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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024045869
(43)【公開日】2024-04-03
(54)【発明の名称】基板処理装置および基板処理方法
(51)【国際特許分類】
   H01L 21/304 20060101AFI20240327BHJP
   H01L 21/673 20060101ALI20240327BHJP
【FI】
H01L21/304 651Z
H01L21/304 648A
H01L21/68 U
【審査請求】未請求
【請求項の数】14
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022150929
(22)【出願日】2022-09-22
(71)【出願人】
【識別番号】000207551
【氏名又は名称】株式会社SCREENホールディングス
(74)【代理人】
【識別番号】100105935
【弁理士】
【氏名又は名称】振角 正一
(74)【代理人】
【識別番号】100136836
【弁理士】
【氏名又は名称】大西 一正
(72)【発明者】
【氏名】墨 周武
【テーマコード(参考)】
5F131
5F157
【Fターム(参考)】
5F131AA02
5F131AA03
5F131BA32
5F131BA33
5F131CA09
5F131CA12
5F131DA02
5F131DA05
5F131DA33
5F131DA42
5F131EA06
5F131EA17
5F131EB54
5F131EB64
5F131EB75
5F131EC24
5F131FA13
5F131FA14
5F131FA32
5F131GA05
5F131GA26
5F131GA44
5F131GA66
5F131GA94
5F157AA09
5F157AB02
5F157AB14
5F157AB35
5F157AC03
5F157AC15
5F157CB14
5F157CB26
5F157CB27
5F157CF22
5F157CF92
5F157CF93
5F157DA21
5F157DB32
5F157DB51
5F157DC90
(57)【要約】
【課題】処理流体によって基板から液体を除去した際に、当該液体が基板に再付着するのを防止する。
【解決手段】本発明に係る基板処理装置は、平板形状を有し、その上面の基板載置面に載置される基板を支持する支持トレイと、基板を支持する支持トレイを収容可能な内部空間を有するチャンバーと、内部空間に処理流体を供給する流体供給部とを備えている。支持トレイは、上面が液膜で覆われた状態の基板を水平姿勢から所定の角度傾けた状態で支持する。
【選択図】図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板を超臨界状態の処理流体により処理する基板処理装置において、
平板形状を有し、その上面の基板載置面に載置される前記基板を支持する支持トレイと、
前記基板を支持する前記支持トレイを収容可能な内部空間を有するチャンバーと、
前記内部空間に前記処理流体を供給する流体供給部と
を備え、
前記支持トレイは、上面が液膜で覆われた状態の前記基板を水平姿勢から所定の角度傾けた状態で支持する、基板処理装置。
【請求項2】
前記支持トレイは、上面視において前記基板の周縁部の少なくとも一部を前記支持トレイの外縁よりも外側へ突出させた状態で、かつ、突出する前記周縁部に向かって前記基板が傾くように前記基板を支持する、請求項1に記載の基板処理装置。
【請求項3】
前記基板載置面に、前記液膜を構成し前記基板から落下する液体を前記基板載置面から前記支持トレイより下方に案内する排出案内部位が設けられる、請求項1に記載の基板処理装置。
【請求項4】
前記支持トレイの上面に、前記基板を収容可能な平面サイズを有し下方へ後退した窪みが設けられ、前記窪みの平坦な底面が前記基板載置面をなし、前記底面のうち少なくとも一部が前記支持トレイの外縁まで延びて前記支持トレイの側面に接続しており、
前記支持トレイは、前記周縁部のうち前記底面と前記側面との接続部分の上方に位置する部位に向かって前記基板が傾くように前記基板を支持し、前記接続部分が前記排出案内部位をなす、請求項3に記載の基板処理装置。
【請求項5】
前記排出案内部位は、前記基板載置面から前記支持トレイの下面に貫通する貫通孔である、請求項3に記載の基板処理装置。
【請求項6】
前記排出案内部位は、前記基板載置面から前記支持トレイの側面に向かう下り勾配を有する傾斜面である、請求項3に記載の基板処理装置。
【請求項7】
前記基板載置面が水平面に対し傾斜している、請求項1に記載の基板処理装置。
【請求項8】
前記支持トレイには、前記基板の下面に部分的に当接して、前記基板を前記支持トレイの前記上面から上方へ離間させた状態で支持する支持部が複数設けられる、請求項1ないし7のいずれかに記載の基板処理装置。
【請求項9】
複数の前記支持部の少なくとも1つにおいて、前記基板載置面からの高さが他の前記支持部とは異なる、請求項8に記載の基板処理装置。
【請求項10】
前記チャンバーの側面に前記内部空間と外部空間とを連通させる開口が設けられ、
前記開口を閉塞する蓋部材と、前記開口に対して前記蓋部材を進退移動させる進退機構とをさらに備え、
前記支持トレイが前記蓋部材と一体的に結合され、前記蓋部材が前記開口を閉塞するとき前記支持トレイが前記内部空間に収容される、請求項1ないし7のいずれかに記載の基板処理装置。
【請求項11】
前記所定の角度は、0.5度より大きく5度より小さい、請求項1ないし7のいずれかに記載の基板処理装置。
【請求項12】
上面に液膜が形成された基板を平板形状の支持トレイの上面に載置してチャンバーの内部空間に収容する工程と、
前記内部空間に前記処理流体を供給して、超臨界状態の前記処理流体により前記基板を処理する工程と
を備え、
前記支持トレイは、上面が液膜で覆われた状態の前記基板を水平姿勢から所定の角度傾けた状態で支持する、基板処理方法。
【請求項13】
前記処理流体は気体または液体の状態で前記内部空間に導入され、前記内部空間内で超臨界状態に転換される、請求項12に記載の基板処理方法。
【請求項14】
前記処理流体は二酸化炭素であり、前記液膜を構成する液体が有機溶媒である、請求項12または13に記載の基板処理方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、液体が付着した基板を超臨界状態の処理流体によって処理する基板処理装置および基板処理方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
基板を液体により湿式処理すると、当該基板の上面に液体が付着する。この湿式処理後に、当該基板を乾燥させる基板処理装置として、例えば特許文献1に記載の装置が知られている。この装置では、平板状の支持トレイに浅い窪みが設けられ、その窪みの中で、基板が支持トレイの上面との間に微小なギャップを持ちつつ水平姿勢に支持される。この状態で支持トレイが処理チャンバーに搬入され、チャンバー内が超臨界状態の処理流体により満たされることで基板が処理(超臨界処理)される。基板は、表面の露出を防止するために、また表面に微細パターンが形成されている場合にはその倒壊を防止するために、表面が液膜で覆われた状態で処理チャンバーに搬入されることがある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2021-009875号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
搬入時に基板を覆っていた液膜を構成する液体は、処理流体によって置換され基板表面から除去されると想定されている。しかしながら、液体の一部が基板下面と支持トレイ上面との間の狭いギャップに入り込んでしまうと、処理流体による置換が十分に進まず、結果として処理の最終段階に至っても液体がチャンバー内に残留し、基板に再付着するという問題が生じ得る。
【0005】
このことから、超臨界処理の初期段階で、液膜を形成する液体をより効率よく基板上から除去することが求められる。この点において、上記従来技術には改良の余地が残されていると言える。
【0006】
この発明は上記課題に鑑みなされたものであり、処理流体によって基板から液体を除去した際に、当該液体が基板に再付着するのを防止することができる基板処理装置および基板処理方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の一態様は、基板を超臨界状態の処理流体により処理する基板処理装置であって、平板形状を有し、その上面の基板載置面に載置される前記基板を支持する支持トレイと、前記基板を支持する前記支持トレイを収容可能な内部空間を有するチャンバーと、前記内部空間に前記処理流体を供給する流体供給部とを備え、前記支持トレイは、上面が液膜で覆われた状態の前記基板を水平姿勢から所定の角度傾けた状態で支持する、基板処理装置である。
【0008】
また、本発明の他の一の態様は、上面に液膜が形成された基板を平板形状の支持トレイの上面に載置してチャンバーの内部空間に収容する工程と、前記内部空間に前記処理流体を供給して、超臨界状態の前記処理流体により前記基板を処理する工程とを備え、前記支持トレイは、上面が液膜で覆われた状態の前記基板を水平姿勢から所定の角度傾けた状態で支持する、基板処理方法である。
【0009】
超臨界状態の処理流体を用いる超臨界処理では、チャンバー内部空間は、基板が搬入された直後の常圧の状態から、処理流体が導入されて最終的には超臨界状態の高圧状態にまで至る大きな圧力変化を示す。この過程において、基板上の液膜に処理流体が次第に溶け込むとともに圧力が高まることで、液膜を構成する液体の流動性が急速に高まり、ある時点で液膜を維持することができなくなる程度まで流動性が高くなる。このとき液体は基板から一気に流れ落ちるが、基板が水平姿勢に保持されている状態では、液体の落下がどこで始まるかを予測することができない。そのため、落下した液体が支持トレイ上から排除されず、基板と支持トレイとの隙間に回り込んでしまうことがある。
【0010】
これに対して、上記のように構成された発明では、チャンバー内で基板が傾いた状態で保持されているため、基板表面の傾きに沿って液体が流れ落ちる方向およびその位置が予測可能である。したがって、液体の落下が予測される位置において、液体の回り込みを回避するような措置を予め講じておくことが可能である。こうすることにより、基板から落下した液体が基板と支持トレイとの間に残留することを回避し、液体が基板に再付着するのを防止することができる。なお、基板の傾きは、常圧下では基板上に液膜を維持することができる程度の小さなものとされる。
【発明の効果】
【0011】
以上のように、本発明では、チャンバー内で基板を水平姿勢から傾いた状態で支持することにより、常圧下では液膜を維持していた液体が処理過程で基板から流れ落ちるときの方向および位置を予測可能である。このことから、基板から流れ落ちる液体を適切に排出し、当該液体が基板に再付着するのを防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】本発明を適用可能な基板処理装置の全体構成を示す図である。
図2】支持トレイの第1実施形態を示す図である。
図3】第1実施形態の支持トレイによる基板の支持態様を示す図である。
図4】第1実施形態の支持トレイによる基板支持における寸法関係を示す図である。
図5】第2実施形態の支持トレイによる基板の支持態様を示す図である。
図6】第3実施形態の支持トレイによる基板の支持態様を示す図である。
図7】第4実施形態の支持トレイによる基板の支持態様を示す図である。
図8】第5実施形態の支持トレイによる基板の支持態様を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明に係る基板処理装置のいくつかの実施形態について説明するが、各実施形態の間では後述する支持トレイの構造が一部異なるものの、基本的な装置構成は共通である。そこで、まず基板処理装置の全体構成について説明し、その後に、各実施形態の特徴部分について分説する。
【0014】
<装置の全体構成>
図1は本発明を適用可能な基板処理装置の全体構成を示す図である。この基板処理装置1は、例えば半導体基板のような各種基板の上面を超臨界流体により処理するための装置である。例えば、基板に付着する液体を超臨界処理流体により置換して基板を乾燥させる超臨界乾燥処理を、この基板処理装置1は実行可能である。以下の各図における方向を統一的に示すために、図1に示すようにXYZ直交座標系を設定する。ここで、XY平面は水平面であり、Z方向は鉛直方向を表す。より具体的には、(-Z)方向が鉛直下向きを表す。
【0015】
ここで、本実施形態における「基板」としては、半導体ウエハ、フォトマスク用ガラス基板、液晶表示用ガラス基板、プラズマ表示用ガラス基板、FED(Field Emission Display)用基板、光ディスク用基板、磁気ディスク用基板、光磁気ディスク用基板などの各種基板を適用可能である。以下では主として半導体ウエハの処理に用いられる基板処理装置を例に採って図面を参照して説明するが、上に例示した各種の基板の処理にも同様に適用可能である。
【0016】
基板処理装置1は、処理ユニット10、移載ユニット30、供給ユニット50および制御ユニット90を備えている。処理ユニット10は、超臨界乾燥処理の実行主体となるものであり、移載ユニット30は、図示しない外部の搬送装置により搬送されてくる未処理基板を受け取って処理ユニット10に搬入し、また処理後の基板を処理ユニット10から外部の搬送装置に受け渡す。供給ユニット50は、処理に必要な化学物質および動力を処理ユニット10および移載機構30に供給する。
【0017】
制御ユニット90は、これら装置の各部を制御して所定の処理を実現する。この目的のために、制御ユニット90には、各種の制御プログラムを実行するCPU91、処理データを一時的に記憶するメモリ92、CPU91が実行する制御プログラムを記憶するストレージ93、およびユーザーや外部装置と情報交換を行うためのインターフェース94などを備えている。後述する装置の動作は、CPU91が予めストレージ93に書き込まれた制御プログラムを実行し装置各部に所定の動作を行わせることにより実現される。
【0018】
処理ユニット10は、台座11の上に処理チャンバー12が取り付けられた構造を有している。処理チャンバー12は、いくつかの金属ブロックの組み合わせにより構成され、その内部が空洞となって処理空間SPを構成している。処理対象の基板Sは処理空間SP内に搬入されて処理を受ける。処理チャンバー12の(-Y)側側面には、X方向に細長く延びるスリット状の開口121が形成されており、開口121を介して処理空間SPと外部空間とが連通している。
【0019】
処理チャンバー12の(-Y)側側面には、開口121を閉塞するように蓋部材13が設けられている。蓋部材13の(+Y)側側面には平板状の支持トレイ15が水平姿勢で取り付けられており、支持トレイ15の上面は基板Sを載置可能な支持面となっている。蓋部材13は図示を省略する支持機構により、Y方向に水平移動自在に支持されている。
【0020】
蓋部材13は、供給ユニット50に設けられた進退機構53により、処理チャンバー12に対して進退移動可能となっている。具体的には、進退機構53は、例えばリニアモーター、直動ガイド、ボールねじ機構、ソレノイド、エアシリンダー等の直動機構を有しており、このような直動機構が蓋部材13をY方向に移動させる。進退機構53は制御ユニット90からの制御指令に応じて動作する。
【0021】
図1に点線で示すように、蓋部材13が(-Y)方向に移動することにより、支持トレイ15が処理空間SPから開口121を介して外部へ引き出されると、支持トレイ15へのアクセスが可能となる。すなわち、支持トレイ15への基板Sの載置、および支持トレイ15に載置されている基板Sの取り出しが可能となる。一方、蓋部材13が(+Y)方向に移動することにより、図1に実線で示すように、支持トレイ15は処理空間SP内へ収容される。支持トレイ15に基板Sが載置されている場合、基板Sは支持トレイ15とともに処理空間SPに搬入される。
【0022】
蓋部材13が(+Y)方向に移動し開口121を塞ぐことにより、処理空間SPが密閉される。なお、図示を省略しているが、蓋部材13の(+Y)側側面と処理チャンバー12の(-Y)側側面との間にはシール部材が設けられ、処理空間SPの気密状態が保持される。また、図示しないロック機構により、蓋部材13は処理チャンバー12に対して固定される。このようにして処理空間SPの気密状態が確保された状態で、処理空間SP内で基板Sに対する処理が実行される。
【0023】
液体の表面張力に起因するパターン倒壊を防止しつつ基板を乾燥させることを主たる目的とする超臨界乾燥処理においては、基板Sは、その上面Saが露出してパターン倒壊が発生するのを防止するために、上面Saが液膜で覆われた状態で搬入される。液膜を構成する液体としては、例えばイソプロピルアルコール(IPA)、アセトン等の表面張力が比較的低い有機溶剤を好適に用いることができる。
【0024】
この実施形態では、供給ユニット50に設けられた流体供給部57から、超臨界処理に利用可能な物質の流体、例えば二酸化炭素が、気体または液体の状態で処理ユニット10に供給される。二酸化炭素は比較的低温、低圧で超臨界状態となり、また基板処理に多用される有機溶剤をよく溶かす性質を有するという点で、超臨界乾燥処理に好適な化学物質である。
【0025】
流体は処理空間SPに充填され、処理空間SP内が適当な温度および圧力に到達すると、流体は超臨界状態となる。こうして基板Sが処理チャンバー12内で超臨界流体により処理される。供給ユニット50には流体回収部55が設けられており、処理後の流体は流体回収部55により回収される。流体供給部57および流体回収部55は制御ユニット90により制御されている。
【0026】
移載ユニット30は、外部の搬送装置と支持トレイ15との間における基板Sの受け渡しを担う。この目的のために、移載ユニット30は、本体31と、昇降部材33と、ベース部材35と、それぞれが複数設けられたリフトピン37とを備えている。昇降部材33はZ方向に延びる柱状の部材であり、本体31によりZ方向に移動自在に支持されている。
【0027】
昇降部材33の上部には略水平の上面を有するベース部材35が取り付けられており、ベース部材35の上面から上向きに、複数のリフトピン37が立設されている。リフトピン37の各々は、その上端部が基板Sの下面に当接することで基板Sを下方から水平姿勢に支持する。基板Sを安定的に支持するために、上端部の高さが互いに等しい3以上のリフトピン37が設けられることが望ましい。
【0028】
昇降部材33は、供給ユニット50に設けられた昇降制御部51により制御されて昇降移動可能となっている。具体的には、移載ユニット30の本体31には例えばリニアモーター、直動ガイド、ボールねじ機構、ソレノイド、エアシリンダー等の直動機構(図示省略)が設けられており、このような直動機構が昇降制御部51に制御されて昇降部材33をZ方向に移動させる。昇降制御部51は制御ユニット90からの制御指令に応じて動作する。
【0029】
昇降部材33の昇降によりベース部材35が上下動し、これと一体的に複数のリフトピン37が上下動する。これにより、移載ユニット30と支持トレイ15との間での基板Sの受け渡しが実現される。具体的は以下の通りである。
【0030】
後述するように、支持トレイ15には、移載ユニット30のリフトピン37に対応する貫通孔が設けられている。すなわち、支持トレイ15が処理チャンバー12から引き出されたときに各リフトピン37の真上に対応する位置のそれぞれに、貫通孔が形成されている。昇降部材33の昇降によりベース部材35が上昇すると、リフトピン37は支持トレイ15の貫通孔を通ってその先端が支持トレイ15の上面よりも高い位置まで到達する。この状態で、外部の搬送手段、例えば基板を保持可能なハンドを有する搬送ロボットにより搬送されてきた未処理の基板Sがリフトピン37に受け渡される。
【0031】
基板Sを支持するリフトピン37が下降すると基板Sも下降し、基板Sが支持トレイ15の上面に接触した状態からさらにリフトピン37が下降することで、基板Sはリフトピン37から支持トレイ15に受け渡されて、支持トレイ15により支持された状態となる。このようにして、基板処理装置1への基板Sの搬入が実現される。最終的にリフトピン37は、蓋部材13の開閉動作に干渉しない位置まで下降する。
【0032】
基板処理装置1からの処理済み基板Sの搬出は、上記とは逆の動作により実現される。すなわち、基板Sが支持トレイ15に支持された状態でリフトピン37が上昇し、基板Sを持ち上げる。こうしてできた基板Sの下面と支持トレイ15の上面との間に搬送ロボットのハンドを進入させて、基板Sをリフトピン37から搬送ロボットに受け渡すことができる。
【0033】
以上のように、この基板処理装置1では、基板Sに対する超臨界乾燥処理が行われる。この処理の一連の流れは以下の通りである。まず、上面Saが液膜で覆われた基板Sが外部から搬入され、支持トレイ15に載置される。支持トレイ15が処理チャンバー12の内部空間SPに進入することで、基板Sが内部空間SPに収容される。そして、蓋部材13により内部空間SPが閉塞された状態で、流体供給部57から気体または液体状の処理流体が内部空間SPに導入される。処理流体が内部空間SPで加圧されて超臨界状態となり、これにより基板S上の液体が超臨界処理流体により置換される。流体供給部57からの処理流体の供給および流体回収部55による排出を一定期間継続することで、基板Sから離脱した液体は排出される。最終的に、処理流体が超臨界状態から液相を介さずに気相に相転移し排出されることで、基板Sは乾燥状態となる。
【0034】
次に、上記した基板処理装置1における支持トレイ15のいくつかの実施形態(支持トレイ151~155)について説明する。各実施形態の間では支持トレイの構造が異なっているが、その他の点では共通しており、その動作も上記した通りのものである。なお、以下の各実施形態の説明において、構造や機能が共通または類似する構成については共通のまたは対応する符号を付し、それらについては説明を繰り返さないこととする。また、複数の図面間で相互に対応関係が明らかな構成については、一部の図面における符号の記載を省略することがある。
【0035】
<第1実施形態>
図2は支持トレイの第1実施形態を示す図である。第1実施形態の支持トレイ151は、図2(a)に示すように、平板状の本体1510の水平かつ平坦な上面1511に、基板Sの平面サイズに対応した、より具体的には円形の基板Sの直径より僅かに大きい直径を有する窪み1512が設けられた概略外形を有している。窪み1512の底面1513は水平面となっている。
【0036】
なお、窪み1512は部分的に支持トレイ151の側面1514まで延びている。つまり、窪み1512の側壁面は円形ではなく、部分的に切り欠かれている。このため、この切り欠き部分1515では、窪み1512の底面1513の一部は直接側面1514に接続している。この例では、支持トレイ151のX側両端部および(+Y)側端部にこのような切り欠き1515が設けられており、これらの部位において、底面1513が側面1514に直接接続している。
【0037】
また、底面1513のうち移載ユニット30のリフトピン37に対応する位置には、リフトピン37を挿通させるための貫通孔1514が穿設されている。貫通孔1514を通ってリフトピン37が昇降することで、基板Sが窪み1512に収容された状態と、これより上方へ持ち上げられた状態とが実現される。
【0038】
窪み1512の周縁部には複数の支持ピン16が配置されている。支持ピン16の配設数は任意であるが、基板Sを安定的に支持するという点からは3以上であることが望ましい。図2(b)および図2(c)に示すように、支持ピン16は、高さ規制部位161と水平位置規制部位162とを有している。
【0039】
高さ規制部位161は、上面が平坦となっており、基板Sの下面Sbの周縁部に当接することで、基板Sを支持するとともにその高さ方向(Z方向)における位置を規制する。一方、水平位置規制部位162は、高さ規制部位161の上端よりも上方まで延びており、基板Sの側面に当接することで、基板Sの水平方向(XY方向)における位置を規制する。このような支持ピン16により、基板Sは、窪み1512内の所定の位置に、かつ底面1513とは所定のギャップを隔てた状態で支持される。
【0040】
図3は第1実施形態の支持トレイによる基板の支持態様を示す図である。図3(a)の上面図に示すように、この例では3つの支持ピン16a,16b,16cが等角度間隔で配置されている。支持トレイ151上において、基板Sは、支持ピン16a,16b,16cにより規制される水平方向位置および高さで支持される。このとき基板Sは、一部が支持トレイ151の(+Y)側端部よりも(+Y)側にせり出した状態で支持される。
【0041】
また、各支持ピンのうち最も(-Y)側に配置された支持ピン16aは、他の支持ピン16b,16cよりも高い位置で基板Sを支持する。すなわち、支持ピン16aの高さ規制部位161aは、他の2つの支持ピン16b,16cの高さ規制部位161b,161cよりも高い位置にある。このため、図3(b)に示すように、基板Sは、(+Y)方向への下り勾配を有する傾いた状態で支持される。図3(a)および図3(b)における破線矢印は基板Sの傾斜方向を示している。
【0042】
処理チャンバー12の処理空間SPに搬入される基板Sは、その上面Saが液膜LFで覆われた状態となっている。液膜LFを構成する液体は、例えばIPAのような有機溶媒である。後述するように、基板Sの傾きは、基板Sが大気圧環境下で処理空間SPに搬入されるときでも液膜LFがその表面張力により維持される程度の小さなものである。したがって、図3(b)に示すように、基板Sは、処理空間SP内でもその上面Saが液膜LPで覆われた状態となっている。この状態から、処理流体が処理空間SPに導入される。
【0043】
処理流体が処理空間SPに導入され最終的には超臨界状態まで加圧される過程において、処理流体の一部が液膜LF中に溶け込み、これに伴って液膜LFを構成する液体の粘性が次第に低下し流動性が高まってくる。そして、液体の粘性がある程度まで低下すると、基板S上に液膜を維持することが不可能となり、図3(c)に示すように、液膜LFは破壊されて液体が基板Sから一気に流れ落ちる。図3(c)において符号Fは処理空間SPを満たす処理流体を示している。
【0044】
このとき、基板Sが(+Y)方向に傾き、かつその(+Y)側端部が支持トレイ151の端部よりも突出した状態で支持されているため、流れ落ちた液体は支持トレイ151に付着せず、処理空間SPの底面へ直接的に流下する。流下した液体は処理流体Fとともに下流側、すなわち(-Y)方向へ運ばれ、最終的に処理空間SPから排出される。これにより、液体が基板Sの下面Sbと窪み1512の底面1513との間に回り込むことが回避される。したがって、この実施形態では、基板Sと支持トレイ151との間に液体が残留し、これが基板Sに再付着するという問題を回避することができる。
【0045】
図4は第1実施形態の支持トレイによる基板支持における寸法関係を示す図である。図4(a)に示すように、一点鎖線で示される基板上面Saの法線が鉛直軸(Z軸)に対して有する傾きを符号θ、基板Sの下面Sbと支持トレイ151の上面(より詳しくは、窪み1512の底面1513)との最小ギャップを符号G、(+Y)側端部における基板Sの支持トレイ151に対するせり出し量を符号Pにより表す。なお、ここでは基板Sの傾き角θを鉛直軸に対する法線の傾きで表現しているが、これは上面Saの水平面に対する傾きと技術的に等価である。
【0046】
傾き角θの上限については、大気圧環境下で基板S上に液膜LFを維持可能であること、また処理空間SPへの搬入および処理空間SPからの搬出に支障を来さないこと、処理空間SP内での処理流体の流れを阻害しないこと等の条件によって制約される。これらの条件を考慮すると、本願発明者の知見では、傾き角θを例えば5度以下とすることが望ましい。
【0047】
一方、傾き角θの下限については次のように考えることができる。処理流体の臨界点に近い高圧環境下では、処理流体が溶け込んだ液体の粘性は極めて低い。このため、ごく僅かな基板Sの傾きにより液体の流下方向が決まる。したがって、原理的には、傾き角θはゼロより大きい任意の大きさとすることが可能である。
【0048】
しかしながら、この種の基板処理装置1の設置環境を考えたとき、設置時に十分な調整を行ったとしても、ある程度の傾きが残留することが避けられない。本願発明者の知見では、よく調整された状態での装置の傾きは最大で0.5度程度である。したがって、装置本体が仮にこのような傾きを有していたとしても所期の方向へ基板Sを傾かせておくために、傾き角θについては、装置本体の最大傾き角(0.5度)より大きくなるように設定されることが望ましい。このような場合でも有意な傾きを確保するためには、傾き角θを例えば1度以上とすることができる。したがって、傾き角θの適正範囲については、0.5度より大きく5度以下、より好ましくは1度以上5度以下とすることができる。
【0049】
支持トレイ151に対する基板Sのせり出し量Pについては、流れ落ちる液体を直接落下させるために、ゼロ以上、より好ましくはゼロより大きくしておけばよい。ただし、このようなせり出しを設けなくても、液体の残留を実質的になくすことは可能である。すなわち、この実施形態の支持トレイ151では、基板Sを収容するために上面1511に設けられた窪み1512はその一部が切り欠かれている。すなわち、窪み1512の底面1513が直接支持トレイ151の側面1514に接続している。したがって、基板Sから流下した液体の一部が窪み1512の底面1513に付着したとしても、処理の過程でこの接続部分から排出されると期待される。この効果をより高めるために、底面1513が、側面との接続部分に向かって部分的に傾斜していてもよい。
【0050】
また、基板Sと支持トレイ151との最小ギャップGは、0.5mmより大きいことが好ましい。本願発明者の知見では、ギャップが0.5mm以下であるとき、図4(b)に示すように、液膜を形成していた液体Lqが毛細管現象により基板Sの下面Sbに回り込み、支持トレイ151との隙間に残留付着する可能性が高くなる。
【0051】
超臨界状態の処理流体は液体Lqをよく溶かすが、このように狭い隙間に入り込んだ液体Lqは処理流体との接触面積が小さいため、それらを完全に処理流体で置換することは困難である。また可能であるにしても長い時間を要する。このようにして基板Sと支持トレイ151との隙間に液体が残留することが、基板Sへの液体の再付着の一因となる。最小ギャップGを0.5mmより大きくすることで、このような液体の回り込みを効果的に抑制することが可能である。
【0052】
従来技術では、基板が水平姿勢で保持されていることが前提となっているが、実際には、上記のように装置全体が僅かに傾いているケースや、各部品の加工および組み付けにおける公差の範囲内で支持トレイの上面が傾いているケース等があり得る。このため、高圧下で液体の粘性が低下したときに液体が流れ落ちる方向を制御することができず、また再現性もない。このようにして流出した液体が基板と支持トレイとの間に回り込むことになる。
【0053】
これに対して、本実施形態では、このような装置の傾きも加味して基板Sを所期の方向に傾かせておくことが可能であり、これにより基板S上で液膜が破れたときに液体が流れ落ちる方向および位置を制御することができる。したがって、当該位置で、流れ落ちる液体を排出するための手段を講じておくことで、液体の回り込みを未然に防止することが可能である。この実施形態では、液体が流れ落ちる方向における基板Sの端部を支持トレイ151よりも突出させておくことで、液体を支持トレイ151に接触させず直接下方へ落下させることができる。
【0054】
なお、ここで述べた傾き角θ、最小ギャップG、せり出し量Pについての考え方は、以下に説明する各実施形態においても同様に適用可能である。
【0055】
<第2実施形態>
図5は第2実施形態の支持トレイによる基板の支持態様を示す図である。より具体的には、図5(a)は第2実施形態の支持トレイ152の外観を示す図であり、図5(b)はそのA-A線断面図である。この実施形態では、支持トレイ152の(-X)側端部近くに設けられた支持ピン16bが、他の支持ピン16a,16cよりも高い位置で基板Sを支持するように構成されている。なお、2つの支持ピン16a,16cは、同じ高さで基板Sを支持してもよい。また、支持ピン16aが、支持ピン16bより低く、かつ支持ピン16cよりも高い位置で基板Sを支持してもよい。
【0056】
このような構成では、図5(a)および図5(b)に破線矢印で示すように、基板Sの上面Saは(+X)方向に向かって下り勾配を有する状態で支持されている。したがって、基板S上の液膜LFが破れるとき、液体Lqは基板Sの(+X)側端部から流れ落ちることになる。この場合も、図5(b)に示すように、支持トレイ152の(+X)側端部に切り欠き1526が設けられ、さらに支持トレイ152よりも基板Sが突出した状態とすることで、基板下面Sb側への液体の回り込みをより効果的に抑制することが可能である。一方で、支持トレイ152の(+Y)側端部においては、切り欠きは必須ではない。
【0057】
なお、この実施形態では基板Sを(+X)側に傾けているが、(-X)側に傾けるようにしても等価である。この場合には、支持トレイ152の(+X)端部近くにある支持ピン16cを、他の支持ピン16a,16bよりも高い位置で基板Sを支持するようにすればよい。
【0058】
<第3実施形態>
図6は第3実施形態の支持トレイによる基板の支持態様を示す図である。この実施形態の支持トレイ153では、3つの支持ピン16a,16b,16cのうち、最も(-Y)側にある支持ピン16aが、基板Sを、他の支持ピン16b,16cに対し相対的に低い位置で支持するように構成されている。したがって、基板Sは(-Y)側に向かう下り勾配を有する傾いた状態で支持される。これにより、基板S上の液体は(-Y)方向に流れ、基板Sの(-Y)側端部から支持トレイ153の上面1531に流れ落ちる。
【0059】
この液体が基板Sの下面側に回り込むのを防止するために、支持トレイ153の上面1531では、窪みを形成するための段差が廃止されており、さらに(-X)方向および(+X)方向に向かって下る傾斜が設けられている。基板Sから支持トレイ153に流下した液体はこの傾斜面1531に沿って流れ落ち、支持トレイ153の(-X)側および(+X)側端面から下方へ落下する。これにより、液体が基板Sと支持トレイ153との間に入り込むことが回避される。
【0060】
図6(c)は第3実施形態の変形例を示す図である。この変形例の支持トレイ153aでは、上面1531から下面に貫通する貫通孔1537が設けられている。また上面1531の傾斜は、基板Sから流下した液体をこの貫通孔1537に向けて案内するように設けられている。このような構成によれば、支持トレイ153に流れ落ちた液体をより効率よく下方へ落下させ、支持トレイ153の上面1531に残留することを防止することができる。
【0061】
第3実施形態およびその変形例では、基板S上の液体が(-Y)方向に流下する。液体が流下するとき、処理空間SP内は(-Y)方向に流れる処理流体で満たされているから、基板Sから離脱した液体はこの流れに沿ってさらに(-Y)方向へ、つまり基板Sから離れる方向へ運ばれ排出される。したがって、液体を(+Y)方向に流下させる場合よりも、基板Sへの液体の再付着の発生確率を低くすることができる。
【0062】
<第4実施形態>
図7は第4実施形態の支持トレイによる基板の支持態様を示す図である。上記の各実施形態では、支持ピン16(16a,16b,16c)それぞれの基板支持高さを異ならせることで基板Sを支持トレイ15上で傾いた状態に支持している。一方、第4実施形態の支持トレイ154では、上面1541に設けられた窪み1542の底面1543を傾斜面とすることで、各支持ピン16は同一構造であっても、基板Sを傾いた状態で支持することが可能である。
【0063】
この例では、図7(a)および図7(b)に破線矢印で示すように、窪み1542の底面1543が(+Y)方向に向かって傾斜する形状となっている。このような構造によっても、基板S上の液体を(+Y)方向に流下させ、基板Sの(+Y)側端部から下方へ落下させることができる。また、基板Sの下面側へ液体が回り込んだとしても、支持トレイ154の上面自体が傾いているため、傾斜方向に沿った液体の流下が期待できる。
【0064】
<第5実施形態>
図8は第5実施形態の支持トレイによる基板の支持態様を示す図である。この実施形態の支持トレイ155では、上記第4実施形態とは反対に、上面1551が(-Y)方向に向かって下る傾斜面となっている。このため、基板S上の液体は(-Y)方向に流れて支持トレイ155の上面1551に流れ落ちる。この場合にも、支持トレイ155の上面1551には、(-X)方向および(+X)方向への傾斜が設けられることがより望ましい。また液体を落下させるための貫通孔が設けられてもよい。
【0065】
<その他>
以上説明したように、上記各実施形態では、基板処理装置1が本発明の「基板処理装置」に相当しており、処理チャンバー12および蓋部材13が、それぞれ本発明の「チャンバー」および「蓋部材」として機能している。また、支持ピン16が本発明の「支持部」として機能している。また、処理空間SPが本発明の「内部空間」に相当している。
【0066】
また、第1実施形態の支持トレイ151では、窪み1512の底面1513が本発明の「基板載置面」に相当し、切り欠き1516が本発明の「排出案内部位」に相当している。また、第3実施形態の支持トレイ153およびその変形例153aでは、傾斜面1531および貫通孔1537が、本発明の「排出案内部位」に相当している。
【0067】
なお、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、その趣旨を逸脱しない限りにおいて上述したものに対して種々の変更を加えることが可能である。例えば、上記各実施形態では、支持トレイ15の上面に設けた支持ピン16により、基板Sを支持トレイ15の上面から離間させた状態で支持している。しかしながら、支持ピン16の設置に代えて、支持トレイの上面に突起部を設けて基板を支持するようにしてもよい。この場合、当該突起部が本発明の「支持部」に該当することとなる。
【0068】
また、上記実施形態では、支持トレイ15にリフトピン37を挿通させるための貫通孔が設けられており、この貫通孔は、支持トレイ15に付着した液体を排出する効果をも有するものである。ただし、支持トレイにこのような貫通孔を設けない構成であってもよい。むしろ、貫通孔からの排出が期待できないため液体の残留が生じやすくなることから、本発明の液体の残留防止作用はより有効に機能するものと考えられる。同様に、支持トレイに基板を収容するための窪みがあるか否かに関わらず、本発明は有効に機能する。
【0069】
また、上記実施形態における各種の化学物質、例えばIPAおよび二酸化炭素は、使用され得る物質の代表的な事例として挙げたものであり、本発明の適用対象がこれらの物質を使用した技術に限定されることを意味するものではない。
【0070】
以上、具体的な実施形態を例示して説明してきたように、本発明において、支持トレイは、上面視において基板の周縁部の少なくとも一部を支持トレイの外縁よりも外側へ突出させた状態で、かつ、突出する周縁部に向かって基板が傾くように基板を支持することができる。このような構成によれば、基板から流れ落ちる液体を支持トレイに接触させることなく、直接下方へ落下させることができ、基板と支持トレイとの間への液体の回り込みを効果的に抑制することができる。
【0071】
また例えば、基板載置面に、液膜を構成し基板から落下する液体を基板載置面から支持トレイより下方に案内する排出案内部位が設けられてもよい。基板から流れ落ちる液体が基板載置面に付着することを避けられない場合、このような排出案内部位を設けることで、基板載置面からの液体の排出を促進することが可能である。
【0072】
具体的には例えば、支持トレイの上面に、基板を収容可能な平面サイズを有し下方へ後退した窪みが設けられ、窪みの平坦な底面が基板載置面をなし、底面のうち少なくとも一部が支持トレイの外縁まで延びて支持トレイの側面に接続しており、支持トレイは、周縁部のうち底面と側面との接続部分の上方に位置する部位に向かって基板が傾くように基板を支持してもよく、この場合には接続部分が排出案内部位をなす。
【0073】
また例えば、排出案内部位は、基板載置面から支持トレイの下面に貫通する貫通孔として設けることができる。このような構成によれば、基板載置面に付着した液体を貫通孔に案内することで、速やかな排出を促すことができる。
【0074】
また例えば、排出案内部位は、基板載置面から支持トレイの側面に向かう下り勾配を有する傾斜面として設けることもできる。このような構成によれば、基板載置面に付着した液体が傾斜面に沿って流れ落ちることで、速やかな排出を促すことができる。
【0075】
また例えば、基板載置面自体が水平面に対し傾斜したものであってもよい。このような構成によれば、基板を基板載置面に平行に載置することによって、傾いた状態での支持が可能になる。また、付着した液体を傾斜面に沿って流下させ、基板載置面に残留するのを抑制することができる。
【0076】
また例えば、支持トレイには、基板の下面に部分的に当接して、基板を支持トレイの上面から上方へ離間させた状態で支持する支持部が複数設けられてもよい。このような構成によれば、基板の下面と支持トレイの上面との間に所定のギャップを設けた状態で安定的に基板を支持することが可能となる。
【0077】
この場合において、複数の支持部の少なくとも1つにおいて、基板載置面からの高さが他の支持部とは異なっていてもよい。このような構成によれば、支持部の高さを異ならせることで、基板を傾けて支持することができる。
【0078】
また、処理流体は気体または液体の状態で内部空間に導入され、内部空間内で超臨界状態に転換されてもよい。このような構成によれば、液膜を形成された基板が内部空間に収容された状態から加圧されて超臨界状態に至る過程の途中で、液膜を形成する液体の粘性が下がり、基板から一気に流れ落ちるタイミングが生じる。このように液体を一気に流下させることで、液体の残留を抑制することが可能になる。
【0079】
また例えば、処理流体は二酸化炭素であり、液膜を構成する液体が有機溶媒であってもよい。二酸化炭素は他の化学物質と比べて比較的低温、低圧で超臨界状態に遷移するので、この種の処理に好適に適用可能である。また、二酸化炭素は有機溶媒をよく溶かすため、これを置換する目的で用いられる処理流体として特に有効である。
【0080】
また、本発明に係る基板処理装置は、チャンバーの側面に内部空間と外部空間とを連通させる開口が設けられ、開口を閉塞する蓋部材と、開口に対して蓋部材を進退移動させる進退機構とをさらに備え、支持トレイが蓋部材と一体的に結合され、蓋部材が開口を閉塞するとき支持トレイが内部空間に収容される構成であってもよい。このような構成によれば、蓋部材の進退により支持トレイをチャンバーに対して出し入れさせることができ、また蓋部材は内部空間が高圧となるチャンバーを閉塞するためのものとして堅牢に構成されているため、支持トレイをしっかりと支持することが可能である。
【0081】
なお、本発明において、「所定の角度」は、例えば0.5度より大きく5度より小さい角度とすることができる。本願発明者の知見によれば、常圧環境下で基板上に液膜を維持することができ、高圧下では液体の流れ方向を制御することができ、かつ、装置本体の傾きの影響を受けない基板の傾き角度としては、0.5度より大きく5度以下とすることができ、より好ましくは1度以上5度未満とすることができる。
【産業上の利用可能性】
【0082】
この発明は、表面に液体が付着した基板を超臨界状態の処理流体によって処理する基板処理技術全般に適用することができる。
【符号の説明】
【0083】
1 基板処理装置
12 処理チャンバー(チャンバー)
13 蓋部材
15 支持トレイ
16 支持ピン(支持部)
53 進退機構
57 流体供給部
121 開口
1513 窪み(基板載置面)
1516 切り欠き(排出案内部位)
1531 傾斜面(排出案内部位)
1537 貫通孔(排出案内部位)
F 処理流体
LF 液膜
S 基板
SP 処理空間(内部空間)
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
【手続補正書】
【提出日】2023-08-23
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】請求項12
【補正方法】変更
【補正の内容】
【請求項12】
上面に液膜が形成された基板を平板形状の支持トレイの上面に載置してチャンバーの内部空間に収容する工程と、
前記内部空間に処理流体を供給して、超臨界状態の前記処理流体により前記基板を処理する工程と
を備え、
前記支持トレイは、上面が液膜で覆われた状態の前記基板を水平姿勢から所定の角度傾けた状態で支持する、基板処理方法。