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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024045884
(43)【公開日】2024-04-03
(54)【発明の名称】回転式圧縮機および冷凍サイクル装置
(51)【国際特許分類】
   F04C 18/356 20060101AFI20240327BHJP
   F04C 18/344 20060101ALI20240327BHJP
【FI】
F04C18/356 K
F04C18/344 351J
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022150952
(22)【出願日】2022-09-22
(71)【出願人】
【識別番号】505461072
【氏名又は名称】東芝キヤリア株式会社
(72)【発明者】
【氏名】森嶋 明
【テーマコード(参考)】
3H040
【Fターム(参考)】
3H040AA09
3H040BB11
3H040CC14
3H040CC16
3H040DD03
3H040DD08
(57)【要約】
【課題】
製造性が容易で、信頼性の高い回転式圧縮機を提供することである。
【解決手段】
上記課題を解決するために、実施形態の回転式圧縮機は、密閉ケース内に収容される固定子と回転子を有する電動機と、回転軸によって回転子と連結される圧縮機構部と、を有する回転式圧縮機において、圧縮機構部は、円筒形空間状に形成されたシリンダ室を有するシリンダと、シリンダ室内で偏心回転可能であるローラと、シリンダの内周面に開口して設けられたブレード溝と、ブレード溝内に設けられ、ローラの外周面に当接し、ローラの偏心回転に伴い、シリンダ室の径方向へ往復運動可能に配置されるとともに、シリンダ室を吸込室と圧縮室に分割するブレードと、を備え、ブレード溝のブレードとの摺動面は、回転軸の軸方向に対して傾斜して設ける。
【選択図】 図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
密閉ケース内に収容される固定子と回転子を有する電動機と、回転軸によって前記回転子と連結される圧縮機構部と、を有する回転式圧縮機において、
前記圧縮機構部は、円筒形空間状に形成されたシリンダ室を有するシリンダと、前記シリンダ室内で偏心回転可能であるローラと、
前記シリンダの内周面に開口して設けられたブレード溝と、
前記ブレード溝内に設けられ、前記ローラの外周面に当接し、前記ローラの偏心回転に伴い、前記シリンダ室の径方向へ往復運動可能に配置されるとともに、前記シリンダ室を吸込室と圧縮室に分割するブレードと、を備え、
前記ブレード溝の前記ブレードとの摺動面は、前記回転軸の軸方向に対して傾斜して設けられていることを特徴とする回転式圧縮機。
【請求項2】
前記ブレード溝の前記ブレードとの摺動面は、前記回転軸の軸方向に対して1~3°傾斜して設けられていることを特徴とする請求項1に記載の回転式圧縮機。
【請求項3】
前記シリンダ室内の前記ローラ位置が上死点または下死点において、前記ブレードの先端面と前記ローラの外周面の最大隙間rは、0.001mm以上および0.01mm以下であることを特徴とする請求項1に記載の回転式圧縮機。
【請求項4】
前記ブレードの前記回転軸の軸方向端面は、前記シリンダ室の前記回転軸の軸方向端面と同一直線状に並ぶことを特徴とする請求項1に記載の回転式圧縮機。
【請求項5】
請求項1~4のいずれか1項に記載の回転式圧縮機と、
凝縮器と、
膨張装置と、
蒸発器と、
前記回転式圧縮機と前記凝縮器と、前記膨張装置と、前記蒸発器とを接続して冷媒を循環させる冷媒管と、を備える冷凍サイクル装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、回転式圧縮機および冷凍サイクル装置に関する。
【背景技術】
【0002】
空気調和機などの冷凍サイクル装置にて使用される回転式圧縮機として、密閉ケース内に収容される電動機と、圧縮機構部と、円筒形空間状に形成されたシリンダ室を有するシリンダと、シリンダ室内で偏心回転可能なローラと、ローラの偏心回転に伴い、ローラの外周面と当接し、シリンダ室を吸込室と圧縮室に分割するブレードと、ブレードを収容するブレード溝を備えた構成が知られている。
従来、回転式圧縮機において、ブレードの先端面とローラの外周面が片当たりにより局所的に異常摩耗することを防ぐために、特許文献1に記載のようにブレードの先端面またはローラの外周面の少なくともいずれか一方にクラウニングを設けたり、特許文献2に記載のようにブレード溝を湾曲して設けたりする方法が考案されてきた。
しかし、前記方法では、ブレードの先端面またはブレード溝をわざわざ湾曲形状に加工する必要があり、生産能力の低下を招く恐れがある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平6―147152号公報
【特許文献2】特開2005―30232号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明が解決しようとする課題は、製造性が容易で、信頼性の高い回転式圧縮機を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記課題を解決するために、実施形態の回転式圧縮機は、密閉ケース内に収容される固定子と回転子を有する電動機と、回転軸によって回転子と連結される圧縮機構部と、を有する回転式圧縮機において、圧縮機構部は、円筒形空間状に形成されたシリンダ室を有するシリンダと、シリンダ室内で偏心回転可能であるローラと、シリンダの内周面に開口して設けられたブレード溝と、ブレード溝内に設けられ、ローラの外周面に当接し、ローラの偏心回転に伴い、シリンダ室の径方向へ往復運動可能に配置されるとともに、シリンダ室を吸込室と圧縮室に分割するブレードと、を備え、ブレード溝のブレードとの摺動面は、回転軸の軸方向に対して傾斜して設ける。
【図面の簡単な説明】
【0006】
図1】第一の実施形態に係る回転式圧縮機の縦断面および冷凍サイクル装置の概略を示す図。
図2】第一の実施形態に係る回転式圧縮機のシリンダを示す図1におけるA―A断面図。
図3図2におけるローラとブレードの位置関係を示す図。
図4】第一の実施形態に係る回転式圧縮機の図2におけるB―B断面図。
図5】第一の実施形態に係る回転式圧縮機のブレードの先端面とローラの外周面の接触状態図。
図6】第二の実施形態に係る回転式圧縮機の図2におけるB―B断面図。
【発明を実施するための形態】
【0007】
(第一の実施形態)
以下、本発明に係る回転式圧縮機および冷凍サイクル装置の第一の実施形態について、図1図5を参照して説明する。
【0008】
図1は、本発明の第一の実施形態に係る回転式圧縮機の縦断面および冷凍サイクル装置の概略を示す図である。ここでは、縦型の回転式圧縮機について述べる。
【0009】
図1に示すように、本発明の第一の実施形態に係る冷凍サイクル装置1は、回転式圧縮機2と、放熱器である凝縮器3と、膨張装置4と、吸熱器である蒸発器5と、アキュムレータ6と、冷媒管7と、を備えている。冷媒管7は、回転式圧縮機2と凝縮器3と膨張装置4と蒸発器5とアキュムレータ6とを順次に接続して冷媒を循環させる。
【0010】
本発明の第一の実施形態に係る回転式圧縮機2は、密閉ケース11と、密閉ケース11内の上部に設けられる電動機12と、密閉ケース11内の下部に設けられる圧縮機構部13と、電動機12の回転駆動力を圧縮機構部13へ伝達する回転軸14と、回転軸14を回転自在に支持する主軸受15と、主軸受15と協働して回転軸14を回転自在に支持する副軸受16と、を備えている。
【0011】
密閉ケース11は、円筒形である。密閉ケース11は、上下に設けられた半球形の鏡板と、円筒形の胴部と、を備えている。密閉ケース11の胴部には、冷媒を回転式圧縮機2へ導く吸入管7bが接続されている。密閉ケース11の上側の鏡板には、冷媒を回転式圧縮機2から吐出させる吐出管7aが接続されている。
【0012】
電動機12は、圧縮機構部13を回転駆動させる駆動力を発生させる。電動機12は、密閉ケース11の内壁に固定される固定子18と、固定子18に周囲を囲まれて回転軸14に設けられる回転子19と、を備えている。
【0013】
回転子19の上面、つまり、密閉ケース11の上側の鏡板を臨む面には、油分離部17が設けられている。油分離部17は、圧縮機構部13によって圧縮され、密閉ケース11内に吐出されるガス状の冷媒に混じっている潤滑油を分離する。
【0014】
回転軸14は、電動機12と圧縮機構部13を互いに連結している。回転軸14は、電動機12が発生させる駆動力を圧縮機構部13へ伝達する。回転軸14の中間部分14aは、主軸受15に回転自在に支持されている。回転軸14の下端部分14bは、副軸受16に回転自在に支持されている。主軸受15および副軸受16は、圧縮機構部13の一部でもあって、圧縮機構部13を上下から挟んでいる。つまり、回転軸14は、圧縮機構部13を貫通している。
【0015】
また、回転軸14は、主軸受15に支持されている中間部分14aと副軸受16に支持されている下端部分14bとの間に、複数の偏心部21を備えている。複数の偏心部21のうち、主軸受15に近い側を第一偏心部22と呼び、副軸受16に近い側を第二偏心部23と呼ぶ。それぞれの偏心部21は、回転軸14の中心に不一致の中心を有する円盤、あるいは円柱である。それぞれの偏心部21の中心は、回転軸14の周りに約180度の位相差で偏心されている。第一偏心部22は、電動機12に近い上側に配置され、第二偏心部23は、電動機12から遠い下側に配置されている。
【0016】
圧縮機構部13は、電動機12が回転軸14を回転駆動することによって、ガス状の冷媒を吸込んで圧縮し、かつ、吐出する。圧縮機構部13は、密閉ケース11内に収容されていて、密閉ケース11の下部に配置されている。密閉ケース11の下部には、潤滑油(図示省略)が貯留されていて、圧縮機構部13の下部は、この潤滑油に浸されている。
圧縮機構部13は、複数の圧縮機構を備えている。つまり、圧縮機構部13は、第一圧縮機構25と、第二圧縮機構26と、第一圧縮機構25と第二圧縮機構26の間に設けられる仕切板27と、を備えている。
【0017】
第一圧縮機構25は、円筒形空間状の第一シリンダ室31を有する第一シリンダ32と、第一シリンダ室31内に配置される環状の第一ローラ33と、を備えている。第二圧縮機構26は、円筒形空間状の第二シリンダ室41を有する第二シリンダ42と、第二シリンダ室41内に配置される環状の第二ローラ43と、を備えている。
【0018】
第一シリンダ32および第二シリンダ42は、回転軸14の軸方向に積み重なるように配置されている。上側の第一シリンダ32は、電動機12に近い側に配置されている。第一シリンダ32は、フレーム24を介して密閉ケース11に固定されている。
【0019】
フレーム24は、複数箇所の溶接部51によって密閉ケース11に固定されており、フレーム24に対して第一シリンダ32がボルト等の締結部材で固定されている。溶接部51は、例えばスポット溶接によって形成されている。
【0020】
第一シリンダ室31および第二シリンダ室41の中心は、実質的に回転軸14の回転中心に重なっている。これらシリンダ室31、41は、実質的に同じ直径寸法と同じ高さ寸法(回転軸14の軸方向の寸法)を有している。第一シリンダ室31は、第一シリンダ32の内側の空間であって、主軸受15および仕切板27によって閉鎖されている。第一シリンダ室31内には、回転軸14の第一偏心部22が配置されている。第二シリンダ室41は、第二シリンダ42の内側の空間であって、仕切板27と副軸受16によって閉鎖されている。第二シリンダ室41内には、回転軸14の第二偏心部23が配置されている。
【0021】
上側の主軸受15は、ボルトなどの締結部材52によって、第一シリンダ32に固定されている。上側の主軸受15には、第一シリンダ室31内で圧縮された冷媒を吐出する吐出ポートと吐出弁を有する第一吐出弁機構(図示省略)と、第一吐出マフラ53と、が設けられている。第一吐出マフラ53は、吐出孔(図示省略)を有している。第一吐出マフラ53は、第一吐出弁機構に覆い被さっている。第一吐出弁機構の吐出ポートは、第一シリンダ室31に繋がれており、圧縮機構部13の圧縮作用に伴い、第一シリンダ室31内が所定圧値に達したときに吐出弁が吐出ポートを開放して、圧縮された冷媒を第一吐出マフラ53内に吐出する。
【0022】
下側の副軸受16は、ボルトなどの締結部材52によって第一シリンダ32に固定されている。締結部材52は、第二シリンダ42と仕切板27を貫いて第一シリンダ32に達している。下側の副軸受16には、第二シリンダ室41内で圧縮された冷媒を吐出する吐出ポートと吐出弁を有する第二吐出弁機構(図示省略)と、第二吐出マフラ54と、が設けられている。第二吐出マフラ54は、第二吐出弁機構に覆い被さっている。第二吐出弁機構の吐出ポートは、第二シリンダ室41に接続されており、圧縮機構部13の圧縮作用に伴い、第二シリンダ室41内が所定圧値に達したときに吐出弁が吐出ポートを開放して、圧縮された冷媒を第二吐出マフラ54内に吐出する。
【0023】
第一ローラ33は、第一偏心部22の周面に嵌合されて第一シリンダ室31内に収容されている。第一ローラ33は、回転軸14の回転に伴って、外周面の一部を第一シリンダ32の内周面に沿って線接触させながら偏心回転する。第二ローラ43は、第二偏心部23の周面に嵌合されて第二シリンダ室41内に収容されている。第二ローラ43は、回転軸14の回転に伴って、外周面の一部を第二シリンダ42の内周面に沿って線接触させながら偏心回転する。
【0024】
なお、第一ローラ33と第一シリンダ32との接触、および第二ローラ43と第二シリンダ42との接触は、直接的な接触ではなく、油膜(図示省略)を介在させた間接的なものであるが、説明の便宜のために、これら油膜を介した接触を単に「接触」と表現する。第一ローラ33と第一偏心部22との間、第二ローラ43と第二偏心部23との間、第一ローラ33と主軸受15との間、第二ローラ43と副軸受16との間、第一ローラ33と仕切板27との間、第二ローラ43と仕切板27との間も同様である。
【0025】
圧縮機構部13の第一圧縮機構25の第一シリンダ32について、詳細に説明する。図2に、第一の実施形態に係る回転式圧縮機のシリンダを示す図1におけるA―A断面図を示す。ここでは、第一シリンダ32について述べる。なお、第一圧縮機構25と第二圧縮機構26とは略同一の構成のため、第二圧縮機構26の第二シリンダ42の説明は省略する。
【0026】
図2に示すように、第一シリンダ32には、径方向の外側に向けて窪むブレード溝64が形成されている。ブレード溝64は、第一シリンダ32における回転軸14の軸方向の全体にわたって形成されている。ブレード溝64は、径方向の外側端部(後端部)において、密閉ケース11内に連通している。
【0027】
ブレード溝64内には、第一シリンダ室31の径方向に沿って往復運動可能なブレード61が設けられている。ブレード61は、付勢手段により、第一シリンダ室31の径方向の内側に向けて付勢されている。ブレード61における第一シリンダ室31の径方向の内側端面(先端面)は、第一シリンダ室31内において、第一ローラの外周面65に当接している。これにより、ブレード61は、第一ローラ33の偏心回転に伴い、第一シリンダ室31内に往復運動可能に構成されている。
【0028】
第一シリンダ室31は、第一ローラ33およびブレード61によって、吸込室と圧縮室に分割されている。そして、圧縮機構部13では、第一ローラ33の偏心回転およびブレード61の往復運動により、第一シリンダ室31内で圧縮動作が行われる。
【0029】
第一シリンダ32において、第一ローラ33の回転方向に沿うブレード溝64の奥側に位置する部分には、吸込孔62が形成されている。吸込孔62は、第一シリンダ32を径方向に貫通している。吸込孔62における径方向の外側端部には、上述した吸入管7bが接続される。一方、吸込孔62における径方向の内側端部は、第一シリンダ室31内に開口している。第一シリンダ32の内周面において、第一ローラ33の回転方向に沿うブレード溝64の手前側に位置する部分には、吐出溝63が形成されている。吐出溝63は、上述した吐出ポート、第一吐出マフラ53、密閉ケース11内の空間を介して、吐出管7aに連通している。
【0030】
上述した圧縮機構部13の動作について説明する。
電動機12の固定子18に電力が供給されると、回転軸14が回転子19とともに、軸中心線O周りに回転する。そして、回転軸14の回転に伴い、第一偏心部22および第一ローラ33が第一シリンダ室31内で偏心回転する。このとき、第一ローラ33が第一シリンダ32の内周面にそれぞれ当接することで、吸入管7bを通して第一シリンダ室31内に冷媒が取り込まれるとともに、第一シリンダ室31内で取り込まれた冷媒が圧縮される。
ブレード61は、第一ローラ33の偏心回転に伴い、第一シリンダ室31の径方向に往復運動する。
【0031】
具体的には、第一シリンダ室31のうち、吸込室内に吸入管7bおよび吸込孔62を通して冷媒が吸い込まれるとともに、圧縮室内にて、吸込孔62から吸込まれた冷媒が圧縮される。圧縮された冷媒は、主軸受15の吐出溝63を通して、第一シリンダ室31の外側に吐出され、その後、第一シリンダ室31の外側の連結孔(図示省略)を通して、密閉ケース11内に吐出される。なお、密閉ケース11内に吐出された冷媒は、吐出管7aを通して、凝縮器3に送り込まれる。
【0032】
図3は、図2におけるローラとブレードの位置関係を示す図である。また、図4は、第一の実施形態に係る回転式圧縮機の図2におけるB―B断面を部分的に示す図である。ここでは、第一シリンダ室31内の第一ローラ33が上死点または下死点に位置する場合について述べる。図2および図3は、ローラが上死点に位置する状態を示している。
【0033】
図2図4に示すように、ブレード溝64のブレード61との摺動面は、回転軸14の軸方向に対して傾斜して設けられている。これにより、第一シリンダ32の第一壁面91および第二壁面92は、回転軸14の軸方向に対して傾斜して設けられている。
ブレード溝64のブレード61との摺動面は、その上端側を第一ローラ33の回転方向、または、反回転方向のどちらに向けて傾斜させてもよい。
また、ブレード溝64は、第一シリンダ32を傾斜させた状態でブローチ加工や研磨加工を行うことで、容易に製造することができる。
【0034】
ブレード溝64のブレード61との摺動面である第一壁面91および第二壁面92は、回転軸14の軸方向に対して傾斜して設けられている。そのため、ブレード61は、軸方向に対して傾斜した状態でブレード溝64内に収容される。
図2図4に示すように、ブレード61は、第一シリンダ32の径方向に沿って延びる直方体形状であり、第一ローラ33の周方向の両端に位置する第一端面71および第二端面72と、回転軸14の軸方向の両端に位置する第三端面81および第四端面82と、を有している。第一ローラ33の周方向の両端に位置する第一端面71および第二端面72は、第一シリンダ32の第一壁面91および第二壁面92と概ね平行である。
【0035】
図3および図4より、ローラおよびブレードの基準寸法関係を説明する。
ブレード溝64のブレード61との摺動面は、回転軸14の軸方向に対して傾斜して設けられている。そのため、ブレード61の先端面と第一ローラの外周面65が当接する上下端部には、隙間rが確保される。ブレード61の先端面と第一ローラの外周面65は、全面的に当接しない。
ブレード61の先端面における上下端部と第一ローラの外周面65が局所的に当たらないため、ブレード61の先端面に極圧が生じない。したがって、ブレード61の先端面および第一ローラの外周面65の摺動部の油膜が切れ、焼き付きや異常摩耗が生じる恐れがない。
【0036】
ブレード溝64のブレード61との摺動面の傾斜角θ1は、1~3°であることが好ましい。ここで、θ1は、ブレード溝64のブレード61との摺動面が回転軸14の軸方向(軸中心線O)に対して傾斜している角度である。
【0037】
ブレード61は、その先端面において、ブレードの中心部61A(第一ローラ33とブレード61との当接部)、ブレードの上端部61Bと、ブレードの下端部61Cと、を有している。また、上端部61Bと下端部61Cは、第一ローラの外周面65との間に、隙間rを有している。ブレード61の隙間rは、第一シリンダ32の第一シリンダ室31内で偏心回転する第一ローラ33位置が上死点または下死点において、最大となる。すなわち、ブレードの上端部61Bおよびブレードの下端部61Cは、第一ローラの外周面65から最も離間した最大隙間rを有し、ブレードの中心部61B付近で第一ローラの外周面65と当接する。
【0038】
図3より、最大隙間rは、第一ローラ33の半径Rと、第一ローラ33の中心O´からブレードの上端部61Bまでの距離R´の差から求めることができる。(r=R´-R=R´-a/tanθ2。ここで、図3において、第一ローラ33の中心O´からブレードの上端部61Bを結ぶ線分L1と、第一ローラ33の中心O´とブレードの中心部61Aを結ぶ線分L2がなす挟角をθ2とする。)
【0039】
一般的なロータリ式圧縮機において、傾斜角θ1=1~3°の範囲では、最大隙間rは約0.001~0.01mm程度変化する。このようなθ1の角度範囲であれば、ブレード61の先端面と第一ローラの外周面65が形成する隙間から漏れる冷媒の量を、微量に抑えることが可能となる。
【0040】
ブレード溝64のブレード61との摺動面の傾斜角θ1を1~3°とすることで、ブレード61の先端面と第一ローラの外周面65が形成する隙間から漏れる冷媒の量を最小としつつ、ブレード61の先端面と第一ローラの外周面65が、局所的に当たることを防ぐ。
【0041】
また、実際の運転中は、図5に示すように、ブレード61の先端面と第一ローラの外周面65は、相対的に変動を伴う傾斜を持って当たる。傾斜のパターンとしては、例えば、相対的な傾斜が発生し、ブレード61の先端面と第一ローラの外周面65が、下端側で当たる状態(a)、相対的傾斜のない状態(b)、相対的傾斜が発生し、ブレード61の先端面と第一ローラの外周面65が、上端側で当たる状態(c)が考えられる。
【0042】
本発明の実施形態では、ブレード61の先端面と第一ローラの外周面65が、相対的に傾斜したパターンでも、ブレード溝64のブレード61との摺動面は、回転軸14の軸方向に対して傾斜して設けられている。したがって、ブレード61の先端面は、第一ローラの外周面65と中央部からなだらかに回転軸14の軸方向に当たるようになり、ブレード61の先端面と第一ローラの外周面65の局所的な接触を緩和することができる。
これにより、簡易な製造方法であっても、片当たりによる異常摩耗を防止し、信頼性の高い回転式圧縮機とすることができる。
【0043】
なお、本発明の実施形態では、上死点または下死点での最大隙間rについて説明したが、第一ローラ33の外径寸法、偏心部の偏心量およびブレード61の高さ、ブレード61の先端面の円弧形状およびブレード61の傾きを最適化することで、第一ローラ33が上死点および下死点以外の位置においても、局所的な接触が緩和される構成として良い。
【0044】
(第二の実施形態)
次に、本発明に係る回転式圧縮機および冷凍サイクル装置の第二の実施形態について、図6を参照して説明する。この第二の実施形態の各部について、図1図5の第一の実施形態の各部と同一部分は、同一符号で示し、説明を省略する。この第二の実施形態が第一の実施形態と異なる点は、ブレード61の形状である。
【0045】
図6に、第二の実施形態に係る回転式圧縮機の図2におけるB―B断面図を示す。
図6に示すように、ブレード61の上下端面(回転軸14の軸方向の両端に位置する第三端面81および第四端面82)は、第一シリンダ32の上下平端面と同一直線状に並ぶように形成してもよい。具体的には、ブレード61の上下端面(回転軸14の軸方向の両端に位置する第三端面81および第四端面82)と第一シリンダ32の上下平端面は、主軸受15の下端面および仕切板27の上端面と概ね平行である。換言すると、ブレード61は、第一シリンダ室31の径方向の断面形状が平行四辺形でもよい。
【0046】
ブレード61の上下端面(回転軸14の軸方向の両端に位置する第三端面81および第四端面82)が第一シリンダ32の上下平端面と同一直線状に並ぶように形成することで、ブレード61と主軸受15および仕切板27の隙間から冷媒が漏れ、圧縮性能が下がることを防ぐ。
また、ブレード61がブレード溝64に片当たりすることを防ぐ。
さらに、ブレード61の上下端面(回転軸14の軸方向の両端に位置する第三端面81および第四端面82)が第一シリンダ32の上下平端面と同一直線状に並ぶようにブレード61を加工する作業は、ブレード61の先端面にクラウニングを設ける作業よりも容易であり、余分な追加工を行う必要がなく、生産能力を低下させる恐れもない。
【0047】
本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、様々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これらの実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の発明に含まれる。
【符号の説明】
【0048】
1…冷凍サイクル装置
2…回転式圧縮機
3…凝縮器
4…膨張装置
5…蒸発器
6…アキュムレータ
7…冷媒管
7a…吐出管
7b…吸入管
11…密閉ケース
12…電動機
13…圧縮機構部
14…回転軸
14a…中間部分
14b…下端部分
15…主軸受
16…副軸受
17…油分離部
18…固定子
19…回転子
21…偏心部
22…第一偏心部
23…第二偏心部
24…フレーム
25…第一圧縮機構
26…第二圧縮機構
27…仕切板
31…第一シリンダ室
32…第一シリンダ
33…第一ローラ
41…第二シリンダ室
42…第二シリンダ
43…第二ローラ
51…溶接部
52…締結部材
53…第一吐出マフラ
54…第二吐出マフラ
61…ブレード
61A…ブレードの中心部
61B…ブレードの上端部
61C…ブレードの下端部
62…吸込孔
63…吐出溝
64…ブレード溝
65…第一ローラの外周面
71…第一端面
72…第二端面
81…第三端面
82…第四端面
91…第一壁面
92…第二壁面
図1
図2
図3
図4
図5
図6