(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024045861
(43)【公開日】2024-04-03
(54)【発明の名称】ドアウェザストリップ
(51)【国際特許分類】
B60J 10/16 20160101AFI20240327BHJP
B60J 10/86 20160101ALI20240327BHJP
B60J 10/27 20160101ALI20240327BHJP
B60J 10/50 20160101ALI20240327BHJP
【FI】
B60J10/16
B60J10/86
B60J10/27
B60J10/50
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022150916
(22)【出願日】2022-09-22
(71)【出願人】
【識別番号】000241463
【氏名又は名称】豊田合成株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100120765
【弁理士】
【氏名又は名称】小滝 正宏
(74)【代理人】
【識別番号】100097076
【弁理士】
【氏名又は名称】糟谷 敬彦
(72)【発明者】
【氏名】濱田 梓之佑
(72)【発明者】
【氏名】野尻 昌利
【テーマコード(参考)】
3D201
【Fターム(参考)】
3D201AA03
3D201BA01
3D201CA23
3D201DA06
3D201DA23
3D201DA32
3D201DA41
3D201EA02D
(57)【要約】
【課題】自動車の高速走行時における車内外の圧力差により、自動車用ドアのドアフレームが車幅方向外側に吸い出されることを抑制する自動車用のドアウェザストリップを提供する。
【課題を解決するための手段】ドアウェザストリップ10は、ドアフレーム又はドアモールに取付けられる取付基部21と、ドア1の閉時に車体開口部周縁6に当接するシールリップ22を備え、シールリップ22の先端部22aの車体開口部周縁6側には、ドア1の閉時に車体開口部周縁6に当接する凸部23が形成され、シールリップ22には、シールリップ22を構成する材料より硬質の硬質部70が、凸部23の下方領域からシールリップ22の付根部22b側に延設して形成されている。
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
自動車のドアと車体開口部周縁との間をシールし、前記ドアのドアフレームの外周に取付けられるドアウェザストリップであって、
前記ドアウェザストリップは、前記ドアフレーム又はドアモールに取付けられる取付基部と、
前記ドアの閉時に前記車体開口部周縁に当接するシールリップを備え、
前記シールリップの先端部の前記車体開口部周縁側には、前記ドアの閉時に前記車体開口部周縁に当接する凸部が形成され、
前記シールリップには、前記シールリップを構成する材料より硬質の硬質部が、前記凸部の下方領域から前記シールリップの付根部側に延設して形成されていることを特徴とするドアウェザストリップ。
【請求項2】
前記硬質部は、前記ドアの開閉時に、前記シールリップが大きく変形する部分には形成されていない、又は前記シールリップの前記先端部側に比較して肉薄に形成されている請求項1に記載のドアウェザストリップ。
【請求項3】
前記硬質部は、前記シールリップの前記先端部側において、前記シールリップの前記先端部方向、且つ前記シールリップの車外側方向にも延設して形成されている請求項1又は請求項2に記載のドアウェザストリップ。
【請求項4】
自動車のドアと車体開口部周縁との間をシールし、前記ドアのドアフレームの外周に取付けられるドアウェザストリップであって、
前記ドアウェザストリップは、前記ドアフレーム又はドアモールに取付けられる取付基部と、
前記ドアの閉時に前記車体開口部周縁に当接するシールリップを備え、
前記シールリップの先端部の前記車体開口部周縁側には、前記ドアの閉時に前記車体開口部周縁に当接する凸部が形成され、
前記シールリップには、前記シールリップを構成する材料より硬質の硬質部が、前記凸部と、前記凸部の前記シールリップの付根部側の根元の近傍を含み、前記シールリップの先端部方向に前記シールリップを横断し、車内側から車外側に至る領域に形成されているドアウェザストリップ。
【請求項5】
前記硬質部は、前記シールリップの前記付根部側に延設して形成される請求項4に記載のドアウェザストリップ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば、自動車のドアのドアフレームの外周に取付けられるドアウェザストリップに関するものである。
【背景技術】
【0002】
例えば、
図9に示すように、ドアウェザストリップ100は、ドアフレーム201とドアモール600に取付けられている。
【0003】
ドアウェザストリップ100は、車外側ウェザストリップ200、車内側ウェザストリップ300とウェザストリップ連結部400から構成されている。車外側ウェザストリップ200は、車外側取付基部210と車外側シール部220(シールリップ)から構成されている。車外側シール部220の先端部220aであり、車幅方向内側(車内側)には凸部230が形成されている。ドアの閉時には、車体開口部周縁601に凸部230が当接すると共に車外側シール部220の付根部220bが車外側取付基部210側に変形して、車体開口部周縁601とドアモール600の先端との間の隙間を塞ぐ。車外側シール部220は、リップ状であるため、変形し易く、ドア閉力を減少させることができる(例えば、特許文献1)。
【0004】
ところで、自動車が高速走行すると、ドアの車外側の圧力が車内側の圧力より著しく低くなるため、その圧力差によって、ドアフレーム201とドアモール600には、
図9に示す車外側に吸い出される方向の力F1が発生する。その時、車体開口部周縁601と車体開口部周縁601に弾接している車外側シール部220(凸部230)との間には、車内側方向に反力F2が発生する。
【0005】
しかし、車外側シール部220は、リップ状であり、変形し易いので、F1が大きくなると、
図9に示すように、車外側シール部220が大きく弧状に撓んで変形し、その結果、ドアフレーム201とドアモール600は、矢印A方向に移動する。このドアフレーム201とドアモール600の車外側への移動現象、すなわち、車外側へ吸い出される現象は、遮音性を低下させる。
【0006】
このドアフレーム201が吸い出されることへの対策として、例えば、特許文献2には、以下の技術が記載されている。
図10に示すように、ドアウェザストリップ100のシールリップ220の車幅方向内側(車内側)には、にシールリップ220を構成するEPDMのスポンジ材より硬質のEPDMのソリッド材を使用した硬質部700が形成されている。
【0007】
硬質部700は、シールリップ220の付根部220bから中央部分やや下方に亘って、すなわち、
図9におけるシールリップ220が大きく弧状に撓んで変形する部分の車内側に露出して形成されている。
【0008】
シールリップ220内に硬質部700を形成することにより、車両の走行時における車内外の圧力差によってドアフレーム201に車幅方向外側の力F1が発生した場合には、シールリップ220内に形成される硬質部550により、シールリップ220が一定以上撓むことを防止することができるので、シールリップ220(凸部230)と車体開口部周縁601との間に発生する車幅方向内側(車内側)方向への反力F2をF1と同等又はF1に近づけることができる。
その結果、ドアフレーム201が車外側に吸い出されることを抑制することができるので、高速走行時の遮音性の向上を図ることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開2010-36602号公報
【特許文献2】特開2022-48478号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
しかし、特許文献2の技術では、硬質部700が形成されている部分以外の凸部230を含むシールリップ220、特に、シールリップ220の先端部220a側は、依然として撓み易いので、自動車の高速走行時における車内外の圧力差によってドアフレーム201に車幅方向外側(車外側)への力F1が発生した時に、先端部220a側が撓み、硬質部700が効果を発揮し、反力F2をF1と同等又はF1に近づけるのに時間を要する。その結果、それまでの時間の間、ドアフレーム201が車外側に吸い出されてしまう。
【0011】
又、反力F2が発生する時には、
図11(a)に示すように、凸部230が付根部220b側に実線矢印Y方向に回転して変形し、凸部230によって車体開口部周縁601と当接していた部分が、凸部230から先端部220aに至る領域に拡大して車体開口部周縁601との当接面積が増大し、反力F2を増大させることができるが、反力F2がある一定値以上なると、
図11(b)に示すように、凸部230において、凸部230のシールリップ220の付根部220b側の根元Zで屈曲する現象が発生した。この屈曲現象は、反力F2の増大を阻み、シールリップ220の先端部220a側の撓みと相俟って、硬質部700の効果を不十分にする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明は、自動車の高速走行時における車内外の圧力差により、自動車用ドアのドアフレームが車外側に吸い出されることをさらに抑制することができる自動車用のドアウェザストリップを提供することを目的とする。
【0013】
上記課題を解決するために、請求項1の本発明は、自動車のドアと車体開口部周縁との間をシールし、ドアのドアフレームの外周に取付けられるドアウェザストリップであって、ドアウェザストリップは、ドアフレーム又はドアモールに取付けられる取付基部と、ドアの閉時に車体開口部周縁に当接するシールリップを備え、シールリップの先端部の車体開口部周縁側には、ドアの閉時に車体開口部周縁に当接する凸部が形成され、シールリップには、シールリップを構成する材料より硬質の硬質部が、凸部の下方領域からシールリップの付根部側に延設して形成されていることを特徴とするドアウェザストリップである。
【0014】
請求項1の本発明では、ドアウェザストリップは、ドアフレーム又はドアモールに取付けられる取付基部と、ドアの閉時に車体開口部周縁に当接するシールリップを備え、シールリップの先端部の車体開口部周縁側には、ドアの閉時に車体開口部周縁に当接する凸部が形成され、シールリップには、シールリップを構成する材料より硬質の硬質部が、凸部の下方領域からシールリップの付根部側に延設して形成されているので、第1に、自動車の高速走行時における車内外の圧力差によってドアフレームに車幅方向外側(車外側)への力F1が発生した時に、シールリップの先端部の撓みが少なくなるので、車幅方向内側(車内側)方向への反力F2を車外側に吸い出される方向の力F1と同等又はF1に近づける時間を短縮することができる。
【0015】
第2に、硬質部は、凸部の下方領域にも存在するため、反力F2が増大しても、凸部が、シールリップの付根部側の根元で屈曲することを防止することができるので、反力F2をF1と同等又はF1近づけることができる。その結果、ドアフレームが車外側に吸い出されることを抑制することができる。
【0016】
請求項2の本発明は、請求項1の発明において、硬質部は、ドアの開閉時に、シールリップが大きく変形する部分には形成されていない、又はシールリップの先端部側に比較して肉薄に形成されているドアウェザストリップである。
【0017】
硬質部を凸部の下方領域からシールリップの付根部側に延設して形成することにより、シールリップの先端部の撓みを少なくし、凸部の屈曲変形を防止することにより、反力F2を増大させる効果を奏するが、硬質部がシールリップの付根部近傍まで延設して形成された場合、ドアを閉じるときに、シールリップが撓み難くなり、ドアを閉じるときの抵抗が増大し、ドアを閉じ難くなる。
【0018】
請求項2の本発明では、硬質部は、ドアの開閉時に、シールリップが大きく変形する部分には形成されていない、若しくはシールリップの先端側に比較して肉薄に形成されているので、硬質部の効果を維持しつつ、ドアが閉じ難くなることを防止することができる。
【0019】
請求項3の本発明は、請求項1又は請求項2の発明において、硬質部は、シールリップの先端側において、シールリップの先端部方向、且つシールリップの車外側方向にも延設しているドアウェザストリップである。
【0020】
請求項3の本発明では、硬質部は、シールリップの先端部側において、シールリップの先端部方向、且つシールリップの車外側方向にも延設して形成されている、すなわち、シールリップの凸部下方領域では、硬質部がシールリップの先端部の方向より車外側に張り出す形で肉厚になっているので、第1に、シールリップの先端部の撓みがさらに少なくなり、硬質部により、反力F2をF1と同等又はF1に近づける時間を短縮することができる。
【0021】
第2に、硬質部がシールリップの先端部の方向より車外側に張り出す形で肉厚にすることにより、硬質部をドアの開閉時に、シールリップが大きく変形する部分に形成しない、又はシールリップの先端側に比較して肉薄に形成した場合でも、硬質部の効果を維持しつつ、ドアが閉じ難くなることを防止することができる。
【0022】
請求項4の本発明は、自動車のドアと車体開口部周縁との間をシールし、ドアのドアフレームの外周に取付けられるドアウェザストリップであって、ドアウェザストリップは、ドアフレーム又はドアモールに取付けられる取付基部と、ドアの閉時に車体開口部周縁に当接するシールリップを備え、シールリップの先端部の車体開口部周縁側には、ドアの閉時に車体開口部周縁に当接する凸部が形成され、シールリップには、シールリップを構成する材料より硬質の硬質部が、凸部と、凸部のシールリップの付根部側の根元の近傍を含み、シールリップの先端部方向にシールリップを横断し、車内側から車外側に至る領域に形成されているドアウェザストリップである。
【0023】
請求項4の本発明では、シールリップには、シールリップには、シールリップを構成する材料より硬質の硬質部が、凸部と、凸部のシールリップの付根部側の根元の近傍を含み、シールリップの先端部方向にシールリップを横断し、車内側から車外側に至る領域に形成されているので、硬質部により、シールリップの先端部の撓み量が極めて少なくなり、反力F2をF1と同等又はF1に近づける時間を短縮することができる。又、シールリップの先端部分が凸部を含んで硬質部で形成されているので、シールリップの硬質部より付根部側が撓んだ場合においても、反力F2をF1と同等又はF1に近づけることができる。その結果、ドアフレームが車外側に吸い出されることを抑制することができる。
【0024】
請求項5の本発明は、請求項4の発明において、硬質部は、シールリップの付根部側に延設して形成されるドアウェザストリップである。
【0025】
請求項5の本発明では、硬質部は、シールリップの付根部側に延設して形成されるので、シールリップの撓みを抑制することができ、硬質部により、反力F2をF1と同等又はF1に近づけることができる。
【発明の効果】
【0026】
自動車のドアと車体開口部周縁との間をシールし、ドアのドアフレームの外周に取付けられるドアウェザストリップであって、ドアウェザストリップは、ドアフレーム又はドアモールに取付けられる取付基部と、ドアの閉時に車体開口部周縁に当接するシールリップを備え、シールリップの先端部の車体開口部周縁側には、ドアの閉時に車体開口部周縁に当接する凸部が形成され、シールリップには、シールリップを構成する材料より硬質の硬質部が、凸部の下方領域からシールリップの付根部側に延設して形成されているので、第1に、自動車の高速走行時における車内外の圧力差によってドアフレームに車幅方向外側(車外側)への力F1が発生した時に、シールリップの先端部の撓みが少ないので、車幅方向内側(車内側)方向への反力F2を車外側に吸い出される方向の力F1と同等又はF1に近づける時間を短縮することができる。
【0027】
第2に、硬質部は、凸部の下方領域にも存在するため、反力F2が増大しても、凸部が、シールリップの付根部側の根元で屈曲することを防止することができので、反力F2をF1と同等又はF1近づけることができる。その結果、ドアフレームが車外側に吸い出されることを抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【
図1】本発明の実施形態に用いる自動車のドアの側面図である。
【
図2】本発明の実施形態に用いるドアウェザストリップの全体の平面図である。
【
図3】本発明の第1の実施形態に用いるドアウェザストリップの
図1におけるA-A線に沿った断面図であり、(a)は、ドアウェザストリップの全体、(b)は(a)におけるX部分の拡大図である。
【
図4】本発明の第1の実施形態と従来とを比較した変位量と荷重との関係を示すグラフである。
【
図5】本発明の第2の実施形態に用いるドアウェザストリップの
図1におけるA-A線に沿った断面図である。
【
図6】本発明の第3の実施形態に用いるドアウェザストリップの
図1におけるA-A線に沿った断面図であり、(a)は、ドアウェザストリップの全体、(b)は(a)におけるX部分の拡大図である。
【
図7】本発明の第4の実施形態に用いるドアウェザストリップの
図1におけるA-A線に沿った断面図であり、(a)は、ドアウェザストリップの全体、(b)は(a)におけるX部分の拡大図である。
【
図8】本発明の第5の実施形態に用いるドアウェザストリップの
図1におけるA-A線に沿った断面図であり、(a)は、ドアウェザストリップの全体、(b)は(a)におけるX部分の拡大図である。
【
図9】従来のドアウェザストリップの
図1におけるA-A線に沿った断面図である(特許文献1)。
【
図10】従来のドアウェザストリップの
図1におけるA-A線に沿った断面図である(特許文献2)。
【
図11】
図10において、(a)は、高速走行時に吸い出し方向の力が働いた時の挙動を示す図であり、(b)は、(a)に比較してF2が増大した時の挙動を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0029】
図1は自動車の側面図である。
図1に示すように、フロント側及びリヤ側のいずれも自動車のドア1の上部の外周部にはドアフレーム2が設けられ、ドアフレーム2の外周部にはドアウェザストリップ10が取付けられ、ドア1と車体開口部周縁6(
図3)の間をシールしている。
【0030】
図2に示すように、ドアウェザストリップ10において、ドアフレーム2の上辺及び縦辺に対応する上辺部11と縦辺部13は、押出成形により長尺に成形され、ドアフレーム2のコーナー部に対応するコーナー部12の部分は、上辺部11と縦辺部13を接続し、型成形により形成されている。なお、本発明は、ドアウェザストリップ10の上辺部11に関するものである。又、本実施形態は、左側のフロントドアについて説明するものであるが、右側のフロントドアと両側のリヤドアにも適用可能である。
【0031】
本発明の第1の実施形態について、
図3に基づいて説明する。
図3(a)は、ドアウェザストリップ10の全体、
図3(b)は
図3(a)におけるX部分の拡大図である。本第1の実施形態において、ドアウェザストリップ10が取付けられるドアフレーム2は、所謂ヒドンタイプのものである。
図3(a)に示すように、このヒドンタイプのドアフレーム2は、車外側の先端の幅が狭く、ドアフレーム2の外周に取付けられたドアモール60により覆われて、車外側からは見えないように構成されている。
【0032】
ドアモール60は、モール部61とリテーナ部62とから連続的に形成されている。なお、モール部61とリテーナ部62は、それぞれ別体で形成してもよい。ドアモール60は、リテーナ部62がリベット、クリップやネジ等でドアフレーム2に固定されている。
【0033】
モール部61は、ドアフレーム2の先端を覆うように所定の幅を有し、下端は、ヘヤピン状に折れ曲がっている。このヘヤピン状に折れ曲がった部分とドアフレーム2の内面とで図示しないガラスランを挟持して保持する。一方、上端も同様にヘヤピン状に折れ曲がってリテーナ部62に連続している。モール部61とリテーナ部62は、1枚のステンレススチール等の板金を折り曲げることにより形成されている。
【0034】
リテーナ部62は、その断面形状が底部の広がった幅広のコ字状に形成される。リテーナ部62の車内側の先端部分はヘヤピン状に屈曲して形成され、リテーナ部62の車外側側端部分には、凹部63が形成されている。この凹部63に後述するドアウェザストリップ10の車外側ウェザストリップ20の車外側取付基部21を取付け、保持させることができる。
【0035】
ドアフレーム2の車内側外周は、リテーナ部62が取付けられる車外側よりも車内側が階段状に低い位置に形成され、後述するドアウェザストリップ10の車内側ウェザストリップ30の車内側取付基部31が取り付け可能に、溝状のドアフレームリテーナ部2cが形成されている。ドアフレームリテーナ部2cは、ドアフレーム2のインナパネル2bを屈曲させて形成する。このため、ドアウェザストリップ10の車内側ウェザストリップ30は、車外側ウェザストリップ20に比べて低い位置に取付けられる。
【0036】
ドアウェザストリップ10は、
図3(a)に示すように、車外側ウェザストリップ20と、車内側ウェザストリップ30と、車外側ウェザストリップ20と車内側ウェザストリップ30を連結する連結部40とを備える。車外側ウェザストリップ20は、ドアフレーム2の車外側、すなわち、上記のリテーナ部62に取付けられ、車体開口部周縁6とドアフレーム2との間において、車外側の先端部分をシールする。
【0037】
ドアウェザストリップ10の車外側ウェザストリップ20は、車外側取付基部21、シールリップ22と硬質部70から構成される。又、車外側取付基部21の基盤部分には、芯部25が形成されている。車外側取付基部21は、車内側と車外側の側端の底面がドアモール60のリテーナ部62に当接し、車外側の側端は、ドアモール60のリテーナ部62の凹部63に嵌挿される。
【0038】
なお、本発明の特許請求の範囲との関係において、特許請求の範囲における請求項1と請求項4の「・・・、前記ドアウェザストリップは、前記ドアフレーム又はドアモールに取付けられる取付基部と、・・・。」の「取付基部」は、この車外側取付基部21を示すものである。
【0039】
シールリップ22は、リップ状に形成され、車外側ウェザストリップ20の車外側取付基部21から上方、且つ車外側に突出して延設される。シールリップ22の先端部22aには、ドア1の閉時に車体開口部周縁6に当接する凸部23が形成されている。ドア1が閉じられると、凸部23が車体開口部周縁6に当接すると共に、シールリップ22が撓み、車体開口部周縁6とドアモール60の先端との間の隙間を塞ぐことができる。又、シールリップ22は、リップ状であり、シールリップ22における凸部23と後述する硬質部70を除く領域のシールリップ22は、撓みやすいので、ドア閉力を減少させることができる。
【0040】
硬質部70は、シールリップ22内に形成される。硬質部70は、凸部23の下方領域、つまり、凸部23の根元Zよりシールリップ22の先端部22a側からからシールリップ22の付根部22b側に延設して形成される。又、硬質部70は、車外側取付基部21の芯部25に連結して形成されている。
図3において、硬質部70の車内側が露出するように形成されている。なお、車内側に露出せず、シールリップ22内に埋設、又は、車外側に露出して形成してもよい。凸部23において、シールリップ22の付根部側の根元Zで屈曲することを防止する観点より、硬質部70が、シールリップ22内に埋設する場合、車外側に露出させる場合は、硬質部70と凸部23の根元Zとの距離は、シールリップ22の厚さの2分の1以下であることが望ましい。又、硬質部70は、車外側取付基部21と連結せず、離れた位置に形成してもよい。
【0041】
ドアウェザストリップ10の車内側ウェザストリップ30は、
図3(a)に示すように、車内側取付基部31と、中空シール部32から構成される。車内側取付基部31は、ドアフレームリテーナ部2cに取付けられ、中空シール部32は、車体開口部周縁6の車内側の膨出部66に弾接して車体開口部周縁6とドアフレーム2の間をシールする。車内側取付基部31は、略板状に形成され、両側の側端はそれぞれドアフレーム2のドアフレームリテーナ部2cに嵌め込まれて、車内側ウェザストリップ30を保持することができる。又、車内側取付基部31の中心部には、芯部35が形成されている。
【0042】
ドアウェザストリップ10において、車外側取付基部21の芯部25と、車内側取付基部31の芯部35と硬質部70は、硬質のEPDM(エチレンプロピレンジエンゴム)のソリッド材を使用した。ソリッド材の硬度は、国際ゴム硬度(IRHD)60以上である。
【0043】
一方、芯部25、硬質部70以外の車外側取付基部21、シールリップ22、凸部23、連結部40、芯部35以外の車内側取付基部31と中空シール部32は、軟質のEPDMのスポンジ材を使用した。スポンジ材の比重は、0.4以上1.0以下である。芯部25、35が設けられることで車外側取付基部21と車内側取付基部31の剛性を高くすることができる。なお、芯部25、35は形成されていなくてもよい。
【0044】
図4は、自動車の高速走行時における車内外の圧力差によってドアフレーム2に車幅方向外側(車外側)への力F1が発生した時のシールリップ22の車外側方向への変位と反力F2の発生について、シールリップ22の車外側への変位と荷重との関係を示したものである。破線は、特許文献2のドアウェザストリップ100の場合である。
【0045】
図4から明らかなように、本発明においては、荷重が最大値に達するまでの時間が短くなり、又、本発明においては、最大荷重値も大きくなっている。
【0046】
最大値に達するまでの時間が短くなるのは、シールリップ22には、シールリップ22を構成する材料より硬質の硬質部70が、凸部23の下方領域からシールリップ22の付根部22b側に延設して形成されていることにより、自動車の高速走行時における車内外の圧力差によってドアフレーム2に車幅方向外側(車外側)への力F1が発生した時に、凸部23の下方の硬質部70により、シールリップ22の先端部22aの撓みが少なくなることに基づく。
【0047】
又、本発明において、荷重の最大値が大きくなること、従来のように荷重の最大値に達した後に、荷重の低下が観測される現象が発生しないのは、硬質部70が凸部23の下方領域にも存在することにより、F2が増大しても、凸部23がその付け根部側の根元Z(
図11(b))で屈曲することがないことに基づく。その結果、F2をF1と同等又はF1に早く近づけることができる。
したがって、ドアフレームが車外側に吸い出されることをさらに抑制することができる。
【0048】
次に、本発明の第2の実施形態について、
図5に基づいて説明する。本第2の実施形態において、ドアウェザストリップ10が取付けられるドアフレーム2は、プレスドアタイプのものである。プレスドアは、アウタパネルとインナパネルを一体プレス成形した構造のドアである。
【0049】
ドア閉時において、ドアウェザストリップ10は、車両外板となるドアアウタパネル2dの車内側表面とドアインナパネル2eの車内側表面との間に双方に接して取付けられている。ドアインナパネル2eの上端部は、ドアインナパネル2eよりも車外側に配設されたドアアウタパネル2dの上端部にヘミング加工により固定されている。
【0050】
ドアウェザストリップ10は、取付基部50と、中空シール部52と、リップ部51とを備えている。リップ部51は、車体開口部周縁6に当接するシールリップ22、ドアアウタパネル2dに当接するドアアウタパネル当接部54とドアインナパネル2eに当接するドアインナパネル当接部55を備えている。
【0051】
取付基部50は、ドアインナパネル2eに対向して配置されると共に、この対向位置に凹部50aを有している。凹部50aの車内外の端部には、突条部59が形成され、突条部59がドアインナパネル2eに当接する。又、取付基部50には、孔部58が形成され、取付基部50とドアインナパネル2eを貫通すると共にこれら双方を挟込む、例えば樹脂製のクリップ80により固定されている。
【0052】
中空シール部52は、取付基部50の車内側から車体開口部周縁6へ向けて延出されると共に、ドア閉時に車体開口部周縁6に接して車内外をシールする構成とされている。又、中空シール部52と取付基部50との間には第1中空部56と第2中空部57が形成されている。
【0053】
シールリップ22の先端部22aの車体開口部周縁6側には、ドア1の閉時に車体開口部周縁6に当接する凸部23が形成されている。硬質部70は、凸部23の下方領域からシールリップ22の付根部22b側に延設して形成されている。本実施形態において、硬質部70は、ドア1の開閉時に、シールリップ22が大きく変形する部分、すなわち、
図5のCの部分には形成されていない。なお、
図5では、硬質部70は、車内側が露出するように形成されているが、上記の第1の実施形態と同様に、車内側に露出せず、シールリップ22内に埋設、又は、車外側に露出して形成してもよい。
【0054】
凸部23において、シールリップ22の付根部側の根元Zで屈曲することを防止する観点より、硬質部70を、シールリップ22内に埋設する場合、車外側に露出させる場合は、硬質部70と凸部23の根元Zとの距離は、シールリップ22の厚さの2分の1以下であることが望ましい。
【0055】
リップ部51のシールリップ22、ドアアウタパネル当接部54とドアインナパネル当接部55の付根部分のリップ部付根部53は、上記硬質部70と同様に硬質のEPDM(エチレンプロピレンジエンゴム)のソリッド材を使用した。ソリッド材の硬度は、国際ゴム硬度(IRHD)60以上である。
【0056】
一方、取付基部50、中空シール部52、シールリップ22、ドアアウタパネル当接部54とドアインナパネル当接部55は、軟質のEPDMのスポンジ材を使用した。スポンジ材の比重は、0.4以上1.0以下である。
【0057】
硬質部70は、ドア1の開閉時に、シールリップ22が大きく変形する部分(
図5のCの部分)には形成されていないので、硬質部70の効果、すなわち、自動車の高速走行時における車内外の圧力差によってドアフレーム2に車幅方向外側(車外側)への力F1が発生した時に、凸部23の下方の硬質部70により、シールリップ22の先端部22aの撓みが少なくなること、F2が増大しても、凸部23がその付け根部側の根元Zで屈曲することを防止し、F2を大きくすることを維持しつつ、ドア1が閉じ難くなることを防止することができる。
【0058】
本第2の実施形態では、硬質部70をドア1の開閉時に、シールリップ22が大きく変形する部分(
図5のCの部分)には形成しなかったが、肉薄にして形成してもよい。
【0059】
次に、本発明の第3の実施形態について、
図6に基づいて説明する。
図6(a)は、ドアウェザストリップ10の全体、
図6(b)は
図6(a)におけるX部分の拡大図である。本第3の実施形態は、第1の実施形態の変形バージョンである。第1の実施形態で説明した部位には、同一符号を付した。なお、個々の部位の説明は省略する。
【0060】
第3の実施形態において、硬質部70は、シールリップ22の付根部22b側であり、ドア1の開閉の際にシールリップ22が大きく変形する部分(
図6のC部分)には形成されていない。なお、ドア1の開閉の際にシールリップ22が大きく変形する部分に肉薄に形成してもよい。又、凸部23の下方領域からシールリップ22の付根部22b側に車内側に露出して形成されている。そして、シールリップ22の先端部22a側に行くにしたがい、肉厚が増大し、さらに、凸部23の下方において、硬質部70は、シールリップ22の先端部22a方向、且つシールリップ22の車外側方向に、アルファベットのDに近い形状で膨らむように形成されている。
【0061】
その結果、シールリップ22の先端部22aの撓み量を少なくし、凸部23がその付け根部側の根元Zで屈曲することを防止すると共に、凸部23の下方領域における反力F2を増大させることができるので、硬質部70をドア1の開閉時に、シールリップ22が大きく変形する部分に形成しない、又はシールリップ22の先端部22a側に比較して肉薄に形成した場合でも、早期に反力F2をF1と同等又はF1に近づけることができる。
【0062】
本第3の実施形態では、硬質部70は、車内側に露出して形成したが、シールリップ22内に埋設して形成してもよい。埋設して形成する場合は、凸部23において、シールリップ22の付根部側の根元Zで屈曲することを防止する観点より、硬質部70と凸部23の根元Zとの距離は、シールリップ22の厚さの2分の1以下であることが望ましい。
【0063】
次に、本発明の第4の実施形態について、
図7に基づいて説明する。
図7(a)は、ドアウェザストリップ10の全体、
図7(b)は
図7(a)におけるX部分の拡大図である。本第4の実施形態に用いるドアフレーム2は、第1の実施形態と同様なヒドンタイプのものである。第1の実施形態で説明した部位には、同一符号を付した。なお、個々の部位の説明は省略する。
【0064】
図7に示すように、本第4の実施形態において、硬質部70は、凸部23のシールリップ22の付根部22bの根元Zの近傍を含み、シールリップ22の先端部22a方向にシールリップ22を横断し、車内側から車外側に至る領域に形成されている。「凸部23のシールリップ22の付根部22bの根元Zの近傍」とは、F2の増大に対して、凸部23がその付け根部側の根元Zで屈曲することがない程度の付根部22b側であることを意味する。
【0065】
硬質部70を凸部23よりシールリップ22の付根部22b側から先端部22a方向の全域に形成することにより、シールリップ22の先端部22aの撓み量が極めて少なくなり、反力F2をF1と同等又はF1に近づける時間を短縮することができる。
【0066】
又、F2の増大に対して、凸部23がその付け根部側の根元で屈曲することがないので、反力F2を増大させ、F1と同等又はF1に近づけることができる。その結果、ドアフレーム2が車外側に吸い出されることを抑制することができる。
【0067】
本第4の実施形態では、
図7に示すように、硬質部70をシールリップ22の先端部22a方向の全域に形成したが、シールリップ22の先端部22aにおいて、硬質部70が形成されない部分が存在していてもよい。
【0068】
次に、本発明の第5の実施形態について、
図8に基づいて説明する。
図8(a)は、ドアウェザストリップ10の全体、
図8(b)は
図7(a)におけるX部分の拡大図である。本第5の実施形態は、第4の実施形態の変形バージョンである。第1の実施形態で説明した部位には、同一符号を付した。なお、個々の部位の説明は省略する。
【0069】
上記の第4の実施形態では、硬質部70は、主にシールリップ22の先端部22a側に形成されているので、硬質部70よりシールリップ22の付根部22b側の撓みにより、硬質部70の効果の低下が懸念される。
【0070】
本第5の実施形態では、硬質部70は、シールリップ22の付根部22b側に延設して形成されている。具体的には、硬質部70は、凸部23よりシールリップ22の付根部22b側から先端部22a方向の全域に形成される(上記第4の実施形態)と共に、シールリップ22の車内側に露出するように形成されている。なお、延設する部分は、車内側に露出せず、シールリップ22内に埋設して形成してもよく、車外側に露出して形成してもよい。又、硬質部70がドア1の開閉時に、シールリップ22が大きく変形する部分(
図7のCの部分)には形成されない、又は肉薄にして形成してもよい。
【0071】
その結果、硬質部70により、凸部23の根元Zにおける屈曲とシールリップ22の撓みを抑制することができるので、反力F2を早期にF1と同等又はF1に近づけることができる。
【0072】
本第1、第3、第4と第5の実施形態の硬質部70は、本第2の実施形態の硬質部70にも適用でき、本第2の実施形態の硬質部70は、本第1、第3、第4と第5の実施形態にも適用できる。
【0073】
本発明の実施にあたっては、上記実施形態に限定されるものではなく、本発明の目的を逸脱しない限りにおいて種々の変更が可能である。
【0074】
例えば、上記の第1の実施形態と第3から第5の実施形態では、ドアウェザストリップ10は、車外側ウェザストリップ20と、車内側ウェザストリップ30と、車外側ウェザストリップ20と車内側ウェザストリップ30を連結する連結部40とを一体として形成したが、連結部40を形成せずに、車外側ウェザストリップ20、車内側ウェザストリップ30を別体として形成し、別々に取付ける形態や、車内側ウェザストリップ30も形成せず、第2の実施形態と同様に、車外側ウェザストリップ20のみを形成して取付ける形態であってもよい。
【0075】
例えば、上記の第1から第5の実施形態では、ドアウェザストリップ10をEPDMによって形成したが、オレフィン系熱可塑性エラストマー(TPO)や動的架橋型熱可塑性エラストマー(TPV)によって形成してもよい。
【0076】
例えば、上記の第1から第5の実施形態では、硬質部70を国際ゴム硬度(IRHD)60以上のEPDMのソリッド材を用いて形成したが、上記のTPOやTPVによって形成してもよく、又、PP等の樹脂で形成してもよい。
【符号の説明】
【0077】
1 ドア
2 ドアフレーム
6 車体開口部周縁
10 ドアウェザストリップ
11 上辺部
20 車外側ウェザストリップ
21 取付基部
22 シールリップ
23 凸部
60 ドアモール
70 硬質部
56 高摩擦部
60 ドアモール