(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024004592
(43)【公開日】2024-01-17
(54)【発明の名称】作業評価方法、作業評価システムおよび作業評価プログラム
(51)【国際特許分類】
G06Q 50/02 20240101AFI20240110BHJP
【FI】
G06Q50/02
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022104260
(22)【出願日】2022-06-29
(71)【出願人】
【識別番号】720001060
【氏名又は名称】ヤンマーホールディングス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100205350
【弁理士】
【氏名又は名称】狩野 芳正
(74)【代理人】
【識別番号】100117617
【弁理士】
【氏名又は名称】中尾 圭策
(72)【発明者】
【氏名】▲徳▼永 直也
【テーマコード(参考)】
5L049
【Fターム(参考)】
5L049CC01
(57)【要約】
【課題】作業装置が行った作業を、具体的な基準に基づいて評価する。
【解決手段】作業評価方法は、作業装置2が自律制御により圃場9内を移動しながら作業を行う場合に作業装置2が効率的に移動するための基準経路91を表す基準経路情報を、圃場9の形状90に基づいて生成することS02と、作業装置2が作業者の手動操縦による制御下で圃場9内を移動しながら作業を行ったときに移動した作業経路81と、基準経路91との比較に基づいて、作業を評価することS04とを含む。
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
作業装置が自律制御により圃場内を移動しながら作業を行う場合に前記作業装置が効率的に移動するための基準経路を表す基準経路情報を、前記圃場の形状に基づいて生成することと、
前記作業装置が作業者の手動操縦による制御下で前記圃場内を移動しながら前記作業を行ったときに移動した作業経路と、前記基準経路との比較に基づいて、前記作業を評価することと
を含む
作業評価方法。
【請求項2】
請求項1に記載の作業評価方法において、
前記生成することは、
前記基準経路のうち、移動しながら前記作業を行うための複数の基準行程経路の総数、長さおよび位置を決定することと、
前記基準経路のうち、前記複数の基準行程経路の間を移動するために通過する複数の基準旋回経路の総数、長さおよび位置を決定することと
を含み、
前記評価することは、
前記作業装置が前記作業を開始してから完了するまでに移動した作業合計距離を、前記複数の基準行程経路の長さと、前記複数の基準旋回経路の長さとを合計した基準合計距離を基準として評価する第1評価を行うことと、
前記作業装置が前記作業を開始してから完了するまでに、移動しながら前記作業を行った複数の作業行程経路の間で旋回を行った作業旋回回数を、前記複数の基準旋回経路の総数を基準として評価する第2評価を行うことと
のうち、少なくとも1つを含む
作業評価方法。
【請求項3】
請求項2に記載の作業評価方法において、
前記生成することは、
前記作業装置が前記自律制御により前記基準経路に沿って移動しながら前記作業を行う場合に必要な時間を表す推定作業時間を推定すること
をさらに含み、
前記評価することは、
前記作業装置が前記作業を開始してから完了するまでの実作業時間を、前記推定作業時間を基準として評価する第3評価を行うこと
をさらに含む
作業評価方法。
【請求項4】
請求項1~3のいずれか一項に記載の作業評価方法において、
前記生成することは、
前記基準経路情報を、前記作業装置の寸法と、前記作業装置の性能と、前記作業の内容とにさらに基づいて生成すること
をさらに含む
作業評価方法。
【請求項5】
請求項4に記載の作業評価方法において、
前記作業装置の前記寸法は、
前記圃場のうち、前記作業装置が前記複数の基準行程経路のそれぞれに沿って移動しながら前記作業を行う対象である作業領域の、前記作業装置が移動する第1方向に直交する第2方向における長さを表す作業幅
を含み、
前記作業装置の前記性能は、
前記作業装置が移動できる曲線状の軌跡の曲率半径の最小値を表す旋回可能半径
を含み、
前記作業の前記内容は、
前記作業装置が、移動しながら前記作業を効率的に行うための速度の範囲を表す作業速度範囲
を含む
作業評価方法。
【請求項6】
作業装置が自律制御により圃場内を移動しながら作業を行う場合に前記作業装置が効率的に移動するための基準経路を表す基準経路情報を、前記圃場の形状に基づいて生成する基準経路生成部と、
前記作業装置が作業者の手動操縦による制御下で前記圃場内を移動しながら前記作業を行ったときに移動した作業経路と、前記基準経路との比較に基づいて、前記作業を評価する作業評価部と
を備える
作業評価システム。
【請求項7】
演算装置に実行させることによって所定の処理を実現するための作業評価プログラムであって、
前記処理は、
作業装置が自律制御により圃場内を移動しながら作業を行う場合に前記作業装置が効率的に移動するための基準経路を表す基準経路情報を、前記圃場の形状に基づいて生成することと、
前記作業装置が作業者の手動操縦による制御下で前記圃場内を移動しながら前記作業を行ったときに移動した作業経路と、前記基準経路との比較に基づいて、前記作業を評価することと
を含む
作業評価プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は作業評価方法、作業評価システムおよび作業評価プログラムに関し、例えば、圃場で行う農作業などの作業の評価に好適に利用できるものである。
【背景技術】
【0002】
作業者の手動操縦による制御下で作業装置が圃場内を移動しながら行う農作業などの作業の効率を向上させるために、行われた作業を評価する需要がある。
【0003】
上記に関連して、特許文献1(特許第6588603号公報)には、圃場管理システムの発明が開示されている。この圃場管理システムでは、農作業機が圃場に対して作業しながら移動した位置を、GPS(Global Positioning System:全地球測位システム)などにより検出し、農作業機の走行軌跡を含む圃場作業データを生成する。また、この圃場管理システムでは、圃場作業データに基づいて圃場の営農評価を行う。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1の圃場管理システムでは、農作業機の走行軌跡について、基準となる理想的な走行軌跡が具体的に検討されていないため、圃場における作業の評価を正しく行うことが困難である。
【0006】
上記状況に鑑み、本開示は、作業装置が行った作業を、具体的な基準に基づいて評価するための作業評価方法、作業評価システムおよび作業評価プログラムを提供することを目的の1つとする。その他の課題と新規な特徴は、本明細書の記述および添付図面から明らかになるであろう。
【課題を解決するための手段】
【0007】
以下に、発明を実施するための形態で使用される番号・符号を用いて、課題を解決するための手段を説明する。これらの番号・符号は、特許請求の範囲の記載と発明を実施するための形態との対応関係の一例を示すために、参考として、括弧付きで付加されたものである。よって、括弧付きの記載により、特許請求の範囲は、限定的に解釈されるべきではない。
【0008】
一実施の形態によれば、作業評価方法は、作業装置(2)が自律制御により圃場(9)内を移動しながら作業を行う場合に作業装置(2)が効率的に移動するための基準経路(91)を表す基準経路情報を、圃場(9)の形状(90)に基づいて生成すること(S02)を含む。作業評価方法は、さらに、作業装置(2)が作業者の手動操縦による制御下で圃場(9)内を移動しながら作業を行ったときに移動した作業経路(81)と、基準経路(91)との比較に基づいて、作業を評価すること(S04)を含む。
【0009】
一実施の形態によれば、作業評価システム(1)は、基準経路生成部(521)と、作業評価部(522)とを備える。基準経路生成部(521)は、作業装置(2)が自律制御により圃場(9)内を移動しながら作業を行う場合に作業装置(2)が効率的に移動するための基準経路(91)を表す基準経路情報を、圃場(9)の形状(90)に基づいて生成する。作業評価部(522)は、作業装置(2)が作業者の手動操縦による制御下で圃場(9)内を移動しながら作業を行ったときに移動した作業経路(81)と、基準経路(91)との比較に基づいて、作業を評価する。
【0010】
一実施の形態によれば、作業評価プログラムは、演算装置(52)に実行させることによって所定の処理を実現するためのものである。この処理は、作業装置(2)が自律制御により圃場(9)内を移動しながら作業を行う場合に作業装置(2)が効率的に移動するための基準経路(91)を表す基準経路情報を、圃場(9)の形状(90)に基づいて生成すること(S02)を含む。この処理は、さらに、作業装置(2)が作業者の手動操縦による制御下で圃場(9)内を移動しながら作業を行ったときに移動した作業経路(81)と、基準経路(91)との比較に基づいて、作業を評価すること(S04)を含む。
【発明の効果】
【0011】
一実施の形態によれば、作業装置が行った作業を、具体的な基準に基づいて評価することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】
図1は、一実施の形態による作業評価システムの一構成例を示す図である。
【
図2】
図2は、一実施の形態による作業評価装置の一構成例を示す図である。
【
図3】
図3は、一実施の形態による作業評価方法の処理の一例を示すフローチャートである。
【
図4】
図4は、一実施の形態においてエリア判定された圃場の形状の一例を示す図である。
【
図5】
図5は、
図4の例における形状の圃場に対して自動生成される基準経路の一例を示す図である。
【
図6】
図6は、
図4の例における形状の圃場に対して作業装置が作業者の手動操縦による制御下で作業を行ったときに移動した作業経路の一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
添付図面を参照して、本開示による作業評価方法、作業評価システムおよび作業評価プログラムを実施するための形態を以下に説明する。
【0014】
(実施の形態)
自律制御によって動作する作業装置に、所定の圃場の内側を移動しながら農作業などの所望の作業を行わせる技術がある。また、作業装置が自律制御によって動作する場合に効率的に移動しながら作業を行うための移動経路を、圃場の形状、作業装置の性能、作業の内容などに基づいて自動的に生成する技術もある。一実施の形態では、このように生成される移動経路を、同じ作業装置が作業者の手動操縦による制御下で同じ圃場の内側を移動しながら作業を行った場合に、この作業を評価するための基準経路として用いる。ここで、作業者の手動操縦による制御下で作業装置が作業を行ったときに移動した作業経路が基準経路に近ければ近いほど、作業者の手動操縦による制御下の作業を高く評価する。この評価の出力は、作業経路と、基準経路とを重ね合わせて表示することによって行ってもよい。
【0015】
図1に示すように、一実施の形態による作業評価システム1は、作業装置2に搭載された搭載端末3と、作業評価装置5とを含む。作業評価システム1は、外部端末6をさらに含んでもよい。一例として、外部端末6は、スマートフォンやタブレット端末などを含んでもよい。
【0016】
作業装置2は、圃場9で地上を移動しながら農作業を行うトラクターやコンバインなどの作業車両を含む。作業装置2は、さらに、圃場9の上方を飛行しながら農作業を行うドローンなどを含んでもよい。
【0017】
搭載端末3と、作業評価装置5と、外部端末6とは、ネットワーク4を介した無線通信および/または有線通信によって各種情報の送受信を行う。一例として、搭載端末3は、作業装置2が圃場9内で移動しながら作業したときに通過した複数の地点の位置をGNSS(Global Navigation Satellite System:全地球航法衛星システム)などで測定した位置情報を、ネットワーク4を介して、作業評価装置5へ送信する。作業評価装置5は、受信した位置情報に基づいて、作業装置2が行った作業を評価する。外部端末6は、作業評価装置5による評価を表す評価情報を、ネットワーク4を介して受信して出力する。
【0018】
図2に示すように、一実施の形態による作業評価装置5は、いわゆるコンピュータとして構成されてもよい。
図2の例において、作業評価装置5は、バス51と、演算装置52と、記憶装置53と、通信装置54と、入出力装置55とを備える。バス51は、演算装置52、記憶装置53、通信装置54および入出力装置55を、互いに通信可能に接続するように構成されている。
【0019】
演算装置52は、基準経路生成部521と、作業評価部522とを備える。記憶装置53は、作業評価プログラム記憶部531を備える。作業評価プログラム記憶部531は、作業評価プログラムを記憶する。
【0020】
演算装置52は、作業評価プログラムを読み出して実行することによって、基準経路生成部521および作業評価部522のそれぞれの機能を実現する。基準経路生成部521および作業評価部522のそれぞれは、演算装置52および記憶装置53が協働して実現する処理を実行する仮想的な機能ブロックである。基準経路生成部521は、作業装置2が自律制御により圃場9内を移動しながら作業を行う場合に作業装置2が効率的に移動するための基準経路を表す基準経路情報を、圃場9の形状に基づいて生成する。作業評価部522は、作業装置2が作業者の手動操縦による制御下で圃場9内を移動しながら作業を行ったときに作業装置2が圃場9内を移動した作業経路と、基準経路との比較に基づいて、作業を評価する。これらの機能ブロックのより具体的な処理については、後述する。
【0021】
作業評価プログラムは、外部の記録媒体530から読み出されて作業評価プログラム記憶部531に格納されてもよい。記録媒体530は、非一時的で有形の媒体(non-transitory and tangible media)であってもよい。
【0022】
通信装置54は、ネットワーク4を介する無線通信および/または有線通信により、搭載端末3および/または外部端末6を含む外部の装置との通信を行う。
【0023】
入出力装置55は、使用者に情報を出力し、使用者が入力する操作を受け付ける。一例として、入出力装置55は、画像を出力する表示装置、入力を受け付けるキーボードおよび/またはマウスなどを含む。
【0024】
図3のフローチャートを参照して、一実施の形態による作業評価方法の処理の一例について説明する。作業評価方法の処理は、作業評価装置5が起動するときに開始してもよい。このとき、作業評価装置5の演算装置52が作業評価プログラムを実行することによって、作業評価方法の処理が実現される。
【0025】
図3のフローチャートが開始すると、ステップS01が実行される。ステップS01において、基準経路生成部521が、圃場9の形状を表す圃場形状情報を取得する。一例として、基準経路生成部521は、圃場形状情報を、搭載端末3から受信した位置情報に基づいて生成してもよい。この場合、圃場9の形状を検出するために作業者の手動操縦による制御下で作業装置2が圃場9内を、圃場9の境界に沿って走行してもよい。また、搭載端末3は、このときに作業装置2が通過した複数の地点の位置をGNSSなどによって測定し、このようにして得られた位置情報を作業評価装置5へ送信してもよい。さらに、作業評価装置5の基準経路生成部521は、受信した位置情報に基づいて、圃場9の周囲のうちの、作業装置2が通過した複数の地点を測位の順番に結ぶ複数の直線を算出し、これらの直線で囲まれた多角形を圃場9の形状として特定するエリア判定を行い、エリア判定によって得られたデータを圃場形状情報として取得してもよい。
図4は、一実施の形態においてエリア判定された圃場9の形状90の一例を示す図である。
【0026】
基準経路生成部521は、圃場形状情報に加えて、作業装置2の性能や寸法などを表す作業装置情報と、圃場9に対して行う作業の計画や内容などを表す作業計画情報とを取得してもよい。一例として、基準経路生成部521は、作業者に、作業装置情報と、作業内容情報とを外部端末6に入力するように促し、作業者が外部端末6に入力した作業装置情報と、作業内容情報とを受信して取得してもよい。
【0027】
作業装置情報は、一例として、作業幅情報と、旋回可能半径情報とを含む。作業幅情報は、圃場9のうち、作業装置2が移動しながら作業を行う範囲の、移動方向に直交する幅方向の長さを表す。一例として、作業装置2が、トラクターと、トラクターに接続された作業機とを備える場合、作業幅情報が表す作業幅は、作業機の作業幅である。別の一例として、作業装置2が、コンバインなどのように、走行するための車両部分と、所望の作業を行う作業部分とが一体化されている場合、作業幅情報が表す作業幅は、作業部分の作業幅である。旋回可能半径情報は、作業装置2が移動しながら旋回するときに描くことのできる軌跡の曲率半径の最小値を表す。作業者は、外部端末6を操作して、作業幅情報および旋回可能半径情報のそれぞれについて、適宜な数値を入力してもよい。
【0028】
作業内容情報は、一例として、作業種類情報と、移動経路形状情報と、間隔情報と、作業速度範囲情報とを含む。作業種類情報は、作業の種類を表す。作業種類情報が表す作業の種類は、例えば、播種、施肥、収穫などを含む。移動経路形状情報は、この作業を行うために圃場9内で移動する経路の形状の種類を表す。移動経路形状情報が表す移動経路の形状は、例えば、互いに平行な複数の経路に沿って移動する往復型パターン、圃場9の周縁に沿って周回しながら外側から内側へ移動する渦巻き型パターン、圃場9の周縁領域においては渦巻き型パターンで移動し、圃場9の中心領域では往復型パターンで移動する複合型パターン、などを含む。間隔情報は、作業装置2が既に作業を行った作業済み領域で通過した移動経路と、作業済み領域に隣接して作業装置2がこれから作業を行う未作業領域で通過する移動経路との間隔を表す。間隔情報は、作業者が作業の種類に応じて適宜な数値を設定してもよい。例えば、作業の種類が施肥である場合は、すでに施肥した領域に重ねて施肥しないように、間隔情報として作業幅に適宜な長さを加算した値を設定してもよい。反対に、作業の種類が収穫である場合は、刈り残しが発生しないように、間隔情報として作業幅から適宜な長さを減算した値を設定してもよい。作業速度範囲情報は、作業装置2が圃場9内を移動しながら作業を効率的に行うための速度の範囲を表す。作業者は、外部端末6を操作して、作業種類情報と、移動経路の形状とを、それぞれ複数の選択肢の中から決定することによって入力してもよい。また、作業者は、外部端末6を操作して、間隔情報および作業速度範囲情報としてそれぞれ適宜な数値を入力してもよい。もしくは、外部端末6は、作業者が各パラメータとして過去に入力した値を記憶していて、作業者は外部端末6を操作して過去の値を呼び出して設定してもよい。
【0029】
ステップS01の後、ステップS02が実行される。ステップS02において、基準経路生成部521が、基準経路情報を生成する。ここで、基準経路情報は基準経路を表す情報であり、基準経路は作業装置2が自律制御により圃場9内を移動しながら作業を行う場合に設定する効率的な移動経路である。
【0030】
一実施の形態において、基準経路生成部521は、ステップS01で取得した圃場形状情報、作業装置情報および作業内容情報に基づいて、基準経路情報を生成する。基準経路情報が表す基準経路は、複数の基準行程経路と、複数の基準旋回経路とを含む。
【0031】
複数の基準行程経路のそれぞれは、作業装置2が直線的に移動しながら所望の作業を行うための移動経路である。作業装置2が圃場9内で作業を効率的に行うためには、同じ場所で同じ作業を繰り返す事態を抑制したり、作業対象外となる領域を減らしたりするために、これら複数の基準行程経路を、隣接する2本の基準行程経路がなるべく互いに平行になるように形成することが好ましい。また、圃場9の面積を効率的に利用するためには、隣接する2本の基準行程経路の間隔を、作業種類情報に応じて必要な長さの範囲内でなるべく狭く設定してもよい。ただし、間隔情報が取得されている場合は、間隔情報に応じて基準行程経路の間隔を設定してもよい。
【0032】
複数の基準旋回経路は、作業装置2が隣接する2本の基準行程経路の間を、旋回しながら移動するための移動経路である。基準旋回経路は、基準行程経路を設定した後に、基準行程経路を繋ぐように設定されてもよい。基準旋回経路の曲率半径の最小値が、作業装置2の旋回可能半径を下回る場合は、フィッシュテールターンによる旋回を設定してもよい。フィッシュテールターンは、旋回しながらの前進と、直線的な後退とを組み合わせた切り返しを行うことによって実現する旋回動作である。
【0033】
基準経路生成部521は、複数の基準行程経路の総数と、それぞれの基準行程経路の長さおよび位置とを決定する。また、基準経路生成部521は、複数の基準旋回経路の総数と、それぞれの基準旋回経路の長さおよび位置とを決定する。さらに、基準経路生成部521は、複数の基準行程経路の長さと、複数の基準旋回経路の長さとを合計した基準合計距離を算出する。また、基準経路生成部521は、自律制御により動作する作業装置2が基準経路に沿って移動しながら作業を行う場合に必要な時間としての推定作業時間を、基準合計距離と、作業速度範囲情報とに基づいて推定する。
【0034】
図5は、
図4の例における形状90の圃場9に対して自動生成される基準経路91の一例を示す図である。
図5の例では、基準経路91は、開始地点92から終了地点93まで、直線状の基準行程経路と、曲線状の基準旋回経路とが交互に繋がるように構成されている。
【0035】
図3のステップS02の後、ステップS03が実行される。ステップS03において、作業評価部522が、作業装置2が作業者の手動操縦による制御下で圃場9内を移動しながら作業を行ったときに作業装置2が実際に移動した作業経路を表す作業経路情報を取得する。
【0036】
より詳細には、まず、作業者が作業装置2を手動操縦により制御して圃場9に対する作業を行う。ここで、作業者は、ステップS02で生成された基準経路情報を参照しながら作業装置2を制御してもよい。この場合、基準経路情報は、基準経路生成部521によって搭載端末3または外部端末6へ送信されて、作業者は搭載端末3または外部端末6が表示する基準経路情報を確認してもよい。
【0037】
作業装置2に搭載された搭載端末3は、作業装置2により作業している間の複数の時刻に、作業装置2が通過した地点の位置をGNSSなどにより測定することによって、作業装置2の位置情報を取得する。位置を測定した地点を測位点と呼ぶ。搭載端末3は、それぞれの測位点における位置の測定を、所定の時間間隔ごとに周期的に行ってもよい。位置情報は、それぞれの測位点の位置を測定した測位情報と、位置を測定した測定時刻を表す時刻情報とを対応付けて含んでもよい。
【0038】
その後、搭載端末3は、位置情報を作業評価装置5へ送信する。作業評価装置5の作業評価部522は、位置情報を受信して取得する。作業評価部522は、取得した位置情報を記憶装置53に格納してもよい。
【0039】
作業評価部522は、受信した位置情報に含まれる複数の測位点と、対応する時刻情報が表す測定時刻とに基づいて、それぞれの測位点における作業装置2の進行方向を算出する。作業評価部522は、それぞれの測位点における進行方向に基づいて、作業経路に含まれる作業行程経路と作業旋回経路とを検出する。作業行程経路は、作業経路のうち、作業装置2が直線状またはほぼ直線状に移動した経路である。例えば、測定時刻が連続する2つの測位点の進行方向の間の角度が所定の閾値より小さいとき、これら2つの測位点は同一の作業行程経路に含まれると推定される。作業旋回経路は、作業経路のうち、作業行程経路以外の、作業装置2が旋回しながら移動した経路である。多くの場合、作業経路は、1つずつ交互に繋がった複数の作業行程経路と複数の作業旋回経路とを含む。往復型パターンの場合は、1つの作業旋回経路の前後に繋がった2つの作業行程経路は略平行に形成されることになり、作業装置2は一方の作業行程経路で作業を行った後、続きの作業を行う他方の作業行程経路まで移動することにより作業旋回経路を形成することになる。渦巻き型パターンの場合は、1つの作業旋回経路の前後に繋がった2つの作業行程経路は直角または比較的直角に近い角度に形成され、作業装置2は一方の作業行程経路で作業を行った後、続きの作業を行う他方の作業行程経路まで移動する間、作業旋回経路を通過しながら作業を継続してもよい。このとき、作業評価部522は、作業行程経路の総数と、それぞれの作業行程経路の長さと、作業旋回経路の総数と、それぞれの作業旋回経路の長さとのうち、一部または全てを算出してもよい。
【0040】
図6は、
図4の例における形状90の圃場9に対して作業装置2が作業者の手動操縦による制御下で作業を行ったときに移動した作業経路81の一例を示す図である。
図6の例では、作業経路81は開始地点82から始まり、終了地点83で終了する。
図6の例において、作業経路81に含まれる全ての作業行程経路のうち、任意の作業旋回経路の前後に繋がった2つの作業行程経路が平行またはほぼ平行に形成されているので、作業経路81の形状は往復型パターンであると推定される。
【0041】
図3のステップS03の後、ステップS04が実行される。ステップS04において、作業評価部522が、作業装置2が作業者の手動操縦による制御下で圃場9に対して行った作業を評価する。より詳細には、作業評価部522は、ステップS03で取得した作業経路情報が表す作業経路81を、ステップS02で生成した基準経路情報が表す基準経路91と比較した結果に基づいて、作業の評価を行う。作業評価部522は、作業経路81が基準経路91に近ければ近いほど、作業を高く評価する。
【0042】
一例として、作業評価部522は、作業経路81と、基準経路91とを、所定のパラメータについて比較することで作業経路81のパラメータを評価する。作業経路81の比較対象パラメータは、作業合計距離と、作業旋回回数とのうち、少なくとも1つを含んでもよい。作業合計距離は、作業装置2が作業者の手動操縦による制御下で作業を開始してから完了するまでに移動した距離であり、複数の作業行程経路のそれぞれの長さと、複数の作業旋回経路のそれぞれの長さとの合計である。作業旋回回数は、作業装置2が作業者の手動操縦による制御下で作業を開始してから完了するまでに旋回を行った回数であり、複数の作業旋回経路の総数である。
【0043】
作業評価部522は、推定作業時間を基準として作業合計距離を評価する。また、作業評価部522は、作業旋回回数を、基準旋回回数を基準として評価する。一例として、作業評価部522は、評価対象パラメータの評価値を、基準値に基づいて、以下の数式に基づいて算出してもよい。
評価値=100%-|評価対象パラメータ-基準値|/基準値
一例として、作業合計距離の評価値は、上記の数式に示すように、作業合計距離から基準合計距離を減算した差の絶対値を基準合計距離で除算した比率を、100%から減算することによって算出される。ただし、上記の数式は一例にすぎず、任意の数式を用いて評価値を算出してもよい。
【0044】
作業経路81の比較対象パラメータは、さらに、実作業時間を含んでもよい。実作業時間は、作業装置2が作業者の手動操縦による制御下で作業を開始してから完了するまでに費やした時間である。作業評価部522は、実作業時間を、位置情報のうち、開始地点82および終了地点83のそれぞれに対応付けられた時刻情報に基づいて算出してもよい。作業評価部522は、実作業時間を、ステップS02で推定した推定作業時間を基準として評価してもよい。
【0045】
作業評価部522は、さらに、複数の評価値に基づいて、作業の総合評価値を算出してもよい。一例として、作業の総合評価値は、それぞれの評価値に所定の重みづけをして算出する加重平均値であってもよい。ただし、総合評価値を算出するための上記の方法は一例にすぎず、任意の数式を用いて総合評価値を算出してもよい。
【0046】
図3のステップS04の後、ステップS05が実行される。ステップS05において、作業評価部522が、ステップS04で行った評価を出力する。より詳細には、作業評価部522は、評価の内容を表す評価情報を生成し、生成した評価情報を外部端末6へ送信する。外部端末6は、受信した評価情報が表す評価を、作業者が視覚的および/または聴覚的に認識できるように出力する。外部端末6は、評価の出力として、さらに、圃場9を表す地図情報と、基準経路91を表す基準経路情報と、作業経路81を表す作業経路情報とを重ね合わせて表示してもよい。作業者は、各パラメータの評価値を参考にすることによって、例えばどのパラメータを重点的に改善すればよいかを判断できる。また、複数の作業者を管理する管理者は、それぞれの作業者の総合評価値を参考にすることによって、例えばどの作業者を重点的に指導すればよいかを判断できる。
【0047】
図3のステップS05が終了すると、一実施の形態による作業評価方法の処理は終了する。
【0048】
上記に説明したように、一実施の形態によれば、作業装置2が自律制御によって圃場9で移動しながら作業を行うために生成した基準経路情報を基準として用いることで、作業装置2が作業者の手動操縦による制御下で行った作業を具体的な基準に基づいて評価することができる。
【0049】
(変形例)
上述した一実施の形態では、
図3のステップS01において、作業者の手動操縦による制御下で作業装置2が圃場9の周囲に沿って走行したときに作業装置2が通過した複数の地点の位置を測定して得られた位置情報に基づいて圃場形状情報を取得する場合の構成について説明した。この構成の変形例として、圃場形状情報は、
図3のフローチャートの処理が開始する前に予め記憶装置53に格納されていてもよい。この場合、基準経路生成部521は記憶装置53から読み出すことによって圃場形状情報を取得してもよい。もしくは、別の変形例として、圃場形状情報は、作業評価装置5の外部のデータベースなどに格納されていてもよい。この場合、基準経路生成部521はネットワーク4を介して外部のデータベースなどから受信することによって圃場形状情報を取得してもよい。さらなる別の変形例として、圃場形状情報は、圃場9を上方から撮影した画像データに適宜な処理を施すことによって取得してもよいし、地図情報から取得してもよい。
【0050】
(変形例)
上述した一実施の形態では、
図3のステップS01において、作業者が入力する作業計画情報と作業装置情報とを取得する場合の構成について説明した。この構成の変形例として、作業計画情報および作業装置情報は、
図3のフローチャートの処理が開始する前に予め記憶装置53に格納されていてもよい。この場合、基準経路生成部521は、ステップS01において記憶装置53から読み出すことによって作業装置情報および作業内容情報を取得してもよい。
【0051】
(変形例)
上述した一実施の形態では、
図3のステップS02において基準経路生成部521が基準経路情報を生成した後に、ステップS03において作業評価部522が作業経路情報を取得する場合の構成について説明した。この構成の変形例として、作業評価部522が作業経路情報を取得した後に、基準経路生成部521が基準経路情報を生成してもよい。この場合は、取得した作業経路情報に基づいて作業評価部522が作業経路81の形状が往復型パターン、渦巻き型パターンまたは複合型パターンのいずれのパターンであるかを識別し、識別したパターンと同じパターンの形状を有する基準経路91の基準経路情報を基準経路生成部521が選択して生成してもよい。
【0052】
以上、発明者によってなされた発明を実施の形態に基づき具体的に説明したが、本発明は実施の形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で種々変更可能であることはいうまでもない。また、実施の形態に説明したそれぞれの特徴は、技術的に矛盾しない範囲で自由に組み合わせることが可能である。
【0053】
(付記)
各実施の形態で記載した作業評価方法、作業評価システムおよび作業評価プログラムは、以下のように言うことができる。
【0054】
第1の態様に係る作業評価方法は、
作業装置が自律制御により圃場内を移動しながら作業を行う場合に前記作業装置が効率的に移動するための基準経路を表す基準経路情報を、前記圃場の形状に基づいて生成することと、
前記作業装置が作業者の手動操縦による制御下で前記圃場内を移動しながら前記作業を行ったときに移動した作業経路と、前記基準経路との比較に基づいて、前記作業を評価することと
を含む。
【0055】
第2の態様に係る作業評価方法は、第1の態様に係る作業評価方法であって、
前記生成することは、
前記基準経路のうち、移動しながら前記作業を行うための複数の基準行程経路の総数、長さおよび位置を決定することと、
前記基準経路のうち、前記複数の基準行程経路の間を移動するために通過する複数の基準旋回経路の総数、長さおよび位置を決定することと
を含み、
前記評価することは、
前記作業装置が前記作業を開始してから完了するまでに移動した作業合計距離を、前記複数の基準行程経路の長さと、前記複数の基準旋回経路の長さとを合計した基準合計距離を基準として評価する第1評価を行うことと、
前記作業装置が前記作業を開始してから完了するまでに、移動しながら前記作業を行った複数の作業行程経路の間で旋回を行った作業旋回回数を、前記複数の基準旋回経路の総数を基準として評価する第2評価を行うことと
のうち、少なくとも1つを含む。
【0056】
第3の態様に係る作業評価方法は、第2の態様に係る作業評価方法であって、
前記生成することは、
前記作業装置が前記自律制御により前記基準経路に沿って移動しながら前記作業を行う場合に必要な時間を表す推定作業時間を推定すること
をさらに含み、
前記評価することは、
前記作業装置が前記作業を開始してから完了するまでの実作業時間を、前記推定作業時間を基準として評価する第3評価を行うこと
をさらに含む。
【0057】
第4の態様に係る作業評価方法は、第1~第3のいずれか1つの態様に係る作業評価方法であって、
前記生成することは、
前記基準経路情報を、前記作業装置の寸法と、前記作業装置の性能と、前記作業の内容とにさらに基づいて生成すること
をさらに含む。
【0058】
第5の態様に係る作業評価方法は、第4の態様に係る作業評価方法であって、
前記作業装置の前記寸法は、
前記圃場のうち、前記作業装置が前記複数の基準行程経路のそれぞれに沿って移動しながら前記作業を行う対象である作業領域の、前記作業装置が移動する第1方向に直交する第2方向における長さを表す作業幅
を含み、
前記作業装置の前記性能は、
前記作業装置が移動できる曲線状の軌跡の曲率半径の最小値を表す旋回可能半径
を含み、
前記作業の前記内容は、
前記作業装置が、移動しながら前記作業を効率的に行うための速度の範囲を表す作業速度範囲
を含む。
【0059】
第6の態様に係る作業評価システムは、
作業装置が自律制御により圃場内を移動しながら作業を行う場合に前記作業装置が効率的に移動するための基準経路を表す基準経路情報を、前記圃場の形状に基づいて生成する基準経路生成部と、
前記作業装置が作業者の手動操縦による制御下で前記圃場内を移動しながら前記作業を行ったときに移動した作業経路と、前記基準経路との比較に基づいて、前記作業を評価する作業評価部と
を備える。
【0060】
第7の態様に係る作業評価プログラムは、
演算装置に実行させることによって所定の処理を実現するための作業評価プログラムであって、
前記処理は、
作業装置が自律制御により圃場内を移動しながら作業を行う場合に前記作業装置が効率的に移動するための基準経路を表す基準経路情報を、前記圃場の形状に基づいて生成することと、
前記作業装置が作業者の手動操縦による制御下で前記圃場内を移動しながら前記作業を行ったときに移動した作業経路と、前記基準経路との比較に基づいて、前記作業を評価することと
を含む。
【符号の説明】
【0061】
1 作業評価システム
2 作業装置
3 搭載端末
4 ネットワーク
5 作業評価装置
51 バス
52 演算装置
521 基準経路生成部
522 作業評価部
53 記憶装置
530 記録媒体
531 作業評価プログラム記憶部
54 通信装置
55 入出力装置
6 外部端末
81 作業経路
82 開始地点
83 終了地点
9 圃場
90 形状(圃場の形状)
91 基準経路
92 開始地点
93 終了地点