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特開2024-45914プラスチック再生加工改質剤及び再生プラスチックの製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024045914
(43)【公開日】2024-04-03
(54)【発明の名称】プラスチック再生加工改質剤及び再生プラスチックの製造方法
(51)【国際特許分類】
   C08L 27/04 20060101AFI20240327BHJP
   C08K 3/22 20060101ALI20240327BHJP
   C08K 5/20 20060101ALI20240327BHJP
   C08K 5/098 20060101ALI20240327BHJP
【FI】
C08L27/04
C08K3/22
C08K5/20
C08K5/098
【審査請求】有
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022151006
(22)【出願日】2022-09-22
(11)【特許番号】
(45)【特許公報発行日】2023-02-09
(71)【出願人】
【識別番号】522375914
【氏名又は名称】株式会社セレン
(71)【出願人】
【識別番号】316007388
【氏名又は名称】株式会社MSC
(74)【代理人】
【識別番号】100131026
【弁理士】
【氏名又は名称】藤木 博
(74)【代理人】
【識別番号】100194124
【弁理士】
【氏名又は名称】吉川 まゆみ
(72)【発明者】
【氏名】坂庭 貞夫
(72)【発明者】
【氏名】麦谷 貴司
(72)【発明者】
【氏名】牧野 晃大
(72)【発明者】
【氏名】畠山 紳悟
【テーマコード(参考)】
4J002
【Fターム(参考)】
4J002BB241
4J002BD021
4J002BD031
4J002BD041
4J002BD051
4J002BD061
4J002BD081
4J002DE086
4J002EG048
4J002EP027
(57)【要約】
【課題】塩化水素の発生を抑制することができるプラスチック再生加工改質剤及び再生プラスチックの製造方法を提供する。
【解決手段】プラスチック再生加工改質剤は、酸化カルシウムと、エチレン・ビスステアリン酸アマイドと、ステアリン酸亜鉛とを含んでいる。酸化カルシウムは、下記式1に示す化学反応により、プラスチック材料に含まれる水分を安定化し、Hの発生を抑制することができる。よって、H(水素)と、塩素系樹脂の分解により発生した塩素イオンClとが反応し、塩化水素ガスが発生することを抑制することができる。
CaO + HO → Ca(OH) 式1
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
塩素系樹脂を含むプラスチック材料を原料として再生プラスチックを生成する際、又は、塩素系樹脂を含むプラスチック材料を原料として再生した再生プラスチックを加工する際に用いるプラスチック再生加工改質剤であって、
酸化カルシウムと、エチレン・ビスステアリン酸アマイドと、ステアリン酸亜鉛とを含むことを特徴とするプラスチック再生加工改質剤。
【請求項2】
更に、熱安定剤及び酸化防止剤からなる群のうちの少なくとも1種を含むことを特徴とする請求項1記載のプラスチック再生加工改質剤。
【請求項3】
前記プラスチック材料又は前記再生プラスチックに水分が0.08質量%以上含まれることを特徴とする請求項1記載のプラスチック再生加工改質剤。
【請求項4】
前記プラスチック材料又は前記再生プラスチックにおける塩素含有量は0.05質量%以上であることを特徴とする請求項1記載のプラスチック再生加工改質剤。
【請求項5】
塩素系樹脂を含むプラスチック材料を原料とした再生プラスチックの生成において、前記プラスチック材料に請求項1又は請求項2に記載のプラスチック再生加工改質剤を添加して溶融混錬することを特徴とする再生プラスチックの製造方法。
【請求項6】
塩素系樹脂を含むプラスチック材料を原料として再生した再生プラスチックの加工において、前記再生プラスチックに請求項1又は請求項2に記載のプラスチック再生加工改質剤を添加して溶融することを特徴とする再生プラスチックの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、塩素系樹脂を含むプラスチック材料を原料として再生プラスチックを生成する際、又は、塩素系樹脂を含むプラスチック材料を原料として再生した再生プラスチックを加工する際に用いるプラスチック再生加工改質剤、及び、それを用いた再生プラスチックの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
市場回収されるプラスチック(合成樹脂)は各種の異なるプラスチック類が混在している。プラスチックの融点は品種毎に異なることから、それらを加熱加工する場合の加熱加工温度は、混在する樹脂が溶け合う温度、すなわち融点が高い樹脂側に設定することになる。また、市場回収のプラスチックは異物付着等で汚れていることから、多くは水を利用した洗浄工程を経ることが主である。更に、吸湿性フィラー含有樹脂は必然的に吸水している。このようなことから、加工前の材料に含まれる水分量は、通常は、0.15質量%以上となることが多い。
【0003】
このような条件下において、塩素系樹脂が含まれた状態でプラスチック溶融再生加工を行うと、高温加熱により膨張した水分と、樹脂分解温度を超えて分解された塩素系樹脂より発生する塩素イオンClの両者が高温下で化学反応を起こし、塩化水素ガスHClが多量に発生してしまう。高温下で反応している塩化水素ガスは加工機のみならず、金型、周辺機器、及び、工場全般に拡散して、金属類へ錆(腐食)の被害を与える。また、塩化水素ガスは人体に対しても有害物質にあたることから職場環境の悪化を招いてしまう。更に、上記の条件下で加工された合成樹脂は、通常の再生材と比べて揮発物の影響を受け、品質的にも劣悪品となってしまう。
【0004】
塩素系樹脂から発生する塩素イオンClの捕捉には、ハイドロタルサイト等に代表される捕捉剤を用いることが考えられる(例えば、特許文献1参照)。しかしながら、樹脂の分解温度を超える高温での加工、かつ、材料に水分が含まれている条件下においては、塩素イオンClと水分との反応が優先され、捕捉剤の効果を十分に得ることは難しいと考えられる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2003-253058号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、このような問題に基づきなされたものであり、塩化水素の発生を抑制することができるプラスチック再生加工改質剤及び再生プラスチックの製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明のプラスチック再生加工改質剤は、塩素系樹脂を含むプラスチック材料を原料として再生プラスチックを生成する際、又は、塩素系樹脂を含むプラスチック材料を原料として再生した再生プラスチックを加工する際に用いるものであって、酸化カルシウムと、エチレン・ビスステアリン酸アマイドと、ステアリン酸亜鉛とを含むものである。
【0008】
本発明の再生プラスチックの製造方法は、塩素系樹脂を含むプラスチック材料を原料とした再生プラスチックの生成において、プラスチック材料に本発明のプラスチック再生加工改質剤を添加して溶融混錬するものである。
【0009】
本発明の他の再生プラスチックの製造方法は、塩素系樹脂を含むプラスチック材料を原料として再生した再生プラスチックの加工において、再生プラスチックに本発明のプラスチック再生加工改質剤を添加して溶融するものである。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、酸化カルシウムを含んでいるので、プラスチック材料に含まれる水分を安定化することができ、H(水素)の発生を抑制することができる。よって、H(水素)と、塩素系樹脂の分解により発生した塩素イオンClとが反応し、塩化水素ガスHClが発生することを抑制することができる。また、エチレン・ビスステアリン酸アマイドを含んでいるので、分散性、相溶性を向上させることができ、かつ、ステアリン酸亜鉛を含んでいるので、溶融性を向上させることができる。よって、酸化カルシウムを十分に混合させることができ、酸化カルシウムの効果を高めることができる。
【0011】
更に、酸化カルシウム、エチレン・ビスステアリン酸アマイド、及び、ステアリン酸亜鉛に加えて、熱安定剤及び酸化防止剤からなる群のうちの少なくとも1種を含むようにすれば、樹脂特性の劣化を抑制することができ、高い品質を有する再生プラスチックを得ることができる。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の実施の形態について詳細に説明する。
【0013】
本発明の一実施の形態に係るプラスチック再生加工改質剤は、塩素系樹脂を含むプラスチック材料を原料として再生プラスチックを生成する際、又は、塩素系樹脂を含むプラスチック材料を原料として再生した再生プラスチックを加工する際に用いるものである。プラスチック材料は、未使用品(新材)でも、成形材料等として様々な用途で使用済みの廃材でもよく、新材と廃材の混合物でもよい。廃材は、例えば、使用済材料からも得られるが、生産工程で生じる未使用の端材や成形不良品等からも得ることができる。また、プラスチック材料は、1種類の合成樹脂により構成されていても、複数種の合成樹脂の混合物であってもよく、また、塩素系樹脂と他の1種又は複数種の樹脂との混合物であってもよい。
【0014】
塩素系樹脂は、ポリマー中に塩素原子を含む樹脂およびそのコンパウンドである。塩素系樹脂としては、例えば、塩化ビニル、塩化ビニリデンなどの単独重合体、エチレン-塩化ビニル共重合体などの塩化ビニルと酢酸ビニルを除く他のビニルモノマーとの共重合体、これらの単独重合体または共重合体を改質したもの、および塩素化ポリエチレン(CPE)などの塩化ビニル樹脂と類似の構造を有する塩素化ポリオレフィンなどが挙げられる。
【0015】
塩素系樹脂以外の他の樹脂としては、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、エチレン酢酸ビニルコポリマー、ポリスチレン、ポリアミド、ポリエチレンテレフタレート、又は、アクリロニトリル・ブタジエン・スチレン共重合体(ABS)が代表的に挙げられる。
【0016】
プラスチック再生加工改質剤は、プラスチック材料又は再生プラスチックにおける塩素含有量が、例えば、0.05質量%以上、更には0.5質量%以上、更には2質量%以上の場合に高い効果が得られるので好ましい。塩素含有量が多くなると、塩化水素の発生量が多くなり、塩化水素による影響が大きくなるからである。プラスチック材料又は再生プラスチックにおける塩素含有量は、例えば、JIS Z 7302-6に準ずる測定方法により測定することができる。
【0017】
また、プラスチック再生加工改質剤は、例えば、プラスチック材料又は再生プラスチックに水分が0.08質量%以上、更には1.5質量%以上、更には3質量%以上含まれる場合に高い効果が得られるので好ましい。水分量が多くなると、塩化水素の発生量が多くなり、塩化水素による影響が大きくなるからである。プラスチック材料又は再生プラスチックに含まれる水分量は、例えば、105℃の雰囲気で2時間に於ける材料の乾燥減量%により得ることができる。
【0018】
プラスチック再生加工改質剤は、酸化カルシウムと、エチレン・ビスステアリン酸アマイド(エチレンビスアマイドとも言う)と、ステアリン酸亜鉛とを含んでいる。酸化カルシウム(CaO)は、下記式1に示す化学反応により、プラスチック材料又は再生プラスチックに含まれる水分を安定化し、H(水素)の発生を抑制するためのものである。これにより、H(水素)と、塩素系樹脂の分解により発生した塩素イオンClとが反応し、塩化水素ガスHClが発生することを抑制することができるようになっている。このような化学反応が得られる物質としては、酸化カルシウムの他に、酸化マグネシウム、酸化ストロンチウム、及び、酸化バリウムがあるが、酸化カルシウムが最も高い効果を得ることができるので好ましい。
CaO + HO → Ca(OH) 式1
【0019】
エチレン・ビスステアリン酸アマイドは、樹脂との分散性及び相溶性を向上させるためのものである。ステアリン酸亜鉛は、プラスチック材料又は再生プラスチックの溶融性を向上させるためのものである。酸化カルシウムに加えて、エチレン・ビスステアリン酸アマイド及びステアリン酸亜鉛を含むことにより、プラスチック材料又は再生プラスチックと、主剤である酸化カルシウムとが十分に混合され、酸化カルシウムの効果をより高めることができるようになっている。
【0020】
また、プラスチック再生加工改質剤は、必要に応じて、ステアリン酸カルシウム、含水珪酸マグネシウム(タルクとも言う)、又は、重金属不活性化剤を含むことが好ましい。ステアリン酸カルシウムは、ステアリン酸亜鉛と共に含むことにより、分散作用をより向上させることができるので好ましい。含水珪酸マグネシウムは、プラスチック再生加工改質剤の凝集を防止することができると共に、樹脂の滑性を向上させることができるので好ましい。重金属不活性化剤は、プラスチック材料又は再生プラスチックに含まれる金属類による劣化を軽減するためのものであり、例えば、金属イオンをキレート化することにより、劣化因子である金属イオンを捕捉し安定化を図るものである。重金属不活性化剤としては、例えば、シュウ酸化合物、サリチル酸化合物等のアミド化合物、ヒドラジド化合物が挙げられる。
【0021】
更に、プラスチック再生加工改質剤は、熱安定剤及び酸化防止剤からなる群のうちの少なくとも1種を含むことが好ましい。熱安定剤及び酸化防止剤は、樹脂等の有機材料が加工時に、熱、酸素、機械的剪断力等の様々な因子により劣化することを抑制し、本来の機能を保持できるようにするためのものである。プラスチック材料の再生や再生プラスチックの加工時に単独で添加しても高い効果を得ることはできないが、酸化カルシウム、エチレン・ビスステアリン酸アマイド、及び、ステアリン酸亜鉛と共に添加することにより、優れた相乗効果を得ることが可能となる。熱安定剤及び酸化防止剤としては、例えば、熱酸化劣化の主要因であるペルオキシラジカル及びヒドロペルオキシドを捕捉、分解するものが挙げられる。具体的には、例えば、自動酸化で生成したラジカルを捕捉するフェノール系酸化防止剤、過酸化物分解能を有するホスファイト系酸化防止剤又はチオエーテル系酸化防止剤が挙げられる。
【0022】
プラスチック再生加工改質剤における酸化カルシウム、エチレン・ビスステアリン酸アマイド、ステアリン酸亜鉛の割合は、酸化カルシウム50質量部~99質量部に対して、エチレン・ビスステアリン酸アマイドが0.1質量部~10質量部、ステアリン酸亜鉛が0.1質量部~10質量部の範囲内であることが好ましい。また、ステアリン酸カルシウム、含水珪酸マグネシウム、重金属不活性化剤の割合は、酸化カルシウム50質量部~99質量部に対して、ステアリン酸カルシウムが0.1質量部~10質量部、含水珪酸マグネシウムが0質量部~20質量部、重金属不活性化剤が0質量部~5質量部の範囲内であることが好ましい。熱安定剤及び酸化防止剤の割合は、酸化カルシウム50質量部~99質量部に対して、熱安定剤及び酸化防止剤の合計で、0.05質量部~10質量部の範囲内であることが好ましい。これらの範囲内において高い効果を得ることができるからである。
【0023】
なお、このプラスチック再生加工改質剤は、粉体のままでも効果を発揮するが、粉体の飛散防止、ハンドリング性向上の為、プラスチック材料の形状に応じ、顆粒状、高濃度マスターバッチ加工ペレット状としてもよい。
【0024】
このプラスチック再生加工改質剤は、再生プラスチックの製造において用いられる。例えば、塩素系樹脂を含むプラスチック材料を原料とした再生プラスチックの生成において、プラスチック材料にプラスチック再生加工改質剤を添加して溶融混錬することにより再生プラスチックを製造する。また、塩素系樹脂を含むプラスチック材料を原料として再生した再生プラスチックの加工において、再生プラスチックにプラスチック再生加工改質剤を添加して溶融し、所定の形状に成型することにより再生プラスチックを製造する。
【0025】
再生プラスチックの生成では、原料のプラスチック材料には粉砕物を用いることが好ましく、プラスチック材料にプラスチック再生加工改質剤を添加したのち混合してから溶融混錬することが好ましい。溶融温度は材料により異なるが、例えば、140℃~230℃とすることが好ましい。
【0026】
再生プラスチックの加工では、再生プラスチックはペレットでも、粉砕物でも、ペレットと粉砕物の混合物でもよい。成型方法としては、例えば、シート成型、フロー成型、又は、射出成型が挙げられる。溶融温度は材料により異なるが、150℃~250℃とすることが好ましい。
【0027】
このように、本実施の形態によれば、酸化カルシウムを含んでいるので、プラスチック材料に含まれる水分を安定化することができ、H(水素)の発生を抑制することができる。よって、H(水素)と、塩素系樹脂の分解により発生した塩素イオンClとが反応し、塩化水素ガスHClが発生することを抑制することができる。また、エチレン・ビスステアリン酸アマイドを含んでいるので、分散性、相溶性を向上させることができ、かつ、ステアリン酸亜鉛を含んでいるので、溶融性を向上させることができる。よって、酸化カルシウムを十分に混合させることができ、酸化カルシウムの効果を高めることができる。
【0028】
更に、酸化カルシウム、エチレン・ビスステアリン酸アマイド、及び、ステアリン酸亜鉛に加えて、熱安定剤及び酸化防止剤からなる群のうちの少なくとも1種を含むようにすれば、樹脂特性の劣化を抑制することができ、高い品質を有する再生プラスチックを得ることができる。
【実施例0029】
(実施例1及び比較例1,2)
実施例1として、塩素系樹脂を含む廃材のプラスチック材料を粉砕物とし、プラスチック再生加工改質剤を添加して混合した後、溶融混錬して再生プラスチックを生成した。廃材のプラスチック材料は、ポリプロピレン、ポリエチレン、ポリスチレン、ポリエチレンテレフタレート、ポリアミド、及び、塩化ビニルを含む混合物であり、プラスチック材料における塩素含有量は0.6質量%、プラスチック材料に含まれる水分は1.0質量%程度であった。プラスチック再生加工改質剤は、酸化カルシウム50質量部~99質量部と、エチレン・ビスステアリン酸アマイド0.1質量部~10質量部と、ステアリン酸亜鉛0.1質量部~10質量部と、ステアリン酸カルシウム0.1質量部~10質量部と、含水珪酸マグネシウム0質量部~20質量部と、重金属不活性化剤0質量部~5質量部との混合物とした。プラスチック再生加工改質剤の配合量は、プラスチック材料100質量部に対して、プラスチック再生加工改質剤を5質量部の割合とした。溶融混錬時の温度は230℃とした。
【0030】
その際、揮発物の発生状況を目視にて観察すると共に、塩化水素ガス検知管により塩化水素ガスが検知されるか否かを検出した。また、得られた再生プラスチックの状態を目視により観察した。その結果、揮発物の発生は見られず、塩化水素ガスは検知されなかった。また、得られた再生プラスチックの表面はなめらかで良好な状態であった。
【0031】
比較例1として、プラスチック再生加工改質剤を添加しなかったことを除き、他は実施例1と同様にして再生プラスチックを生成した。比較例1についても、実施例1と同様に、揮発物の発生状況観察、塩化水素ガスの検知、及び、再生プラスチックの状態観察を行った。その結果、比較例1では、揮発物の発生が見られ、塩化水素ガスが検知された。また、樹脂の表面はざらざらしており、不良であった。
【0032】
比較例2として、プラスチック再生加工改質剤に変えてハイドロタルサイトを同量添加したことを除き、他は実施例1と同様にして再生プラスチックを生成した。比較例2についても、実施例1と同様に、揮発物の発生状況観察、塩化水素ガスの検知、及び、再生プラスチックの状態観察を行った。その結果、比較例2では、揮発物の発生が見られ、塩化水素ガスが検知された。また、樹脂の表面はざらざらしており、不良であった。
【0033】
すなわち、プラスチック再生加工改質剤を添加すれば、塩化水素ガスの発生を効果的に抑制することができ、良好な再生プラスチックが得られることが分かった。
【0034】
(実施例2~4、及び、比較例2,3)
実施例2として、実施例1と同様のプラスチック材料とプラスチック再生加工改質剤を混合した後、板状に成型して試験片を作製した。実施例3として、プラスチック再生加工改質剤の添加量を多くしたことを除き、他は実施例2と同様にして試験片を作製した。実施例4として、プラスチック再生加工改質剤に加えて、酸化防止剤を添加したことを除き、他は実施例2と同様にして試験片を作製した。比較例2として、プラスチック再生加工改質剤を添加しなかったことを除き、他は実施例2と同様にして試験片を作製した。比較例3として、プラスチック再生加工改質剤を添加せず、酸化防止剤を添加したことを除き、他は実施例2と同様にして試験片を作製した。
【0035】
実施例2~4、及び、比較例2,3において作製した試験片について、255℃で30分間加熱する加熱試験を行い、加熱後の試験片の状態を観察した。その結果、比較例1では劣化が著しく炭化物となったのに対して、実施例2,3では、劣化が抑制されていることが確認できた。なお、プラスチック再生加工改質剤の添加量を変化させた実施例2と実施例3で大きな違いは観察されなかった。これに対して、プラスチック再生加工改質剤に加えて酸化防止剤を添加した実施例4では、樹脂らしさが残り、樹脂光沢が見られ、劣化が著しく抑制されていた。一方、プラスチック再生加工改質剤を添加せず、酸化防止剤を添加した比較例3では、比較例2に比べてわずかに劣化が抑えられている程度であった。
【0036】
すなわち、プラスチック再生加工改質剤に加えて酸化防止剤を添加すれば、加熱による劣化を著しく抑制できることが分かった。
【0037】
以上、実施の形態を挙げて本発明を説明したが、本発明は上記実施の形態に限定されるものではなく、種々変形可能である。例えば、上記実施の形態では、各構成要素について具体的に説明したが、全ての構成要素を備えていなくてもよく、また、他の構成要素を備えていてもよい。
【手続補正書】
【提出日】2022-12-20
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
塩素系樹脂を含み、かつ、水分を0.08質量%以上含むプラスチック材料を原料として再生プラスチックを生成する際、又は、塩素系樹脂を含むプラスチック材料を原料として再生した水分を0.08質量%以上含む再生プラスチックを加工する際に用いるプラスチック再生加工改質剤であって、
酸化カルシウムと、エチレン・ビスステアリン酸アマイドと、ステアリン酸亜鉛とを含み、
酸化カルシウム、エチレン・ビスステアリン酸アマイド、ステアリン酸亜鉛の割合は、酸化カルシウム50質量部~99質量部に対して、エチレン・ビスステアリン酸アマイドが0.1質量部~10質量部、ステアリン酸亜鉛が0.1質量部~10質量部の範囲内である
ことを特徴とするプラスチック再生加工改質剤。
【請求項2】
更に、熱安定剤及び酸化防止剤からなる群のうちの少なくとも1種を含むことを特徴とする請求項1記載のプラスチック再生加工改質剤。
【請求項3】
前記プラスチック材料又は前記再生プラスチックにおける塩素含有量は0.05質量%以上であることを特徴とする請求項1記載のプラスチック再生加工改質剤。
【請求項4】
塩素系樹脂を含み、かつ、水分を0.08質量%以上含むプラスチック材料を原料とした再生プラスチックの生成において、前記プラスチック材料に請求項1又は請求項2に記載のプラスチック再生加工改質剤を添加して溶融混錬することを特徴とする再生プラスチックの製造方法。
【請求項5】
塩素系樹脂を含むプラスチック材料を原料として再生した水分を0.08質量%以上含む再生プラスチックの加工において、前記再生プラスチックに請求項1又は請求項2に記載のプラスチック再生加工改質剤を添加して溶融することを特徴とする再生プラスチックの製造方法。