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  • 特開-摩耗エネルギー推定方法 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024045888
(43)【公開日】2024-04-03
(54)【発明の名称】摩耗エネルギー推定方法
(51)【国際特許分類】
   G01M 17/02 20060101AFI20240327BHJP
   B60C 19/00 20060101ALI20240327BHJP
   B60C 11/24 20060101ALI20240327BHJP
【FI】
G01M17/02
B60C19/00 H
B60C11/24 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022150962
(22)【出願日】2022-09-22
(71)【出願人】
【識別番号】000183233
【氏名又は名称】住友ゴム工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100104134
【弁理士】
【氏名又は名称】住友 慎太郎
(74)【代理人】
【識別番号】100156225
【弁理士】
【氏名又は名称】浦 重剛
(74)【代理人】
【識別番号】100168549
【弁理士】
【氏名又は名称】苗村 潤
(74)【代理人】
【識別番号】100200403
【弁理士】
【氏名又は名称】石原 幸信
(74)【代理人】
【識別番号】100206586
【弁理士】
【氏名又は名称】市田 哲
(72)【発明者】
【氏名】久保 直也
【テーマコード(参考)】
3D131
【Fターム(参考)】
3D131BB03
3D131BC55
3D131LA22
(57)【要約】
【課題】 タイヤの摩耗エネルギーを短時間で精度よく推定し得る摩耗エネルギー推定方法を提供する。
【解決手段】 タイヤの摩耗エネルギーEを推定するための摩耗エネルギー推定方法である。摩耗エネルギー推定方法は、タイヤの接地圧PZ、滑り量S及び滑り速度VSを取得する第1工程S2と、接地圧PZと滑り速度VSとから、せん断力τを求める第2工程S3と、滑り量Sとせん断力τとから、摩耗エネルギーEを求める第3工程S4とを含んでいる。第2工程S3は、接地圧PZと滑り速度VSと予め定められた3個以下の係数とに基づき、せん断力τを求めている。
【選択図】 図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
タイヤの摩耗エネルギーEを推定するための摩耗エネルギー推定方法であって、
前記タイヤの接地圧PZ、滑り量S及び滑り速度VSを取得する第1工程と、
前記接地圧PZと前記滑り速度VSとから、せん断力τを求める第2工程と、
前記滑り量Sと前記せん断力τとから、前記摩耗エネルギーEを求める第3工程とを含み、
前記第2工程は、前記接地圧PZと前記滑り速度VSと予め定められた3個以下の係数とに基づき、前記せん断力τを求める、
摩耗エネルギー推定方法。
【請求項2】
前記第2工程は、前記係数として第1係数a、第2係数b及び第3係数cを用いて、下記数式(1)により前記せん断力τ(kN)を求める、請求項1に記載の摩耗エネルギー推定方法。
【数1】

ここで、PZ:接地圧(kPa)
VS:滑り速度(m/s)
a :第1係数
b :第2係数
c :第3係数
【請求項3】
前記第3係数cは、0.3~0.7の範囲から選択される、請求項2に記載の摩耗エネルギー推定方法。
【請求項4】
前記第1工程は、台上試験により前記接地圧PZ、前記滑り量S及び前記滑り速度VSを取得する、請求項1ないし3のいずれか1項に記載の摩耗エネルギー推定方法。
【請求項5】
前記係数は、前記台上試験と同じ条件での予備試験により同定される、請求項4に記載の摩耗エネルギー推定方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、タイヤの摩耗エネルギーを推定するための摩耗エネルギー推定方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、タイヤの摩耗状態を予測するために、タイヤの摩耗エネルギーを推定する方法が種々提案されている。例えば、下記特許文献1は、接地面内におけるタイヤトレッドの複数個所の摩擦係数、滑り速度及び接地圧に基づき複数個所のせん断力を推定し、測定された滑り量と推定されたせん断力とに基づき摩擦エネルギーを演算する測定方法を提案している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2010-078416号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1の摩耗エネルギー推定方法は、推定に用いられる係数を予備試験で同定する必要があり、その係数の数が多いことから、予備試験に要する時間が長くなるとの問題点があった。
【0005】
本発明は、以上のような実状に鑑み案出されたもので、タイヤの摩耗エネルギーを短時間で精度よく推定し得る摩耗エネルギー推定方法を提供することを主たる目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、タイヤの摩耗エネルギーEを推定するための摩耗エネルギー推定方法であって、前記タイヤの接地圧PZ、滑り量S及び滑り速度VSを取得する第1工程と、前記接地圧PZと前記滑り速度VSとから、せん断力τを求める第2工程と、前記滑り量Sと前記せん断力τとから、前記摩耗エネルギーEを求める第3工程とを含み、前記第2工程は、前記接地圧PZと前記滑り速度VSと予め定められた3個以下の係数とに基づき、前記せん断力τを求める、摩耗エネルギー推定方法である。
【発明の効果】
【0007】
本発明の摩耗エネルギー推定方法は、上述の構成を備えることにより、タイヤの摩耗エネルギーを短時間で精度よく推定することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】本発明の摩耗エネルギー推定方法の一実施形態を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明の実施の一形態が図面に基づき詳細に説明される。
図1は、本実施形態の摩耗エネルギー推定方法を示すフローチャートである。本実施形態の摩耗エネルギー推定方法は、タイヤの摩耗状態を予測するために、タイヤの摩耗エネルギーEを推定する方法である。タイヤは、例えば、乗用車用タイヤ、重荷重用タイヤ、二輪車用タイヤ、競技用タイヤ等、種々のタイヤから選択することができる。本実施形態の摩耗エネルギー推定方法は、種々のタイヤの中でも、重荷重用タイヤの推定に好適に用いられる。
【0010】
図1に示されるように、本実施形態の摩耗エネルギー推定方法は、まず、準備工程S1が行われる。準備工程S1では、同定された係数等が準備されるのが望ましい。準備工程S1は、例えば、台上試験により摩耗エネルギーEを推定する場合、対象となるタイヤや摩耗試験機等も準備される。摩耗試験機としては、少なくともタイヤの接地圧PZ、滑り量S及び滑り速度VSを測定可能であれば、従来から用いられる一般的なものが適宜採用され得る。
【0011】
本実施形態の摩耗エネルギー推定方法は、第1工程S2として、タイヤの接地圧PZ、滑り量S及び滑り速度VSを取得する。タイヤの接地圧PZ、滑り量S及び滑り速度VSは、タイヤの接地面の複数ポイントから取得されるのが望ましい。このような第1工程S2は、実車による実走行での摩耗状態を再現するための定量的な指標を取得することが容易である。
【0012】
本実施形態の摩耗エネルギー推定方法は、第2工程S3として、接地圧PZと滑り速度VSとから、せん断力τを求める。せん断力τは、例えば、コンピュータを用いて算出される。第2工程S3は、接地圧PZと滑り速度VSと予め定められた3個以下の係数とに基づき、せん断力τを求めるのが望ましい。このような第2工程S3は、準備工程S1で準備される係数の数が3個以下であることから、係数の同定に要する時間を短縮することができる。
【0013】
本実施形態の摩耗エネルギー推定方法は、第3工程S4として、滑り量Sとせん断力τとから、摩耗エネルギーEを求める。摩耗エネルギーEは、例えば、コンピュータを用いて算出される。このような第3工程S4は、摩耗エネルギーEを精度よく求めることができる。このため、本実施形態の摩耗エネルギー推定方法は、タイヤの摩耗エネルギーEを短時間で精度よく推定することができる。
【0014】
より好ましい態様として、準備工程S1において、係数は、台上試験と同じ条件での予備試験により同定される。本実施形態の摩耗エネルギー推定方法で用いられる係数は、ゴム配合、路面温度、環境温度、転動速度、負荷荷重等により変動するものであるが、台上試験と同じ条件で同定されることで、摩耗エネルギーEを精度よく推定することに役立つ。
【0015】
第1工程S2は、摩耗試験機を用いた台上試験によりタイヤの接地圧PZ、滑り量S及び滑り速度VSを取得するのが望ましい。このような第1工程S2は、タイヤの接地圧PZ、滑り量S及び滑り速度VSを精度よく取得することができる。
【0016】
本実施形態の第2工程S3は、係数として第1係数a、第2係数b及び第3係数cを用いている。第2工程S3は、下記数式(1)によりせん断力τ(kN)を求めるのが望ましい。
【数1】

ここで、PZ:接地圧(kPa)
VS:滑り速度(m/s)
a :第1係数
b :第2係数
c :第3係数
【0017】
このような第2工程S3は、第1係数a、第2係数b及び第3係数cを同定するのみで、せん断力τを精度よく求めることができる。また、この第2工程S3は、同定を要する係数が少なく、同定に要する時間を短縮することができる。
【0018】
数式(1)で用いられる第3係数cは、0.3~0.7の範囲から選択されるのが望ましい。予備試験の時間短縮を優先する場合は、例えば、第3係数cとして定数が採用されてもよい。この場合、同定を要する係数は、第1係数a及び第2係数bの2個となる。このような第2工程S3は、同定を要する係数が限定されるので、同定に要する時間をより短縮することができる。
【0019】
第3工程S4は、下記数式(2)により摩耗エネルギーEを求めるのが望ましい。
【数2】

ここで、τ:せん断力
S:滑り量
【0020】
このような第3工程S4は、摩耗エネルギーEを精度よく容易に求めることができる。このため、本実施形態の摩耗エネルギー推定方法は、タイヤの摩耗エネルギーEを短時間で精度よく推定することができ、タイヤの摩耗状態を効率よく予測することに役立つ。
【0021】
なお、上述の実施形態では、摩耗試験機を用いて台上試験する場合について説明されたが、本実施形態の摩耗エネルギー推定方法は、そのような態様に限定されるものではなく、例えば、コンピュータを用いたシミュレーションに応用することもできる。
【0022】
以上、本発明の特に好ましい実施形態について詳述したが、本発明は、上述の実施形態に限定されることなく、種々の態様に変形して実施され得る。
【0023】
[付記]
本発明は、次のとおりである。
【0024】
[本発明1]
タイヤの摩耗エネルギーEを推定するための摩耗エネルギー推定方法であって、
前記タイヤの接地圧PZ、滑り量S及び滑り速度VSを取得する第1工程と、
前記接地圧PZと前記滑り速度VSとから、せん断力τを求める第2工程と、
前記滑り量Sと前記せん断力τとから、前記摩耗エネルギーEを求める第3工程とを含み、
前記第2工程は、前記接地圧PZと前記滑り速度VSと予め定められた3個以下の係数とに基づき、前記せん断力τを求める、
摩耗エネルギー推定方法。
【0025】
[本発明2]
前記第2工程は、前記係数として第1係数a、第2係数b及び第3係数cを用いて、下記数式(1)により前記せん断力τ(kN)を求める、本発明1に記載の摩耗エネルギー推定方法。
【数1】

ここで、PZ:接地圧(kPa)
VS:滑り速度(m/s)
a :第1係数
b :第2係数
c :第3係数
【0026】
[本発明3]
前記第3係数cは、0.3~0.7の範囲から選択される、本発明2に記載の摩耗エネルギー推定方法。
【0027】
[本発明4]
前記第1工程は、台上試験により前記接地圧PZ、前記滑り量S及び前記滑り速度VSを取得する、本発明1ないし3のいずれかに記載の摩耗エネルギー推定方法。
【0028】
[本発明5]
前記係数は、前記台上試験と同じ条件での予備試験により同定される、本発明4に記載の摩耗エネルギー推定方法。
【符号の説明】
【0029】
S2 第1工程
S3 第2工程
S4 第3工程
図1