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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024045924
(43)【公開日】2024-04-03
(54)【発明の名称】親機及び無線通信システム
(51)【国際特許分類】
   H04B 7/022 20170101AFI20240327BHJP
   H04W 88/08 20090101ALI20240327BHJP
   H04W 92/12 20090101ALI20240327BHJP
   H04W 16/24 20090101ALI20240327BHJP
   H04W 16/28 20090101ALI20240327BHJP
【FI】
H04B7/022
H04W88/08
H04W92/12
H04W16/24
H04W16/28 150
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022151020
(22)【出願日】2022-09-22
(71)【出願人】
【識別番号】000001122
【氏名又は名称】株式会社日立国際電気
(74)【代理人】
【識別番号】100093104
【弁理士】
【氏名又は名称】船津 暢宏
(72)【発明者】
【氏名】庄司 哲平
【テーマコード(参考)】
5K067
【Fターム(参考)】
5K067AA41
5K067CC02
5K067EE10
5K067EE37
5K067KK03
(57)【要約】
【課題】 分散型アンテナシステムにおいて、下り信号の信号品質を劣化させることなく、回路規模を縮小させることができる親機及び無線通信システムを提供する。
【解決手段】 事業者毎の基地局からの下り信号をアナログ処理するアナログ回路21a~21dと、周波数帯域が隣接しない事業者の下り信号を組み合わせて合成するアナログ合成器22a,22bと、アナログ合成器22a,22bからの出力をデジタル信号に変換するA/D変換器24a,24bと、デジタル信号を事業者毎の下り信号に分離する複数のデジタル信号処理部24a~24dと、分離した下り信号を光信号で送信するトランシーバ回路25とを有し、他の事業者の信号の影響を受けないよう複数事業者の下り信号を合成する親機及び無線通信システムとしている。
【選択図】 図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
分散型アンテナシステムに用いられる親機であって、
事業者毎の基地局からの下り信号をアナログ処理する複数のアナログ回路と、
前記アナログ処理された下り信号の内、周波数帯域が隣接しない事業者の下り信号を合成する複数のアナログ合成器と、
前記複数のアナログ合成器からの出力をアナログ信号からデジタル信号に変換する前記アナログ合成部と同数のA/D変換器と、
前記デジタル信号を前記事業者毎の下り信号に分離する複数のデジタル信号処理部と、
前記分離した下り信号を光信号で送信する送信部と、を有することを特徴とする親機。
【請求項2】
複数のアナログ合成器として、第1のアナログ合成器と、第2のアナログ合成器とを備え、
A/D変換器として、前記第1のアナログ合成器の後段に接続する第1のA/D変換器と、前記第2のアナログ合成器の後段に接続する第2のA/D変換器とを備えることを特徴とする請求項1記載の親機。
【請求項3】
請求項1又は2記載の親機と、
前記親機から受信した信号を事業者毎にオン又はオフする処理部と、前記事業者毎に前記処理部でオンされた信号のデジタル信号処理を行う処理部と、前記事業者毎にデジタル信号処理された信号をデジタル多重化する多重部とを備える子機と、
を有することを特徴とする無線通信システム。
【請求項4】
分散型アンテナシステムに用いられる親機であって、
事業者毎の基地局からの下り信号をアナログ処理する複数のアナログ回路と、
前記アナログ処理された下り信号を合成するアナログ合成器と、
前記アナログ合成器からの出力をアナログ信号からデジタル信号に変換するA/D変換器と、
前記デジタル信号を前記事業者毎の下り信号に分離する複数のデジタル信号処理部と、
前記分離した下り信号を光信号で送信する送信部と、を有することを特徴とする親機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、分散型アンテナシステムの親機及び無線通信システムに係り、特に、子機から出力される下り信号の信号品質を劣化させることなく回路規模を縮小させることができる親機及び無線通信システムに関する。
【背景技術】
【0002】
[先行技術の説明]
ビル内やトンネル内等の閉空間では、事業者共用DAS(Distributed Antenna System:分散型アンテナシステム、アンテナ分散システム)が一般的に普及しつつある。事業者共用DAS(インフラシェリング対応DAS)では、複数事業者の電波を送受信する。
【0003】
[インフラシェアリング対応DASの構成例:図5
インフラシェアリング対応DASの構成例について、図5を用いて説明する。図5は、インフラシェアリング対応DASの構成例を示す説明図である。
インフラシェアリング対応DASは、複数事業者の基地局100とデータの送受信を行う親機(図では親機#1)110と、親機110と光ケーブルによって接続される複数の集約装置120(図では集約#1~集約#M)と、各集約装置120と光ケーブルによって接続される複数の子機130(図では子機#1~子機#M*N)とを備えている。
図5の例では、事業者の基地局100として、事業者Aの基地局100aと、事業者Dの基地局100dとを示している。
【0004】
親機110は、複数の基地局100からの無線信号(下り信号/DL)を受信して光信号に変換して、集約装置120に出力し、集約装置120からの光信号(上り信号/UL)を無線信号に変換して対応する基地局100に出力する。
親機110と各基地局100とは、同軸ケーブルで接続され、上り信号及び下り信号についてアナログ通信を行う。同軸ケーブルのインタフェース個数は、各事業者の対応周波数配置(無線信号のバンド数)、MIMO(Multiple-Input and Multiple-Output)数に応じて設けられている。
【0005】
集約装置120は、親機110と複数の子機130とを光ケーブルによって接続してデータ通信を行うものであり、親機110からの光信号を受信して、複数の子機130に分配し、また、複数の子機130からの光信号を受信して、親機110に出力する。
【0006】
子機130は、集約装置120に光ケーブルで接続し、集約装置120からの光信号を無線信号に変換してアンテナから出力する。また、アンテナで受信した無線信号を光信号に変換して、集約装置120に出力する。
子機130は、例えば、ビル内の各所(天井、壁、床等)に設けられ、指向性アンテナを備えた無線通信装置であり、複数の事業者の無線端末装置140と無線通信を行う。図5では、M台の集約装置120のそれぞれにN台の子機130が接続された構成を示している。
【0007】
図5では、無線端末装置140として、事業者Aの無線端末装置140aと事業者Dの無線端末装置140dとを示している。事業者共用DASとすることで、共用の子機130を介して、ビル内等にいる複数の事業者の無線端末装置140が送受信できるものである。
【0008】
[インフラシェアリング対応DASの運用例]
例えば、4事業者、子機32台のインフラシェアリング対応DASとして、4事業者の基地局100と、1台の親機110と、4台の集約装置120と、32台の子機130とを備え、各集約装置120にそれぞれ8台の子機130が接続された構成がある。
【0009】
また、ビル内にインフラシェアリング対応DASを構築する場合、各フロアに子機130が1台~数台配置され、1システムで複数のビルの複数のフロアが割り当てられるケースがある。
インフラシェアリングでは、ビル単位又はフロア単位で事業者毎の運用を制御する必要があり、各子機130において、それぞれの事業者の運用(ON)/停止(OFF)の制御を行う。
【0010】
[事業者単位の運用ON/OFFの例:図6
インフラシェアリング対応DASにおける事業者単位の運用ON/OFFの例について図6を用いて説明する。図6は、事業者単位の運用ON/OFFの例を示す説明図である。
図6では、上述した32台の子機130(子機#1~子機#32)を備えたインフラシェアリング対応DASにおいて、子機ごとに事業者単位の運用を設定した場合の下り信号の出力を示している。
【0011】
32台の子機130の内、子機#1~子機#6は、事業者A、事業者B、事業者C、事業者Dの全てについて運用ONが設定されており、子機#1~子機#6からの下り信号は、図6(a)に示すようにすべての事業者の周波数が出力される。
【0012】
子機#7~子機#18は、事業者A、事業者B、事業者Dは運用ONが設定され、事業者Cは運用OFFが設定されている。図6(b)に示すように、これらの子機からは、事業者A、事業者B、事業者Dに対応する周波数は出力されるが、事業者Cに対応する周波数の出力は停止している。
【0013】
子機#19~子機#24は、事業者Aと事業者Cについては運用ONが設定され、事業者Bと事業者Dについては運用OFFが設定されており、図6(c)に示すように、事業者A、事業者Cに対応する周波数が出力され、事業者Bと事業者Dに対応する周波数は出力されない。
【0014】
子機#25~子機#32は、事業者Bと事業者Cについて運用ONが設定され、事業者Aと事業者Dについて運用OFFが設定されており、図6(d)に示すように、事業者B、事業者Cに対応する周波数のみが出力される。
このようにして、ビルごと、又はフロアごとに事業者の運用を制御している。
【0015】
[従来の無線通信システムの構成:図7
次に、従来の無線通信システムの構成について図7を用いて説明する。図7は、従来の無線通信システムの構成を示す説明図である。
図7では、4事業者(事業者A~事業者D)によるインフラシェアリング対応DASの親機及び子機の下り信号処理部の構成を示している。尚、集約装置130は省略している。
また、図7の左端に示すように、事業者A~事業者Dの周波数配置は昇順に事業者A、事業者B、事業者C、事業者Dの順となっている。
【0016】
図7に示すように、従来の親機4の下り信号処理部は、事業者A~事業者Dのそれぞれに対応するアナログ回路部41a~41d(アナログ回路部41と記載することもある)と、A/D変換部42a~42d(A/D変換部42と記載することもある)と、デジタル信号処理部43a~43d(デジタル信号処理部43と記載することもある)と、トランシーバ回路部44とを備えている。
【0017】
アナログ回路部41は、対応する各事業者の基地局からの下り信号を受信して、アナログ処理を行う。
A/D変換部42は、アナログ回路部41から出力されたアナログ信号をデジタル信号に変換する。
デジタル信号処理部43は、デジタルフィルタを備え、入力されたデジタル信号を対応する事業者の帯域に制限し、伝送に要するデジタル信号処理を行う。
トランシーバ回路部44は、各デジタル信号処理部43からの電気信号を統合して光信号に変換し、光ケーブルを介して子機3に出力する。
【0018】
また、子機3は、トランシーバ回路部31と、事業者毎に設けられたON/OFF処理部32a~32d(ON/OFF処理部32と記載することもある)と、デジタル信号処理部33a~33d(デジタル信号処理部33と記載することもある)と、デジタル多重部34と、D/A変換部35と、アナログ回路部36とを備えている。
【0019】
トランシーバ回路部31は、光ケーブルからの光信号を電気信号に変換して事業者の帯域ごとに分離し、ON/OFF処理部32a~32dに出力する。
ON/OFF処理部32a~32dは、上述したように、事業者毎の信号出力のON/OFFを切り替える。ONに設定された事業者の信号はデジタル信号処理部33に出力され、OFFに設定された事業者の信号は出力されない。
【0020】
デジタル信号処理部33は、事業者毎にデジタル信号処理を行う。
デジタル多重部34は、デジタル信号処理が施された事業者毎の信号を多重する。
D/A変換部35は、多重されたデジタル信号をアナログ信号に変換する。
アナログ回路部36は、アナログ信号に変調や増幅等のアナログ処理を行う。
【0021】
そして、従来の無線通信システムでは、各事業者の基地局から親機4に入力された信号は、それぞれ、対応するアナログ回路41でアナログ処理されて、それぞれ対応するA/D変換部42でA/D変換され、それぞれ対応するデジタル信号処理部43でデジタル信号処理が施されて、トランシーバ回路部44で光信号に変換されて子機3に送出される。
【0022】
子機3において受信された光信号は、トランシーバ回路部31で電気信号に変換されて事業者毎にON/OFF処理部32に入力され、ON/OFF処理部32でONが設定されている場合のみデジタル信号処理部33に出力されてデジタル信号処理が行われる。
そして、デジタル多重部34で多重されて、D/A変換部35でアナログ信号に変換され、アナログ回路部36でアナログ処理が施されて、アンテナより送出される。
【0023】
ここで、従来の親機4では、アナログ回路41、A/D変換部42、デジタル信号処理部43はそれぞれ、事業者毎に独立した構成であるため、周波数帯域が隣接する他の事業者の信号の影響は受けにくい。
そのため、子機3でデジタル多重された信号についても、他の事業者の信号の影響はほとんどなく、子機3から出力される各事業者の信号の品質は良好となる。
【0024】
[関連技術]
尚、無線通信システムの従来技術としては、特開2014-187450号公報「光伝送装置」(特許文献1)がある。
特許文献1には、多周波数共用で光伝送する場合に、信号の規格を満たしつつ、光伝送容量を低減できる光伝送装置が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0025】
【特許文献1】特開2014-187450号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0026】
しかしながら、従来の親機では、事業者毎にA/D変換器を設けているので、回路規模や装置コストが増大してしまうという問題点があった。
【0027】
尚、特許文献1には、複数事業者の下り信号を1つのアナログ合成部でアナログ合成することや、周波数帯域が隣接しない事業者の下り信号を組み合わせて、複数のアナログ合成部でアナログ合成することは記載されていない。
【0028】
本発明は上記実状に鑑みて為されたもので、インフラシェアリング対応DASを用いたシステムにおいて、下り信号の信号品質を劣化させることなく、回路規模を縮小させることができる親機及び無線通信システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0029】
上記従来例の問題点を解決するための本発明は、分散型アンテナシステムに用いられる親機であって、事業者毎の基地局からの下り信号をアナログ処理する複数のアナログ回路と、アナログ処理された下り信号の内、周波数帯域が隣接しない事業者の下り信号を合成する複数のアナログ合成器と、複数のアナログ合成器からの出力をアナログ信号からデジタル信号に変換するアナログ合成部と同数のA/D変換器と、デジタル信号を事業者毎の下り信号に分離する複数のデジタル信号処理部と、分離した下り信号を光信号で送信する送信部と、を有することを特徴としている。
【0030】
また、本発明は、上記親機において、複数のアナログ合成器として、第1のアナログ合成器と、第2のアナログ合成器とを備え、A/D変換器として、第1のアナログ合成器の後段に接続する第1のA/D変換器と、第2のアナログ合成器の後段に接続する第2のA/D変換器とを備えることを特徴としている。
【0031】
また、本発明は、無線通信システムであって、上記いずれかの親機と、親機から受信した信号を事業者毎にオン又はオフする処理部と、事業者毎に処理部でオンされた信号のデジタル信号処理を行う処理部と、事業者毎にデジタル信号処理された信号をデジタル多重化する多重部とを備える子機と、を有することを特徴としている。
【0032】
また、本発明は、分散型アンテナシステムに用いられる親機であって、事業者毎の基地局からの下り信号をアナログ処理する複数のアナログ回路と、アナログ処理された下り信号を合成するアナログ合成器と、アナログ合成器からの出力をアナログ信号からデジタル信号に変換するA/D変換器と、デジタル信号を事業者毎の下り信号に分離する複数のデジタル信号処理部と、分離した下り信号を光信号で送信する送信部と、を有することを特徴としている。
【発明の効果】
【0033】
本発明によれば、分散型アンテナシステムに用いられる親機であって、事業者毎の基地局からの下り信号をアナログ処理する複数のアナログ回路と、アナログ処理された下り信号の内、周波数帯域が隣接しない事業者の下り信号を合成する複数のアナログ合成器と、複数のアナログ合成器からの出力をアナログ信号からデジタル信号に変換するアナログ合成部と同数のA/D変換器と、デジタル信号を事業者毎の下り信号に分離する複数のデジタル信号処理部と、分離した下り信号を光信号で送信する送信部と、を有する親機としているので、アナログ合成器で、周波数帯域が隣接しない事業者の下り信号を組み合わせて合成することで、デジタル信号処理部で分離された事業者毎の信号への他の事業者の周波数成分の影響を抑えて、下り信号の品質劣化を防ぐことができ、更にA/D変換器の数をアナログ合成器と同数に削減して回路規模を縮小することができる効果がある。
【0034】
また、本発明によれば、分散型アンテナシステムに用いられる親機であって、事業者毎の基地局からの下り信号をアナログ処理する複数のアナログ回路と、アナログ処理された下り信号を合成するアナログ合成器と、アナログ合成器からの出力をアナログ信号からデジタル信号に変換するA/D変換器と、デジタル信号を事業者毎の下り信号に分離する複数のデジタル信号処理部と、分離した下り信号を光信号で送信する送信部と、を有する親機としているので、A/D変換器の数を削減して、回路規模を大幅に縮小することができる効果がある。
【図面の簡単な説明】
【0035】
図1】第1の無線通信システムの構成を示す説明図である。
図2】第1の無線通信システムにおける子機からの出力信号を示す説明図である。
図3】第2の無線通信システムの構成を示す説明図である。
図4】第2の無線通信システムにおける子機からの出力信号を示す説明図である。
図5】インフラシェアリング対応DASの構成例を示す説明図である。
図6】事業者単位の運用ON/OFFの例を示す説明図である。
図7】従来の無線通信システムの構成を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0036】
本発明の実施の形態について図面を参照しながら説明する。
[実施の形態の概要]
本発明の第1の実施の形態に係る親機(第1の親機)は、分散型アンテナシステムに用いられる親機であり、事業者毎の基地局からの下り信号をアナログ処理する複数のアナログ回路と、複数の事業者の下り信号を合成するアナログ合成器と、アナログ合成器からの出力をデジタル信号に変換するA/D変換器と、デジタル信号を事業者毎の下り信号に分離する複数のデジタル信号処理部と、分離した下り信号を光信号で送信する送信部とを有し、A/D変換器の数を大幅に削減でき、回路規模及び装置コストを低減することができるものである。
【0037】
また、本発明の第2の実施の形態に係る親機(第2の親機)は、分散型アンテナシステムに用いられる親機であり、事業者毎の基地局からの下り信号をアナログ処理する複数のアナログ回路と、周波数帯域が隣接しない事業者の下り信号を合成する複数のアナログ合成器と、複数のアナログ合成器からの出力をデジタル信号に変換するアナログ合成器と同数のA/D変換器と、デジタル信号を事業者毎の下り信号に分離する複数のデジタル信号処理部と、分離した下り信号を光信号で送信する送信部とを有し、他の事業者の信号の影響を受けないように複数事業者の下り信号を合成して、当該合成信号についてA/D変換を行うことで、下り信号の品質を劣化させることなくA/D変換器の数を削減でき、また、デジタル信号処理部に急峻なフィルタ特性のフィルタを実装しなくても実現でき、装置コストを抑えることができるものである。
【0038】
また、本発明の実施の形態に係る無線通信システムは、第1の親機又は第2の親機を備えた無線通信システムである。
【0039】
[第1の実施の形態に係る無線通信システムの構成:図1
本発明の第1の実施の形態に係る無線通信システム(第1の無線通信システム)の構成について図1を用いて説明する。図1は、第1の無線通信システムの構成を示す説明図である。
図1に示すように、第1の無線通信システムは、図7に示した従来の無線通信システムと同様に、4事業者(事業者A~事業者D)によるインフラシェアリング対応DASである。尚、集約装置130は省略している。
【0040】
また、図1の左端に示すように、事業者A~事業者Dの周波数配置は昇順に事業者A、事業者B、事業者C、事業者Dの順となっている。
ここで、事業者Aと事業者B、事業者Bと事業者C、事業者Cと事業者Dの周波数帯域は互いに隣接している。
【0041】
図1に示すように、第1の無線通信システムは、第1の親機1と、子機3とを備えている。ここでは、第1の親機1及び子機3について、下り信号処理部の構成を示しているが、子機3は図7に示した従来の子機3と構成及び動作が同じであるため、説明は省略する。
【0042】
第1の無線通信システムの特徴部分である第1の親機1について具体的に説明する。
第1の親機1の下り信号処理部は、アナログ回路部11a,11b,11c,11dと、アナログ合成部12と、デジタル信号処理部14a,14b,14c,14dと、デジタル信号処理部14a,14b,14c,14dと、トランシーバ回路部15とを備えている。
【0043】
アナログ回路部11a~11dは、従来と同様に事業者A~事業者Dのそれぞれに対応して設けられており、事業者毎の基地局100から入力された信号をアナログ処理する。アナログ回路部11a~11dをアナログ回路部11と記載することもある。
【0044】
アナログ合成部12は、第1の親機1の特徴部分であり、アナログ回路部11a~11dから出力されたアナログ信号を入力して合成する。すなわち、事業者A~事業者Dのアナログ処理された信号を全て合成して、A/D変換部13に出力する。
【0045】
A/D変換部13は、アナログ合成部12から出力された合成信号を入力し、デジタル信号に変換して、出力する。
そのため、第1の親機1では、アナログ合成部12及びA/D変換部13の数は1個で済み、従来と比較して大幅に数を削減することができ、回路規模を縮小できるものである。
【0046】
デジタル信号処理部14a~14dは、A/D変換部13でA/D変換されて分岐されたデジタル信号を入力し、デジタルフィルタによって対応する事業者の帯域のデータを分離抽出する。デジタル信号処理部14a~14dをデジタル信号処理部14と記載することもある。
トランシーバ回路部44は、従来と同様にデジタル信号を入力して光信号に変換して子機3に送出する。トランシーバ回路部44は、請求項に記載した送信部に相当する。
【0047】
第1の親機1の動作について説明する。
事業者A~事業者Dの基地局100から出力された信号は、それぞれ、アナログ回路41a~41dに入力されてアナログ処理が行われ、アナログ合成部12で合成されて、アナログ合成信号が生成される。
つまり、第1の親機1におけるアナログ合成信号には、事業者A~事業者Dの4事業者の下り信号が合成されているものである。
【0048】
アナログ合成信号は、A/D変換器13でアナログ信号からデジタル信号に変換されて、分岐され、デジタル信号処理部14a~14dに入力される。
そして、デジタル信号処理部14a~14dにおいて、デジタルフィルタにより、それぞれ対応する事業者の周波数帯域が分離されて、トランシーバ回路部15で光信号に変換されて、光ケーブルを介して子機3に伝送される。
【0049】
子機3においては、従来と同様に処理され、トランシーバ回路31で受信された光信号は電気信号に変換されて、事業者毎に対応するON/OFF処理部32、デジタル多重部34で多重され、D/A変換部35でアナログ信号に変換されて、アナログ回路部36でアナログ処理が行われて、アンテナより送出される。
【0050】
ここで、第1の親機1のデジタル信号処理部14では、周波数帯域が隣接する複数の事業者の信号をアナログ合成した合成信号をA/D変換してデジタル処理を行うため、隣接する事業者の信号成分を完全に除去するのは困難であり、子機3のデジタル多重部34では、隣接する事業者の周波数成分が残った状態で合成することになり、信号品質の劣化を招いてしまう。
【0051】
[第1の無線通信システムにおける子機からの出力信号:図2
第1の無線通信システムにおいて子機3から出力される信号について、図2を用いて説明する。図2は、第1の無線通信システムにおける子機からの出力信号を示す説明図である。
図2に示すように、事業者Aと事業者B、事業者Bと事業者C、事業者Cと事業者Dの周波数帯域は隣接している。ここでは、事業者Cは運用OFFであるため、事業者Cの信号は、子機3からは出力されない。
【0052】
しかしながら、第1の親機1のデジタル処理における周波数分離では、隣接する周波数成分を完全に除去することは困難であるため、子機3において、図2に示すように隣接する周波数成分の影響が残った状態で合成されてしまう。
そのため、第1の無線通信システムでは、子機3からの各事業者の下り信号は、隣接する他の事業者の周波数成分の影響で品質が劣化する。
【0053】
尚、第1の親機1及び第1の無線通信システムの構成で信号品質の劣化を防ぐためには、デジタル信号処理部14において、隣接する事業者の周波数成分を残さず除去するよう、急峻なフィルタ特性を備えたデジタルフィルタを実装する必要があるが、回路規模やコストの点から困難である。
【0054】
[第2の実施の形態に係る無線通信システムの構成:図3
第2の実施の形態に係る無線通信システム(第2の無線通信システム)について図3を用いて説明する。図3は、第2の無線通信システムの構成を示す説明図である。
図3に示すように、第2の無線通信システムは、第1の無線通信システムにおける第1の親機1の代わりに、第2の実施の形態に係る親機(第2の親機)2を設けたインフラシェアリング対応DASである。尚、子機3は従来及び第1の無線通信システムと同様である。
【0055】
そして、第2の無線通信システムは、従来に比べて親機の回路規模を縮小させると共に、子機から出力される下り信号の品質劣化を防ぐものとなっている。
上述した第1の親機1では、周波数帯域が隣接する事業者の信号をアナログ合成するために、隣接する周波数成分が互いに影響し合って信号品質が劣化していたが、第2の親機2では、周波数帯域が隣接しない事業者の信号を組み合わせてアナログ合成することで、品質劣化を防ぐようにしている。
【0056】
図3の例では、左端に示すように、事業者Aと事業者C、事業者Bと事業者Dの周波数帯域は隣接していないため、第2の親機2では、事業者Aと事業者C、事業者Bと事業者Dの下り信号をアナログ合成するものである。
【0057】
図3に示すように、第2の親機2の下り信号処理部は、アナログ回路部21a,21c,21b,21dと、アナログ合成部22a,22bと、A/D変換部23a,23bと、デジタル信号処理部24a,24c,24b,24dと、トランシーバ回路25とを備えている。
【0058】
アナログ回路部21a,21c,21b,21dは、それぞれ、第1の親機1のアナログ回路部11a,11c,11b,11dと同様の構成及び動作であり、それぞれ、事業者A、事業者C、事業者B、事業者Dの基地局からの下り信号を入力してアナログ処理を行う。
【0059】
アナログ合成部32aは、アナログ回路部21a及びアナログ回路部21cからの出力信号を合成する。上述したように、事業者Aの周波数帯域と事業者Cの周波数帯域は隣接していない。
アナログ合成部32bは、アナログ回路部21b及びアナログ回路部21dからの出力信号を合成する。事業者Bの周波数帯域と事業者Dの周波数帯域は隣接していない。
【0060】
A/D変換部23aは、アナログ合成部32aから出力される合成されたアナログ信号をデジタル信号に変換する。
A/D変換部23bは、アナログ合成部32bから出力される合成されたアナログ信号をデジタル信号に変換する。
これにより、第2の親機2では、従来、事業者数と同数(ここでは4つ)必要であったアナログ合成部及びA/D変換部を各々2つに大幅削減できるものである。
【0061】
デジタル信号処理部24aは、A/D変換部23aから出力されて分岐されたデジタル信号からデジタルフィルタを用いて事業者Aの周波数帯域のデータを分離する。
【0062】
ここで、事業者Aの周波数帯域と事業者Cの周波数帯域とは隣接していないため、A/D変換部23aからの出力信号から、事業者Aの周波数帯域のデータを分離抽出する際に、事業者Cの信号の影響を受けにくい。
そのため、デジタル信号処理部24aのデジタルフィルタは、それほど急峻なフィルタ特性でなくても、十分に他の事業者(ここでは事業者C)の信号を除去することができ、回路規模及びコストを抑えることができるものである。
【0063】
同様に、デジタル信号処理部24cは、A/D変換部23aからのデジタル信号から事業者Cの周波数帯域のデータを分離する。デジタル信号処理部24cにおいても、それほど急峻なフィルタ特性のデジタルフィルタでなくても、隣接する周波数帯域に他の事業者(ここでは事業者A)の信号が入っていないため、容易に事業者Cのデータを分離できるものである。
【0064】
デジタル信号処理部24b、デジタル信号処理部24dについても同様であり、事業者Bと事業者Dの周波数帯域は隣接していないため、合成されたアナログ信号をA/D変換したデジタル信号から、デジタル信号処理部24bは事業者Bの周波数帯域のデータ、デジタル信号処理部24dは事業者Dの周波数帯域のデータを、他の事業者の周波数成分が混ざることなく分離することができるものである。
【0065】
このように、第2の親機2では、アナログ合成部22において、互いに隣接しない(歯抜けとなる)周波数帯域の事業者の下り信号を合成するようにして、デジタル信号処理部24において、各事業者の信号が互いに影響を及ぼすことなく、それぞれの周波数帯域のデータを精度よく分離できるようにしている。
【0066】
これにより、子機3において、デジタル多重部24で多重される信号も、他の事業者の影響を受けていない信号を多重するため、第1の無線通信システムに比べて子機3から送出される下り信号の品質を向上させることができ、従来と比較しても信号品質を保持できるものである。
【0067】
[第2の無線通信システムにおける子機からの出力信号:図4
第2の無線通信システムにおいて子機3から出力される信号について、図4を用いて説明する。図4は、第2の無線通信システムにおける子機からの出力信号を示す説明図である。
図4では、事業者Cの運用を停止している例を示すが、事業者A、事業者B、事業者Dの信号は、隣接する事業者の影響を受けずに良好な品質で出力されている。
【0068】
このように、第2の親機2を用いた第2の無線通信システムでは、従来と比べてA/D変換部を削減して親機の回路規模を縮小しつつ、子機からの下り信号の品質を良好に保持することができるものである。
【0069】
[実施の形態の効果]
第1の親機及び第1の無線通信システムによれば、事業者毎の基地局からの下り信号をアナログ処理する複数のアナログ回路11a~11dと、複数の事業者の下り信号を合成するアナログ合成器12と、アナログ合成器12からの出力をデジタル信号に変換するA/D変換器13と、デジタル信号を事業者毎の下り信号に分離する複数のデジタル信号処理部14a~14dと、分離した下り信号を光信号で送信するトランシーバ回路15とを有し、A/D変換器13の数を大幅に削減でき、回路規模及び装置コストを低減することができる効果がある。
【0070】
また、第2の親機及び第2の無線通信システムによれば、事業者毎の基地局からの下り信号をアナログ処理するアナログ回路21a~21dと、周波数帯域が隣接しない事業者の下り信号を組み合わせて合成するアナログ合成器22a,22bと、アナログ合成器22a,22bからの出力をデジタル信号に変換するA/D変換器24a,24bと、デジタル信号を事業者毎の下り信号に分離する複数のデジタル信号処理部24a~24dと、分離した下り信号を光信号で送信するトランシーバ回路25とを有し、他の事業者の信号の影響を受けないように複数事業者の下り信号を合成して、当該合成信号についてA/D変換を行うことで、下り信号の品質を劣化させることなくA/D変換器の数を削減して回路規模を縮小でき、また、デジタル信号処理部に急峻なフィルタ特性のフィルタを実装しなくても実現でき、装置コストを抑えることができる効果がある。
【産業上の利用可能性】
【0071】
本発明は、子機から出力される下り信号の信号品質を劣化させることなく回路規模を縮小させることができる分散型アンテナシステムの親機及び無線通信システムに適している。
【符号の説明】
【0072】
1…第1の親機、 2…第2の親機、 3,130…子機、 4…従来の親機、 11,21,41,36…アナログ回路部、 12,22,42…アナログ合成部、 13,23,43…A/D変換部、 14,24,33,44…デジタル信号処理部、 15,25,31…トランシーバ回路部、 32…ON/OFF制御部、 34…デジタル多重部、 35…D/A変換部、 100…基地局、 110…親機、 120…集約装置、 140…無線端末装置
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7