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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024045919
(43)【公開日】2024-04-03
(54)【発明の名称】工作機械
(51)【国際特許分類】
   B23Q 11/00 20060101AFI20240327BHJP
   B23Q 17/00 20060101ALI20240327BHJP
   B23Q 17/09 20060101ALI20240327BHJP
【FI】
B23Q11/00 K
B23Q17/00 A
B23Q17/09 H
B23Q17/00 E
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022151015
(22)【出願日】2022-09-22
(71)【出願人】
【識別番号】000237271
【氏名又は名称】株式会社FUJI
(74)【代理人】
【識別番号】100125737
【弁理士】
【氏名又は名称】廣田 昭博
(72)【発明者】
【氏名】幸村 数善
(72)【発明者】
【氏名】大塚 裕也
(72)【発明者】
【氏名】廣田 奈緒美
(72)【発明者】
【氏名】中川 太智
(72)【発明者】
【氏名】岩井 揚子
【テーマコード(参考)】
3C029
【Fターム(参考)】
3C029CC03
3C029EE01
3C029FF02
3C029FF05
(57)【要約】
【課題】作業者による回収ボックスの確認作業を不要にした工作機械を提供すること。
【解決手段】ワークに対する切削加工を実行するための加工装置と、前記加工装置のワークに対する切削加工により発生する切屑を機外へと送り出す排出装置と、前記加工装置および前記排出装置の駆動を制御する制御装置と、を有し、前記制御装置は、前記加工装置の所定のモータに関して負荷情報と基準時間とによって特定した切屑体積を切屑用基準データとして備え、ワーク加工時に使用される前記モータの実際の負荷情報および加工時間に従い前記切屑用基準データから切屑体積を算出し、その切屑体積を積算することにより前記排出装置の排出口に置かれた回収ボックス内に集められる切屑の合計体積を算出する工作機械。
【選択図】図5

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ワークに対する切削加工を実行するための加工装置と、
前記加工装置のワークに対する切削加工により発生する切屑を機外へと送り出す排出装置と、
前記加工装置および前記排出装置の駆動を制御する制御装置と、を有し、
前記制御装置は、前記加工装置の所定のモータに関して負荷情報と基準時間とによって特定した切屑体積を切屑用基準データとして備え、ワーク加工時に使用される前記モータの実際の負荷情報および加工時間に従い前記切屑用基準データから切屑体積を算出し、その切屑体積を積算することにより前記排出装置の排出口に置かれた回収ボックス内に集められる切屑の合計体積を算出する工作機械。
【請求項2】
前記負荷情報は、前記モータに供給される電流を測定して得られる負荷電流値である請求項1に記載の工作機械。
【請求項3】
前記切屑用基準データは、前記モータに関して負荷情報を一定範囲に区切ってレベル分けし、各レベル範囲において前記基準時間の加工で発生する切屑のおおよその体積を示したものである請求項1に記載の工作機械。
【請求項4】
前記制御装置は、前記合計体積が前記回収ボックの容積に対応して設定された限界割合に達したところで、作業者に対する所定の報知を行う警報処理を実行する請求項1乃至請求項3のいずれかに記載の工作機械。
【請求項5】
前記制御装置は、前記合計体積が前記回収ボックの容積に対して前記限界割合以で設定された準備割合に達したところで、作業者に対する所定の報知を行う予報処理を実行する請求項4に記載の工作機械。
【請求項6】
前記加工装置は、把持したワークに回転を与えるためのスピンドルモータを備えた主軸装置と、回転工具に回転を与えるための工具用モータを備えた工具側装置であり、
前記制御装置は、前記スピンドルモータおよび前記工具用モータに関して前記切屑用基準データを備え、ワーク加工時に使用される前記スピンドルモータまたは前記工具用モータの実際の負荷情報および加工時間に従い前記切屑用基準データから切屑体積を算出し、その切屑体積を積算することにより前記排出装置の排出口に置かれた回収ボックス内の切屑の合計体積を算出する請求項1に記載の工作機械。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、作業者による回収ボックスの確認作業を不要にした工作機械に関する。
【背景技術】
【0002】
工作機械ではワークに対する切削加工によって切屑が発生するため、クーラントで洗い流した後にチップコンベアなどによって回収が行われる。そうした切屑は回収ボックスに集められ、一定量に達したところで溢れる前に空の回収ボックスとの交換が行われる。しかし、そのタイミングを目視で何度も確認するのは作業者にとって煩わしくミスも生じやすい。すなわち、作業者が行う回収ボックス内の切屑を確認する作業は無駄な手間であり、その一方で作業者が切屑の確認を怠ってしまうと、切屑が容器から溢れたり、切屑が落ち切らずにチップコンベアに巻き付いてしまうなどの問題が生じる。
【0003】
この点、下記特許文献1には作業者が適切なタイミングで切屑を除去することを支援する数値制御装置が記載されている。その数値制御装置は、工作機械において工具がワークを切削する際の切屑の堆積量を推測するものである。ワークの切削加工が行われる際、切削に対応する負荷が主軸に加わるため、主軸モータは比較的大きな出力を発生し、電流値が比較的大きくなる。そして、その電流値に応じてワークに対する切削加工が行われていることから、切屑が発生しているか否かの判断および切屑の堆積量が推定できる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】国際公開WO2019/123593号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、前記従来技術は、工作機械がワークを切削する際の加工条件や切屑の形状を特定する加工モードを基に切屑の体積量を算出するものであるが、その条件などが複雑であり実現が困難である。加工条件は、ワークの形状や材質、工具の形状や材質、工具がワークを切削する際の切込量等々であり、加工モードは、ワークが円柱か円柱以外の柱であるかなどである。そのため、回収ボックスが溜められた切屑によって交換が必要な時期であることを、より簡単に確認できるようにすることが望まれる。
【0006】
そこで、本発明は、かかる課題を解決すべく、作業者による回収ボックスの確認作業を不要にした工作機械を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明に係る工作機械は、ワークに対する切削加工を実行するための加工装置と、前記加工装置のワークに対する切削加工により発生する切屑を機外へと送り出す排出装置と、前記加工装置および前記排出装置の駆動を制御する制御装置と、を有し、前記制御装置は、前記加工装置の所定のモータに関して負荷情報と基準時間とによって特定した切屑体積を切屑用基準データとして備え、ワーク加工時に使用される前記モータの実際の負荷情報および加工時間に従い前記切屑用基準データから切屑体積を算出し、その切屑体積を積算することにより前記排出装置の排出口に置かれた回収ボックス内に集められる切屑の合計体積を算出するものである。
【発明の効果】
【0008】
前記構成によれば、加工装置によってワークに対する切削加工が実行され、その切削加工によって発生した切屑を排出装置機が外へと送り出すことにより、排出口に置かれた回収ボックス内に切屑が集められる。その際、制御装置では、ワーク加工時に使用されるモータの実際の負荷情報および加工時間に従い切屑用基準データから切屑体積を算出し、その切屑体積を積算することにより前記排出装置の排出口に置かれた回収ボックス内に集められる切屑の合計体積を算出するので、その値が一定量に達したところで報知させるようにすれば、作業者による回収ボックスの確認作業が不要になる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】工作機械の一実施形態について主要な内部構造を示した斜視図である。
図2】工作機械の一実施形態を示した全体の外観斜視図である。
図3】工作機械を制御する制御システムを示したブロック図である。
図4】切屑用基準データのイメージ図である。
図5】切屑情報報知プログラムの処理工程を示したフローチャート図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本発明に係る工作機械の一実施形態について、図面を参照しながら以下に説明する。図1は、本実施形態の工作機械について主要な内部構造を示した斜視図である。この工作機械1は、加工装置を有することによりNC旋盤とマシニングセンタの両方の機能を持つようにした複合加工機である。その加工装置は、ワークWを把持する第1ワーク主軸装置3および第2ワーク主軸装置5、複数の工具Tを有する第1タレット装置4および第2タレット装置6であり、それぞれが左右対称に配置され対向2軸旋盤を構成し、更に加工装置として機体中央に工具主軸装置2が設けられている。
【0011】
第1および第2ワーク主軸装置3,5は同じ構造であり、主軸台12にスピンドルが回転自在に組み込まれ、そこに加工対象であるワークWを把持および解放するチャック機構11が組付けられている。チャック機構11はスピンドルモータ13の駆動によって回転し、そこに把持されたワークWに対する加工時の位相決めや所定速度での回転が与えられる。主軸台12やスピンドルモータ13は、搭載された主軸スライド14がガイドレール15に沿って摺動自在であり、ボールネジ機構に連結されたZ軸サーボモータの制御によって位置決め移動が可能になっている。
【0012】
第1タレット装置4および第2タレット装置6も同じ構造であり、タレット16に複数の工具T(タレット工具)が円周方向に等間隔で取り付けられ、割出し用サーボモータ17の回転制御によって、任意の工具Tを円周上の加工位置に位置決めできるよう構成されている。第1および第2タレット装置4,6は、タレット16をZ軸に直交する2方向に移動させるようにした駆動機構が設けられている。略三角形状のベーススライド18がベース7に対して前方斜め45度上方にスライド可能であり、タレット16を搭載したタレットスライド19がベーススライド18に対して前方斜め45度下方にスライド可能に組み付けられている。そして、ベーススライド18やタレットスライド19は、各々のサーボモータによって回転するネジ軸のボールネジ機構によって各方向に移動するよう構成されている。
【0013】
工具主軸装置2は、主軸ヘッド21内に工具用モータや工具スピンドルが内蔵されたビルトインタイプであり、下端部に設けられた工具装着部に対して様々な工具T(主軸ヘッド工具)の取り換えが行われるようになっている。主軸ヘッド21は、主軸スライド22に対して回転可能に取り付けられ、回転伝達機構を介してB軸モータ23の回転が伝達されるよう構成されている。工具主軸装置2は、機体前後方向の水平なY軸に沿ってガイドレールが固定され、そこにベーススライド25が摺動可能に組付けられている。また、ベーススライド25は、その前面側に機体上下方向の鉛直なX軸に沿ってレール部が固定され、主軸スライド22が摺動可能に組付けられている。ベーススライド25と主軸スライド22は、ともにボールネジ機構が設けられ、Y軸サーボ―モータまたはX軸サーボモータの駆動によって、主軸ヘッド21が各軸方向に移動可能になっている。
【0014】
次に、図2は、工作機械1全体の外観斜視図である。工作機械1は、ベッド上の第1ワーク主軸装置3など各種加工装置が機体カバー30によって覆われている。機体正面には中央に操作表示装置31が設けられ、その左右両側には左正面扉33と右正面扉34とが形成されている。機体の正面中央には工具主軸装置2に対して工具Tの交換を行う自動工具交換装置8が設けられ、複数の工具を収納したツールマガジン35が機体前面上部に配置されている。また、工作機械1にはガントリ式のワーク自動搬送装置9が設けられ、機体内部にてワークWを3軸方向に移動させるよう構成されている。
【0015】
続いて、工作機械1におけるワークWの加工は、ワーク自動搬送装置9によってワークWが第1ワーク主軸装置3や第2ワーク主軸装置5へと運ばれ、チャック機構11によって把持される。第1および第2タレット装置4,6で旋回割出しされた工具Tは、ベーススライド18やタレットスライド19の移動によりワークWに対する加工位置へと送られる。そうした工具Tに対して主軸スライド24がZ軸方向に移動し、回転するワークWに工具Tが当てられることにより外径旋削や中ぐり加工などの切削加工が行われる。
【0016】
第1ワーク主軸装置3で把持されたワークWに対する第1加工は、第1タレット装置4による加工のほか、工具主軸装置2を加えた加工、或いは工具主軸装置2のみによる加工が行われる。第2ワーク主軸装置5で把持されたワークWに対する第2加工でも同様である。ワークWに対する加工時の工作機械1は、洗浄用あるいは冷却用としてクーラントが機内において噴射される。そして、加工によって発生したワークWの切屑はクーラントによって洗い流され、機体底部にある貯留槽37に溜められた後、チップコンベア10によって機外へと排出され回収ボックス20内に溜められるようになっている。
【0017】
そのチップコンベア10は、機体前部に投入口36が位置するように貯留槽37が配置されている。機体幅方向に長い貯留槽37は、図面左側において上方に傾斜した排出ダクト38が形成され、機体カバー30の外にまで延びたところに排出口39が形成されている。こうした貯留槽37や排出ダクト38内には無端のコンベアベルトが組み込まれており、貯留槽37内の切屑がコンベアベルトの回転駆動によって排出口39へと運ばれるようになっている。排出口39に達した切屑は、そこから落下して下に配置された回収ボックス20内に溜められることとなる。
【0018】
回収ボックス20は、切屑がある程度の量に達したところで空の回収ボックス20と交換する必要がある。しかし、回収ボックス20の交換時期は、ワークWに対する加工内容によって異なるため、作業者による確認の繰り返しが必要になってしまい負担となる。一方で交換が遅れた場合には、回収ボックス20内に溜まった切屑が溢れてしまう。また、溜まった切屑の山が高くなってしまうと、排出口39から落ち切らない切屑がコンベアベルトに巻き付いてしまい、工作機械1の緊急停止につながる。これは、工作機械1の生産性を低下させてしまうほか、作業者にとっては復旧作業に労力をかける必要が生じる。
【0019】
本実施形態の工作機械1は、そうした回収ボックス20の交換のタイミングを作業者に知らせる切屑情報報知システムが備えられている。工作機械1における加工時の切屑は、第1および第2ワーク主軸装置3,5のチャック機構11に把持されたワークWに対する、第1タレット装置4および第2タレット装置6の工具T(タレット工具)のほか、工具主軸装置2の工具T(主軸ヘッド工具)による各種加工によって発生する。本実施形態の切屑情報報知システムでは、こうした各種の加工の際に駆動するモータの負荷情報から切屑の体積を算出する構成が採られている。モータの負荷情報として本実施形態では負荷電流値を測定するよう構成されている。
【0020】
図3は、工作機械1を制御する制御システムを示したブロック図である。工作機械1の制御装置7は、マイクロプロセッサ(CPU)41、ROM42、RAM43、不揮発性メモリ44がバスラインを介して接続されている。CPU41は、制御装置全体を統括制御するものであり、ROM42にはCPU41が実行するシステムプログラムや制御パラメータ等が格納され、RAM43には一時的な計算データや表示データ等が格納される。不揮発性メモリ44にはCPU41が行う処理に必要な情報が記憶され、工作機械1のシーケンスプログラムなどが格納されている。特に、本実施形態には切屑情報報知システムを実行させるための切屑情報報知プログラムが格納されている。
【0021】
制御装置7にはI/Oポート45が設けられ、第1及び第2ワーク主軸装置3,5、第1および第2タレット装置4,6、自動工具交換装置8およびワーク自動搬送装置9など、各装置の駆動モータが各々ドライバ回路47を介して接続されている。本実施形態のドライバ回路47には、該当するモータの負荷情報である負荷電流値を測定するための電流値測定部48が設けられている。つまり、電流値測定部48は、第1および第2ワーク主軸装置3,5の主軸を回転させるスピンドルモータ13、工具主軸装置2や第1タレット装置4および第2タレット装置6の回転工具を回転させる工具用モータにおける負荷電流値を測定するものである。
【0022】
例えば、第1ワーク主軸装置3で行われる切削加工では、回転するワークWに工具が当たることによりスピンドルモータ13には負荷がかかる。その負荷電流値を測定することにより、おおよその負荷トルクの大きさを推測することができるが、それはワークWの加工によって発生する切削量にも相関する。本実施形態の切屑情報報知システムでは、図4に示す切屑用基準データが使用される。切屑用基準データは、負荷電流値を一定範囲に区切った各範囲のレベルに対し、任意に設定した基準時間の加工において発生する切屑のおおよその体積を示したものである。
【0023】
ここで、切屑用基準データは、0<I≦i1の負荷電流値Iの範囲をレベル1、i1<I≦i2の負荷電流値の範囲をレベル2、そしてi2<I≦i3の負荷電流値の範囲をレベル3とし、各レベルにおいて基準時間を60秒と設定した加工によって発生する切屑の体積を切屑体積x1,x2,x3とする。切屑体積x1,x2,x3は、一点鎖線で囲んだ面積で表すように負荷電流値に従って大きくなる。また、切屑体積x1,x2,x3は、旋削加工や穴あけ加工など各種切削加工のほか、使用する工具によっても異なる。そこで、本実施形態の切屑情報報知システムでは、各種加工に応じた複数の切屑用基準データが作成され格納されている。
【0024】
ワークWに対する切削加工では、第1および第2ワーク主軸装置3,5のスピンドルモータ13が対象であり、その駆動制御において測定された負荷電流値からレベル1,2,3の範囲が特定され、対応する切屑体積x1,x2,x3が決定される。そして、同じ切削加工であってもバイトなど使用する切削工具によって負荷電流値に対する切削量が異なるため、切屑体積x1,x2,x3を工具毎に設定した切屑用基準データが作成される。
【0025】
また、回転工具を使用した穴あけ加工などでは、工具主軸装置2や第1および第2タレット装置4,6の工具用モータが対象であり、その駆動制御において測定された負荷電流値からレベル1,2,3の範囲が特定され、対応する切屑体積x1,x2,x3が決定される。しかし、ここでも使用する回転工具によって負荷電流値に対する切削量が異なるため、切屑体積x1,x2,x3を工具毎に設定した切屑用基準データが作成される。なお、基準時間(60秒)の加工によって発生する切屑の量(切屑体積x1,x2,x3)は、各種切削工具ごとに実際の測定あるいはシミュレーションによって得ることができる。
【0026】
切屑情報報知プログラムでは、こうじた切屑用基準データを基に切屑の合計体積が算出され、回収ボックス20の交換時期の報知が行われる。図5は、その切屑情報報知プログラムの処理工程を示したフローチャート図である。例えば、第1および第2ワーク主軸装置3,5に把持されたワークWに対する加工が行われる場合、先ずワークWに対する加工情報が取得される(S101)。そして、この加工情報から測定対象となるモータが特定され、使用する工具に対する切屑用基準データを取得する切屑体積算出準備が行われる(S102)。
【0027】
ワークWの加工について、第1ワーク主軸装置3に把持されたワークWにするバイトを使用した切削加工について説明する。このとき測定対象となるモータは、スピンドルモータ13であり、使用されるバイトに関する切屑用基準データに従った切屑体積算出処理が実行される。スピンドルモータ13の出力によって回転するワークWにバイトが当てられ、外径切削などの加工が実行される。その際、スピンドルモータ13の受ける負荷によって電流値が変化するため、それを基に加工開始時刻が読み取られる(S103)。第1ワーク主軸装置3に対するドライバ回路47の電流値測定部48では、スピンドルモータ13を駆動させる電力についてその負荷電流値が測定される。そして、測定値から切屑用基準データにおける負荷電流値のレベルが判定される(S104)。
【0028】
次に、ワークWに対する切削加工の終了は、回転するワークWからバイトが離されてスピンドルモータ13の電流値が変化するため、そのタイミングで加工終了時刻が読み取られる(S105)。よって、加工開始時刻から加工終了時刻までの加工時間tn(s)が求められ、切屑用基準データを基にした切屑体積vnが算出される(S106)。例えば、加工時のスピンドルモータ13における負荷電流値がレベル2であれば、加工時間tnにおける切屑体積vnはx2・tn/60となる。そして、切屑体積vnの値がこれまでの加工毎に算出および積算された合計体積Vn-1に加算され、その合計体積Vnが回収ボックス20の容積の95パーセント(限界割合)を超える値になっているか否かについて比較が行われる(S107)。
【0029】
合計体積Vnが回収ボックス20の容積の95パーセントを超えていない場合には(S107:NO)、次に合計体積Vnが回収ボックス20の容積の80パーセント(準備割合)を超える値になっているか否かについて比較が行われる(S108)。そして、合計体積Vnが回収ボックス20の容積の80パーセントを超えていない場合には(S107:NO)、本処理を終了する。一方で、合計体積Vnが回収ボックス20の容積の80パーセントを超えていた場合には(S107:YES)、予報処理が行われ(S109)、本処理を終了する。
【0030】
予報処理は、回収ボックス20内の切屑の量が多くなってきていることが、操作表示装置31を介して音声やモニタ表示によって作業者に対して報知される。これにより、作業者は、回収ボックス20の交換時期が近いことが確認できる。また、操作表示装置31のモニタには回収ボックス20内に溜まった切屑の山が高くなっていることを示すなどして、回収ボックス20内の切屑を平らにすることを作業者に促す。その後、合計体積Vnが回収ボックス20の容積の95パーセントを超えた場合には(S107:YES)、警報処理が行われ(S110)、本処理を終了する。警報処理は、回収ボックス20の交換が必要な時期を知らせるものであり、操作表示装置31を介して音声やモニタ表示によって作業者に対して報知される。
【0031】
複合加工機である工作機械1は様々な加工が行われ、例に挙げた加工以外にも切屑情報報知プログラに従って切屑体積算出処理が行われる。第2ワーク主軸装置5に把持されたワークWにする切削加工のほか、工具主軸装置2や第1タレット装置4および第2タレット装置6の回転工具による加工である、こうした加工でも同様に切屑体積vnおよび合計体積Vnが算出され、回収ボックス20内の体積比較が行われる。ところで、合計体積Vnは加工終了時に算出された値であり、回収ボックス20内の切屑体積との間には時間差が生じる。そのため、前述した80パーセントや95パーセントの値は、その時間差を考慮した値であり、任意に変更可能な値である。
【0032】
操作表示装置31に示された警報を確認した作業者は、回収ボックス20を空のものに交換し、操作表示装置31において回収ボックス20に対する切屑の合計体積Vnをリセットしてゼロにする。これにより再び加工毎に切屑体積vnが算出され、その値を加算した合計体積Vnによって交換時期の確認が行われる。よって、本実施形態によれば作業者は、回収ボックス20内の切屑の量を確認する必要がなくなり作業効率を上げることができる。
【0033】
また、切屑情報報知システムは従来の工作機械に対して構造的な改良を必要としないため、コストを抑えて上記効果を得ることができる。工作機械1は複合加工機であり、ワークWに対して様々な加工を行うことができるため、加工時に発生する切屑の量も大小さまざまである。特に、加工内容によって切屑の形状が異なり、短いものや長い線状のものなど様々である。本実施形態では、そうした切屑に対応するように予め切屑用基準データを備えているので、切屑体積vnや合計体積Vnについて妥当な値を算出することが可能になり、適切な予報処理(S109)や警報処理(S110)を実行することができる。
【0034】
以上、本発明の一実施形態について説明したが、本発明はこれに限定されることなく、その趣旨を逸脱しない範囲で様々な変更が可能である。
例えば、前記実施形態では、負荷情報としてモータを駆動する電流値を挙げて説明したが、電圧や回転数などを負荷情報としてもよい。
前記実施形態の工作機械は、加工装置として第1および第2ワーク主軸装置3,5、第1および第2タレット装置4,6、そして工具主軸装置2を有する複合加工機を例に挙げたが、1軸旋盤やマシニングセンタなどであってもよい。
【符号の説明】
【0035】
1…工作機械 2…工具主軸装置 3…第1ワーク主軸装置 4…第1タレット装置 5…第2ワーク主軸装置 6…第2タレット装置 7制御装置 10…チップコンベ 13…スピンドルモータ 20…回収ボックス 31…操作表示装置 39…排出口 47ライバ回路 48…電流値測定部

図1
図2
図3
図4
図5