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特開2024-45859ステータ製造装置及びステータ製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024045859
(43)【公開日】2024-04-03
(54)【発明の名称】ステータ製造装置及びステータ製造方法
(51)【国際特許分類】
   H02K 15/04 20060101AFI20240327BHJP
【FI】
H02K15/04 F
【審査請求】有
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022150912
(22)【出願日】2022-09-22
(71)【出願人】
【識別番号】000005326
【氏名又は名称】本田技研工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100106002
【弁理士】
【氏名又は名称】正林 真之
(74)【代理人】
【識別番号】100120891
【弁理士】
【氏名又は名称】林 一好
(74)【代理人】
【識別番号】100160794
【弁理士】
【氏名又は名称】星野 寛明
(72)【発明者】
【氏名】宮下 圭太
(72)【発明者】
【氏名】木村 泰之
(72)【発明者】
【氏名】赤堀 匠
【テーマコード(参考)】
5H615
【Fターム(参考)】
5H615AA01
5H615BB05
5H615BB14
5H615PP01
5H615PP14
5H615QQ03
5H615QQ12
5H615SS04
5H615SS10
(57)【要約】
【課題】ステータコアのスロットに装着されたセグメントコイル群の複数の直線部を直立姿勢の乱れなく折り曲げて、ステータの精度を向上できるステータ製造装置を提供する。
【解決手段】ステータコアの複数のスロット内にステータコアの径方向に配列するように挿入されるセグメントコイル群の複数の直線部を、ステータコアの径方向に沿って、少なくとも外方側の第1配列層と内方側の第2配列層との2つに区分し、第1配列層の複数の直線部を折り曲げ成形する第1折り曲げ装置と、第2配列層の複数の直線部を折り曲げ成形する第2折り曲げ装置と、第1折り曲げ装置及び第2折り曲げ装置のうちの少なくともいずれか一方に設けられ、ステータコアの一方端面から突出する第1配列層と第2配列層との間に挿入可能に構成され、第1配列層と第2配列層との間に挿入されることによって複数の直線部のステータコアの径方向位置変化を抑制するスペーサ部材と、を備える。
【選択図】図13
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ステータコアの複数のスロット内に前記ステータコアの径方向に配列するように挿入されるセグメントコイル群の複数の直線部を、それぞれ前記ステータコアの周方向に折り曲げ成形することによってステータを製造するステータ製造装置であって、
前記セグメントコイル群の前記複数の直線部を、前記ステータコアの径方向に沿って、少なくとも外方側の第1配列層と内方側の第2配列層と2つに区分し、
前記第1配列層の前記複数の直線部を折り曲げ成形する第1折り曲げ装置と、
前記第2配列層の前記複数の直線部を折り曲げ成形する第2折り曲げ装置と、
前記第1折り曲げ装置及び前記第2折り曲げ装置のうちの少なくともいずれか一方に設けられ、前記ステータコアの一方端面から突出する前記第1配列層と前記第2配列層との間に挿入可能に構成され、前記第1配列層と前記第2配列層との間に挿入されることによって前記複数の直線部の前記ステータコアの径方向位置変化を抑制するスペーサ部材と、を備える、ステータ製造装置。
【請求項2】
前記第1折り曲げ装置及び前記第2折り曲げ装置は、前記第1配列層及び前記第2配列層の前記複数の直線部の先端部を把持して折り曲げる折り曲げ治具をそれぞれ有し、
前記スペーサ部材は、前記第1配列層と前記第2配列層との間に挿入された状態で、前記折り曲げ治具による前記複数の直線部の把持部位よりも、前記ステータコアに近接して配置される、請求項1に記載のステータ製造装置。
【請求項3】
前記第1折り曲げ装置は、前記第1配列層の前記複数の直線部の外径側に配置されて前記第1配列層を外径側から支持する外径ガイド部材をさらに備える、請求項1又は2に記載のステータ製造装置。
【請求項4】
前記第2折り曲げ装置は、前記第2配列層の前記複数の直線部を内径側に配置されて前記第2配列層を内径側から支持する内径ガイド部材をさらに備える、請求項1又は2に記載のステータ製造装置。
【請求項5】
ステータコアの複数のスロット内に前記ステータコアの径方向に配列するように挿入されるセグメントコイル群の複数の直線部を、それぞれ前記ステータコアの周方向に折り曲げ成形することによってステータを製造するステータ製造方法であって、
前記セグメントコイル群の前記複数の直線部を、前記ステータコアの径方向に沿って、少なくとも外方側の第1配列層と内方側の第2配列層との2つに区分し、前記ステータコアの一方端面から突出する前記第1配列層の前記複数の直線部と前記第2配列層の前記複数の直線部とを個別に折り曲げ成形するとともに、
前記第1配列層及び前記第2配列層のうちの少なくともいずれか一方の前記複数の直線部の折り曲げ成形時に、前記第1配列層と前記第2配列層との間にスペーサ部材を挿入することによって、前記複数の直線部の前記ステータコアの径方向位置変化を抑制する、ステータ製造方法。
【請求項6】
折り曲げ成形時に、前記第1配列層及び前記第2配列層の前記複数の直線部を、先端部を把持する折り曲げ治具によって折り曲げるとともに、前記スペーサ部材を、前記折り曲げ治具による前記複数の直線部の把持部位よりも、前記ステータコアに近接するように前記第1配列層と前記第2配列層との間に挿入する、請求項5に記載のステータ製造方法。
【請求項7】
前記第1配列層の前記複数の直線部の折り曲げ成形時に、前記第1配列層の外径側に外径ガイド部材を配置させて前記第1配列層を外径側から支持するとともに、前記第2配列層の前記複数の直線部の折り曲げ成形時に、前記第2配列層の内径側に内径ガイド部材を配置させて前記第2配列層を内径側から支持する、請求項5又は6に記載のステータ製造方法。
【請求項8】
前記第2配列層の前記複数の直線部の折り曲げ成形時に、前記第2配列層の内径側に内径ガイド部材を配置させて前記第2配列層を内径側から支持する、請求項5又は6に記載のステータ製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ステータ製造装置及びステータ製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、ステータコアの複数のスロットに装着されたセグメントコイル群を有するステータを製造するステータ製造装置が知られている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
セグメントコイル群は、それぞれ一対の直線部を有する略U字形状の複数のセグメントコイルによって構成される。セグメントコイルの直線部は、ステータコアの径方向に複数層に配列するようにスロット内にそれぞれ挿入され、ステータコアの一方端面から突出する。ステータ製造装置は、ステータコアの一方端面から突出する複数の直線部を、治具を用いてそれぞれステータコアの周方向に折り曲げ成形する。折り曲げられた後の同相のセグメントコイルの先端同士は揃えられ、TIG(Tungsten Inert Gas)溶接等の適宜の接合手段によって電気的に接合される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特許第6423548号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
一般に、ステータコアの径方向に沿うスロットの長さは、複数の直線部を挿入し易くするために、スロット内に挿入される全ての直線部をステータコアの径方向に束ねて配列したときの長さよりも長く形成される。スロット内に全ての直線部が挿入されても、スロット内には僅かに隙間が形成されるため、セグメントコイルの直線部を折り曲げ成形する際、スロット内の直線部の直立姿勢が乱れ、直線部が径方向に倒れ込む場合がある。直線部の直立姿勢が乱れると、折り曲げ成形後のセグメントコイルの端部の姿勢が、基準姿勢に対してばらつくおそれがあり、その後の接合作業に影響を及ぼすおそれがある。また、倒れ込んだ直線部の角部が他の直線部に当たることによって、セグメントコイルの表面を覆う絶縁被膜を損傷するおそれもある。
【0006】
本発明は、ステータコアのスロットに装着されたセグメントコイル群の複数の直線部を直立姿勢の乱れなく折り曲げることができ、ステータの精度を向上させることができるステータ製造装置及びステータ製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
(1) 本発明に係るステータ製造装置は、ステータコア(例えば、後述のステータコア2)の複数のスロット(例えば、後述のスロット22)内に前記ステータコアの径方向(例えば、後述のY方向)に配列するように挿入されるセグメントコイル群(例えば、後述のセグメントコイル群3)の複数の直線部(例えば、後述の直線部31)を、それぞれ前記ステータコアの周方向(例えば、後述のX方向)に折り曲げ成形することによってステータ(例えば、後述のステータ1)を製造するステータ製造装置(例えば、後述のステータ製造装置4)であって、前記セグメントコイル群の前記複数の直線部を、前記ステータコアの径方向に沿って、少なくとも外方側の第1配列層(例えば、後述の第1配列層3A)と内方側の第2配列層(例えば、後述の第2配列層3B)との2つに区分し、前記第1配列層の前記複数の直線部を折り曲げ成形する第1折り曲げ装置(例えば、後述の第1折り曲げ装置5)と、前記第2配列層の前記複数の直線部を折り曲げ成形する第2折り曲げ装置(例えば、後述の第2折り曲げ装置6)と、前記第1折り曲げ装置及び前記第2折り曲げ装置のうちの少なくともいずれか一方に設けられ、前記ステータコアの一方端面(例えば、後述の端面2b)から突出する前記第1配列層と前記第2配列層との間に挿入可能に構成され、前記第1配列層と前記第2配列層との間に挿入されることによって前記複数の直線部の前記ステータコアの径方向位置変化を抑制するスペーサ部材(例えば、後述の第1スペーサ部材53、第2スペーサ部材63)と、を備える、ステータ製造装置である。
【0008】
(2) 上記(1)に記載のステータ製造装置において、前記第1折り曲げ装置及び前記第2折り曲げ装置は、前記第1配列層及び前記第2配列層の前記複数の直線部の先端部(例えば、後述の先端部31a)を把持して折り曲げる折り曲げ治具(例えば、後述の折り曲げ治具51,61)をそれぞれ有し、前記スペーサ部材は、前記第1配列層と前記第2配列層との間に挿入された状態で、前記折り曲げ治具による前記複数の直線部の把持部位よりも、前記ステータコアに近接して配置されてもよい。
【0009】
(3) 上記(1)又は(2)に記載のステータ製造装置において、前記第1折り曲げ装置は、前記第1配列層の前記複数の直線部の外径側に配置されて前記第1配列層を外径側から支持する外径ガイド部材(例えば、後述の第1外径ガイド部材52)をさらに備えてもよい。
【0010】
(4) 上記(1)~(3)のいずれかに記載のステータ製造装置において、前記第2配列層の前記複数の直線部の内径側に配置されて前記第2配列層を内径側から支持する内径ガイド部材(例えば、後述の内径ガイド部材62)をさらに備えてもよい。
【0011】
(5) 本発明に係るステータ製造方法は、ステータコア(例えば、後述のステータコア2)の複数のスロット(例えば、後述のスロット22)内に前記ステータコアの径方向(例えば、後述のY方向)に配列するように挿入されるセグメントコイル群(例えば、後述のセグメントコイル群3)の複数の直線部(例えば、後述の直線部31)を、それぞれ前記ステータコアの周方向(例えば、後述のX方向)に折り曲げ成形することによってステータ(例えば、後述のステータ1)を製造するステータ製造方法であって、前記セグメントコイル群の前記複数の直線部を、前記ステータコアの径方向に沿って、少なくとも外方側の第1配列層(例えば、後述の第1配列層3A)と内方側の第2配列層(例えば、後述の第2配列層3B)との2つに区分し、前記ステータコアの一方端面(例えば、後述の端面2b)から突出する前記第1配列層の前記複数の直線部と前記第2配列層の前記複数の直線部とを個別に折り曲げ成形するとともに、前記第1配列層及び前記第2配列層のうちの少なくともいずれか一方の前記複数の直線部の折り曲げ成形時に、前記第1配列層と前記第2配列層との間にスペーサ部材(例えば、後述の第1スペーサ部材53、第2スペーサ部材63)を挿入することによって、前記複数の直線部の前記ステータコアの径方向位置変化を抑制する、ステータ製造方法である。
【0012】
(6) 上記(5)に記載のステータ製造方法において、折り曲げ成形時に、前記第1配列層及び前記第2配列層の前記複数の直線部を、先端部(例えば、後述の先端部31a)を把持する折り曲げ治具(例えば、後述の折り曲げ治具51,61)によって折り曲げるとともに、前記スペーサ部材を、前記折り曲げ治具による前記複数の直線部の把持部位よりも、前記ステータコアに近接するように前記第1配列層と前記第2配列層との間に挿入してもよい。
【0013】
(7) 上記(5)又は(6)に記載のステータ製造方法において、前記第1配列層の前記複数の直線部の折り曲げ成形時に、前記第1配列層の外径側に外径ガイド部材(例えば、後述の第1外径ガイド部材52)を配置させて前記第1配列層を外径側から支持してもよい。
【0014】
(8) 上記(5)~(7)のいずれかに記載のステータ製造方法において、前記第2配列層の前記複数の直線部の折り曲げ成形時に、前記第2配列層の内径側に内径ガイド部材(例えば、内径ガイド部材62)を配置させて前記第2配列層を内径側から支持してもよい。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、ステータコアのスロットに装着されたセグメントコイル群の複数の直線部を直立姿勢の乱れなく折り曲げることができ、ステータの精度を向上させることができるステータ製造装置及びステータ製造方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】本実施形態のステータを示す斜視図である。
図2】本実施形態のステータを分解して示す斜視図である。
図3】本実施形態のステータコアのスロットに束ねられたセグメントコイルが挿入される様子を示す斜視図である。
図4】本実施形態のステータコアのスロットに全てのセグメントコイルが挿入された状態を示す斜視図である。
図5】本実施形態のステータにおける第1配列層及び第2配列層を説明する図である。
図6】本実施形態のステータ製造装置を示す図である。
図7】本実施形態の第1折り曲げ装置における図6中のA部を拡大して示す断面図である。
図8】本実施形態の折り曲げ治具を示す図である。
図9】本実施形態の折り曲げ治具によって直線部の先端部を把持した状態を示す図である。
図10】本実施形態の折り曲げ治具の一部分を下面側から見た図である。
図11】本実施形態の第2折り曲げ装置における図6中のB部を拡大して示す断面図である。
図12】本実施形態の第1折り曲げ装置によって第1配列層の直線部を折り曲げる様子を説明する図である。
図13】本実施形態の第2折り曲げ装置によって第2配列層の直線部を折り曲げる様子を説明する図である。
図14】本実施形態のステータ製造装置によってセグメントコイルの直線部が折り曲げ成形された状態を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本実施形態のステータ製造装置及びステータ製造方法について図面を参照して詳細に説明する。まず、図1図5を参照してステータ1について説明する。ステータ1は、例えば、回転電機のステータであり、ステータコア2と、ステータコア2に装着されるセグメントコイル群3と、を含んで構成される。
【0018】
ステータコア2は、薄肉のコアプレートが複数積層された積層体からなる円環部21を有する。円環部21は、中心を軸方向に貫通する軸孔20と、軸孔20の周囲に配置され、ステータコア2の軸方向に貫通する複数のスロット22と、を有する。スロット22は、円環部21の周方向に沿って一定の間隔で放射状に配列され、軸孔20に向けて細幅に開口する開口部22aを有する。
【0019】
ステータ1及びステータコア2において、図中の矢印で示すように、周方向は、スロット22が配列されるX方向であり、径方向は、放射方向に沿うY方向であり、軸方向は、軸孔20を貫通するZ方向である。径方向において、Y1方向は径方向の内方を示し、Y2方向は径方向の外方を示す。
【0020】
セグメントコイル群3は、複数のセグメントコイル30の集合体である。セグメントコイル30は、例えば、断面矩形状の平角線からなる導体を略U字形状に成形することによって構成される。セグメントコイル30は、図2及び図3に示すように、一対の平行な直線部31と、その一対の直線部31の一方端部同士を連結する連結部32と、をそれぞれ有する。本実施形態では、図3に示すように、4本のセグメントコイル30がステータコア2の径方向に積層されて束ねられている。束ねられた4本のセグメントコイル30は、一方の直線部31と他方の直線部31とを、2つのスロット22,22にそれぞれ軸方向に沿って挿入することによって、ステータコア2に装着される。スロット22に挿入された各セグメントコイル30の直線部31,31は、図4に示すように、ステータコア2の挿入側の端面2aとは反対側の端面(一方端面)2bから直立するように突出する。
【0021】
本実施形態では、図5に示すように、1つのスロット22に、束ねられた4本のセグメントコイル30の直線部31と、別に束ねられた4本のセグメントコイル30の直線部31とが、ステータコア2の径方向に配列するように挿入される。これによって、スロット22内には、それぞれ8本の直線部31が径方向に配列される。ステータコア2の径方向に沿うスロット22の長さは、8本の直線部31をステータコア2の径方向に束ねて配列したときの長さよりも長い。そのため、スロット22内に8本の直線部31が径方向に配列するように挿入されても、スロット22内には直線部31が僅かながらも移動し得る隙間が存在する。なお、ステータコア2のスロット22内にはそれぞれ絶縁部材が挿入されるが、各図において絶縁部材は省略されている。
【0022】
全てのセグメントコイル30の直線部31がステータコア2の全てのスロット22に挿入された状態のステータ1は、図6に示すステータ製造装置4に移送される。ステータコア2の端面2bから直立するように突出する複数の直線部21は、ステータ製造装置4においてステータコア2の周方向に折り曲げ成形される。ステータ製造装置4は、ステータ保持具41を搭載する搬送装置42の上方に、複数の直線部31を2つのステージに分けて折り曲げ成形するための第1折り曲げ装置5と第2折り曲げ装置6とを備える。
【0023】
ステータ保持具41は、ステータコア2にセグメントコイル群3が装着された状態のステータ1を、ステータコア2の端面2bから突出する直線部31が上方を向くように保持する。搬送装置42は、ステータ保持具41に保持されたステータ1を、第1折り曲げ装置5及び第2折り曲げ装置6の下方に順次移送する。第1折り曲げ装置5及び第2折り曲げ装置6は、搬送装置42の上方に、搬送装置42の搬送方向に沿って配置される。第1のステージでは、第1折り曲げ装置5が、ステータコア2の径方向の外方側の複数の直線部31を折り曲げ成形し、第2のステージでは、第2折り曲げ装置6が、ステータコア2の径方向の内方側の複数の直線部31を折り曲げ成形する。
【0024】
詳しくは、各スロット22内において径方向の同一位置に配置される直線部31は、ステータコア2の周方向に亘って1つの層を形成する。本実施形態では、図5に示すように、スロット22内にそれぞれ8本の直線部31が挿入されるため、セグメントコイル群3は、ステータコア2の径方向の内方側から外方側に向けて、1T~8Tの8つの層を有する。本実施形態のステータ製造装置4は、折り曲げ対象である直線部31の8つの層を、第1折り曲げ装置5と第2折り曲げ装置6とに対応して、径方向の外方側に配置される1以上の層で構成される第1配列層3Aと、径方向の内方側に配置される1以上の層で構成される第2配列層3Bとの2つに区分する。本実施形態では、8つの層のうち、径方向の外方側に配置される5T~8Tの4つの層が第1配列層3Aとされ、径方向の内方側に配置される1T~4Tの4つの層が第2配列層3Bとされている。したがって、第1ステージでは、第1折り曲げ装置5によって5T~8Tの複数の直線部31が折り曲げ成形され、第2ステージでは、第2折り曲げ装置6によって1T~4Tの複数の直線部31が折り曲げ成形される。
【0025】
第1折り曲げ装置5の下端部には、図7に示すように、第1配列層3Aの4T~8Tの4つの層に対応する4つの折り曲げ治具51と、第1外径ガイド部材52と、第1スペーサ部材53と、が配置される。
【0026】
4つの折り曲げ治具51は、それぞれ円筒状に形成されて同芯状に配置されている。4つの折り曲げ治具51の下端側は、外径が異なる以外は実質的に同一の構成を有する。折り曲げ治具51は、第1配列層3Aの4T~8Tの各層の直線部31の先端部31a(図9参照)をそれぞれ1本ずつ収容して把持する複数の把持溝511を有する。
【0027】
把持溝511は、図8及び図9に示すように、側面視で縦長矩形状に形成され、折り曲げ治具51の下面51a及び外側面51bにそれぞれ開放している。把持溝511の長手方向は、折り曲げ治具51の下面51aに対して垂直方向に配置され、折り曲げ治具51の軸方向に沿って延びている。4つの折り曲げ治具51の下面51aの位置は揃えられ、ステータ保持具41に保持されるステータコア2の端面2bに対して平行に配置される。なお、図9に示すように、セグメントコイル30の全体は絶縁被膜311によって覆われている。把持溝511に把持される直線部31の先端部31aは、絶縁被膜311が剥離された被膜剥離部312によって形成されている。
【0028】
4つの折り曲げ治具51の上端側は、図示しない駆動部に連結される。4つの折り曲げ治具51は、図示しない駆動部の駆動によって周方向に回転移動するとともに、上下方向に一体的に直線移動する。図10中の黒塗りの矢印で示すように、4つの折り曲げ治具51は、それぞれの回転方向が時計方向及び反時計方向に交互に反対になるように独立して回転移動し、把持溝511によって把持した各層の直線部31を、ステータコア2の周方向に沿う時計方向又は反時計方向に斜め折り曲げる。
【0029】
第1外径ガイド部材52は、円筒状に形成され、4つの折り曲げ治具51の外径側に4つの折り曲げ治具51と同芯状に配置される。第1外径ガイド部材52の内側面52aは、最も外径側に配置される折り曲げ治具51の外側面51bに近接して配置される。第1外径ガイド部材52は、図示しない駆動部の駆動によって、4つの折り曲げ治具51に対して独立して上下方向に直線移動し、4つの折り曲げ治具51による第1配列層3Aの直線部31の折り曲げ成形時に、8Tの外径側に当接もしくは近接して配置される。
【0030】
第1スペーサ部材53は、円筒状に形成され、4つの折り曲げ治具51の内径側に4つの折り曲げ治具51と同芯状に配置される。第1スペーサ部材53の外側面53aは、最も内径側に配置される折り曲げ治具51の内側面51cに近接して配置される。第1スペーサ部材53は、図示しない駆動部の駆動によって、4つの折り曲げ治具51に対して独立して上下方向に直線移動し、4つの折り曲げ治具51による第1配列層3Aの直線部31の折り曲げ成形時に、第1配列層3Aと第2配列層3Bとの間に挿入される。
【0031】
第2折り曲げ装置6の下端には、図11に示すように、第2配列層3Bの1T~4Tの4つの層に対応する4つの折り曲げ治具61と、内径ガイド部材62と、第2スペーサ部材63と、第2外径ガイド部材64と、が配置される。
【0032】
4つの折り曲げ治具61は、下端側の外径が折り曲げ治具51よりも小径である点及び回転方向が折り曲げ治具51と異なる点以外は、第1折り曲げ装置5の折り曲げ治具51と実質的に同一の構成を有する。そのため、図8図10中に符号を併記して説明する。折り曲げ治具61は、第2配列層3Bの1T~4Tの各層の直線部31の先端部31aをそれぞれ1本ずつ収容して把持する複数の把持溝611を有する。把持溝611は、側面視で縦長矩形状に形成され、折り曲げ治具61の下面61a及び外側面61bにそれぞれ開放している。把持溝611の長手方向は、折り曲げ治具61の下面61aに対して垂直方向に配置され、折り曲げ治具61の軸方向に沿って延びている。折り曲げ治具61の把持溝611は、被膜剥離部312からなる先端部31aを収容して把持する。4つの折り曲げ治具61の下面61aの位置は揃えられ、ステータコア2の端面2bに対して平行に配置される。
【0033】
4つの折り曲げ治具61は、図示しない駆動部の駆動によって周方向に回転移動するとともに、上下方向に一体的に直線移動する。4つの折り曲げ治具61も、折り曲げ治具51と同様に、図10中の白塗りの矢印で示すように、それぞれの回転方向が時計方向及び反時計方向に交互に反対になるように独立して回転移動し、把持した各層の直線部31をステータコア2の周方向に沿って時計方向又は反時計方向に斜めに折り曲げる。第2折り曲げ装置6の4つの折り曲げ治具61の回転方向は、白塗りの矢印で示すように、第1折り曲げ装置5の4つの折り曲げ治具51の黒塗りの矢印で示す回転方向と反対方向である。したがって、第1折り曲げ装置5の4つの折り曲げ治具51のうちの最も内径側の折り曲げ治具51の回転方向は、第2折り曲げ装置6の4つの折り曲げ治具61のうちの最も外径側の折り曲げ治具61の回転方向と同じ方向になる。
【0034】
内径ガイド部材62は、円筒状に形成され、4つの折り曲げ治具61の内径側に4つの折り曲げ治具61と同芯状に配置される。内径ガイド部材62の外側面62aは、最も内径側に配置される折り曲げ治具61の内側面61cに近接して配置される。内径ガイド部材62は、図示しない駆動部の駆動によって、4つの折り曲げ治具61に対して独立して上下方向に直線移動し、4つの折り曲げ治具61による第2配列層3Bの直線部31の折り曲げ成形時に、1Tの内径側に当接もしくは近接するように配置される。
【0035】
第2スペーサ部材63は、円筒状に形成され、4つの折り曲げ治具61の外径側に4つの折り曲げ治具61と同芯状に配置される。第2スペーサ部材63の内側面63aは、最も外径側に配置される折り曲げ治具61の外側面61bに近接して配置される。第2スペーサ部材63は、図示しない駆動部の駆動によって、4つの折り曲げ治具61に対して独立して上下方向に一体的に直線移動し、4つの折り曲げ治具61による第2配列層3Bの直線部31の折り曲げ成形時に、第1配列層3Aと第2配列層3Bとの間に挿入される。
【0036】
第2外径ガイド部材64は、円筒状に形成され、第2スペーサ部材63の外径側に第2スペーサ部材63と同芯状に配置される。第2外径ガイド部材64と第2スペーサ部材63とは、互いの上端部において一体に連結されている。第2外径ガイド部材64と第2スペーサ部材63との間には、第1配列層3Aを収容可能な幅及び深さを有する環状凹部65が形成されている。第2外径ガイド部材64は、図示しない駆動部の駆動によって、第2スペーサ部材63と一体に上下方向に直線移動し、4つの折り曲げ治具61による第2配列層3Bの直線部31の折り曲げ成形時に、第1配列層3Aの8Tの外径側に当接もしくは近接するように配置される。
【0037】
次に、第1折り曲げ装置5及び第2折り曲げ装置6による第1配列層3A及び第2配列層3Bの直線部31の折り曲げ動作について、図12及び図13を参照して説明する。
【0038】
ステータ保持具41に保持されたステータ1は、搬送装置42の駆動によって第1折り曲げ装置5に向けて搬送され、第1折り曲げ装置5の直下の位置で停止する。その後、図示しない駆動部の駆動によって、最初に第1外径ガイド部材52及び第1スペーサ部材53がステータコア2の端面2bに近接する位置まで下動する。第1外径ガイド部材52は、第1配列層3Aの8Tの外径側に配置されるとともに、第1スペーサ部材53は、第1配列層3Aと第2配列層3Bとの間、すなわち、5Tと4Tとの間に挿入される。第1外径ガイド部材52及び第1スペーサ部材53は、把持溝511によって複数の直線部31を把持する折り曲げ治具51の把持部位よりも、ステータコア2の端面2bに近接して配置される。
【0039】
第1スペーサ部材53が第1配列層3Aと第2配列層3Bとの間に挿入されることによって、第1配列層3Aの複数の直線部31は、第2配列層3Bに対して、スロット22内の外径側に向けて押し広げられる。これによって、第1配列層3Aの複数の直線部31は、外径側に配置される第1外径ガイド部材52に当接して支持されるとともに、第1スペーサ部材53との間に挟持されて保持される。一方、第2配列層3Bの複数の直線部31は、スロット22内の内径側に向けて押し広げられる。
【0040】
その後、4つの折り曲げ治具51が、図示しない駆動部の駆動によって、第1外径ガイド部材52と第1スペーサ部材53との間に挟持される第1配列層3Aの4つの層の直線部31に向けて下動する。各層の直線部31の先端部31aは、それぞれ対応する折り曲げ治具51の把持溝511内に挿入されて把持される。第1配列層3Aの複数の直線部31は、第1外径ガイド部材52と第1スペーサ部材53とに案内されて、対応する折り曲げ治具51の把持溝511内に円滑に誘い込まれる。
【0041】
直線部31の先端部31aをそれぞれ把持した4つの折り曲げ治具51は、図示しない駆動部の駆動によって、時計方向及び反時計方向に交互に反対になるように回転移動しながらさらに下動し、ステータコア2の端面2bから突出する第1配列層3Aの複数の直線部31を、周方向に斜めに折り曲げる。このとき、第1配列層3Aの複数の直線部31は、第1外径ガイド部材52と第1スペーサ部材53との間に挟持されるため、直立姿勢を維持したまま斜めに折り曲げ成形される。
【0042】
一方、第2配列層3Bの複数の直線部31は、第1スペーサ部材53が挿入されることによって、ステータコア2の径方向位置変化が抑制される。そのため、第1配列層3Aの折り曲げ成形時に、第2配列層3Bの複数の直線部31の直立姿勢がスロット22内でずれて乱れることはない。第2配列層3Bの複数の直線部31は、図12に示すように、径方向に密に重なった配列状態を維持するため、直立姿勢の乱れた直線部31の角部(例えば、絶縁被膜311と被膜剥離部312との境界部)が他の直線部31の表面に当たって絶縁被膜311を損傷するおそれはなく、径方向に隣接する直線部31.31間の絶縁距離を確保することができる。
【0043】
図12に示すように、最も下動した第1外径ガイド部材52の下端52bの位置は、折り曲げ治具51の把持部位(直線部31の先端部31aの位置)よりもステータコア2の端面2bに近接して配置される。第1外径ガイド部材52は、下端52bが配置される位置から把持溝511に把持される直線部31の先端部31aの外径側に亘って、第1配列層3Aを外径側から支持する。そのため、折り曲げ治具51による折り曲げ成形時の第1配列層3Aの複数の直線部31の外径側への過度の膨らみを効果的に抑制することができる。
【0044】
また、図12に示すように、最も下動した第1スペーサ部材53の下端53bの位置も、折り曲げ治具51の把持部位(直線部31の先端部31aの位置)よりもステータコア2の端面2bに近接して配置される。第1スペーサ部材53は、下端53bが配置される位置から第2配列層3Bの複数の直線部31の先端部31aの外径側に亘って、第2配列層3Bを内径側に向けて押し付ける。そのため、折り曲げ治具51による折り曲げ成形時の第2配列層3Bの複数の直線部31の直立姿勢を効果的に維持することができる。
【0045】
第1折り曲げ装置5における第1配列層3Aの複数の直線部31の折り曲げ成形が終了すると、ステータ保持具41に保持されたステータ1は、搬送装置42の駆動によって第2折り曲げ装置6に向けて搬送され、第2折り曲げ装置6の直下の位置で停止する。その後、図示しない駆動部の駆動によって、最初に内径ガイド部材62、第2スペーサ部材63及び第2外径ガイド部材64がステータコア2の端面2bに近接する位置まで下動する。内径ガイド部材62は、第2配列層3Bの1Tの内径側に配置され、第2スペーサ部材63は、第1配列層3Aと第2配列層3Bとの間、すなわち、5Tと4Tとの間に挿入され、第2外径ガイド部材64は、第1配列層3Aの8Tの外径側に配置される。折り曲げ成形された第1配列層3Aの複数の直線部31は、第2スペーサ部材63と第2外径ガイド部材64との間の環状凹部65内に収容されて支持される。
【0046】
第2スペーサ部材63が第1配列層3Aと第2配列層3Bとの間に挿入されることによって、第2配列層3Bの複数の直線部31は、スロット22内の内径側に向けて押し広げられる。これによって、第2配列層3Bの複数の直線部31は、内径側に配置される内径ガイド部材62に当接して支持されるとともに、第2スペーサ部材63との間に挟持されて保持される。一方、折り曲げ成形済みの第1配列層3Aの複数の直線部31は、スロット22内の外径側に向けて押し広げられるとともに、環状凹部65内において、第2スペーサ部材63と第2外径ガイド部材64との間に挟持されて保持される。
【0047】
その後、4つの折り曲げ治具61が、図示しない駆動部の駆動によって、内径ガイド部材62と第2スペーサ部材63との間に挟持される第2配列層3Bの4つの層の直線部31に向けて下動する。各層の直線部31の先端部31aは、それぞれ対応する折り曲げ治具61の把持溝611内に挿入されて把持される。第2配列層3Bの複数の直線部31は、内径ガイド部材62と第2スペーサ部材63とに案内されて、対応する折り曲げ治具61の把持溝611内に円滑に誘い込まれる。
【0048】
直線部31の先端部31aをそれぞれ把持した4つの折り曲げ治具61は、図示しない駆動部の駆動によって、時計方向及び反時計方向に交互に反対になるように回転移動しながらさらに下動し、ステータコア2の端面2bから突出する第2配列層3Bの複数の直線部31を、周方向に斜めに折り曲げる。第2配列層3Bの4Tの直線部31を折り曲げる最も外径側の折り曲げ治具61の回転方向は、第1折り曲げ装置5において第1配列装置3Aの5Tの直線部31を折り曲げる最も内径側の折り曲げ治具51の回転方向と同じであるため、4Tの直線部31は5Tの直線部31と周方向の同一方向に折り曲げられる。このとき、折り曲げられる4Tと5Tの直線部31,31同士が互いに干渉するおそれがあるが、第2配列層3Bの複数の直線部31は、内径ガイド部材62と第2スペーサ部材63との間に挟持されてステータコア2の径方向位置変化が抑制されているため、スロット22内で径方向に位置ズレすることなく、直立姿勢を維持したまま斜めに折り曲げ成形される。
【0049】
図13に示すように、最も下動した内径ガイド部材62の下端62bの位置は、折り曲げ治具61の把持部位(直線部31の先端部31aの位置)よりもステータコア2の端面2bに近接して配置される。内径ガイド部材62は、下端62bが配置される位置から把持溝511に把持される直線部31の先端部31aの内径側に亘って、第2配列層3Bを内径側から支持する。そのため、折り曲げ治具61による折り曲げ成形時の第2配列層3Bの複数の直線部31の内径側への過度の膨らみを効果的に抑制することができる。
【0050】
また、図13に示すように、最も下動した第2スペーサ部材63の下端63bの位置も、折り曲げ治具61の把持部位(直線部31の先端部31aの位置)よりもステータコア2の端面2bに近接して配置される。第2スペーサ部材63は、下端63bが配置される位置から第2配列層3Bの複数の直線部31の先端部31aの外径側に亘って、第2配列層3Bの外径側を支持するため、折り曲げ治具61による折り曲げ成形時の第2配列層3Bの複数の直線部31の直立姿勢を効果的に維持することができる。
【0051】
以上のように、第1折り曲げ装置5及び第2折り曲げ装置6によって、ステータコア2の端面2bから突出する全ての直線部31が、図14に示すように、周方向に斜めに折り曲げられる。折り曲げ治具51,61の把持溝511,611に把持された先端部31aは、ステータコア2の軸方向に立上がるように配置され、ステータコア2の径方向に配列されたステータ1が製造される。
【0052】
本実施形態では、第1折り曲げ装置5と第2折り曲げ装置6との両方に、それぞれ第1スペーサ部材53と第2スペーサ部材63とを設けたが、スペーサ部材は、第1折り曲げ装置5と第2折り曲げ装置6との少なくともいずれか一方のみに設けられてもよい。折り曲げ成形時の直線部31の直立姿勢の乱れを効果的に防止する観点からは、スペーサ部材は、第1折り曲げ装置5の第1スペーサ部材53のように、第1折り曲げ装置5と第2折り曲げ装置6とのうち、少なくとも先に折り曲げ成形動作を行う装置に設けられることが望ましい。
【0053】
本実施形態では、セグメントコイル群3を、それぞれ4つずつの層によって構成される第1配列層3Aと第2配列層3Bとに区分したが、各配列層を構成する層は必ずしも同一の数でなくてもよい。
【0054】
セグメントコイル群3は、第1配列層3Aと第2配列層3Bとの2つに区分されるものに限らない。セグメントコイル群3は、スロット22内の径方向に配列される直線部31の数に応じて、3つ以上の配列層に区分されてもよい。その場合、ステータ製造装置4には、セグメントコイル群3の区分数に応じた数の折り曲げ装置が配置される。各折り曲げ装置には、それぞれ上記同様に、配列層の層間に挿入されるスペーサ部材及び各配列層の外径側もしくは内径側を支持するガイド部材を設けることができる。
【0055】
本実施形態のステータ製造装置4及びステータ製造方法によれば、以下の効果を奏する。
【0056】
本実施形態に係るステータ製造装置4は、ステータコア2の複数のスロット22内にステータコア2の径方向に配列するように挿入されるセグメントコイル群3の複数の直線部31を、それぞれステータコア2の周方向に折り曲げ成形することによってステータ1を製造するステータ製造装置4であって、セグメントコイル群3の複数の直線部31を、ステータコア2の径方向に沿って、少なくとも外方側の第1配列層3Aと内方側の第2配列層3Bとの2つに区分し、第1配列層3Aの複数の直線部31を折り曲げ成形する第1折り曲げ装置5と、第2配列層3Bの複数の直線部31を折り曲げ成形する第2折り曲げ装置6と、第1折り曲げ装置5及び第2折り曲げ装置6のうちの少なくともいずれか一方に設けられ、ステータコア2の一方端面2bから突出する第1配列層3Aと第2配列層3Bとの間に挿入可能に構成され、第1配列層3Aと第2配列層3Bとの間に挿入されることによって複数の直線部31のステータコアの径方向位置変化を抑制するスペーサ部材(第1スペーサ部材53,第2スペーサ部材63)と、を備える。
【0057】
これによれば、第1配列層3Aと第2配列層3Bとの少なくとも2つに区分されたセグメントコイル群3のそれぞれの複数の直線部31を、第1折り曲げ装置5及び第2折り曲げ装置6によって、第1配列層3Aと第2配列層3Bとの間にスペーサ部材(第1スペーサ部材53,第2スペーサ部材63)を挿入して径方向に押し広げて径方向位置変化を抑制した状態で個別に折り曲げ成形するため、複数の直線部31がスロット22内でずれて倒れ込むようなことはなく、直立姿勢を維持したまま折り曲げ成形することができる。そのため、直立姿勢の乱れた直線部31の角部が他の直線部31の表面に当たって絶縁被膜311を損傷するおそれはなく、隣接する直線部31,31間の絶縁距離を確保できてステータ1の精度を向上させることができる。
【0058】
本実施形態に係るステータ製造装置4において、第1折り曲げ装置5及び第2折り曲げ装置6は、第1配列層3A及び第2配列層3Bの複数の直線部31の先端部31aを把持して折り曲げる折り曲げ治具51,61をそれぞれ有し、スペーサ部材(第1スペーサ部材53、第2スペーサ部材63)は、第1配列層3Aと第2配列層3Bとの間に挿入された状態で、折り曲げ治具51,61による複数の直線部31の把持部位よりも、ステータコア2に近接して配置される。
【0059】
これによれば、折り曲げ治具51,61による折り曲げ成形時の第1配列層3A及び第2配列層3Bの複数の直線部31の直立姿勢を効果的に維持することができる。
【0060】
本実施形態に係るステータ製造装置4において、第1折り曲げ装置5は、第1配列層3Aの複数の直線部31の外径側に当接して支持する第1外径ガイド部材52をさらに備える。
【0061】
これによれば、第1外径ガイド部材52によって、折り曲げ成形時の第1配列層3Aの複数の直線部31の外径側への過度の膨らみを効果的に抑制することができる。
【0062】
本実施形態に係るステータ製造装置4において、第2折り曲げ装置6は、第2配列層3Bの複数の直線部31の内径側に当接して支持する内径ガイド部材62をさらに備える。
【0063】
これによれば、内径ガイド部材62によって、折り曲げ成形時の第2配列層3Bの複数の直線部31の内径側への倒れ込みを効果的に抑制することができる。
【0064】
本実施形態に係るステータ製造方法は、ステータコア2の複数のスロット22内にステータコア2の径方向に配列するように挿入されるセグメントコイル群3の複数の直線部31を、それぞれステータコア2の周方向に折り曲げ成形することによってステータ1を製造するステータ製造方法であって、セグメントコイル群3の複数の直線部31を、ステータコア2の径方向に沿って、少なくとも外方側の第1配列層Aと内方側の第2配列層3Bとの2つに区分し、ステータコア2の一方端面2bから突出する第1配列層3Aの複数の直線部31と第2配列層3Bの複数の直線部31とを個別に折り曲げ成形するとともに、折り曲げ成形時に、第1配列層3Aと第2配列層3Bとの間にスペーサ部材(第1スペーサ部材53,第2スペーサ部材63)を挿入することによって、複数の直線部31のステータコア2の径方向位置変化を抑制する。
【0065】
これによれば、第1配列層3Aと第2配列層3Bとの少なくとも2つに区分されたセグメントコイル群3のそれぞれの複数の直線部31を、第1配列層3Aと第2配列層3Bとの間にスペーサ部材(第1スペーサ部材53,第2スペーサ部材63)を挿入して径方向に押し広げて径方向位置変化を抑制した状態で個別に折り曲げ成形するため、複数の直線部31がスロット22内でずれて倒れ込むようなことはなく、直立姿勢を維持したまま折り曲げ成形することができる。そのため、直立姿勢の乱れた直線部31の角部が他の直線部31の表面に当たって絶縁被膜311を損傷するおそれはなく、隣接する直線部31,31間の絶縁距離を確保できてステータ1の精度を向上させることができる。
【0066】
本実施形態に係るステータ製造方法において、折り曲げ成形時に、第1配列層3A及び第2配列層3Bの複数の直線部31を、先端部31aを把持する折り曲げ治具51,61によって折り曲げるとともに、スペーサ部材(第1スペーサ部材53,第2スペーサ部材63)を、折り曲げ治具51,61による複数の直線部31の把持部位よりも、ステータコア2に近接するように第1配列層3Aと第2配列層3Bとの間に挿入する。
【0067】
これによれば、折り曲げ治具51,61による折り曲げ成形時の第1配列層3A及び第2配列層3Bの複数の直線部31の直立姿勢を効果的に維持することができる。
【0068】
本実施形態に係るステータ製造方法において、第1配列層3Aの複数の直線部31の折り曲げ成形時に、第1配列層3Aの外径側に第1外径ガイド部材52を当接させて支持する。
【0069】
これによれば、第1外径ガイド部材52によって、折り曲げ成形時の第1配列層3Aの複数の直線部31の外径側への過度の膨らみを効果的に抑制することができる。
【0070】
本実施形態に係るステータ製造方法において、第2配列層3Bの複数の直線部31の折り曲げ成形時に、第2配列層3Bの内径側に内径ガイド部材62を当接させて支持する。
【0071】
これによれば、内径ガイド部材62によって、折り曲げ成形時の第2配列層3Bの複数の直線部31の内径側への倒れ込みを効果的に抑制することができる。
【符号の説明】
【0072】
1 ステータ
2 ステータコア
2b 端面(一方端面)
22 スロット
3 セグメントコイル群
3A 第1配列層
3B 第2配列層
31 直線部
31a 先端部
4 ステータ製造装置
5 第1折り曲げ装置
51 折り曲げ治具
52 第1外径ガイド部材
53 第1スペーサ部材
6 第2折り曲げ装置
61 折り曲げ治具
62 内径ガイド部材
63 第2スペーサ部材

図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14