(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024045935
(43)【公開日】2024-04-03
(54)【発明の名称】消火供用器具
(51)【国際特許分類】
A62C 35/02 20060101AFI20240327BHJP
【FI】
A62C35/02 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022151031
(22)【出願日】2022-09-22
(71)【出願人】
【識別番号】000233826
【氏名又は名称】能美防災株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100127845
【弁理士】
【氏名又は名称】石川 壽彦
(72)【発明者】
【氏名】横田 博之
【テーマコード(参考)】
2E189
【Fターム(参考)】
2E189BA05
2E189BB08
(57)【要約】
【課題】タンク交換の際にホースをタンクから取り外しても、ホースの基端部側から消火作業用液が逆流漏出しにくい消火供用器具を提供する。
【解決手段】本発明に係る消火供用器具1は、消火作業用液3を充填した内袋5を収容するタンク7と、内袋5内の消火作業用液3を排出するための排出路9と、を有し、内袋5とタンク7の内面との隙間にガスを充填することで、内袋5を圧縮して消火作業用液3を排出路9から排出するものであって、排出路9は、先端にノズル11が設けられたホース13と、上端がホース13の基端側に接続されると共に下端が内袋5の底部近傍まで挿入されてホース13に消火作業用液3を誘導する誘導管16を備えてなり、誘導管16は、複数の流入孔17が設けられた流入孔形成領域19と、流入孔形成領域19の上方であって孔の設けられていない無孔領域21とを有することを特徴とするものである。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
消火作業用液を充填した内袋を収容するタンクと、前記内袋内の前記消火作業用液を排出するための排出路と、を有し、前記内袋と前記タンクの内面との隙間にガスを充填することで、前記内袋を圧縮して前記消火作業用液を前記排出路から排出する消火供用器具であって、
前記排出路は、先端にノズルが設けられたホースと、上端が該ホースの基端側に接続されると共に下端が前記内袋の底部近傍まで挿入されて前記ホースに前記消火作業用液を誘導する誘導管を備えてなり、
前記誘導管は、複数の流入孔が設けられた流入孔形成領域と、該流入孔形成領域の上方であって孔の設けられていない無孔領域とを有することを特徴とする消火供用器具。
【請求項2】
前記内袋内における前記消火作業用液の液面上に空気溜まりが設けられて、前記無孔領域が前記空気溜まりに位置していることを特徴とする請求項1記載の消火供用器具。
【請求項3】
前記空気溜まりの容量は、前記ホースの容量以上であることを特徴とする請求項2に記載の消火供用器具。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、消火作業用液をタンク内に貯蔵し、圧力ガス等によりタンク内を加圧することで消火作業用液を外部に排出する消火供用器具に関する。
【背景技術】
【0002】
従来の消火供用器具には、例えば特許文献1の「消火剤タンク」のように、タンク内部に消火剤等を充填した内袋を有する内袋式のものがある。内袋式の消火供用器具は、タンクの内壁と内袋との間に圧力ガスを充填して内袋を加圧することでタンクに接続したホースに消火剤を送出し、ホース先端に設けられたノズルから消火剤が放水するようになっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上述したような内袋式の消火供用器具は、消火作業用液を使い切って内袋の収縮が止まると放水が停止する。このときホースの内部には、放出しきれなかった消火作業用液が残留する。したがって、空になったタンクを交換する際、タンクからホースを取り外すと、ホース内部に残留していた消火作業用液がホースの基端部側から逆流漏出し、接合部のシール部や周囲を汚損するおそれがあった。
【0005】
本発明は、かかる課題を解決するためになされたものであり、タンク交換の際にホースをタンクから取り外しても、ホースの基端部側から消火作業用液が逆流漏出しにくい消火供用器具を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
(1)本発明に係る消火供用器具は、消火作業用液を充填した内袋を収容するタンクと、前記内袋内の前記消火作業用液を排出するための排出路と、を有し、前記内袋と前記タンクの内面との隙間にガスを充填することで、前記内袋を圧縮して前記消火作業用液を前記排出路から排出するものであって、前記排出路は、先端にノズルが設けられたホースと、上端が該ホースの基端側に接続されると共に下端が前記内袋の底部近傍まで挿入されて前記ホースに前記消火作業用液を誘導する誘導管を備えてなり、前記誘導管は、複数の流入孔が設けられた流入孔形成領域と、該流入孔形成領域の上方であって孔の設けられていない無孔領域とを有することを特徴とするものである。
【0007】
(2)また、上記(1)に記載のものにおいて、前記内袋内における前記消火作業用液の液面上に空気溜まりが設けられて、前記無孔領域が前記空気溜まりに位置していることを特徴とするものである。
【0008】
(3)また、上記(2)に記載のものにおいて、前記空気溜まりの容量は、前記ホースの容量以上であることを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0009】
本発明においては、誘導管の上部に無孔領域を設けたことにより、消火作業用液と共に内袋内に封入されていた空気が、放水の最終期に誘導管に流入する。誘導管からホースに空気が流入すると、空気がホース内部に残留した消火作業用液を押し出し、ノズルから消火作業用液が排出される。
これにより、ホースの基端部側に消火作業用液が残留することがなくなるので、タンク交換時にホースをタンクから取り外しても消火作業用液が逆流漏出しにくくなり、接合部(シール部)の汚損を防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】本発明の一実施の形態にかかる消火供用器具の説明図である。
【
図2】
図1の消火供用器具の使用時におけるタンク内部の状態を説明する図である(その1)。
【
図3】
図1の消火供用器具の使用時の状態を説明する図である(その2)。
【
図4】
図1の消火供用器具の使用時の状態を説明する図である(その3)。
【
図5】
図1の消火供用器具の使用時の状態を説明する図である(その4)。
【
図6】
図1の消火供用器具の使用時の状態を説明する図である(その5)。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明の一実施の形態に係る消火供用器具1は、
図1に示すように、消火作業用液3を充填した内袋5を収容するタンク7と、内袋5内の消火作業用液3を排出するための排出路9とを有している。消火供用器具1を使用する際には、内袋5とタンク7の内面との隙間にガスを充填することで、内袋5を圧縮して消火作業用液3を排出路9から排出する。
【0012】
内袋5に充填する消火作業用液3としては、消火剤や遮光剤等が挙げられる。遮光剤とは、消火活動時に太陽光パネルの表面に吹き付けて太陽光パネルに入射する光を遮断し、放水による感電を防止するものである。
【0013】
排出路9は、先端にノズル11が設けられたホース13と、ホース13に消火作業用液3を誘導する誘導管16を備えてなる。
ホース13には、消火作業用液3の流路を開閉するバルブ14、15が設けられている。なお、
図1~
図6において、バルブ14、15を黒塗りで図示した場合には閉止状態、白抜きで図示した場合には開放状態であることを表している。
【0014】
誘導管16は、上端がホース13の基端側に接続されると共に下端が内袋5の底部近傍まで挿入されている。
誘導管16の周壁部には、内袋5内の消火作業用液3を誘導管16に流入させるための流入孔17が複数設けられている。
従来では、誘導管16の上端から下端の全長に亘って流入孔17が形成されるのが一般的であったが(特許文献1の
図1参照)、本実施の形態の誘導管16は、流入孔17が形成された流入孔形成領域19の上方に、流入孔17の設けられていない無孔領域21を有している。
【0015】
内袋5内における消火作業用液3の液面上には、空気溜まり23が形成されている。この空気溜まり23は、消火作業用液3を内袋5に封入する際の残留空気によって形成されたものである。
そして、
図1に示すように、使用状態において、消火作業用液3の液中に流入孔形成領域19が位置し、空気溜まり23に無孔領域21が位置している。
【0016】
以上のように構成された消火供用器具1において、使用後にホース13をタンク7から取り外した際、消火作業用液3がホース13の基端部側から漏出しにくい理由について説明する。
図2~
図6に消火供用器具1の使用時の状態を示す。
【0017】
消火供用器具1を使用する際には、加圧手段24によって、内袋5とタンク7の内面との隙間に窒素などの加圧ガスを注入する。加圧ガスが注入されると、
図2に示すように、内袋5が加圧され、消火作業用液3が流入孔17から誘導管16に流入する。
一方、空気溜まり23に位置する無孔領域21では流入孔17が形成されていないので、空気溜まり23の空気は誘導管16に流入せずに圧縮され、内袋5の上部に留まる。
【0018】
バルブ14、15を開放して放水を開始すると、
図3に示すように、誘導管16に流入した消火作業用液3がホース13を通流してノズル11から外部に放出される。このとき、消火作業用液3は、上側に設けられた流入孔17から順に誘導管16に流入するため、内袋5は上部側の流入孔17の近傍部分(図中矢印で示す部分)から潰れてくびれるように変形する。
以降、
図4に示すように、圧縮した空気を内袋5内の上部に残留させたまま、内袋5が誘導管16の流入孔形成領域19に貼りつくように上側から徐々に収縮していく。
【0019】
やがて、
図5に示すように、誘導管16に貼りついた内袋5によって流入孔17が上側から順に塞がれていき、放水圧が低下する。
従来例では、内袋5内のほぼ全ての消火作業用液3が誘導管16に流入し、全ての流入孔17が内袋5によって塞がれると、消火作業用液3の流れが止まって、ホース13内に消火作業用液3を残留させたまま放水が停止していた。
【0020】
この点、本実施の形態では、全ての流入孔17が塞がれて消火作業用液3の流れが止まると、
図6に示すように、加圧ガスの圧力によって、内袋5の上部に残留していた空気溜まり23が下方に押し下げられる。押し下げられた空気溜まり23が一番上の流入孔17に到達すると、空気溜まり23の空気が流入孔17から誘導管16に流入する。
【0021】
誘導管16からホース13に流入した空気25によって、ホース13に残留していた消火作業用液3がノズル11側に押し出され、消火作業用液3が排出される。したがって、ホース13に残留する消火作業用液3の量が少なくなり、ホース13の基端部側に消火作業用液3が残留しにくくなる。
【0022】
以上のように、本実施の形態では、誘導管16の上部に無孔領域21を設けたことにより、放水の最終期まで内袋5内の上部に空気溜まり23を圧縮して保持し、放水の最終期に空気25がホース13に流入するようにしたため、ホース13の内部に残留した消火作業用液3が空気25によってノズル11から押し出される。
これにより、ホース13の基端部側に消火作業用液3が残留しにくくなって、タンク7の交換時にホース13をタンク7から取り外しても消火作業用液3がホース13の基端部側から漏出しにくくなる。したがって、タンク交換時における消火作業用液3による接合部(シール部)の汚損を防止することができる。
【0023】
なお、内袋5に消火作業用液3を充填する際、内袋5を消火作業用液3で完全に満たすことは少ないので、前述した空気溜まり23は自然に形成される。しかし、空気溜まり23の空気量が少ないと、放水の最終期にホース13から押し出せる消火作業用液3の量が少なくなるので、内袋5に充填する消火作業用液3の量を調整して、空気溜まり23を積極的に設けるようにするとより好ましい。
【0024】
特に、空気溜まり23の容量をホース13の容量以上とすれば、放水の最終期にホース13に残留した消火作業用液3を全て排出することができるので、タンク交換時にホース13から消火作業用液3が漏出することがなくて好ましい。
【符号の説明】
【0025】
1 消火供用器具
3 消火作業用液
5 内袋
7 タンク
9 排出路
11 ノズル
13 ホース
14 バルブ
15 バルブ
16 誘導管
17 流入孔
19 流入孔形成領域
21 無孔領域
23 空気溜まり
24 加圧手段
25 空気