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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024004588
(43)【公開日】2024-01-17
(54)【発明の名称】3次元積層造形装置
(51)【国際特許分類】
   H01J 37/18 20060101AFI20240110BHJP
   H01J 37/16 20060101ALI20240110BHJP
   H01J 37/147 20060101ALI20240110BHJP
   B22F 12/70 20210101ALI20240110BHJP
   B22F 12/44 20210101ALI20240110BHJP
   B22F 10/32 20210101ALI20240110BHJP
   B22F 10/28 20210101ALI20240110BHJP
   B29C 64/268 20170101ALI20240110BHJP
   B29C 64/364 20170101ALI20240110BHJP
【FI】
H01J37/18
H01J37/16
H01J37/147 E
B22F12/70
B22F12/44
B22F10/32
B22F10/28
B29C64/268
B29C64/364
【審査請求】有
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022104255
(22)【出願日】2022-06-29
(71)【出願人】
【識別番号】000004271
【氏名又は名称】日本電子株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000925
【氏名又は名称】弁理士法人信友国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 崇
(72)【発明者】
【氏名】木村 淳
(72)【発明者】
【氏名】山上 暢久
【テーマコード(参考)】
4F213
4K018
5C101
【Fターム(参考)】
4F213AC04
4F213WA25
4F213WL03
4F213WL13
4F213WL43
4F213WL67
4F213WL72
4F213WL78
4F213WL87
4K018CA44
4K018EA51
4K018EA60
5C101AA39
5C101BB01
5C101CC05
5C101DD16
5C101DD38
5C101EE12
5C101EE22
5C101EE75
5C101GG20
(57)【要約】
【課題】電子銃室の真空度を高めることができる3次元積層造形装置を提供する。
【解決手段】3次元積層造形装置1は、電子銃室2と、造形室3と、第1真空ポンプ5と、第2真空ポンプ6と、ビーム経路8と、を備えている。また、3次元積層造形装置1は、差動排気アパーチャー14と、集束レンズ12と、軸調整機構13と、を備えている。差動排気アパーチャー14は、ビーム経路8の内部空間を2つに分割し、電子ビームL1が通過可能な絞り孔14aを有する。集束レンズ12は、電子ビームL1を差動排気アパーチャー14の絞り孔14aで集束させる。軸調整機構13は、電子ビームL1の光軸L2が絞り孔14aの中心及び集束レンズ12の中心の両方を通過するように、電子ビームL1の軌道又は、集束レンズ12及び差動排気アパーチャー14の位置を調整する。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
電子銃を収容する電子銃室と、
前記電子銃から出射された電子ビームが照射される造形ユニットを収容する造形室と、
前記電子銃室の気体を排気する第1真空ポンプと、
前記造形室の気体を排気する第2真空ポンプと、
前記電子銃室と前記造形室を連通し、前記電子ビームが通過するビーム経路と、
前記ビーム経路内に設けられて前記ビーム経路の内部空間を2つに分割し、前記電子ビームが通過可能な絞り孔を有する差動排気アパーチャーと、
前記電子銃から出射された前記電子ビームを前記差動排気アパーチャーの前記絞り孔で集束させる集束レンズと、
前記電子ビームの光軸が前記差動排気アパーチャーの前記絞り孔の中心及び前記集束レンズの中心の両方を通過するように、前記電子ビームの軌道又は、前記集束レンズ及び前記差動排気アパーチャーの位置を調整する軸調整機構と、
を備えた3次元積層造形装置。
【請求項2】
前記軸調整機構は、前記電子ビームの軌道を調整し、
前記電子ビームの光軸に沿って配置される第1調整部及び第2調整部を有する
請求項1に記載の3次元積層造形装置。
【請求項3】
前記軸調整機構は、電磁偏向器である
請求項2に記載の3次元積層造形装置。
【請求項4】
前記集束レンズ及び前記軸調整機構は、静電偏向器である
請求項2に記載の3次元積層造形装置。
【請求項5】
前記軸調整機構は、前記集束レンズを前記光軸と直交する方向に移動させる第1軸調整機構と、
前記差動排気アパーチャーを前記光軸と直交する方向に移動させる第2軸調整機構と、
を有する
請求項1に記載の3次元積層造形装置。
【請求項6】
前記差動排気アパーチャーに前記電子ビームが照射されたことを検知するビーム検知ユニットを備えた
請求項1に記載の3次元積層造形装置。
【請求項7】
前記電子銃室と前記ビーム経路との接続箇所に配置され、前記電子ビームが通過可能な真空コンダクタンス部品と、
前記ビーム経路における前記差動排気アパーチャーで分割され、前記差動排気アパーチャーと前記真空コンダクタンス部品で形成される空間の気体を排気する第3真空ポンプと、を備えた
請求項1に記載の3次元積層造形装置。
【請求項8】
前記真空コンダクタンス部品は、前記電子銃を固定するアノードと一体に形成される
請求項7に記載の3次元積層造形装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ステージ上に粉末材料を薄く敷いた層を一層ずつ重ねて造形する3次元積層造形装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、粉末材料を薄く敷いた層を一層ずつ重ねて造形する3次元積層造形技術が脚光を浴びており、粉末材料の材料や造形手法の違いにより多くの種類の3次元積層造形技術が開発されている。
【0003】
従来の3次元積層造形装置の造形方法としては、例えばステージの上面に設置されたベースプレート上に粉末材料を一層毎に敷き詰める。次に、ベースプレート上に敷き詰められた粉末材料に対し、造形物の一断面に相当する二次元構造部だけを電子ビームやレーザからなる加熱機構で溶融する。そして、そのような粉末材料の層を一層ずつ高さ方向(Z方向)に積み重ねることにより造形物を形成している(例えば、特許文献1参照)。
【0004】
また、電子ビームの発生源である電子銃には加速電圧をはじめとした高電圧が印加されるので放電を抑制するために、電子銃を収容する電子銃室は、高い真空度が求められている。また、電子源を、酸化等の化学反応の要因となる残留ガスから保護するために、電子銃室内は、真空ポンプにより排気されている。
【0005】
しかしながら、造形物を造形する造形ユニットが収容される造形室は、造形物や造形ユニットの入れ替えのために頻繁に大気開放する必要がある。さらに、粉末材料を電子ビームで溶融する際に、蒸気が発生し、造形室の真空度は、電子銃室の真空度よりも低くなる。
【0006】
また、電子銃室と造形室は、電子ビームが通過するビーム経路により物理的に連通している。そして、ビーム経路には、電子ビームだけでなく、造形室内のガスも通過する。そのため、ビーム経路を介して真空度の低い造形室から真空度の高い電子銃室にガスが通過する。
【0007】
そのため、電子銃室の真空度を高めるために、例えば、電子銃室と造形室にそれぞれ別の真空ポンプを接続し、別の真空ポンプにより電子銃室と造形室の気体を排気させる差動排気方式が用いられている。
【0008】
図7は、電子銃室と造形室の真空度の関係を示す説明図である。
図7に示すように、電子銃室102には、第1真空ポンプ105が接続され、造形室103には、第2真空ポンプ106が接続されている。また、電子銃室102と造形室103は、電子ビームが通過する経路を介して物理的に連通している。そして、経路を介して造形室103のガスが電子銃室102に流入する。
【0009】
ここで、電子銃室102の圧力が第1圧力P1(Pa)、造形室103の圧力が第2圧力P2(Pa)とする。そして、電子銃室102は、造形室103よりも高い真空度を有している(P1<P2)。このとき、造形室103から電子銃室102に流れ込むガスの流量Q(Pa・L/s)は、下記式1により求められる。なお、Cはコンダクタンスと呼ばれる気体の流れ易さを示す特性値である。
[式1]
Q=C(P2-P1)
【0010】
そして、電子銃室102に接続された第1真空ポンプ105の排気性能がガス流量Qよりも上回ると、電子銃室102を高い真空度に維持することができる。また、式1に示すようにコンダクタンスCを小さく抑えることで、ガス流量Qを小さくすることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【特許文献1】特開2015-168228号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
しかしながら、電子銃より射出された電子ビームは、レンズで集束するまで広がり続けるため、電子銃室と造形室を連通するビーム経路は、その開口径を小さくすることが困難である。ビーム経路の開口径が大きくなることで、コンダクタンスCが大きくなり、造形室から電子銃室に流れ込むガス流量Qも大きくなる。その結果、電子銃室の真空度が低下するだけでなく、より排気性能の優れた真空ポンプが必要となっていた。
【0013】
本発明の目的は、上記の問題点を考慮し、電子銃室の真空度を高めることができる3次元積層造形装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0014】
上記課題を解決し、本発明の目的を達成するため、本発明の3次元積層造形装置は、電子銃を収容する電子銃室と、電子銃から出射された電子ビームが照射される造形ユニットを収容する造形室と、第1真空ポンプと、第2真空ポンプと、ビーム経路と、を備えている。第1真空ポンプは、電子銃室の気体を排気する。第2真空ポンプは、造形室の気体を排気する。ビーム経路は、電子銃室と造形室を連通し、電子ビームが通過する。
また、3次元積層造形装置は、差動排気アパーチャーと、集束レンズと、軸調整機構と、を備えている。差動排気アパーチャーは、ビーム経路内に設けられてビーム経路の内部空間を2つに分割し、電子ビームが通過可能な絞り孔を有する。集束レンズは、電子銃から出射された電子ビームを差動排気アパーチャーの絞り孔で集束させる。軸調整機構は、電子ビームの光軸が差動排気アパーチャーの絞り孔の中心及び集束レンズの中心の両方を通過するように、電子ビームの軌道又は、集束レンズ及び差動排気アパーチャーの位置を調整する。
【発明の効果】
【0015】
本発明の3次元積層造形装置によれば、電子銃室の真空度を高めることができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】本発明の第1の実施の形態例にかかる3次元積層造形装置を模式的に示す概略断面図である。
図2】本発明の第2の実施の形態例にかかる3次元積層造形装置を模式的に示す概略断面図である。
図3】本発明の第3の実施の形態例にかかる3次元積層造形装置を模式的に示す概略断面図である。
図4】本発明の第4の実施の形態例にかかる3次元積層造形装置を模式的に示す概略断面図である。
図5】本発明の第5の実施の形態例にかかる3次元積層造形装置を模式的に示す概略断面図である。
図6】第5の実施の形態例にかかる3次元積層造形装置におけるアノード周りを示す説明図である。
図7】電子銃室と造形室の真空度の関係を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明の3次元積層造形装置の実施の形態例について、図1図7を参照して説明する。なお、各図において共通の部材には、同一の符号を付している。
【0018】
1.第1の実施の形態例
1-1.3次元積層造形装置の構成
まず、本発明の第1の実施の形態例(以下、「本例」という。)にかかる3次元積層造形装置の第1の実施の形態例について図1を参照して説明する。
図1は、本例の3次元積層造形装置を模式的に示す概略断面図である。
【0019】
図1に示す3次元積層造形装置1は、例えば、チタン、アルミニウム、鉄等の金属粉末からなる粉末材料に電子ビームを照射して粉末材料を溶融させ、この粉末材料が凝固した層を積み重ねて立体物を造形する装置である。
【0020】
図1に示すように、3次元積層造形装置1は、電子銃室2と、造形室3と、電子光学室4と、第1真空ポンプ5と、第2真空ポンプ6と、造形ユニット7と、ビーム経路8と、電子源10とを備えている。電子銃室2及び造形室3は、中空に形成されている。電子銃室2には、第1真空ポンプ5が接続されており、造形室3には、第2真空ポンプ6が接続されている。そして、電子銃室2内の空気は第1真空ポンプ5により排気され、造形室3内の空気は第2真空ポンプ6により排気される。
【0021】
造形室3の内部には、造形ユニット7が配置されている。造形ユニット7において粉末材料が積層される。そして、積層された粉末材料に後述する電子源10から電子ビームL1が照射されることで、溶融する。
【0022】
造形室3の上部には、電子光学室4が接続されている。電子光学室4には、筒状のビーム経路8が収容されている。ビーム経路8の下部は、造形室3に連通し、ビーム経路8の上部は、電子銃室2に連通している。
【0023】
電子銃室2の内部には、カソードを示す電子源10と、ウエネルト18と、アノード17が収容されている。そして、電子源10、ウエネルト18及びアノード17により電子銃が構成される。アノード17は、電子銃室2におけるビーム経路8と連通する開口部に設けられている。電子源10から出射された電子ビームL1は、ウエネルト18を通過し、アノード17を介してビーム経路8内に照射される。
【0024】
また、電子源10及びウエネルト18、アノード17から放出される電子ビームL1の出力は、造形プロセスに応じて不図示の制御装置により可変可能に構成されている。
【0025】
電子光学室4には、対物レンズ11と、集束レンズ12と、軸調整機構13と、差動排気アパーチャー(以下、「差動排気AP」という)14とを有している。本例では、対物レンズ11及び集束レンズ12、磁場を発生させるコイルにより構成されている。
【0026】
差動排気AP14は、ビーム経路8内において、後述する対物レンズ11と集束レンズ12の間に配置されている。差動排気AP14には、電子ビームL1が通過可能な絞り孔14aが形成されている。差動排気AP14は、ビーム経路8の内部空間を、電子銃室2側の空間と、造形室3側の空間の2つに分割する。
【0027】
差動排気AP14を設けることで、造形室3側の空間から電子銃室2側の空間に気体が流れ難くなる。すなわち、差動排気AP14によりコンダクタンスCを小さくすることができ、造形室3からビーム経路8を通過して電子銃室2に気体が流入することを抑制できる。これにより、その結果、第1真空ポンプ5として高い排気性能を有する真空ポンプを用いなくても、電子銃室2の真空度を所望の真空度にすることができる。
【0028】
また、電子銃室2の真空度を高い真空度にすることができるため、電子銃室2に配置された電子源10がガスにより劣化することを防止でき、電子源10の製品寿命を高めることができる。
【0029】
対物レンズ11は、電子光学室4内において差動排気AP14よりも造形室3側に配置されている。そして、対物レンズ11は、軸調整機構13及び集束レンズ12、差動排気AP14を通過した電子ビームL1を造形ユニット7の造形面上において所定のビーム径となるように集束させる。
【0030】
集束レンズ12は、電子光学室4内において差動排気AP14よりも電子銃室2側、すなわち電子ビームL1の上流(電子源10)側に配置されている。集束レンズ12は、アノード17を通過した電子ビームL1を差動排気AP14の絞り孔14aを通過するように集束させる。具体的には、集束レンズ12は、電子ビームL1のビーム径を絞り孔14aの開口径よりも小さく集束させる。また、集束レンズ12の焦点位置は、差動排気AP14の絞り孔14aの中心と一致するように調整される。
【0031】
集束レンズ12により電子ビームL1のビーム径を絞ることで、差動排気AP14の絞り孔14aの開口径をより小さくすることができる。その結果、差動排気AP14によってコンダクタンスCをより小さくすることができ、造形室3側の空間から電子銃室2側の空間に気体が流入を抑制する効果を高めることができる。
【0032】
また、集束レンズ12が電子ビームL1のビーム径を差動排気AP14の絞り孔14aの開口径よりも小さくすることで、電子ビームL1が差動排気AP14に照射されることを防止できる。その結果、電子ビームL1が差動排気AP14に当たり、差動排気AP14が破損することを防止できる。
【0033】
集束レンズ12と電子銃室2との間、すなわち集束レンズ12よりも電子ビームL1の上流(電子源10)側には、軸調整機構13が配置されている。軸調整機構13は、第1調整部13aと、第2調整部13bとを有している。第1調整部13a及び第2調整部13bは、電子ビームL1の光軸L2に沿って配置される。第1調整部13a及び第2調整部13bは、磁場を発生する電磁偏向器である。また、第1調整部13a及び第2調整部13bとしては、例えば、鞍型のコイルやその他各種の電磁偏向器が適用される。
【0034】
第1調整部13a及び第2調整部13bは、アノード17を通過した電子ビームL1の光軸L2が光軸L2と直交する方向(以下、第2方向という)において、集束レンズ12の磁場中心及び差動排気AP14の絞り孔14aの開口中心と一致するように電子ビームL1の軌道を調整する。すなわち、電子源10から出射された電子ビームL1は、軸調整機構13により全て差動排気AP14の絞り孔14aを通過する。これにより、電子ビームL1の軌道が第2方向において、絞り孔14aからずれることを防止でき、確実に電子ビームL1が絞り孔14aを通過させることができる。その結果、電子ビームL1が差動排気AP14に照射されて差動排気AP14が破損することを確実に防止でき、より3次元積層造形装置1の安全性を高めることができる。
【0035】
また、軸調整機構13として、第1調整部13aと第2調整部13bの2つの調整部を設けたことで、光軸L2を集束レンズ12の中心と絞り孔14aの中心の2つの中心を通過するように調整することができる。
【0036】
上述したように、電子源10から放出される電子ビームL1の出力は、ウエネルト18に印加される電圧に応じて、変化する。電子ビームL1の出力が変化すると、電子ビームL1の広がりも変化する。そのため、制御装置は、電子ビームL1の出力に応じて、集束レンズ12及び軸調整機構13を制御することが可能である。これにより、電子ビームL1の出力が変化した場合でも、電子ビームL1の光軸L2を集束レンズ12の磁場中心及び差動排気AP14の絞り孔14aの開口中心に通過させることができる。さらに、集束レンズ12の焦点位置を差動排気AP14の絞り孔14aの開口中心の位置に合わせることができる。
【0037】
2.第2の実施の形態例
次に、図2を参照して第2の実施の形態例にかかる3次元積層造形装置について説明する。
図2は、第2の実施の形態例にかかる3次元積層造形装置を示す概略構成図である。
【0038】
第2の実施の形態例にかかる3次元積層造形装置1Aが、第1の実施の形態例にかかる3次元積層造形装置1と異なる点は、集束レンズ及び軸調整機構の構成である。そのため、第1の実施の形態例にかかる3次元積層造形装置と共通する部分には、同一の符号を付して重複した説明を省略する。
【0039】
図2に示すように、3次元積層造形装置1Aは、集束レンズ22と、軸調整機構23とを有している。第2の実施の形態例にかかる集束レンズ22は、静電レンズであり、軸調整機構23は、静電偏向器である。すなわち、集束レンズ22及び軸調整機構23は、電圧を印加される互いに対向する複数の電極により構成されている。そして、集束レンズ22及び軸調整機構23は、電極に電圧を印加することで、ビーム経路8内に電界を発生させて、電子ビームL1の集束及び軌道を制御する。
【0040】
その他の構成は、第1の実施の形態にかかる3次元積層造形装置1と同様であるため、それらの説明は省略する。このような集束レンズ22及び軸調整機構23を有する3次元積層造形装置1Aによっても、上述した第1の実施の形態例にかかる3次元積層造形装置1と同様の作用効果を得ることができる。
【0041】
3.第3の実施の形態例
次に、図3を参照して第3の実施の形態例にかかる3次元積層造形装置について説明する。
図3は、第3の実施の形態例にかかる3次元積層造形装置を示す概略構成図である。
【0042】
第3の実施の形態例にかかる3次元積層造形装置1Bが、第1の実施の形態例にかかる3次元積層造形装置1と異なる点は、軸調整機構の構成である。そのため、第1の実施の形態例にかかる3次元積層造形装置1と共通する部分には、同一の符号を付して重複した説明を省略する。
【0043】
図3に示すように、3次元積層造形装置1Bは、第1軸調整機構32と、第2軸調整機構33とを有している。第1軸調整機構32は、集束レンズ12に接続されており、第2軸調整機構33は、差動排気AP14に接続されている。また、第1軸調整機構32は、集束レンズ12を光軸L2と直交する方向である第2方向に沿って移動可能に支持する。そして、第1軸調整機構32は、電子ビームL1の光軸L2が集束レンズ12の中心を通過するように、集束レンズ12の位置を調整する。
【0044】
第2軸調整機構33は、差動排気AP14を第2方向に沿って移動可能に支持する。そして、第2軸調整機構33は、電子ビームL1の光軸L2が差動排気AP14の絞り孔14aの中心を通過するように、差動排気AP14の位置を調整する。
【0045】
その他の構成は、第1の実施の形態にかかる3次元積層造形装置1と同様であるため、それらの説明は省略する。このような第1軸調整機構32及び第2軸調整機構33を有する3次元積層造形装置1Bによっても、上述した第1の実施の形態例にかかる3次元積層造形装置1と同様の作用効果を得ることができる。
【0046】
4.第4の実施の形態例
次に、図4を参照して第4の実施の形態例にかかる3次元積層造形装置について説明する。
図4は、第4の実施の形態例にかかる3次元積層造形装置を示す概略構成図である。
【0047】
第4の実施の形態例にかかる3次元積層造形装置1Cが、第1の実施の形態例にかかる3次元積層造形装置1と異なる点は、ビーム検知ユニット45を設けた点である。そのため、第1の実施の形態例にかかる3次元積層造形装置1と共通する部分には、同一の符号を付して重複した説明を省略する。
【0048】
図4に示すように、3次元積層造形装置1Cは、ビーム検知ユニット45を備えている。ビーム検知ユニット45は、差動排気AP14に電子ビームL1が照射されたことを検知する。ビーム検知ユニット45としては、例えば、電流検知や温度検知、あるいはX線検知等その他各種のビーム検知の構成が適用される。
【0049】
そして、3次元積層造形装置1Cの不図示の制御装置は、ビーム検知ユニット45の検知信号により差動排気AP14に電子ビームL1が照射されたことを検知すると、電子源10からの電子ビームL1の放出を停止させる。これにより、電子ビームL1が差動排気AP14に照射されて、差動排気AP14が破損することを防止できる。
【0050】
また、制御装置は、ビーム検知ユニット45の検知信号に基づいて、軸調整機構13を制御してもよい。すなわち、制御装置は、ビーム検知ユニット45の検知信号に基づいて、電子ビームL1が差動排気AP14に当たらないように軸調整機構13を制御する。これにより、軸調整機構13による電子ビームL1の調整作業を容易に行うことができる。また、軸調整機構13の調整作業時では、電子源10から照射される電子ビームL1の出力を弱める。その結果、調整作業時に差動排気AP14が破損することを防止できる。
【0051】
その他の構成は、第1の実施の形態にかかる3次元積層造形装置1と同様であるため、それらの説明は省略する。このようなビーム検知ユニット45を有する3次元積層造形装置1Cによっても、上述した第1の実施の形態例にかかる3次元積層造形装置1と同様の作用効果を得ることができる。
【0052】
5.第5の実施の形態例
次に、図5及び図6を参照して第5の実施の形態例にかかる3次元積層造形装置について説明する。
図5は、第5の実施の形態例にかかる3次元積層造形装置を示す概略構成図である。図6は、第5の実施の形態例にかかる3次元積層造形装置におけるアノード周りを示す説明図である。
【0053】
第5の実施の形態例にかかる3次元積層造形装置1Dが、第1の実施の形態例にかかる3次元積層造形装置1と異なる点は、第3真空ポンプ及び真空コンダクタンス部品を設けた点である。そのため、第1の実施の形態例にかかる3次元積層造形装置1と共通する部分には、同一の符号を付して重複した説明を省略する。
【0054】
図5に示すように、3次元積層造形装置1Dは、第3真空ポンプ57と、真空コンダクタンス部品52とを有している。また、ビーム経路8における差動排気AP14よりも電子銃室2側には、排気通路58が形成されている。排気通路58は、第3真空ポンプ57に接続されている。第3真空ポンプ57は、ビーム経路8内において差動排気AP14で分割された電子銃室2側の空間の空気を排気する。
【0055】
図5及び図6に示すように、真空コンダクタンス部品52は、ビーム経路8内におけるアノード17の近傍に配置されている。具体的には、真空コンダクタンス部品52は、アノード17の開口における電子ビームL1の下流側、すなわち電子銃室2とビーム経路8との接続箇所に配置される。
【0056】
真空コンダクタンス部品52は、電子ビームL1が通過可能な筒孔52aを有している。筒孔52aの開口径は、ビーム経路8の開口径よりも小さく設定されている。筒孔52aは、電子ビームL1の光軸L2に沿って形成されている。また、筒孔52aは、電子ビームL1の広がりに合わせてテーパー状に形成されている。これにより、筒孔52aの軸方向の長さを確保しながら、電子ビームL1が真空コンダクタンス部品52に当たることを防ぐことができる。そして、真空コンダクタンス部品52は、ビーム経路8から電子銃室2の内部空間に気体が流れ難くしている。
【0057】
真空コンダクタンス部品52を設けたことで、ビーム経路8の内部空間は、差動排気AP14よりも造形室3側の空間と、差動排気AP14と真空コンダクタンス部品52で囲まれた空間に分割される。そのため、第5の実施の形態例にかかる3次元積層造形装置1Dは、電子銃室2で形成される第1空間と、造形室3と差動排気AP14で形成される第2空間と、ビーム経路8内において差動排気AP14と真空コンダクタンス部品52で形成される中間空間を有する。
【0058】
さらに、第1空間、第2空間及び中間空間は、それぞれ第1真空ポンプ5、第2真空ポンプ6及び第3真空ポンプ57の別々の真空ポンプにより排気される。このように、真空コンダクタンス部品52と差動排気AP14により中間空間を形成することで、造形室3側である第2空間から、電子銃室2側である第1空間に気体が流れ込むことをより抑制することができる。その結果、電子銃室2の真空度をより高めることができる。
【0059】
なお、真空コンダクタンス部品52とアノード17を別部材とした例を説明したが、これに限定されるものではない。例えば、アノード17と真空コンダクタンス部品52を一体に形成、すなわちアノード17に図6に示すような筒孔52aを形成してもよい。
【0060】
その他の構成は、第1の実施の形態にかかる3次元積層造形装置1と同様であるため、それらの説明は省略する。このような第3真空ポンプ57及び真空コンダクタンス部品52を有する3次元積層造形装置1Dによっても、上述した第1の実施の形態例にかかる3次元積層造形装置1と同様の作用効果を得ることができる。
【0061】
また、第5の実施の形態例にかかる3次元積層造形装置1Dに、第2から第4の実施の形態例にかかる3次元積層造形装置1B、1C、1Dの構成を適用してもよい。
【0062】
なお、本発明は上述しかつ図面に示した実施の形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載した発明の要旨を逸脱しない範囲内で種々の変形実施が可能である。
【0063】
上述した実施の形態例では、電子銃として、電子源(カソード)10及びウエネルト18、アノード17の3極構造を適用した例を説明したが、これに限定されるものではない。電子銃としては、ウエネルト18を有さない2極構造でもよく、あるいは電極の数をさらに増やしてもよい。
【0064】
例えば、上述した実施の形態例では、粉末材料としてチタン、アルミニウム、鉄等の金属粉末を適用した例を説明したが、これに限定されるものではなく、粉末材料としては、樹脂等を用いてもよい。
【0065】
なお、本明細書において、「平行」及び「直交」等の単語を使用したが、これらは厳密な「平行」及び「直交」のみを意味するものではなく、「平行」及び「直交」を含み、さらにその機能を発揮し得る範囲にある、「略平行」や「略直交」の状態であってもよい。
【符号の説明】
【0066】
1、1A、1B、1C、1D…3次元積層造形装置、 2…電子銃室、 3…造形室、 4…電子光学室、 5…第1真空ポンプ、 6…第2真空ポンプ、 7…造形ユニット、 8…ビーム経路、 10…電子源、 11…対物レンズ、 12、22…集束レンズ、 13、23…軸調整機構、 13a…第1調整部、 13b…第2調整部、 14…差動排気アパーチャー、 14a…絞り孔、 17…アノード、 18…ウエネルト、 32…第1軸調整機構 33…第2軸調整機構、 45…ビーム検知ユニット、 52…真空コンダクタンス部品、 52a…筒孔、 57…第3真空ポンプ、 58…排気通路、 L1…電子ビーム、 L2…光軸
図1
図2
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図4
図5
図6
図7