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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024045959
(43)【公開日】2024-04-03
(54)【発明の名称】エアコンプレッサ
(51)【国際特許分類】
   F04B 49/10 20060101AFI20240327BHJP
   F04B 39/16 20060101ALI20240327BHJP
【FI】
F04B49/10 331A
F04B39/16 D
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022151070
(22)【出願日】2022-09-22
(71)【出願人】
【識別番号】000175272
【氏名又は名称】三浦工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110004082
【氏名又は名称】弁理士法人北大阪特許事務所
(74)【代理人】
【識別番号】100141092
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 英生
(72)【発明者】
【氏名】井上 陽貴
【テーマコード(参考)】
3H003
3H145
【Fターム(参考)】
3H003AA05
3H003AC02
3H003BD07
3H003BG02
3H003CF01
3H145AA05
3H145AA12
3H145AA26
3H145AA32
3H145AA42
3H145BA43
3H145CA21
3H145EA20
3H145EA34
(57)【要約】
【課題】潤滑油を用いて必要箇所の摩擦緩和等を行うことができるとともに、より適切な時期に潤滑油の交換を行うことが可能となるエアコンプレッサを提供する。
【解決手段】モータ52によって駆動され、空気Aaを圧縮するように構成された圧縮機構1と、前記圧縮機構1において潤滑油Luを用いて摩擦緩和および/または冷却がなされる特定箇所を通り、当該潤滑油Luを循環させる潤滑油循環回路Xと、を有するエアコンプレッサ100であって、前記潤滑油循環回路Xに、前記潤滑油Luの劣化度合を示す劣化情報を検知する油劣化センサが配置されたエアコンプレッサ100とする。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
モータによって駆動され、空気を圧縮するように構成された圧縮機構と、
前記圧縮機構において潤滑油を用いて摩擦緩和および/または冷却がなされる特定箇所を通り、当該潤滑油を循環させる潤滑油循環回路と、を有するエアコンプレッサであって、
前記潤滑油循環回路に、前記潤滑油の劣化度合を示す劣化情報を検知する油劣化センサが配置されたことを特徴とするエアコンプレッサ。
【請求項2】
前記潤滑油循環回路は、前記潤滑油から不純物を除去するオイルフィルタを通るように構成されており、
前記油劣化センサは、前記オイルフィルタの後段側であって前記特定箇所の前段側の位置に配置されたことを特徴とする請求項1に記載のエアコンプレッサ。
【請求項3】
前記潤滑油循環回路は、前記潤滑油を冷却するオイルクーラを通るように構成されており、
前記油劣化センサは、前記特定箇所の後段側であって前記オイルクーラの前段側の位置に配置されたことを特徴とする請求項1に記載のエアコンプレッサ。
【請求項4】
前記特定箇所を通過した前記潤滑油が一時的に溜まる油溜り部を有し、
前記潤滑油循環回路は、前記油溜り部を通るように構成されており、
前記油劣化センサは、前記油溜り部に配置されたことを特徴とする請求項1に記載のエアコンプレッサ。
【請求項5】
給油式であり、圧縮された前記空気から前記潤滑油を分離して貯留するオイルセパレータを有する請求項1に記載のエアコンプレッサであって、
前記潤滑油循環回路は、前記オイルセパレータを通るように構成されており、
前記油劣化センサは、前記オイルセパレータに配置されたことを特徴とするエアコンプレッサ。
【請求項6】
給油式である請求項1に記載のエアコンプレッサであって、
圧縮された前記空気から前記潤滑油を分離して貯留するオイルセパレータと、
前記潤滑油を冷却するオイルクーラと、を有し、
前記潤滑油循環回路は、前記オイルセパレータおよび前記オイルクーラを順に通るように構成されており、
前記油劣化センサは、前記オイルセパレータの後段側であって前記オイルクーラの前段側の位置に配置されたことを特徴とするエアコンプレッサ。
【請求項7】
前記油劣化センサは、前記劣化情報として前記潤滑油の比誘電率を検知することを特徴とする請求項1から請求項6の何れかに記載のエアコンプレッサ。
【請求項8】
前記モータは、電気モータまたは蒸気モータである請求項1から請求項6の何れかに記載のエアコンプレッサ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、空気を圧縮する圧縮機構を有したエアコンプレッサに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、圧縮空気を利用する各分野においてエアコンプレッサが利用されている。エアコンプレッサとしては、モータを用いて空気を圧縮するように構成された圧縮機構を備えるものが広く利用されている。このような圧縮機構には圧縮機の本体や軸受部分など、摩擦緩和等(摩擦緩和と冷却の一方または両方)を要する箇所が含まれる。
【0003】
そこでエアコンプレッサにおいては、このような箇所を通るように潤滑油を循環させ、潤滑油を用いて摩擦緩和等を行うようにしたものが提案されている。例えば特許文献1には、圧縮機本体を含む経路に潤滑油を循環させるようにした空気圧縮システムが開示されている。
【0004】
しかし潤滑油は徐々に劣化するため、劣化し過ぎた潤滑油をそのまま使い続けると、潤滑不良による故障や伝熱不良による温度異常といった不具合を生じる虞がある。このような不具合を未然に防ぐための措置として、一般的にエアコンプレッサに対しては潤滑油の交換が実施される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2021-88938号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら潤滑油の劣化の進み具合は、エアコンプレッサの使用頻度や使用環境等によって大きく変動するため、潤滑油を適切な時期に交換することは容易ではない。例えば、潤滑油の交換を定期的に行う場合には、潤滑油の劣化があまり進んでいないにも関わらず無駄な交換がなされてしまうことや、逆に潤滑油の劣化が進み過ぎていても交換がなされないといった事態が生じ得る。
【0007】
本発明は上述した問題点に鑑み、潤滑油を用いて必要箇所の摩擦緩和等を行うことができるとともに、より適切な時期に潤滑油の交換を行うことが可能となるエアコンプレッサの提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明に係るエアコンプレッサは、モータによって駆動され、空気を圧縮するように構成された圧縮機構と、前記圧縮機構において潤滑油を用いて摩擦緩和および/または冷却がなされる特定箇所を通り、当該潤滑油を循環させる潤滑油循環回路と、を有するエアコンプレッサであって、前記潤滑油循環回路に、前記潤滑油の劣化度合を示す劣化情報を検知する油劣化センサが配置された構成とする。本構成によれば、潤滑油を用いて必要箇所の摩擦緩和等を行うことができるとともに、より適切な時期に潤滑油の交換を行うことが可能となる。
【0009】
上記構成としてより具体的には、前記潤滑油循環回路は、前記潤滑油から不純物を除去するオイルフィルタを通るように構成されており、前記油劣化センサは、前記オイルフィルタの後段側であって前記特定箇所の前段側の位置に配置された構成としても良い。
【0010】
上記構成としてより具体的には、前記潤滑油循環回路は、前記潤滑油を冷却するオイルクーラを通るように構成されており、前記油劣化センサは、前記特定箇所の後段側であって前記オイルクーラの前段側の位置に配置された構成としても良い。
【0011】
上記構成としてより具体的には、前記特定箇所を通過した前記潤滑油が一時的に溜まる油溜り部を有し、前記潤滑油循環回路は、前記油溜り部を通るように構成されており、前記油劣化センサは、前記油溜り部に配置された構成としても良い。
【0012】
また、給油式であり、圧縮された前記空気から前記潤滑油を分離して貯留するオイルセパレータを有する上記構成のエアコンプレッサにおいて、前記潤滑油循環回路は、前記オイルセパレータを通るように構成されており、前記油劣化センサは、前記オイルセパレータに配置された構成としても良い。
【0013】
また、給油式である上記構成のエアコンプレッサにおいて、圧縮された前記空気から前記潤滑油を分離して貯留するオイルセパレータと、前記潤滑油を冷却するオイルクーラと、を有し、前記潤滑油循環回路は、前記オイルセパレータおよび前記オイルクーラを順に通るように構成されており、前記油劣化センサは、前記オイルセパレータの後段側であって前記オイルクーラの前段側の位置に配置された構成としても良い。
【0014】
上記構成としてより具体的には、前記油劣化センサは、前記劣化情報として前記潤滑油の比誘電率を検知する構成としても良い。また上記構成としてより具体的には、前記モータは、電気モータまたは蒸気モータである構成としても良い。
【発明の効果】
【0015】
本発明に係るエアコンプレッサによれば、潤滑油を用いて必要箇所の摩擦緩和等を行うことができるとともに、より適切な時期に潤滑油の交換を行うことが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】第1実施形態に係るエアコンプレッサの概略的な構成を示すブロック図である。
図2】第2実施形態に係るエアコンプレッサの概略的な構成を示すブロック図である。
図3】第3実施形態に係るエアコンプレッサの概略的な構成を示すブロック図である。
図4】第4実施形態に係るエアコンプレッサの概略的な構成を示すブロック図である。
図5】第5実施形態に係るエアコンプレッサの概略的な構成を示すブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明の各実施形態について各図面を参照しながら説明する。
【0018】
1.第1実施形態
まず本発明の第1実施形態について説明する。図1は、第1実施形態に係るエアコンプレッサ100の概略的な構成を示すブロック図である。なお当該ブロック図では、空気を圧縮するように構成された圧縮機構、および潤滑油の循環回路に関わる構成要素が主に示されている。
【0019】
本図に示すようにエアコンプレッサ100は、圧縮機構1、オイルセパレータ2、自動温度調節弁3、オイルクーラ4、およびオイルフィルタ5を備える。また圧縮機構1は、圧縮機本体51、電気モータ52、モータジャケット53、および圧縮機軸受54を有している。エアコンプレッサ100は給油式エアコンプレッサであり、外部から吸込んだ空気Aaを圧縮機本体51により圧縮して圧縮空気Abとし、これを例えば各種の空圧機器などへ吐出することが可能である。
【0020】
また図1において、白抜き矢印は空気Aaおよび圧縮空気Abの経路を概略的に示し、太線矢印は潤滑油Luが循環する潤滑油循環回路Xを概略的に示している。本実施形態では、圧縮機本体51から出た圧縮空気Abは、オイルセパレータ2を通ってエアコンプレッサ100から吐出される。なお吐出後の圧縮空気Abは、空圧機器へ送られる前に空冷または水冷のアフタークーラで冷却されてもよい。
【0021】
潤滑油循環回路Xは、圧縮機構1において潤滑油Luを用いて摩擦緩和および/または冷却がなされる箇所(以下、「特定箇所Z」と称することがある。)を通り、潤滑油Luを循環させる経路である。なお本実施形態の例では、圧縮機本体51、モータジャケット53、および圧縮機軸受54が特定箇所Zに該当する。
【0022】
潤滑油循環回路Xは、圧縮機本体51からオイルセパレータ2、自動温度調節弁3、オイルクーラ4、オイルフィルタ5、およびモータジャケット53を順に通って、潤滑油Luが圧縮機本体51へ流れる経路を有する。また潤滑油循環回路Xは、オイルフィルタ5とモータジャケット53の間の位置α1で分岐し、圧縮機軸受54を通って圧縮機本体51へ潤滑油Luが流れる経路も有する。また潤滑油循環回路Xは、オイルクーラ4とオイルフィルタ5の間の位置α2と自動温度調節弁3とを繋ぐ補助経路Xaを有する。
【0023】
圧縮機本体51は、電気モータ52によって駆動され、空気Aaを圧縮して圧縮空気Abを生成するように動作する。本実施形態の例では、圧縮機本体51として回転式(スクリュ式)の圧縮機が採用されており、圧縮機本体51では潤滑油Luを用いて、スクリュロータの摩擦緩和と冷却(圧縮熱や摩擦熱の除去)を行うことが可能となっている。また、圧縮機本体51により生成された圧縮空気Abには、潤滑油Luが含まれる。なお電気モータ52は、商用電源等から供給される電気エネルギーで回転駆動するように構成されている。
【0024】
モータジャケット53は、電気モータ52を覆うように配置されており、潤滑油Luとの熱交換により電気モータ52を冷却する役割も果たす。圧縮機軸受54は、圧縮機本体51の軸を支持するように構成されており、潤滑油Luを用いて、圧縮機本体51の軸との摩擦を緩和することが可能となっている。
【0025】
オイルセパレータ2は、圧縮機本体51から圧縮空気Abを受け、この圧縮空気Abに含まれる潤滑油Luを分離させて一時的に貯留する。なお圧縮機本体51からオイルセパレータ2に至る潤滑油循環回路Xの部分は、圧縮空気Abに含まれた潤滑油Luの経路である。
【0026】
自動温度調節弁3は、潤滑油Luの温度を調節する役割を果たす三方弁である。本実施形態の例の自動温度調節弁3は、例えば潤滑油Luの温度が所定の基準値より低いときに、補助経路Xaを通る潤滑油Luの量が増えるように動作する。基準値より高い温度の潤滑油Luは、オイルクーラ4を通過することになり、これにより潤滑油Luの温度を下げることが可能である。
【0027】
オイルクーラ4は、空冷または水冷によって潤滑油Luを冷却するように構成されている。オイルフィルタ5は、潤滑油Luから鉄錆やスラッジ等の不純物を除去するフィルタである。
【0028】
潤滑油循環回路Xを循環する潤滑油Luは、圧縮機本体51において摩擦緩和の役割を果たした後、オイルセパレータ2に流入して圧縮空気Abから分離される。この潤滑油Luは、オイルセパレータ2に一時的に貯留した後、自動温度調節弁3を経て、オイルクーラ4を通過する際に冷却される。この冷却された潤滑油Luは、オイルフィルタ6において不純物が除去された後、モータジャケット53に流入し、電気モータ52の冷却に利用される。位置α1で分岐した一部の潤滑油Luは、圧縮機軸受54を通って圧縮機本体51に流入する。圧縮機軸受54を通る潤滑油Luは、圧縮機軸受54と圧縮機本体51の主軸との摩擦の緩和に利用される。
【0029】
また潤滑油循環回路Xには、潤滑油Luの劣化度合を示す劣化情報を検知する油劣化センサSが配置される。これにより、油劣化センサSの検知結果の情報を取得して、潤滑油Luの劣化度合を監視することが可能となり、潤滑油Luを適切な時期に交換することが可能となる。例えば、油劣化センサSの検知結果に基づく潤滑油Luの劣化度合が所定の基準値に達した時期に潤滑油Luを交換するようにすることで、潤滑油Luの劣化があまり進んでいないにも関わらず無駄な交換がなされてしまうことや、逆に潤滑油Luの劣化が進み過ぎていても交換がなされないといった事態を防ぐことが可能となる。なお、油劣化センサSの検知結果の情報が所定の管理装置に送信されるようにしておき、当該管理装置によって潤滑油Luの劣化度合が監視されるようにしても良い。
【0030】
ここで出願人は、潤滑油についてRBOT(回転ボンベ式酸化安定度試験)による劣化試験を実施し、潤滑油の比誘電率、動粘度、および密度について、当該潤滑油の劣化度合との相関性の調査を行った。その結果、特に潤滑油の比誘電率は、当該潤滑油の劣化度合と良好な相関性を有することが判明した。そこで本実施形態では、上記の劣化情報として潤滑油Luの比誘電率を検知するセンサを、油劣化センサSとして採用することにした。
【0031】
また、油劣化センサSを配置する位置は、潤滑油循環回路Xにおける任意の位置とすることが可能であるが、図1に模式的に示した位置P1a、位置P1b、および位置P1cの何れかの位置とすることが好ましい。なお油劣化センサSは、位置P1a、位置P1b、および位置P1cのうちの一箇所に配置されても良く、複数個所のそれぞれに配置されても良い。
【0032】
位置P1aは、オイルセパレータ2において潤滑油Luが一時的に貯留する位置である。このような位置P1aでは潤滑油Luの流動が比較的小さいため、ここに油劣化センサSを配置することにより、潤滑油Luの比誘電率を安定的に検知することが容易となる。
【0033】
位置P1bは、特定箇所Zの後段側であってオイルクーラ4の前段側の位置である。このような位置P1bでは、潤滑油Luの温度が比較的高いため、潤滑油Luのスラッジが析出し難くなっている。そのため位置P1bに油劣化センサSを配置することにより、油劣化センサSにスラッジが付着し難くなり、潤滑油Luの比誘電率を精度良く検知することが容易となる。
【0034】
位置P1cは、オイルフィルタ6の後段側であって特定箇所Zの前段側の位置である。このような位置P1cでは、潤滑油Luは、オイルフィルタ6によって不純物が除去されてから特定箇所Zで利用される前までの状態であるため、含まれる不純物が比較的少なくなっている。そのため位置P1cに油劣化センサSを配置することにより、油劣化センサSに不純物が付着し難くなり、潤滑油Luの比誘電率を精度良く検知することが容易となる。
【0035】
2.第2実施形態
次に本発明の第2実施形態について説明する。以下の説明では、第1実施形態と異なる事項の説明に重点を置き、第1実施形態と共通する事項については説明を省略することがある。
【0036】
図2は、第2実施形態に係るエアコンプレッサ200の概略的な構成を示すブロック図である。本図に示すようにエアコンプレッサ200は、圧縮機構1、オイルセパレータ2、自動温度調節弁3、オイルクーラ4、オイルフィルタ5、オイルポンプ6、逆止弁7、第1給油電磁弁11、および第2給油電磁弁12を備える。また圧縮機構1は、圧縮機本体51、圧縮機軸受54、スチームモータ(蒸気モータ)55、ギアカップリング56、油溜り部57、およびスチームモータ軸受58を有している。
【0037】
エアコンプレッサ200は、給油式エアコンプレッサであり、外部から吸込んだ空気Aaを圧縮機本体51により圧縮して圧縮空気Abとし、これを例えば各種の空圧機器などへ吐出することが可能である。本実施形態では、圧縮機本体51から出た圧縮空気Abは、オイルセパレータ2を通ってエアコンプレッサ200から吐出される。また本実施形態の例では、圧縮機本体51、圧縮機軸受54、ギアカップリング56、およびスチームモータ軸受58が特定箇所Z(圧縮機構1において、潤滑油Luを用いて摩擦緩和と冷却の少なくとも一方がなされる箇所)に該当する。なお吐出後の圧縮空気Abは、空圧機器へ送られる前に空冷または水冷のアフタークーラで冷却されてもよい。
【0038】
潤滑油循環回路Xは、圧縮機本体51からオイルセパレータ2、自動温度調節弁3、およびオイルクーラ4を順に通って、潤滑油Luが圧縮機本体51へ流れる経路を有する。また潤滑油循環回路Xは、オイルクーラ4から圧縮機本体51に至る当該回路の途中位置α3から、オイルフィルタ5、第1給油電磁弁11、ギアカップリング56、油溜り部57、オイルポンプ6、および逆止弁7を順に通って、潤滑油Luが圧縮機本体51へ流れる経路も有する。
【0039】
また潤滑油循環回路Xは、オイルフィルタ5から第1給油電磁弁11に至る当該回路の途中位置α4から、第2給油電磁弁12、およびスチームモータ軸受58を通って油溜り部57へ潤滑油Luが流れる経路も有する。また潤滑油循環回路Xは、オイルフィルタ5から圧縮機軸受54を通って潤滑油Luが圧縮機本体51へ流れる経路も有する。また潤滑油循環回路Xは、オイルクーラ4とオイルフィルタ5の間の位置α5と自動温度調節弁3とを繋ぐ補助経路Xbを有する。
【0040】
圧縮機本体51は、スチームモータ55によって駆動され、空気Aaを圧縮して圧縮空気Abを生成するように動作する。本実施形態の例では、圧縮機本体51として回転式(スクリュ式)の圧縮機が採用されており、圧縮機本体51では潤滑油Luを用いて、スクリュロータの摩擦緩和と冷却(圧縮熱や摩擦熱の除去)を行うことが可能となっている。また、圧縮機本体51により形成された圧縮空気Abには、潤滑油Luが含まれる。なおスチームモータ55は、減圧する前の蒸気を取り込み、その蒸気の膨張エネルギーで回転駆動するように構成されている。
【0041】
ギアカップリング56は、スチームモータ55の主軸と圧縮機本体51の主軸を連結し、スチームモータ55から圧縮機本体51へ動力を伝える役割を果たす。ギアカップリング56においては、潤滑油Luを用いて、これらの主軸同士の連結部分等の摩擦を緩和することが可能となっている。また油溜り部57は、スチームモータ55およびギアカップリング56等を覆うケーシングの内部において、潤滑油Luを一時的に貯留可能に形成されている。この貯留された潤滑油Luには、ギアカップリング56やスチームモータ軸受58の一部が漬かるようにしても良い。
【0042】
スチームモータ軸受58は、スチームモータ55の主軸を支持し、本実施形態では潤滑油Luを用いて、当該軸受とスチームモータ55の主軸との摩擦を緩和することが可能となっている。
【0043】
オイルセパレータ2は、圧縮空気Abから潤滑油Luを分離する役割を果たすとともに、潤滑油Luを一時的に貯留することが可能である。
【0044】
自動温度調節弁3は、潤滑油Luの温度を調節する役割を果たす三方弁である。本実施形態の例の自動温度調節弁3は、例えば潤滑油Luの温度が所定の基準値より低いときに、補助経路Xbを通る潤滑油Luの量が増えるように動作する。基準値より高い温度の潤滑油Luは、オイルクーラ4を通過することになり、これにより潤滑油Luの温度を下げることが可能である。
【0045】
第1給油電磁弁11は、オイルフィルタ5からギアカップリング56へ流れる潤滑油Luの給油量を調節可能とする役割を果たし、第2給油電磁弁12は、オイルフィルタ5からスチームモータ軸受58へ流れる潤滑油Luの給油量を調節可能とする役割を果たす。オイルポンプ6は、給油量に応じて油溜り部57に溜まった潤滑油Luを抜き取るようにし、逆止弁7は、潤滑油循環回路Xにおける潤滑油Luの逆流を防止する。
【0046】
潤滑油循環回路Xを循環する潤滑油Luは、圧縮機本体51において摩擦緩和の役割を果たした後、オイルセパレータ2に流入して圧縮空気Abから分離される。この潤滑油Luは、オイルセパレータ2に一時的に貯留した後、自動温度調節弁3およびオイルクーラ4を経て、圧縮機本体51とオイルフィルタ5に流入する。このとき、自動温度調節弁3の開度に応じた量の潤滑油Luは、オイルクーラ4を通ることにより冷却される。
【0047】
オイルフィルタ5に流入した潤滑油Luは不純物が除去された後、第1給油電磁弁11の開閉頻度に応じた給油量の潤滑油Luが、ギアカップリング56で摩擦緩和に利用された後に油溜り部57へ流入して一時的に溜まり、第2給油電磁弁12の開閉頻度に応じた給油量の潤滑油Luが、スチームモータ軸受58で摩擦緩和等に利用された後に油溜り部57へ流入して一時的に溜まる。油溜り部57に一時的に溜まった潤滑油Luは、オイルポンプ6と逆止弁7を順に通って圧縮機本体51に流入する。また、オイルフィルタ5から圧縮機軸受54に流入した潤滑油Luは、圧縮機軸受54で摩擦緩和に利用された後、圧縮機本体51に流入する。
【0048】
また本実施形態においても、第1実施形態と同様の趣旨で油劣化センサSが配置される。油劣化センサSを配置する位置は、潤滑油循環回路Xにおける任意の位置とすることが可能であるが、図2に模式的に示した位置P2a、位置P2b、および位置P2cの何れかの位置とすることが好ましい。なお油劣化センサSは、位置P2a、位置P2b、および位置P2cのうちの一箇所に配置されても良く、複数個所のそれぞれに配置されても良い。
【0049】
位置P2aは、オイルセパレータ2において潤滑油Luが一時的に貯留する位置である。このような位置P2aでは潤滑油Luの流動が比較的小さいため、ここに油劣化センサSを配置することにより、潤滑油Luの比誘電率を安定的に検知することが容易となる。
【0050】
位置P2bは、特定箇所Zの後段側であってオイルクーラ4の前段側の位置である。このような位置P2bでは、潤滑油Luの温度が比較的高いため、潤滑油Luのスラッジが析出し難くなっている。そのため位置P2bに油劣化センサSを配置することにより、油劣化センサSにスラッジが付着し難くなり、潤滑油Luの比誘電率を精度良く検知することが容易となる。
【0051】
位置P2cは、オイルフィルタ5の後段側であって特定箇所Zの前段側の位置である。このような位置P2cでは、潤滑油Luは、オイルフィルタ5によって不純物が除去されてから特定箇所Zで利用される前までの状態であるため、含まれる不純物が比較的少なくなっている。そのため位置P2cに油劣化センサSを配置することにより、油劣化センサSに不純物が付着し難くなり、潤滑油Luの比誘電率を精度良く検知することが容易となる。
【0052】
3.第3実施形態
次に本発明の第3実施形態について説明する。以下の説明では、第1実施形態と異なる事項の説明に重点を置き、第1実施形態と共通する事項については説明を省略することがある。
【0053】
図3は、第3実施形態に係るエアコンプレッサ300の概略的な構成を示すブロック図である。本図に示すようにエアコンプレッサ300は、圧縮機構1、オイルクーラ4、オイルフィルタ5、オイルポンプ6、およびインタークーラ8を備える。また圧縮機構1は、スチームモータ55、スチームモータ軸受58、ギアボックス59、増速機60、1段圧縮機61、2段圧縮機62、1段圧縮機ジャケット63、および2段圧縮機ジャケット64を有している。
【0054】
エアコンプレッサ300は、オイルフリー式エアコンプレッサであり、外部から吸込んだ空気Aaを1段圧縮機61により圧縮して第1圧縮空気Ab1とし、これを空冷または水冷のインタークーラ8により冷却した後、2段圧縮機62により更に圧縮して第2圧縮空気Ab2として、これを例えば各種の空圧機器などへ吐出することが可能である。また本実施形態の例では、スチームモータ軸受58、増速機60、1段圧縮機ジャケット63、および2段圧縮機ジャケット64が特定箇所Z(圧縮機構1において、潤滑油Luを用いて摩擦緩和と冷却の少なくとも一方がなされる箇所)に該当する。なお吐出後の圧縮空気Abは、空圧機器へ送られる前に空冷または水冷のアフタークーラで冷却されてもよい。
【0055】
潤滑油循環回路Xは、ギアボックス59からオイルポンプ6、オイルクーラ4、オイルフィルタ5、およびスチームモータ軸受58を順に通って、潤滑油Luがギアボックス59へ流れる経路を有する。また潤滑油循環回路Xは、オイルフィルタ5からスチームモータ軸受58に至る当該回路の途中位置α6から、1段圧縮機ジャケット63および増速機60を順に通って、潤滑油Luがギアボックス59へ流れる経路も有する。また潤滑油循環回路Xは、1段圧縮機ジャケット63から2段圧縮機ジャケット64を通って、潤滑油Luが増速機60へ流れる経路も有する。
【0056】
1段圧縮機61および2段圧縮機62はスチームモータ55によって駆動される回転式の圧縮機として構成されており、先述のとおり、1段圧縮機61は空気Aaを圧縮して第1圧縮空気Ab1とし、2段圧縮機62は第1圧縮空気Ab1を圧縮して第2圧縮空気Ab2とする。なおスチームモータ55は、減圧する前の蒸気を取り込み、その蒸気の膨張エネルギーで回転駆動するように構成されている。
【0057】
ギアボックス59は、増速機60に使用されるギアを収容するように形成されている。またギアボックス59の内部には、潤滑油Luを一時的に貯留することが可能な油溜り部が形成されている。この貯留された潤滑油Luには、増速機60に使用されるギアの一部が漬かるようにしても良い。
【0058】
増速機60は、スチームモータ55と1段圧縮機61および2段圧縮機62との間に介在するギアを有し、スチームモータ55の回転を、各圧縮機61,62に必要な回転数まで増幅させる役割を果たす。増速機60においては、潤滑油Luを用いて当該ギアの摩擦を緩和することが可能となっている。
【0059】
1段圧縮機ジャケット63は、1段圧縮機61を覆って保護するとともに、1段圧縮機61との熱交換がなされるように潤滑油Luが流れるように形成されている。これにより1段圧縮機ジャケット63は、潤滑油Luとの熱交換により、1段圧縮機61を冷却することが可能である。
【0060】
2段圧縮機ジャケット64は、2段圧縮機62を覆って保護するとともに、2段圧縮機62との熱交換がなされるように潤滑油Luが流れるように形成されている。これにより2段圧縮機ジャケット64は、潤滑油Luとの熱交換により、2段圧縮機62を冷却することが可能である。
【0061】
潤滑油循環回路Xを循環する潤滑油Luは、ギアボックス59の油溜り部に一時的に溜まった後、オイルポンプ6を通ってオイルクーラ4に流入し、冷却される。この冷却された潤滑油Luは、オイルフィルタ5に流入して不純物が除去された後、スチームモータ軸受58、1段圧縮機ジャケット63、および2段圧縮機ジャケット64の各々に分岐して流入する。
【0062】
スチームモータ軸受58に流入した潤滑油Luは、ここで摩擦緩和等に利用された後にギアボックス59に流入する。1段圧縮機ジャケット63に流入した潤滑油Luは、1段圧縮機61の冷却に利用された後、さらに増速機60において摩擦緩和に利用され、その後にギアボックス59に流入する。2段圧縮機ジャケット64に流入した潤滑油Luは、2段圧縮機62の冷却に利用された後、さらに増速機60において摩擦緩和に利用され、その後にギアボックス59に流入する。
【0063】
また本実施形態においても、第1実施形態と同様の趣旨で油劣化センサSが配置される。油劣化センサSを配置する位置は、潤滑油循環回路Xにおける任意の位置とすることが可能であるが、図3に模式的に示した位置P3a、位置P3b、および位置P3cの何れかの位置とすることが好ましい。なお油劣化センサSは、位置P3a、位置P3b、および位置P3cのうちの一箇所に配置されても良く、複数個所のそれぞれに配置されても良い。
【0064】
位置P3aは、ギアボックス59の油溜り部(特定箇所Zを通過した潤滑油Luが一時的に溜まる部分)の位置である。このような位置P3aでは潤滑油Luの流動が比較的小さいため、ここに油劣化センサSを配置することにより、潤滑油Luの比誘電率を安定的に検知することが容易となる。
【0065】
位置P3bは、特定箇所Zの後段側であってオイルクーラ4の前段側の位置である。このような位置P3bでは、潤滑油Luの温度が比較的高いため、潤滑油Luのスラッジが析出し難くなっている。そのため位置P3bに油劣化センサSを配置することにより、油劣化センサSにスラッジが付着し難くなり、潤滑油Luの比誘電率を精度良く検知することが容易となる。
【0066】
位置P3cは、オイルフィルタ5の後段側であって特定箇所Zの前段側の位置である。このような位置P3cでは、潤滑油Luは、オイルフィルタ5によって不純物が除去されてから特定箇所Zで利用される前までの状態であるため、含まれる不純物が比較的少なくなっている。そのため位置P3cに油劣化センサSを配置することにより、油劣化センサSに不純物が付着し難くなり、潤滑油Luの比誘電率を精度良く検知することが容易となる。
【0067】
4.第4実施形態
次に本発明の第4実施形態について説明する。以下の説明では、第1実施形態と異なる事項の説明に重点を置き、第1実施形態と共通する事項については説明を省略することがある。
【0068】
図4は、第4実施形態に係るエアコンプレッサ400の概略的な構成を示すブロック図である。本図に示すようにエアコンプレッサ400は、圧縮機構1、オイルクーラ4、オイルフィルタ5、オイルポンプ6、およびインタークーラ8を備える。また圧縮機構1は、電気モータ52、ギアボックス59、増速機60、1段圧縮機61、2段圧縮機62、1段圧縮機ジャケット63、および2段圧縮機ジャケット64を有している。
【0069】
エアコンプレッサ400は、オイルフリー式エアコンプレッサであり、外部から吸込んだ空気Aaを1段圧縮機61により圧縮して第1圧縮空気Ab1とし、これを空冷または水冷のインタークーラ8により冷却した後、2段圧縮機62により更に圧縮して第2圧縮空気Ab2として、これを例えば各種の空圧機器などへ吐出することが可能である。また本実施形態の例では、増速機60、1段圧縮機ジャケット63、および2段圧縮機ジャケット64が特定箇所Z(圧縮機構1において、潤滑油Luを用いて摩擦緩和と冷却の少なくとも一方がなされる箇所)に該当する。なお吐出後の圧縮空気Abは、空圧機器へ送られる前に空冷または水冷のアフタークーラで冷却されてもよい。
【0070】
潤滑油循環回路Xは、ギアボックス59からオイルポンプ6、オイルクーラ4、オイルフィルタ5、2段圧縮機ジャケット64、および増速機60を順に通って、潤滑油Luがギアボックス59へ流れる経路を有する。また潤滑油循環回路Xは、2段圧縮機ジャケット64から1段圧縮機ジャケット63を通って、潤滑油Luが増速機60へ流れる経路も有する。
【0071】
1段圧縮機61および2段圧縮機62は電気モータ52によって駆動される回転式の圧縮機として構成されており、先述のとおり、1段圧縮機61は空気Aaを圧縮して第1圧縮空気Ab1とし、2段圧縮機62は第1圧縮空気Ab1を圧縮して第2圧縮空気Ab2とする。
【0072】
ギアボックス59は、増速機60に使用されるギアを収容するように形成されている。またギアボックス59の内部には、潤滑油Luを一時的に貯留することが可能な油溜り部が形成されている。この貯留された潤滑油Luには、増速機60に使用されるギアの一部が漬かるようにしても良い。
【0073】
増速機60は、電気モータ52と1段圧縮機61および2段圧縮機62との間に介在するギアを有し、電気モータ52の回転を、各圧縮機61,62に必要な回転数まで増幅させる役割を果たす。増速機60においては、潤滑油Luを用いて当該ギアの摩擦を緩和することが可能となっている。
【0074】
1段圧縮機ジャケット63は、1段圧縮機61を覆って保護するとともに、1段圧縮機61との熱交換がなされるように潤滑油Luが流れるように形成されている。これにより1段圧縮機ジャケット63は、潤滑油Luとの熱交換により、1段圧縮機61を冷却することが可能である。
【0075】
2段圧縮機ジャケット64は、2段圧縮機62を覆って保護するとともに、2段圧縮機62との熱交換がなされるように潤滑油Luが流れるように形成されている。これにより2段圧縮機ジャケット64は、潤滑油Luとの熱交換により、2段圧縮機62を冷却することが可能である。
【0076】
潤滑油循環回路Xを循環する潤滑油Luは、ギアボックス59の油溜り部に一時的に溜まった後、オイルポンプ6を通ってオイルクーラ4に流入し、冷却される。この冷却された潤滑油Luは、オイルフィルタ5に流入して不純物が除去された後、1段圧縮機ジャケット63および2段圧縮機ジャケット64の各々に分岐して流入する。
【0077】
1段圧縮機ジャケット63に流入した潤滑油Luは、1段圧縮機61の冷却に利用された後、さらに増速機60において摩擦緩和に利用され、その後にギアボックス59に流入する。2段圧縮機ジャケット64に流入した潤滑油Luは、2段圧縮機62の冷却に利用された後、さらに増速機60において摩擦緩和に利用され、その後にギアボックス59に流入する。
【0078】
また本実施形態においても、第1実施形態と同様の趣旨で油劣化センサSが配置される。油劣化センサSを配置する位置は、潤滑油循環回路Xにおける任意の位置とすることが可能であるが、図4に模式的に示した位置P4a、位置P4b、および位置P4cの何れかの位置とすることが好ましい。なお油劣化センサSは、位置P4a、位置P4b、および位置P4cのうちの一箇所に配置されても良く、複数個所のそれぞれに配置されても良い。
【0079】
位置P4aは、ギアボックス59の油溜り部(特定箇所Zを通過した潤滑油Luが一時的に溜まる部分)の位置である。このような位置P4aでは潤滑油Luの流動が比較的小さいため、ここに油劣化センサSを配置することにより、潤滑油Luの比誘電率を安定的に検知することが容易となる。
【0080】
位置P4bは、特定箇所Zの後段側であってオイルクーラ4の前段側の位置である。このような位置P4bでは、潤滑油Luの温度が比較的高いため、潤滑油Luのスラッジが析出し難くなっている。そのため位置P4bに油劣化センサSを配置することにより、油劣化センサSにスラッジが付着し難くなり、潤滑油Luの比誘電率を精度良く検知することが容易となる。
【0081】
位置P4cは、オイルフィルタ5の後段側であって特定箇所Zの前段側の位置である。このような位置P4cでは、潤滑油Luは、オイルフィルタ5によって不純物が除去されてから特定箇所Zで利用される前までの状態であるため、含まれる不純物が比較的少なくなっている。そのため位置P4cに油劣化センサSを配置することにより、油劣化センサSに不純物が付着し難くなり、潤滑油Luの比誘電率を精度良く検知することが容易となる。
【0082】
5.第5実施形態
次に本発明の第5実施形態について説明する。以下の説明では、第1実施形態と異なる事項の説明に重点を置き、第1実施形態と共通する事項については説明を省略することがある。
【0083】
図5は、第5実施形態に係るエアコンプレッサ500の概略的な構成を示すブロック図である。本図に示すようにエアコンプレッサ500は、圧縮機構1、オイルフィルタ5、およびオイルポンプ6を備える。また圧縮機構1は、圧縮機本体51、電気モータ52、ギアボックス59、タイミングギア65、ギア軸受66、およびモータ軸受67を有している。
【0084】
エアコンプレッサ500は、水噴射式エアコンプレッサであり、外部から吸込んだ空気Aaを圧縮機本体51により圧縮して圧縮空気Abとし、これを例えば各種の空圧機器などへ吐出することが可能である。また本実施形態の例では、タイミングギア65、ギア軸受66、およびモータ軸受67が特定箇所Z(圧縮機構1において、潤滑油Luを用いて摩擦緩和と冷却の少なくとも一方がなされる箇所)に該当する。
【0085】
潤滑油循環回路Xは、ギアボックス59からオイルポンプ6、オイルフィルタ5、およびタイミングギア65を順に通って、潤滑油Luがギアボックス59へ流れる経路を有する。また潤滑油循環回路Xは、オイルフィルタ5からタイミングギア65に至る当該回路の途中位置α7から、ギア軸受66を通って、タイミングギア65からギアボックス59に至る当該回路の途中位置α8へ潤滑油Luが流れる経路も有する。また潤滑油循環回路Xは、当該回路の位置α7からモータ軸受67を通って、潤滑油Luが当該回路の位置α8へ流れる経路も有する。
【0086】
圧縮機本体51は、一対のロータ(雄ロータと雌ロータ)からなるスクリュロータの冷却及び潤滑を水で行う水潤滑スクリュ圧縮機であり、互いに噛合する当該一対のロータがロータケーシングに収容されている。圧縮機本体51は、電気モータ52によって駆動され、空気Aaを圧縮するように動作する。より具体的に説明すると、圧縮機本体51においては、電気モータ52の駆動によって雄ロータが回転し、さらに、タイミングギア65を介して雌ロータが回転することにより、空気Aaが圧縮されて圧縮空気Abが生成される。
【0087】
圧縮機本体51により生成された圧縮空気Abには、潤滑水が含まれる。図5では示していないが、圧縮空気Abに含まれる潤滑水は、水セパレータで分離された後、空冷または水冷の水クーラで冷却されつつ、再び圧縮機本体51の内部に噴射される。なお水セパレータで分離後の圧縮空気Abは、空圧機器へ送られる前に空冷または水冷のアフタークーラで冷却されてもよい。
【0088】
ギアボックス59は、タイミングギア65を収容するように形成されている。またギアボックス59の内部には、潤滑油Luを一時的に貯留することが可能な油溜り部が形成されている。この貯留された潤滑油Luには、タイミングギア65の一部が漬かるようにしても良い。タイミングギア65は、圧縮機本体51における一対のロータを駆動する際に、適切に(例えば、ロータ同士のクリアランスが最低限となるように)回転を調整する役割を果たす。タイミングギア65においては、潤滑油Luを用いて、ギア同士の摩擦を緩和させることが可能となっている。
【0089】
ギア軸受66は、タイミングギア65の回転軸を支持するように形成されている。ギア軸受66においては、潤滑油Luを用いて、タイミングギア65の回転軸との摩擦を緩和させることが可能となっている。モータ軸受67は、電気モータ52の主軸を支持するように形成されている。モータ軸受67においては、潤滑油Luを用いて、電気モータ52の主軸との摩擦を緩和させることが可能となっている。
【0090】
潤滑油循環回路Xを循環する潤滑油Luは、ギアボックス59の油溜り部に一時的に溜まった後、オイルポンプ6を通ってオイルフィルタ5に流入して不純物が除去された後、タイミングギア65、ギア軸受66、およびモータ軸受67の各々に分岐して流入する。
【0091】
タイミングギア65に流入した潤滑油Luは、タイミングギア65での摩擦緩和に利用された後、ギアボックス59に流入する。ギア軸受66に流入した潤滑油Luは、ギア軸受66での摩擦緩和に利用された後、ギアボックス59に流入する。モータ軸受67に流入した潤滑油Luは、モータ軸受67での摩擦緩和に利用された後、ギアボックス59に流入する。
【0092】
また本実施形態においても、第1実施形態と同様の趣旨で油劣化センサSが配置される。油劣化センサSを配置する位置は、潤滑油循環回路Xにおける任意の位置とすることが可能であるが、図5に模式的に示した位置P5aおよび位置P5bの何れかの位置とすることが好ましい。なお油劣化センサSは、位置P5aおよび位置P5bのうちの一方に配置されても良く、両方のそれぞれに配置されても良い。
【0093】
位置P5aは、ギアボックス59の後段側であってオイルポンプ6の前段側の位置であり、この位置では潤滑油Luの温度は比較的高く、潤滑油Luのスラッジが析出し難くなっている。そのため位置P5aに油劣化センサSを配置することにより、油劣化センサSにスラッジが付着し難くなり、潤滑油Luの比誘電率を精度良く検知することが容易となる。
【0094】
位置P5bは、オイルフィルタ5の後段側であって特定箇所Zの前段側の位置である。このような位置P5cでは、潤滑油Luは、オイルフィルタ5によって不純物が除去されてから特定箇所Zで利用される前までの状態であるため、含まれる不純物が比較的少なくなっている。そのため位置P5bに油劣化センサSを配置することにより、油劣化センサSに不純物が付着し難くなり、潤滑油Luの比誘電率を精度良く検知することが容易となる。
【0095】
6.その他
以上に説明したとおり各実施形態のエアコンプレッサは、モータによって駆動され、空気を圧縮するように構成された圧縮機構1と、圧縮機構1において潤滑油Luを用いて摩擦緩和および/または冷却がなされる特定箇所Zを通り、当該潤滑油Luを循環させる潤滑油循環回路Xと、を有しており、潤滑油循環回路Xには、潤滑油Luの劣化度合を示す劣化情報を検知する油劣化センサSが配置されている。
【0096】
そのため各実施形態のエアコンプレッサによれば、潤滑油Luを用いて必要箇所の摩擦緩和等を行うことができるとともに、より適切な時期に潤滑油Luの交換を行うことが可能となっている。なお各実施形態では、潤滑油Luの比誘電率を検知するセンサを油劣化センサとして採用しているが、潤滑油Luの比誘電率とは別の劣化情報(誘電率、導電率、静電容量、動粘度、密度、色度、濁度、汚染度など)を検知するセンサを、油劣化センサとして採用しても良い。
【0097】
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明の構成は上記実施形態に限られず、発明の主旨を逸脱しない範囲で種々の変更を加えることが可能である。すなわち上記実施形態は、全ての点で例示であって、制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の技術的範囲は、上記実施形態の説明ではなく、特許請求の範囲によって示されるものであり、特許請求の範囲と均等の意味及び範囲内に属する全ての変更が含まれると理解されるべきである。
【符号の説明】
【0098】
1 圧縮機構
2 オイルセパレータ
3 自動温度調節弁
4 オイルクーラ
5 オイルフィルタ
6 オイルポンプ
7 逆止弁
8 インタークーラ
11 第1給油電磁弁
12 第2給油電磁弁
51 圧縮機本体
52 電気モータ
53 モータジャケット
54 圧縮機軸受
55 スチームモータ
56 ギアカップリング
57 油溜り部
58 スチームモータ軸受
59 ギアボックス
60 増速機
61 1段圧縮機
62 2段圧縮機
63 1段圧縮機ジャケット
64 2段圧縮機ジャケット
65 タイミングギア
66 ギア軸受
67 モータ軸受
100、200、300、400、500 エアコンプレッサ
Aa 空気
Ab 圧縮空気
Ab1 第1圧縮空気
Ab2 第2圧縮空気
Lu 潤滑油
X 潤滑油循環回路
Xa、Xb 補助経路
図1
図2
図3
図4
図5