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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024045909
(43)【公開日】2024-04-03
(54)【発明の名称】同軸電気コネクタ
(51)【国際特許分類】
   H01R 24/54 20110101AFI20240327BHJP
【FI】
H01R24/54
【審査請求】未請求
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022150996
(22)【出願日】2022-09-22
(71)【出願人】
【識別番号】390005049
【氏名又は名称】ヒロセ電機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100138140
【弁理士】
【氏名又は名称】藤岡 努
(72)【発明者】
【氏名】澤口 貴樹
【テーマコード(参考)】
5E223
【Fターム(参考)】
5E223AC35
5E223BA12
5E223BA17
5E223CA13
5E223CA21
5E223CD01
5E223DA05
5E223DB25
5E223GA08
5E223GA83
(57)【要約】
【課題】コネクタ接続方向での寸法について設計変更があっても簡単かつ安価に製造可能な同軸電気コネクタを提供する。
【解決手段】相手同軸コネクタ2,3が互いに反対側から1つずつ接続され相手同軸コネクタ2,3同士を中継する同軸電気コネクタ1において、相手同軸コネクタ2,3との接続方向に延びる中継体10と、接続方向での中継体10のそれぞれの端部に設けられ相手同軸コネクタ2,3に嵌合可能なシェル部材20,30とを有し、中継体10は、セミリジッドケーブルである。
【選択図】図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
相手同軸コネクタが互いに反対側から1つずつ接続され前記相手同軸コネクタ同士を中継する同軸電気コネクタにおいて、
前記相手同軸コネクタとの接続方向に延びる中継体と、
前記接続方向での中継体のそれぞれの端部に設けられ前記相手同軸コネクタに嵌合可能なシェル部材とを有し、
前記中継体は、セミリジッドケーブルであることを特徴とする同軸電気コネクタ。
【請求項2】
前記シェル部材は、前記接続方向を軸線方向とする筒状をなし、前記相手同軸コネクタに嵌合可能な嵌合部と、前記中継体の端部に外挿された状態で取り付けられる取付部とを有しており、
前記取付部は、溶着、接着剤での接着、あるいは径方向での塑性変形により、前記端部に取り付けられていることとする請求項1に記載の同軸電気コネクタ。
【請求項3】
前記取付部は、前記中継体の外径以上の内径をもって形成され前記中継体の端部に外挿される外挿部と、前記中継体の外径よりも小さい内径をもって形成された位置決め部とを有し、
前記取付部の内周面は、前記外挿部と前記位置決め部との境界位置に段部を有し、
前記中継体は、該中継体の外部導体の端面が前記接続方向で前記段部に当接することで位置決めされており、
前記段部は、前記外部導体の端面に当接する当接面が前記接続方向に対して傾斜するテーパ面として形成されており、
前記外部導体の端面は、前記当接面に接面可能なテーパ面として形成されていることとする請求項1または請求項2に記載の同軸電気コネクタ。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、相手同軸コネクタが互いに反対側から1つずつ接続され該相手同軸コネクタ同士を中継する同軸電気コネクタに関する。
【背景技術】
【0002】
この種の同軸電気コネクタとして、上方および下方からそれぞれ相手コネクタが1つずつ接続される同軸電気コネクタが、例えば特許文献1に開示されている。この同軸電気コネクタは、コネクタ接続方向(上下方向)に延びる複数の同軸端子と、これらの同軸端子を保持するハウジングとを有している。同軸端子は、略円筒状の金属製の外部導体と、外部導体内に配置される絶縁体と、外部導体内で該外部導体と同心をなすように配置され絶縁体に保持される中心導体とを有している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2020-123483号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に開示されているような、上方および下方から相手コネクタが接続されるコネクタにおいて、上下方向での相手コネクタ同士の距離は、コネクタ組立体(同軸電気コネクタおよび相手コネクタ)が設けられる電気機器の大きさや形状に応じて適宜設定される。また、同軸端子の上下方向寸法も上記距離に応じて設定される。特許文献1では、同軸端子の外部導体、中心導体および絶縁体は、それぞれ上下方向に延びる一部材として構成されている。したがって、同軸端子の上下方向寸法について設計変更があった場合には、その上下方向寸法に合わせて外部導体、中心導体および絶縁体を新たに設計し、製造しなければならず、同軸端子ひいては同軸電気コネクタの製造のための手間がかかるとともにコストが嵩むおそれがある。
【0005】
本発明は、かかる事情に鑑み、コネクタ接続方向での寸法について設計変更があっても簡単かつ安価に製造可能な同軸電気コネクタを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
(1) 本発明に係る同軸電気コネクタは、相手同軸コネクタが互いに反対側から1つずつ接続され前記相手同軸コネクタ同士を中継する。
【0007】
かかる同軸電気コネクタにおいて、本発明では、前記相手同軸コネクタとの接続方向に延びる中継体と、前記接続方向での中継体のそれぞれの端部に設けられ前記相手同軸コネクタに嵌合可能なシェル部材とを有し、前記中継体は、セミリジッドケーブルであることを特徴としている。
【0008】
本発明では、同軸電気コネクタは、上記接続方向に延びるセミリジッドケーブルである中継体と、該中継体のそれぞれの端部に設けられるシェル部材とを有している。同軸電気コネクタを製造する際には、要求される電気的特性を有するセミリジッドケーブルを予め十分な長さをもって用意しておき、このセミリジッドケーブルを設定された長さで切断して中継体とし、この中継体のそれぞれの端部にシェル部材を取り付ける。したがって、上記接続方向における同軸コネクタの寸法が電気機器の大きさや形状に応じて変更されても、変更された寸法に応じた長さでセミリジッドケーブルを切断すれば簡単に中継体が得られる。また、シェル部材については、同軸コネクタの上記接続方向での寸法が変更されても、変更前と同一のものを使用できるので、新たに設計する必要がない。したがって、本発明では、簡単に同軸電気コネクタを製造できる。また、中継体およびシェル部材を新たに設計する必要がなくなる分、製造コストの増大を抑制できる。
【0009】
(2) (1)の発明において、前記シェル部材は、前記接続方向を軸線方向とする筒状をなし、前記相手同軸コネクタに嵌合可能な嵌合部と、前記中継体の端部に外挿された状態で取り付けられる取付部とを有しており、前記取付部は、溶着、接着剤での接着、あるいは径方向での塑性変形により、前記端部に取り付けられていることとしてもよい。このように、溶着、接着剤での接着、あるいは径方向での塑性変形により、取付部を中継体の端部に取り付けられるようにすれば、同軸電気コネクタの製造時、シェル部材を中継体に簡単に取り付けることができる。
【0010】
(3) (1)または(2)の発明において、前記取付部は、前記中継体の外径以上の内径をもって形成され前記中継体の端部に外挿される外挿部と、前記中継体の外径よりも小さい内径をもって形成された位置決め部とを有し、前記取付部の内周面は、前記外挿部と前記位置決め部との境界位置に段部を有し、前記中継体は、該中継体の外部導体の端面が前記接続方向で前記段部に当接することで位置決めされており、前記段部は、前記外部導体の端面に当接する当接面が前記接続方向に対して傾斜するテーパ面として形成されており、前記外部導体の端面は、前記当接面に接面可能なテーパ面として形成されていてもよい。
【0011】
シェル部材の内径部分がドリル等の加工工具で切削されて形成される場合、上記取付部の段部には加工工具の先端形状に沿ったテーパ面が上記当接面として形成されることが多い。そこで、この段部に当接する上記外部導体の端面もテーパ面として形成し、上記段部の当接面に接面可能とすることにより、外部導体が上記当接面によって位置決めされた状態でテーパ面同士が接面するので、外部導体とシェル部材との間に接続方向で隙間が形成されなくなる。したがって、上記隙間が存在する場合に発生するインピーダンスの乱れの発生が抑制され、インピーダンスを一定に保ちやすくなり、その結果、同軸電気コネクタの電気的特性が向上する。
【発明の効果】
【0012】
本発明では、コネクタ接続方向での寸法について設計変更があっても簡単かつ安価に製造可能な同軸電気コネクタを提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】本発明の実施形態の同軸電気コネクタを相手同軸コネクタとともに示した斜視図であり、(A)はコネクタ嵌合接続前の状態、(B)はコネクタ嵌合接続後の状態を示している。
図2図1の同軸電気コネクタの各部材を分離して示した状態で示した斜視図である。
図3図1の同軸電気コネクタおよび相手同軸コネクタの軸線を含む面での断面を示した断面図であり、(A)はコネクタ嵌合接続前の状態、(B)はコネクタ嵌合接続後の状態を示している。
図4図3(A)の一部を拡大した断面図であり、中継体と下シェル部材との連結部分を拡大して示している。
図5】本発明の実施形態の変形例に係る同軸電気コネクタを示した斜視図であり、(A)は第一の変形例の同軸電気コネクタ、(B)は第二の変形例の同軸電気コネクタコネクタを示している。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、添付図面にもとづき、本発明の実施形態を説明する。
【0015】
図1(A),(B)は、本発明の実施形態の同軸電気コネクタ1(以下、「同軸コネクタ1」という)を相手同軸コネクタ2とともに示した斜視図であり、図1(A)はコネクタ嵌合接続前の状態、図1(B)はコネクタ嵌合接続後の状態を示している。図2は、図1の同軸コネクタ1の各部材を分離して示した状態で示した斜視図である。また、図3(A),(B)は、図1の同軸コネクタ1および相手同軸コネクタ2,3の軸線を含む面での断面を示した断面図であり、図3(A)はコネクタ嵌合接続前の状態、図3(B)はコネクタ嵌合接続後の状態を示している。図4は、図3(A)の一部を拡大した断面図であり、後述の中継体10と下シェル部材20との連結部分を拡大して示している。
【0016】
同軸コネクタ1は、互いに対面して配置される2つの回路基板(例えば、アンテナ回路基板と無線回路基板)のそれぞれに実装された相手同軸コネクタ2,3同士を中継するためのコネクタである。具体的には、同軸コネクタ1は、回路基板P1(図3(A),(B)参照)に実装された相手同軸コネクタ2が下方から嵌合接続されるとともに、他の回路基板P2(図3(A),(B)参照)に実装された相手同軸コネクタ3が上方から嵌合接続されることにより、相手同軸コネクタ2と相手同軸コネクタ3とを中継するようになっている。
【0017】
図1(A),(B)および図3(A),(B)に示されるように、同軸コネクタ1は、上下方向、すなわち相手同軸コネクタ2,3との接続方向に延びる中継体10と、中継体10の下端部に設けられる下シェル部材20と、中継体10の上端部に設けられる上シェル部材30とを有している。本実施形態では、下シェル部材20と上シェル部材30とを区別する必要がない場合には、説明の便宜上、「シェル部材20,30」と総称する。
【0018】
中継体10は、図3(A),(B)に示されるように、所定の長さに切断されたセミリジッドケーブルで構成されており、上下方向に延びる金属製の中心導体11と、中心導体11の外周面を覆って中心導体11を保持する樹脂等の電気絶縁材製の誘電体12と、誘電体12の外周面を覆って誘電体12を保持する金属製の外部導体13とを有している。
【0019】
図2に示されるように、中継体10の長手方向(上下方向)での両端部では、誘電体12および外部導体13が上下方向での異なる位置で切除されており、中心導体11および誘電体12のそれぞれの端部が露呈している。具体的には、外部導体13の端面から誘電体12の端部が突出し、誘電体12の端面から中心導体11の端部が突出した状態となっている。誘電体12の下端面から突出する中心導体11の下端部は、相手同軸コネクタ2との接触のための内接触部11Aをなし、誘電体12の上端面から突出する中心導体11の上端部は、相手同軸コネクタ3との接触のための内接触部11Bをなしている。内接触部11A,11Bはピン状をなす雄型の接触部となっている。
【0020】
本実施形態では、外部導体13の端面は、外部導体13の径方向で外方へ向かうにつれて、上下方向で中心導体11の先端から遠ざかるように傾斜するテーパ面として形成されている。具体的には、外部導体13の下端面13Aは、外部導体13の径方向で外方へ向かうにつれて上方へ傾斜するテーパ面として形成されており(図4参照)、外部導体13の上端面13Bは、外部導体13の径方向で外方へ向かうにつれて下方へ傾斜するテーパ面として形成されている(図2参照)。
【0021】
下シェル部材20は、上下方向を軸線方向とする略円筒状をなしており、円柱状の金属部材を切削加工して作られている。下シェル部材20は、中継体10の下端部に外挿された状態で取り付けられる取付部21を上部に有し、相手同軸コネクタ2に嵌合可能な嵌合部22を下部に有している。
【0022】
取付部21は、円筒状をなしており、図3(A)に示されているように、中継体10の外部導体13の外径以上の内径をもって形成され中継体10の外部導体13の下端部に外挿される外挿部21Aと、外挿部21Aの下方に位置し中継体10の外径よりも小さい内径をもって形成された位置決め部21Bとを有している。取付部21は、外部導体13の下端部に外挿された外挿部21Aが該下端部の外周面に固着されることで、該下端部に取り付けられている。
【0023】
外挿部21Aの固着方法としては、例えば、溶着、接着剤での接着、あるいは径方向での塑性変形が挙げられ、このような固着方法によれば、下シェル部材20を中継体10に簡単に取り付けることができる。また、外挿部21Aを径方向で塑性変形する加工方法としては、例えば、ポンチ打ちや加締め加工が挙げられる。ここで、ポンチ打ちとは、外挿部21Aの外周面をポンチで打撃して部分的に変形させることで、外挿部21Aに径方向内方へ突出する突起を形成して、外部導体13の下端部に固定する加工方法である。また、径方向での塑性変形による固着の場合、外部導体13の下端部は外挿部21Aとともに変形してもよいし、変形しなくてもよい。
【0024】
図3(A)に示されるように、位置決め部21Bは、外部導体13の下端部から突出する誘電体12の下端部に外挿されている。この位置決め部21Bの内径は、誘電体12の外径と同じあるいは若干大きく、かつ、外挿部21Aの内径よりも小さくなっている。したがって、図4に示されているように、取付部21の内周面は、外挿部21Aと位置決め部21Bとの境界位置に段部21Cを有している。段部21Cは、外部導体13の下端面13Aと同じ傾斜角度で、取付部21の径方向で内方へ向かうにつれて下方へ傾斜するテーパ面として形成されている。したがって、段部21Cは、外部導体13の下端面13Aに下方から接面して当接する。本実施形態では、このテーパ面としての段部21Cは、取付部21の内径部分を切削加工する際に、ドリル等の加工工具(図示せず)の先端形状に沿って形成される。
【0025】
嵌合部22は、取付部21よりも外形が大きい略円筒状をなしており、位置決め部21Bに連結された連結部22Aと、連結部22Aの下端面の周縁から下方へ延びる複数の外接触部22Bとを有している。連結部22Aは、位置決め部21Bの内径と同じ内径を有しており、誘電体12の下端部に外挿されている。複数の外接触部22Bは、嵌合部22の周方向で等間隔に配置されており、嵌合部22の径方向に弾性変位可能な弾性片をなしている。外接触部22Bの下端部には、径方向外方へ突出する接触突部22B-1が形成されおり、この接触突部22B-1で相手同軸コネクタ2の相手外部導体40に接触可能となっている。
【0026】
複数の外接触部22Bによって囲まれる空間は、相手同軸コネクタ2の後述の支持部52を下方から受入可能な受入空間22Cをなしており、連結部22Aの内径よりも大きい内径をもって形成されている。この受入空間22Cの中心位置には中心導体11の内接触部11Aが配置されている。
【0027】
上シェル部材30は、下シェル部材20と同形状をなしており、下シェル部材20に対して上下反転した状態で、中継体10の上端部に取り付けられている。上シェル部材30については、下シェル部材20の各部の符号に「10」を加えた符号を付して説明を省略する。
【0028】
同軸コネクタ1は次の要領で製造される。まず、同軸コネクタ1に要求される電気的特性を有するセミリジッドケーブルを予め十分な長さをもって用意し、このセミリジッドケーブルを設定された長さで切断する。次に、切断されたセミリジッドケーブルの長手方向での両端部において、誘電体12および外部導体13を切除して、中心導体11および誘電体12を露出させ、中継体10を得る。また、このとき、外部導体13の下端面13Aおよび上端面13Bを切削加工や圧潰加工等によりテーパ面としておく。
【0029】
次に、中継体10の下端部に下シェル部材20の取付部21を下方から外挿する。このとき、下シェル部材20は、図4に示されるように、段部21Cが外部導体13の下端面13Aに接面することで位置決めされる。そして、外部導体13の下端部に外挿部21Aを固着することで、下シェル部材20が中継体10の下端部に取り付けられる。また、この下シェル部材20の取付けと同じ要領で、上シェル部材30を中継体10の上端部に取り付ける。このようにして、中継体10のそれぞれの端部にシェル部材20,30が取り付けられることにより、同軸コネクタ1が完成する。
【0030】
図4に示されるように、本実施形態では、外部導体13の下端面13Aおよび下シェル部材20の段部21Cは傾斜角度が同じテーパ面として形成されており、互いに接面するようになっているので、外部導体13と下シェル部材20との間には上下方向で隙間が形成されない。これと同様に、外部導体13と上シェル部材30との間にも上下方向における隙間は形成されない。したがって、同軸コネクタ1で信号が伝送される際、上記隙間が存在する場合に発生するインピーダンスの乱れの発生が抑制され、インピーダンスを一定に保ちやすくなる。その結果、同軸コネクタ1の電気的特性が向上する。
【0031】
本実施形態では、上述のように、同軸コネクタ1の中継体10は、予め用意したセミリジッドケーブルを設定された長さで切断することにより作られる。したがって、上下方向における同軸コネクタ1の寸法が電気機器の大きさや形状に応じて変更されても、変更された寸法に応じた長さでセミリジッドケーブルを切断すれば簡単に中継体10が得られる。また、シェル部材20,30については、同軸コネクタ1の上下方向での寸法が変更されても、変更前と同一のものを使用できるので、新たに設計する必要がない。したがって、本実施形態では、簡単に同軸コネクタ1を製造できる。また、中継体10およびシェル部材20,30を新たに設計する必要がなくなる分、製造コストの増大を抑制できる。したがって、図5(A)に示されるような短い中継体10を有する同軸電気コネクタ1や、図5(B)に示されるような長い中継体10を有する同軸電気コネクタ1も簡単かつ安価に製造できる。また、セミリジッドケーブルは市販品であってもよく、その場合には、さらに簡単かつ安価に同軸電気コネクタ1を製造できる。
【0032】
次に、図1(A),(B)および図3(A),(B)に基づいて相手同軸コネクタ2の構成を説明する。
【0033】
相手同軸コネクタ2は、金属製の相手外部導体40と、相手外部導体40に収容されて保持される樹脂等の電気絶縁材製の相手誘電体50と、相手誘電体50に収容されて保持される金属製の相手中心導体60とを有している。相手外部導体40、相手誘電体50および相手中心導体60は同心をなすように設けられている。
【0034】
相手外部導体40は、上下方向に延びる軸線をもつ略円筒状をなしており、上方へ向けて開口する空間が、同軸コネクタ1の下シェル部材20の嵌合部22を上方から受け入れる外受入空間41として形成されている。相手外部導体40は、図3(A)に示されているように、軸線に対して直角に拡がる円環状の底部42と、底部42の周縁から上方へ起立する相手外接触部としての周壁部43と、底部42の底面から突出する外接続部44とを有している。
【0035】
周壁部43の上端部には、上方へ向かうにつれて径方向外方へ向けて徐々に広がる案内部43Aが形成されており、該案内部43Aが、同軸コネクタ1の下シェル部材20の嵌合部22を正規の嵌合位置へ案内するようになっている。外接続部44は、底部42の底面の周縁に沿って円弧状に延びて2つ設けられている(図1(A)に示される相手同軸コネクタ3を参照)。外接続部44は、相手同軸コネクタ2が回路基板P1の実装面上に配置されたときに、該回路基板P1のグランド回路部(図示せず)に上方から接触するようになっている(図3(A)参照)。
【0036】
相手誘電体50は、円筒状をなしており、相手外部導体40の底部42に保持される基部51と、基部51から上方へ延びる支持部52とを有しており、内部空間に相手中心導体60を収容している。支持部52は、相手中心導体60の後述する相手内接触部42を径方向外方から支持している。
【0037】
相手中心導体60は、相手誘電体50の基部51に保持される被保持部61と、被保持部61から上方へ向けて延びる複数の相手内接触部62と、被保持部61の下端から下方へ向けて突出する内接続部63とを有している。複数の相手内接触部62は、相手中心導体60の周方向で等間隔に配置されており、相手中心導体60の径方向に弾性変位可能な弾性片をなしている。つまり、複数の相手内接触部62は、雌型の接触部を構成している。
【0038】
複数の相手内接触部62によって囲まれ上方に開口する内部空間は、同軸コネクタ1の内接触部11Aを受け入れるための受入空間64をなしており、該受入空間64は同軸コネクタ1の内接触部11Aの外径より若干小さい内径をもって形成されている。内接続部63は、相手同軸コネクタ2が回路基板P1の実装面上に配置されたときに、該回路基板P1の信号回路部(図示せず)に上方から接触するようになっている(図3(A)参照)。
【0039】
本実施形態では、相手内接触部62は自由状態において相手誘電体50の支持部52の内周面に接面して径方向外方から支持されている。したがって、コネクタ嵌合状態において、相手内接触部62は、同軸コネクタ1の内接触部11Aと接触して径方向外方へ向けて若干弾性変形したとき、支持部52から径方向内方へ向けた反力を受ける。この結果、内接触部11Aと相手内接触部62との接圧が高められ、良好な接触状態が確保されるようになる。なお、径方向外方へ向けた内接触部11Aの弾性変形は、支持部52自体が若干弾性変形することにより許容される。
【0040】
相手同軸コネクタ3の構成については、相手同軸コネクタ2と全く同じなので、相手同軸コネクタ2の各部の符号と同じ符号を付して説明を省略する。
【0041】
次に、同軸コネクタ1と相手同軸コネクタ2,3とのコネクタ接続動作について説明する。まず、図3(A)に示されるように、回路基板P1に実装された相手同軸コネクタ2の上方に同軸コネクタ1を位置させ、同軸コネクタ1の下シェル部材20の嵌合部22を相手同軸コネクタ2に対向させる。次に、同軸コネクタ1を下方へ移動して、嵌合部22を相手同軸コネクタ2に上方から嵌合させる。具体的には、嵌合部22の外接触部22Bが相手同軸コネクタ2の外受入空間41へ進入し、案内部43Aに摺接しながら正規の嵌合位置へ向けて径方向で案内される。そして、外接触部22Bが相手外部導体40の周壁部43と相手誘電体50の支持部52との間の環状空間内に進入すると、外接触部22Bの接触突部22B-1が周壁部43の内周面に押圧されて、外接触部22Bが径方向内方へ弾性変形する。嵌合部22の嵌合が完了した状態においても、外接触部22Bの弾性変形状態は維持され、接触突部22B-1と周壁部43との接圧をもった接触状態が確保される。この結果、下シェル部材20と相手外部導体40とが電気的に導通可能な状態となる。
【0042】
また、同軸コネクタ1の中心導体11の内接触部11Aは、相手内接触部62の内部空間に上方から進入し、相手内接触部62を径方向外方へ押し広げて若干弾性変形させる。このとき、相手内接触部62は、相手誘電体50の支持部52から径方向内方へ向けた反力を受ける。したがって、相手内接触部62が内接触部11Aの外周面に接圧をもって接触し、良好な接触状態が確保される。その結果、中心導体11と相手中心導体60とが電気的に導通可能な状態となる。
【0043】
本実施形態では、相手内接触部62は、自由状態にて相手誘電体50の支持部52の内周面に接面して径方向外方から支持されていることとしたが、これに替えて、例えば、相手内接触部62が自由状態にあるとき、相手内接触部62と支持部52との間に径方向で若干の隙間が形成されていることとしてもよい。この場合、コネクタ接続時において、相手内接触部62が径方向外方へ弾性変形することで支持部52の内周面に当接して支持部52に支持され、支持部52から径方向内方へ向けた反力を受けることとなる。
【0044】
また、回路基板P2に実装された相手同軸コネクタ3に同軸コネクタ1の上シェル部材30を嵌合接続させる。この嵌合接続動作は、既述した下シェル部材20と相手同軸コネクタ2との嵌合接続動作と同じ要領で行われる。上シェル部材30と相手同軸コネクタ3とが嵌合接続されると、上シェル部材30と相手外部導体40、中心導体11と相手中心導体60とがそれぞれ互いに電気的に導通可能な状態となる。このようにして、同軸コネクタ1と相手同軸コネクタ2,3とが接続されることにより、コネクタ接続動作が完了する。
【0045】
本実施形態では、回路基板P1,P2のそれぞれに相手同軸コネクタ2,3を1つだけ実装し、この相手同軸コネクタ2,3を同軸コネクタ1で中継することとしたが、これに替えて、例えば、回路基板P1,P2に相手同軸コネクタ2,3を複数実装し、相手同軸コネクタ2と相手同軸コネクタ3との対のそれぞれを同軸コネクタ1で中継することも可能である。その場合、コネクタ接続の際には、回路基板P1に配置された複数の相手同軸コネクタ2のそれぞれに同軸コネクタ1が接続された後、回路基板P2に配置された複数の相手同軸コネクタ3それぞれ対応する同軸コネクタ1に同時に接続される。
【0046】
本実施形態では、回路基板P1に実装された相手同軸コネクタ2に同軸コネクタ1を接続した後に、回路基板P2に実装された相手同軸コネクタ3を同軸コネクタ1に接続することとしたが、接続の順序はこれに限られず、例えば、回路基板P2に実装された相手同軸コネクタ3に同軸コネクタ1を接続した後に、回路基板P1に実装された相手同軸コネクタ2を同軸コネクタ1に接続するようにしてもよい。
【符号の説明】
【0047】
1 同軸コネクタ(同軸電気コネクタ)
2 相手同軸コネクタ
3 相手同軸コネクタ
10 中継体
20 下シェル部材(シェル部材)
30 上シェル部材(シェル部材)

図1
図2
図3
図4
図5