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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024045911
(43)【公開日】2024-04-03
(54)【発明の名称】樹脂組成物及び積層体
(51)【国際特許分類】
   C08L 29/04 20060101AFI20240327BHJP
   C08K 3/36 20060101ALI20240327BHJP
   C08K 5/544 20060101ALI20240327BHJP
【FI】
C08L29/04 A
C08K3/36
C08K5/544
【審査請求】未請求
【請求項の数】12
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022151002
(22)【出願日】2022-09-22
(71)【出願人】
【識別番号】000003296
【氏名又は名称】デンカ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100088155
【弁理士】
【氏名又は名称】長谷川 芳樹
(74)【代理人】
【識別番号】100128381
【弁理士】
【氏名又は名称】清水 義憲
(74)【代理人】
【識別番号】100185591
【弁理士】
【氏名又は名称】中塚 岳
(74)【代理人】
【識別番号】100160897
【弁理士】
【氏名又は名称】古下 智也
(72)【発明者】
【氏名】木村 晃純
(72)【発明者】
【氏名】内田 敦理
【テーマコード(参考)】
4J002
【Fターム(参考)】
4J002BE021
4J002BJ002
4J002CK023
4J002DJ016
4J002EX077
4J002FD016
4J002FD207
4J002GB00
4J002GC00
4J002GF00
4J002GL00
4J002GN00
4J002GT00
(57)【要約】
【課題】本発明の一側面は、耐候試験後においても充分な抗ウイルス性を維持することが可能な樹脂組成物を提供する。本発明の他の一側面は、当該樹脂組成物を用いた積層体を提供する。
【解決手段】樹脂材料と、シリカ粒子と、アルコキシシリル基及びシラノール基からなる群より選ばれる少なくとも一種を有する第四級アンモニウムカチオンと、を含有する、樹脂組成物。当該樹脂組成物と、当該樹脂組成物を支持する基材と、を備える、積層体。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
樹脂材料と、シリカ粒子と、アルコキシシリル基及びシラノール基からなる群より選ばれる少なくとも一種を有する第四級アンモニウムカチオンと、を含有する、樹脂組成物。
【請求項2】
前記樹脂材料がビニルアルコール系重合体を含む、請求項1に記載の樹脂組成物。
【請求項3】
前記シリカ粒子の粒子径が20nm以下である、請求項1に記載の樹脂組成物。
【請求項4】
前記シリカ粒子の含有量が当該樹脂組成物の固形分の全体積を基準として10~50体積%である、請求項1に記載の樹脂組成物。
【請求項5】
前記第四級アンモニウムカチオンが、アルコキシシリルアルキル基を有する第四級アンモニウムカチオン及びその加水分解物からなる群より選ばれる少なくとも一種を含む、請求項1に記載の樹脂組成物。
【請求項6】
前記第四級アンモニウムカチオンが、トリメトキシシリルアルキル基を有する第四級アンモニウムカチオン及びその加水分解物からなる群より選ばれる少なくとも一種を含む、請求項1に記載の樹脂組成物。
【請求項7】
前記第四級アンモニウムカチオンが、トリエトキシシリルアルキル基を有する第四級アンモニウムカチオン及びその加水分解物からなる群より選ばれる少なくとも一種を含む、請求項1に記載の樹脂組成物。
【請求項8】
前記第四級アンモニウムカチオンが、オクタデシルジメチル[アルコキシシリルアルキル]アンモニウムカチオン及びその加水分解物からなる群より選ばれる少なくとも一種を含む、請求項1に記載の樹脂組成物。
【請求項9】
前記第四級アンモニウムカチオンを含む第四級アンモニウム塩の含有量が当該樹脂組成物の固形分の全体積を基準として0.5~12体積%である、請求項1に記載の樹脂組成物。
【請求項10】
前記第四級アンモニウムカチオンを含む第四級アンモニウム塩の含有量が前記シリカ粒子100質量部に対して0.1~50質量部である、請求項1に記載の樹脂組成物。
【請求項11】
フィルム状である、請求項1に記載の樹脂組成物。
【請求項12】
請求項1~11のいずれか一項に記載の樹脂組成物と、当該樹脂組成物を支持する基材と、を備える、積層体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、樹脂組成物、積層体等に関し、特に、抗ウイルス分野において用いることが可能な樹脂組成物、積層体等に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、抗ウイルス分野において用いることが可能な抗ウイルス部材のニーズが急拡大している。例えば、自動車において抗ウイルスを達成することが試みられており、各種部材について検討されている(例えば、下記特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2014-076665号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
抗ウイルス部材は様々な環境に保持されることがあり、抗ウイルス部材に対しては、充分な抗ウイルス性を維持することが求められる。このような観点から、抗ウイルス部材に対しては、例えば、耐候試験後においても充分な抗ウイルス性を維持することが求められる。
【0005】
本発明の一側面は、耐候試験後においても充分な抗ウイルス性を維持することが可能な樹脂組成物を提供することを目的とする。本発明の他の一側面は、当該樹脂組成物を用いた積層体を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示は、いくつかの側面において、下記の[1]~[12]等に関する。
[1]樹脂材料と、シリカ粒子と、アルコキシシリル基及びシラノール基からなる群より選ばれる少なくとも一種を有する第四級アンモニウムカチオンと、を含有する、樹脂組成物。
[2]前記樹脂材料がビニルアルコール系重合体を含む、[1]に記載の樹脂組成物。
[3]前記シリカ粒子の粒子径が20nm以下である、[1]又は[2]に記載の樹脂組成物。
[4]前記シリカ粒子の含有量が当該樹脂組成物の固形分の全体積を基準として10~50体積%である、[1]~[3]のいずれか一つに記載の樹脂組成物。
[5]前記第四級アンモニウムカチオンが、アルコキシシリルアルキル基を有する第四級アンモニウムカチオン及びその加水分解物からなる群より選ばれる少なくとも一種を含む、[1]~[4]のいずれか一つに記載の樹脂組成物。
[6]前記第四級アンモニウムカチオンが、トリメトキシシリルアルキル基を有する第四級アンモニウムカチオン及びその加水分解物からなる群より選ばれる少なくとも一種を含む、[1]~[5]のいずれか一つに記載の樹脂組成物。
[7]前記第四級アンモニウムカチオンが、トリエトキシシリルアルキル基を有する第四級アンモニウムカチオン及びその加水分解物からなる群より選ばれる少なくとも一種を含む、[1]~[6]のいずれか一つに記載の樹脂組成物。
[8]前記第四級アンモニウムカチオンが、オクタデシルジメチル[アルコキシシリルアルキル]アンモニウムカチオン及びその加水分解物からなる群より選ばれる少なくとも一種を含む、[1]~[7]のいずれか一つに記載の樹脂組成物。
[9]前記第四級アンモニウムカチオンを含む第四級アンモニウム塩の含有量が当該樹脂組成物の固形分の全体積を基準として0.5~12体積%である、[1]~[8]のいずれか一つに記載の樹脂組成物。
[10]前記第四級アンモニウムカチオンを含む第四級アンモニウム塩の含有量が前記シリカ粒子100質量部に対して0.1~50質量部である、[1]~[9]のいずれか一つに記載の樹脂組成物。
[11]フィルム状である、[1]~[10]のいずれか一つに記載の樹脂組成物。
[12][1]~[11]のいずれか一つに記載の樹脂組成物と、当該樹脂組成物を支持する基材と、を備える、積層体。
【発明の効果】
【0007】
本発明の一側面によれば、耐候試験後においても充分な抗ウイルス性を維持することが可能な樹脂組成物を提供することができる。本発明の他の一側面によれば、当該樹脂組成物を用いた積層体を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、本発明の実施形態について詳細に説明する。但し、本発明は、以下の実施形態に限定されるものではなく、その要旨の範囲内で種々変形して実施することができる。
【0009】
本明細書において、数値範囲を示す「~」の記号は、「~」の直前に記された数値以上から、「~」の直後に記された数値以下であることを示す。例えば「数値x~数値y」と記載してある場合(但し、x及びyは数値)」、「x以上、y以下」の範囲を意味する。数値範囲の「x以上」とは、x、及び、xを超える範囲を意味する。数値範囲の「y以下」とは、y、及び、y未満の範囲を意味する。本明細書に段階的に記載されている数値範囲において、ある段階の数値範囲の上限値又は下限値は、他の段階の数値範囲の上限値又は下限値と任意に組み合わせることができる。本明細書に記載されている数値範囲において、その数値範囲の上限値又は下限値は、実施例に示されている値に置き換えてよい。「A又はB」とは、A及びBのどちらか一方を含んでいればよく、両方とも含んでいてもよい。本明細書に例示する材料は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。本明細書において、組成物中の各成分の使用量は、組成物中に各成分に該当する物質が複数存在する場合、特に断らない限り、組成物中に存在する当該複数の物質の合計量を意味する。樹脂組成物の固形分は、樹脂組成物において、揮発する成分(水、溶媒等)を除いた不揮発分を指す。すなわち、当該固形分は、樹脂組成物の乾燥において揮発せずに残る成分を指し、25℃で液状、水飴状又はワックス状の成分も含む。
【0010】
本実施形態に係る樹脂組成物は、樹脂材料と、シリカ粒子と、アルコキシシリル基及びシラノール基からなる群より選ばれる少なくとも一種を有する第四級アンモニウムカチオン(以下、「第四級アンモニウムカチオンA」という)と、を含有する。
【0011】
本実施形態に係る樹脂組成物は、抗ウイルス樹脂組成物として用いることができる。第四級アンモニウムカチオンを含む第四級アンモニウム塩は、抗ウイルス性を示し、速効性に優れることから、各種部材への適応が期待される。しかし、第四級アンモニウム塩は、低分子化合物であるため水溶性であることから、第四級アンモニウム塩を用いた従来の抗ウイルス樹脂組成物では、第四級アンモニウム塩のブリードアウト、揮発等によって抗ウイルス性が低下し得るため、耐候試験後において充分な抗ウイルス性を維持することが難しい。一方、本実施形態に係る樹脂組成物によれば、耐候試験後においても充分な抗ウイルス性を維持することができる。本実施形態に係る樹脂組成物によれば、後述の実施例に記載の抗ウイルス性の評価において、温度60℃、湿度90%の環境で樹脂組成物を100時間保持した場合であっても、例えば0.5以上(好ましくは、1.0以上、2.0以上、3.0以上、3.5以上等)の抗ウイルス活性値を得ることができる。
【0012】
耐候試験後においても充分な抗ウイルス性を維持することが可能な理由について、抗ウイルス性を有する第四級窒素原子含有部がアルコキシシリル基又はシラノール基を介してシリカ粒子に充分強固に保持されることにより、耐候試験後においても、第四級アンモニウムカチオンAがシリカ粒子から脱離して樹脂組成物の外部に放出されることが抑制されるため充分な抗ウイルス性が維持されると推測される。但し、効果が得られる理由は当該内容に限定されない。
【0013】
本実施形態に係る樹脂組成物の一態様によれば、耐水試験後においても充分な抗ウイルス性を維持することができる。本実施形態に係る樹脂組成物の一態様によれば、後述の実施例に記載の抗ウイルス性の評価において、樹脂組成物を水(温度40℃)に16時間浸漬した場合であっても、例えば0.8以上(好ましくは、1.0以上、2.0以上、3.0以上、3.5以上等)の抗ウイルス活性値を得ることができる。
【0014】
本実施形態に係る樹脂組成物の一態様によれば、耐候試験及び耐水試験の前における初期状態において充分な抗ウイルス性を得ることができる。本実施形態に係る樹脂組成物の一態様によれば、後述の実施例に記載の抗ウイルス性の評価(耐候試験及び耐水試験の前)において、例えば1.0以上(好ましくは、2.0以上、3.0以上、3.5以上等)の抗ウイルス活性値を得ることができる。
【0015】
本実施形態に係る樹脂組成物の一態様によれば、優れたヘイズ(低いヘイズ)を得ることができる。本実施形態に係る樹脂組成物の一態様によれば、後述の実施例に記載の評価において、例えば、6.0以下(好ましくは、5.0以下、4.0以下等)のヘイズを得ることができる。樹脂組成物が優れたヘイズを有することにより、抗ウイルス性を付与する部位の最外層に樹脂組成物が配置される場合であっても、意匠性が阻害されることを抑制しやすい。
【0016】
本実施形態に係る樹脂組成物の一態様によれば、優れた硬度を得ることができる。本実施形態に係る樹脂組成物の一態様によれば、後述の実施例に記載の評価において、例えば、HB以上(好ましくは、F以上、H以上、2H以上等)の硬度(表面硬度、鉛筆引っかき硬さ)を得ることができる。樹脂組成物が優れた硬度を有することにより、樹脂組成物の傷つきを抑制しやすい。
【0017】
本実施形態に係る樹脂組成物は、樹脂材料を含有する。
【0018】
本実施形態に係る樹脂組成物における樹脂材料は、ビニルアルコール系重合体を含んでよい。ビニルアルコール系重合体は、ビニルアルコールの単量体単位を有する重合体であり、酢酸ビニル重合体、酢酸ビニル-α-オレフィン共重合体等の酢酸エステル部分の全て又は一部を加水分解(ケン化)して得られる重合体;トリフルオロ酢酸ビニル重合体、ギ酸ビニル重合体、ピバリン酸ビニル重合体、tert-ブチルビニルエーテル重合体、トリメチルシリルビニルエーテル重合体等を加水分解して得られる重合体などが挙げられる。ビニルアルコール系重合体は、カチオン性基(第一級アミノ基、第二級アミノ基、第三級アミノ基、第四級アンモニウム基等)を有するカチオン変性ビニルアルコール系重合体、アニオン性基(例えばカルボキシ基)を有するアニオン変性ビニルアルコール系重合体、ノニオン性基を有するノニオン変性ビニルアルコール系重合体、シリル基を有するシリル変性ビニルアルコール系重合体等の変性ビニルアルコール系重合体などであってもよい。ビニルアルコール系重合体は、水溶性樹脂であってよい。
【0019】
ビニルアルコール系重合体のケン化度は、耐候試験及び耐水試験後においても充分な抗ウイルス性を維持しやすい観点から、70~100モル%、80~100モル%、90~100モル%、又は、95~100モル%であってよい。
【0020】
ビニルアルコール系重合体の含有量は、耐候試験及び耐水試験後においても充分な抗ウイルス性を維持しやすい観点から、樹脂材料の全質量(樹脂組成物に含まれる樹脂材料の全質量)を基準として下記の範囲であってよい。ビニルアルコール系重合体の含有量は、50質量%以上、50質量%超、60質量%以上、65質量%以上、70質量%以上、75質量%以上、又は、80質量%以上であってよい。ビニルアルコール系重合体の含有量は、100質量%以下、100質量%未満、95質量%以下、90質量%以下、又は、85質量%以下であってよい。これらの観点から、ビニルアルコール系重合体の含有量は、50~100質量%、60~95質量%、又は、70~90質量%であってよい。
【0021】
ビニルアルコール系重合体の含有量は、耐候試験及び耐水試験後においても充分な抗ウイルス性を維持しやすい観点、並びに、優れたヘイズ及び硬度を得やすい観点から、樹脂組成物の固形分の全質量を基準として下記の範囲であってよい。ビニルアルコール系重合体の含有量は、1質量%以上、5質量%以上、10質量%以上、15質量%以上、20質量%以上、25質量%以上、30質量%以上、32質量%以上、35質量%以上、40質量%以上、又は、45質量%以上であってよい。ビニルアルコール系重合体の含有量は、80質量%以下、75質量%以下、70質量%以下、65質量%以下、60質量%以下、55質量%以下、50質量%以下、45質量%以下、40質量%以下、35質量%以下、32質量%以下、30質量%以下、25質量%以下、又は、20質量%以下であってよい。これらの観点から、ビニルアルコール系重合体の含有量は、1~80質量%、15~80質量%、20~80質量%、30~80質量%、35~80質量%、1~50質量%、15~50質量%、20~50質量%、30~50質量%、35~50質量%、1~40質量%、15~40質量%、20~40質量%、30~40質量%、又は、35~40質量%であってよい。
【0022】
本実施形態に係る樹脂組成物における樹脂材料は、ウレタン樹脂(ビニルアルコール系重合体に該当する化合物を除く)を含んでよい。ウレタン樹脂は、樹脂組成物の調製に際してエマルジョンとして供給されてよい。
【0023】
ウレタン樹脂の含有量は、フィルム状の樹脂組成物に充分な柔軟性を付与しやすい観点から、樹脂材料の全質量(樹脂組成物に含まれる樹脂材料の全質量)を基準として下記の範囲であってよい。ウレタン樹脂の含有量は、1質量%以上、3質量%以上、5質量%以上、8質量%以上、10質量%以上、12質量%以上、13質量%、14質量%以上、15質量%以下、20質量%以上、50質量%以上、80質量%以上、又は、実質的に100質量%であってよい。ウレタン樹脂の含有量は、100質量%以下、100質量%未満、80質量%以下、50質量%以下、40質量%以下、30質量%以下、25質量%以下、20質量%以下、18質量%以下、又は、15質量%以下であってよい。これらの観点から、ウレタン樹脂の含有量は、1~100質量%、1~50質量%、5~30質量%、又は、10~20質量%であってよい。
【0024】
ウレタン樹脂の含有量は、耐候試験及び耐水試験後においても充分な抗ウイルス性を維持しやすい観点、並びに、優れたヘイズ及び硬度を得やすい観点から、樹脂組成物の固形分の全質量を基準として下記の範囲であってよい。ウレタン樹脂の含有量は、0.1質量%以上、0.5質量%以上、1質量%以上、2質量%以上、3質量%以上、4質量%以上、5質量%以上、6質量%以上、7質量%以上、8質量%以上、10質量%以上、20質量%以上、30質量%以上、又は、50質量%以上であってよい。ウレタン樹脂の含有量は、80質量%以下、60質量%以下、50質量%以下、30質量%以下、20質量%以下、15質量%以下、10質量%以下、9質量%以下、8質量%以下、7質量%以下、6質量%以下、5質量%以下、又は、4質量%以下であってよい。これらの観点から、ウレタン樹脂の含有量は、0.1~80質量%、0.1~60質量%、0.1~20質量%、0.1~10質量%、0.1~7質量%、1~80質量%、1~60質量%、1~20質量%、1~10質量%、1~7質量%、5~80質量%、5~60質量%、5~20質量%、5~10質量%、又は、5~7質量%であってよい。
【0025】
本実施形態に係る樹脂組成物における樹脂材料は、カチオン性重合体(ビニルアルコール系重合体又はウレタン樹脂に該当する化合物を除く)を含んでよい。カチオン性重合体は、カチオン性基、及び、カチオン又は酸付加塩を構成する基からなる群より選ばれる少なくとも一種を有する重合体として定義される。カチオン性基としては、第一級アミノ基、第二級アミノ基、第三級アミノ基、イミノ基等が挙げられる。カチオンを構成する基としては、第四級アンモニウム基等が挙げられる。酸付加塩を構成する基としては、酸付加塩を構成する窒素原子を含む基等が挙げられる。酸付加塩としては、塩酸塩、臭化水素酸塩、酢酸塩、硫酸塩、硝酸塩、亜硫酸塩、リン酸塩、アミド硫酸塩、メタンスルホン酸塩等が挙げられる。カチオン性重合体は、分散剤として用いることができる。樹脂材料におけるカチオン性重合体は、1種のみであってよく、複数種であってもよい。カチオン性重合体は、アルコキシシリル基及びシラノール基を有さなくてよい。
【0026】
カチオン性重合体としては、アリルアミン重合体、アリルアミンアミド硫酸塩重合体、アリルアミン塩酸塩重合体(アリルアミン塩酸塩の単独重合体、アリルアミン塩酸塩とジアリルアミン塩酸塩との共重合体、アリルアミン塩酸塩とジメチルアリルアミン塩酸塩との共重合体等)、部分メトキシカルボニル化アリルアミン重合体、部分メチルカルボニル化アリルアミン酢酸塩重合体、メチルジアリルアミン塩酸塩重合体(メチルジアリルアミン塩酸塩の単独重合体、メチルジアリルアミンアミド硫酸塩重合体、メチルジアリルアミン酢酸塩重合体、メチルジアリルアミン塩酸塩と二酸化イオウとの共重合体等)、ジアリルアミン塩酸塩重合体(ジアリルアミン塩酸塩の単独重合体、ジアリルアミン塩酸塩と二酸化イオウとの共重合体等)、ジアリルアミン酢酸塩と二酸化イオウとの共重合体、ジアリルメチルエチルアンモニウムエチルサルフェイトと二酸化イオウとの共重合体、ジアリルジメチルアンモニウムクロリド重合体(ジアリルジメチルアンモニウムクロリドの単独重合体、ジアリルジメチルアンモニウムクロリドと二酸化イオウとの共重合体、ジアリルジメチルアンモニウムクロリドとアクリルアミドとの共重合体、ジアリルジメチルアンモニウムクロリドとジアリルアミン塩酸塩誘導体との共重合体等)、ジメチルアミンとエピクロロヒドリンとの共重合体、ジメチルアミンとエチレンジアミンとエピクロロヒドリンとの共重合体、ポリアミドポリアミンとエピクロロヒドリンとの共重合体、ポリビニルピリジン、ポリリジン、ポリアクリルアミド、ポリピロール、ポリアニリン、ポリパラフェニレン、ポリパラフェニレンビニレン、ポリエチレンイミンなどが挙げられる。
【0027】
カチオン性重合体は、シリカ粒子(例えばアニオン性シリカ粒子)が凝集なくカチオン化されてシリカ粒子と第四級アンモニウム塩との混合性が向上しやすい観点から、メチルジアリルアミン塩重合体を含んでよく、メチルジアリルアミン塩酸塩重合体を含んでよい。
【0028】
カチオン性重合体の重量平均分子量は、シリカ粒子(例えばアニオン性シリカ粒子)が凝集なくカチオン化されてシリカ粒子と第四級アンモニウム塩との混合性が向上しやすい観点から、下記の範囲であってよい。重量平均分子量は、1000以上、3000以上、5000以上、8000以上、10000以上、12000以上、15000以上、18000以上、又は、20000以上であってよい。重量平均分子量は、100000以下、80000以下、60000以下、50000以下、40000以下、30000以下、25000以下、又は、20000以下であってよい。これらの観点から、重量平均分子量は、1000~100000、5000~50000、又は、10000~300000であってよい。
【0029】
カチオン性重合体の重量平均分子量は、ゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)を用いて下記条件で測定できる。検量線は標準プルランで作成し、重量平均分子量はプルラン換算値で表すことができる。
使用装置:ポンプ shodexDS-4(昭和電工株式会社製)
カラム shodex OHpak SB-806HQ + SB-803HQ
検出器 HLC-8420GPC(東ソー株式会社製)
溶離液:0.1M NACl水溶液
前処理:メンブレンフィルター(孔径0.2μm)で濾過
濃度:0.1w/v%
注入量:100μL
カラム温度:40℃
流速:1.0mL/min
標準物質:プルラン
【0030】
カチオン性重合体の含有量は、耐候試験及び耐水試験後においても充分な抗ウイルス性を維持しやすい観点から、樹脂材料の全質量(樹脂組成物に含まれる樹脂材料の全質量)を基準として下記の範囲であってよい。カチオン性重合体の含有量は、0.1質量%以上、0.5質量%以上、1質量%以上、2質量%以上、3質量%以上、3.5質量%以上、又は、4質量%以上であってよい。カチオン性重合体の含有量は、20質量%以下、15質量%以下、10質量%以下、8質量%以下、6質量%以下、又は、5質量%以下であってよい。これらの観点から、カチオン性重合体の含有量は、0.1~20質量%、1~10質量%、又は、2~5質量%であってよい。
【0031】
カチオン性重合体の含有量は、耐候試験及び耐水試験後においても充分な抗ウイルス性を維持しやすい観点、並びに、優れたヘイズ及び硬度を得やすい観点から、樹脂組成物の固形分の全質量を基準として下記の範囲であってよい。カチオン性重合体の含有量は、0.1質量%以上、0.3質量%以上、0.5質量%以上、0.8質量%以上、1質量%以上、1.2質量%以上、1.5質量%以上、1.8質量%以上、又は、2質量%以上であってよい。カチオン性重合体の含有量は、10質量%以下、8質量%以下、6質量%以下、5質量%以下、4質量%以下、3.5質量%以下、3質量%以下、2.5質量%以下、2質量%以下、1.8質量%以下、1.5質量%以下、1.2質量%以下、又は、1質量%以下であってよい。これらの観点から、カチオン性重合体の含有量は、0.1~10質量%、0.5~10質量%、1~10質量%、1.5~10質量%、0.1~3質量%、0.5~3質量%、1~3質量%、1.5~3質量%、0.1~2質量%、0.5~2質量%、1~2質量%、又は、1.5~2質量%であってよい。
【0032】
本実施形態に係る樹脂組成物における樹脂材料は、ビニルアルコール系重合体、ウレタン樹脂及びカチオン性重合体とは異なる樹脂材料を含んでよい。このような樹脂材料としては、シリコーン系樹脂、オレフィン系樹脂、塩化ビニル系樹脂、アクリル系樹脂等が挙げられる。
【0033】
樹脂材料の含有量(樹脂組成物に含まれる樹脂材料の合計量)は、耐候試験及び耐水試験後においても充分な抗ウイルス性を維持しやすい観点、並びに、優れたヘイズ及び硬度を得やすい観点から、樹脂組成物の固形分の全質量を基準として下記の範囲であってよい。樹脂材料の含有量は、5質量%以上、10質量%以上、15質量%以上、20質量%以上、25質量%以上、30質量%以上、35質量%以上、40質量%以上、45質量%以上、又は、50質量%以上であってよい。樹脂材料の含有量は、90質量%以下、85質量%以下、80質量%以下、75質量%以下、70質量%以下、65質量%以下、60質量%以下、55質量%以下、50質量%以下、45質量%以下、40質量%以下、35質量%以下、又は、30質量%以下であってよい。これらの観点から、樹脂材料の含有量は、5~90質量%、15~90質量%、30~90質量%、40~90質量%、5~60質量%、15~60質量%、30~60質量%、40~60質量%、5~50質量%、15~50質量%、30~50質量%、又は、40~50質量%であってよい。
【0034】
本実施形態に係る樹脂組成物は、硬化剤を含有してよい。硬化剤としては、ビニルアルコール系重合体と反応(硬化反応)する硬化剤を用いることができる。
【0035】
硬化剤としては、エポキシ系硬化剤(ジグリシジルエチルエーテル、エチレングリコールジグリシジルエーテル、1,4-ブタンジオールジグリシジルエーテル、1,6-ジグリシジルシクロヘキサン、N,N-ジグリシジル-4-グリシジルオキシアニリン、ソルビトールポリグリシジルエーテル、グリセロールポリグリシジルエーテル等)、アルデヒド系硬化剤(ホルムアルデヒド、グリオキサール等)、活性ハロゲン系硬化剤(2,4-ジクロロ-4-ヒドロキシ-1,3,5-s-トリアジン等)、活性ビニル系化合物(1,3,5-トリスアクリロイル-ヘキサヒドロ-s-トリアジン、ビスビニルスルホニルメチルエーテル等)、アルミニウム明礬、ホウ酸及びその塩などが挙げられる。
【0036】
本実施形態に係る樹脂組成物は、シリカ粒子(シリカを含む粒子)を含有する。シリカ粒子としては、結晶シリカ、非晶質シリカ、コロイダルシリカ等が挙げられる。シリカ粒子は、表面がカチオン変性された粒子であってもよく、アルミニウム、カルシウム、マグネシウム、バリウム等で処理された粒子であってもよい。シリカ粒子は、樹脂材料中に分散されていてよい。
【0037】
シリカ粒子の平均粒子径は、耐候試験及び耐水試験後においても充分な抗ウイルス性を維持しやすい観点から、下記の範囲であってよい。シリカ粒子の平均粒子径は、0.1nm以上、0.5nm以上、1nm以上、1.5nm以上、2nm以上、2.5nm以上、3nm以上、3.5nm以上、4nm以上、4.5nm以上、5nm以上、6nm以上、8nm以上、10nm以上、又は、12nm以上であってよい。シリカ粒子の平均粒子径は、100nm以下、80nm以下、50nm以下、30nm以下、20nm以下、15nm以下、12nm以下、10nm以下、8nm以下、6nm以下、又は、5nm以下であってよい。これらの観点から、シリカ粒子の平均粒子径は、0.1~100nm、0.1~50nm、0.1~20nm、0.1~10nm、0.1~5nm、1~100nm、1~50nm、1~20nm、1~10nm、1~5nm、5~100nm、5~50nm、5~20nm、5~10nm、10~100nm、10~50nm、又は、10~20nmであってよい。シリカ粒子の平均粒子径は、BET法により測定できる。樹脂組成物中のシリカ粒子の平均粒子径は、SAXS解析において取得される粒度分布における体積基準の平均粒子サイズとして求めることができる。
【0038】
シリカ粒子の含有量は、耐候試験及び耐水試験後においても充分な抗ウイルス性を維持しやすい観点、並びに、優れたヘイズ及び硬度を得やすい観点から、樹脂組成物の固形分の全質量を基準として下記の範囲であってよい。シリカ粒子の含有量は、1質量%以上、5質量%以上、10質量%以上、15質量%以上、20質量%以上、25質量%以上、30質量%以上、35質量%以上、40質量%以上、45質量%以上、50質量%以上、55質量%以上、又は、60質量%以上であってよい。シリカ粒子の含有量は、90質量%以下、85質量%以下、80質量%以下、75質量%以下、70質量%以下、65質量%以下、60質量%以下、55質量%以下、50質量%以下、45質量%以下、40質量%以下、35質量%以下、30質量%以下、25質量%以下、20質量%以下、又は、15質量%以下であってよい。これらの観点から、シリカ粒子の含有量は、1~90質量%、10~90質量%、20~90質量%、30~90質量%、1~70質量%、10~70質量%、20~70質量%、30~70質量%、1~50質量%、10~50質量%、20~50質量%、又は、30~50質量%であってよい。
【0039】
シリカ粒子の含有量は、耐候試験及び耐水試験後においても充分な抗ウイルス性を維持しやすい観点、並びに、優れたヘイズ及び硬度を得やすい観点から、樹脂材料100質量部に対して下記の範囲であってよい。シリカ粒子の含有量は、10質量部以上、20質量部以上、30質量部以上、40質量部以上、50質量部以上、70質量部以上、90質量部以上、100質量部以上、100質量部超、110質量部以上、120質量部以上、150質量部以上、160質量部以上、又は、200質量部以上であってよい。シリカ粒子の含有量は、500質量部以下、400質量部以下、300質量部以下、200質量部以下、160質量部以下、150質量部以下、120質量部以下、110質量部以下、100質量部以下、100質量部未満、90質量部以下、70質量部以下、50質量部以下、40質量部以下、又は、30質量部以下であってよい。これらの観点から、シリカ粒子の含有量は、10~500質量部、30~500質量部、50~500質量部、90~500質量部、10~200質量部、30~200質量部、50~200質量部、90~200質量部、10~120質量部、30~120質量部、50~120質量部、又は、90~120質量部であってよい。
【0040】
シリカ粒子の含有量は、耐候試験及び耐水試験後においても充分な抗ウイルス性を維持しやすい観点、並びに、優れたヘイズ及び硬度を得やすい観点から、樹脂組成物の固形分の全体積を基準として下記の範囲であってよい。シリカ粒子の含有量は、1体積%以上、5体積%以上、10体積%以上、15体積%以上、20体積%以上、25体積%以上、30体積%以上、33体積%以上、35体積%以上、40体積%以上、又は、45体積%以上であってよい。シリカ粒子の含有量は、80体積%以下、75体積%以下、70体積%以下、65体積%以下、60体積%以下、55体積%以下、50体積%以下、45体積%以下、40体積%以下、35体積%以下、33体積%以下、30体積%以下、25体積%以下、20体積%以下、15体積%以下、又は、10体積%以下であってよい。これらの観点から、シリカ粒子の含有量は、1~80体積%、1~60体積%、1~50体積%、1~40体積%、1~30体積%、10~80体積%、10~60体積%、10~50体積%、10~40体積%、10~30体積%、20~80体積%、20~60体積%、20~50体積%、20~40体積%、又は、20~30体積%であってよい。シリカ粒子の含有量は、TG-DTA(熱重量・示差熱同時分析)により得ることができる。
【0041】
本実施形態に係る樹脂組成物は、シリカ粒子以外の無機粒子を含有してよい。このような無機粒子の構成材料としては、アルミナ、ジルコニア、チタニア、酸化スズ、酸化亜鉛等の金属酸化物が挙げられる。本実施形態に係る樹脂組成物は、ジルコニア粒子を含有しなくてよい。ジルコニア粒子の含有量は、樹脂組成物の固形分の全質量を基準として、15質量%以下、15質量%未満、10質量%以下、1質量%以下、0.1質量%以下、又は、0.01質量%以下であってよい。
【0042】
シリカ粒子の含有量は、耐候試験及び耐水試験後においても充分な抗ウイルス性を維持しやすい観点から、金属酸化物粒子又は無機粒子の全質量又は全体積(樹脂組成物に含まれる金属酸化物粒子又は無機粒子の全質量又は全体積)を基準として下記の範囲であってよい。シリカ粒子の含有量は、50%以上、50%超、60%以上、70%以上、80%以上、80%超、90%以上、95%以上、98%以上、99%以上、又は、実質的に100%であってよい。
【0043】
本実施形態に係る樹脂組成物は、アルコキシシリル基(Si-OR:Rはアルキル基)及びシラノール基(Si-OH)からなる群より選ばれる少なくとも一種を有する第四級アンモニウムカチオンAを含有する。第四級アンモニウムカチオンAは、樹脂組成物中において、第四級アンモニウムカチオンAを含む第四級アンモニウム塩(第四級アンモニウムカチオンAと対アニオンとの第四級アンモニウム塩;以下、「第四級アンモニウム塩A」という)として存在してよく、対アニオンから解離した状態で存在してよい。
【0044】
アルコキシシリル基を有する第四級アンモニウムカチオン又はその塩を樹脂組成物の調製に際して供給し、アルコキシシリル基の加水分解により生成したシラノール基が樹脂組成物における第四級アンモニウムカチオンAのシラノール基として存在してよい。また、シラノール基を有する第四級アンモニウムカチオン又はその塩を樹脂組成物の調製に際して供給することにより、樹脂組成物における第四級アンモニウムカチオンAがシラノール基を有してもよい。第四級アンモニウムカチオンA及び第四級アンモニウム塩Aは、シリカ粒子に担持されていてよい。第四級アンモニウムカチオンA及び第四級アンモニウム塩Aの分子量は、1000未満、900以下、800以下、700以下、600以下、又は、500以下であってよい。
【0045】
第四級アンモニウムカチオンAは、耐候試験及び耐水試験後においても充分な抗ウイルス性を維持しやすい観点から、第四級窒素原子を1つ有するモノ第四級アンモニウムカチオン及びその加水分解物からなる群より選ばれる少なくとも一種を含んでよく、第四級窒素原子を2つ有するビス第四級アンモニウムカチオン及びその加水分解物からなる群より選ばれる少なくとも一種を含んでよい。
【0046】
第四級アンモニウムカチオンAにおけるケイ素原子の数は、耐候試験及び耐水試験後においても充分な抗ウイルス性を維持しやすい観点から、1~4、1~3、又は、1~2であってよい。第四級アンモニウムカチオンAは、シロキサン結合を有してよく、シロキサン結合を有さなくてもよい。第四級アンモニウムカチオンAは、シロキサン結合を介して互いに結合する2つの第四級窒素原子を有するビス第四級アンモニウムカチオン及びその加水分解物からなる群より選ばれる少なくとも一種を含んでよい。
【0047】
第四級アンモニウムカチオンAにおけるアルコキシシリル基及びシラノール基の合計量は、耐候試験及び耐水試験後においても充分な抗ウイルス性を維持しやすい観点から、1~6、1~5、1~4、1~3、2~6、2~5、2~4、2~3、3~6、3~5、又は、3~4であってよい。
【0048】
第四級アンモニウムカチオンAの窒素原子は、他の原子を介してアルコキシシリル基又はシラノール基のケイ素原子に結合してよく、アルコキシシリル基又はシラノール基のケイ素原子に直接結合してもよい。第四級アンモニウムカチオンAにおいて、窒素原子に結合する官能基としては、アルキル基、ヒドロキシ基、カルボキシ基等が挙げられる。アルキル基は、無置換であってよく、置換されていてもよい。アルキル基は、アルコキシシリル基及びシラノール基からなる群より選ばれる少なくとも一種により置換されていてよく、アルコキシシリルアルキル基であってよい。
【0049】
第四級アンモニウムカチオンAにおいて、窒素原子に結合するアルキル基(置換又は無置換のアルキル基)の数は、耐候試験及び耐水試験後においても充分な抗ウイルス性を維持しやすい観点から、1~4、2~4、又は、3~4であってよい。第四級アンモニウムカチオンAにおいて、窒素原子に結合する無置換のアルキル基の数は、耐候試験及び耐水試験後においても充分な抗ウイルス性を維持しやすい観点から、1~3、又は、2~3であってよい。
【0050】
第四級アンモニウムカチオンAは、耐候試験及び耐水試験後においても充分な抗ウイルス性を維持しやすい観点から、窒素原子に結合する無置換のアルキル基として、下記の炭素数のアルキル基を有してよい。アルキル基の炭素数は、1以上、2以上、3以上、4以上、6以上、8以上、10以上、12以上、14以上、16以上、又は、18以上であってよい。アルキル基の炭素数は、32以下、28以下、24以下、20以下、18以下、16以下、14以下、12以下、10以下、8以下、6以下、4以下、3以下、又は、2以下であってよい。これらの観点から、アルキル基の炭素数は、1~32、6~32、12~32、18~32、1~24、6~24、12~24、18~24、1~18、6~18、12~18、1~12、6~12、又は、1~6であってよい。
【0051】
第四級アンモニウムカチオンAは、耐候試験及び耐水試験後においても充分な抗ウイルス性を維持しやすい観点から、窒素原子に結合するメチル基(置換又は無置換のメチル基)を有する第四級アンモニウムカチオン及びその加水分解物からなる群より選ばれる少なくとも一種を含んでよく、窒素原子に結合する2つのメチル基(置換又は無置換のメチル基)を有する第四級アンモニウムカチオン及びその加水分解物からなる群より選ばれる少なくとも一種を含んでよい。これらの場合において、第四級アンモニウムカチオンAは、耐候試験及び耐水試験後においても充分な抗ウイルス性を維持しやすい観点から、窒素原子に結合するアルキル基として、上述の炭素数のアルキル基(置換又は無置換のアルキル基)を有してよく、オクタデシル基を有してよい。第四級アンモニウムカチオンAは、耐候試験及び耐水試験後においても充分な抗ウイルス性を維持しやすい観点から、オクタデシルジメチル[アルコキシシリルアルキル]アンモニウムカチオン及びその加水分解物からなる群より選ばれる少なくとも一種を含んでよく、シロキサン結合を介して互いに結合すると共に2つのメチル基及びオクタデシル基が結合する2つの第四級窒素原子を有するビス第四級アンモニウムカチオン、並びに、その加水分解物からなる群より選ばれる少なくとも一種を含んでよい。
【0052】
第四級アンモニウムカチオンAは、耐候試験及び耐水試験後においても充分な抗ウイルス性を維持しやすい観点から、アルコキシシリルアルキル基を有する第四級アンモニウムカチオン(以下、「第四級アンモニウムカチオンB」という)及びその加水分解物からなる群より選ばれる少なくとも一種を含んでよい。第四級アンモニウムカチオンBにおけるアルコキシシリルアルキル基は、アルコキシ基、及び、ケイ素原子(アルコキシシリルアルキル基のケイ素原子)と窒素原子とを接続するアルキル基を有することができる。
【0053】
第四級アンモニウムカチオンBにおけるアルコキシシリルアルキル基の数は、耐候試験及び耐水試験後においても充分な抗ウイルス性を維持しやすい観点から、1~4、1~3、又は、1~2であってよい。
【0054】
第四級アンモニウムカチオンBのアルコキシシリルアルキル基におけるアルコキシ基の数は、耐候試験及び耐水試験後においても充分な抗ウイルス性を維持しやすい観点から、1~3、2~3、又は、3~4であってよい。第四級アンモニウムカチオンAは、耐候試験及び耐水試験後においても充分な抗ウイルス性を維持しやすい観点から、トリアルコキシシリルアルキル基を有する第四級アンモニウムカチオン及びその加水分解物からなる群より選ばれる少なくとも一種を含んでよい。アルコキシ基の数が1又は2である場合、アルコキシシリルアルキル基は、ケイ素原子に結合する官能基として、アルキル基、ヒドロキシ基、カルボキシ基等を有してよい。
【0055】
第四級アンモニウムカチオンBのアルコキシシリルアルキル基は、耐候試験及び耐水試験後においても充分な抗ウイルス性を維持しやすい観点、試験前においても充分な抗ウイルス性を維持しやすい観点、並びに、優れたヘイズを得やすい観点から、炭素数が1~4、1~3、1~2、2~4、又は、2~3であるアルコキシ基を有してよい。第四級アンモニウムカチオンAは、耐候試験及び耐水試験後においても充分な抗ウイルス性を維持しやすい観点から、トリメトキシシリルアルキル基を有する第四級アンモニウムカチオン及びその加水分解物からなる群より選ばれる少なくとも一種を含んでよく、トリエトキシシリルアルキル基を有する第四級アンモニウムカチオン及びその加水分解物からなる群より選ばれる少なくとも一種を含んでよい。
【0056】
第四級アンモニウムカチオンBのアルコキシシリルアルキル基におけるアルキル基の炭素数は、耐候試験及び耐水試験後においても充分な抗ウイルス性を維持しやすい観点、試験前においても充分な抗ウイルス性を維持しやすい観点、並びに、優れたヘイズを得やすい観点から、下記の範囲であってよい。アルキル基の炭素数は、1以上、2以上、3以上、4以上、5以上、6以上、7以上、又は、8以上であってよい。アルキル基の炭素数は、20以下、16以下、12以下、10以下、9以下、8以下、7以下、6以下、5以下、4以下、又は、3以下であってよい。これらの観点から、アルキル基の炭素数は、1~20、3~20、6~20、8~20、1~12、3~12、6~12、8~12、1~8、3~8、6~8、1~6、3~6、又は、1~3であってよい。
【0057】
第四級アンモニウム塩Aにおける対アニオンとしては、フッ化物イオン、塩化物イオン、臭化物イオン、ヨウ化物イオン等のハロゲン化物イオンなどが挙げられる。第四級アンモニウム塩Aは、耐候試験及び耐水試験後においても充分な抗ウイルス性を維持しやすい観点から、対アニオンとして、ハロゲン化物イオンを有してよく、塩化物イオンを有してよい。
【0058】
第四級アンモニウムカチオンAは、耐候試験及び耐水試験後においても充分な抗ウイルス性を維持しやすい観点から、オクタデシルジメチル[(トリメトキシシリル)プロピル]アンモニウムカチオン、オクタデシルジメチル[(トリエトキシシリル)オクチル]アンモニウムカチオン、シロキサン結合を介して互いに結合すると共に2つのメチル基及びオクタデシル基が結合する2つの第四級窒素原子を有するビス第四級アンモニウムカチオン、並びに、これらの加水分解物からなる群より選ばれる少なくとも一種を含んでよい。第四級アンモニウム塩Aは、耐候試験及び耐水試験後においても充分な抗ウイルス性を維持しやすい観点から、オクタデシルジメチル[(トリメトキシシリル)プロピル]アンモニウムクロリド、オクタデシルジメチル[(トリエトキシシリル)オクチル]アンモニウムクロリド、シロキサン結合を介して互いに結合すると共に2つのメチル基及びオクタデシル基が結合する2つの第四級窒素原子を有するビス第四級アンモニウムクロリド、並びに、これらの加水分解物からなる群より選ばれる少なくとも一種を含んでよい。第四級アンモニウム塩の種類は、熱脱着GC/MS測定により特定できる。
【0059】
第四級アンモニウム塩Aの含有量は、樹脂組成物の固形分の全質量を基準として下記の範囲であってよい。第四級アンモニウム塩Aの含有量は、耐候試験及び耐水試験後においても充分な抗ウイルス性を維持しやすい観点、試験前においても充分な抗ウイルス性を維持しやすい観点、並びに、優れた硬度を得やすい観点から、0.1質量%以上、0.5質量%以上、1質量%以上、1.5質量%以上、又は、2質量%以上であってよい。第四級アンモニウム塩Aの含有量は、耐候試験及び耐水試験後においても充分な抗ウイルス性を維持しやすい観点、並びに、試験前においても充分な抗ウイルス性を維持しやすい観点から、2.5質量%以上、3質量%以上、4質量%以上、5質量%以上、5質量%超、6質量%以上、6.5質量%以上、又は、7質量%以上であってよい。第四級アンモニウム塩Aの含有量は、耐候試験及び耐水試験後においても充分な抗ウイルス性を維持しやすい観点、並びに、優れたヘイズ及び硬度を得やすい観点から、20質量%以下、15質量%以下、12質量%以下、10質量%以下、9質量%以下、8.5質量%以下、8質量%以下、又は、7.5質量%以下であってよい。第四級アンモニウム塩Aの含有量は、優れたヘイズ及び硬度を得やすい観点から、7質量%以下、6.5質量%以下、6質量%以下、5質量%以下、5質量%未満、4質量%以下、3質量%以下、2.5質量%以下、2質量%以下、1.5質量%以下、1質量%以下、又は、0.5質量%以下であってよい。これらの観点から、第四級アンモニウム塩Aの含有量は、0.1~20質量%、0.5~20質量%、1~20質量%、2~20質量%、5~20質量%、0.1~10質量%、0.5~10質量%、1~10質量%、2~10質量%、5~10質量%、0.1~5質量%、0.5~5質量%、1~5質量%、又は、2~5質量%であってよい。
【0060】
第四級アンモニウム塩Aの含有量は、樹脂材料100質量部、又は、シリカ粒子100質量部に対して下記の範囲であってよい。第四級アンモニウム塩Aの含有量は、耐候試験及び耐水試験後においても充分な抗ウイルス性を維持しやすい観点、試験前においても充分な抗ウイルス性を維持しやすい観点、並びに、優れた硬度を得やすい観点から、0.1質量部以上、0.5質量部以上、1質量部以上、2質量部以上、3質量部以上、4質量部以上、又は、5質量部以上であってよい。第四級アンモニウム塩Aの含有量は、耐候試験及び耐水試験後においても充分な抗ウイルス性を維持しやすい観点、並びに、試験前においても充分な抗ウイルス性を維持しやすい観点から、6質量部以上、8質量部以上、10質量部以上、12質量部以上、15質量部以上、16質量部以上、18質量部以上、又は、19質量部以上であってよい。第四級アンモニウム塩Aの含有量は、耐候試験及び耐水試験後においても充分な抗ウイルス性を維持しやすい観点、並びに、優れたヘイズ及び硬度を得やすい観点から、50質量部以下、40質量部以下、30質量部以下、25質量部以下、又は、20質量部以下であってよい。第四級アンモニウム塩Aの含有量は、優れたヘイズ及び硬度を得やすい観点から、19質量部以下、18質量部以下、16質量部以下、15質量部以下、12質量部以下、10質量部以下、8質量部以下、6質量部以下、5質量部以下、4質量部以下、3質量部以下、又は、2質量部以下であってよい。これらの観点から、第四級アンモニウム塩Aの含有量は、0.1~50質量部、1~50質量部、3~50質量部、5~50質量部、10~50質量部、0.1~20質量部、1~20質量部、3~20質量部、5~20質量部、10~20質量部、0.1~8質量部、1~8質量部、3~8質量部、又は、5~8質量部であってよい。
【0061】
第四級アンモニウム塩Aの含有量は、樹脂組成物の固形分の全体積を基準として下記の範囲であってよい。第四級アンモニウム塩Aの含有量は、耐候試験及び耐水試験後においても充分な抗ウイルス性を維持しやすい観点、試験前においても充分な抗ウイルス性を維持しやすい観点、並びに、優れた硬度を得やすい観点から、0.1体積%以上、0.5体積%以上、0.8体積%以上、1体積%以上、2体積%以上、又は、3体積%以上であってよい。第四級アンモニウム塩Aの含有量は、耐候試験及び耐水試験後においても充分な抗ウイルス性を維持しやすい観点、並びに、試験前においても充分な抗ウイルス性を維持しやすい観点から、3.5体積%以上、4体積%以上、4.5体積%以上、5体積%以上、6体積%以上、7体積%以上、8体積%以上、9体積%以上、又は、10体積%以上であってよい。第四級アンモニウム塩Aの含有量は、耐候試験及び耐水試験後においても充分な抗ウイルス性を維持しやすい観点、並びに、優れたヘイズ及び硬度を得やすい観点から、30体積%以下、25体積%以下、20体積%以下、15体積%以下、13体積%以下、12体積%以下、又は、11体積%以下であってよい。第四級アンモニウム塩Aの含有量は、優れたヘイズ及び硬度を得やすい観点から、10体積%以下、9体積%以下、8体積%以下、7体積%以下、6体積%以下、5体積%以下、4.5体積%以下、4体積%以下、3.5体積%以下、3体積%以下、2体積%以下、1体積%以下、又は、0.8体積%以下であってよい。これらの観点から、第四級アンモニウム塩Aの含有量は、0.1~30体積%、0.5~30体積%、2~30体積%、3~30体積%、5~30体積%、0.1~12体積%、0.5~12体積%、2~12体積%、3~12体積%、5~12体積%、0.1~5体積%、0.5~5体積%、2~5体積%、又は、3~5体積%であってよい。
【0062】
本実施形態に係る樹脂組成物は、第四級アンモニウムカチオンA以外の第四級アンモニウムカチオンを含有してよく、第四級アンモニウム塩A以外の第四級アンモニウム塩を含有してよい。本実施形態に係る樹脂組成物は、メトサルフェート型第四級アンモニウムカチオンを含有せずともよく、メトサルフェート型第四級アンモニウム塩を含有せずともよい。
【0063】
第四級アンモニウム塩Aの含有量は、耐候試験及び耐水試験後においても充分な抗ウイルス性を維持しやすい観点から、樹脂組成物に含まれる第四級アンモニウム塩の全質量(第四級アンモニウム塩A、及び、第四級アンモニウム塩A以外の第四級アンモニウム塩の合計量)を基準として、50質量%以上、50質量%超、60質量%以上、70質量%以上、80質量%以上、80質量%超、90質量%以上、95質量%以上、98質量%以上、99質量%以上、又は、実質的に100質量%であってよい。
【0064】
本実施形態に係る樹脂組成物は、界面活性剤(樹脂材料、硬化剤、無機粒子又は第四級アンモニウム塩に該当する成分を除く)を含有してよい。界面活性剤を用いることにより表面張力を調整することができる。界面活性剤としては、アニオン性界面活性剤、カチオン性界面活性剤、両性界面活性剤、非イオン性界面活性剤等が挙げられる。
【0065】
アニオン性界面活性剤としては、アルキル硫酸塩、ポリオキシエチレンアルキル硫酸塩、PEG脂肪酸アミドMEA硫酸塩、アルキルメチルタウリン塩、オレフィンスルホン酸塩、アルキルスルホコハク酸塩、アルキルリン酸エステル塩、脂肪酸塩、アシルアミノ酸塩、アルキル乳酸塩、アルキルイセチオン酸塩等が挙げられる。
【0066】
カチオン性界面活性剤としては、塩化ラウリルトリメチルアンモニウム、塩化セチルトリメチルアンモニウム、塩化ステアリルトリメチルアンモニウム、塩化ベヘニルトリメチルアンモニウム、臭化セチルトリメチルアンモニウム、臭化ステアリルトリメチルアンモニウム、塩化ジポリオキシエチレンオレイルメチルアンモニウム、塩化ポリオキシエチレンベヘニルリルメチレンアンモニウム、メチル硫酸ベヘニルトリメチルアンモニウム、塩化ステアリルヒドロキシプロピルトリメチルアンモニウム、塩化ジココイルジメチルアンモニウム、塩化ジアルキル(炭素数12~18)ジメチルアンモニウム、塩化ジセチルジメチルアンモニウム、塩化ジステアリルジメチルアンモニウム、エチル硫酸ラノリン脂肪酸アミノプロピルジメチルアンモニウム、メチル硫酸ジココイルエチルヒドロキシエチルアンモニウム、ヤシ油アルキルPGジモニウムクロリドリン酸、リノール酸アミドプロピルPGジモニウムクロリドリン酸、ステアラミドプロピルメチルアミン、ジメチルステアラミン、POEヤシ油アルキルアミン等が挙げられる。
【0067】
両性界面活性剤としては、ラウリルジメチルアミノ酢酸ベタイン等のアルキルベタイン型両性界面活性剤;ラウリン酸アミドプロピルベタイン等のアミドベタイン型両性界面活性剤;ヒドロキシアルキル(炭素数12~14)ヒドロキシエチルサルコシン等のカルボイシベタイン型の両性界面活性剤;ラウリン酸アミドプロピルヒドロキシスルホベタイン等のアミドスルホベタイン型の両性界面活性剤;ココアンホジ酢酸ナトリウム等のイミダゾリニウムベタイン型の両性界面活性剤;ラウラミノプロピオン酸ナトリウム等のプロピオン酸型の両性界面活性剤;ラウリルジメチルアミンオキシド等のアミンオキシド型の両性界面活性剤;N-[3-アルキル(12,14)オキシ-2-ヒドロキシプロピル]-L-アルギニン塩酸塩等のアミノ酸型の界面活性剤などが挙げられる。
【0068】
非イオン性界面活性剤としては、モノグリセリン脂肪酸エステル型の非イオン性界面活性剤、ポリグリセリン脂肪酸エステル型の非イオン性界面活性剤、ソルビタン及びポリオキシエチレンソルビタン型の非イオン性界面活性剤、テトラオレイン酸ポリオキシエチレンソルビット型の非イオン性界面活性剤、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油型の非イオン性界面活性剤、ピロリドンカルボン酸(PCA)イソステアリン酸ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油型の非イオン性界面活性剤、ポリオキシエチレン脂肪酸型の非イオン性界面活性剤、ポリオキシエチレン脂肪酸グリセリン型の非イオン性界面活性剤、ポリオキシエチレンアルキルエーテル型の非イオン性界面活性剤、ポリオキシエチレン・ポリオキシプロピレンアルキルエーテル型の非イオン性界面活性剤、ポリオキシエチレン・ポリオキシプロピレンブロックポリマー型の非イオン性界面活性剤、アルカノールアミド型の非イオン性界面活性剤、ショ糖エステル型の非イオン性界面活性剤、アルキルグリコシド型の非イオン性界面活性剤、ジステアリン酸PEG型の非イオン性界面活性剤等が挙げられる。
【0069】
界面活性剤は、耐候試験及び耐水試験後においても充分な抗ウイルス性を維持しやすい観点から、両性界面活性剤を含んでよく、カルボイシベタイン型の両性界面活性剤を含んでよく、ヒドロキシアルキル(炭素数12~14)ヒドロキシエチルサルコシンを含んでよい。
【0070】
界面活性剤の含有量は、耐候試験及び耐水試験後においても充分な抗ウイルス性を維持しやすい観点から、樹脂組成物の固形分の全質量を基準として下記の範囲であってよい。界面活性剤の含有量は、0.01質量%以上、0.05質量%以上、0.1質量%以上、0.2質量%以上、0.3質量%以上、0.4質量%以上、0.5質量%以上、又は、0.6質量%以上であってよい。界面活性剤の含有量は、5質量%以下、3質量%以下、1質量%以下、0.9質量%以下、0.8質量%以下、0.6質量%以下、0.5質量%以下、0.4質量%以下、又は、0.3質量%以下であってよい。これらの観点から、界面活性剤の含有量は、0.01~5質量%、0.1~1質量%、0.3~1質量%、又は、0.1~0.6質量%であってよい。
【0071】
本実施形態に係る樹脂組成物は、上述の各成分とは異なる成分を含んでよい。このような成分としては、pH調整剤、消泡剤、潤滑剤、防腐剤、帯電防止剤等が挙げられる。pH調整剤としては、硫酸、リン酸、酢酸、クエン酸等の酸成分;水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、炭酸カリウム等の塩基成分などが挙げられる。
【0072】
本実施形態に係る樹脂組成物の第1態様は、25℃において液状である態様(流動性を有する態様)である。第1態様に係る樹脂組成物は、フィルム状の樹脂組成物を得るために用いてよい。第1態様に係る樹脂組成物は、水、有機溶媒等の液状成分を含有してよい。有機溶媒としては、メタノール、エタノール等のアルコールなどが挙げられる。
【0073】
本実施形態に係る樹脂組成物の第2態様は、フィルム状の樹脂組成物である態様である。第2態様に係る樹脂組成物は、抗ウイルスフィルムとして用いることができる。第2態様に係る樹脂組成物は、第1態様に係る樹脂組成物の塗膜を乾燥することにより得ることができる。第2態様に係る樹脂組成物は、フィルムアプリケーターを用いて作製してよく、粘度が低い樹脂組成物を用いて厚膜を作製する場合には、型枠を用いて作製してよい。第1態様に係る樹脂組成物における樹脂材料とシリカ粒子との質量比は、第1態様に係る樹脂組成物を用いて得られたフィルム状の樹脂組成物(第2態様に係る樹脂組成物)において維持され得る。第2態様に係る樹脂組成物は、単層であってよい。
【0074】
第2態様に係る樹脂組成物の厚さは、下記の範囲であってよい。厚さは、1μm以上、1μm超、3μm以上、5μm以上、8μm以上、9μm以上、又は、10μm以上であってよい。厚さは、100μm以下、90μm以下、80μm以下、70μm以下、60μm以下、50μm以下、40μm以下、30μm以下、20μm以下、15μm以下、12μm以下、12μm未満、又は、10μm以下であってよい。これらの観点から、厚さは、1~100μm、1μm超100μm以下、3~50μm、又は、5~30μmであってよい。樹脂組成物の厚さとしては、後述の実施例に記載の方法のように、50mm間隔で測定された厚さの平均値を用いることができる。
【0075】
本実施形態に係る積層体は、本実施形態に係る樹脂組成物と、当該樹脂組成物を支持する基材と、を備える。本実施形態に係る積層体は、第1態様に係る樹脂組成物を基材上に配置(例えば塗布)することにより得られてよく、第1態様に係る樹脂組成物を基材上に配置した後に樹脂組成物を乾燥することにより得られてもよい。また、本実施形態に係る積層体は、第2態様に係る樹脂組成物を基材上に配置することにより得られてよい。基材の形状、材質等に特に限定はない。基材における樹脂組成物と接する面は、平面、曲面、凹凸面等のように特に限定はない。
【0076】
本実施形態に係る樹脂組成物及び積層体は、例えば、自動車、建築材料、衛生資材、医療・介護用品、衣類、寝装品、インテリア、日用品、事務用品、家電製品、工業用部材等において好適に用いることができる。
【実施例0077】
以下、実施例及び比較例を用いて本発明の内容を更に詳細に説明するが、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。
【0078】
<シリカ粒子及び第四級アンモニウム塩の準備>
シリカ粒子を含有するシリカゾル、及び、第四級アンモニウム塩を含有する第四級アンモニウム塩溶液として、下記の成分を準備した。
【0079】
シリカゾル1:コロイダルシリカ、日産化学株式会社製、商品名「ST-ОXS」、固形分濃度10質量%、平均粒子径5nm、酸性ゾル、シリカ粒子の真比重2.2g/cm
シリカゾル2:コロイダルシリカ、日産化学株式会社製、商品名「ST-AK」、固形分濃度20質量%、平均粒子径12nm、酸性ゾル、シリカ粒子の真比重2.2g/cm
第四級アンモニウム塩溶液1:オクタデシルジメチル[(トリメトキシシリル)プロピル]アンモニウムクロリド、信越化学工業株式会社製、商品名「KBM-9818-40」、固形分濃度40質量%、第四級アンモニウム塩の真比重1.0g/cm
第四級アンモニウム塩溶液2:オクタデシルジメチル[(トリエトキシシリル)オクチル]アンモニウムクロリド、信越化学工業株式会社製、商品名「POLON-V8」、固形分濃度50質量%、第四級アンモニウム塩の真比重1.0g/cm
第四級アンモニウム塩溶液3:シロキサン結合を介して互いに結合すると共に2つのメチル基及びオクタデシル基が結合する2つの第四級窒素原子を有するビス第四級アンモニウムクロリド、信越化学工業株式会社製、商品名「X-12-1139」、固形分濃度30質量%、第四級アンモニウム塩の真比重1.0g/cm
【0080】
<樹脂組成物の調製>
(実施例1~8)
まず、表1の使用量のシリカゾル1に対して、樹脂材料1(メチルジアリルアミン塩酸塩重合体、重量平均分子量:20000、ニットーボーメディカル株式会社製、商品名「PAS M-1」、固形分濃度:50質量%、重合体の真比重1.2g/cm)3.0質量部を添加した後、表1の使用量の第四級アンモニウム塩溶液1を添加した。40℃に昇温した後、10分撹拌した。樹脂材料2(デンカ株式会社製、商品名「デンカポバールW-100」、固形分濃度10質量%のビニルアルコール系重合体及び固形分濃度5質量%の硬化剤を含有する溶液、固形分の真比重1.2g/cm)300質量部を添加した後、10分撹拌した。樹脂材料3(ウレタン樹脂、第一工業製薬株式会社製、商品名「スーパーフレックス650」、固形分濃度:26質量%、ウレタン樹脂の真比重1.0g/cm)21質量部を加えた後、10分撹拌した。界面活性剤(ヒドロキシアルキル(炭素数12~14)ヒドロキシエチルサルコシン、川研ファインケミカル株式会社製、商品名「ソフタゾリンLMEB-R」、固形分濃度:5質量%、有効成分の真比重1.0g/cm)8.0質量部を添加することにより樹脂組成物を得た。各成分の使用量は、液状成分を含む使用量である(以下同様)。
【0081】
(実施例9)
5.1質量部の第四級アンモニウム塩溶液1に代えて4.1質量部の第四級アンモニウム塩溶液2を用いたこと以外は実施例2と同様に行うことにより樹脂組成物を得た。
【0082】
(実施例10)
まず、130質量部のシリカゾル2に対して、9.0質量部の第四級アンモニウム塩溶液3を添加した。40℃に昇温した後、10分撹拌した。281質量部の樹脂材料2を添加した後、10分撹拌した。21質量部の樹脂材料3を加えた後、10分撹拌した。界面活性剤(実施例1等と同種)6.0質量部を添加することにより樹脂組成物を得た。
【0083】
(実施例11)
281質量部の樹脂材料2に代えて80質量部の樹脂材料4(ウレタン樹脂、第一工業製薬株式会社製、商品名「スーパーフレックス620」、固形分濃度:30質量%、ウレタン樹脂の真比重1.0g/cm)を用いたこと以外は実施例10と同様に行うことにより樹脂組成物を得た。
【0084】
(比較例1)
シリカゾルを用いなかったこと以外は実施例5と同様に行うことにより樹脂組成物を得た。
【0085】
(比較例2)
シリカゾルを用いなかったこと、及び、第四級アンモニウム塩溶液2の使用量を3.8質量部に変更したこと以外は実施例9と同様に行うことにより樹脂組成物を得た。
【0086】
<抗ウイルスフィルムの作製>
バーコーターを用いて上述の樹脂組成物を基材フィルム(PETフィルム、東洋紡株式会社製、商品名「コスモシャインA4360」、厚さ:50μm)に塗工した後、105℃で5分乾燥することにより、抗ウイルスフィルム(樹脂層、厚さ:10μm)と、当該抗ウイルスフィルムを支持する基材フィルムと、を備える積層体(300mm×500mm)を得た。抗ウイルスフィルムの厚さは、ダイヤルゲージを用いて、この積層体の主面の中心部を通る直線に沿って積層体の厚さ(総厚)を50mm間隔で測定し、測定値の平均値を積層体の厚さとして得た。そして、基材フィルムの厚さ50μmを積層体の厚さから差し引くことにより抗ウイルスフィルムの厚さを得た。
【0087】
<評価>
上述の積層体を用いて、ヘイズ、硬度及び抗ウイルス性を評価した。結果を表1に示す。
【0088】
(ヘイズ)
ヘーズメーターNDH8000(日本電色工業株式会社製)を用いて上述の積層体のヘイズを測定した。
【0089】
(硬度)
BYK-Gardner社製の商品名「高精度付着性試験機器鉛筆硬度計」を用いて上述の積層体における抗ウイルスフィルムの硬度を次の手順で測定した。まず、抗ウイルスフィルム上において鉛筆を斜め45°で測定器具(車輪付き)に設置した後、水平であることを確認した。そして、750gの固定荷重をかけた状態で測定器具を0.5~1.0mm/sの速度で7mm以上の距離を走行させ、傷跡(傷、圧痕等)の有無を確認した。鉛筆スケールを調整して試験を行い、傷跡のない結果が2回得られる最も硬い鉛筆スケールを硬度(鉛筆引っかき硬さ)として得た。
【0090】
(抗ウイルス性)
非エンベロープ型ウイルスとしてA型インフルエンザウイルス(H3N2)を用い、JIS Z 2801に準拠して上述の積層体(50mm×50mm)における抗ウイルスフィルムの抗ウイルス活性値(感染価対数減少値、接触時間:24時間)を測定した。試験前(初期)の抗ウイルスフィルム、耐水試験後の抗ウイルスフィルム、及び、耐候試験後の抗ウイルスフィルムの抗ウイルス活性値を測定した。耐水試験として、上述の積層体を超純水(温度40℃)100mLに16時間浸漬することにより抗ウイルスフィルムを浸潤させた。耐候試験として、温度60℃、湿度90%の環境試験機(ESPEC株式会社製、商品名「小型環境試験機」)で上述の積層体を100時間保持した。
【0091】
抗ウイルス活性値は、次の手順で測定した。まず、シャーレ内において上述の積層体における抗ウイルスフィルムが鉛直方向上方に向く状態で抗ウイルスフィルムの中央に0.4mLのウイルス液を滴下した後、抗ウイルスフィルムの中央を40mm×40mmの保護フィルム(株式会社秋山製作所製、メディカルフィルム(滅菌済))で被覆することにより試験片を得た。この試験片を温度25℃、湿度90%で24時間静置した後、上述の保護フィルムを除去した。抗ウイルスフィルム上のウイルス液を洗い出して回収した後、ウイルス感染価(PFU/cm)を測定した。6枚の上述の積層体の抗ウイルスフィルムについてウイルス感染価の測定を行い、平均値を得た。また、上述の積層体の基材フィルムと同様の新たな基材フィルム(PETフィルム、東洋紡株式会社製、商品名「コスモシャインA4360」)についても同様の手順でウイルス感染価(PFU/cm)を測定した。9枚の基材フィルムについてウイルス感染価の測定を行い、平均値を得た。そして、下記式より抗ウイルス活性値を算出した。
R=Ut-At
R:抗ウイルス活性値(antiviral activity)
Ut:基材フィルムのウイルス感染価(平均値)の常用対数
At:抗ウイルスフィルムのウイルス感染価(平均値)の常用対数
【0092】
【表1】