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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024045864
(43)【公開日】2024-04-03
(54)【発明の名称】吸収性物品
(51)【国際特許分類】
   A61F 13/532 20060101AFI20240327BHJP
   A61F 13/514 20060101ALI20240327BHJP
   A61F 13/53 20060101ALI20240327BHJP
   A61F 13/56 20060101ALI20240327BHJP
【FI】
A61F13/532 210
A61F13/514 120
A61F13/53 300
A61F13/56 110
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022150920
(22)【出願日】2022-09-22
(71)【出願人】
【識別番号】390029148
【氏名又は名称】大王製紙株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】504157024
【氏名又は名称】国立大学法人東北大学
(74)【代理人】
【識別番号】100104927
【弁理士】
【氏名又は名称】和泉 久志
(72)【発明者】
【氏名】倉持 美帆子
(72)【発明者】
【氏名】山口 健
(72)【発明者】
【氏名】白鳥 貴之
【テーマコード(参考)】
3B200
【Fターム(参考)】
3B200AA01
3B200AA03
3B200BA08
3B200BB21
3B200CA14
3B200DB05
3B200DB24
3B200DD02
3B200DE03
(57)【要約】
【課題】吸収性物品表面と肌面との間の擦れを確実に防止し、肌トラブルを低減するとともに、臀部とのフィット性を高め、漏れを防止する。
【解決手段】バックシート2の肌側に吸収体4が積層されるとともに、前記バックシート2と前記吸収体4とが接合されておらず、前記バックシート2と前記吸収体4との間に摩擦低減層10が設けられており、前記吸収体4の後端部が、生理用ナプキン1の長手方向に延びる分断部11によって幅方向に複数に分断されている。着用者の身体の動きによって下着が動いたとき、吸収体4とバックシート2との間の滑りによって下着の動きが吸収され、バックシート2の動きが吸収体4に伝達されにくくなる。分断部11によって分断された吸収体部分がそれぞれ、バックシート2との間で滑りながら、臀部の左右の異なる動きに合わせてフレキシブルに追従できる。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
バックシートの肌側に吸収体が積層されるとともに、前記バックシートと前記吸収体とが接合されておらず、
前記バックシートと前記吸収体との間に摩擦低減層が設けられており、
前記吸収体の後端部が、吸収性物品の長手方向に延びる分断部によって幅方向に複数に分断されていることを特徴とする吸収性物品。
【請求項2】
前記吸収体の肌側が肌当接面層で覆われるとともに、前記吸収体の外縁より外側に延出する前記バックシート及び前記肌当接面層で構成されたフラップ部に、前記バックシートと前記肌当接面層とが全周に亘って接合された全周シール部が形成されており、
前記全周シール部が前記吸収体の外縁から外側に離隔した位置に配置されることにより、前記吸収体と前記全周シール部との間に前記バックシートの非接合領域が形成され、
前記摩擦低減層が、前記非接合領域にまで延在して設けられている請求項1記載の吸収性物品。
【請求項3】
前記分断部は、所定の分断幅を有する切欠部及び線状の切り込み部のいずれか又はこれらの組み合わせで形成されている請求項1記載の吸収性物品。
【請求項4】
前記分断部は、後端に向かうに従って分断幅が徐々に大きくなる切欠部によって形成されている請求項1記載の吸収性物品。
【請求項5】
前記バックシートの外面に、前記吸収性物品を下着に固定するためのズレ止め粘着剤層が設けられ、
前記ズレ止め粘着剤層が、前記分断部で分断された前記吸収体の各部分と重なる領域にまで延在している請求項1記載の吸収性物品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、経血、おりもの、尿などの体液を吸収するための生理用ナプキン、パンティライナー、失禁パッドなどの吸収性物品に係り、詳しくは、身体の動きによる吸収性物品表面と肌面との擦れを低減した吸収性物品に関する。
【背景技術】
【0002】
従来の吸収性物品は、トップシートからバックシートにかけての全ての部材間がホットメルト接着剤などにより接着されて一体化され、かつバックシートの外面に備えられたズレ止め粘着剤層によって下着に固定されているため、歩行時などの着用者の身体の動きによって下着が動いたとき、吸収性物品の全体が下着とともに動き、吸収性物品表面と肌面との間に擦れが生じ、痒みや痛みなどの肌トラブルを引き起こすことがあった。
【0003】
このような問題を解決するため、例えば、特許文献1には、後側域の吸収体が幅方向中央の中央領域とその両側の側部領域とを有し、前記中央領域には、吸収性物品の前後方向に延び、かつ後側域の吸収コアが着用者側に隆起することができるように構成された前後スリットが設けられている吸収性物品が開示されている。
【0004】
また、特許文献2には、バックシートと吸収体部との間に摩擦低減層を設け、前記摩擦低減層とバックシートとの摩擦、又は前記摩擦低減層と吸収体部との摩擦を、吸収体部とバックシートとの摩擦より小さくすることにより、装着中に発生し得る吸収性物品と肌との間の擦れを防止することが開示されている。
【0005】
また、特許文献3には、吸収体とズレ止め粘着剤層との間にせん断変形層が備えられ、前記せん断変形層のせん断変形により、前記せん断変形層の肌側に配置された部材と、前記せん断変形層の非肌側に配置された部材とが面方向に対して相対的に位置ずれし得るように構成されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2016-119989号公報
【特許文献2】特開2020-48976号公報
【特許文献3】特開2020-156641号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
特許文献1に記載の吸収性物品では、後側域の吸収体の幅方向中央が、前後スリットを頂点として着用者側に隆起することによって、後側域の吸収体の幅方向中央が臀部間の窪みに配置されやすく、より着用者の臀部に沿って吸収体を配置できる結果、経血等の体液が身体を伝わって背側後方に伝わり流れ、吸収性物品の後から漏れることを防止できるようになっている。ところが、吸収体がバックシートに接合されている場合は、着用者が身体を動かしたときに下着に固定されたバックシートとともに吸収体が動くため、臀部など身体の動きに対して吸収体が追従しにくく、吸収性物品の表面層と肌との間で擦れが生じ、肌トラブルを引き起こすおそれがあるとともに、吸収性物品の表面と肌面との間の隙間から体液が肌を伝って漏れやすくなる問題があった。
【0008】
また、特許文献2に記載の吸収性物品では、バックシートと吸収体部との間に摩擦低減層が設けられているため、着用者の身体の動きによって下着が動いても、下着に固定されたバックシートと、着用者の肌面に接するトップシート及び吸収体部との間で相対的にスライドすることにより、バックシートの動きがトップシートに伝わりにくく、吸収性物品表面と肌面との間の擦れが生じにくくなっている。しかしながら、歩行時などにおいて左右の脚を交互に前後に動かしたとき、特に臀部が激しく動き、左右の臀部が交互に異なった動きをするため、吸収性物品の後方部が臀部の動きに追従しにくく、吸収性物品表面と肌面との間に隙間が生じ、この隙間から肌を伝って流れた体液が漏れ出るおそれがあった。
【0009】
また、特許文献3に記載の吸収性物品では、せん断変形層がせん断変形することによって吸収性物品の表面が肌面に密着した状態を維持しようとしているが、着用者の身体の動きによって下着が大きく移動した場合は、せん断変形層のせん断変形だけでは対処しきれず、吸収性物品表面と肌面との間で擦れが生じ、肌トラブルを引き起こす場合があった。
【0010】
そこで本発明の主たる課題は、吸収性物品表面と肌面との間の擦れを確実に防止し、肌トラブルを低減するとともに、臀部とのフィット性を高め、漏れを防止した吸収性物品を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記課題を解決するために第1の態様として、バックシートの肌側に吸収体が積層されるとともに、前記バックシートと前記吸収体とが接合されておらず、
前記バックシートと前記吸収体との間に摩擦低減層が設けられており、
前記吸収体の後端部が、吸収性物品の長手方向に延びる分断部によって幅方向に複数に分断されていることを特徴とする吸収性物品が提供される。
【0012】
上記第1の態様では、バックシートと吸収体とが接合されておらず、これらバックシートと吸収体との間に摩擦低減層が設けられているため、吸収体とバックシートとの間が滑りやすくなっており、着用者の身体の動きによって下着が動いたときでも、吸収体とバックシートとの間の滑りによって下着の動きを吸収し、バックシートの動きが吸収体に伝達されにくく、吸収体より肌側の部材が肌面に密着した状態が維持できる。その結果、吸収性物品表面と肌面との間の擦れが確実に防止でき、肌トラブルが低減できる。
【0013】
また、歩行時など着用者が左右交互に前後に脚を動かしたとき、それに伴い臀部も左右交互に動くため、この臀部を覆う吸収性物品の後端部は、臀部の左右異なる激しい動きに確実に追従できることが体液の漏れ防止の観点から要求されるところ、本発明に係る吸収性物品では、吸収体の後端部が、吸収性物品の長手方向に延びる分断部によって幅方向に複数に分断されているため、前記分断部によって幅方向に分断された各部が左右の臀部の動きの違いに対応して動くことができるとともに、上述の通り、吸収体がバックシートに接合されておらず、バックシートと吸収体との間に摩擦低減層が設けられているため、前記分断部によって分断された吸収体の各部が、バックシートとの間で滑りを生じながら、左右の臀部の異なる動きに合わせてフレキシブルに追従できるようになる。このため、臀部とのフィット性が向上でき、確実に体液の漏れが防止できる。
【0014】
第2の態様として、前記吸収体の肌側が肌当接面層で覆われるとともに、前記吸収体の外縁より外側に延出する前記バックシート及び前記肌当接面層で構成されたフラップ部に、前記バックシートと前記肌当接面層とが全周に亘って接合された全周シール部が形成されており、
前記全周シール部が前記吸収体の外縁から外側に離隔した位置に配置されることにより、前記吸収体と前記全周シール部との間に前記バックシートの非接合領域が形成され、
前記摩擦低減層が、前記非接合領域にまで延在して設けられている請求項1記載の吸収性物品が提供される。
【0015】
上記第2の態様では、吸収体と全周シール部との間にバックシートの非接合領域が形成され、摩擦低減層が、この非接合領域にまで延在して設けられているため、バックシートとの間の滑りによって吸収体がスライドしたときの可動域が前記非接合領域まで広がり、吸収性物品表面と肌面との擦れがより確実に防止できるとともに、前記分断部で分断された吸収体の各部が臀部の動きに追従しやすくなる。
【0016】
第3の態様として、前記分断部は、所定の分断幅を有する切欠部及び線状の切り込み部のいずれか又はこれらの組み合わせで形成されている請求項1記載の吸収性物品が提供される。
【0017】
上記第3の態様では、前記分断部の形態として、切欠部及び切り込み部のいずれか又はこれらの組み合わせからなるものを挙げている。前記切欠部では、吸収体が所定の分断幅で分断されているため、分断部で分断された吸収体の各部が互いに干渉することなく動きが良くなる。また、前記切り込み部では、分断部で分断された吸収体の各部の間に隙間がほとんどないので、体液の吸収性に優れるようになる。
【0018】
第4の態様として、前記分断部は、後端に向かうに従って分断幅が徐々に大きくなる切欠部によって形成されている請求項1記載の吸収性物品が提供される。
【0019】
上記第4の態様では、前記分断部の特に好ましい形態として、後端に向かうに従って分断幅が徐々に大きくなる切欠部を挙げている。このような形態の分断部では、分断部で分断された吸収体の各部の動きが更に良好となり、臀部との密着性がより一層向上する。
【0020】
第5の態様として、前記バックシートの外面に、前記吸収性物品を下着に固定するためのズレ止め粘着剤層が設けられ、
前記ズレ止め粘着剤層が、前記分断部で分断された前記吸収体の各部分と重なる領域にまで延在している請求項1記載の吸収性物品が提供される。
【0021】
上記第5の態様では、前記分断部で分断された吸収体の各部分と重なる領域にまでズレ止め粘着剤層を延在して設けているため、下着に固定されたバックシートが下着とともに動いたとき、前記分断部で分断された吸収体の各部がバックシートに対して相対的に滑りやすくなり、より確実に臀部にフィットするようになる。
【発明の効果】
【0022】
以上詳説のとおり本発明によれば、吸収性物品表面と肌面との間の擦れが確実に防止でき、肌トラブルが低減できるとともに、臀部とのフィット性が高まり、漏れが防止できるようになる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
図1】本発明に係る生理用ナプキン1を示す一部破断展開図である。
図2図1の裏面図である。
図3図1のIII-III線矢視図である。
図4】分断部11を示す、吸収体4の後端部の平面図である。
図5】吸収体4の変形例を示す、(A)は後端部の平面図、(B)はその側面図、(C)は別の形態を示す後端部の平面図である。
図6】変形例に係る生理用ナプキン1の横断面図である。
図7】変形例に係る生理用ナプキン1の横断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下、本発明の実施の形態について図面を参照しながら詳述する。
【0025】
〔生理用ナプキン1の基本構成〕
本発明に係る生理用ナプキン1は、図1図3に示されるように、ポリエチレンシート、ポリプロピレンシートなどからなる不透液性のバックシート2と、経血やおりものなどを速やかに透過させる透液性のトップシート3と、これら両シート2,3間に介装された綿状パルプ又は合成パルプ及び高吸水性樹脂を主成分とする吸収体4と、前記吸収体4の形状保持および拡散性向上のために前記吸収体4を囲繞するクレープ紙又は不織布などからなる被包シート5と、前記トップシート3と吸収体4との間であって、トップシート3の非肌側に隣接して配置される多孔プラスチックフィルム又は不織布などからなるセカンドシート6と、肌当接面側の両側部にそれぞれ前後方向に沿って配置されるサイドシート7とを備えている。前記トップシート3及びサイドシート7は、吸収体4の肌側を覆うとともに、生理用ナプキン1の着用時に着用者の肌に当接する肌当接面層を構成する。
【0026】
前記吸収体4の周囲においては、前後端縁部では前記バックシート2及びトップシート3が、両側縁部では前記バックシート2及びサイドシート7が吸収体4の外縁より外側に延出することによって、吸収体4が介在しないフラップ部Fが形成されている。
【0027】
以下、さらに前記生理用ナプキン1の構造について詳述すると、
前記バックシート2は、ポリエチレンやポリプロピレン等のオレフィン系樹脂シートなどの少なくとも遮水性を有するシート材が用いられるが、この他にポリエチレンシート等に不織布を積層したラミネート不織布や、さらには防水フィルムを介在して実質的に不透液性を確保した上で不織布シート(この場合には防水フィルムと不織布とでバックシートを構成する。)などを用いることができる。近年はムレ防止の観点から透湿性を有するものが用いられる傾向にある。この遮水・透湿性シート材は、ポリエチレンやポリプロピレン等のオレフィン系樹脂中に無機充填剤を溶融混練してシートを成形した後、一軸または二軸方向に延伸することにより得られる微多孔性シートである。前記吸収体4が介在する本体部分のバックシート2の非肌側面(外面)には、ナプキン前後方向に沿って1または複数条の、図示例では2条のズレ止め粘着剤層8が形成され、身体への装着時に生理用ナプキン1を下着の内面に固定するようになっている。このバックシート2については、後段で更に説明する。
【0028】
次いで、前記トップシート3は、有孔または無孔の不織布や多孔性プラスチックシートなどが好適に用いられる。不織布を構成する素材繊維としては、たとえばポリエチレンまたはポリプロピレン等のオレフィン系、ポリエステル系、ポリアミド系等の合成繊維の他、レーヨンやキュプラ等の再生繊維、綿等の天然繊維とすることができ、エアスルー法、エアレイド法、スパンレース法、スパンボンド法、メルトブローン法、ニードルパンチ法等の適宜の加工法によって得られた不織布を用いることができる。これらの加工法の内、スパンレース法は柔軟性、ドレープ性に富む点で優れ、サーマルボンド法は嵩高で圧縮復元性が高い点で優れている。前記トップシート3に多数の透孔を形成した場合には、体液が速やかに吸収されるようになり、ドライタッチ性に優れたものとなる。不織布の繊維は、長繊維または短繊維のいずれでもよいが、好ましくはタオル地の風合いを出すため短繊維を使用するのがよい。また、エンボス処理を容易とするために、比較的低融点のポリエチレンまたはポリプロピレン等のオレフィン系繊維のものを用いるのがよい。また、融点の高い繊維を芯とし融点の低い繊維を鞘とした芯鞘型繊維やサイド-バイ-サイド型繊維、分割型繊維の複合繊維を好適に用いることもできる。
【0029】
前記バックシート2とトップシート3との間に介在される吸収体4は、たとえばフラッフ状パルプと高吸水性樹脂とにより構成されている。図示例では平面形状がナプキン長手方向に長い縦長の略小判形とされている。吸収体4の製造方法は、柔軟性に富むように積繊パルプとするのが望ましいが、嵩を小さくできるエアレイド吸収体などのシート状の吸収体を用いてもよい。
【0030】
前記パルプとしては、木材から得られる化学パルプ、溶解パルプ等のセルロース繊維や、レーヨン、アセテート等の人工セルロース繊維からなるものが挙げられ、広葉樹パルプよりは繊維長の長い針葉樹パルプの方が機能および価格の面で好適に使用される。前記パルプの目付は、100g/m~600g/m、好ましくは100g/m~300g/mとするのがよい。
【0031】
前記高吸水性樹脂は吸収体を構成するパルプ中に、例えば粒状粉として混入されている。前記高吸水性樹脂としては、たとえばポリアクリル酸塩架橋物、自己架橋したポリアクリル酸塩、アクリル酸エステル-酢酸ビニル共重合体架橋物のケン化物、イソブチレン・無水マレイン酸共重合体架橋物、ポリスルホン酸塩架橋物や、ポリエチレンオキシド、ポリアクリルアミドなどの水膨潤性ポリマーを部分架橋したもの等が挙げられる。これらの内、吸水量、吸水速度に優れるアクリル酸またはアクリル酸塩系のものが好適である。前記吸水性能を有する高吸水性樹脂は製造プロセスにおいて、架橋密度および架橋密度勾配を調整することにより吸収倍率(吸水力)と吸収速度の調整が可能である。
【0032】
また、前記吸収体4には合成繊維を混合しても良い。前記合成繊維は、例えばポリエチレン又はポリプロピレン等のポリオレフィン系、ポリエチレンテレフタレートやポリブチレンテレフタレート等のポリエステル系、ナイロンなどのポリアミド系、及びこれらの共重合体などを使用することができるし、これら2種を混合したものであってもよい。また、融点の高い繊維を芯とし融点の低い繊維を鞘とした芯鞘型繊維やサイド-バイ-サイド型繊維、分割型繊維などの複合繊維も用いることができる。前記合成繊維は、体液に対する親和性を有するように、疎水性繊維の場合には親水化剤によって表面処理したものを用いるのが望ましい。
【0033】
前記吸収体4の幅寸法は、全長に亘ってほぼ等幅としてもよいし、股間部への当たりによって着用者にゴワ付き感を与えないように、体液排出部位Hを含む股間部に対応する長手方向の所定区間に円弧状に切り欠いた部分を設けてもよい。
【0034】
この吸収体4については、後段で更に説明する。
【0035】
本例のように、吸収体4を囲繞する被包シート5を設ける場合には、結果的にトップシート3と吸収体4との間に被包シート5が介在することになり、吸収性に優れる前記被包シート5によって体液を速やかに拡散させるとともに、これら経血等の逆戻りを防止するようになる。前記被包シート5としては、クレープ紙又は親水性不織布などを用いることができる。
【0036】
前記トップシート3の非肌側に隣接して配置される親水性のセカンドシート6は、体液に対して親水性を有するものであればよい。具体的には、レーヨンやキュプラ等の再生繊維、綿等の天然繊維を用いることにより素材自体が親水性を有するものを用いるか、ポリエチレンまたはポリプロピレン等のオレフィン系、ポリエステル系、ポリアミド系等の合成繊維を親水化剤によって表面処理し親水性を付与した繊維を用いることができる。また、融点の高い繊維を芯とし融点の低い繊維を鞘とした芯鞘型繊維やサイド-バイ-サイド型繊維、分割型繊維等の複合繊維を用いることができる。前記セカンドシート6と吸収体4(被包シート)とは、ホットメルト接着剤等により接合するのが望ましい。前記セカンドシート6と吸収体4とを接合することにより、体液を前記セカンドシート6から吸収体4に速やかに移行させることができるようになる。
【0037】
前記トップシート3の幅寸法は、図示例では、図3の横断面図に示されるように、吸収体4の幅よりも若干長めとされ、吸収体4を覆うだけに止まり、それより外方側は前記トップシート3とは別のサイドシート7、具体的には経血やおりもの等が浸透するのを防止する、あるいは肌触り感を高めるなどの目的に応じて、適宜の撥水処理または親水処理を施した不織布素材を用いて構成されたサイドシート7が配設されている。かかるサイドシート7としては、天然繊維、合成繊維または再生繊維などを素材として、適宜の加工法によって形成されたものを使用することができるが、好ましくはゴワ付き感を無くすとともに、ムレを防止するために、坪量を抑えて通気性を持たせた不織布を用いるのがよい。
【0038】
前記サイドシート7は、幅方向中間部より外側部分を所定の内側位置からバックシート2の外縁までの範囲に亘って配置され、前記トップシート3との積層部分がホットメルトなどの接着剤によって前記トップシート3に接着され、吸収体4の側縁より外側に延出するサイドシート7とバックシート2との積層シート部分により、吸収体4の両側部に吸収体4が介在しないサイドフラップ部を形成している。
【0039】
このサイドフラップ部は、ほぼ着用者の体液排出部位Hに相当する側部位置に、吸収体4の側縁からの延出量をその前後の部位よりも拡大させた左右一対のウイング状フラップ部W、Wを形成する。図2に示されるように、このウイング状フラップ部W、Wの外面側(バックシート2の外面側)にはウイング用粘着剤層9が備えられ、下着に対する装着時に、前記ウイング状フラップ部W、Wを基端部の折返し線RL(図1参照。)位置にて反対側(バックシート2側)に折り返し、下着のクロッチ部分に巻き付けて、前記ウイング用粘着剤層9を下着のクロッチ部分の外面に止着する。また、図示しないが、これより臀部側(後部側)位置に、吸収体4の側縁からの延出量をその前後の部位よりも拡大させた左右一対のヒップホールド用フラップ部を形成してもよい。このヒップホールド用フラップ部の外面側(バックシート2の外面側)にはヒップホールド用粘着剤層が備えられ、下着に対する装着時に、前記ヒップホールド用粘着剤層を下着の内面に止着し、装着時に着用者の臀部を覆うようになっている。
【0040】
一方、前記サイドシート7の内方側部分は、ほぼ二重に折り返された状態で吸収体4側(トップシート3)に接着されている。図示しないが、前記サイドシート7の内方側部分は、二重シート内部の少なくとも体液排出部位Hを含む長手方向中間部に、両端または長手方向の適宜の位置が固定された1又は複数本の糸状弾性伸縮部材が伸長状態で配設されるとともに、前後端部を吸収体4側に接着された非起立部とすることにより、長手方向中間部の前記糸状弾性伸縮部材の配置範囲が、前記糸状弾性伸縮部材の収縮力により肌側に起立する左右対の立体ギャザーを形成してもよい。
【0041】
〔バックシート2及び吸収体4〕
前記バックシート2と、このバックシート2の肌側に積層された前記吸収体4とは接合されていない。つまり、前記吸収体4は、バックシート2の肌側に積層されただけで、接着剤やヒートシール、超音波シールによる接合が非肌側面の全面に亘って一切成されていない。前記吸収体4は、肌側面がトップシート3(セカンドシート6)に接合され、このトップシート3がフラップ部Fにおいて直接又はサイドシート7を介してバックシート2に接合されているため、吸収体4がバックシート2に対して自由に動くことはないが、バックシート2に外力が作用した場合は、吸収体4とバックシート2とが相対的にスライド可能となっている。
【0042】
前記バックシート2と吸収体4との間には摩擦低減層10が設けられている。前記摩擦低減層10は、バックシート2と吸収体4との間の摩擦を低減する層である。前記摩擦低減層10を設けることによって、バックシート2と吸収体4との間の摩擦力が低減するため、相対的なスライドが生じやすくなる。
【0043】
上述のように、バックシート2と吸収体4とが接合されておらず、これらバックシート2と吸収体4との間に摩擦低減層10が設けられているため、吸収体4がバックシート2に対して相対的に滑りやすくなっている。生理用ナプキン1の装着時に、着用者の身体の動きによって下着が動いたとき、前記ズレ止め粘着剤層8によって下着に固定されたバックシート2も下着と同様に動くが、前述の通りバックシート2が吸収体4に接合されていないため、吸収体4とバックシート2との間の滑りによって下着の動きが吸収され、バックシート2の動きが吸収体4に伝達されにくく、吸収体4より肌側の部材(トップシート3やサイドシート7の肌当接面層を含む。)が肌面に密着した状態が維持できる。その結果、生理用ナプキン1の表面と肌面との間の擦れが確実に防止でき、肌トラブルが低減できる。
【0044】
前記吸収体4の後端部は、図1に示されるように、生理用ナプキン1の長手方向に延びる分断部11によって幅方向に複数に分断されている。つまり、吸収体4の後方の所定位置から後端に亘って前記分断部11が形成されることにより、吸収体4の後端部が幅方向に複数に分断され、分断された吸収体部分がそれぞれ変形し得るようになっている。
【0045】
このように、本発明に係る生理用ナプキン1では、歩行時など着用者が左右交互に前後に脚を動かすことによって、左右の臀部が異なる動きをした場合でも、前記分断部11によって幅方向に分断された吸収体後端部の各部が臀部の左右の動きの違いに対応してそれぞれ異なる動きをするため、生理用ナプキン1の表面が肌面に密着した状態が維持でき、確実に体液の漏れが防止できるようになる。しかも、バックシート2と吸収体4との間に設けられた摩擦低減層10によって、これらの間の摩擦が低減化されているため、下着の動きに伴うバックシート2の動きの影響が最小限に抑えられた状態で、吸収体4の分断された各部が臀部の動きに合わせてフレキシブルに追従可能となる。仮に、前記摩擦低減層10が設けられない場合には、吸収体4とバックシート2との間の摩擦力によって、下着の動きに伴ってバックシート2が動いたとき、バックシート2に追従して吸収体4も動くおそれがあり、生理用ナプキン1の表面と肌面との間で擦れが生じるとともに、前記分断部11で分断された吸収体部分の動きが悪く、この吸収体部分が臀部の動きに合わせて動くことができなくなる。
【0046】
以下、さらに前記バックシート2及び吸収体4について詳述すると、
前記フラップ部Fは、前述の通り、吸収体4の外縁より外側に延出するバックシート2、トップシート3及びサイドシート7で構成されている。このフラップ部Fに、バックシート2と肌当接面層を構成するトップシート3及びサイドシート7とが生理用ナプキン1の全周に亘って接合された全周シール部12が形成されている。
【0047】
前記全周シール部12は、前記フラップ部Fにおいてバックシート2と肌当接面層とを一体的に接合する部位であり、具体的には、吸収体4の前後端縁部では吸収体4の外縁より外側に延出したバックシート2及びトップシート3が、吸収体4の両側縁部では吸収体4の外縁より外側に延出したバックシート2及びサイドシート7が、それぞれホットメルト接着剤による接着やヒートシール、超音波シールなどの接合手段によって、吸収体4の外縁にほぼ沿って全周に亘って接合された部位である。
【0048】
前記全周シール部12は、周方向に沿って、連続したシール部によって構成された連続シール線としてもよいし、シール部と非シール部とが交互に複数配置された断続シール線としてもよい。この全周シール部12のシール幅としては特に制限はないが、1~10mm程度が好ましく、全周に亘って一定のシール幅でもよいし、例えば生理用ナプキン1の前後端部でシール幅を太くするなど、部位によって変化させてもよい。
【0049】
前記全周シール部12は、吸収体4の外縁から外側に一定の距離Sだけ離隔した位置に配置されている。これにより、吸収体4と全周シール部12との間の距離Sだけ離隔した部分には、バックシート2が吸収体4の外縁から延出したトップシート3及びサイドシート7に接合されない、バックシート2の非接合領域13が形成されている。前記非接合領域13は、吸収体4の外縁に沿って吸収体4の全周に亘るとともに、吸収体4の直ぐ外側に形成された環状の領域である。
【0050】
吸収体4と全周シール部12との距離S(前記非接合領域13の幅寸法)は、3mm以上であるのが好ましく、3~10mmであるのがより好ましい。歩行時などに着用者が脚を動かしたときの下着の動きに対応するため、3mm以上の可動域が必要である。
【0051】
前記摩擦低減層10は、吸収体4との積層領域に加え、前記バックシート2の非接合領域13にまで延在して設けられている。すなわち、前記摩擦低減層10は、バックシート2と吸収体4との間に設けられるとともに、吸収体4の外縁より外側に延在する前記非接合領域13にも設けられている。なお、非接合領域13より外側の全周シール部12や更にその外側のフラップ部Fには、前記摩擦低減層10が設けられていない。
【0052】
前記吸収体4と全周シール部12との間にバックシート2の非接合領域13を形成することにより、バックシート2と吸収体4との間で相対的なスライドが生じたときの可動域を前記非接合領域13にまで広げることができる。また、前記摩擦低減層10が前記非接合領域13にまで延在して設けられることにより、この非接合領域13においてもバックシート2と吸収体4との間の滑りが良くなる。
【0053】
前記分断部11は、吸収体4の後端部を幅方向に複数に分断し、生理用ナプキン1の長手方向に延びる形状のものであればどのような形態で形成してもよいが、図1及び図4に示されるように、所定の分断幅を有する切欠部11a及び線状の切り込み部11bのいずれか又はこれらの組み合わせで形成するのが好ましい。例えば、図1では、後端に向かうに従って分断幅が徐々に大きくなる切欠部11aで形成され、図4(A)では、全長に亘ってほぼ等幅の分断幅を有する切欠部11aで形成され、図4(B)では、線状の切り込み部11bで形成され、図4(C)では、前方側が線状の切り込み部11bで、後方側が後端に向かうに従って分断幅が徐々に大きくなる切欠部11aで形成されている。
【0054】
前記切欠部11aは、切り欠いた両側の端縁の離隔幅(分断幅)が目視で認識できるものであり、前記切り込み部11bは、その離隔幅が不明瞭なものであるが、これらの区別は特に明確である必要はなく、分断部11によって吸収体4の後端部が幅方向に分断され、この分断部11を境に分断された左右の吸収体部分がそれぞれ異なる動きができるように構成されたものであればよい。分断部11を前記切欠部11aで形成した場合は、分断部11で分断された左右の吸収体部分が所定の離隔幅で離隔しているため、左右の吸収体部分が、その基端部を基軸として幅方向や斜め方向、ねじり方向などに変形しやすくなる。また、分断部11を前記切り込み部11bで形成した場合は、左右の吸収体部分の離隔幅が非常に小さいため、体液の吸収性に優れるようになる。
【0055】
特に好ましくは、前記分断部11は、図1に示されるように、後端に向かうに従って分断幅が徐々に大きくなる切欠部11aで形成するのがよい。これによって、前記分断部11で分断された左右の吸収体部分が、その基端部を基軸として幅方向や斜め方向、ねじり方向などに変形した際、互いに干渉することなく変形することができ、左右の臀部の激しい動きにも柔軟に対応して、生理用ナプキン1の表面が肌面に密着した状態が維持できるようになる。
【0056】
なお、前記分断部11で分断された部分にも、前記吸収体4の積層領域と同様に、摩擦低減層10が設けられている。また、前記分断部11で分断された、吸収体4が介在しない部分では、トップシート3とバックシート2とが接合されていない。
【0057】
前記分断部11のナプキン長手方向の長さLは任意であるが、この長さLが短すぎると臀部の動きに追従する機能が損なわれ、長すぎると吸収体4の全体的な剛性が低下し、吸収性能や装着感が損なわれるため、30~150mmとするのがよい。
【0058】
前記分断部11を前記切欠部11aで形成した場合、分断幅の最大値Mは任意であるが、この幅Mが小さすぎると分断された左右の吸収体部分の移動可能な距離が小さく、臀部の動きに追従しにくくなり、大きすぎると体液の吸収性能が低下するため、5~30mmとするのがよい。
【0059】
図示例では、前記分断部11を幅方向中央部に1本設けることにより、吸収体4の後端部が2つの部分に分断されているが、前記分断部11を更にその両側にそれぞれ1本ずつ又は複数本ずつ設けることにより、吸収体4の後端部が4つ以上に分断されるようにしてもよい。
【0060】
図1に示されるように、前記分断部11によって分断された左右の吸収体部分の肌当接面に、非肌側に窪む圧搾溝14を形成するのが好ましい。これにより、前記分断部11を設けることによって剛性が低下した吸収体4の後端部が補強され、吸収体4の強度が保持される。前記圧搾溝14は、吸収体4のみを窪ませて形成してもよいし、トップシート3の肌当接面から吸収体4にかけて積層された部材を一体的に窪ませて形成してもよい。前記圧搾溝14の平面形状としては特に制限はないが、例えば、図1に示されるように、分断部11の基端部から生理用ナプキン1の後方であって、幅方向外側に向けて斜めに直線状に延びるとともに、その先端部が、前記分断部11で分断された各吸収体部分の先端部において、幅方向内側に向けて渦巻状又は円弧状に湾曲する平面形状で形成することができる。分断部11の基端部から、前記分断部11で分断された各吸収体部分を斜めに横断する直線状の圧搾溝が配置されることにより、この吸収体部分の基端部から後方の所定範囲が補強されるとともに、その先端に渦巻状又は円弧状の湾曲線からなる圧搾溝が配置されることにより、この吸収体部分の先端部が補強される。
【0061】
図5に示されるように、前記分断部11で分断された吸収体部分の基端部に、幅方向に延びる易変形部15を設けてもよい。前記易変形部15は、吸収体4の肌側面に非肌側に窪ませた圧搾部又はパルプの積繊量を低減した薄肉部によって形成したものである。前記易変形部15を設けることにより、分断部11で分断された吸収体部分が、前記易変形部15を基軸として変形しやすくなり、この部分が臀部の動きに追従して肌面に密着しやすくなる。
【0062】
前記易変形部15は、図5(A)に示されるように、線状の圧搾部又は薄肉部によって形成することができる。この形態では、前記易変形部15を基端として、分断部11で分断された吸収体部分が上下に(肌側及び非肌側に)変形しやすくなる。この形態における前記易変形部15の幅は、1~4mmとするのがよい。
【0063】
また、前記易変形部15は、図5(C)に示されるように、ある程度の幅を有する圧搾部又は薄肉部によって形成してもよい。この形態では、図5(A)に示される形態と同様に、前記易変形部15を基端として、分断部11で分断された吸収体部分が上下に変形しやすくなるとともに、易変形部15がある程度の幅を有しているため、分断部分が図中の矢印で示されるように回転方向にも揺動するようになる。このため、臀部の複雑な動きにもフレキシブルに対応でき、より確実に生理用ナプキン1の表面が臀部に密着した状態が維持できる。この形態における前記易変形部15の幅は、5~10mmとするのがよい。また、前記分断部11で分断された各吸収体部分が揺動変形しやすいように、前記易変形部15は、パルプの積繊量を低減した薄肉部によって形成するのがより好ましい。
【0064】
なお、前記易変形部15は、分断部11の基端部から吸収体4の側縁に至る吸収体4の全幅に亘って連続的に設けるのが好ましいが、前記分断部11や吸収体4の側縁から所定の離隔距離を空けて配置したり、圧搾部又は薄肉部を断続的に設けたりしてもよい。
【0065】
前記摩擦低減層10は、接触する2つの物体の間に存在させることによって、その2つの物体間の摩擦又は摩擦力を低減できる機能を有する層である。本形態では、バックシート2と吸収体4(被包シート5)との間の摩擦が、これらに摩擦低減層10を設けない場合の両者の摩擦と比べて小さくなるように構成された層とすることができる。
【0066】
前記摩擦低減層10は、図3に示されるように、バックシート2及び吸収体4(被包シート5)の少なくとも一方に、摩擦低減処理を施すことによって得ることができる。図3に示される例では、摩擦低減層10は、バックシート2の肌側面にのみ形成されているが、バックシート2の肌側面及び吸収体4の非肌側面のいずれか一方の面又は両方の面に形成することができる。
【0067】
摩擦低減処理は、例えば、滑性付与可能な物質を含む材料(組成物)、又は滑性付与可能な物質からなる材料を塗布することによって行うことができる。滑性付与可能な物質としては、シリコーン樹脂、フッ素樹脂、ポリアセタール樹脂等の有機物質、タルク、シリカ、マイカ等の無機物質等が挙げられる。塗布される材料の形態は限定されず、溶液、エマルジョン、サスペンション等であってよいし、粉末状態であってもよい。摩擦低減処理により形成される摩擦低減層10の量は0.1~30.0g/m2程度(乾燥状態)であってよい。
【0068】
前記摩擦低減層10の変形例として、図6に示されるように、バックシート2や吸収体4とは別体のシート体によって形成することもできる。この場合の摩擦低減層10の材料としては、バックシート2と吸収体4(被包シート5)との間の摩擦を低減して、両者を接触面に沿った方向に相対的にスライド可能にすることができるものであれば、特に限定されない。例えば、摩擦低減層10は、基材シート10bの少なくとも一方の面の少なくとも一部に、摩擦低減処理を施して摩擦低減処理部10aを形成して成るシート状体であってよい。
【0069】
シート状体としての摩擦低減層10は、図6(A)に示されるように、摩擦低減処理部10aが、基材シート10bのバックシート2側に設けられたものであってよい。これにより、バックシート2の肌側の面と摩擦低減層10の非肌側の面(摩擦低減処理部10a)とを相対的にスライドさせやすくなる。
【0070】
なお、図6(A)の例では、摩擦低減層10の肌側の面は、吸収体4(被包シート5)と接着されていてもよいし、されていなくてもよい。接着されていることで、生理用ナプキン1に大きな力がかかった場合でも、別体である摩擦低減層10の位置ズレを防止することができる。
【0071】
図6(B)及び(C)に、シート状体である摩擦低減層10の変形例を示す。図6(B)に示されるように、摩擦低減層10は、摩擦低減処理部10aが基材シート10bの肌側に設けられたものであってもよい。図6(B)に示される例では、吸収体4の下着側の面と摩擦低減層10の肌側の面とを相対的にスライドさせやすくなる。
【0072】
なお、図6(B)の例でも、摩擦低減層10の下着側(バックシート2側)の面は、バックシート2と接着されていてもよいし、されていなくてもよい。接着されていることで、生理用ナプキン1に大きな力がかかった場合でも、別体である摩擦低減層10の位置ズレを防止することができる。
【0073】
また、図6(C)に示されるように、摩擦低減層10は、摩擦低減処理部10aが、基材シート10bの肌側及び非肌側の両面に設けることもできる。これにより、基材シート10bの両面での摩擦を低減することができる。本例の場合には、摩擦低減層10は、吸収体4(被包シート5)の非肌側面及びバックシート2の肌側面のうち、摩擦低減処理部10aとの摺動摩擦が低い方に対してスライドする。本例では、上述の相対的なスライドが、摩擦低減層10の吸収体4側及びバックシート2側の少なくともどちらかでできる。
【0074】
前記基材シート10bとしては、熱可塑性樹脂、若しくは熱可塑性性樹脂の組み合わせによって形成されたフィルム、織布若しくは不織布等の繊維を含む面状体、パルプを含む面状体、又はこれらの積層体等を用いることができる。基材シート10bの材料として用いられる熱可塑性樹脂としては、ポリエチレン、ポリプロピレン等のオレフィン、ポリエステル、ポリビニルアルコール等が挙げられ、安価で加工性が良好であることからポリエチレンが好ましい。
【0075】
図7に、摩擦低減層10のさらに別の変形例を示す。図7に示されるように、摩擦低減層10全体を、シリコーン樹脂、フッ素樹脂、ポリアセタール樹脂等の滑性付与可能な物質を含む材料又は滑性付与可能な物質からなる材料で構成されたシート状体とすることもできる。その場合、シリコーン樹脂又はフッ素樹脂からなるシートであると好ましい。この例では、摩擦低減層10の厚さ方向にわたって、ほぼ均一な材料から形成することができるので、装着中に摩擦低減層10の表面に何らかの理由で剥がれたりした場合であっても、層として摩擦低減の作用が失われにくい。
【0076】
図3図6及び図7のいずれの例においても、摩擦低減層10又は摩擦低減処理部10aは、連続して設けられていてもよいし、不連続的に、すなわち複数の領域に分けられて並べて設けられていてもよい。
【0077】
摩擦低減層10のバックシート2に対する静摩擦係数は、同じ条件で測定した吸収体4のバックシート2に対する静摩擦係数の98%以下であると好ましく、90%以下であるとより好ましく、75%以下であるとさらに好ましく、60%以下であるとさらに好ましい。また、吸収体4の、摩擦低減層10に対する静摩擦係数は、同じ条件で測定した吸収体4の、バックシート2に対する静摩擦係数の90%以下であると好ましく、80%以下であるとより好ましく、65%以下であるとさらに好ましく、50%以下であるとさらに好ましい。
【0078】
摩擦低減層10のバックシート2に対する動摩擦係数は、同じ条件で測定した吸収体4のバックシート2に対する動摩擦係数の98%以下であると好ましく、90%以下以下であるとより好ましく、75%以下であるとさらに好ましく、60%以下であるとさらに好ましい。また、吸収体4の摩擦低減層10に対する動摩擦係数は、同じ条件で測定した吸収体4のバックシート2に対する動摩擦係数の80%以下であると好ましく、50%以下であるとより好ましく、30%以下であるとさらに好ましく、10%以下であるとさらに好ましく、5%以下であるとさらに好ましい。
【0079】
図3図6及び図7の例ではいずれも、摩擦低減層10は1層であるが、摩擦低減層10は2層以上設けられていてもよい。その場合、上述の摩擦低減層10の構成のうち2以上を任意に組み合わせることができる。
【0080】
また、摩擦低減層10の厚みは、50~1000μm程度であってよい。摩擦低減層10が、バックシート2及び吸収体4の少なくとも一方に形成される場合(図3)には、50~500μmとすることが好ましい。また、摩擦低減層10がシート状体である場合(図6及び図7)には、その厚み(複数のシート状体が含まれる場合はその合計)は100~1000μmとすることが好ましい。
【0081】
前記摩擦低減層10がシリコーン樹脂等を塗布する摩擦低減処理を施すことによって形成される場合、シリコーン樹脂等がバックシート2内部に浸透することを防止して、バックシート2表面に摩擦低減層10が形成されるようにするため、バックシート2として非通気性のフィルムを用いるのが好ましい。
【0082】
前記トップシート3(セカンドシート6)と吸収体4(被包シート5)との間の接着領域は、吸収体4のトップシート3対向面の全面に接着剤を塗布することにより接着してもよいし、吸収体4のトップシート3対向面のうち、前記分断部11が設けられた後端部を含む長手方向後方側の範囲をトップシート3に接合しない非接着領域とし、これより長手方向前方側の範囲を接着剤の塗布などによって接着した接着領域としてもよい。長手方向後方部が非接着領域とされることにより、前記分断部11で分断された吸収体部分がよりフレキシブルに動きやすくなり、臀部の動きに追従しやすくなる。
【0083】
前記ズレ止め粘着剤層8は、図2に示されるように、生理用ナプキン1の長手方向に沿って、前記分断部11の両側に1条ずつ設けられており、前記分断部11より前側の領域から、前記分断部11で分断された吸収体部分と重なる領域にまで延在して設けるのが好ましい。これにより、この分断部11で分断された吸収体部分の下着とバックシート2とが固定され、着用者の身体の動きによって下着が動いたとき、前記吸収体部分がバックシート2に対して滑りやすくなる。
【符号の説明】
【0084】
1…生理用ナプキン、2…バックシート、3…トップシート、4…吸収体、5…被包シート、6…セカンドシート、7…サイドシート、8…ズレ止め粘着剤層、9…ウイング用粘着剤層、10…摩擦低減層、11…分断部、12…全周シール部、13…非接合領域、14…圧搾溝、15…易変形部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7