において排熱ヒートポンプB-10の異常が検知されると、余寿命推定システム30は、「余寿命:504時間」および「修理時間:8時間」を取得する。S23において、余寿命推定システム30は、異常が検知された熱機器および関連する情報を
図10に示す異常検知データベースに登録する。
【0066】
S24において、余寿命推定システム30は、異常が検知された熱機器、余寿命、および修理時間を管理端末50に通知する。これにより、管理端末50は、
図11に示す「異常検知及び余寿命計算結果」を表す画面を表示する。S25において、余寿命推定システム30は、異常が検知された熱機器、余寿命、および修理時間を最適運用システム40に通知する。そうすると、最適運用システム40は、異常が検知された熱機器を修理すべき時期を決定する。
【0067】
図19は、最適運用システム40の処理の一例を示すフローチャートである。このフローチャートの処理は、異常兆候検知装置20により熱機器の異常が検知され、さらに余寿命推定システム30から関連する情報を受信したときに実行される。
【0068】
S31において、最適運用システム40は、余寿命期間全体にわたって、異常が検知された熱機器(対象熱機器)を停止させたと仮定した場合における最適な運用計画および対応するコストを計算する。すなわち、
図12に示すように、対象熱機器の修理時の運用計画および対応するコストが計算される。このとき、最適運用システム40は、管理端末50からの要求に応じて、対象熱機器の修理時の運用計画および対応するコストを表す情報を提供してもよい。この場合、管理端末50において
図14に示す画面が表示される。
【0069】
S32において、最適運用システム40は、余寿命期間全体にわたって、正常動作時のコストと修理時のコストとを比較する。そして、最適運用システム40は、正常動作時のコストと比較して、修理時のコストの増加分が最小になるように、対象熱機器の修理時期を決定する。そして、S33において、最適運用システム40は、対象熱機器の修理時期を表す情報を管理端末50に送信する。すなわち、最適運用システム40に実装される提案部42は、設備保全管理者に対して対象熱機器の修理時期を提案することができる。なお、最適運用システム40は、管理端末50からの要求に応じて、対象熱機器の修理時期を提案してもよい。
【0070】
<バリエーション>
上述の実施例では、集音マイク10が収集する音に基づいて異常兆候検知装置20が熱機器の異常を検知したときに、余寿命推定システム30において対応する余寿命および修理時間が特定される。ただし、本発明の実施形態はこの方式に限定されるものではない。例えば、故障の兆候が現れるときに、その故障の種類によって発生する音が異なることがある。そして、故障の種類が異なれば、余寿命および修理時間も異なると考えられる。よって、異常兆候検知装置20は、集音マイク10から出力される音データを分析することで、発生し得る故障の種類を推定してもよい。この場合、余寿命推定システム30は、推定される故障の種類に応じて、余寿命および修理時間を特定する。
【0071】
また、上述の実施例では、検知した異常に対応する故障が発生するまでの期間を表す余寿命を推定し、現在時刻から余寿命が終了するまでの期間内で修理時期を提案するが、本発明の実施形態はこの方式に限定されるものではない。例えば、余寿命が終了する日時に近づくにつれて、故障が発生する確率が高くなる。よって、余寿命が終了する日時から所定時間さかのぼった日時までの期間内で修理時期を提案するようにしてもよい。
【0072】
<ハードウェア構成>
図20は、修理時期提案システムのハードウェア構成の一例を示す。修理時期提案システムは、プロセッサ201、メモリ202、記憶装置203、入出力デバイス204、記録媒体読取り装置205、および通信インタフェース206を備えるコンピュータ200により実現される。なお、修理時期提案システムは、1または複数のコンピュータ200により実現される。
【0073】
プロセッサ201は、記憶装置203に保存されている制御プログラムを実行することにより、異常兆候検知装置20、余寿命推定システム30、および最適運用システム40の動作を制御する。異常兆候検知装置20においては、制御プログラムは、
図17に示すフローチャートの手順を記述したプログラムコードを含み、異常検知部21の機能を提供する。余寿命推定システム30においては、制御プログラムは、
図18に示すフローチャートの手順を記述したプログラムコードを含み、余寿命推定部31の機能を提供する。最適運用システム40においては、制御プログラムは、
図19に示すフローチャートの手順を記述したプログラムコードを含み、最適化制御部41および提案部42の機能を提供する。メモリ202は、プロセッサ201の作業領域として使用される。また、記憶装置203は、上述した制御プログラムおよび他のプログラムを保存する。さらに、記憶装置203は、閾値データ、余寿命/使用時間データ、設備構成データ、機器性能データ、負荷変動予測データ、運用計画データ等を保存することができる。
【0074】
入出力デバイス204は、キーボード、マウス、タッチパネル、マイクなどの入力デバイスを含む。また、入出力デバイス204は、表示装置、スピーカーなどの出力デバイスを含む。記録媒体読取り装置205は、記録媒体210に記録されているデータおよび情報を取得できる。記録媒体210は、コンピュータ200に着脱可能なリムーバブル記録媒体である。また、記録媒体210は、例えば、半導体メモリ、光学的作用で信号を記録する媒体、または磁気的作用で信号を記録する媒体により実現される。なお、制御プログラムは、記録媒体210からコンピュータ200に与えられてもよい。通信インタフェース206は、ネットワークに接続する機能を提供する。なお、制御プログラムがプログラムサーバ220に保存されているときは、コンピュータ200は、プログラムサーバ220から制御プログラムを取得してもよい。
【符号の説明】
【0075】
1 修理時期提案システム
10 集音マイク
20 異常兆候検知装置
21 異常検知部
30 余寿命推定システム
31 余寿命推定部
40 最適運用システム
41 最適化制御部
42 提案部
50 管理端末
100 熱供給設備(産業プラント)
101 蒸気ボイラシステム
102 排熱ヒートポンプシステム
103 蒸気ヘッダ
104 ドレン水ヘッダ
105 タンク
200 コンピュータ
201 プロセッサ
202 メモリ
203 記憶装置
204 入出力デバイス
205 記録媒体読取り装置
206 通信インタフェース
300 需要設備(負荷)