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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024045889
(43)【公開日】2024-04-03
(54)【発明の名称】車両制御システム
(51)【国際特許分類】
   B60W 40/105 20120101AFI20240327BHJP
   B60W 60/00 20200101ALI20240327BHJP
   G08G 1/16 20060101ALI20240327BHJP
【FI】
B60W40/105
B60W60/00
G08G1/16 C
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022150964
(22)【出願日】2022-09-22
(71)【出願人】
【識別番号】000005326
【氏名又は名称】本田技研工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001379
【氏名又は名称】弁理士法人大島特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】渡辺 誠二
【テーマコード(参考)】
3D241
5H181
【Fターム(参考)】
3D241BA49
3D241BC01
3D241BC02
3D241CC01
3D241CC08
3D241CC17
3D241CD07
3D241CE04
3D241CE05
3D241DB01Z
3D241DB02Z
3D241DB05Z
3D241DB12Z
3D241DB20Z
3D241DB32Z
3D241DC33Z
3D241DC34Z
3D241DC39Z
3D241DC42Z
3D241DC50Z
5H181AA01
5H181BB13
5H181CC02
5H181CC03
5H181CC04
5H181CC12
5H181CC14
5H181FF04
5H181FF27
5H181FF33
5H181LL09
(57)【要約】
【課題】 車両制御システムにおいて、取得する車速の精度を向上させる。
【解決手段】 制御装置10は、第1差D1、第2差D2、及び第3差D3のそれぞれが判定値H以下である場合、第1~第3車速V1~V3の少なくとも1つに基づいて車両の走行制御を実行する。第1差D1及び第3差D3のそれぞれが判定値Hより大きく、かつ第2差D2が判定値H以下である場合に、制御装置10は、第1車速V1に基づいて走行制御を実行することを禁止する。第1差D1及び第2差D2のそれぞれが判定値Hより大きく、かつ第3差D3が判定値H以下である場合に、制御装置10は、第2車速V2に基づいて走行制御を実行することを禁止する。第1差D1が判定値H以下であり、かつ第2差D2及び第3差D3のそれぞれが判定値Hより大きい場合に、制御装置10は、第3車速V3に基づいて走行制御を実行することを禁止する。
【選択図】 図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両制御システムであって、
車速に関する情報を取得可能な第1車速取得手段、第2車速取得手段、及び第3車速取得手段と、
前記第1車速取得手段からの信号に基づいて車速を第1車速として演算し、前記第2車速取得手段からの信号に基づいて車速を第2車速として演算し、前記第3車速取得手段からの信号に基づいて車速を第3車速として演算し、前記第1車速、前記第2車速、及び前記第3車速の少なくとも1つに基づいて車両を制御する制御装置とを有し、
前記制御装置は、
前記第1車速と前記第2車速との差が所定の判定値以下であり、かつ前記第2車速と前記第3車速との差が前記判定値以下であり、かつ前記第3車速と前記第1車速との差が前記判定値以下である場合、前記第1車速、前記第2車速、及び前記第3車速の少なくとも1つに基づいて車両の走行制御を実行し、
前記第1車速と前記第2車速との差が前記判定値より大きく、かつ前記第2車速と前記第3車速との差が前記判定値以下であり、かつ前記第3車速と前記第1車速との差が前記判定値より大きい場合に、前記第1車速に基づいて前記走行制御を実行することを禁止し、
前記第1車速と前記第2車速との差が前記判定値より大きく、かつ前記第2車速と前記第3車速との差が前記判定値より大きく、かつ前記第3車速と前記第1車速との差が前記判定値以下である場合に、前記第2車速に基づいて前記走行制御を実行することを禁止し、
前記第1車速と前記第2車速との差が前記判定値以下であり、かつ前記第2車速と前記第3車速との差が前記判定値より大きく、かつ前記第3車速と前記第1車速との差が前記判定値より大きい場合に、前記第3車速に基づいて前記走行制御を実行することを禁止する車両制御システム。
【請求項2】
前記制御装置は、前記第1車速が第1範囲外であるときに、前記第1車速に基づいて前記走行制御を実行することを禁止する請求項1に記載の車両制御システム。
【請求項3】
前記制御装置は、前記第2車速が第2範囲外であるときに、前記第2車速に基づいて前記走行制御を実行することを禁止する請求項2に記載の車両制御システム。
【請求項4】
前記制御装置は、前記第3車速が第3範囲外であるときに、前記第3車速に基づいて前記走行制御を実行することを禁止する請求項3に記載の車両制御システム。
【請求項5】
前記第1車速取得手段は、車輪速を取得する車輪速センサである請求項1に記載の車両制御システム。
【請求項6】
前記第2車速取得手段は、加速度センサである請求項1に記載の車両制御システム。
【請求項7】
前記第3車速取得手段は、カメラ、レーダ、ライダ、GNSS受信部から選択される1つである請求項1に記載の車両制御システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両制御システムに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、交通参加者の中で脆弱な立場にある人々に配慮した持続可能な輸送システムを提供する取り組みが活発化している。この取り組みにおいて、出願人は予防安全技術に関する研究開発を通して交通の安全性や利便性をより一層改善することを意図している。自動車の自動運転制御を行うために、車速を正確に取得する技術は重要である。例えば、特許文献1に開示されているように、車両制御システムは、車輪の回転速度を検出する車輪速センサからの信号に基づいて車速を取得する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2022-121049号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
タイヤがスリップした状態やロックした状態では、車輪速センサは正確な車速を取得することができないという問題がある。この問題に対して、車輪速センサと異なる他のセンサを追加して、車速を取得するシステムを冗長系にすることが考えられる。しかし、一方のセンサから取得される車速が異常と判定されない範囲でずれている場合に、いずれのセンサが正しい車速を出力しているのかを特定できないという問題がある。
【0005】
本発明は、以上の背景を鑑み、車両制御システムにおいて、取得する車速の精度を向上させることを課題とする。また、本発明は持続可能な輸送システムの発展に寄与することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するために本発明のある態様は、車両制御システム(1)であって、車速に関する情報を取得可能な第1車速取得手段(26)、第2車速取得手段(27)、及び第3車速取得手段(21、22、23、31)と、前記第1車速取得手段からの信号に基づいて車速を第1車速として演算し、前記第2車速取得手段からの信号に基づいて車速を第2車速として演算し、前記第3車速取得手段からの信号に基づいて車速を第3車速として演算し、前記第1車速、前記第2車速、及び前記第3車速の少なくとも1つに基づいて車両を制御する制御装置(10)とを有し、前記制御装置は、前記第1車速と前記第2車速との差が所定の判定値以下であり、かつ前記第2車速と前記第3車速との差が前記判定値以下であり、かつ前記第3車速と前記第1車速との差が前記判定値以下である場合、前記第1車速、前記第2車速、及び前記第3車速の少なくとも1つに基づいて車両の走行制御を実行し、前記第1車速と前記第2車速との差が前記判定値より大きく、かつ前記第2車速と前記第3車速との差が前記判定値以下であり、かつ前記第3車速と前記第1車速との差が前記判定値より大きい場合に、前記第1車速に基づいて前記走行制御を実行することを禁止し、前記第1車速と前記第2車速との差が前記判定値より大きく、かつ前記第2車速と前記第3車速との差が前記判定値より大きく、かつ前記第3車速と前記第1車速との差が前記判定値以下である場合に、前記第2車速に基づいて前記走行制御を実行することを禁止し、前記第1車速と前記第2車速との差が前記判定値以下であり、かつ前記第2車速と前記第3車速との差が前記判定値より大きく、かつ前記第3車速と前記第1車速との差が前記判定値より大きい場合に、前記第3車速に基づいて前記走行制御を実行することを禁止する。
【0007】
この態様によれば、1つのセンサによって取得された車速にずれが生じている場合には、他の2つのセンサによって取得された車速との比較によって、ずれが生じているセンサを特定することができる。これにより、車両制御システムは、取得する車速の精度を向上させることができる。
【0008】
上記の態様において、前記制御装置は、前記第1車速が第1範囲外であるときに、前記第1車速に基づいて前記走行制御を実行することを禁止してもよい。また、前記制御装置は、前記第2車速が第2範囲外であるときに、前記第2車速に基づいて前記走行制御を実行することを禁止してもよい。前記制御装置は、前記第3車速が第3範囲外であるときに、前記第3車速に基づいて前記走行制御を実行することを禁止してもよい。
【0009】
これらの態様によれば、各センサから出力する車速が所定の範囲外である場合には、他のセンサが出力する車速と比較を行わずに、走行制御にすることが禁止される。そのため、車両制御システムの演算手順が簡素化される。
【0010】
上記の態様において、前記第1車速取得手段は、車輪速を取得する車輪速センサであってもよい。前記第2車速取得手段は、加速度センサであってもよい。前記第3車速取得手段は、カメラ、レーダ、ライダ、GNSS受信部から選択されてもよい。
【発明の効果】
【0011】
以上の構成によれば、車両制御システムにおいて、取得する車速の精度を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】実施形態に係る車両制御システムの説明図
図2】車速取得処理の手順を示すフロー図
図3】車速の差とフラグとの関係の一例を示すマップ
図4】車輪がスリップした場合の各センサが取得する車速の例を示すグラフ
図5】車輪がロックした場合の各センサが取得する車速の例を示すグラフ
図6】加速度センサに異常が生じた場合の各センサが取得する車速の例を示すグラフ
図7】加速度センサの出力電圧と異常判定値との関係を示すグラフ
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、図面を参照して、本発明に係る車両制御システムの実施形態について説明する。
【0014】
図1に示すように、車両に搭載された車両制御システム1は、推進装置2、ブレーキ装置3、ステアリング装置4、外界センサ5、車両センサ6、ナビゲーション装置7、運転操作装置8、HMI9(Human Machine Interface)、及び制御装置10を有している。車両制御システム1の各構成は、CAN(Controller Area Network)等の通信手段によって信号伝達可能に互いに接続されている。
【0015】
推進装置2は車両に駆動力を付与する装置であり、例えば動力源及び変速機を含む。動力源はガソリンエンジンやディーゼルエンジン等の内燃機関及び電動機の少なくとも一方を有する。ブレーキ装置3は車両に制動力を付与する装置であり、例えばブレーキロータにパッドを押し付けるブレーキキャリパと、ブレーキキャリパに油圧を供給する電動シリンダとを含む。ブレーキ装置3はワイヤケーブルによって車輪の回転を規制するパーキングブレーキ装置を含んでもよい。ステアリング装置4は車輪の舵角を変えるための装置であり、例えば車輪を転舵するラックアンドピニオン機構と、ラックアンドピニオン機構を駆動する電動モータとを有する。推進装置2、ブレーキ装置3、及びステアリング装置4は、制御装置10によって制御される。
【0016】
外界センサ5は車両の周辺からの電磁波や光を捉えて、車外の物体等を検出するセンサである。外界センサ5は、例えば、レーダ21、ライダ22(LIDAR)、及び車外カメラ23を含む。外界センサ5は検出結果を制御装置10に出力する。
【0017】
レーダ21はミリ波等の電波を車両の周囲に発射し、その反射波を捉えることにより、物体の位置(距離及び方向)を検出する。レーダ21は車両の任意の箇所に少なくとも1つ取り付けられている。レーダ21は、少なくとも車両の前方に向けて電波を照射する前方レーダ、車両の後方に向けて電波を照射する後方レーダ、車両の側方に向けて電波を照射する左右一対の側方レーダを含むことが好ましい。
【0018】
ライダ22は赤外線等の光を車両の周囲に照射し、その反射光を捉えることにより、物体の位置(距離及び方向)を検出する。ライダ22は車両の任意の箇所に少なくとも1つ設けられている。
【0019】
車外カメラ23は車両の周囲に存在する物体(例えば、周辺車両や歩行者)や、ガードレール、縁石、壁、中央分離帯、道路の形状や道路に描かれた道路標示等を含む車両の周囲を撮像する。車外カメラ23は、例えば、CCDやCMOS等の固体撮像素子を利用したデジタルカメラであってよい。車外カメラ23は、車両の任意の箇所に少なくとも1つ設けられる。車外カメラ23は少なくとも車両の前方を撮像する前方カメラを含み、更に車両の後方を撮像する後方カメラ及び車両の左右側方を撮像する一対の側方カメラを含んでいるとよい。車外カメラ23は、例えばステレオカメラであってもよい。
【0020】
車両センサ6は、車輪の回転速度を検出する車輪速センサ26、車両の加速度を検出する加速度センサ27、鉛直軸回りの角速度を検出するヨーレートセンサ28等を含む。ヨーレートセンサ28は、例えばジャイロセンサである。
【0021】
ナビゲーション装置7は車両の現在位置を取得し、目的地への経路案内等を行う装置である。ナビゲーション装置7は、GNSS受信部31、位置特定部32、地図記憶部33、ナビインタフェース34、経路決定部35を有する。GNSS受信部31は人工衛星(測位衛星)から受信した信号に基づいて車両の位置(緯度や経度)を特定する。地図記憶部33は、フラッシュメモリやハードディスク等の公知の記憶装置によって構成され、地図情報を記憶している。ナビインタフェース34は乗員からの目的地などの入力を受け付けると共に、乗員に表示や音声によって各種情報を提示する。ナビインタフェース34は例えばタッチパネルディスプレイや、スピーカ等を含むとよい。他の実施形態では、ナビゲーション装置7は、制御装置10の一部として構成されていてもよい。
【0022】
運転操作装置8は、運転者が車両を制御するために行う入力操作を受け付ける。運転操作装置8は、例えば、ステアリングホイール、アクセルペダル、ブレーキペダル、シフトレバー、及びパーキングブレーキレバー等を含む。
【0023】
制御装置10は、CPU、ROM、及びRAM等から構成される電子制御装置(ECU)である。制御装置10はCPUでプログラムに沿った演算処理を実行することで、各種の車両制御を実行する。制御装置10は1つのハードウェアとして構成されていてもよく、複数のハードウェアからなるユニットとして構成されていてもよい。また、制御装置10の各機能部の少なくとも一部は、LSIやASIC、FPGA等のハードウェアによって実現されてもよく、ソフトウェア及びハードウェアの組み合わせによって実現されてもよい。
【0024】
図1に示すように、制御装置10は、外界認識部41、自車位置認識部42、車速取得部43、行動計画部44、及び走行制御部45を含む。外界認識部41は、外界センサ5の検出結果に基づいて、車両の周辺に位置する障害物や、道路の形状、歩道の有無、道路標示を認識する。
【0025】
自車位置認識部42は、車両が走行している車線である走行車線、及び走行車線に対する車両の相対位置及び角度を認識する。自車位置認識部42は、例えば、地図記憶部33が保持する地図情報とGNSS受信部31が取得する車両の位置とに基づいて、走行車線を認識するとよい。
【0026】
車速取得部43は、各種センサからの信号に基づいて車速を取得する。車速取得部43の詳細については後述する。
【0027】
行動計画部44は、経路に沿って車両を走行させるための行動計画を順次作成する。行動計画部44は車両が障害物と接触することなく、経路決定部35により決定された目標車線を走行するためのイベントを決定する。イベントには定速度で同じ走行車線を走行する定速走行イベント、低速度(例えば60[km/h]以下)で前走車両に追従する追従イベント、車両の走行車線を変更する車線変更イベント、前走車両を追い越す追い越しイベント、道路の合流地点で車両を合流させる合流イベント、道路の分岐地点で車両を目的の方向に走行させる分岐イベント、自動運転を終了して手動運転にする自動運転終了イベント、及び介入要求(ハンドオーバ要求)に対して運転者が応じない場合に車両を停止する停車イベントが含まれる。行動計画部44は、これらのイベントの実行中に、車両の周辺状況(周辺車両や歩行者の存在、道路工事による車線狭窄等)に基づいて、障害物等を回避するための回避イベントを決定してもよい。行動計画部44は、決定したイベントに基づいて、車両が将来走行すべき目標軌道を生成する。
【0028】
走行制御部45は、行動計画部44によって生成された目標軌道を、予定の時刻通りに車両が通過するように、推進装置2、ブレーキ装置3、及びステアリング装置4を制御する。これにより、車両は乗員の操作によらず、走行する。
【0029】
以下に、車速取得部43の構成について説明する。車両制御システム1は、車速に関する情報を取得可能な第1車速取得手段、第2車速取得手段、及び第3車速取得手段を有する。第1~第3車速V1~V3取得手段は、車輪速センサ26、加速度センサ27、車外カメラ23、レーダ21、ライダ22、GNSS信号受信機からなる群から選択されるとよい。本実施形態では、第1車速取得手段が車輪速センサ26であり、第2車速取得手段が加速度センサ27であり、第3車速取得手段が車外カメラ23である。他の実施形態では、第3車速取得手段は、車外カメラ23、レーダ21、ライダ22、GNSS受信部31から選択される1つであるとよい。
【0030】
車速取得部43は、第1車速取得手段からの信号に基づいて車速を第1車速V1として演算し、第2車速取得手段からの信号に基づいて車速を第2車速V2として演算し、第3車速取得手段からの信号に基づいて車速を第3車速V3として演算する。
【0031】
具体的には、車速取得部43は、車輪速センサ26が出力する、車輪の回転速度(車輪速)に対応する信号と、車輪の直径とに基づいて第1車速V1を取得する。また、車速取得部43は、加速度センサ27が取得する車両の前後加速度を積分することによって、車両の前後車速を第2車速V2として取得する。
【0032】
車速取得部43は、車外カメラ23が撮像した画像に基づいて車速を取得する。車速取得部43は、車外カメラ23が所定の撮像間隔をおいて撮像した2つの画像に含まれる固定物標をトラッキングすることによって車速を第3車速V3として取得する。車速取得部43は、2つの画像に基づいて、固定物標の車両に対する移動距離を取得し、移動距離を撮像間隔で除することによって固定物標の車両に対する相対速度を第3車速V3として取得する。固定物標は、例えば、路面上の道路標識や車線、ガードレール等であってよい。
【0033】
他の実施形態では、車速取得部43は、GNSS信号に基づく車両の位置に基づいて第3車速V3を取得してもよい。例えば、車速取得部43は、所定の位置取得間隔で取得される2つの車両位置に基づいて位置取得間隔における車両の移動距離を取得し、移動距離を位置取得間隔で除することによって第3車速V3を取得してもよい。また、車速取得部43は、レーダ21又はライダ22からの信号に基づいて第3車速V3を取得してもよい。レーダ21及びライダ22が検出する反射波の振動数は、ドップラー効果として知られているように車両の速度に応じて変化するため、反射波の振動数を検出することによって車速を取得することができる。
【0034】
車速取得部43は、図2の車速取得処理に基づいて車速を取得する。最初に、車速取得部43は、車輪速センサ26、加速度センサ27、及び車外カメラ23からの信号に基づいて、第1車速V1、第2車速V2、及び第3車速V3を取得する(S1)。
【0035】
次に、車速取得部43は、第1車速V1が第1範囲内であり、かつ第2車速V2が第2範囲内であり、かつ第3車速V3が第3範囲内外であるか否かを判定する(S2)。第1範囲、第2範囲、及び第3範囲は、車速が通常取り得る範囲として設定されている。例えば、第1~第3範囲は、-200km/h~200km/hに設定されているとよい。第1~第3範囲は、同一の範囲であってもよく、互いに異なる範囲であってもよい。
【0036】
車速取得部43は、第1車速V1が第1範囲内であり、かつ第2車速V2が第2範囲内であり、かつ第3車速V3が第3範囲内である場合(S2の判定結果がYes)、第1~第3車速V1~V3の互いの差を算出する(S3)。具体的には、車速取得部43は、第1車速V1と第2車速V2との差を第1差D1、第2車速V2と第3車速V3との差を第2差D2、第3車速V3と第1車速V1との差を第3差D3として算出する。
【0037】
次に、車速取得部43は、第1差D1、第2差D2、及び第3差D3に基づいて、各車速に対応した第1~第3フラグF1~F3を設定する(S4)。第1フラグF1は第1車速V1の状態を表し、第2フラグF2は第2車速V2の状態を表し、第3フラグF3は第3車速V3の状態を表す。各フラグF1~F3に1が設定される場合、各車速は正常値であると推定される。各フラグF1~F3に0が設定される場合、各車速は異常値であると推定される。車速取得部43は、第1差D1、第2差D2、及び第3差D3に基づいて、マップを参照し、各フラグを設定するとよい。
【0038】
マップは、例えば、図3に示すように設定されるとよい。第1差D1、第2差D2、及び第3差D3が判定値Hと比較されることによって、各フラグF1~F3が設定されるとよい。判定値Hは、第1~第3車速V1~V3の差の大小を判定するために設定されている。例えば、第1差D1が判定値H以下の場合、第1車速V1と第2車速V2との差は許容可能なほど小さいと判定される。
【0039】
第1差D1、第2差D2、及び第3差D3の全てが判定値H以下である場合(図3のパターンP1)、車速取得部43は第1フラグF1に1、第2フラグF2に1、第3フラグF3に1を設定する。第1差D1が判定値Hより大きく、かつ第2差D2が判定値H以下であり、かつ第3差D3が前記判定値Hより大きい場合(図3のパターンP2)、車速取得部43は第1フラグF1に0、第2フラグF2に1、第3フラグF3に1を設定する。第1差D1が判定値Hより大きく、かつ第2差D2が前記判定値Hより大きく、かつ第3差D3が判定値H以下である場合(図3のパターンP3)、車速取得部43は第1フラグF1に1、第2フラグF2に0、第3フラグF3に1を設定する。第1差D1が前記第1判定以下であり、かつ第2差D2が前記判定値Hより大きく、かつ第3差D3が判定値Hより大きい場合(図3のパターンP4)、車速取得部43は第1フラグF1に1、第2フラグF2に1、第3フラグF3に0を設定する。
【0040】
図3のパターンP6、P7、P8における第1~第3フラグF1~F3の設定態様は一例であり、他の実施形態ではパターンP6、P7、P8のときに、第1~第3フラグF1~F3の全てに1を設定してもよい。
【0041】
第1車速V1が第1範囲外、又は第2車速V2が第2範囲外、又は第3車速V3が第3範囲内外である場合(ステップS2の判定結果がNoの場合)、車速取得部43は第1車速V1が第1範囲外であるか否かを判定する(S5)。第1車速V1が第1範囲外である場合(S5の判定結果がYesの場合)、車速取得部43は第1フラグF1に0を設定する(S6)。一方、第1車速V1が第1範囲内である場合(S5の判定結果がNoの場合)、車速取得部43は第1フラグF1に1を設定する(S7)。
【0042】
ステップS6又はステップS7の次に、車速取得部43は第2車速V2が第2範囲外であるか否かを判定する(S8)。第2車速V2が第2範囲外である場合(S8の判定結果がYesの場合)、車速取得部43は第2フラグF2に0を設定する(S9)。一方、第2車速V2が第2範囲内である場合(S8の判定結果がNoの場合)、車速取得部43は第2フラグF2に1を設定する(S10)。
【0043】
ステップS9又はステップS10の次に、車速取得部43は第3車速V3が第3範囲外であるか否かを判定する(S11)。第3車速V3が第3範囲外である場合(S11の判定結果がYesの場合)、車速取得部43は第3フラグF3に0を設定する(S12)。一方、第3車速V3が第3範囲内である場合(S11の判定結果がNoの場合)、車速取得部43は第3フラグF3に1を設定する(S13)。
【0044】
ステップS4、ステップS12、又はステップS13の次に、車速取得部43は、第1~第3車速V1~V3と、第1~第3フラグF1~F3とに基づいて、車速Vを決定する。車速取得部43は、フラグFが1である、第1~第3車速V1~V3に基づいて車速Vを決定する。例えば、第1フラグF1が0であり、第2フラグF2が1かつ第3フラグF3が1である場合、第2車速V2と第3車速V3とに基づいて車速Vを決定する。この場合、フラグFが1である第2車速V2及び第3車速V3の平均値であってもよい。また、第1~第3車速V1~V3の内でフラグFが1であるものが複数ある場合、第1~第3車速V1~V3の内で優先的に使用される順番が予め設定されていてもよい。設定された車速Vは、走行制御部45が走行制御を実行する際に使用される。
【0045】
以上の車両制御システム1によれば、制御装置10は第1車速V1と第2車速V2との差(第1差D1)が判定値H以下であり、かつ第2車速V2と第3車速V3との差(第2差D2)が判定値H以下であり、かつ第3車速V3と第1車速V1との差(第3差D3)が判定値H以下である場合、第1車速V1、第2車速V2、及び第3車速V3の少なくとも1つに基づいて車両の走行制御を実行する。また、制御装置10は、第1車速V1と第2車速V2との差(第1差D1)が判定値Hより大きく、かつ第2車速V2と第3車速V3との差(第2差D2)が判定値H以下であり、かつ第3車速V3と第1車速V1との差(第3差D3)が判定値Hより大きい場合に、第1車速V1に基づいて走行制御を実行することを禁止する。また、制御装置10は、第1車速V1と第2車速V2との差(第1差D1)が判定値Hより大きく、かつ第2車速V2と第3車速V3との差(第2差D2)が判定値Hより大きく、かつ第3車速V3と第1車速V1との差(第3差D3)が判定値H以下である場合に、第2車速V2に基づいて走行制御を実行することを禁止する。また、制御装置10は、第1車速V1と第2車速V2との差が第1判定以下であり、かつ第2車速V2と第3車速V3との差(第2差D2)が判定値Hより大きく、かつ第3車速V3と第1車速V1との差(第3差D3)が判定値Hより大きい場合に、第3車速V3に基づいて走行制御を実行することを禁止する。
【0046】
また、制御装置10は、第1車速V1が第1範囲外であるときに、第1車速V1に基づいて走行制御を実行することを禁止する。また、制御装置10は、第2車速V2が第2範囲外であるときに、第2車速V2に基づいて走行制御を実行することを禁止する。また、制御装置10は、第3車速V3が第3範囲外であるときに、第3車速V3に基づいて走行制御を実行することを禁止する。
【0047】
以上の車両制御システム1によれば、1つのセンサによって取得された車速にずれが生じている場合には、他の2つのセンサによって取得された車速との比較によって、ずれが生じているセンサを特定することができる。これにより、車両制御システム1は、取得する車速の精度を向上させることができる。また、各センサから出力する車速が所定の範囲外である場合には、他のセンサが出力する車速と比較を行わずに、走行制御にすることが禁止される。そのため、車両制御システム1の演算手順が簡素化される。
【0048】
図4に示すように、車輪にスリップが生じた場合、車輪速センサ26から取得される車速は変動する。また、図5に示すように、車輪にロックが生じた場合、車輪速センサ26から取得される車速は変動する。一方、車輪にスリップやロックが発生した場合でも、車外カメラ23や、レーダ21、ライダ22から取得される車速は変動しない。このような場合には、車両制御システム1は、車外カメラ23から取得される車速のフラグを0にし、車外カメラ23や、レーダ21、ライダ22から取得される車速を走行制御に使用する。
【0049】
図6に示すように、加速度センサ27に異常が生じた場合、加速度センサ27によって取得される車速は、他のセンサによって取得される車速に対して差が生じる。そのため、各センサによって取得される車速を比較することによって、異常が生じているセンサを特定することができる。
【0050】
以上で具体的実施形態の説明を終えるが、本発明は上記実施形態に限定されることなく幅広く変形実施することができる。例えば、ステップS5、S8、S11では、車速が所定の範囲内にあるか否かを判定することによって各センサが異常であるか否かを判定したが、車速に代えて各センサから出力される信号に基づいて各センサの異常を判定してもよい。例えば、図7に示すように、加速度センサ27の場合、加速度センサ27から出力される電圧が電圧低故障判定値と電圧高故障判定値との間にあるか否かを検出することによって、加速度センサ27の異常を判定してもよい。これにより、加速度センサ27の出力値に基づいて車速を取得する工程を省略することができる。また、各センサの異常判定は、ステップS1の第1~第3車速V1~V23を取得する前に行ってもよい。
【0051】
また、各フラグF1~F3に基づいて各センサの故障判定を行ってもよい。ただし、車輪速センサ26は、車輪のスリップやロックによって出力値が変動することが多いため、フラグF1~F3に基づいて故障判定は行わないことが好ましい。
【符号の説明】
【0052】
1 :車両制御システム
5 :外界センサ
6 :車両センサ
10 :制御装置
21 :レーダ
22 :ライダ
23 :車外カメラ
26 :車輪速センサ
27 :加速度センサ
31 :GNSS受信部
43 :車速取得部
45 :走行制御部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7