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特開2024-4585ω-3高度不飽和脂肪酸含有組成物の製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024004585
(43)【公開日】2024-01-17
(54)【発明の名称】ω-3高度不飽和脂肪酸含有組成物の製造方法
(51)【国際特許分類】
   C11C 3/10 20060101AFI20240110BHJP
   C07C 69/587 20060101ALN20240110BHJP
【FI】
C11C3/10
C07C69/587
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022104252
(22)【出願日】2022-06-29
(71)【出願人】
【識別番号】301049744
【氏名又は名称】日清ファルマ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100127926
【弁理士】
【氏名又は名称】結田 純次
(74)【代理人】
【識別番号】100140132
【弁理士】
【氏名又は名称】竹林 則幸
(72)【発明者】
【氏名】大胡 康
(72)【発明者】
【氏名】柳川 洋晟
【テーマコード(参考)】
4H006
4H059
【Fターム(参考)】
4H006AA01
4H006AB10
4H059BB05
4H059BB07
4H059BC06
4H059BC48
4H059CA36
4H059EA21
(57)【要約】
【課題】濃縮工程における熱負荷が少なく、類似構造を効率的に分離して、DHAおよびHPAを選択的に濃縮して、DHAとHPAをともに十分な量含有する組成物を提供すること。
【解決手段】ω-3高度不飽和脂肪酸エステルを含む原料を、リパーゼにより処理して、ドコサヘキサエン酸エステルおよびヘンエイコサペンタエン酸エステルを濃縮することを含む、ドコサヘキサエン酸エステルおよびヘンエイコサペンタエン酸エステルが選択的に濃縮されたω-3高度不飽和脂肪酸エステル含有組成物の製造方法。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ω-3高度不飽和脂肪酸エステルを含む原料を、リパーゼにより処理して、ドコサヘキサエン酸エステルおよびヘンエイコサペンタエン酸エステルを濃縮することを含む、ドコサヘキサエン酸エステルおよびヘンエイコサペンタエン酸エステルが選択的に濃縮されたω-3高度不飽和脂肪酸又はそのエステル含有組成物の製造方法。
【請求項2】
リパーゼがRhizomucor miehei(リゾムコール・ミエヘイ)由来のものである請求項1に記載の製造方法。
【請求項3】
ω-3高度不飽和脂肪酸エステルを含む原料が、魚油由来のものである請求項1に記載の製造方法。
【請求項4】
ω-3高度不飽和脂肪酸エステルを含む原料が、魚油由来のものである請求項2に記載の製造方法。
【請求項5】
ω-3高度不飽和脂肪酸エステルがエチルエステルである請求項1~4の何れか1項に記載の製造方法。
【請求項6】
濃縮後のω-3高度不飽和脂肪酸又はそのエステル組成物にドコサヘキサエン酸又はそのエステル80面積%以上およびヘンエイコサペンタエン酸又はそのエステル8面積%以上が含有される請求項1~4の何れか1項に記載の製造方法。
【請求項7】
濃縮後のω-3高度不飽和脂肪酸又はそのエステル組成物にドコサヘキサエン酸又はそのエステル80面積%以上およびヘンエイコサペンタエン酸又はそのエステル8面積%以上が含有される請求項5に記載の製造方法。
【請求項8】
ドコサヘキサエン酸又はそのエステル80面積%以上およびヘンエイコサペンタエン酸又はそのエステル8面積%以上を含有する、ω-3高度不飽和脂肪酸又はそのエステル含有組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ω-3高度不飽和脂肪酸含有組成物の製造方法に関する。
詳細には、ω-3高度不飽和脂肪酸エステルを含む原料を、リパーゼ、好ましくはRhizomucor miehei(リゾムコール・ミエヘイ)由来リパーゼで処理することによる、ドコサヘキサエン酸エステルおよびヘンエイコサペンタエン酸エステルが選択的に濃縮されて、ドコサヘキサエン酸エステルおよびヘンエイコサペンタエン酸エステルをともに十分な量含有するω-3高度不飽和脂肪酸含有組成物の製造方法及びドコサヘキサエン酸エステルおよびヘンエイコサペンタエン酸エステルをともに十分な量含有するω-3高度不飽和脂肪酸含有組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
高度不飽和脂肪酸は、不飽和結合を2つ以上持つ脂肪酸であり、ω-6不飽和脂肪酸のリノール酸(LA、18:2n-6)、γ-リノレン酸(GLA、18:3n-6)、アラキドン酸(ARA、20:4n-6)、ω-3不飽和脂肪酸のα-リノレン酸(ALA、18:3n-3)、エイコサペンタエン酸(EPA、20:5n-3)、ドコサヘキサエン酸(DHA、22:6n-3)などが挙げられる。高度不飽和脂肪酸は、生体膜の主要構成成分として膜の流動性の調節に関与するほか、生体機能性成分の前駆体としても重要である。
【0003】
例えば、ω-3不飽和脂肪酸のEPAは、高等動物内においてプロスタグランジン、トロンボキサン、ロイコトリエンなどの前駆体であり、血小板凝集阻害作用、血中中性脂肪低下作用、抗動脈硬化作用、血液粘度低下作用、血圧降下作用、抗炎症作用、抗腫瘍作用等の生理作用を有し、医薬品、食品、化粧品、飼料等の様々な分野に利用されている。また、DHAは脳内に最も多量に存在する高度不飽和脂肪酸であり、学習機能の向上、抗腫瘍、抗アレルギー等の優れた効果を有することが知られている。さらに、EPA又はDHAはアトピー性等の皮膚炎に対しても有効であることが知られている。そのため、EPA、DHA等のω-3高度不飽和脂肪酸はその広範な有効性から、食品、健康食品、医薬品として市販されている。
【0004】
ω-3高度不飽和脂肪酸は、二重結合を複数有するため、化学合成によって得ることは容易ではない。したがって、工業利用されるω-3高度不飽和脂肪酸のほとんどは、ω-3高度不飽和脂肪酸を豊富に含む海洋生物由来原料、例えば魚油などから抽出又は精製することによって製造されている。しかしながら、生物由来原料は、炭素数、二重結合の数や位置、さらには立体異性体の構成比などが異なる多種の脂肪酸の混合物であるため、目的とするEPAやDHAの含有量は必ずしも高くない。
【0005】
そのため、従来、生物由来原料からEPAやDHAを選択的に精製することが求められていた。特に、食品や医薬品の原料としてEPAやDHAを用いる場合、極力不純物がない高純度のEPAやDHAが求められている。また、海洋生物由来原料から精製したEPAやDHAは、微量でも不純物を含有すると強い魚臭を発散するため、従来のEPAやDHAを含有する食品や医薬品は、EPAやDHAをカプセルに密封したり、マスキング剤とともに製剤化するなど、臭いの対策を施す必要があった。したがって、医薬品や健康食品の原料となり得るEPAやDHAを高純度に含有する組成物を簡便に製造することができる方法が求められている。
【0006】
ω-3高度不飽和脂肪酸類の分離方法としては、例えば蒸留による方法が知られているが、炭素鎖が類似したω-3高度不飽和脂肪酸を分離するのは非効率であった。また、蒸
留における加熱によって熱異性体が増加するという問題があった。
【0007】
DHAを選択的に濃縮するための蒸留以外の方法としては、以下の酵素を使用した方法が知られている。
【0008】
特許文献1には、遊離脂肪酸としてEPAおよびDHAを含有する海産油組成物を、リパーゼ触媒存在下でグリセロールでエステル化して、EPAのグリセリド体とDHAの遊離体を得る方法が記載されている。
【0009】
また、特許文献2には、ドコサヘキサエン酸をグリセリドの構成脂肪酸として含有する組成物の製造方法として、ドコサヘキサエン酸を構成脂肪酸として含むグリセリドを含有する原料油に複数のリパーゼを作用させて加水分解反応を行い、グリセリド画分中のドコサヘキサエン酸の割合を高める工程を含む方法が開示されている
【0010】
さらに、特許文献3には、ω-3系高度不飽和脂肪酸を含有する長鎖脂肪酸と低級アルコールから構成される脂肪酸エステルを、リパーゼを用いて直鎖高級アルコールと選択的アルコリシス反応させることを特徴とするω-3系高度不飽和脂肪酸エステルの精製方法において、高度不飽和脂肪酸エステルは未反応のままでそれ以外の脂肪酸エステルが優先的に高級アルコールとアルコール交換されて、容易にワックスエステルが生成することが開示されている。
【0011】
近年、ω-3不飽和脂肪酸のひとつであるヘンエイコサペンタエン酸(HPA、21:5n-3)についても、アルツハイマー病の治療においてDHA誘導体と関連して重要な役割を担っている可能性があるとの報告(非特許文献1)があり、その機能性に注目が集まっていることから、DHAとともにHPAを摂取することに意義があると考えられ、DHAとHPAをともに十分な量含有する組成物が求められている。しかし、DHAとHPAを併せて選択的かつ簡便に濃縮する方法は現在までに知られていない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0012】
【特許文献1】特表2002-537442号公報
【特許文献2】特再公表WO2020/050303
【特許文献3】特開平10-152693号公報
【非特許文献】
【0013】
【非特許文献1】Frontiers in Cell and Developmental Biology, March 2020 Vol.8 Article 164, Sebastia Parets et al.
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
本発明の課題は、濃縮工程における熱負荷が少なく、類似構造を効率的に分離し、DHAおよびHPAを選択的に濃縮して、DHAとHPAをともに十分な量含有する組成物を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0015】
本発明者らは、ω-3高度不飽和脂肪酸エステルを含む原料を、リパーゼで処理することにより、ドコサヘキサエン酸エステルおよびヘンエイコサペンタエン酸エステルが選択的に濃縮され、DHAとHPAをともに十分な量含有する組成物が得られることを見出し、本発明に到達することができた。
【0016】
したがって、上記の課題は、以下の製造方法及び組成物によって解決することができる。
(1)ω-3高度不飽和脂肪酸エステルを含む原料を、リパーゼにより処理して、ドコサヘキサエン酸エステルおよびヘンエイコサペンタエン酸エステルを濃縮することを含む、ドコサヘキサエン酸エステルおよびヘンエイコサペンタエン酸エステルが選択的に濃縮されたω-3高度不飽和脂肪酸又はそのエステル含有組成物の製造方法。
(2)リパーゼがRhizomucor miehei(リゾムコール・ミエヘイ)由来のものである(1)の製造方法。
(3)ω-3高度不飽和脂肪酸エステルを含む原料が、魚油由来のものである(1)又は(2)の製造方法。
(4)ω-3高度不飽和脂肪酸エステルがエチルエステルである(1)~(3)の製造方法。
(5)濃縮後のω-3高度不飽和脂肪酸又はそのエステル含有組成物にドコサヘキサエン酸又はそのエステル80面積%以上およびヘンエイコサペンタエン酸又はそのエステル8面積%以上が含有される(1)~(4)の製造方法。
(6)ドコサヘキサエン酸又はそのエステル80面積%以上およびヘンエイコサペンタエン酸又はそのエステル8面積%以上を含有する、ω-3高度不飽和脂肪酸又はそのエステル含有組成物。
【発明の効果】
【0017】
本発明の製造方法は、濃縮工程における熱負荷が少なく、類似構造を効率的に分離して、DHAおよびHPAを選択的に濃縮することができるため、近年、それらの機能性から望まれている、DHAとHPAをともに十分な量含有する組成物を効率的に提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0018】
本発明のω-3高度不飽和脂肪酸含有組成物の製造方法について、以下に説明する。
【0019】
(ω-3高度不飽和脂肪酸エステル含有原料)
本発明で用いるω-3高度不飽和脂肪酸含有組成物の原料としては、主として天然物由来の油脂混合物であって、上述したω-3高度不飽和脂肪酸が含まれているものが挙げられる。そのような原料の例としては、魚類等の海産動物やプランクトン由来の油脂、藻類等の微生物由来の油脂などが挙げられ、中でもイワシ、ハマチ等の魚類由来の油脂が好ましい。
【0020】
本発明で用いるω-3高度不飽和脂肪酸含有組成物の原料は、DHA及びHPAの合計含有量ができるだけ高いものであることが好ましく、DHA及びHPAを、含有する脂肪酸の全量に対して25面積%以上、より好ましくは65面積%以上含有する油脂である。該原料中のω-3高度不飽和脂肪酸は、遊離脂肪酸の形態で存在していてもよく、又はモノ、ジ若しくはトリグリセリド等のエステル化脂肪酸の形態で存在していてもよい。
【0021】
本発明の方法において、当該原料中のω-3高度不飽和脂肪酸はアルキルエステル化されている。ω-3高度不飽和脂肪酸アルキルエステルは、例えば、ω-3高度不飽和脂肪酸を含有する油脂と所望のアルキル基を有する酸とを公知の方法によりエステル化反応させることにより製造することができる。あるいは、該油脂に含まれるグリセリド中のω-3高度不飽和脂肪酸を、触媒又は酵素の存在下で低級アルコールと反応させてアルキルエステル化することにより、ω-3高度不飽和脂肪酸アルキルエステルを得ることができる。
【0022】
本発明において、原料のω-3高度不飽和脂肪酸アルキルエステルのアルキルエステル
化の程度は高いほど好適であり、該原料油中に含まれるω-3不飽和脂肪酸(遊離体を含む)の全量のうち、好ましくは90質量%以上、より好ましくは95質量%以上がアルキルエステル化されているとよい。該ω-3高度不飽和脂肪酸のアルキルエステルを構成するアルキル基としては、炭素数1~5の直鎖状又は分岐鎖状のアルキル基が挙げられ、好ましくはメチル基又はエチル基であり、より好ましくはエチル基である。
【0023】
本発明における原料として用いられるω-3高度不飽和脂肪酸アルキルエステルを含有する油脂としては、市販されている油脂類を用いてもよい。例えば、含有するω-3高度不飽和脂肪酸の種類や量が規格化された市販の魚油由来の油脂類などを用いることが好ましい。また、高純度の高度不飽和脂肪酸エステル、例えば、EPAエチルエステル含有組成物を製造した際に得られる副産物を用いてもよい。
【0024】
(リパーゼ)
本発明に使用するリパーゼは、リゾムコール属(Rhizomucor属)に属する微生物由来のリパーゼであり、リゾムコール・ミエヘイ(Rhizomucor miehei)由来リパーゼが好ましく、これに該当する市販品としては、例えば、Sigma-Aldrich社製 Lipase from Rhizomucor miehei(製品番号L4277)、ノボザイムジャパン社製 Palatase 20000LやLipozyme RMなどが挙げられる。
【0025】
本発明に使用するリパーゼの使用形態については、特に制限されるものではなく、そのまま使用しても固定化剤に固定して使用しても良い。
【0026】
(リパーゼ反応液)
本発明において、リパーゼ反応液におけるリパーゼの使用量は、特に制限されるものではなく、適宜決定することができるが、例えば、原料油脂に対して15~75質量%が好ましく、23~45質量%がさらに好ましい。また、水分量については、原料油脂に対して100~910質量%が好ましく、210~910質量%がさらに好ましい 。
【0027】
(リパーゼ反応条件)
本発明において、リパーゼ反応は、通常行われているリパーゼ反応の条件で行うことができ、特に限定されるものではなく、適宜決定することができるが、例えば、35~50℃、好ましくは40~45℃の温度条件で、脂肪酸エステルの酸化を防止するため真空下で、2.5~10時間、好ましくは5~10時間、等の反応条件を例示することができる。
【0028】
(精製)
リパーゼ反応後の反応液中には、ω-3高度不飽和脂肪酸エステルが加水分解することで生じる遊離脂肪酸とアルコールと、目的のDHAエステル及びHPAエステルを含む未反応のω-3高度不飽和脂肪酸エステルが含まれている。したがって、目的のDHAエステルおよびHPAエステルを分取するために、加水分解された遊離脂肪酸とアルコールを除去し精製する必要がある。目的のω-3不飽和脂脂肪酸エステルを分取する方法には、例えばカラム精製による方法、液液分配による方法が挙げられる。
【0029】
また、得られた目的のDHAエステルおよびHPAエステルを含有する組成物を公知の方法である、酸やアルカリを用いた加水分解やリチウム金属を用いた加水分解、または脂肪酸選択能がない酵素を用いた加水分解等を行うことによって、DHAおよびHPAの遊離体を含有する組成物とすることもできる。
【実施例0030】
以下、実施例を挙げて、本発明をさらに詳細に説明するが、本発明は実施例に限定され
るものではない。
(実施例1~12)
【0031】
(脂肪酸組成比の分析)
測定試料12.5mgをn-ヘキサン1mLに希釈し、ガスクロマトグラフィー分析装置(Type 7890 GC;Agilent Technologies製)を用いて、以下の条件にて全脂肪酸中における各脂肪酸の含有比を分析した。結果は、クロマトグラムの面積から換算した面積%として表した。
<注入口条件>
注入口温度:250℃、スプリット比:10
<カラム条件>
カラム:J&W社製DB-WAX 0.25 mm×30 m、カラム温度:210℃、
He流量:1.0 mL/min、He圧力:20 PSI
<検出条件>
2流量:40 mL/min、Air流量:450 mL/min
He流量:1.00 mL/min、DET温度:260℃
【0032】
なお、 分析した脂肪酸は、以下のとおりである:ETA-E:エイコサテトラエン酸エチルエステル、EPA-E:エイコサペンタエン酸エチルエステル、HPA-E:ヘンエイコサペンタエン酸エチルエステル、DPA-E:ドコサペンタエン酸エチルエステル、DHA-E:ドコサヘキサエン酸エチルエステル。
【0033】
(試料調製方法)
実施例1~3
油脂に対し、水を総投入量の半分量加え、酵素(Lipase from Rhizomucor miehei Sigma-Aldrich社製 製品番号:L4277)を対油脂15質量%または23質量%投入し、反応系中を真空状態(真空圧0.9MPa以下)としながら、35℃、2.5時間攪拌した。攪拌後、水を総投入量の半分量加え、真空状態で更に2.5時間攪拌して反応物を得た後、遠心分離により油脂と酵素を分離し、生成物を得た。得られた生成物をシリカゲルカラムクロマトグラフィーを用いてω-3高度不飽和脂肪酸エステル画分と遊離脂肪酸画分に分離し、ω-3高度不飽和脂肪酸エステル画分を減圧下、濃縮乾固し、組成物を得た。
【0034】
実施例4~6
油脂に対し、水を総投入量の半分量加え、酵素(Lipase from Rhizomucor miehei Sigma-Aldrich社製 製品番号:L4277)を対油脂45質量%投入し、反応系中を真空状態(真空圧0.9MPa以下)としながら、各反応温度で2.5時間攪拌した。攪拌後、水を総投入量の半分量加えて真空状態でさらに2.5時間攪拌し、反応物を得た後、遠心分離により油脂と酵素を分離し、生成物を得た。得られた生成物をシリカゲルカラムクロマトグラフィーを用いてω-3高度不飽和脂肪酸エステル画分と遊離脂肪酸画分に分離し、ω-3高度不飽和脂肪酸エステル画分を減圧下、濃縮乾固し、組成物を得た。
【0035】
実施例7~8
油脂に対し、水を総投入量の半分量加え、酵素(Lipase from Rhizomucor miehei Sigma-Aldrich社製 製品番号:L4277)を対油脂45質量%または75質量%投入し、反応系中を真空状態(真空圧0.9MPa以下)としながら、各反応温度で2.5時間攪拌した。攪拌後、水を総投入量の半分量加え、真空状態でさらに2.5時間攪拌し、反応物を得た後、遠心分離により油脂と酵素を分離し、生成物を得た。得られた生成物をシリカゲルカラムクロマトグラフィーを用いてω-3高度不飽和脂肪酸エステル画分と遊離脂
肪酸画分に分離し、ω-3高度不飽和脂肪酸エステル画分を減圧下、濃縮乾固し、組成物を得た。
【0036】
実施例9~11
各油脂に対し、水を総投入量の1/4量加え、酵素(Lipase from Rhizomucor miehei
Sigma-Aldrich社製 製品番号:L4277)を対油脂45質量%投入し、反応系中を真空状態(真空圧0.9MPa以下)としながら、45℃、2.5時間攪拌した。攪拌後、水を総投入量の1/4量加えて真空状態でさらに2.5時間攪拌し、この操作をさらに2回繰り返して、合計10時間反応させて反応物を得た。その後、遠心分離により油脂と酵素を分離し、生成物を得た。得られた生成物をシリカゲルカラムクロマトグラフィーを用いてω-3高度不飽和脂肪酸エステル画分と遊離脂肪酸画分に分離し、ω-3高度不飽和脂肪酸エステル画分を減圧下、濃縮乾固し、組成物を得た。
【0037】
実施例12
油脂に対し、水を総投入量の1/4量加え、酵素(Lipase from Rhizomucor miehei Sigma-Aldrich社製 製品番号:L4277)を対油脂45質量%投入し、反応系中を真空状態(真空圧0.9MPa以下)としながら、45℃、2.5時間攪拌した。攪拌後、水を総投入量の1/4量加え、真空状態でさらに2.5時間攪拌し、この操作をさらに2回繰り返して、合計10時間反応させて反応物を得た。その後、遠心分離により油脂と酵素を分離し、生成物を得た。得られた生成物を、HPLCを用いてω-3高度不飽和脂肪酸エステル画分中のDHA及びHPAエステル画分を分取精製し、減圧下、濃縮乾固し、組成物を得た。
【0038】
<HPLC分取精製条件>
カラム :C18 250mm×20mm×5μm
温度 :40℃
流速 :18mL/min
波長 :206nm
移動相 :メタノール:水=90:10
サンプル濃度 :サンプル/メタノール=50/50
注入量 :200 μL
【0039】
表中、「油脂」はω-3高度不飽和脂肪酸エステルを含む原料を、「酵素」はリパーゼを意味する。
【0040】
【表1】
【0041】
【表2】
【0042】
【表3】
【0043】
【表4】
【0044】
【表5】
【0045】
表1~4に示すように、ω-3高度不飽和脂肪酸エステルを含有する原料をリパーゼによって処理する本発明の方法によって、DHAとHPAの含有量が増加したω-3高度不飽和脂肪酸エステル含有組成物を製造することができた。また、表5に示すように、さらにHPLC分取精製を施すことによって、DHAとHPAの含有量が一層高いω-3高度不飽和脂肪酸エステル含有組成物を得ることができた。
【0046】
本発明の製造方法により、優れた生体機能性が知られているDHAとHPAをともに十分な量含有するω-3高度不飽和脂肪酸又はそのエステルを含有する組成物を提供することができるので、食品、健康食品、医薬品等の製造において、極めて利用性が高いものである。