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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024045870
(43)【公開日】2024-04-03
(54)【発明の名称】基板処理装置
(51)【国際特許分類】
   H01L 21/304 20060101AFI20240327BHJP
【FI】
H01L21/304 651Z
H01L21/304 648K
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022150930
(22)【出願日】2022-09-22
(71)【出願人】
【識別番号】000207551
【氏名又は名称】株式会社SCREENホールディングス
(74)【代理人】
【識別番号】100105935
【弁理士】
【氏名又は名称】振角 正一
(74)【代理人】
【識別番号】100136836
【弁理士】
【氏名又は名称】大西 一正
(72)【発明者】
【氏名】墨 周武
【テーマコード(参考)】
5F157
【Fターム(参考)】
5F157AA09
5F157AB02
5F157AB13
5F157AB33
5F157AC03
5F157AC15
5F157CB14
5F157CB26
5F157CB27
5F157CF16
5F157CF22
5F157CF24
5F157DA21
5F157DB32
5F157DB37
5F157DC90
(57)【要約】
【課題】処理容器の処理空間で基板を処理流体によって処理する基板処理技術において、基板の中央部で生じやすい汚染物の付着やパターン倒壊を効果的に防止する。
【解決手段】本発明に係る基板処理装置は、基板の上方および下方を通過した処理流体をそれぞれ個別に排出し、基板の上方を通過した処理流体を排出する上側排出流路には、基板よりも上方で処理空間に連通する上流部と、上流部に連通し上流部よりも流路断面積が大きいバッファ空間と、バッファ空間の両端部にそれぞれ設けられた1対の開口と流体排出部とを接続する下流部と、上流部とバッファ空間との接続部に設けられ、中央部の圧力損失を両端部における圧力損失よりも低くする整流部とを備えている。
【選択図】図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
上面に載置される基板を水平姿勢で支持する平板状の支持トレイと、
前記支持トレイとともに前記基板を収容可能な処理空間を有する処理容器と、
前記処理空間の一方端側から前記処理空間に超臨界処理用の処理流体を供給する流体供給部と、
前記基板を挟んで前記一方端とは反対の他方端側で前記処理空間と連通して設けられた排出流路を経由して前記処理流体を排出する流体排出部と
を備え、
前記処理流体の流通方向に垂直な方向のうち前記基板の主面に平行な方向を第1方向、前記流通方向および前記第1方向に垂直な方向を第2方向と定義するとき、
前記基板の上方を通過した前記処理流体と、前記支持トレイの下方を通過した前記処理流体とをそれぞれ個別に排出する前記排出流路が設けられ、そのうち前記基板の上方を通過した前記処理流体を排出する上側排出流路には、
前記基板よりも上方で前記処理空間に連通し、前記第1方向に沿った開口寸法が前記第2方向に沿った開口寸法よりも大きい流路断面を有する上流部と、
前記上流部に連通し前記上流部よりも流路断面積が大きいバッファ空間と、
前記バッファ空間の前記第1方向における両端部にそれぞれ設けられた1対の開口と前記流体排出部とを接続する下流部と、
前記上流部と前記バッファ空間との接続部に設けられ、前記第1方向における中央部の圧力損失を、両端部における圧力損失よりも低くする整流部と
を有する、基板処理装置。
【請求項2】
前記整流部では、前記中央部から前記両端部に向けて、前記第1方向に沿って前記排出流路の圧力損失が広義単調増加する、請求項1に記載の基板処理装置。
【請求項3】
前記整流部では、前記中央部から前記両端部に向けて、前記第2方向に沿った前記排出流路の開口寸法が広義単調減少する、請求項2に記載の基板処理装置。
【請求項4】
前記整流部では、前記排出流路の前記第1方向における中央から所定距離内の中央領域で前記開口寸法が狭義単調減少し、前記中央領域より外側では前記開口寸法が一定である、請求項3に記載の基板処理装置。
【請求項5】
前記処理容器の側面に前記処理空間と外部空間とを連通させる開口が設けられ、
前記開口を開閉する蓋部をさらに備え、
前記支持トレイは前記蓋部のうち前記開口を覆う面に取り付けられ、
前記支持トレイが前記処理空間に収容された状態で、前記処理空間に面する前記処理容器の内壁面のうち天井面と前記支持トレイの前記上面とで挟まれた空間が前記上流部をなす、請求項1ないし4のいずれかに記載の基板処理装置。
【請求項6】
前記処理容器には、前記処理空間となる第1の空洞と前記バッファ空間となる第2の空洞とが互いに連通して設けられるとともに、前記第1の空洞と前記第2の空洞との間を区画する隔壁がさらに設けられ、
前記蓋部と前記隔壁との隙間が前記接続部を構成するとともに、前記隔壁が前記整流部として機能する、請求項5に記載の基板処理装置。
【請求項7】
前記隔壁は、前記処理容器に対して着脱可能に設けられた隔壁整流部材である、請求項6に記載の基板処理装置。
【請求項8】
前記排出流路のうち前記支持トレイの下方を通過した前記処理流体を排出する下側排出流路には、
前記支持トレイよりも下方で前記処理空間に連通し、前記第1方向に沿った開口寸法が前記第2方向に沿った開口寸法よりも大きい流路断面を有する上流部と、
前記上流部に連通し前記上流部よりも流路断面積が大きいバッファ空間と、
前記バッファ空間の前記第1方向における両端部にそれぞれ設けられた1対の開口と前記流体排出部とを接続する下流部と
が設けられる、請求項1ないし4のいずれかに記載の基板処理装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、処理容器内で基板を処理流体によって処理する基板処理装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
半導体基板、表示装置用ガラス基板等の各種基板の処理工程には、基板の表面を各種の処理流体によって処理するものが含まれる。処理流体として薬液やリンス液などの液体を用いる処理は従来から広く行われているが、近年では超臨界流体を用いた処理も実用化されている。特に、表面に微細パターンが形成された基板の処理においては、液体に比べて表面張力が低い超臨界流体はパターンの隙間の奥まで入り込むため効率よく処理を行うことが可能であり、また乾燥時において表面張力に起因するパターン倒壊の発生リスクを低減することができる。
【0003】
例えば本願出願人が先に開示した特許文献1には、超臨界流体を用いて基板の乾燥処理を行う基板処理装置が記載されている。この特許文献1では、超臨界状態となる処理流体が導入される処理容器(高圧チャンバー)における、基板を処理した後の処理流体を排出する排出流路での流量バランスが問題とされている。具体的には、排出流路に流れ込む処理流体の量と、排出流路から排出される処理流体の量とのバランスが取れていないことが処理流体の逆流を生じさせ、このことが基板の再汚染を招くとして、排出流路に整流部を設けることが提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2022-083526号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1では、排出流路に整流部を設けることで、整流部に向けて流れ込む処理流体と整流部を通過した後の処理流体との間でバランスが調整される可能性が示されているものの、具体的な課題とそれを解決するための整流部の構成とについては詳しく記載されていない。例えば、特許文献1出願後に本願出願人が得た知見によれば、処理流体の逆流に起因する基板の汚染やパターン倒壊は、基板のうち、処理流体の流通方向に直交する幅方向における中央部で特に顕著であることがわかってきている。
【0006】
しかしながら、特許文献1には、このような課題およびそれを解決可能な整流部の構造に関して具体的な開示はなされていない。この点において、上記従来技術には改善の余地が残されているといえる。
【0007】
この発明は上記課題に鑑みなされたものであり、基板の中央部で生じやすい汚染物の付着やパターン倒壊を効果的に防止することのできる技術を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
この発明の一の態様は、上面に載置される基板を水平姿勢で支持する平板状の支持トレイと、前記支持トレイとともに前記基板を収容可能な処理空間を有する処理容器と、前記処理空間の一方端側から前記処理空間に超臨界処理用の処理流体を供給する流体供給部と、前記基板を挟んで前記一方端とは反対の他方端側で前記処理空間と連通して設けられた排出流路を経由して前記処理流体を排出する流体排出部とを備える基板処理装置である。ここで、前記処理流体の流通方向に垂直な方向のうち前記基板の主面に平行な方向を第1方向、前記流通方向および前記第1方向に垂直な方向を第2方向と定義するとき、前記基板の上方を通過した前記処理流体と、前記支持トレイの下方を通過した前記処理流体とをそれぞれ個別に排出する前記排出流路が設けられ、そのうち前記基板の上方を通過した前記処理流体を排出する上側排出流路には、前記基板よりも上方で前記処理空間に連通し、前記第1方向に沿った開口寸法が前記第2方向に沿った開口寸法よりも大きい流路断面を有する上流部と、前記上流部に連通し前記上流部よりも流路断面積が大きいバッファ空間と、前記バッファ空間の前記第1方向における両端部にそれぞれ設けられた1対の開口と前記流体排出部とを接続する下流部と、前記上流部と前記バッファ空間との接続部に設けられ、前記第1方向における中央部の圧力損失を、両端部における圧力損失よりも低くする整流部とを有している。
【0009】
このように構成された発明では、処理流体の排出流路に設けられた整流部は、排出流路の中央部で圧力損失が低く、両端部で圧力損失が高くなるように構成されている。そのため、バッファ空間に流れ込む処理流体では、両端部よりも中央部において流速が高く、また流量も多くなる。これにより、バッファ空間では中央部から両端部へ向かう処理流体の流れが形成される。
【0010】
詳しくは後述するが、基板の中央部において汚染物の付着等が起きやすいのは、基板と支持トレイとの間に入り込んだ処理流体の排出が進まず、汚染物質が混入した処理流体が基板の周辺に滞留することが原因と考えられる。そこで、上記のように排出流路の圧力損失に差を設けることで処理流体の流れをコントロールし、中央部からの排出を促進して滞留を防止することで、汚染物の付着やパターン倒壊等の処理不良を低減させることができる。
【発明の効果】
【0011】
上記のように、本発明によれば、排出流路の中央部と両端部との間で圧力損失に差を設けることで、中央部からの処理流体の排出を促進し、これにより基板の中央部で生じやすい汚染物の付着やパターン倒壊を効果的に防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】本発明に係る基板処理装置の第1実施形態の概略構成を示す図である。
図2】処理流体の流路の輪郭を示す模式図である。
図3】処理流体の流路を模式的に示す平面図である。
図4】排出流路の詳細構造を示す側面断面図である。
図5】処理チャンバの開口部周辺の構造を例示する図である。
図6】処理チャンバの開口部周辺の構造を例示する図である。
図7】隔壁の近傍での処理流体の流れを示す図である。
図8】第2実施形態の処理チャンバ開口部周辺の構造を例示する図である。
図9】整流部の他の構成を例示する図である。
図10】整流部の他の構成を例示する図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
図1は、本発明に係る基板処理装置の第1実施形態の概略構成を示す図である。この基板処理装置1は、例えば半導体基板のような各種基板の表面を超臨界流体により処理するための装置である。以下の各図における方向を統一的に示すために、図1に示すようにXYZ直交座標系を設定する。ここで、XY平面は水平面であり、Z方向は鉛直方向を表す。より具体的には、(-Z)方向が鉛直下向きを表す。
【0014】
ここで、本実施形態における「基板」としては、半導体ウエハ、フォトマスク用ガラス基板、液晶表示用ガラス基板、プラズマ表示用ガラス基板、FED(Field Emission Display)用基板、光ディスク用基板、磁気ディスク用基板、光磁気ディスク用基板などの各種基板を適用可能である。以下では主として半導体ウエハの処理に用いられる基板処理装置を例に採って図面を参照して説明するが、上に例示した各種の基板の処理にも同様に適用可能である。
【0015】
基板処理装置1は、処理ユニット10、供給ユニット50および制御ユニット90を備えている。処理ユニット10は、超臨界乾燥処理の実行主体となるものであり、供給ユニット50は、処理に必要な化学物質および動力を処理ユニット10に供給する。
【0016】
制御ユニット90は、これら装置の各部を制御して所定の処理を実現する。この目的のために、制御ユニット90には、各種の制御プログラムを実行するCPU91、処理データを一時的に記憶するメモリ92、CPU91が実行する制御プログラムを記憶するストレージ93、およびユーザや外部装置と情報交換を行うためのインターフェース94などを備えている。後述する装置の動作は、CPU91が予めストレージ93に書き込まれた制御プログラムを実行し装置各部に所定の動作を行わせることにより実現される。
【0017】
処理ユニット10は、処理チャンバ100を備えている。処理チャンバ100は、それぞれ金属ブロックにより形成された第1部材11、第2部材12および第3部材13を備えている。第1部材11と第2部材12とが図示しない結合部材により上下方向に結合され、その(+Y)側側面に、図示しない結合部材により第3部材13が結合されて、内部が空洞110となった構造の処理チャンバ100が構成される。この空洞110の内部空間が、基板Sに対する処理が実行される処理空間SPとなっている。処理対象の基板Sは処理空間SP内に搬入されて処理を受ける。処理チャンバ100の(-Y)側側面には、X方向に細長く延びるスリット状の開口部101が形成されており、開口部101を介して処理空間SPと外部空間とが連通している。
【0018】
処理チャンバ100の(-Y)側側面には、開口部101を閉塞するように蓋部材14が設けられている。蓋部材14の(+Y)側側面には平板状の支持トレイ15が水平姿勢で取り付けられており、支持トレイ15の上面は基板Sを載置可能な支持面となっている。より具体的には、支持トレイ15は、略平坦な上面151に基板Sの平面サイズより少し大きく形成された凹部152が設けられた構造を有している。この凹部152に基板Sが収容されることで、基板Sは支持トレイ15上で所定位置に保持される。基板Sは、処理対象となる表面(以下、単に「基板表面」ということがある)Saを上向きにして保持される。このとき、支持トレイ15の上面151と基板表面Saとが同一または略同一の平面をなしていることが好ましい。
【0019】
蓋部材14は図示を省略する支持機構により、Y方向に水平移動自在に支持されている。また、蓋部材14は、供給ユニット50に設けられた進退機構53により、処理チャンバ100に対して進退移動可能となっている。具体的には、進退機構53は、例えばリニアモータ、直動ガイド、ボールねじ機構、ソレノイド、エアシリンダ等の直動機構を有しており、このような直動機構が蓋部材14をY方向に移動させる。進退機構53は制御ユニット90からの制御指令に応じて動作する。
【0020】
蓋部材14が(-Y)方向に移動することにより、支持トレイ15が処理空間SPから開口部101を介して外部へ引き出されると、外部から支持トレイ15へのアクセスが可能となる。すなわち、支持トレイ15への基板Sの載置、および支持トレイ15に載置されている基板Sの取り出しが可能となる。一方、蓋部材14が(+Y)方向に移動することにより、支持トレイ15は処理空間SP内へ収容される。支持トレイ15に基板Sが載置されている場合、基板Sは支持トレイ15とともに処理空間SPに搬入される。
【0021】
液体の表面張力に起因するパターン倒壊を防止しつつ基板を乾燥させることを主たる目的とする超臨界乾燥処理においては、基板Sは、その表面Saが露出してパターン倒壊が発生するのを防止するために、表面Saが液膜で覆われた状態で搬入される。液膜を構成する液体としては、例えばイソプロピルアルコール(IPA)、アセトン等の表面張力が比較的低い有機溶剤を好適に用いることができる。
【0022】
蓋部材14が(+Y)方向に移動し開口部101を塞ぐことにより、処理空間SPが密閉される。蓋部材14の(+Y)側側面と処理チャンバ100の(-Y)側側面との間にはシール部材16が設けられ、処理空間SPの気密状態が保持される。シール部材16としては、弾性樹脂材料、例えばゴムにより形成された環状のものを用いることができる。また、図示しないロック機構により、蓋部材14は処理チャンバ100に対して固定される。このようにして処理空間SPの気密状態が確保された状態で、処理空間SP内で基板Sに対する処理が実行される。
【0023】
この実施形態では、供給ユニット50に設けられた流体供給部57から、超臨界処理に利用可能な物質の流体、例えば二酸化炭素が、気体または液体の状態で処理ユニット10に供給される。二酸化炭素は比較的低温、低圧で超臨界状態となり、また基板処理に多用される有機溶剤をよく溶かす性質を有するという点で、超臨界乾燥処理に好適な化学物質である。
【0024】
より具体的には、流体供給部57は、基板Sを処理する処理流体として、超臨界状態の流体、または、ガス状もしくは液状で供給され所定の温度・圧力が与えられることで事後的に超臨界状態となる流体を出力する。例えば、ガス状もしくは液状の二酸化炭素が加圧状態で出力される。流体は配管571およびその途中に介挿されたバルブ572,573を介して、処理チャンバ100の(+Y)側側面に設けられた入力ポート102,103に圧送される。すなわち、制御ユニット90からの制御指令に応じてバルブ572,573が開成されることで、流体は流体供給部57から処理チャンバ100へ送られる。
【0025】
図2および図3は処理流体の流路を模式的に示す図である。より具体的には、図2は流路の輪郭を示す模式図であり、図3はその平面図である。また、図4は排出流路の詳細構造を示す側面断面図である。以下、図1ないし図4を参照しながら、処理流体の流路の構造について説明する。
【0026】
入力ポート102,103から処理空間SPに至る流体の流路17は、流体供給部57から供給される処理流体を処理空間SPに導入する導入流路として機能する。具体的には、入力ポート102には、流路171が接続されている。入力ポート102とは反対側の流路171の端部には、流路断面積が急激に拡大するように形成されたバッファ空間172が設けられている。
【0027】
バッファ空間172と処理空間SPとを接続するように、流路173がさらに設けられている。流路173は、上下方向(Z方向)に狭く、水平方向(X方向)に長い幅広の断面形状を有しており、その断面形状は、処理流体の流通方向において略一定である。バッファ空間172とは反対側の流路171の端部は、処理空間SPに臨んで開口する吐出口174となっており、この吐出口174から処理流体が処理空間SP内に導入される。
【0028】
望ましくは、流路173の高さは、支持トレイ15が処理空間SPに収容された状態で、処理空間SPの天井面110aと基板表面Saとの距離と等しい。そして、吐出口174は、処理空間SPの天井面110aと支持トレイ15の上面151との間のギャップに臨んで開口している。例えば、流路173の天井面と処理空間SPの天井面110aとが同一平面をなすようにすることができる。このように、吐出口174は、処理空間SPに臨んで水平方向に細長いスリット状に開口している。
【0029】
支持トレイ15の下方にも同様にして処理流体の流路が形成される。具体的には、入力ポート103には流路175が接続されている。入力ポート103とは反対側の流路175の端部には、流路断面積が急激に拡大するように形成されたバッファ空間176が設けられている。
【0030】
そして、バッファ空間176と処理空間SPとは流路177を介して連通している。流路177は、上下方向(Z方向)に狭く、水平方向(X方向)に長い幅広の断面形状を有しており、その断面形状は、処理流体の流通方向において略一定である。バッファ空間176とは反対側の流路177の端部は、処理空間SPに臨んで開口する吐出口178となっており、この吐出口178から処理流体が処理空間SP内に導入される。
【0031】
望ましくは、流路177の高さは、処理空間SPの底面110bと支持トレイ15の下面との距離と同等とされる。そして、吐出口178は、処理空間SPの底面110bと支持トレイ15の下面との間のギャップに臨んで開口している。例えば、流路177の底面110bと処理空間SPの底面とが同一平面をなすようにすることができる。つまり、吐出口178は、処理空間SPに臨んで水平方向に細長いスリット状に開口している。
【0032】
Z方向において、流路171の配設位置と流路173の配設位置とが異なっていることが望ましい。両者が同一高さにあるとき、流路171からバッファ空間172に流入した処理流体の一部がそのまま直進して流路173に流入することになる。そうすると、流通方向に直交する流路の幅方向、つまりX方向においては、流路171に対応する位置とそれ以外の位置とで、流路173に流れ込む処理流体の流量や流速に差が生じるおそれがある。このことは、流路173から処理空間SPに流れ込む処理流体の流れにX方向の不均一性を生じさせ、乱流の原因となる。
【0033】
流路171と流路173とをZ方向に異ならせて配置することにより、このような流路171から流路173への処理流体の直進は生じなくなり、幅方向において均一な層流として処理流体を処理空間SPに導入することが可能となる。
【0034】
このように構成された導入流路17から導入される処理流体は、処理空間SP内で支持トレイ15の上面および下面それぞれに沿って流れ、以下のように構成される排出流路18を介して処理容器外へ排出される。基板Sよりも(-Y)側において、処理空間SPの天井面と支持トレイ15の上面151とはいずれも水平な平面をなしており、両者は一定のギャップを保って平行に対向している。このギャップが、支持トレイ15の上面151および基板Sの表面Saに沿って流れた処理流体を流体排出部55に導く排出流路18(上側排出流路18a)の上流部181として機能する。この上流部181は上下方向(Z方向)に狭く、水平方向(X方向)に長い幅広の断面形状を有している。
【0035】
上流部181の処理空間SPとは反対側の端部はバッファ空間182に接続している。詳しい構造については後述するが、バッファ空間182は、処理チャンバ100と、蓋部材14と、シール部材16とで囲まれた空間である。X方向におけるバッファ空間182の幅は上流部181の幅と同等またはこれより大きく、Z方向におけるバッファ空間182の高さは上流部181の高さよりも大きい。したがって、バッファ空間182は上流部181より大きな流路断面積を有している。
【0036】
バッファ空間182の上部に上側排出流路18aの下流部183が接続されている。下流部183は処理チャンバ100を構成する上部ブロックである第1部材11を貫通して設けられた貫通孔である。その上端は処理チャンバ100の上面に開口する出力ポート104を構成し、下端はバッファ空間182に臨んで開口している。
【0037】
このように、本実施形態では、支持トレイ15の上面側における排出流路18、すなわち上側排出流路18aは、以下の3つの領域、つまり、
(1)支持トレイ15の上面151と第1部材11の下面との間に形成される上流部181と、
(2)流体排出部55と繋がる下流部183と、
(3)上流部181および下流部183とそれぞれ連通する中間部(バッファ空間182)と、
を有している。
【0038】
同様に、処理空間SPの底面と支持トレイ15の下面とはいずれも水平な平面をなしており、両者は一定のギャップを保って平行に対向している。このギャップが、支持トレイ15の下面に沿って流れる処理流体を流体排出部55に導く排出流路18(下側排出流路18b)の上流部185として機能する。また、支持トレイ15の下面側の上流部185は、支持トレイ15の上面側と同様に、バッファ空間186を介して下流部187と接続されている。すなわち、支持トレイ15の下面側における排出流路18(下側排出流路18b)は、以下の3つの領域、つまり、
(1)支持トレイ15の下面と第2部材12の上面との間に形成される上流部185と、
(2)流体排出部55と繋がる下流部187と、
(3)上流部185および下流部187とそれぞれ連通する中間部(バッファ空間186)と、
を有している。
【0039】
処理空間SPにおいて支持トレイ15の上方を流れた処理流体は、排出流路18のうち上側排出流路18aを構成する上流部181、バッファ空間182および下流部183を介して出力ポート104へ送出される。出力ポート104は、配管551によって流体排出部55に接続されており、配管551の途中にはバルブ552が介挿されている。
【0040】
同様に、処理空間SPにおいて支持トレイ15の下方を流れた処理流体は、排出流路18のうち下側排出流路18bを構成する上流部185、バッファ空間186および下流部187を介して出力ポート105へ送出される。出力ポート105は、配管553によって流体排出部55に接続されており、配管553の途中にはバルブ554が介挿されている。
【0041】
バルブ552,554は制御ユニット90により制御されている。制御ユニット90からの制御指令に応じてバルブ552,554が開成すると、処理空間SP内の処理流体が配管551,553を介して流体排出部55に回収される。
【0042】
図4に示すように、排出流路18(上側排出流路18a,下側排出流路18b)は、処理チャンバ100(上側部材11および下側部材12)と、支持トレイ15と、蓋部材14とがそれぞれ流路壁面の一部として機能することにより形成されている。
【0043】
処理チャンバ100の(-Y)側端面には、環状のシール部材16が取り付けられ、シール部材16に囲まれた内部領域に開口部101が設けられている。より具体的には、処理チャンバ100を構成する第1部材11、第2部材12の(-Y)側端面に、表面が(+Y)側に後退した凹部111,121が設けられている。そして、第1部材11の凹部111の下端には、X方向における幅が処理空間SPの幅と同じかこれよりも少し大きく、かつ上下方向(Z方向)に薄い鍔状の隔壁112が(-Y)方向に突出して設けられている。
【0044】
隔壁112は、支持トレイ15と対向しながら(-Y)方向に延びる第1部材11の(-Y)側下端部であり、図4に示すように上流部181とバッファ空間182とを部分的に仕切っている。また、蓋部材14が開口部101を閉塞した状態では、隔壁112の(-Y)側の先端部は蓋部材14の(+Y)側表面と所定のギャップを隔てて離隔している。この隙間が、処理流体の流路となるとともに、上流部181とバッファ空間182とを接続する接続部となっている。したがって、上流部181を流れてくる処理流体(点線)は隔壁112の(-Y)側を通過し、さらに(+Z)方向に向きを変えてバッファ空間182に流れ込む。
【0045】
また、第2部材12の凹部121の上端にも、X方向における幅が処理空間SPの幅と同じかこれよりも少し大きく、かつ上下方向(Z方向)に薄い鍔状の隔壁122が(-Y)方向に突出して設けられている。隔壁122の作用も、隔壁112と同様である。
【0046】
すなわち、隔壁122は、支持トレイ15と対向しながら(-Y)方向に延びる第2部材12の(-Y)側上端部であり、上流部185とバッファ空間186とを部分的に仕切っている。したがって、上流部185を流れてくる処理流体は隔壁122の(-Y)側を通過し、さらに(-Z)方向に向きを変えてバッファ空間186に流れ込む。
【0047】
隔壁112上方の上部空間は、その(-Y)側開口部を蓋部材14により閉塞されることによってバッファ空間182として機能する。また、隔壁122下方の下部空間は、その(-Y)側開口部を蓋部材14により閉塞されることによってバッファ空間186として機能する。凹部111の上面には、そのX方向両端部近傍に下流部183,183(図2)が接続されている。下流領域183、183は、第1部材11の上面に設けられた出力ポート104、104に連通している。また凹部121の下面には、そのX方向両端部近傍に下流領域187、187が接続されている。下流領域187、187は、第2部材12の下面に設けられた出力ポート105、105に連通している。そして、出力ポート104、104、105、105に流体排出部55が接続されて処理流体を回収する。
【0048】
このように、排出流路18のうち上流部181,185を流れる処理流体は、隔壁112,122と蓋部材14との隙間を通ってバッファ空間182,186へ流入する。したがって、上流部181,185とバッファ空間182,186との接続部CPにおいては、隔壁112,122と蓋部材14との隙間の大きさが、幅方向に直交する高さ方向における流路の開口サイズ、つまり開口高さHとなる。また、図3のように流路をZ方向に見たときの隔壁112,122と蓋部材14との隙間が、上流部181,185とバッファ空間182,186との接続部CPにおける流路の断面形状を表していることになる。
【0049】
図2および図3に示すように、上側排出流路18aでは、接続部CPにおける開口高さHは幅方向(X方向)の位置により異なる。具体的には、図3左に示すように、上側排出流路18aの幅方向における両端部の端部領域Reでは開口高さHは一定であるが、これより内側の中央領域Rcでは、中央に向かって開口高さHが漸増する。ここで、座標Xa,Xb,Xcは、上側排出流路18aの幅方向における(-X)側端部位置、(+X)側端部位置、中央位置をそれぞれ示すものとする。
【0050】
図5および図6は処理チャンバの開口部周辺の構造を例示する図である。より具体的には、図5は処理チャンバ100の開口部101を示す外観図である。また、図6は、処理チャンバ100の内部構造を見やすく示すために、図5からシール部材16および第1部材11と第2部材12との境界線の図示を省き、代わりに図5では隠れている構造を隠れ線(点線)によって示したものである。
【0051】
これらの図に示されるように、隔壁112の中央部112aは略V字型に切り欠かれている。かかる構造により、蓋部材14と隔壁112との距離は位置により変化し、X方向の両端部で概ね一定となる一方、中央部112aでは流路の中央に向かうほど大きくなる。その結果、上記のように開口高さHが変化する流路が形成される。このように上流部181とバッファ空間182との接続部において、開口高さHを幅方向の位置により変化させるのは、次のような理由による。
【0052】
本願出願人が先に開示した特許文献1では、隔壁112,122に切り欠きを設けて開口高さHを変化させることで、排出流路に流れ込む処理流体の流れとそこから排出される処理流体の流れとのバランスを調整し、処理空間SPから排出される処理流体の逆流を防止することができることが示されている。ただし、開口高さの変化態様が特許文献1に開示されたものと異なる特定の形状である場合に得られる作用効果までが具体的に示されているわけではない。
【0053】
本願発明者は、処理後の基板Sにおける汚染物質の残留やパターン倒壊等の処理不良が、処理流体の流通方向における基板Sの下流側端部に集中的に発生することに着目し、さらなる研究の結果、次のような知見を得た。すなわち、このような処理不良は、基板Sの(-Y)側端部付近、特にX方向の中央部で局所的に発生頻度が高くなる傾向を示す。その原因としては、基板Sと支持トレイ15との隙間、つまり基板Sの下面と支持トレイ15の凹部152の上面との間に入り込んだ液体(IPA)が十分に排出されず、超臨界乾燥処理の後期段階まで基板Sの周囲、特に(-Y)側端部付近に残留していることが考えられる。というのは、このような残留液体を下方へ落下させるような貫通孔が支持トレイ15に設けられている場合には処理不良の発生が比較的軽微である一方、貫通孔がない(または小さい)場合に、上記した局所的な処理不良が発生しやすいという現象が観測されたからである。
【0054】
このことから、特に基板Sと支持トレイ15との隙間に入り込んだ液体を排出する上側排出流路18aにおいては、このような残留液体を効果的に排出するための処理流体の流れを創出する必要がある。そこで、この実施形態の上側排出流路18aでは、上流部181とバッファ空間182との接続部CPにおいて、幅方向(X方向)の両端部の端部領域Reで開口高さHを比較的小さくすることで、流路の圧力損失を大きくする。一方、中央領域Rcでは、中央部に向かうほど圧力損失が小さくなるように、開口高さHを増大させている。そのため、上流部181からバッファ空間182へ向かう処理流体の流れは、以下のような挙動を示す。
【0055】
図7は隔壁の近傍での処理流体の流れを示す図である。より詳しくは、図7(a)は上側排出流路18aにおける処理流体の流れを模式的に示す図であり、図7(b)は上流部181からバッファ空間182へ流れ込む処理流体の流れを示す図である。これらの図において、破線矢印は処理流体の流れを模式的に表す。矢印の密度が流量を、長さが流速をそれぞれ模式的に示すものとする。
【0056】
図7(a)および図7(b)に示すように、上流部181とバッファ空間182との接続部CPでは、流路の圧力損失がその両端部において高く中央部においてより低いため、中央部を通ってバッファ空間182に流れ込む流れが支配的である。すなわち、処理流体の流速および流量が、端部よりも中央部において大きい。このことは、次の2つの作用を奏する。
【0057】
第1には、図7(a)に示すように、上側排出流路18aの上流部181において、支持トレイ15の上面151のうち幅方向(X方向)の中央部において、その外側よりも強い流れを創出する。これにより、基板Sと支持トレイ15との隙間に入り込んだ残留液体の排出が促進される。
【0058】
第2には、図7(b)に示すように、バッファ空間182に流れ込む処理流体が中央部から両端部、つまり下流部185に向かう流れを形成するため、バッファ空間182からの処理流体の排出がスムーズである。このため、バッファ空間182に流れ込んだ処理流体の滞留を抑制し処理空間SPへの逆流を防止することができる。
【0059】
このように、第1実施形態では、上側排出流路18aの上流部181とバッファ空間182とを隔てる隔壁112にV字型の切り欠きを設けることで、隔壁112に処理流体の流れを整える「整流部」としての機能を持たせている。これにより得られる作用効果のうち第2の作用効果に関しては特許文献1でも議論されているが、第1の作用効果については言及されていない。
【0060】
なお、下側排出流路18bに関しては、基板Sに直接触れない処理流体を排出するものであるから、上側排出流路18aと同様の整流機能は本質的に必要ない。そのため、図5図6等に示すように、隔壁122の先端部はX方向において一直線となるように構成されてよい。また、特許文献1に記載されているように、上流部185からバッファ空間186へ流入する処理流体の流れと、バッファ空間183での処理流体の流れとのバランスを調整する目的で、適宜の切り欠きが設けられてもよい。
【0061】
図8は本発明に係る基板処理装置の第2実施形態における処理チャンバの開口部周辺の構造を例示する図である。なお、図8およびその説明において、実質的に図5および図6に記載のものと同様の機能を有する構造については、同一符号を付して詳しい説明を省略する。
【0062】
第2実施形態が第1実施形態と大きく相違する点は、整流部の構成である。つまり、第1実施形態では、第1部材11の一部(隔壁112)および第2部材12の一部(隔壁122)を「整流部」として機能させている。これに対し、第2実施形態では、独立した隔壁整流部材191、192がそれぞれ第1部材11および第2部材12に対して着脱自在となっている。
【0063】
隔壁整流部材191は、図8に示すように、断面が略L字型のアングル状部材である。この隔壁整流部材191を構成する2つの翼部位のうち(-Y)方向に延びる翼部位の幅方向中央部に略V字型の切欠部位191aが設けられている。そして、もう一方の翼部位が、第1部材11の凹部101aに密接された状態で、固定ねじ113aにより第1部材11に固定される。これによって、隔壁整流部材191は第1実施形態の隔壁112と同様に、隔壁機能と整流機能とを発揮する。また同様に、開口部101bの下部には、隔壁整流部材192が固定ねじ123aにより固結され、隔壁機能を発揮する。
【0064】
このように第2実施形態では、隔壁整流部材191,192が着脱自在であるため、基板Sの種類や処理条件などに対応した隔壁整流部材191,192を用いることができる。例えば以下に説明するように、予め切欠部位191a形状および大きさなどが互い異なる複数の隔壁整流部材191を準備することができる。そして、それらのうち基板Sの種類や処理条件などに適合する隔壁整流部材191をそれぞれ選択して処理チャンバ100に装着することができる。これによって、多種多様な基板Sや処理条件などに対応することができ、基板処理装置1の汎用性を高めることができる。
【0065】
図9および図10は整流部の他の構成を例示する図である。第1実施形態の隔壁112および第2実施形態の隔壁整流部材191では、そのX方向における中央部に略V字型の切り欠きが設けられている。本発明の効果を得るための切り欠きの形状はこれに限定されず、図9および図10に示すように、種々の形状を採用可能である。なお、これらの形状の違いは、X方向位置に対する開口高さHの変化によって一義的に示すことができるため、ここではX方向位置と開口高さHとの関係を表すグラフによって形状を示すこととする。
【0066】
図9(a)に示す例では、両端部において開口高さHが一定となる区間がなく、開口高さHは両端部から中央に向けて連続的に増大している。このような構成によっても、端部から中央部に向かうにつれて圧力損失が低下するような流路を形成することが可能であり、上記実施形態と同様の効果が得られる。
【0067】
つまり、流路の両端部で圧力損失が比較的大きく、中央部に向かうにつれて圧力損失が小さくなるような流路断面形状であればよく、例えば開口高さHが端部から中央部に向けて広義単調増加するような形状が好ましい。これには、例えば図3左に示すように、両端部で開口高さHが一定である区間が設けられる例、図9(a)に示すように全域にわたって開口高さHが変化する狭義単調増加の例の両方が含まれ得る。このことは、以下に例示する種々の形状においても同様である。
【0068】
また、図9(b)および図9(c)に示すように、開口高さHの変化は曲線的であってもよい。この場合も、図9(b)に示すように中央部のみで高さ変化があってもよく、図9(c)に示すようにX方向の全域で連続的に開口高さHが変化する態様であってもよい。曲線の形状は目的に応じて種々に設定することが可能であり、例えば区間ごとに直線近似されてもよい。また、図9(d)に示す態様では、開口高さHが階段状に変化する。このような形状であっても、両端部で圧力損失が大きく、中央部で圧力損失がより小さくなる流路を形成することができる。
【0069】
さらに、図10に示すように、繰り返し設けられる凹凸形状の工夫により、巨視的に見たときの圧力損失が中央部で小さく、両端部で大きくなる流路を形成することも可能である。図10(a)に示す例では、開口高さHが一定量変化する凹凸がX方向において複数回現れ、かつそれらにおいて凹部の幅および凸部の幅の少なくとも一方が、X方向位置に応じて異なる。この場合、微視的には圧力損失の高い部分と低い部分とが交互に現れるが、処理流体の流れを巨視的に捉えれば、点線で示すように、中央部ほど圧力損失が低くなる流路が形成されているといえる。また、図10(b)に示す例では、一定のピッチで繰り返される凹凸の高低差が、X方向位置に応じて異なる。このような構成であっても、図10(a)の例と同様、巨視的に見て中央部ほど圧力損失が低くなる流路を形成することができる。
【0070】
以上説明したように、第1実施形態および第2実施形態においては、主として第1ないし第3部材11~13により構成される処理チャンバ100が本発明の「処理容器」として機能している。そして、このうち空洞110が本発明の「第1の空洞」に相当し、凹部111が本発明の「第2の空洞」に相当している。また、蓋部材14が本発明の「蓋部」の一例に相当している。また、開口部101が本発明の「開口」に相当している。
【0071】
また、上記実施形態では、上流部181、バッファ空間182および下流部183が、本発明における「上側排出流路」の「上流部」、「バッファ空間」および「下流部」にそれぞれ相当している。また、上流部185、バッファ空間186および下流部187が、本発明における「下側排出流路」の「上流部」、「バッファ空間」および「下流部」にそれぞれ相当している。
【0072】
また、第1実施形態においては隔壁112が本発明の「整流部」として機能する一方、第2実施形態においては隔壁整流部材191が本発明の「隔壁整流部材」および「整流部」として機能している。また、上記実施形態では、開口高さHが本発明の「開口寸法」に相当している。さらに、上記実施形態では、X方向が本発明の「第1方向」に相当し、Y方向が本発明の「第2方向」に相当している。
【0073】
なお、本発明は上記した実施形態に限定されるものではなく、その趣旨を逸脱しない限りにおいて上述したもの以外に種々の変更を行うことが可能である。例えば、上記実施形態では、処理チャンバ100の開口部101を開閉する蓋部材14の側面が排出流路の一部を構成しているが、このような構成でない場合でも本発明を適用可能である。例えば、本実施形態における導入側の流路17と同様に、処理チャンバ内に排出流路が予め形成されていてもよい。
【0074】
また、上記実施形態では、隔壁112の切り欠き形状は、その中心位置Xcに対して対称である。しかしながら、切り欠き形状は非対称であってもよい。また、図10(a)、図10(b)に示される変形例では、流路の中心位置Xcでは開口高さHが最大となるように切り欠きが配置されている。しかしながら、位置Xcで開口高さHが小さくても、その周囲で開口高さHを大きくすることで、巨視的に見たときの圧力損失が中央部で小さくなるようにすることは可能である。
【0075】
また、この実施形態では処理空間SPに対し開口部101とは反対側の側面から処理流体が供給され、開口部101側へ排出される。しかしながら、この流通方向は反対であってもよい。
【0076】
また、上記実施形態の処理で使用される各種の化学物質は一部の例を示したものであり、上記した本発明の技術思想に合致するものであれば、これに代えて種々のものを使用することが可能である。
【0077】
以上、具体的な実施形態を例示して説明してきたように、本発明に係る基板処理装置において、例えば整流部は、中央部から両端部に向けて、第1方向に沿って排出流路の圧力損失が広義単調増加する構成であってもよい。このような構成によれば、処理空間から排出される処理流体の流れを、第1方向における両端部よりも中央部においてより強いものとすることができる。これにより、基板と支持トレイとの間に入り込んだ処理流体の排出を効果的に促進することができる。
【0078】
これを実現する具体的構成としては、中央部から両端部に向けて、第1方向に沿った排出流路の開口寸法が広義単調減少する構成とすることができる。あるいは、排出流路の第1方向における中央から所定距離内の中央領域で開口寸法が狭義単調減少し、中央領域より外側では開口寸法が一定である構成とすることができる。このような構成によれば、開口寸法の狭い部分で圧力損失が高く、広い部分で圧力損失が低くなるので、本発明を実現する構成として好適である。
【0079】
また、本発明に係る基板処理装置は、処理容器の側面に処理空間と外部空間とを連通させる開口が設けられ、開口を開閉する蓋部をさらに備え、支持トレイは蓋部のうち開口を覆う面に取り付けられた構成であってもよく、この場合、支持トレイが処理空間に収容された状態で、処理空間に面する処理容器の内壁面のうち天井面と支持トレイの上面とで挟まれた空間が上流部をなすことができる。このような構成によれば、処理空間内における処理流体の流れを、支持トレイによってその上方側と下方側とに分離し、それらをそのまま個別に排出することが可能である。
【0080】
この場合、処理容器には、処理空間となる第1の空洞とバッファ空間となる第2の空洞とが互いに連通して設けられるとともに、第1の空洞と第2の空洞との間を区画する隔壁がさらに設けられてもよく、このような構成では、蓋部と隔壁との隙間が接続部を構成するとともに、隔壁を整流部として機能させることが可能になる。
【0081】
さらに、隔壁は、処理容器に対して着脱可能に設けられた隔壁整流部材であってもよい。処理容器は高圧容器として高い剛性が求められる一方で、隔壁は精密な加工を要する。したがって、これらを別部材とすることで、それぞれ適した製造方法で製造することが可能になる。また、隔壁整流部材だけを交換することが可能となるから、保守作業や修理の作業性が向上する。また、形状の異なる隔壁整流部材を取り換えることで、装置を種々の目的に適用可能な汎用性の高いものとすることができる。
【0082】
また例えば、排出流路のうち支持トレイの下方を通過した処理流体を排出する下側排出流路についても、支持トレイよりも下方で処理空間に連通し、第1方向に沿った開口寸法が第2方向に沿った開口寸法よりも大きい流路断面を有する上流部と、上流部に連通し上流部よりも流路断面積が大きいバッファ空間と、バッファ空間の第1方向における両端部にそれぞれ設けられた1対の開口と流体排出部とを接続する下流部とを設けることが可能である。
【0083】
このような構成によれば、支持トレイの下側を通過した処理流体を、基板の上側を通過した処理流体とは個別に排出することができる。処理空間から流出する処理流体をバッファ空間を介して外部へ排出することで、処理空間でのスムーズな流れを損なうことなく、処理流体を排出することができる。下側排出流路では、基板と支持トレイとの間に入り込んだ処理流体を排出する機能は必要ないため、上側排出流路に設けられる整流部は本質的に不要である。
【産業上の利用可能性】
【0084】
この発明は、処理容器内で基板を処理流体によって処理する基板処理技術全般に適用することができる。特に、高圧流体を用いた処理、例えば半導体基板等の基板を超臨界流体によって乾燥させる基板乾燥処理に適用することができる。
【符号の説明】
【0085】
1 基板処理装置
14 蓋部材
15 支持トレイ
18 排出流路
18a 上側排出流路
18b 下側排出流路
55 流体排出部
57 流体供給部
100 処理チャンバ(処理容器)
101 開口
110 空洞(第1の空洞)
111,121 凹部(第2の空洞)
112 隔壁(整流部)
181,185 上流部
182,186 バッファ空間
183,187 下流部
191 隔壁整流部材
H 開口高さ(開口寸法)
Rc 中央領域
Re 端部領域
S 基板
SP 処理空間
X 第1方向
Y 第2方向
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10