(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024045969
(43)【公開日】2024-04-03
(54)【発明の名称】プラスチック成形容器のリサイクル方法
(51)【国際特許分類】
B29B 17/04 20060101AFI20240327BHJP
【FI】
B29B17/04
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022151082
(22)【出願日】2022-09-22
(71)【出願人】
【識別番号】000000918
【氏名又は名称】花王株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100137589
【弁理士】
【氏名又は名称】右田 俊介
(72)【発明者】
【氏名】田村 英子
(72)【発明者】
【氏名】辻 誠
【テーマコード(参考)】
4F401
【Fターム(参考)】
4F401AA09
4F401AA10
4F401AC11
4F401BA13
4F401CA02
4F401CA14
4F401CA32
4F401CA58
4F401CA82
(57)【要約】
【課題】使用済みプラスチック成形容器から得られる樹脂材料の熱劣化が少ないプラスチック成形容器のリサイクル方法を提供する。
【解決手段】使用済みプラスチック成形容器を回収する回収工程と、回収された使用済みプラスチック成形容器を破砕してプラスチックフレークとする破砕工程と、破砕工程における破砕時または破砕後にプラスチックフレークを洗浄する洗浄工程と、洗浄されたプラスチックフレークを乾燥させる乾燥工程と、乾燥したプラスチックフレークを溶融して溶融物とする溶融工程と、この溶融物を含む材料をプラスチック成形容器に成形する成形工程と、を備えるプラスチック成形容器のリサイクル方法。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
使用済みプラスチック成形容器を回収する回収工程と、
回収された前記使用済みプラスチック成形容器を破砕してプラスチックフレークとする破砕工程と、
前記破砕工程における破砕時または破砕後に前記プラスチックフレークを洗浄する洗浄工程と、
洗浄された前記プラスチックフレークを乾燥させる乾燥工程と、
乾燥した前記プラスチックフレークを溶融して溶融物とする溶融工程と、
前記溶融物を含む材料をプラスチック成形容器に成形する成形工程と、を備える、
プラスチック成形容器のリサイクル方法。
【請求項2】
前記使用済みプラスチック成形容器に収容されていた収容物が、水とエタノールとの合計含有量が30wt%以上であり、さらに30℃における粘度が10000mPa・s以下の液状物である、請求項1に記載のプラスチック成形容器のリサイクル方法。
【請求項3】
前記使用済みプラスチック成形容器に収容されていた収容物がイオン性界面活性剤を含有する液状物であり、
前記洗浄工程を行う前の前記プラスチックフレークは、前記液状物由来の前記イオン性界面活性剤を5ppm以上含む、請求項1または2に記載のプラスチック成形容器のリサイクル方法。
【請求項4】
前記使用済みプラスチック成形容器に収容されていた前記液状物がさらに多価アルコールまたは多価アルコールエステルを含有し、
前記洗浄工程を行う前の前記プラスチックフレークは、前記液状物由来の前記イオン性界面活性剤ならびに前記多価アルコールまたは多価アルコールエステルを合計で100ppm以上含む、請求項3に記載のプラスチック成形容器のリサイクル方法。
【請求項5】
前記洗浄工程が、前記プラスチックフレークを水または温水と接触させて、前記プラスチックフレークに混入している異物を除去するとともに前記プラスチックフレークを洗浄する工程である、請求項1~4のいずれか1項に記載のプラスチック成形容器のリサイクル方法。
【請求項6】
前記使用済みプラスチック成形容器が、ポリエチレン系樹脂またはポリプロピレン系樹脂により構成されている、請求項1~5のいずれか1項に記載のプラスチック成形容器のリサイクル方法。
【請求項7】
前記破砕工程において得られる前記プラスチックフレークが、目開き8mmのメッシュを通過する大きさである、請求項1~6のいずれか1項に記載のプラスチック成形容器のリサイクル方法。
【請求項8】
前記乾燥工程において乾燥した前記プラスチックフレークの水分含有量が1wt%以下である、請求項1~7のいずれか1項に記載のプラスチック成形容器のリサイクル方法。
【請求項9】
前記溶融工程においてバージンプラスチック材料を混合する工程を含む、請求項1~8のいずれか1項に記載のプラスチック成形容器のリサイクル方法。
【請求項10】
前記回収工程において回収された前記使用済みプラスチック成形容器が前記成形工程を実施する容器成形者に直接輸送され、前記破砕工程、前記洗浄工程、前記乾燥工程、前記溶融工程、および前記成形工程をいずれも前記容器成形者が実施する、請求項1~9のいずれか1項に記載のプラスチック成形容器のリサイクル方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、プラスチック成形容器のリサイクル方法に関する。
【背景技術】
【0002】
日常的に使用される消毒液、シャンプー、ハンドソープ、ボディーソープなどを収容するための容器として、プラスチック製の成形容器(プラスチック成形容器)が多く利用されている。そして、環境問題やプラスチック資源使用量の低減などを背景として、使用済みのプラスチック成形容器からマテリアルリサイクルを行って樹脂材料(再生樹脂材料)を得ることが実践されている。さらに、この樹脂材料を使用して同様のプラスチック成形容器を形成する水平リサイクルも実践されている。
【0003】
例えば、特許文献1には、内容物の収容空間を形成する胴部が複数材料による積層構造を有する合成樹脂製の押出ブロー成形容器であって、積層構造は、バージン材料からなる内層及び外層と、内層及び外層の間に位置する再生材層とを有し、再生材層は、合成樹脂製の容器が粉砕されることにより得られた粉砕物などから得られるオレフィン系のリサイクル材料で構成されており、積層構造における再生材層の重量割合が、50%以上、90%以下である押出ブロー成形容器が開示されている。
なお、特許文献2や特許文献3にも記載されているように、水平リサイクル等を行う場合、通常は、廃棄プラスチック材から再生樹脂ペレットを形成し、この再生樹脂ペレットが再生樹脂材料として使用されている(上記した特許文献1の方法で用いられるリサイクル材料もペレットである)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2020-192998号公報
【特許文献2】特開2018-008438号公報
【特許文献3】特開2006-130756号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
このように、使用済みプラスチック成形容器から樹脂材料を得る工程では、この樹脂材料を用いてプラスチック成形容器を形成する際の成形性や機械適性などを高めるために、通常、使用済みプラスチック成形容器を破砕して十分な洗浄をした後、加熱等により数mm程度の粒状に大きさを揃えた再生樹脂ペレットとしている。しかしながら、このような再生樹脂ペレットとすると、その形成時の熱負荷などにより熱劣化が生じ易く、着色などが起こり易いという課題がある。特に、ポリオレフィン系樹脂により構成された使用済みプラスチック成形容器から再生樹脂ペレットを形成した場合、この着色などがより発生し易くなる。
【0006】
本発明は、上記課題に鑑みてなされたものであり、使用済みプラスチック成形容器から得られる樹脂材料の熱劣化が少ないプラスチック成形容器のリサイクル方法に関する。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、使用済みプラスチック成形容器を回収する回収工程と、回収された使用済みプラスチック成形容器を破砕してプラスチックフレークとする破砕工程と、破砕工程における破砕時または破砕後にプラスチックフレークを洗浄する洗浄工程と、洗浄されたプラスチックフレークを乾燥させる乾燥工程と、乾燥したプラスチックフレークを溶融して溶融物とする溶融工程と、この溶融物を含む材料をプラスチック成形容器に成形する成形工程と、を備えるプラスチック成形容器のリサイクル方法に関する。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、使用済みプラスチック成形容器から得られる樹脂材料の熱劣化が少ないプラスチック成形容器のリサイクル方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】本実施形態に係るプラスチック成形容器のリサイクル方法の一例を示した工程図である。
【
図2】本実施形態に係るプラスチック成形容器のリサイクル方法の破砕工程で得られるプラスチックフレークの一例を示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明の好ましい実施形態について、図面を用いて説明する。なお、すべての図面において、同様の構成要素には同一の符号を付し、重複する説明は適宜省略する。また、一部の図面については、便宜上、符号を付していない(省略している)箇所がある。さらに、図面に示された各部材の寸法比率は、発明の理解を容易にするために、実際の寸法比率とは異なる場合がある。
【0011】
〔概要〕
まず、
図1を用いて、本発明に係るプラスチック成形容器のリサイクル方法の実施形態概要について説明する。
本発明に係るプラスチック成形容器のリサイクル方法は、以下の実施形態を包含するものである。
【0012】
本実施形態に係るプラスチック成形容器のリサイクル方法は、使用済みプラスチック成形容器を回収する回収工程(S1)と、この回収された使用済みプラスチック成形容器を破砕してプラスチックフレークとする破砕工程(S2)と、破砕工程における破砕時または破砕後にプラスチックフレークを洗浄する洗浄工程(S3)と、この洗浄されたプラスチックフレークを乾燥させる乾燥工程(S4)と、この乾燥したプラスチックフレークを溶融して溶融物とする溶融工程(S5)と、この溶融物を含む材料をプラスチック成形容器に成形する成形工程(S6)と、を備える(
図1)。
【0013】
つまり、本実施形態に係るプラスチック成形容器のリサイクル方法は、
図1に示すように、使用済みプラスチック成形容器を回収して再生樹脂材料(リサイクル材料)であるプラスチックフレークを形成し、このプラスチックフレークを用いてリサイクル品であるプラスチック成形容器を形成する、プラスチック成形容器の再資源化方法または再生方法(マテリアルリサイクル方法または水平リサイクル方法)である。
【0014】
〔本実施形態に係るプラスチック成形容器のリサイクル方法の工程〕
次に、
図1および
図2を用いて、本実施形態に係るプラスチック成形容器のリサイクル方法の各工程について詳細に説明する。
上記したように、本実施形態に係るプラスチック成形容器のリサイクル方法は、少なくとも、(S1)回収工程、(S2)破砕工程、(S3)洗浄工程、(S4)乾燥工程、(S5)溶融工程、ならびに(S6)成形工程を含む。以下、各工程について具体的に説明する。
【0015】
<回収工程>
本実施形態に係るプラスチック成形容器のリサイクル方法では、まず、
図1の(S1)に示すような使用済みプラスチック成形容器を回収する回収工程を行う。
ここで、本発明に係るプラスチック成形容器のリサイクル方法における「使用済みプラスチック成形容器を回収する」とは、使用済みのプラスチック成形容器をそのまま回収するだけでなく、使用済みのプラスチック成形容器からキャップやポンプ付きキャップ、スパウトなどを除去したものを回収することも包含する。したがって、この回収工程には、使用済みプラスチック成形容器の容器本体を分別して回収する実施形態も包含される。なお、ポンプ付きキャップなどを分離して使用済みプラスチック成形容器の容器本体を分別して回収することにより、リサイクルがし易くなり、またより品質の高いプラスチック成形容器を得ることができるため好適である。
【0016】
よって、この回収工程では、回収する使用済みプラスチック成形容器が、収容物を収容および排出が可能な開口部、例えば繰り返し開閉可能な口栓構造を有する開口部(ネジ山が設けられている開口部等)など、を有する構成であって、その開口部が空いた状態で回収されても良い。
【0017】
そして、この回収工程において回収する使用済みプラスチック成形容器に収容されていた収容物は、水とエタノールとの合計含有量が30wt%以上であり、さらに30℃における粘度が10000mPa・s以下の液状物であるのが好ましい。つまり、この回収工程において、上記液状物が収容されていた使用済みプラスチック成形容器を分別して回収すると好ましい。後述する洗浄工程において、破砕されたプラスチックフレークの収容物残留量(付着量)を水または温水により低減し易く、洗浄工程をより簡易な洗浄とし易いからである。また、後述する乾燥工程において、プラスチックフレークの水分含有量を低減させ易いからでもある。
【0018】
この液状物における水とエタノールとの合計含有量は、33wt%以上であるのがより好ましく、40wt%以上であるのがさらに好ましく、50wt%以上であるのがさらに好ましく、55wt%以上であるのがさらに好ましい。また、この液状物の30℃における粘度は、B型粘度計(例えば東機産業社製ビスコメーターTV-10またはビスコメーターTVB-10など)により測定される値であって(以下においても同様である)、6000mPa・s以下であるのがより好ましく、5000mPa・s以下であるのがさらに好ましく、1000mPa・s以下であるのがさらに好ましく、800mPa・s以下であるのがさらに好ましく、500mPa・s以下であるのがさらに好ましく、100mPa・s以下であるのがさらに好ましく、50mPa・s以下であるのがさらに好ましい。そして、この下限は、1mPa・s以上であって良い。
【0019】
このような液状物としては、消毒液、シャンプー(吐出時に泡状となる泡タイプも含む)、ハンドソープ(泡タイプも含む)、ボディーソープ(泡タイプも含む)、リンスなどが挙げられる。この中でも、消毒液、泡タイプのシャンプー、泡タイプのハンドソープ、または泡タイプのボディーソープが特に好ましい。
【0020】
さらに、この使用済みプラスチック成形容器に収容されていた収容物がイオン性界面活性剤を含有する液状物であり、後述する洗浄工程を行う前のプラスチックフレークが、この液状物由来のイオン性界面活性剤を5ppm(0.0005wt%)以上含むとより好ましい。つまり、洗浄工程を行う前のプラスチックフレークにこの液状物由来のイオン性界面活性剤が所定量以上付着している(残留している)のが好ましい。プラスチックフレークに少量残留しているイオン性界面活性剤によって、後述する洗浄工程における水や温水によるプラスチックフレークの洗浄効果がより高まり、簡易な洗浄でも洗浄後のプラスチックフレークの品質をより向上することができ、成形性や得られるプラスチック成形容器の物性(ボトル物性、樹脂物性など)をより高めることができるからである。そして、この上限は、限定されるものではないが、5000ppm以下であるのがより好ましく、3000ppm以下であるのがさらに好ましく、2000ppm以下であるのがさらに好ましい。
【0021】
イオン性界面活性剤は、カチオン界面活性剤、アニオン界面活性剤、または両性界面活性剤のいずれであっても良いが、カチオン界面活性剤またはアニオン界面活性剤であるのがより好ましい。カチオン界面活性剤としては、例えば、第4級アンモニウム塩(塩化ベンザルコニウム、塩化トリメチルアンモニウム等)やアルキルアミン塩などが挙げられる。アニオン界面活性剤としては、例えば、硫酸エステル(ポリオキシエチレンラウリルエーテル硫酸アンモニウム、ラウレス硫酸ナトリウム等)、カルボン酸(ポリオキシエチレンラウリルエーテルカルボン酸等)、ココイルメチルタウリンナトリウムなどが挙げられる。両性界面活性剤としては、例えば、カルボキシベタイン(コカミドプロピルベタイン等)やアルキルアミンオキシドなどが挙げられる。
【0022】
また、この使用済みプラスチック成形容器に収容されていた液状物が、イオン性界面活性剤に加えてさらに多価アルコールまたは多価アルコールエステルを含有し、後述する洗浄工程を行う前のプラスチックフレークが、この液状物由来のイオン性界面活性剤ならびに多価アルコールまたは多価アルコールエステルを合計で100ppm(0.01wt%)以上含むとさらに好ましい。つまり、洗浄工程を行う前のプラスチックフレークにこの液状物由来のイオン性界面活性剤ならびに多価アルコールまたは多価アルコールエステルが所定量以上付着している(残留している)のがさらに好ましい。プラスチックフレークに少量残留しているイオン性界面活性剤ならびに多価アルコールまたは多価アルコールエステルによって、後述する洗浄工程における水や温水によるプラスチックフレークの洗浄効果がさらに高まり、簡易な洗浄でも洗浄後のプラスチックフレークの品質をより向上し易いからである。そして、この上限は、限定されるものではないが、8000ppm以下であるのがより好ましく、5000ppm以下であるのがさらに好ましく、3000ppm以下であるのがさらに好ましい。
【0023】
好ましい多価アルコールとしては、グリセリン、プロピレングリコール、ポリエチレングリコール、ソルビトールなどが挙げられる。また、好ましい多価アルコールエステルとしては、上記した多価アルコールと脂肪酸とのエステル(ラウリン酸プロピレングリコール等)などが挙げられる。
【0024】
このような液状物としては、前述と同様に、消毒液、シャンプー(泡タイプも含む)、ハンドソープ(泡タイプも含む)、ボディーソープ(泡タイプも含む)、リンスなどが挙げられる。特に、消毒液、泡タイプシャンプー、泡タイプハンドソープ、または泡タイプボディーソープがより好適である。
【0025】
そして、この回収工程において回収する使用済みプラスチック成形容器は、ポリエチレン系樹脂またはポリプロピレン系樹脂により構成されているものであると好ましい。分別回収がし易く、さらに、このようなポリエチレン系樹脂またはポリプロピレン系樹脂により構成されている使用済みプラスチック成形容器から得られるプラスチックフレークは押出ブロー成形がし易いからである。
ここで、「ポリエチレン系樹脂またはポリプロピレン系樹脂により構成された」とは、その全質量におけるポリエチレン系樹脂またはポリプロピレン系樹脂の質量割合が70%以上であることを意味し(以下においても同様である)、これは80%以上であるのがより好ましく、90%以上であるのがさらに好ましく、95%以上であるのがさらに好ましい。
【0026】
ポリエチレン系樹脂としては、高密度ポリエチレン(HDPE)、中密度ポリエチレン(MDPE)、低密度ポリエチレン(LDPE)、直鎖状低密度ポリエチレン(LLDPE)、超低密度ポリエチレン(ULDPE)などが包含される。また、サトウキビの廃糖蜜などから製造されたバイオエタノールを脱水、重合することにより得られるバイオポリエチレン(BioPE)も包含される。また、酸素バリア性を付与することができるエチレン-ビニルアルコール共重合体(EVOH)もこのポリエチレン系樹脂に包含される。そして、これらが2種以上混合されて使用されている(構成されている)ものであっても良い。また、この回収工程において回収する使用済みプラスチック成形容器は、このようなポリエチレン系樹脂とポリプロピレン系樹脂とが併用されているものであっても良い。
【0027】
しかしながら、この回収工程において回収する使用済みプラスチック成形容器は、ポリエステル系樹脂により構成されたものであっても構わない。ポリエステル系樹脂としては、ポリエチレンテレフタレート(PET)、非晶性ポリエチレンテレフタレート(非晶性PET)、ポリブチレンテレフタレート(PBT)、ポリエチレンナフタレート(PEN)、ポリブチレンナフタレート(PBN)などが挙げられる。
【0028】
この場合でも、本実施形態に係るプラスチック成形容器のリサイクル方法では、回収工程において回収する使用済みプラスチック成形容器が同種のプラスチック材料により構成されているのがより好適である。例えば、この回収工程において、ポリエチレン系樹脂により構成されている使用済みプラスチック成形容器を回収する、ポリプロピレン系樹脂により構成されている使用済みプラスチック成形容器を回収する、あるいはポリエステル系樹脂により構成されている使用済みプラスチック成形容器を回収する、のいずれか1つが選択されるとより好適である。
【0029】
また、この回収工程において回収する使用済みプラスチック成形容器は、着色されていないプラスチック成形容器(ナチュラルボトル)であるのが好適である。つまり、印刷やボトル着色が施されていないプラスチック成形容器であるのが好適である。したがって、この回収工程において回収するあるいは回収した使用済みプラスチック成形容器を着色の有無により選別する選別工程をさらに備えていても良い。
【0030】
<破砕工程>
本実施形態に係るプラスチック成形容器のリサイクル方法では、上記した回収工程の後、回収された使用済みプラスチック成形容器を破砕して、
図1の(S2)や
図2に示すようなプラスチックフレークとする破砕工程を行う。この破砕は、限定されるものではないが、切断カッタなどの切断および破砕が可能な部材を有する公知の破砕機(例えば森田精機社製のJC-10型など)を用いて使用済みプラスチック成形容器をフレーク状とすれば良い。
【0031】
なお、この破砕工程において、得られるプラスチックフレークを目開き8mmのメッシュを通過する大きさ(8mmメッシュパス品)とすると好適である。後述する洗浄工程においてプラスチックフレークのぶつかりの頻度がより高まり、その洗浄効率がより高まるからである。特に、使用済みプラスチック成形容器に収容されていた液状物由来のイオン性界面活性剤を5ppm以上含むプラスチックフレークや、さらにイオン性界面活性剤と多価アルコールまたは多価アルコールエステルとを合計で100ppm以上含むプラスチックフレークの場合、
図2に示すように、これらが付着していない領域の表面積が適度に高まっていることによって(
図2の符号13の領域など)、上記したぶつかりの頻度と、適度な表面積増加と、イオン性界面活性剤等と、の相乗的な効果がより発揮され易くなり、洗浄工程における洗浄効果がより高まる。そして、このような大きさとすると、その後の溶融工程および成形工程における作業性や機械適性なども向上させ易い。
【0032】
ここで、目開き8mmのメッシュとは、メッシュ開口における向かい合う線材間の間隔である(以下においても同様である)。そして、限定されるものではないが、成形工程における作業性などの観点から、この破砕工程において得られるプラスチックフレークは、目開き5mmのメッシュを通過する大きさのもの(5mmメッシュパス品)の割合を10%未満としても良い。
【0033】
<洗浄工程>
本実施形態に係るプラスチック成形容器のリサイクル方法では、上記した破砕工程における破砕時またはこの破砕後にプラスチックフレークを洗浄する洗浄工程を行う(
図1の(S3))。つまり、破砕とほぼ同時または破砕直後にプラスチックフレークの洗浄を行っても良いし、あるいは破砕されたプラスチックフレークを集めて別途洗浄を行っても良い。
【0034】
このプラスチックフレークの洗浄は、プラスチック以外の異物の除去や収容物由来成分の除去をするために行うものであって、水、温水などを用いて簡易な洗浄を行えば良い。例えば、この洗浄工程において、異物除去装置などに導入されたプラスチックフレークを水または温水と接触させて、プラスチックフレークに混入している異物を除去するとともにこのプラスチックフレークを洗浄する方法が示される。つまり、本実施形態に係るプラスチック成形容器のリサイクル方法では、洗浄工程で用いる水または温水を洗浄剤などの水以外の成分が実質的に含まれないものとしながら、十分な洗浄効果を得ることができる。特に、前述したような、使用済みプラスチック成形容器に収容されていた収容物が水とエタノールとの合計含有量が30wt%以上であり、さらに30℃における粘度が10000mPa・s以下の液状物である場合には、この水または温水による洗浄効果がより得られ易い。
【0035】
さらに、これも前述したような、使用済みプラスチック成形容器に収容されていた収容物がイオン性界面活性剤を含有する液状物や、このイオン性界面活性剤に加えてさらに多価アルコールまたは多価アルコールエステルを含有する液状物であり、破砕されたプラスチックフレークにこの液状物由来のイオン性界面活性剤や多価アルコールまたは多価アルコールエステルが所定量以上含まれる場合にも、同様に上記した洗浄効果がより得られ易い。この場合、洗浄工程におけるプラスチックフレークどうしのぶつかりにおいて、このプラスチックフレークに含まれる(
図2のように一部の面に付着している)イオン性界面活性剤等が局所的に作用して洗浄効果がより高まり、且つこのイオン性界面活性剤等はこの洗浄によって他の成分などとともにプラスチックフレークから除去される。特に、プラスチックフレークを目開き8mmのメッシュを通過する大きさとすると、この効果がより発揮され易い。
【0036】
また、この洗浄工程において温水を使用する場合、その温度は、効率よく収容物由来成分などの除去を行うという観点から30℃以上であるのが好ましく、40℃以上であるのがより好ましい。上限は、洗浄工程における温度制御の容易性などの観点から、60℃以下であるのが好ましく、50℃以下であるのがより好ましい。そして、この洗浄工程におけるプラスチックフレークの洗浄方法は、例えば、プラスチックフレークを水や温水が貯められた槽に投入して攪拌し、必要であれば濯ぎを行う方法や、破砕機により排出された選別前または選別後のプラスチックフレークに水や温水を噴射する方法などであっても良い。さらに、必要に応じて物理的脱水(遠心分離等)などを行っても良い。
【0037】
<乾燥工程>
本実施形態に係るプラスチック成形容器のリサイクル方法では、洗浄工程の後、洗浄したプラスチックフレークを乾燥させる乾燥工程を行う(
図1の(S4))。このプラスチックフレークの乾燥方法は、限定されるものではないが、公知の乾燥機(例えば日本シーム社製の熱風乾燥機ドライジェットなど)を用いて通風乾燥などを行えば良い。また、乾燥温度(プラスチックフレークを乾燥する際の雰囲気温度)も特段限定されないが、プラスチックフレークの着色(褐変)や熱劣化を抑制し易いことから、100℃未満の乾燥温度であるのがより好ましく、80℃以下の乾燥温度であるのがさらに好ましく、60℃以下の乾燥温度であるのがさらに好ましく、常温(10~40℃)での自然乾燥であっても良い。
【0038】
そして、この乾燥工程において、乾燥したプラスチックフレークの水分含有量が1wt%以下となるようにするのが好ましい。成形時に発泡し難くなり、得られるプラスチック成形容器の品質がより高まるからである。この水分含有量は、0.8wt%以下であるのがより好ましく、0.5wt%以下であるのがさらに好ましい。例えば、使用済みプラスチック成形容器に収容されていた収容物が、水とエタノールとの合計含有量が30wt%以上且つ30℃における粘度が10000mPa・s以下の液状物である場合には、前述した洗浄工程後に、常温での自然乾燥を行ってもこの水分含有量を1wt%以下とし易い。
【0039】
<溶融工程および成形工程>
本実施形態に係るプラスチック成形容器のリサイクル方法では、乾燥したプラスチックフレークを溶融して溶融物とする溶融工程、および、この溶融物を含む材料をプラスチック成形容器に成形する成形工程を行う(
図1の(S5)、(S6))。
【0040】
溶融工程においては、乾燥したプラスチックフレークをそのままタンクやホッパーなどに充填して、その融点よりも高い温度に加熱を行えば良い。例えば、ポリエチレン系樹脂により構成された使用済みプラスチック成形容器から得られたプラスチックフレークである場合には、170~180℃程度に加熱を行うことで溶融物とすることができる。
【0041】
なお、この溶融工程において、バージンプラスチック材料(石油などの原料から製造された新品のプラスチック材料)を混合する工程を含んでも良い。例えば、乾燥したプラスチックフレークに同様のフレーク状などであるバージンプラスチック材料を混合して溶融を行っても良く、あるいは、乾燥したプラスチックフレークの溶融物に同様の方法で溶融されたバージンプラスチック材料の溶融物を混合しても良い。
【0042】
そして、成形工程では、上記したようなプラスチックフレークの溶融物を含む材料をブロー成形などによってプラスチック成形容器に成形すれば良い。例えば、ダイレクトブロー成形機(タハラ社製、TPF-454など)を用いて、加熱によって柔らかくなっている材料を押し出してパリソン成形(筒状成形)を行い、さらに成形されたパリソンを金型で挟んで内部に空気を吹き込み、冷却後、金型を開いて成形品を取り出す方法によってプラスチック成形容器を得ることができる。
【0043】
この成形工程での成形方法はブロー成形に限定されるものではなく、射出成形など公知のプラスチック成形容器の成形方法を採用することができるが、乾燥したプラスチックフレークの溶融物を含む材料を成形し易いことから、この工程がブロー成形工程であるのがより好適である。
【0044】
なお、本実施形態に係るプラスチック成形容器のリサイクル方法は、上記した工程を含む限りにおいて、さらに別の工程を含んでいても良い。例えば、破砕工程前に使用済みプラスチック成形容器の簡易洗浄や乾燥などをする前処理工程や、成形後のプラスチック成形容器にシュリンク等を取り付ける取付工程などを含んでいても良い。しかしながら、本実施形態に係るプラスチック成形容器のリサイクル方法は、破砕されたプラスチックフレークに加熱負荷をして数mm程度の粒状に大きさを揃えた樹脂ペレット(再生樹脂ペレット)を形成する樹脂ペレット形成工程を含まないことが特徴である。この樹脂ペレット形成工程を含まないことによって、使用済みプラスチック成形容器から得られる樹脂材料(再生樹脂材料)の熱劣化を低減でき、得られるプラスチック成形容器の品質(ボトル物性、樹脂物性)を高く維持することが可能となっている。また、この使用済みプラスチック成形容器から得られるフレーク状の樹脂材料は、簡易な洗浄により得ることができ、さらにプラスチック成形容器の成形性や機械適性なども高度に維持できる。つまり、成形性などにも影響を与えにくい。
このようにして、収容された収容物を使い切った後の使用済みプラスチック成形容器をリサイクル原料として、プラスチック成形容器への水平リサイクルシステムを構築することができる。
【0045】
そして、このような本実施形態に係るプラスチック成形容器のリサイクル方法で得られたプラスチック成形容器を使用して、その収容領域に収容物が収容された容器詰め品を得ることができる。このプラスチック成形容器に収容する収容物の種類は、特に限定されないが、例えば、消毒液、シャンプー、ハンドソープ、ボディーソープなどが挙げられ、液状の収容物であるのが好適である。特に、前述したような、イオン性界面活性剤、多価アルコール、および多価アルコールエステルからなる群から選ばれる1以上を含み、水とエタノールとの合計含有量が30wt%以上であり、さらに30℃における粘度が10000mPa・s以下の液状物を収容物とすると、この収容物を使用後にさらなるリサイクルがし易くなる。しかしながら、液状物以外の収容物(粉状物、粒状物など)を収容しても構わない
【0046】
また、本実施形態に係るプラスチック成形容器のリサイクル方法では、回収工程において回収された使用済みプラスチック成形容器が、成形工程を実施する容器成形者(容器成形業者など)に直接輸送され、破砕工程、洗浄工程、乾燥工程、溶融工程、および成形工程をいずれもこの容器成形者が実施する方法とするとより好適である。
【0047】
従来、プラスチック成形容器のリサイクルを行う場合、回収された使用済みプラスチック成形容器を再生樹脂ペレットとするが、通常、容器成形業者などは設備等の観点から樹脂ペレット化を行うことができないため、回収された使用済みプラスチック成形容器を一旦樹脂ペレット形成者(樹脂ペレット製造業者など)に輸送して再生樹脂ペレットとし、得られた再生樹脂ペレットを容器成形者に輸送していた。
【0048】
しかしながら、本実施形態に係るプラスチック成形容器のリサイクル方法では、前述したように樹脂ペレット形成工程を含まないため、回収された使用済みプラスチック成形容器を容器成形者に直接(樹脂ペレット製造業者などの中間加工者を介さずに)輸送してプラスチック成形容器の成形までを行うことができるため、輸送コストの低減、時間短縮、1箇所集中による保管や品質管理のスリム化などを図ることができる。
【0049】
例えば、使用済みプラスチック成形容器を回収する回収工程と、回収された使用済みプラスチック成形容器を、下記の成形工程を実施する容器成形者に直接輸送する輸送工程と、この容器成形者により、使用済みプラスチック成形容器を破砕してプラスチックフレークとする破砕工程と、破砕工程における破砕時または破砕後にプラスチックフレークを洗浄する洗浄工程と、洗浄されたプラスチックフレークを乾燥させる乾燥工程と、乾燥したプラスチックフレークを溶融して溶融物とする溶融工程と、溶融物を含む材料をプラスチック成形容器に成形する成形工程と、を行う方法であると好ましい。
【0050】
さらに、この方法は、使用者により使用された使用済みプラスチック成形容器が小売店などの製品販売者(販売業者)により回収され、回収されたこの使用済みプラスチック成形容器が、この製品販売者に収容物が収容されたプラスチック成形容器(製品)を輸送した輸送者によって容器成形者に直接輸送される方法であると、より効率的なリサイクルシステムとなるため好適である。
【符号の説明】
【0051】
S1 回収工程
S2 破砕工程
S3 洗浄工程
S4 乾燥工程
S5 溶融工程
S6 成形工程
10 プラスチックフレーク
11 使用済みプラスチック成形容器において収容物と接していた面
13 破砕によって露出された面
15 使用済みプラスチック成形容器において容器外面となっていた面