(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024004594
(43)【公開日】2024-01-17
(54)【発明の名称】バリ取り工具、およびバリ取り方法
(51)【国際特許分類】
B23D 79/00 20060101AFI20240110BHJP
【FI】
B23D79/00 A
【審査請求】有
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022104263
(22)【出願日】2022-06-29
(11)【特許番号】
(45)【特許公報発行日】2023-05-18
(71)【出願人】
【識別番号】597022425
【氏名又は名称】株式会社ジーベックテクノロジー
(74)【代理人】
【識別番号】100142619
【弁理士】
【氏名又は名称】河合 徹
(74)【代理人】
【識別番号】100153316
【弁理士】
【氏名又は名称】河口 伸子
(74)【代理人】
【識別番号】100196140
【弁理士】
【氏名又は名称】岩垂 裕司
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 康児
【テーマコード(参考)】
3C050
【Fターム(参考)】
3C050FB09
3C050FB14
(57)【要約】
【課題】バリ取り動作において、ワークのバリ除去対象面を傷つけることを防止或いは抑制できるバリ取り工具を提供すること。
【解決手段】バリ取り工具1は、円柱形状の軸部2を有する。軸部2の先端側を第1方向X1、基端側を第2方向X2としたときに、軸部2は、円環状の案内面6aを有する案内部6と、案内面6aの第2方向X2に連続する外周面11を有する切刃形成部7を備える。切刃形成部7は、外周面11に案内面6aから第2方向X2に延びる溝12を備える。切刃形成部7における溝12の開口縁20において、案内面6aから第2方向X2に延びる開口縁20部分は、切刃25、26である。バリ取り加工では、バリ取り工具1を回転させながら、案内面6aおよび切刃形成部7をバリ除去対象面50aに接触させる。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
円柱形状の軸部を有し、
前記軸部の軸線に沿った方向を軸線方向の一方側を前方、他方側を後方とした場合に、前記軸部は、軸線回りの円環状の案内面を有する案内部と、前記案内面から前記後方に延びる切刃を備える切刃形成部と、を備え、
前記軸線方向から見た場合に、前記切刃形成部は、その全体が前記案内部と重なることを特徴とするバリ取り工具。
【請求項2】
前記切刃形成部は、前記案内面の前記後方に連続する外周面と、前記外周面に設けられた溝を備え、
前記溝は、前記案内面から前記後方に延び、
前記切刃形成部における前記溝の開口縁において、前記案内面から前記後方に延びる開口縁部分は、切刃であることを特徴とする請求項1に記載のバリ取り工具。
【請求項3】
前記溝は、前記軸線回りの周方向で対向する第1内壁面および第2内壁面と、前記周方向に延びて前記第1内壁面の内周側の端と前記第2内壁面の内周側の端とを接続する底面と、を備え、
前記開口縁部分は、前記第1内壁面と前記外周面とが交わる角部、および前記第2内壁面と前記外周面とが交わる角部であることを特徴とする請求項2に記載のバリ取り工具。
【請求項4】
前記溝は、一定幅で前記軸線方向を前記軸線と平行に延びており、
前記第1内壁面および前記第2内壁面は、それぞれ前記軸線を中心とする径方向に延びることを特徴とする請求項3に記載のバリ取り工具。
【請求項5】
前記溝は、前記軸線方向の中央部分の深さが最も深く、前記中央部分から前記前方に向かって浅くなるとともに、前記中央部分から前記後方に向かって浅くなることを特徴とする請求項2に記載のバリ取り工具。
【請求項6】
前記切刃形成部の外径寸法は、前記軸線方向で一定であることを特徴とする請求項2に記載のバリ取り工具。
【請求項7】
前記切刃形成部の外径寸法は、前記後方に向かって小さくなることを特徴とする請求項2に記載のバリ取り工具。
【請求項8】
前記軸部は、前端に、前記案内面から前記前方に向かって内周側に湾曲する環状の湾曲外周面を備える前端部を備えることを特徴とする請求項1に記載のバリ取り工具。
【請求項9】
前記軸部は、前記切刃形成部の前記後方に、外径寸法が前記案内部と同一の円柱部を備えることを特徴とする請求項1に記載のバリ取り工具。
【請求項10】
前記切刃から内周側に延びる当該切刃のすくい面は、径方向に延び、
前記切刃から周方向に延びる当該切刃の逃げ面は、前記軸線方向から見た場合に前記案内面の内側を延びることを特徴とする請求項1に記載のバリ取り工具。
【請求項11】
請求項1に記載のバリ取り工具における前記軸部の後端部分を、ラジアルフローティングホルダを介して、工作機械に取り付け、
前記ラジアルフローティングホルダおよび前記バリ取り工具を前記軸線回りに回転させた状態で前記案内部および前記切刃形成部をワークのバリ除去対象面に接触させて前記バリ除去対象面に沿って移動させて当該バリ除去対象面のバリを取ることを特徴とするバリ
取り方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ワークのバリ除去対象面に外周面を接触させてバリを除去する棒状のバリ取り工具に関する。
【背景技術】
【0002】
このようなバリ取り工具は、特許文献1に記載されている。同文献のバリ取り工具は、軸線を囲む外周面と、軸線と垂直な前端面と、前端面の中心を軸線と直交する方向に横断する一定幅の溝と、を備える。溝はバリ取り工具の前端面から基端側に向かって軸線と平行に延びる。バリ取り工具の前端部分は、溝により2つの刃部に分割されている。溝の開口縁は、前端面が連続する先端縁部分と、外周面が連続する外周端縁部分と、を備える。外周端縁部分は前端面から軸線方向に延びる。外周端縁部分は、バリ取り工具の切刃である。
【0003】
バリを除去する際には、バリ取り工具を、その軸線がワークのバリ除去対象面と平行になる姿勢とする。また、バリ取り工具を軸線回りに回転させた状態で軸部の外周面をワークのバリ除去対象面に接触させ、バリ除去対象面に沿って移動させる。これにより、バリ除去対象面の縁に存在するバリは、切刃によって剪断される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1のバリ取り工具では、バリ取り加工時に切刃がバリ除去対象面に食い付いて、ワークの表面を傷つけやすいという問題がある。この問題について、
図14、
図15を参照して説明する。
図14は、特許文献1に開示されたバリ取り工具の斜視図である。
図15は、特許文献1のバリ取り工具によるバリ取り動作をバリ取り工具の前端面の側から見た場合の説明図である。
図15(a)は、バリ取り工具の外周面がバリ除去対象面に接触している状態を示す。
図15(b)は、バリ取り工具の溝がバリ除去対象面に対向した状態を示す。
図15(c)は、
図15(b)の状態から、更に、バリ取り工具が回転した状態を示す。
【0006】
図14に示すように、同文献のバリ取り工具100は、軸部101を備える。軸部101は、その軸線L0を囲む外周面102と、軸線L0と垂直な前端部103と、前端部103の中心を軸線L0と直交する方向に横断する一定幅の溝104と、を備える。溝104は、前端部103から基端側に向かって軸線L0と平行に延びる。溝104の開口縁は、前端部103が連続する先端縁部分104aと、外周面102が連続する外周端縁部分104bと、を備える。外周端縁部分104bは前端部103から軸線L0方向に延びる。外周端縁部分104bは、バリ取り工具100の切刃105である。軸部101において、切刃105から内側に延びるに溝104の内壁面は、切刃105のすくい面である。すくい面と軸部101の外周面102とが成すすくい角θ0は、鋭角である。言い換えれば、バリ取り工具100の切刃105は鋭角である。
【0007】
図15に示すように、バリを除去する際には、バリ取り工具100を、その軸線L0がワーク110のバリ除去対象面110aと平行になる姿勢とする。また、バリを除去する際には、
図15(a)に示すように、バリ取り工具100を軸線回りに回転させた状態で
、軸部101の外周面102をワーク110のバリ除去対象面110aに向かって押し付けて、バリ除去対象面110aに沿って移動させる。
【0008】
その後、
図15(b)に示すように、回転するバリ取り工具100の溝104がバリ除去対象面110aに対向する回転角度位置では、バリ取り工具100とバリ除去対象面110aとが対向する対向方向において、バリ取り工具100とバリ除去対象面110aとの間に円弧形状の外周面102が存在しなくなる。
【0009】
ここで、バリ取り工具100は、加工動作中に常にバリ除去対象面110aに押し付けられている。従って、バリ取り工具100が
図15(a)に示す状態から
図15(b)に示す状態に移行すると、バリ取り工具100とバリ除去対象面110aとの間に外周面102が存在しなくなった分だけ、軸部101がバリ除去対象面110aに接近した状態となる。すなわち、軸部101の軸線L0がバリ除去対象面110aに接近し、バリ除去対象面110aが軸部101の外周面102よりも内側に位置した状態となる。従って、
図15(c)に示すように、バリ取り工具100が更に回転すると、外周面102に設けられた溝104の開口縁である切刃105は、バリ除去対象面110aを、削ってしまう。
【0010】
上記の問題に鑑みて、本願発明の課題は、バリ取り動作において、ワークのバリ除去対象面を傷つけることを防止或いは抑制できるバリ取り工具を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記の課題を解決するために、本発明のバリ取り工具は、円柱形状の軸部を有し、前記軸部の軸線に沿った方向を軸線方向の一方側を前方、他方側を後方とした場合に、前記軸部は、軸線回りの円環状の案内面を有する案内部と、前記案内面から前記後方に延びる切刃を備える切刃形成部と、を備え、前記軸線方向から見た場合に、前記切刃形成部は、その全体が前記案内と重なることを特徴とする。
【0012】
本発明によれば、軸部は、切刃が設けられた切刃形成部の前側に、円環状の外周面を有する案内部を備える。また、切刃形成部は、軸線方向から見た場合に、その全体が案内部と重なる。すなわち、切刃形成部は案内面から外周側に突出する部分を有さない。従って、回転する軸部をワークのバリ除去対象面に接触させてバリを除去する際に、案内部をバリ除去対象面に接触させていれば、バリ除去対象面が案内面よりも内周側に位置することを防止或いは抑制できる。よって、切刃形成部に設けられた切刃がバリ除去対象面を削ってしまうことを防止或いは抑制できる。
【0013】
本発明において、前記切刃形成部は、前記案内面の前記後方に連続する外周面と、前記外周面に設けられた溝を備え、前記溝は、前記案内面から前記後方に延び、前記切刃形成部における前記溝の開口縁において、前記案内面から前記後方に延びる開口縁部分は、切刃であるものとすることができる。切刃を備える切刃形成部が、案内面の後方に連続する外周面を備えれば、切刃がバリ除去対象面を削ってしまうことを、より、抑制しやすい。
【0014】
本発明において、前記溝は、前記軸線回りの周方向で対向する第1内壁面および第2内壁面と、前記周方向に延びて前記第1内壁面の内周側の端と前記第2内壁面の内周側の端とを接続する底面と、を備え、前記開口縁部分は、前記第1内壁面と前記外周面とが交わる角部、および前記第2内壁面と前記外周面とが交わる角部であるものとすることができる。このようにすれば、バリ取り工具を回転させる回転方向に拘わらず、バリ取り動作を行うことができる。
【0015】
本発明において、前記溝は、一定幅で前記軸線方向に延びており、前記第1内壁面および前記第2内壁面は、それぞれ前記軸線を中心とする径方向に延びるものとすることがで
きる。
【0016】
ところで、はすば歯車の歯部は、ホブ加工や、スカイピング加工により形成される。これらの切削加工では、一般的な切削加工と比較して、大きなバリが発生する。ここで、バリが大きくなると、バリの根本部分の強度が高くなる。従って、はすば歯車に発生したバリを除去する際には、バリ取り工具の切刃に負荷がかる。よって、切刃が鋭角の場合には、切刃にチッピングが発生しやすい。これに対して、切刃のすくい面となる溝の第1内壁面および第2内壁面がそれぞれ径方向に延びていれば、各切刃は直角になる。すなわち、切刃形成部の外周面と一方の切刃のすく面である第1内壁面とが成す角度は90°となる。また、切刃形成部の外周面と他方の切刃のすく面である第2内壁面とが成す角度は90°となる。従って、バリ取り工具を、はすば歯車に発生したバリのような強度の高いバリを除去する際に用いた場合でも、切刃にチッピングが発生することを防止或いは抑制できる。
【0017】
本発明において、前記溝は、前記軸線方向の中央部分の深さが最も深く、前記中央部分から前記先端側に向かって浅くなるとともに、前記中央部分から前記第2方向に向かって浅くなるものとすることができる。このようにすれば、切刃によって剪断したバリを溝から外に排出しやすい。
【0018】
本発明において、前記切刃形成部は、前記軸線方向において、外径寸法が一定であるものとすることができる。
【0019】
本発明において、前記切刃形成部は、前記第2方向に向かって外径寸法が小さくなるものとすることができる。このようにすれば、バリ取り加工時に、軸部の後端側がバリ除去対象面に接近する方向に傾斜する場合に、切刃の後端側部分によってバリ除去対象面を傷つけることを防止或いは抑制できる。
【0020】
前記軸部は、前記第1方向の端に、前記案内面から前記第1方向に向かって内周側に湾曲する環状の湾曲外周面を備える前端部を備えるものとすることができる。このような前端部を備えれば、バリ取り加工時に、軸部がバリ除去対象面に対して傾斜した場合に、軸部の先端でバリ除去対象面を傷つけることを防止或いは抑制できる。
【0021】
本発明において、前記軸部は、前記切刃形成部の前記第2方向に、外径寸法が前記案内部と同一の円柱部を備えるものとすることができる。この場合、案内部および円柱部をバリ除去対象面に接触させた状態でバリ取り動作を行えば、バリ取り加工時に、軸部の基端側がバリ除去対象面に接近する方向に傾斜することを防止できる。従って、切刃の基端側部分によってバリ除去対象面を傷つけることを防止或いは抑制できる。
【0022】
本発明において、前記切刃から内周側に延びる当該切刃のすくい面は、径方向に延び、前記切刃から周方向に延びる当該切刃の逃げ面は、前記軸線方向から見た場合に前記案内面の内側を延びるものとしてもよい。このようにすれば、鋭角な切刃を備えることができる。
【0023】
次に、本発明のバリ除去方法は、上記のバリ取り工具の前記軸部の後端部分を、ラジアルフローティングホルダを介して、工作機械に取り付け、前記ラジアルフローティングホルダおよび前記バリ取り工具を前記軸線回りに回転させた状態で前記案内部および前記切刃形成部をワークのバリ除去対象面に接触させて前記バリ除去対象面に沿って移動させて当該バリ除去対象面のバリを取ることを特徴とする。
【0024】
バリ取り工具を、ラジアルフローティングホルダを介して、工作機械に取り付けてバリ
取り動作を行えば、バリ除去対象面から立ち上がるバリの硬度が高く切刃によってバリを剪断できない場合などに、バリの側から切刃形成部に働く力によって軸部が軸線と直交する直交方向に移動する。すなわち、バリを剪断できない場合には、切刃を備える切刃形成部がバリ除去対象面から離間する方向に移動する。従って、バリ取り加工中に、切刃がバリおよびバリ除去対象面に食い付いて、バリ除去対象面を傷つけることを防止或いは抑制できる。また、硬度が高いバリの存在により、バリ取り加工中に、切刃にチッピングが発生することを防止或いは抑制できる。
【発明の効果】
【0025】
本発明のバリ取り工具、およびバリ取り方法によれば、切刃がワークのバリ除去対象面を傷つけることを防止或いは抑制できる。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【
図5】バリ取り工具を用いたバリ取り方法の説明図である。
【
図7】かさ歯車のバリを除去するバリ取り動作の説明図である。
【
図9】変形例のバリ取り工具を用いたバリ取り方法の説明図である。
【
図15】従来のバリ取り工具によるバリ取り動作の説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0027】
以下に、図面を参照して、本発明の実施の形態であるバリ取り工具およびバリ取り方法を説明する。
【0028】
図1は、バリ取り工具の斜視図である。
図1では、バリ取り工具を前側から見ている。
図2は、バリ取り工具の側面図である。
図3は、
図1のA-A線断面図である。
図3では、バリ取り工具を軸線に沿って切断している。
図4は、
図1のB-B線断面図である。
図4では、バリ取り工具の切刃形成部を軸線と直交する方向に切断している。
図1に示すように、本例のバリ取り工具1は、円柱形状の軸部2を有する。軸部2は、超硬合金、または高速度工具鋼(ハイス)からなる。以下の説明では、軸部2の軸線Lに沿った方向を軸線方向Xとし、軸線方向Xにおける軸部2の前側を第1方向X1、軸線方向Xにおける第1方向X1とは反対側(後側)を第2方向X2とする。第2方向X2は、軸部2の基端側である。
【0029】
図1から
図3に示すように、軸部2は、第1方向X1の端から第2方向X2に向かって、前端部5、案内部6、切刃形成部7、円柱部8、およびシャンク部9をこの順に備える。前端部5は、円形の前端面5aと、前端面5aから外周側に向かって第2方向X2に湾曲する環状の湾曲外周面5bと、を備える。
【0030】
案内部6は、軸線回りの円環状の案内面6aを備える。案内面6aは、軸線方向Xの幅が周方向で一定である。前端部5の湾曲外周面5bは、案内面6aの第1方向X1の端に
段差なく連続する。言い換えれば、前端部5は、案内部6の案内面6aから第1方向X1に向かって内周側に湾曲する環状の湾曲外周面5bを備える。
【0031】
切刃形成部7は、軸線方向Xから見た場合に、その全体が案内部6と重なる。すなわち、
図4に示すように、切刃形成部7は、軸線方向Xから見た場合に、案内面6aよりも外周側に突出する部分を備えていない。切刃形成部7は、案内面6aの第2方向X2に連続する外周面11を備える。また、切刃形成部7は、その外周面11に案内部6から第2方向X2に延びる複数の溝12を備える。外周面11は、軸線Lを中心とする円弧面である。本例では、切刃形成部7は、6つの溝12を備える。各溝12は、一定幅で軸線方向Xに延びる。
【0032】
図2に示すように、各溝12は、径方向から見た場合に、軸線方向Xに長い長方形である。各溝12は、軸線回りの周方向で対向する第1内壁面13および第2内壁面14と、を備える。また、各溝12は、径方向から見た場合に、軸線方向Xに長い長方形の底面17を備える。底面17は、周方向に延びて第1内壁面13の内周側の端と第2内壁面14の内周側の端とを接続する。
【0033】
ここで、
図3に示すように、各溝12は、軸線方向Xの中央部分の深さが最も深く、中央部分から第1方向X1に向かって浅くなるとともに、中央部分から第2方向X2に向かって浅くなる。底面17の第1方向X1の端は、外周面11と同一の高さである。すなわち、底面17の第1方向X1の端は、案内面6aと同一の高さである。また、底面17の第2方向X2の端は、外周面11と同一の高さである。すなわち、底面17の第2方向X2の端は、円柱部8の円環状外周面8aと同一の高さである。溝12の底面17の断面形状は、軸線方向Xの中央部分が内周側に窪む円弧である。
【0034】
図2に示すように、切刃形成部7における各溝12の開口縁20は、長方形である。各溝12の開口縁20は、周方向で対向する第1開口縁部分21および第2開口縁部分22を備える。また、開口縁20は、第1開口縁部分21の第1方向X1の端と第2開口縁部分22の第1方向X1の端を接続する第3開口縁部分23と、第1開口縁部分21の第2方向X2の端と第2開口縁部分22の第2方向X2の端を接続する第4開口縁部分24と、を備える。第1開口縁部分21および第2開口縁部分22は、それぞれ案内面6aから第2方向X2に延びる。
【0035】
切刃形成部7における各溝12の開口縁20において、案内面6aから第2方向X2に延びる第1開口縁部分21は、第1切刃25である。また、各溝12の開口縁20において、案内面6aから第2方向X2に延びる第2開口縁部分22は、第2切刃26である。ここで、第1開口縁部分21は、第1内壁面13の外周側の端であり、第2開口縁部分22は、第2内壁面14の外周側の端である。従って、第1切刃25は、第1内壁面13と切刃形成部7の外周面11とが交わる角部である。第2切刃26は、第2内壁面14と切刃形成部7の外周面11とが交わる角部である。また、第1開口縁部分21の内周側に連続する第1内壁面13は、第1切刃25の第1すくい面である。第2開口縁部分22の内周側に連続する第2内壁面14は、第2切刃26の第2すくい面である。
【0036】
図4に示すように、各溝12の第1内壁面13および第2内壁面14は、それぞれ軸線Lを中心とする径方向に延びる。すなわち、第1切刃25のすくい面(第1内壁面13)は、径方向に延びる。一方、第1切刃25の逃げ面は軸部2の外周面11である。従って、第1切刃25の逃げ角は0°である。従って、切刃形成部7の外周面11(逃げ面)と第1切刃25のすくい面とが成す第1角度θ1は90°である。すなわち、第1切刃25は直角である。また、第2切刃26のすくい面である第2内壁面14は、径方向に延びる。一方、第1切刃25の逃げ面は軸部2の外周面11であり、第1切刃25の逃げ角は0
°である。従って、切刃形成部7の外周面11と第2切刃26のすく面である第2内壁面14とが成す第2角度θ2は90°である。すなわち、第2切刃26は直角である。
【0037】
図1に示すように、円柱部8は、円環状外周面8aを備える。円環状外周面8aの外径寸法は、案内面6aの外径寸法と同一である。円環状外周面8aは、軸線方向Xの幅が周方向で一定である。ここで、切刃形成部7の外径寸法は、案内部6の外径寸法および円柱部8の外径寸法と同一である。また、切刃形成部7の外径寸法は、軸線方向Xで一定である。従って、切刃形成部7の外周面11と案内部6の案内面6aとは段差なく連続する。また、切刃形成部7の外周面11と円柱部8の円環状外周面8aとは段差なく連続する。
【0038】
シャンク部9は、円柱部8よりも第2方向X2に位置する部分である。シャンク部9は、工作機械のスピンドルにチャックされる部分である。本例では、シャンク部9は円柱形状である。また、シャンク部9の外径寸法は円柱部8と同一であり、円柱部8とシャンク部9との間に境界はない。なお、シャンク部9には、Dカットなどが施されている場合もある。
【0039】
(バリ取り方法)
図5は、バリ取り工具1によるバリ取り方法の説明図である。
図6は、バリ取り工具1によるバリ取り方法のフローチャートである。
図5に示す例では、ワーク50は、はすば歯車である。ワーク50のバリ除去対象面50aは、はすば歯車の歯部の端面、およびはすば歯車の端面において歯部の内周側に隣接する部分である。
図5に示す例では、バリ取り工具1により、はすば歯車の歯部の端面の縁に発生したバリ55を除去する。
【0040】
図5、
図6に示すように、ワーク50のバリ取りを行う際には、バリ取り工具1を、ラジアルフローティングホルダ51を介して、工作機械52のスピンドル52aに取り付ける(ステップST1)。しかる後に、工作機械52を駆動してバリ取り工具1を軸線回りの第1回転方向R1に回転させた状態で、案内面6aおよび切刃形成部7の外周面11をワーク50のバリ除去対象面50aに接触させ、バリ除去対象面50aに沿って移動させる(ステップST2)。これにより、バリ取り工具1は、バリ除去対象面50aの縁に存在するバリ55を剪断する。バリ取り工具1を第1回転方向R1に回転させたときに使用される切刃は、第1切刃25である。
【0041】
本例では、円柱部8の円環状外周面8aは、バリ除去対象面50aに接触させない。また、バリ取り加工中に、前端部5の湾曲外周面5bは、バリ除去対象面50aに接触しない。なお、バリ取り工具1の回転方向は、第1回転方向R1とは逆方向でもよい。この場合に、バリ55を剪断する切刃は、第2切刃26となる。
【0042】
ここで、ラジアルフローティングホルダ51は、一般的なものである。ラジアルフローティングホルダ51は、バリ取り工具1を、その軸線Lと直交する直交方向に進退可能に保持する。また、バリ取り加工中に、案内面6aおよび切刃形成部7の外周面11をワーク50のバリ除去対象面50aに接触させた状態では、ラジアルフローティングホルダ51は、バリ取り工具1がワーク50から受ける力(反力)に対応する付勢力を発生させてバリ取り工具1をバリ除去対象面50aに接触させている。
【0043】
(作用効果)
本例によれば、バリ取り工具1の軸部2は、第1切刃25および第2切刃26が設けられた切刃形成部7の先端側に、円環状の外周面11を有する案内部6を備える。また、切刃形成部7は、軸線方向Xから見た場合に、その全体が案内部6と重なる。すなわち、切刃形成部7は案内面6aから外周側に突出する部分を有さない。従って、回転する軸部2の外周面11をワーク50のバリ除去対象面50aに接触させてバリ55を除去する際に
、案内部6をバリ除去対象面50aに接触させていれば、バリ除去対象面50aが案内面6aよりも内周側に位置することを防止或いは抑制できる。従って、切刃25、26がバリ除去対象面50aを削ってしまうことを防止或いは抑制できる。
【0044】
すなわち、バリ取り工具1が案内部6を備えていない従来のバリ取り工具100では、
図15(b)に示すように、バリ取り工具100の溝12がバリ除去対象面50aに対向する回転角度位置では、軸部101がバリ除去対象面110aに接近し、バリ除去対象面110aが軸部101の外周面102よりも内側に位置した状態となる。従って、
図15(c)に示すように、バリ取り工具100が更に回転すると、外周面102に設けられた溝104の開口縁である切刃105は、バリ除去対象面110aを、削ってしまうことがある。これに対して、本例のバリ取り工具1を用いた場合には、このような事態の発生を防止或いは抑制できる。
【0045】
また、本例では、切刃25、26を備える切刃形成部7が、案内面6aの後方に連続する外周面11を備える。従って、切刃25、26がバリ除去対象面を削ってしまうことを、より、抑制しやすい。
【0046】
次に、はすば歯車の歯部は、ホブ加工や、スカイピング加工により形成される。これらの切削加工では、一般的な切削加工と比較して、大きなバリ55が発生する。ここで、バリ55が大きくなると、バリの根本部分の強度が高くなる。従って、はすば歯車に発生したバリ55を除去する際には、バリ取り工具1の切刃25、26に負荷がかる。よって、切刃25、26が鋭角の場合には、切刃25、26にチッピングが発生しやすいという問題がある。
【0047】
これに対して、本例では、切刃25、26のすくい面となる溝12の第1内壁面13および第2内壁面14がそれぞれ径方向に延びる。これにより、第1切刃25および第2切刃26は直角となる。従って、本例のバリ取り工具1によれば、
図14に示す切刃105が鋭角のバリ取り工具100を用いた場合と比較して、バリ取り加工時に切刃25、26にチッピングが発生することを防止或いは抑制できる。
【0048】
また、本例では、バリ取り工具1を、ラジアルフローティングホルダ51を介して、工作機械に取り付けてバリ取り動作を行う。従って、バリ除去対象面50aに存在するバリ55の硬度が高く切刃25、26によってバリ55を剪断できない場合などに、バリ55の側から切刃形成部7に働く力によって軸部2が軸線Lと直交する直交方向に移動する。すなわち、バリ55を剪断できない場合には、切刃25、26を備える切刃形成部7がバリ除去対象面50aから離間する方向に移動する。従って、バリ取り加工中に、切刃25、26がバリ55およびバリ除去対象面50aに食い付いて、バリ除去対象面50aを傷つけることを防止或いは抑制できる。また、硬度が高いバリ55の存在により、バリ取り加工中に、切刃25、26にチッピングが発生することを防止或いは抑制できる。
【0049】
さらに、溝12は、軸線方向Xの中央部分の深さが最も深く、中央部分から先端側に向かって浅くなるとともに、中央部分から第2方向X2に向かって浅くなる。従って、切刃25、26によって剪断したバリ55を溝12から外に排出しやすい。
【0050】
また、軸部2は、第1方向X1の端に、案内面6aから第1方向X1に向かって内周側に湾曲する環状の湾曲外周面5bを備える前端部5を備える。従って、バリ取り加工時に、軸部2がバリ除去対象面50aに対して傾斜した場合に、軸部2の先端でバリ除去対象面50aを傷つけることを防止或いは抑制できる。
【0051】
また、本例では、溝12は、軸線L回りの周方向で対向する第1内壁面13および第2
内壁面14を備える。第1内壁面13の外周側の端は第1切刃25であり、第2内壁面14の外周側の端は、第2切刃26である。従って、バリ取り工具1を回転させる回転方向に拘わらず、バリ取り加工を行うことができる。
【0052】
ここで、バリ取り工具1を用いたバリ取り方法によれば、ワーク50のバリ除去対象面50aが湾曲面であっても、バリ除去対象面50aを傷つけることを抑制しながら、バリ除去対象面50aの縁に発生したバリ55を除去できる。
図7は、かさ歯車の歯部の端面に発生したバリを除去するバリ取り動作の説明図である。
【0053】
図7に示しように、かさ歯車60は、円筒部61と、円筒部61の中心線Mに沿った中心線方向の一方側に設けられた傘形状の歯部62と、を備える。歯部62は、円筒部61から外周側に突出する。歯部62は、円筒部61の側に、円筒部61の外周面に連続する円環状の第1テーパー面62aを備える。第1テーパー面62aは、内周側に向かって円筒部61の側に傾斜する。また、歯部62は、円筒部61とは反対側に、円環状の第2テーパー面62bを備える。第2テーパー面62bは、内周側に向かって円筒部61の側に傾斜する。
【0054】
ここで、切削加工により歯部62に歯を形成する際には、第1テーパー面62aの縁、および第2テーパー面62bの縁にバリ65が発生する。第1テーパー面62aの縁に発生したバリ65を除去する際には、
図7(b)に実線で示すように、回転させたバリ取り工具1の案内面6aおよび切刃形成部7を第1テーパー面62aに接触させながら、バリ取り工具1とかさ歯車60とを円筒部61の中心線回りに相対移動させる。また、第2テーパー面62bの縁に発生したバリ65を除去する際には、
図7(b)に破線で示すように、回転させたバリ取り工具1の案内面6aおよび切刃形成部7を第2テーパー面62bに接触させながら、バリ取り工具1とかさ歯車60とを円筒部61の中心線回りに相対移動させる。このようにすれば、バリ除去対象面50aがテーパー面であっても、バリ除去対象面50aを傷つけることなく、バリ除去対象面50aの縁に発生したバリ65を除去できる。
【0055】
(その他のバリ取り方法)
ここで、本例のバリ取り工具1は、軸部2が、切刃形成部7の第2方向X2に、外径寸法が案内部6と同一の円柱部8を備える。従って、バリ除去対象面50aに形成された穴の開口縁に形成されたバリを除去する場合には、バリ取り加工中に案内部6の案内面6aおよび円柱部8の円環状外周面8aをバリ除去対象面50aに接触させた状態でバリ取り工具1を移動させてバリ55を除去することもできる。すなわち、円柱部8の円環状外周面8aを第2の案内面としてバリ除去対象面50aに接触させてバリ取りを行うことができる。この場合には、切刃形成部7の軸線方向Xの両側に切刃形成部7と外径寸法が同一の円環状面(案内面6aおよび円環状外周面8a)が存在するので、バリ取り加工時に、軸部2がバリ除去対象面50aから離間する方向に傾斜することを防止できる。従って、切刃25、26がバリ除去対象面50aに食い付くこともない。よって、バリ取り工具1が、バリ除去対象面50aを傷つけることを防止或いは抑制できる。
【0056】
(変形例)
図8は変形例のバリ取り工具の側面図である。
図8では、切刃形成部7の形状を誇張して示す。
図9は、
図8のバリ取り工具を用いたバリ取り方法の説明図である。本例のバリ取り工具1Aは、切刃形成部7の外径寸法が第2方向X2に向かって小さくなるが、他の構成は上記のバリ取り工具1と同一である。従って、対応する部分には同一の符号を付して、その詳細な説明を省略する。
【0057】
本例のバリ取り工具1Aでは、切刃形成部7は、その外径寸法が第2方向X2に向かっ
て小さくなる。すなわち、切刃形成部7は、案内面6aから第2方向X2に向かって外径寸法が小さくなるテーパー形状の外周面11を備える。外周面11には、一定幅で軸線方向Xに延びる複数の溝12が設けられている。切刃形成部7における溝12の開口縁20のうち、第2方向X2に延びる第1開口縁部分21および第2開口縁部分22は、それぞれ切刃25、26である。ここで、外周面11の傾斜は、ごく僅かである。本例では、切刃形成部7の第1方向X1の端(案内部6との境界)は、案内面6aと同一の直径を備えるが、切刃形成部7の第2方向X2の端の直径は、案内面6aの直径よりも1mm短い。
【0058】
バリ取り工具1Aにおける切刃形成部7の形状は、バリ取り加工中に発生するバリ取り工具1Aの傾斜に対処するためのものである。すなわち、バリ取り工具1Aのシャンク部9(軸部2の後端部分)を、ラジアルフローティングホルダ51を介して、工作機械52のスピンドル52aに取り付けてバリ取り加工を行う際には、バリ取り工具1Aの案内部6および切刃形成部7がワーク50のバリ除去対象面50aに押し付けられる。従って、バリ取り加工中は、バリ除去対象面50aから案内部6および切刃形成部7にかかる反力Fによって、ラジアルフローティングホルダ51がバリ取り工具1Aの軸線Lをバリ除去対象面50aに平行な状態に維持することができない場合が発生する。この場合には、
図9に示すように、工作機械52のスピンドル52aの回転軸Nに対してバリ取り工具1Aの軸線Lが傾斜して、バリ取り工具1Aは、ラジアルフローティングホルダ51に接続された第2方向X2の側がバリ除去対象面50aに接近する。
【0059】
ここで、バリ取り工具1Aが傾斜すると、案内面6aから第2方向X2に離間する切刃25、26の後端側部分(基端側部分)がバリ除去対象面50aに食い付いて、バリ除去対象面50aを傷つける。
【0060】
かかる問題に対して、切刃形成部7の外径寸法は、第2方向X2に向かって小さくなる。従って、バリ取り工具1Aが傾斜した場合でも、案内面6aから第2方向X2に離間する切刃25、26の基端側部分がバリ除去対象面50aに食い付くことを防止或いは抑制できる。よって、バリ取り加工中にバリ取り工具1Aがバリ除去対象面50aを傷つけることを防止或いは抑制できる。
【0061】
(その他の形態)
切刃形成部7に設ける溝12の数は6に限られない。また、各溝12は、第2方向X2に向かって幅が広がっていてもよい。この場合には、第1切刃25および第2切刃26は、第2方向X2に向かって互いに離間する方向に傾斜するものとなる。また、各溝12は、第1方向X1に向かって幅が広がっていてもよい。この場合には、第1切刃25および第2切刃26は、第1方向X1に向かって互いに離間する方向に傾斜するものとなる。また、各溝12は、案内面6aから第2方向X2に向かって、周方向の一方側に傾斜してもよい。
【0062】
(実施例2)
図10は、実施例2のバリ取り工具の斜視図である。
図11は、実施例2のバリ取り工具の側面図である。
図12は、
図11のC-C線断面図である。
図13は、
図11のD-D線断面図である。
図10では、本例のバリ取り工具1Bを前側から見ている。
図12では、バリ取り工具1Bを軸線L1に沿って切断している。
図13では、バリ取り工具1Bの切刃形成部7を軸線L1と直交する方向に切断している。実施例2のバリ取り工具1Bは、上記のバリ取り工具1と対応する構成を備えるので、対応する構成には同一の符号を付して、その詳細な説明は省略する。
【0063】
図10に示すように、本例のバリ取り工具1Bは、円柱形状の軸部2を有する。軸部2は、第1方向X1の端から第2方向X2に向かって、前端部5、案内部6、切刃形成部7
、円柱部8、およびシャンク部9をこの順に備える。前端部5は、円形の前端面5aと、前端面5aから外周側に向かって第2方向X2に湾曲する環状の湾曲外周面5bと、を備える。案内部6は、軸線L1回りの円環状の案内面6aを備える。案内面6aは、軸線方向Xの幅が周方向で一定である。前端部5は、案内部6の案内面6aから第1方向X1に向かって内周側に湾曲する環状の湾曲外周面5bを備える。
【0064】
円柱部8は、円環状外周面8aを備える。円環状外周面8aの外径寸法は、案内面6aの外径寸法と同一である。円環状外周面8aは、軸線方向Xの幅が周方向で一定である。シャンク部9は、円柱部8よりも第2方向X2に位置する部分である。
【0065】
切刃形成部7は、軸部2において、軸線方向Xで案内部6と円柱部8の間に位置する部分である。
図13に示すように、切刃形成部7は、軸線方向Xから見た場合に、その全体が案内部6と重なる。すなわち、
図13に示すように、切刃形成部7は、軸線方向Xから見た場合に、案内面6aよりも外周側に突出する部分を備えていない。
図10、
図13に示すように、切刃形成部7は、軸線L1回りで等角度間隔に設けられた4つの刃部30を備える。また、切刃形成部7は、周方向における各刃部30の間で内周側に窪む4つの凹部31を備える。
図10、
図11に示すように、各刃部30は、周方向の一方側に、案内面6aから第2方向X2に延びる切刃32を備える。従って、切刃形成部7は、軸線L1回りに等角度間隔で設けられた4つの切刃32を備える。
【0066】
各切刃32は、案内面6aから第2方向X2に向かって軸線L1と平行に延びる。ここで、各切刃32は、軸線L1方向から見た場合に、案内面6aと重なる。すなわち、
図10に示すように、各切刃32は、案内部6と同軸かつ同一の外径寸法で案内面6aから第2方向X2に延びる仮想円筒Vを規定した場合に、この仮想円筒Vに接した状態で第2方向X2に延びる。
【0067】
図11、
図13に示すように、各刃部30は、切刃32から径方向を内側に延びるすくい面30aを備える。従って、切刃32のすくい角は90°である。また、各刃部30は、切刃32から周方向に延びる逃げ面30bを備える。
図13に示すように、軸線L1方向から見た場合に、逃げ面30bは案内面6aの内側を直線状に延びる。従って、各切刃32の逃げ角は、0°よりも大きい。よって、各切刃32は、鋭角である。逃げ面30bにおいて、周方向で切刃32とは反対側の端縁30cは、軸線方向Xの中央部分が切刃32の側に窪む円弧形状を備える。端縁30cの第1方向X1の端30dの第1方向X1には、案内面6aが連続する。端縁30cの第2方向X2の端30eの第2方向X2には、円柱部8の円環状外周面8aが連続する。
【0068】
ここで、逃げ面30bの周方向における切刃32とは反対側の端縁30cは、凹部31の開口縁における周方向の一方側の開口縁部分である。凹部31の開口縁における周方向の他方側の開口縁は、凹部31の周方向の他方側に位置する刃部30の切刃32である。各凹部31は、径方向から見た場合に、軸線方向Xに長い。
図12に示すように、各凹部31は、軸線方向Xの中央部分の深さが最も深く、中央部分から第1方向X1に向かって浅くなるとともに、中央部分から第2方向X2に向かって浅くなる。
【0069】
本例のバリ取り工具1Bを用いてワーク50のバリ取りを行う際には、
図6に示すバリ取り工具1Bのバリ取り方向と同様に、バリ取り工具1Bを、ラジアルフローティングホルダ51を介して、工作機械52のスピンドル52aに取り付ける(ステップST1)。しかる後に、工作機械52を駆動してバリ取り工具1Bを軸線L1回りの第2回転方向R2に回転させた状態で、案内面6aおよび切刃形成部7の外周面11をワーク50のバリ除去対象面50aに接触させ、バリ除去対象面50aに沿って移動させる(ステップST2)。これにより、バリ取り工具1Bは、バリ除去対象面50aの縁に存在するバリ55
を剪断する。本例では、バリ取り工具1Bを第1回転方向R2に回転させて使用することはない。
【0070】
なお、切刃32から周方向に延びる逃げ面30bは、湾曲していてもよい。例えば、逃げ面30bは、軸線L1方向から見た場合に、案内面6aの内側で、切刃32から離間するのに伴って案内面6aから離間する方向に湾曲する円弧でもよい。
【0071】
本例においても、バリ取り工具1Bの軸部2は、切刃32が設けられた切刃形成部7の先端側に、円環状の外周面11を有する案内部6を備える。従って、回転する軸部2の切刃形成部7をワーク50のバリ除去対象面50aに接触させてバリ55を除去する際に、案内部6をバリ除去対象面50aに接触させていれば、バリ除去対象面50aが各切刃32よりも内周側に位置することを防止或いは抑制できる。従って、切刃32がバリ除去対象面50aを削ってしまうことを防止或いは抑制できる。
【0072】
なお、本例のバリ取り工具1Bにおいても、切刃形成部7の外径寸法を第2方向X2に向かって小さくしてもよい。すなわち、各刃部30の切刃32を、第2方向X2に向かって僅かに内周側に傾斜させてもよい。この場合には、各切刃32を、案内部6と同軸で、案内面6aから第2方向X2に向かって外径寸法が小さくなる仮想の円錐台を規定した場合に、この仮想の円錐台に接するように設ける。このようにすれば、バリ取り工具1Bをラジアルフローティングホルダ51を介して工作機械52のスピンドル52aに接続してバリ取りを行うバリ取り加工中に、バリ取り工具1Bが傾斜した場合でも、案内面6aから第2方向X2に離間する切刃32の基端側部分がバリ除去対象面50aに食い付くことを防止或いは抑制できる。よって、バリ取り加工中にバリ取り工具1Aがバリ除去対象面50aを傷つけることを防止或いは抑制できる。
【符号の説明】
【0073】
1・1A・1B…バリ取り工具、2…軸部、5a…前端面、5b…湾曲外周面、6…案内部、6a…案内面、7…切刃形成部、8…円柱部、8a…円環状外周面、9…シャンク部、11…外周面、12…溝、13…第1内壁面、14…第2内壁面、17…底面、20…開口縁、21…第1開口縁部分、22…第2開口縁部分、23…第3開口縁部分、24…第4開口縁部分、25…第1切刃、26…第2切刃、30…刃部、30a…すくい面、30b…逃げ面、30c…逃げ面の端縁、31…凹部、32…切刃、50…ワーク、50a…バリ除去対象面、51…ラジアルフローティングホルダ、52…工作機械、52a…スピンドル、55…バリ、60…歯車、61…円筒部、62…歯部、62a…第1テーパー面、62b…第2テーパー面、65…バリ、100…バリ取り工具、101…軸部、102…外周面、104…溝、105…切刃、110a…バリ除去対象面、L・L1…軸線、V…仮想円筒、F…反力、R1…第1回転方向、R2…第2回転方向
【手続補正書】
【提出日】2023-01-18
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
円柱形状の軸部を有し、
前記軸部の軸線に沿った方向を軸線方向の一方側を前方、他方側を後方とした場合に、前記軸部は、軸線回りの円環状の案内面を有する案内部と、前記案内面から前記後方に延びる切刃を備える切刃形成部と、を備え、
前記切刃形成部は、前記案内面の前記後方に連続する外周面と、前記外周面に設けられた溝を備え、
前記溝は、前記案内面から前記後方に延び、前記軸線方向の中央部分の深さが最も深く、前記中央部分から前記前方に向かって浅くなるとともに、前記中央部分から前記後方に向かって浅くなり、
前記切刃形成部における前記溝の開口縁において、前記案内面から前記後方に延びる開口縁部分は、切刃であり、
前記軸線方向から見た場合に、前記切刃形成部は、その全体が前記案内部と重なることを特徴とするバリ取り工具。
【請求項2】
前記溝は、前記軸線回りの周方向で対向する第1内壁面および第2内壁面と、前記周方向に延びて前記第1内壁面の内周側の端と前記第2内壁面の内周側の端とを接続する底面と、を備え、
前記開口縁部分は、前記第1内壁面と前記外周面とが交わる角部、および前記第2内壁面と前記外周面とが交わる角部であることを特徴とする請求項1に記載のバリ取り工具。
【請求項3】
前記溝は、一定幅で前記軸線方向を前記軸線と平行に延びており、
前記第1内壁面および前記第2内壁面は、それぞれ前記軸線を中心とする径方向に延びることを特徴とする請求項2に記載のバリ取り工具。
【請求項4】
前記切刃形成部の外径寸法は、前記軸線方向で一定であることを特徴とする請求項1に記載のバリ取り工具。
【請求項5】
前記切刃形成部の外径寸法は、前記後方に向かって小さくなることを特徴とする請求項1に記載のバリ取り工具。
【請求項6】
前記軸部は、前端に、前記案内面から前記前方に向かって内周側に湾曲する環状の湾曲外周面を備える前端部を備えることを特徴とする請求項1に記載のバリ取り工具。
【請求項7】
前記軸部は、前記切刃形成部の前記後方に、外径寸法が前記案内部と同一の円柱部を備えることを特徴とする請求項1に記載のバリ取り工具。
【請求項8】
前記切刃から内周側に延びる当該切刃のすくい面は、径方向に延び、
前記切刃から周方向に延びる当該切刃の逃げ面は、前記軸線方向から見た場合に前記案内面の内側を延びることを特徴とする請求項1に記載のバリ取り工具。
【請求項9】
請求項1に記載のバリ取り工具における前記軸部の後端部分を、ラジアルフローティングホルダを介して、工作機械に取り付け、
前記ラジアルフローティングホルダおよび前記バリ取り工具を前記軸線回りに回転させた状態で前記案内部および前記切刃形成部をワークのバリ除去対象面に接触させて前記バリ除去対象面に沿って移動させて当該バリ除去対象面のバリを取ることを特徴とするバリ取り方法。
【手続補正2】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0011
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0011】
上記の課題を解決するために、本発明のバリ取り工具は、円柱形状の軸部を有し、前記軸部の軸線に沿った方向を軸線方向の一方側を前方、他方側を後方とした場合に、前記軸部は、軸線回りの円環状の案内面を有する案内部と、前記案内面から前記後方に延びる切刃を備える切刃形成部と、を備え、前記切刃形成部は、前記案内面の前記後方に連続する外周面と、前記外周面に設けられた溝を備え、前記溝は、前記案内面から前記後方に延び、前記軸線方向の中央部分の深さが最も深く、前記中央部分から前記前方に向かって浅くなるとともに、前記中央部分から前記後方に向かって浅くなり、前記切刃形成部における前記溝の開口縁において、前記案内面から前記後方に延びる開口縁部分は、切刃であり、前記軸線方向から見た場合に、前記切刃形成部は、その全体が前記案内部と重なることを特徴とする。
【手続補正3】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0013
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0013】
また、本発明は、切刃を備える切刃形成部が、案内面の後方に連続する外周面を備えるので、切刃がバリ除去対象面を削ってしまうことを、より、抑制しやすい。さらに、本発明は、前記溝は、前記軸線方向の中央部分の深さが最も深く、前記中央部分から前記先端側に向かって浅くなるとともに、前記中央部分から前記第2方向に向かって浅くなる。従って、切刃によって剪断したバリを溝から外に排出しやすい。
【手続補正4】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0017
【補正方法】削除
【補正の内容】