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特開2024-45955限界荷重評価方法および限界荷重評価装置
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024045955
(43)【公開日】2024-04-03
(54)【発明の名称】限界荷重評価方法および限界荷重評価装置
(51)【国際特許分類】
   G01N 3/00 20060101AFI20240327BHJP
   G01N 3/08 20060101ALI20240327BHJP
【FI】
G01N3/00 Z
G01N3/08
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022151064
(22)【出願日】2022-09-22
(71)【出願人】
【識別番号】507250427
【氏名又は名称】日立GEニュークリア・エナジー株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001807
【氏名又は名称】弁理士法人磯野国際特許商標事務所
(72)【発明者】
【氏名】八代醍 健志
(72)【発明者】
【氏名】岩松 史則
(72)【発明者】
【氏名】中根 一起
【テーマコード(参考)】
2G061
【Fターム(参考)】
2G061AA01
2G061AB01
2G061BA15
2G061CA01
2G061CB13
2G061DA11
2G061DA12
2G061EA01
2G061EA04
2G061EC02
(57)【要約】
【課題】検査時に検出された亀裂に対する健全性評価を短時間で実行することで、迅速な保守計画の提供ができる限界荷重評価方法を提供する。
【解決手段】限界荷重評価方法は、n個の近接する複数亀裂を有する構造の延性破壊限界の限界荷重評価方法であって、単一の亀裂条件に対して弾塑性解析した結果のひずみ分布εiと健全状態のひずみε0の比εi0の積で表される式(1)に基づき任意の位置のひずみεpreを補正することでn個の近接する複数亀裂を有する構造のひずみ分布を予想し、得られたひずみ分布から限界荷重(塑性崩壊荷重)を推定評価することを特徴とする。
【数1】
ここで、2≦nである。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
n個の近接する複数亀裂を有する構造の延性破壊限界の限界荷重評価方法であって、
単一の亀裂条件に対して弾塑性解析した結果のひずみ分布εiと健全状態のひずみε0の比εi0の積で表される式(1)に基づき任意の位置のひずみεpreを補正することでn個の近接する複数亀裂を有する構造のひずみ分布を予想し、得られたひずみ分布から限界荷重を評価する
ことを特徴とする限界荷重評価方法。
【数1】
ここで、2≦nである。
【請求項2】
単一亀裂を有する弾塑性解析における表面亀裂幅Lを基準とし、評価する表面亀裂幅Liに対してひずみ分布における位置を、表面亀裂幅比Lj/Liで補正する
ことを特徴とする請求項1に記載の限界荷重評価方法。
【請求項3】
表面楕円亀裂の非貫通亀裂を対象とする場合における表面亀裂幅Ljを基準とし、亀裂深さajおよび板厚tjとのアスペクト比aj/Lj、およびLj/Liが同じとなる解析結果を用い、評価する表面亀裂幅Liに対してひずみ分布における座標をLj/Liの比で補正する
ことを特徴とする請求項1に記載の限界荷重評価方法。
【請求項4】
表面楕円亀裂、貫通亀裂の複数の亀裂条件に対して弾塑性解析に基づく、アスペクト比aj/LjおよびLj/Liを含む各亀裂形状を基準として、ひずみ分布、応力分布および荷重と表面亀裂長比lj/liで基準化された座標を記憶するデータベースを有し、
非破壊検査にて配管の亀裂を計測され、その亀裂の寸法および配置を取得する工程と、
請求項1乃至3のいずれか1項に記載の限界荷重評価方法に基づき、単一亀裂から複数亀裂条件での破壊限界を推定する工程と、を有する
ことを特徴とする限界荷重評価方法。
【請求項5】
前記弾塑性解析には、式(2)および式(3)に記載のRambelg-Ossgood、べき乗塑性体で定義された特性を用いる
ことを特徴とする請求項1に記載の限界荷重評価方法。
【数2】
ここで、εは全ひずみ、σは応力、Eはヤング率であり、a、b、mは塑性特性項に対する任意の材料定数である。
【請求項6】
近接した複数亀裂を有する構造の限界荷重評価装置であって、
複数の形状条件の単一亀裂に対する弾塑性解析結果を記憶する記憶部と、
前記記憶部から取得した情報と検査装置で得らえた評価対象の亀裂条件に基づいて、
単一の亀裂条件に対して弾塑性解析した結果のひずみ分布εiと健全状態のひずみε0の比εi0の積で表される式(1)に基づき任意の位置のひずみεpreを補正することでn個の近接する複数亀裂を有する構造のひずみ分布を予想し、得られたひずみ分布から限界荷重(塑性崩壊荷重)を推定評価する演算部と、を有する
ことを特徴とする限界荷重評価装置。
【数1】
ここで、2≦nである。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば発電プラントに使用される配管において、特に経年劣化や疲労損傷が予想される部位に対する健全性を評価する限界荷重評価方法および限界荷重評価装置に関する。
【背景技術】
【0002】
高経年化が進む例えば発電プラントにおいて、経年劣化した機器に対する健全性評価技術の高精度化は、安全性の向上やプラント寿命の延長に対して重要である。
【0003】
従来の健全性評価技術では、定期検査時に非破壊検査にて亀裂が検出された場合、当該機器の運用条件から想定される経年劣化事象を考慮した亀裂進展評価や限界亀裂寸法評価が行われ、次回点検までに健全性を維持できることが確認される。
【0004】
また、一般的に、健全性評価における限界亀裂寸法の導出は簡易評価式や有限要素法を用いて行われる。簡易評価式を用いた健全性評価では、特許文献1に示されているように、予め定められた寸法以下の小さい亀裂の場合には非線形破壊力学評価法に、大きな寸法の亀裂については極限荷重評価法に基づく簡易評価式で評価される。そのため、近接した複数亀裂を有する場合については同一面上に亀裂を投影して評価するなど、過度に安全側の評価となる場合が想定される。
【0005】
有限要素法を用いた限界評価では、特許文献2に示されているように、応力集中部の幾何形状や検査で検出された亀裂形状に合わせて解析モデルを作成して計算する工程が必要であり、条件によっては非常に大きな計算コストが要求される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2009-14683号公報
【特許文献2】特開2014-149246号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
このため、非破壊検査により得られた亀裂形状を反映した限界荷重評価が速やかに実行できず、保守計画立案に時間を要することで発電プラントの停止期間の延長に繋がることが多かった。
【0008】
また、非破壊検査で得られた亀裂形状を短時間・効率的に解析モデルへ反映し、短期間で亀裂進展評価結果を提供する手段が存在しないため、安全率を大きくとった保守的な寿命・余寿命評価が行われている。そのため、発電プラント設備の余寿命を短く見積もり、発電プラント全体の効率低下を招いている。
【0009】
本発明は、前記の課題を解決するための発明であって、検査時に検出された亀裂に対する健全性評価を短時間で実行することで、迅速な保守計画の提供ができる限界荷重評価方法および限界荷重評価装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
前記の課題を解決するために、本発明の限界荷重評価方法は、n個の近接する複数亀裂を有する構造の延性破壊限界の限界荷重評価方法であって、単一の亀裂条件に対して弾塑性解析した結果のひずみ分布εiと健全状態のひずみε0の比εi0の積で表される式(1)に基づき任意の位置のひずみεpreを補正することでn個の近接する複数亀裂を有する構造のひずみ分布を予想し、得られたひずみ分布から限界荷重(塑性崩壊荷重)を推定評価することを特徴とする。
【数1】
ここで、2≦nである。
【0011】
また、本発明の限界荷重評価装置は、近接した複数亀裂を有する構造の限界荷重評価装置であって、複数の形状条件の単一亀裂に対する弾塑性解析結果を記憶する記憶部と、前記記憶部で取得した情報と検査装置で得らえた評価対象の亀裂条件に基づいて、単一の亀裂条件に対して弾塑性解析した結果のひずみ分布εiと健全状態のひずみε0の比εi0の積で表される式(1)に基づき任意の位置のひずみεpreを補正することでn個の近接する複数亀裂を有する構造のひずみ分布を予想し、得られたひずみ分布から破壊限界(塑性崩壊荷重)を推定評価する演算部と、を有することを特徴とする。
本発明のその他の態様については、後記する実施形態において説明する。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、検査時に検出された近接した複数亀裂を有する構造に対する限界荷重評価を短時間で実行することができ、迅速な保守計画の提供が可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】実施形態に係る限界荷重評価システムにおける評価手順を示すフロー図である。
図2】単一の貫通亀裂を有する構造に対するひずみ分布のDB化のための解析に供する亀裂寸法比条件の例を示す図である。
図3】単一の表面半楕円亀裂を有する構造に対するひずみ分布のDB化のための解析に供する亀裂寸法比条件の例を示す図である。
図4】近接した複数の貫通亀裂を有する構造の模式を示す図である。
図5】単一の貫通亀裂を有する構造の模式を示す図である。
図6】近接する複数の貫通亀裂を有する平板の弾塑性解析結果におけるひずみ分布を示す図である。
図7】実施形態に基づき近接する複数の貫通亀裂を有する平板のひずみ分布を予測した結果を示す図である。
図8図6および図7に示した近接する複数の貫通亀裂を有する平板の貫通亀裂の端部から水平方向へのひずみ分布を比較した結果を示す図である。
図9】実施形態に係る評価装置の構成を示すブロック図である。
図10】近接した複数の表面半楕円亀裂を有する構造の模式を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
本発明を実施するための実施形態について、適宜図面を参照しながら詳細に説明する。
図1は、実施形態に係る限界荷重評価システム1における評価手順を示すフロー図である。図1に示す限界荷重評価システム1は、ここでは例えば発電プラント設備における機器の、特に限界荷重(塑性崩壊荷重)を評価する。限界荷重評価システム1における処理工程の概略を示すと、これは事前に評価対象部の健全状態での弾塑性解析結果と複数の亀裂形状を想定した単一亀裂モデルに対して弾塑性解析を行いDB化しておく事前準備工程11と、定期検査時に非破壊検査による点検を行い評価対象部の亀裂形状を測定する現地計測工程12と、測定した亀裂形状・配置に合わせてひずみ分布を補正・推定し、ひずみ分布に基づき限界荷重を算出し健全性を評価する評価工程13から構成されている。
【0015】
本実施形態では、事前準備工程11と現地計測工程12が主に人手により事前に実行されており、評価工程13が計算機などにより実行されることを想定している。なお、ここでは近接した複数の貫通亀裂を有する平板を対象とした評価について述べる。
【0016】
<事前準備工程11>
まず、事前準備工程11(第1段階)では、具体的には処理ステップS10において、評価対象で想定される複数の亀裂形状に対して単一亀裂モデルで弾塑性解析を行う。次に処理ステップS11では、得られた弾塑性解析結果の亀裂形状・位置およびひずみ分布データをDB化しておく。ここで、弾塑性解析には式(2)および式(3)に記載のRambelg-Ossgood、べき乗塑性体で定義された構成式を用いることが推奨される。
【0017】
【数2】
ここで、εは全ひずみ、σは応力、Eはヤング率である。また、a、b、mは塑性特性項に対する任意の材料定数である。
【0018】
事前に用意するDBは,亀裂寸法(表面亀裂幅L、深さa)や板厚tを基準として複数用意する。
【0019】
図2は、単一の貫通亀裂を有する構造に対するひずみ分布のDB化のための解析に供する亀裂寸法比条件の例を示す図である。図3は、単一の表面半楕円亀裂を有する構造に対するひずみ分布のDB化のための解析に供する亀裂寸法比条件の例を示す図である。
【0020】
例えば、図2は単一の貫通亀裂に対して評価する場合であり,ここでは板厚t-亀裂幅Lの比L/tを4条件計算する場合を示している。表面半楕円亀裂でモデル化する場合、亀裂の深さaもパラメータとして考慮する必要があるため、図3の様に亀裂幅Lと深さaそれぞれに4条件(合計16条件)計算するなど,求めるひずみ分布εの条件数が増える。
【0021】
なお,ここではそれぞれ4条件としてDB化を検討した例を示したが,条件数はより多く、細かく設定してDB化した方が高精度にひずみ分布εを推定できるのは言うまでもない。また,実測された亀裂寸法が計算結果に一致しない場合にはひずみ分布εを、亀裂寸法を基準に内挿・外挿することで近似的に求めることができる。
【0022】
<現地計測工程12>
つぎに、定期検査時に非破壊検査による点検を行い評価対象部の亀裂形状を測定する現地計測工程12(第2段階)では、具体的には処理ステップS12において一般的に亀裂の検出に用いられるUT検査(超音波探傷検査)などにより亀裂形状および亀裂の配置を計測する。
【0023】
<評価工程13>
得られた亀裂形状・位置情報を基に、構造の限界荷重を評価する評価工程13(第3段階)では、第2段階の検査で評価した評価対象の亀裂分布データを用い、第1段階でDB化した弾塑性解析結果を用いてひずみ分布を推定し、限界荷重を算出して健全性評価結果を提供する。具体的には処理ステップS13において、単一の亀裂に対して弾塑性解析した結果のひずみ分布εと健全状態のひずみεの比ε/εの積で表される式(1)に基づき任意位置のひずみεpreを推定する。複数の近接する亀裂を有する構造に対する場合は、その個数nに合わせて繰返しひずみ比を掛け合わせることで最終的にひずみ分布が推定される。
【0024】
【数1】
ここで、2≦nである。
【0025】
限界荷重は、得られたひずみ分布に基づき、処理ステップS14において算出され、処理ステップS15において実機で負荷される荷重と比較することで限界荷重結果が提供される。
【0026】
図4は、近接した複数の貫通亀裂を有する構造の模式を示す図である。図5は、単一の貫通亀裂を有する構造の模式を示す図である。図4は、2つの貫通亀裂21(表面亀裂幅L),貫通亀裂22(表面亀裂幅L)を有する平板20に引張荷重もしくは変位23がかかっている状況を示した模式図である。本実施形態では事前に、図5に示す貫通亀裂28(表面亀裂幅L)の単一亀裂条件に対して解析して得たひずみ分布を用いて、図4に示したような複数亀裂を有する構造での限界荷重を推定する。
【0027】
ここで、図4の2つの貫通亀裂を有する平板での限界荷重を推定する場合、まずは貫通亀裂21に対して,任意の表面亀裂幅Lの単一亀裂に対する解析で得られたひずみ分布の座標を、表面亀裂長比L/Lで補正しマッピングする。このとき得られたひずみ分布をεとする。次に,もう一つの貫通亀裂22に対しても同様に表面亀裂幅Lの単一亀裂に対する解析で得られたひずみ分布の座標を、表面亀裂長比L/Lで補正しマッピングする。このとき得られたひずみ分布をεとする。
【0028】
得られたそれぞれのひずみ分布ε,εを用い、式(1)に従い任意位置のひずみ分布を補正することで,図4の2つの貫通亀裂を有する平板でのひずみ分布を得ることができる。得られたひずみ分布εpreを用い,亀裂周辺のひずみ分布を基準とすることで限界荷重を推定することができる。
【0029】
図6は、近接する複数の貫通亀裂を有する平板の弾塑性解析結果におけるひずみ分布を示す図である。図7は、実施形態に基づき近接する複数の貫通亀裂を有する平板のひずみ分布を予測した結果を示す図である。
【0030】
すなわち、図6は、前記で説明した近接した2つの亀裂を有する平板に対する弾塑性解析結果における亀裂周辺のひずみ分布を示した図であり、図7は実施形態に基づき図6と同じ亀裂条件に対して評価を行った結果得られたひずみ分布εpreである。
【0031】
図8は、図6および図7に示した近接する複数の貫通亀裂を有する平板の貫通亀裂21の端部から水平方向へのひずみ分布を比較した結果を示す図である。図8中の符号44は亀裂端部からの距離xであり、符号43はひずみ分布出力位置を示す。本比較結果より、本実施形態により得られたひずみ分布(εpre)は、弾塑性解析により得らえたひずみ分布(εFEA)を正確に再現できており、本手法が有効であることがわかる。
【0032】
図9は、本実施形態に係る評価装置31の構成を示すブロック図である。本実施形態に係る評価装置31は、通信部33、演算部34、記憶部35、出力部41、および入力部42を含んで構成される。記憶部35は、弾塑性解析結果を保管するデータベース部39と検査で得られた亀裂形状や位置情報を補完する亀裂情報部40で構成される。データベース部39および亀裂情報部40へのデータ保存は直接でもいいが、通信部33、ネットワークNWを通してダウンロードする方法でもよい。
【0033】
演算部34は、亀裂の相互座標を評価する亀裂位置評価部36、亀裂位置に合わせたひずみ分布の推定を行うひずみ分布推定部37および推定されたひずみ分布に基づき限界荷重を算出する限界荷重評価部38で構成される。ここで、評価装置31は、検査装置30との物理的な位置関係は特に限定されず、異なる場所に配置されていてもよい。ひずみ分布推定部37では、前述の処理ステップS13で示した数式(1)に基づきひずみ分布および限界荷重を推定する。
【0034】
入力部42は、キーボードやマウスなどのコンピュータに指示を入力するための装置であり、プログラムの起動などの指示を入力する。出力部41は、ディスプレイなどであり、評価装置31による処理の実行状況や実行結果などを表示する。通信部33は、他の装置と各種データやコマンドを交換する。
【0035】
演算部34は、中央演算処理装置(CPU)であり、メモリに格納される各種プログラムを実行する。記憶部35は、外部記憶装置であり、評価装置31が処理を実行するための各種データを保存する。
【0036】
<変形例>
図4は、2つの貫通亀裂21(表面亀裂幅L),貫通亀裂22(表面亀裂幅L)を有する平板20について説明したが、これに限定されるわけではない。
【0037】
図10は,2つの表面半楕円亀裂を有する平板に対して引張荷重もしくは変位23がかかっている状況を示した模式図である。表面半楕円亀裂の場合,貫通亀裂の条件に対して亀裂深さa1、a2がパラメータとして追加されるが,評価手順としては同様である。
【0038】
表面楕円亀裂の非貫通亀裂を対象とする場合における表面亀裂幅Ljを基準とし、評価する表面亀裂幅Liとすると、亀裂深さajおよび板厚tjとのアスペクト比aj/Lj、およびLj/Liが同じとなる解析結果を用い、評価する表面亀裂幅Liに対してひずみ分布における座標をLj/Liの比で補正する。
【0039】
以上説明した本実施形態の限界荷重評価方法および限界荷重評価装置は、次の特徴を有する。
(1)n個の近接する複数亀裂を有する構造の延性破壊限界の限界荷重評価方法であって、単一の亀裂条件に対して弾塑性解析した結果のひずみ分布εiと健全状態のひずみε0の比εi0の積で表される式(1)に基づき任意の位置のひずみεpreを補正することでn個の近接する複数亀裂を有する構造のひずみ分布を予想し、得られたひずみ分布から限界荷重(塑性崩壊荷重)を評価することを特徴とする。
【数1】
ここで、2≦nである。
【0040】
(2)(1)において、単一亀裂を有する弾塑性解析における表面亀裂幅Lを基準とし、評価する表面亀裂幅Liに対してひずみ分布における位置(座標)を、表面亀裂幅比Lj/Liで補正することを特徴とする。
【0041】
(3)(1)において、表面楕円亀裂の非貫通亀裂を対象とする場合における表面亀裂幅Ljを基準とし、亀裂深さajおよび板厚tjとのアスペクト比aj/Lj、およびLj/Liが同じとなる解析結果を用い、評価する表面亀裂幅Liに対してひずみ分布における位置(座標)をLj/Liの比で補正することを特徴とする(図10参照)。
【0042】
(4)限界荷重評価方法は、表面楕円亀裂、貫通亀裂の複数の亀裂条件に対して弾塑性解析に基づく、アスペクト比aj/LjおよびLj/Liを含む各亀裂形状を基準として、ひずみ分布、応力分布および荷重と表面亀裂長比lj/liで基準化された座標を記憶するデータベースを有し、非破壊検査にて配管の亀裂を計測され、その亀裂の寸法および配置を取得する工程と、前記(1)乃至(3)のいずれかに記載の限界荷重評価方法に基づき、単一亀裂から複数亀裂条件での破壊限界を推定する工程と、を有する。
【0043】
(5)(1)において、弾塑性解析には、式(2)および式(3)に記載のRambelg-Ossgood、べき乗塑性体で定義された特性を用いることを特徴とする。
【数2】
ここで、εは全ひずみ、σは応力、Eはヤング率であり、a、b、mは塑性特性項に対する任意の材料定数である。
【0044】
(6)近接した複数亀裂を有する構造の限界荷重評価装置(例えば、評価装置31)であって、複数の形状条件の単一亀裂に対する弾塑性解析結果を記憶する記憶部35と、記憶部35から取得した情報と検査装置30で得らえた評価対象の亀裂条件に基づいて、単一の亀裂条件に対して弾塑性解析した結果のひずみ分布εiと健全状態のひずみε0の比εi0の積で表される式(1)に基づき任意の位置のひずみεpreを補正することでn個の近接する複数亀裂を有する構造のひずみ分布を予想し、得られたひずみ分布から限界荷重(塑性崩壊荷重)を推定評価する演算部34と、を有することを特徴とする。
【数1】
ここで、2≦nである。
【符号の説明】
【0045】
1 限界荷重評価システム
11 事前準備工程
12 現地計測工程
13 評価工程
20 平板
21,22,28 貫通亀裂
23 変位
30 検査装置
31 評価装置(限界荷重評価装置)
33 通信部
34 演算部
35 記憶部
36 亀裂位置評価部
37 ひずみ分布推定部
38 限界荷重評価部
39 データベース部
40 亀裂情報部
41 出力部
42 入力部
43 符号(ひずみ分布出力位置)
44 符号(亀裂端部からの距離x)
,a 亀裂深さ
,L,L 表面亀裂幅
t 板厚
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10