(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024045918
(43)【公開日】2024-04-03
(54)【発明の名称】ハイブリッドコンデンサ用電解液及びハイブリッドコンデンサ
(51)【国際特許分類】
H01G 9/035 20060101AFI20240327BHJP
H01G 9/028 20060101ALI20240327BHJP
H01G 9/15 20060101ALI20240327BHJP
H01G 9/145 20060101ALI20240327BHJP
H01G 9/00 20060101ALI20240327BHJP
【FI】
H01G9/035
H01G9/028 E
H01G9/15
H01G9/145
H01G9/00 290H
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022151010
(22)【出願日】2022-09-22
(71)【出願人】
【識別番号】513244753
【氏名又は名称】カーリットホールディングス株式会社
(72)【発明者】
【氏名】前多 晴香
(72)【発明者】
【氏名】和田 直人
(57)【要約】
【課題】高い熱安定性及び誘電体酸化皮膜修復性を有するハイブリッドコンデンサ用電解液を提供する。さらに、該ハイブリッドコンデンサ用電解液を使用し、静電容量や誘電正接(tanδ)、等価直列抵抗(ESR)、漏れ電流及び耐電圧特性を維持しつつ、耐熱特性に優れたハイブリッドコンデンサを提供する。
【解決手段】少なくとも一つがフェニル基又はベンジル基で置換されたリン酸化合物を電解質として有するハイブリッドコンデンサ用電解液。陽極電極箔と陰極電極箔とをセパレータを介して巻回したコンデンサ素子に、導電性高分子からなる固体電解質層が形成されており、該固体電解質層が形成されたコンデンサ素子内の空隙部に、該コンデンサ用電解液を充填させたことを特徴とするハイブリッドコンデンサ。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記一般式(1)で示されるカチオンと、下記一般式(2)~(4)で示される群から選ばれる少なくとも一つのアニオンとから構成される電解質を含有することを特徴とするハイブリッドコンデンサ用電解液。
【化1】
(上式(1)中、R
1~R
4は、それぞれ同一でも異なっていてもよい、水素、水酸基、炭素数1~8のアルキル基、炭素数1~8のアルコキシ基を示し、R
1~R
4は連結して炭素数2~6のアルキレン基を形成しても良い。)
【化2】
(上式(2)中、R
5、R
6は、それぞれ同一でも異なっていてもよい、水素、炭素数1~8のアルキル基、フェニル基又はベンジル基を示し、R
5、R
6の少なくとも1つはフェニル基又はベンジル基である。)
【化3】
(上式(3)中、R
7、R
8は、それぞれ同一でも異なっていてもよい、水素、炭素数1~8のアルキル基、フェニル基又はベンジル基を示し、R
7、R
8の少なくとも1つはフェニル基又はベンジル基である。)
【化4】
(上式(4)中、R
9、R
10は、それぞれ同一でも異なっていてもよい、水素、炭素数1~8のアルキル基、フェニル基又はベンジル基を示し、R
9、R
10の少なくとも1つはフェニル基又はベンジル基である。)
【請求項2】
上記カチオンが、アンモニウムカチオン、ジエチルアミンカチオン、ジメチルエチルアミンカチオン、ジエチルメチルアミンカチオン及びトリエチルアミンカチオンからなる群より選ばれた1種以上のカチオンであることを特徴とする請求項1に記載のハイブリッドコンデンサ用電解液。
【請求項3】
上記アニオンが、リン酸フェニルアニオン、リン酸ジフェニルアニオン、リン酸ベンジルアニオン、リン酸フェニルベンジルアニオン及びリン酸ジベンジルアニオンからなる群より選ばれた1種以上のアニオンであることを特徴とする請求項1に記載のハイブリッドコンデンサ用電解液。
【請求項4】
陽極電極箔と陰極電極箔とをセパレータを介して巻回したコンデンサ素子に、導電性高分子からなる固体電解質層が形成されており、該固体電解質層が形成されたコンデンサ素子内の空隙部に、請求項1から3のいずれか一つに記載のハイブリッドコンデンサ用電解液を充填させたことを特徴とするハイブリッドコンデンサ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ハイブリッドコンデンサ用電解液とそれを用いたハイブリッドコンデンサに関し、詳しくは、固体電解質として導電性高分子層を有し、該固体電解質層を具備するコンデンサ素子内の空隙部に電解液を充填させた導電性高分子ハイブリッドアルミ電解コンデンサに関する。
【背景技術】
【0002】
ハイブリッドコンデンサは、一般的にアルミニウム等の弁作用金属表面に陽極酸化処理等によって絶縁性の酸化皮膜を誘電体として形成したものを陽極電極とし、この陽極電極に対向させて陰極電極を配置し、陽極電極と陰極電極との間にセパレータを介して巻回したコンデンサ素子が用いられている。該コンデンサ素子に導電性高分子を含む固体電解質層を形成し、その後、有底筒状の外装ケースに収納し、コンデンサ素子内の空隙部に電解液を充填させ、ハイブリッドコンデンサを完成する。
【0003】
特許文献1に、コンデンサ素子に充填する電解液の溶質としてボロジサリチル酸塩等の無機酸と有機酸との複合化合物の塩を用いることで、高温でのESR特性が良好になるハイブリッドコンデンサが開示されている。しかし、ハイブリッドコンデンサに要求される他の特性、静電容量や誘電正接(tanδ)あるいは漏れ電流、耐電圧の特性の面で不十分である。また、得られるハイブリッドコンデンサの耐熱性の面においても不十分であるという課題がある。
【0004】
特許文献2には、電解コンデンサ用電解液に関し、高い比電導度を維持しつつ、火花電圧の高い電解液として、アルキルリン酸エステルアニオンとカチオンとから構成される電解質を使用する電解液が開示されている。しかし、ハイブリッドコンデンサに適用した場合、耐熱性が不十分であることが本発明者等の検討により判明した。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2019-145835号公報
【特許文献2】特開2008-135693号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の目的は、耐熱性に優れたハイブリッドコンデンサ及びそのようなハイブリッドコンデンサの製造に資するハイブリッドコンデンサ用電解液を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは、誘電体酸化皮膜を有する弁作用金属箔と対向陰極箔とがセパレータを介して巻回されてなるコンデンサ素子を有し、該コンデンサ素子に、導電性高分子からなる固体電解質層を形成後、電解液と共に前記コンデンサ素子を収納した外装ケースからなるハイブリッドコンデンサにおいて、電解液として、以下に示す電解質を含むハイブリッドコンデンサが上記課題を解決できることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0008】
すなわち、本発明は以下(1)~(4)に示すものである。
【0009】
(1):下記一般式(1)で示されるカチオンと、下記一般式(2)~(4)で示される群から選ばれる少なくとも一つのアニオンとから構成される電解質を含有することを特徴とするハイブリッドコンデンサ用電解液である。
【0010】
【0011】
上式(1)中、R1~R4は、それぞれ同一でも異なっていてもよい、水素、水酸基、炭素数1~8のアルキル基、炭素数1~8のアルコキシ基を示し、R1~R4は連結して炭素数2~6のアルキレン基を形成しても良い。
【0012】
【0013】
上式(2)中、R5、R6は、それぞれ同一でも異なっていてもよい、水素、炭素数1~8のアルキル基、フェニル基又はベンジル基を示し、R5、R6の少なくとも1つはフェニル基又はベンジル基である。
【0014】
【0015】
上式(3)中、R7、R8は、それぞれ同一でも異なっていてもよい、水素、炭素数1~8のアルキル基、フェニル基又はベンジル基を示し、R7、R8の少なくとも1つはフェニル基又はベンジル基である。
【0016】
【0017】
上式(4)中、R9、R10は、それぞれ同一でも異なっていてもよい、水素、炭素数1~8のアルキル基、フェニル基又はベンジル基を示し、R9、R10の少なくとも1つはフェニル基又はベンジル基である。
【0018】
(2):上記カチオンが、アンモニウムカチオン、ジエチルアミンカチオン、ジメチルエチルアミンカチオン、ジエチルメチルアミンカチオン及びトリエチルアミンカチオンからなる群より選ばれた1種以上のカチオンであることを特徴とする上記(1)に記載のハイブリッドコンデンサ用電解液である。
【0019】
(3):上記アニオンが、リン酸フェニルアニオン、リン酸ジフェニルアニオン、リン酸ベンジルアニオン、リン酸フェニルベンジルアニオン及びリン酸ジベンジルアニオンからなる群より選ばれた1種以上のアニオンであることを特徴とする上記(1)に記載のハイブリッドコンデンサ用電解液である。
【0020】
(4):陽極電極箔と陰極電極箔とをセパレータを介して巻回したコンデンサ素子に、導電性高分子からなる固体電解質層が形成されており、該固体電解質層が形成されたコンデンサ素子内の空隙部に、上記(1)から(3)のいずれか一つに記載のハイブリッドコンデンサ用電解液を充填させたことを特徴とするハイブリッドコンデンサである。
【発明の効果】
【0021】
本発明のハイブリッドコンデンサ用電解液は、高い熱安定性及び誘電体酸化皮膜修復性を有する。従って、該ハイブリッドコンデンサ用電解液を使用したハイブリッドコンデンサは、静電容量や誘電正接(tanδ)、等価直列抵抗(ESR)、漏れ電流及び耐電圧特性を維持しつつ、耐熱特性に優れたものとなる。
【発明を実施するための形態】
【0022】
まず、以下に本発明のハイブリッドコンデンサ用電解液について説明する。
【0023】
<電解質>
本発明のハイブリッドコンデンサ用電解液に含有される電解質は、カチオン及びアニオンからなる塩で構成され、単独で用いても2種類以上混合して用いても良い。
【0024】
<カチオン>
上記カチオンとしては下記一般式(1)で示されるものである。
【0025】
【0026】
上式(1)中、R1~R4は、それぞれ同一でも異なっていてもよい、水素、水酸基、炭素数1~8のアルキル基、炭素数1~8のアルコキシ基を示し、R1~R4は連結して炭素数2~6のアルキレン基を形成しても良い。
【0027】
上式(1)で表されるカチオンの具体例としては、アンモニウムカチオン;テトラメチルアンモニウムカチオン、テトラエチルアンモニウムカチオン、テトラプロピルアンモニウムカチオン、テトライソプロピルアンモニウムカチオン、テトラブチルアンモニウムカチオン、トリメチルエチルアンモニウムカチオン、トリエチルメチルアンモニウムカチオン、ジメチルジエチルアンモニウムカチオン、ジメチルエチルメトキシアンモニウムカチオン、ジメチルエチルメトキシアンモニウムカチオン、ジメチルエチルエトキシアンモニウムカチオン、トリメチルプロピルアンモニウムカチオン、ジメチルエチルプロピルアンモニウムカチオン、トリエチルプロピルアンモニウムカチオン、スピロ-(1,1’)-ビピロリジニウムカチオン、ピペリジン-1-スピロ-1’-ピロリジニウムカチオン、スピロ-(1,1’)-ビピペリジニウムカチオン等の4級アンモニウムカチオン;トリメチルアミンカチオン、トリエチルアミンカチオン、トリプロピルアミンカチオン、トリイソプロピルアミンカチオン、トリブチルアミンカチオン、ジエチルメチルアミンカチオン、ジメチルエチルアミンカチオン、ジエチルメトキシアミンカチオン、ジメチルメトキシアミンカチオン、ジメチルエトキシアミンカチオン、ジエチルエトキシアミンカチオン、メチルエチルメトキシアミンカチオン、N-メチルピロリジンカチオン、N-エチルピロリジンカチオン、N-プロピルピロリジンカチオン、N-イソプロピルピロリジンカチオン、N-ブチルピロリジンカチオン、N-メチルピペリジンカチオン、N-エチルピペリジンカチオン、N-プロピルピペリジンカチオン、N-イソプロピルピペリジンカチオン、N-ブチルピペリジンカチオン等の3級アミンカチオン;ジメチルアミンカチオン、ジエチルアミンカチオン、ジイソプロピルアミンカチオン、ジプロピルアミンカチオン、ジブチルアミンカチオン、メチルエチルアミンカチオン、メチルプロピルアミンカチオン、メチルイソプロピルアミンカチオン、メチルブチルアミンカチオン、エチルイソプロピルアミンカチオン、エチルプロピルアミンカチオン、エチルブチルアミンカチオン、イソプロピルブチルアミンカチオン、ピロリジンカチオン等の2級アミンカチオン等が挙げられる。
【0028】
これらの中でも、耐熱性向上効果に優れることから、アンモニウムカチオン、ジエチルアミンカチオン、ジメチルエチルアミンカチオン、ジエチルメチルアミンカチオン、トリエチルアミンカチオンが好適に用いられる。
【0029】
<アニオン>
上記アニオンとしては下記一般式(2)~(4)で示されるものである。
【0030】
【0031】
上式(2)中、R5、R6は、それぞれ同一でも異なっていても良い、水素、炭素数1~8のアルキル基、フェニル基又はベンジル基を示し、R5、R6の少なくとも1つはフェニル基又はベンジル基である。
【0032】
【0033】
上式(3)中、R7、R8は、それぞれ同一でも異なっていても良い、水素、炭素数1~8のアルキル基、フェニル基又はベンジル基を示し、R7、R8の少なくとも1つはフェニル基又はベンジル基である。
【0034】
【0035】
上式(4)中、R9、R10は、それぞれ同一でも異なっていても良い、水素、炭素数1~8のアルキル基、フェニル基又はベンジル基を示し、R9、R10の少なくとも1つはフェニル基又はベンジル基である。
【0036】
上式(2)で表されるアニオンの具体例としては、フェニルホスフィン酸アニオン、メチルフェニルホスフィン酸アニオン、ジフェニルホスフィン酸アニオン、ベンジルホスフィン酸アニオン、メチルベンジルホスフィン酸アニオン、フェニルベンジルホスフィン酸アニオン、ジベンジルホスフィン酸アニオンが挙げられる。
【0037】
上式(3)で表されるアニオンの具体例としては、フェニルホスホン酸水素アニオン、メチルフェニルホスホン酸アニオン、ジフェニルホスホン酸アニオン、フェニルベンジルホスホン酸アニオン、ベンジルホスホン酸アニオン、メチルベンジルホスホン酸アニオン、ベンジルフェニルホスホン酸アニオン、ジベンジルホスホン酸アニオンが挙げられる。
【0038】
上式(4)で表されるアニオンの具体例としては、リン酸フェニルアニオン、リン酸ジフェニルアニオン、リン酸ベンジルアニオン、リン酸フェニルベンジルアニオン、リン酸ジベンジルアニオン等が挙げられる。
【0039】
これらの中でも、耐熱性向上効果に優れることから、リン酸フェニルアニオン、リン酸ジフェニルアニオン、リン酸ベンジルアニオン、リン酸フェニルベンジルアニオン、リン酸ジベンジルアニオンが好適に用いられる。
【0040】
<有機溶媒>
本発明のハイブリッドコンデンサ用電解液は、有機溶媒を含んでも良く、有機溶媒はプロトン性極性溶媒又は非プロトン性極性溶媒を用いることができ、単独で用いても2種類以上混合して用いてもよい。
【0041】
プロトン性極性溶媒としては、一価アルコール類(メタノール、エタノール、プロパノール、ブタノール、ペンタノール、ヘキサノール、シクロブタノール、シクロペンタノール、シクロヘキサノール、ベンジルアルコール等)、多価アルコール類及びオキシアルコール化合物類(エチレングリコール、プロピレングリコール、グリセリン、メチルセロソルブ、エチルセロソルブ、メトキシプロピレングリコール、ジメトキシプロパノール等)が挙げられる。
【0042】
非プロトン性の極性溶媒としては、γ-ブチロラクトン、γ-バレロラクトン、アミド系(N-メチルホルムアミド、N,N-ジメチルホルムアミド、N-エチルホルムアミド、N,N-ジエチルホルムアミド、N-メチルアセトアミド、N,N-ジメチルアセトアミド、N-エチルアセトアミド、N,N-ジエチルアセトアミド、ヘキサメチルホスホリックアミド等)、スルホラン系(スルホラン、3-メチルスルホラン、2,4-ジメチルスルホラン等)、鎖状スルホン系(ジメチルスルホン、エチルメチルスルホン、エチルイソプロピルスルホン等)、環状アミド系(N-メチル-2-ピロリドン等)、カーボネイト類(エチレンカーボネイト、プロピレンカーボネイト、イソブチレンカーボネイト等)、ニトリル系(アセトニトリル等)、スルホキシド系(ジメチルスルホキシド等)、2-イミダゾリジノン系(1,3-ジアルキル-2-イミダゾリジノン、1,3-ジメチル-2-イミダゾリジノン、1,3-ジエチル-2-イミダゾリジノン、1,3-ジ(n-プロピル)-2-イミダゾリジノン、1,3,4-トリアルキル-2-イミダゾリジノン、1,3,4-トリメチル-2-イミダゾリジノン等)が挙げられる。
【0043】
ハイブリッドコンデンサに用いる場合には、主溶媒としてγ-ブチロラクトン又はエチレングリコール又はスルホランが好ましく挙げられる。また、ハイブリッドコンデンサ用電解液に含有する水分量は、特に限定されないが、0.01~20質量%が好ましく、0.1~10質量%がより好ましく挙げられる。該水分量にすることで、良好な耐熱特性を得ることができる。
【0044】
上記電解質を上記有機溶媒に溶解することで本発明のハイブリッドコンデンサ用電解液を調整することができる。上記電解質の添加量は、0.1~50質量%が好ましく、1~15質量%がより好ましい。特に好ましくは3~10質量%である。50質量%を超えると耐熱特性が低下する場合がある。
【0045】
<添加剤>
本発明のハイブリッドコンデンサ用電解液には、本発明の効果を損なわない程度、態様において、添加剤を含有させてもよい。添加剤としては、リン酸ジブチル、リン酸トリブチル、亜リン酸ジブチル、亜リン酸トリブチル、リン酸アンモニウム等のリン酸化合物、o-ニトロ安息香酸、m-ニトロ安息香酸、p-ニトロ安息香酸、o-ニトロフェノール、m-ニトロフェノール、p-ニトロフェノール等のニトロ化合物、ポリエチレングリコール、ポリビニルアルコール、ホウ酸、マンニット、ホウ酸とマンニット、ソルビット等の錯化合物やホウ酸とエチレングリコール、グリセリン等の多価アルコールとの錯化合物等のホウ素化合物、アミン化合物、トリアゾールが挙げられる。
【0046】
<ハイブリッドコンデンサ>
次に、本発明のハイブリッドコンデンサについて説明する。
本発明のハイブリッドコンデンサは、誘電体酸化皮膜を有する陽極金属箔と対向陰極箔とがセパレータを介して巻回されてなるコンデンサ素子を有し、該コンデンサ素子に導電性高分子を含む固体電解質が形成されており、前記コンデンサ素子を前記ハイブリッドコンデンサ電解液と共に外装ケースに収納した構成を有するものである。
【0047】
<コンデンサ素子>
前記ハイブリッドコンデンサの製造方法を説明する。
陽極に用いる金属箔として、表面をエッチングし、粗面化処理を施したエッチドアルミニウム箔を用いることができる。該アルミニウム箔に、アジピン酸二アンモニウム水溶液等の化成処理液中にて、陽極酸化することにより陽極表面に誘電体酸化皮膜層を形成し、陽極にリード端子を取り付け、また、アルミニウム箔からなる対向陰極箔にリード端子を取り付け、それらのリード端子付き陽極と陰極とをセパレータを介して対向させ、巻回することによりコンデンサ素子を作製する。
【0048】
<固体電解質>
本発明のハイブリッドコンデンサは、前記コンデンサ素子に導電性高分子からなる固体電解質層が形成されたものを用いる。
固体電解質を形成する導電性高分子には、導電性高分子を溶媒に分散させた導電性高分子分散液、導電性高分子を溶解させた導電性高分子溶液、あるいは導電性高分子モノマーと酸化剤を用い、前記コンデンサ素子内にて化学酸化重合した導電性高分子を用いることができる。
【0049】
<導電性高分子分散液>
上述の導電性高分子分散液は、ドーパント成分をドープしたポリチオフェン誘導体と、分散媒と、を少なくとも含有する導電性高分子分散液を用いることができる。
【0050】
ポリチオフェン誘導体は、チオフェン誘導体モノマーを重合したものを用いることができる。該チオフェン誘導体モノマーとして具体的には、3,4-エチレンジオキシチオフェン、メチル-3,4-エチレンジオキシチオフェン、エチル-3,4-エチレンジオキシチオフェン、プロピル-3,4-エチレンジオキシチオフェン、3,4-プロピレンジオキシチオフェン、メチル-3,4-プロピレンジオキシチオフェン、エチル-3,4-プロピレンジオキシチオフェン、プロピル-3,4-プロピレンジオキシチオフェン、3,4-エチレンジチアチオフェン、メチル-3,4-エチレンジチアチオフェン、エチル-3,4-エチレンジチアチオフェン、プロピル-3,4-エチレンジチアチオフェン、3,4-プロピレンジチアチオフェン、メチル-3,4-プロピレンジチアチオフェン、エチル-3,4-プロピレンジチアチオフェン、プロピル-3,4-プロピレンジチアチオフェン等が挙げられる。
【0051】
これらの中でも、より分散性に優れる導電性高分子分散液を得ることができ、電気特性に優れる点より、3,4-エチレンジオキシチオフェン、メチル-3,4-エチレンジオキシチオフェン、エチル-3,4-エチレンジオキシチオフェンが特に好ましく挙げられる。
【0052】
ドーパント成分として、具体的には、ポリビニルスルホン酸、ポリスチレンスルホン酸、ポリアリルスルホン酸、ポリアクリル酸エチルスルホン酸、ポリアクリル酸ブチルスルホン酸、ポリアクリルスルホン酸、ポリメタクリルスルホン酸、ポリ(2-アクリルアミド-2-メチルスルホン酸)、ポリイソプレンスルホン酸、ポリビニルカルボン酸、ポリスチレンカルボン酸、ポリアリルカルボン酸、ポリアクリルスルホン酸、ポリメタクリルカルボン酸、ポリ(2-アクリルアミド-2-メチルカルボン酸)、ポリイソプレンカルボン酸、パラトルエンスルホン酸、キシレンスルホン酸、メチルナフタレンスルホン酸、ブチルナフタレンスルホン酸等が挙げられる。これらは単独であっても、2種類以上の混合物であってもよい。
これらの中でも、ポリスチレンスルホン酸が特に好ましく挙げられる。
【0053】
ドーパント成分がドープしたチオフェン誘導体として、特に好ましくは、ポリスチレンスルホン酸ドープのポリ(3,4-エチレンジオキシチオフェン)、ポリスチレンスルホン酸ドープのポリ(メチル-3,4-エチレンジオキシチオフェン)、ポリスチレンスルホン酸ドープのポリ(エチル-3,4-エチレンジオキシチオフェン)が挙げられる。
【0054】
上記分散媒としては、水又は有機溶媒を用いることができる。
【0055】
<化学酸化重合>
本発明に用いることができる化学酸化重合による導電性高分子は、前述のチオフェン誘導体モノマーを、酸化剤及びドーパントの存在下で化学酸化重合することによって得ることができる。化学酸化重合のための酸化剤は例えばパラトルエンスルホン酸鉄(III)塩等の公知の酸化剤を用いることができる。
【0056】
前記ドーパントとして、導電性高分子への化学酸化ドープが起こりうる官能基等を有しているものが使用でき、例えば、ヨウ素、臭素、塩素等のハロゲンイオン、ヘキサフルオロリン、ヘキサフルオロヒ素、ヘキサフルオロアンチモン、テトラフルオロホウ素、過塩素酸等のハロゲン化物イオン、又はメタンスルホン酸、ドデシルスルホン酸等のアルキル置換有機スルホン酸イオン、カンファースルホン酸イオン等の環状スルホン酸イオン、又はベンゼンスルホン酸、パラトルエンスルホン酸、ドデシルベンゼンスルホン酸、ポリスチレンスルホン酸、ベンゼンジスルホン酸等のアルキル置換もしくは無置換のベンゼンモノもしくはジスルホン酸イオン、2-ナフタレンスルホン酸、1,7-ナフタレンジスルホン酸等のスルホン酸基を1~4個置換したナフタレンスルホン酸のアルキル置換もしくは無置換イオン、アントラセンスルホン酸イオン、アントラキノンスルホン酸イオン、アルキルビフェニルスルホン酸、ビフェニルジスルホン酸等のアルキル置換もしくは無置換のビフェニルスルホン酸イオン、ポリスチレンスルホン酸、ナフタレンスルホン酸ホルマリン縮合体等の高分子スルホン酸イオン等、またはモリブドリン酸、タングストリン酸、タングストモリブドリン酸等のヘテロポリ酸イオン、メトキシベンゼンスルホン酸、エトキシベンゼンスルホン酸、キシレンスルホン酸が挙げられる。これらの中でも、ポリスチレンスルホン酸、ベンゼンスルホン酸、パラトルエンスルホン酸、ポリスチレンスルホン酸、メトキシベンゼンスルホン酸、エトキシベンゼンスルホン酸、キシレンスルホン酸から選ばれる少なくとも一種がより好ましく挙げられ、パラトルエンスルホン酸、ポリスチレンスルホン酸が特に好ましく挙げられる。
【0057】
<ハイブリッドコンデンサ>
ハイブリッドコンデンサの製造方法を以下に詳細に説明する。
【0058】
前述の通り、誘電体酸化皮膜が形成された陽極金属箔と対向陰極箔とがセパレータを介して巻回されてなるコンデンサ素子を作製する。
導電性高分子分散液を前記コンデンサ素子に接触させた後、乾燥させることで、導電性高分子からなる固体電解質層を素子内に形成することができる。接触させる方法は、任意の方法でよいが、浸漬させる方法が好ましく挙げられる。次に、固体電解質層を形成させたコンデンサ素子を、電解液と共に有底筒状の金属ケースに収納し、開口端部を封口することでハイブリッドコンデンサを作製することができる。
【0059】
化学酸化重合による導電性高分子を用いる場合は、チオフェン誘導体モノマー及び酸化剤及びドーパント溶液を前記コンデンサ素子内にて接触させることで化学酸化重合による導電性高分子を形成することができる。次に、固体電解質層を形成させたコンデンサ素子を、電解液と共に有底筒状の金属ケースに収納し、開口端部を封口することでハイブリッドコンデンサを作製することができる。
【実施例0060】
以下、本発明を実施例等に基づき説明する。なお、本発明は、本実施例等により、なんら限定されるものではない。
【0061】
<電解液の調製>
(実施例1)
アセトニトリル56質量部中に、トリエチルアミン14質量部及びジフェニルホスフィン酸30質量部を溶解させ、80℃で3時間加熱した後、エバポレーターにて80℃、圧力15Torr以下の減圧下で、溶媒を留去した。得られた電解質(トリエチルアミン-ジフェニルホスフィン酸)を、エチレングリコールに5質量%となるように溶解し電解液を調製した。
【0062】
(実施例2)
アセトニトリル54質量部中に、トリエチルアミン13質量部及びベンジルフェニルホスホン酸33質量部を溶解させ、80℃で3時間加熱した後、エバポレーターにて80℃、圧力15Torr以下の減圧下で、溶媒を留去した。得られた電解質(トリエチルアミン-ベンジルフェニルホスフィン酸)を、エチレングリコールに5質量%となるように溶解し電解液を調製した。
【0063】
(実施例3)
アセトニトリル60質量部中に、トリエチルアミン15質量部及びリン酸フェニル60質量部を溶解させ、80℃で3時間加熱した後、エバポレーターにて80℃、圧力15Torr以下の減圧下で、溶媒を留去した。得られた電解質(トリエチルアミン-リン酸フェニル)を、エチレングリコールに5質量%となるように溶解し電解液を調製した。
【0064】
(実施例4)
アセトニトリル20質量部中に、アンモニウム5質量部及びリン酸ジフェニル75質量部を溶解させ、80℃で3時間加熱した後、エバポレーターにて80℃、圧力15Torr以下の減圧下で、溶媒を留去した。得られた電解質(リン酸ジフェニル-アンモニウム)を、エチレングリコールに5質量%となるように溶解し電解液を調製した。
【0065】
(実施例5)
アセトニトリル48質量部中に、ジエチルアミン12質量部及びリン酸ジフェニル41質量部を溶解させ、80℃で3時間加熱した後、エバポレーターにて80℃、圧力15Torr以下の減圧下で、溶媒を留去した。得られた電解質(ジエチルアミン-リン酸ジフェニル)を、エチレングリコールに5質量%となるように溶解し電解液を調製した。
【0066】
(実施例6)
アセトニトリル54質量部中に、トリエチルアミン13質量部及びリン酸ジフェニル33質量部を溶解させ、80℃で3時間加熱した後、エバポレーターにて80℃、圧力15Torr以下の減圧下で、溶媒を留去した。得られた電解質(トリエチルアミン-リン酸ジフェニル)を、エチレングリコールに5質量%となるように溶解し電解液を調製した。
【0067】
(実施例7)
アセトニトリル60質量部中に、テトラエチルアンモニウムヒドロキシド15質量部及びリン酸ジフェニル25質量部を溶解させ、80℃で3時間加熱した後、エバポレーターにて80℃、圧力15Torr以下の減圧下で、溶媒を留去した。得られた電解質(テトラエチルアンモニウム-リン酸ジフェニル)を、エチレングリコールに5質量%となるように溶解し電解液を調製した。
【0068】
(実施例8)
アセトニトリル60質量部中に、トリエチルアミン15質量部及びリン酸ベンジル25質量部を溶解させ、80℃で3時間加熱した後、エバポレーターにて80℃、圧力15Torr以下の減圧下で、溶媒を留去した。得られた電解質(トリエチルアミン-リン酸ベンジル)を、エチレングリコールに5質量%となるように溶解し電解液を調製した。
【0069】
(実施例9)
アセトニトリル54質量部中に、トリエチルアミン13質量部及びリン酸フェニルベンジル33質量部を溶解させ、80℃で3時間加熱した後、エバポレーターにて80℃、圧力15Torr以下の減圧下で、溶媒を留去した。得られた電解質(トリエチルアミン-リン酸フェニルベンジル)を、エチレングリコールに5質量%となるように溶解し電解液を調製した。
【0070】
(実施例10)
アセトニトリル52質量部中に、トリエチルアミン13質量部及びリン酸ジベンジル35質量部を溶解させ、80℃で3時間加熱した後、エバポレーターにて80℃、圧力15Torr以下の減圧下で、溶媒を留去した。得られた電解質(トリエチルアミン-リン酸ジベンジル)を、エチレングリコールに5質量%となるように溶解し電解液を調製した。
【0071】
(比較例1)
イオン交換樹脂にて1-エチル-3-メチルイミダゾリウムブロミドをイオン交換し、得られた20質量%1-エチル-3-メチルイミダゾリウムヒドロキシド水溶液78質量部と、リン酸ジフェニル22質量部を混合し、80℃で3時間加熱した後、エバポレーターにて80℃、圧力15Torr以下の減圧下で、溶媒を留去した。得られた電解質(1-エチル-3-メチルイミダゾリウム-リン酸ジフェニル)を、エチレングリコールに5質量%となるように溶解し電解液を調製した。
【0072】
(比較例2)
エチレングリコール95質量部に対して、トリエチルアミン2質量部及びリン酸ジブチル3質量部を加え、80℃で3時間加熱し、5質量%の電解質(トリエチルアミン-リン酸ジブチル)からなるエチレングリコール溶液を得た。
【0073】
<ハイブリッドコンデンサの作製>
まず、コンデンサ素子は陽極箔と、陰極箔とをセパレータを介して巻回して作製した。陽極箔、陰極箔には陽極タブ、陰極タブがそれぞれ接続されている。これらの陽極タブ、陰極タブは高純度のアルミニウムよりなり、それぞれの箔と接続する平坦部と平坦部と連続した丸棒部より構成され、丸棒部にはそれぞれ陽極リード線、陰極リード線が接続されている。なお、それぞれの箔と電極タブはステッチ法や超音波溶接等により機械的に接続されている。
【0074】
このように構成したコンデンサ素子に、ALDRICH製ポリ(3,4-エチレンジオキシチオフェン)-(ポリスチレンスルホン酸)水分散液を含浸後、155℃で30分乾燥して、固体電解質層を形成した。
固体電解質層を形成した素子に、実施例1~10及び比較例1、2より得られた電解液を含浸後、有底筒状のアルミニウムよりなる外装ケースに収納し、外装ケースの開口端部に、リード線を導出する貫通孔を有するブチルゴム製の封口体を挿入し、さらに外装ケースの端部を加締めることにより封口を行い、ハイブリッドコンデンサを得た。
【0075】
<ハイブリッドコンデンサの評価>
実施例1~10及び比較例1、2の電解液を用いて得られたハイブリッドコンデンサについて、135℃で3000時間耐熱性試験を実施した前後で、アジレント・テクノロジー株式会社製プレシジョンLCRメーターE4980Aを使用して、120Hzにおける静電容量(μF)及び誘電正接(tanδ)を測定し、100kHzにおける等価直列抵抗(ESR)を測定した。
【0076】
表1に、評価結果を以下に示す。
【0077】
【0078】
以上のとおり、実施例においては、耐熱性試験後において優れた静電容量、誘電正接、等価直列抵抗特性を備えているため、耐熱特性に優れるハイブリッドコンデンサを得ることができた。
本発明のハイブリッドコンデンサ用電解液を使用したハイブリッドコンデンサは耐熱性に優れ、ハイブリッドコンデンサの特性低下を長期に亘って抑制することが可能なため、高周波数のデジタル機器や車載用等に適用できる。