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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024045975
(43)【公開日】2024-04-03
(54)【発明の名称】差動式分布型感知器の試験装置
(51)【国際特許分類】
   G08B 17/00 20060101AFI20240327BHJP
   G08B 17/04 20060101ALI20240327BHJP
【FI】
G08B17/00 K
G08B17/04
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022151088
(22)【出願日】2022-09-22
(71)【出願人】
【識別番号】000233826
【氏名又は名称】能美防災株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002169
【氏名又は名称】彩雲弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】川添 智由
(72)【発明者】
【氏名】松田 大造
【テーマコード(参考)】
5C085
5G405
【Fターム(参考)】
5C085AA20
5C085AB01
5C085BA04
5C085CA12
5G405AA01
5G405AB10
5G405CA13
5G405CA53
(57)【要約】      (修正有)
【課題】差動式分布型感知器の試験を簡単に行う試験装置を提供する。
【解決手段】警戒区域に敷設される空気管11内の圧力上昇を、空気管11とそれが接続される空気管接続部(コックススタンド13)を介して連通するダイヤフラム14によって検知して火災を感知する差動式分布型感知器10の試験を行う試験装置1であって、空気管内に空気を注入する空気注入手段(テストポンプ4)と、空気管と空気管接続部の間に設けられ、空気管内の圧力を検知する圧力センサ2と、圧力センサの出力値に基づいて、差動式分布型感知器の試験結果を判定する判定処理部3と、を備える。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
警戒区域に敷設される空気管内の圧力上昇を、空気管接続部を介して空気管と連通する圧力検知部によって検知して火災を感知する差動式分布型感知器の試験を行う試験装置であって、
前記空気管内に空気を注入する空気注入手段と、
前記空気管と前記空気管接続部の間に設けられ、前記空気管内の圧力を検知する圧力センサと、
前記圧力センサの出力値に基づいて、前記感知器の試験結果を判定する判定処理部と、を備えることを特徴とする試験装置。
【請求項2】
前記圧力センサは、前記空気管と前記空気管接続部を連結する連結部に設けられ、前記連結部と共に着脱可能か、又は、前記連結部に対して着脱可能であることを特徴とする請求項1に記載の試験装置。
【請求項3】
前記空気管接続部には、前記空気管の一方の端部が接続されると共に、前記圧力検知部と連通する第1接続孔部と、前記空気管の他方の端部が接続されると共に、前記空気注入手段が接続される試験孔部と連通する第2接続孔部と、が設けられ、
前記圧力センサは、前記空気管の一方の端部と前記第1接続孔部の間に設けられることを特徴とする請求項1に記載の試験装置。
【請求項4】
前記判定処理部は、前記圧力センサの出力値に基づいて、前記空気管の長さを推定することを特徴とする請求項1に記載の試験装置。
【請求項5】
前記圧力センサは、前記空気管の一方の端部と前記第1接続孔部を連結する連結部であって、両者間の連通を開閉する開閉部が設けられる連結部に設けられ、前記開閉部が閉じていると、前記空気管側の圧力を検知することを特徴とする請求項3に記載の試験装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、差動式分布型感知器の試験装置に関する。
【背景技術】
【0002】
差動式分布型感知器は、熱感知器の一種であり、監視区域に敷設される空気管内の空気の熱膨張による急激な圧力上昇をダイヤフラム等の圧力検知手段によって検知して火災の感知を行うものである。
【0003】
この種の感知器においては、点検に際し、次のような複数種類の試験が行われている(例えば、特許文献1参照)。
作動試験(ポンプ試験):所定量の空気を注入した際に、感知器が正常に作動するか否かを確認する試験。
流通試験:所定量の空気を注入した際の圧力状態を計測し、空気管が正常か否かを確認する試験。
ダイヤフラム試験:所定量の空気を注入した際の圧力状態を計測し、ダイヤフラムが正常か否かを確認する試験。
リーク試験:所定量の空気を注入した際の圧力状態を計測し、リーク抵抗の機能が正常か否かを確認する試験。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2014-71474号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
従来、試験装置としては、シリンジ(空気注入手段)と、マノメータ(圧力計)等の機器からなるものが用いられている(前記特許文献1参照)。
【0006】
従来の試験装置を用いて上記の試験を行う際には、準備作業として、感知器側にシリンジとマノメータを接続する必要があった。また、感知器側のコックスタンド(感知器本体内の空気管が接続される部分)内の空気通路を切り替える必要もあった。
【0007】
しかしながら、シリンジの接続先もマノメータの接続先も、試験ごとに異なると共に、空気通路の切り替え先も、試験ごとに異なる(操作上、コックハンドルの切り替え位置が異なる)。そのため、試験ごとに、試験用の機器を接続し直したり、空気通路を切り替えたりする必要があった。さらには、試験ごとに、別々に空気を注入する必要もあった。
【0008】
したがって、従来、上記の試験を行うのは、工程数がとても多く、作業が煩雑であった。
【0009】
この発明は、上記の事情に鑑み、差動式分布型感知器の試験を簡単に行うことができる試験装置の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
この発明は、警戒区域に敷設される空気管内の圧力上昇を、その空気管とそれが接続される空気管接続部を介して連通する圧力検知部によって検知して火災を感知する差動式分布型感知器の試験を行う試験装置であって、前記空気管内に空気を注入する空気注入手段と、前記空気管と前記空気管接続部の間に設けられ、前記空気管内の圧力を検知する圧力センサと、前記圧力センサの出力値に基づいて、前記感知器の試験結果を判定する判定処理部と、を備えることを特徴とする試験装置、である。
【0011】
この発明において、前記圧力センサは、前記空気管と前記空気管接続部を連結する連結部に設けられたものとすることができ、前記連結部と共に着脱可能に設けられるか、又は、前記連結部に対して着脱可能に設けられるものとすることができる。また、前記空気管接続部には、前記空気管の一方の端部が接続されると共に、前記圧力検知部と連通する第1接続孔部と、前記空気管の他方の端部が接続されると共に、前記空気注入手段が接続される試験孔部と連通する第2接続孔部と、が設けられるものとすることができ、前記圧力センサは、前記空気管の一方の端部と前記第1接続孔部の間に設けられるものとすることができる。また、前記圧力センサは、前記空気管の一方の端部と前記第1接続孔部を連結する連結部であって、両者間の連通を開閉する開閉部が設けられる連結部に設けられ、前記開閉部が閉じていると、前記空気管側の圧力を検知するものとすることができる。また、前記判定処理部は、前記圧力センサの出力値に基づいて、前記空気管の長さを推定するものとすることができる。また、前記判定処理部は、前記空気管の長さの推定値から、前記空気管の標準の圧力減少幅を推定するものとすることができる。
【発明の効果】
【0012】
この発明においては、空気管と空気管接続部の間に設けられる圧力センサが、空気注入手段により空気が注入された空気管内の圧力を検知し、判定処理部が、その圧力センサの出力値に基づいて試験結果を判定する。そのため、試験ごとに、試験用の機器を接続し直さなくても、また、空気通路を切り替えなくても、さらには、別々に空気を注入しなくても、試験を一通り行うことができ、大幅に工程数を減らすことができる。
【0013】
したがって、この発明によれば、差動式分布型感知器の試験を簡単に行うことができる試験装置を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】この発明の試験装置の実施形態の一例を示したものである。(a)及び(b)いずれも、試験対象の差動式分布型感知器と共に装置構成を簡略化して示した構成図であり、(a)が試験装置の接続前で、かつ感知器側の空気通路が監視時の状態にあるものを示しており、(b)が試験装置の接続後で、かつ感知器側の空気通路が試験時の状態(この発明における試験時の状態であり、従来技術における作動試験時と流通試験時の状態)にあるものを示している。
図2】同上の試験装置による試験処理の流れを示した動作フロー図である。
図3】同上の試験装置の他の例を示したものであり、図1(b)と同様の構成図である。なお、開閉部は閉じた状態を示している。
図4】同上の試験装置のさらに他の例を示したものであり、図1(b)と同様の構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、この発明の試験装置の具体例について、図1乃至4を参照しつつ、試験対象である差動式分布型感知器の具体例と共に説明する。
【0016】
[差動式分布型感知器]
まず、図1において、感知器10は、空気管式の差動式分布型感知器であり、監視区域にループ状に敷設される長尺の空気管11と箱状の感知器本体(一般的には検出部とも称される。図示省略)等からなり、感知器本体内に、空気管11が接続されるコックスタンド13(空気管接続部の一例)や、コックスタンド13を介して空気管11と連通し、空気管11内の圧力を検知するダイヤフラム14等を備え、火災発生時、空気管11内の空気の熱膨張による急激な圧力上昇でダイヤフラム14が接点を閉じ、火災信号を出力して火災の感知を行う。
【0017】
コックスタンド13には、空気管11の一方の端部11a側が接続される第1接続孔部13aと、空気管11の他方の端部11b側が接続される第2接続孔部13bと、試験時に空気注入手段が接続される試験孔部13cと、空気管11内の空気を外部に逃がすリーク孔部13dが設けられる。
【0018】
また、コックスタンド13の内部には、空気通路として、固定通路13eと、通路の切り替えが可能な切替通路13fが設けられる。また、切替通路13fの通路を切り替えるものとして、流路切替機構部13gが設けられる。
【0019】
固定通路13eは、第1接続孔部13aとダイヤフラム14を連通する、常時固定の通路として設けられる。切替通路13fは、固定通路13eと第2接続孔部13bとリーク孔部13dの3者間を連通する第1の状態(監視時の状態であり、図1(a)の状態)と、固定通路13eとリーク孔部13dの2者間、及び第2接続孔部13bと試験孔部13cの2者間を別々に連通する第2の状態(この発明における試験時の状態であると共に、従来技術における作動試験時及び流通試験時の状態であり、図1(b)の状態)と、第2接続孔部13bとリーク孔部13dの2者間を連通する第3の状態(従来技術におけるダイヤフラム試験時及びリーク試験時の状態であり、図示は省略)とで、切り替えが可能な通路として設けられる。流路切替機構部13gは、コックハンドル(図示省略)等の操作手段の操作により、切替通路13fの通路を切り替えるものとして設けられる。
【0020】
感知器10は、従来、一般的に用いられているタイプのものであり、既設の差動式分布型感知器は、このタイプのものが多い。試験装置1は、このような従来型の差動式分布型感知器の試験を行うことができるものである。ただし、空気管内の空気の熱膨張による圧力上昇を他の検知手段により検知するタイプのもの等、従来型とは異なるタイプの差動式分布型感知器の試験を行うものとしても用いることも可能である。
【0021】
[試験装置]
・基本構成
そして、図1に示したように、試験装置1は、空気管11とコックスタンド13(空気管接続部の一例)の間に設けられて、空気管11内の圧力を検知する圧力センサ2と、試験時、コックスタンド13の試験孔部13cを介して空気管11内に空気を注入するテストポンプ4(空気注入手段の一例)と、圧力センサ2と一体のものとして設けられて、圧力センサ2の出力値に基づいて、試験結果を判定する判定処理部3等からなる。
【0022】
なお、図示の例は、圧力センサ2と判定処理部3を一体のものとする場合を示しているが、両者を別体のものとし、分離して設けられるものとしてもよい。
【0023】
試験装置1においては、空気管11とコックスタンド13の間に設けられる圧力センサ2が、テストポンプ4により空気が注入された空気管11内の圧力を検知し、判定処理部3が、その圧力センサ2の出力値に基づいて試験結果を判定する。後記で詳細に説明する通り、準備作業として、圧力センサ2、判定処理部3及びテストポンプ4等の接続(後記で説明する連結部5の接続を含む。ただし、常設化したものについては省略可)の作業と、切替通路13fの第2の状態(この発明における試験時の状態であると共に、従来技術における作動試験時及び流通試験時の状態であり、図1(b)の状態)への切り替えの作業が必要になると共に、試験作業として、テストポンプ4による空気管11内への空気注入の作業が必要になる。しかしながら、それらの作業は、原則、試験終了までの間、再度行う必要がない。そのため、試験ごとに、試験用の機器を接続し直さなくても、また、空気通路を切り替えなくても、さらには、別々に空気を注入しなくても、試験を一通り行うことができ、大幅に工程数を減らすことができる。したがって、感知器10の試験を簡単に行うことができる。
【0024】
・各構成部分の具体例
・・圧力センサ
圧力センサ2は、流体用のものが用いられ、所定量の空気を試験孔部13cを介して空気管11内に注入した際の、空気管11内の空気の圧力を検知、計測して電気信号として出力する。出力される計測値は、一定周期(常時でも可)で計測した値とすることができる。
【0025】
・・圧力センサの配置
圧力センサ2は、前記の通り、空気管11とコックスタンド13の間に設けられる。これにより、既設の感知器10に対して後付けが可能となり、取り付けの作業を容易にすることができる。圧力センサ2が設けられる位置については、より詳細には、図1の例のように、空気管11の一方の端部11aと第1接続孔部13aの間とするのが好適である。試験時、試験孔部13cと第2接続孔部13bを介し、空気管11には、他方の端部11b側から空気が注入される。すなわち、図1の例の場合、試験時、圧力センサ2は、空気管11の下流側の位置で圧力を検知することになる。空気管11の他方の端部11bと第2接続孔部13bの間に設けられるものとし、空気管11の上流側の位置で圧力を検知するものとしてもよいが、空気管11の下流側の位置で圧力を検知するものとした方が、テストポンプ4で空気を注入し、空気が空気管11全体を流通した後で圧力を検知することとなり、空気管11に穴が開いている場合など、圧力上昇に明確な差が生じ、異常を見つけやすいという点で有利である。
【0026】
・・連結部
圧力センサ2は、空気管11とコックスタンド13を連結する連結部5に設けられるものとすることができる。図1に示した例の場合、空気管11の一方の端部11aとコックスタンド13の第1接続孔部13aの間に設けられて、両者を連結する連結部5に設けられる。連結部5としては、例えば、空気管11側との接続部と、コックスタンド13側との接続部と、圧力センサ2側との接続部を有する継手部材等とすることができる。
【0027】
なお、圧力センサ2は、連結部5と共に着脱可能に設けられるものとしてもよいし、連結部5に対して着脱可能に設けられるものとしてもよい。
【0028】
・・判定処理部
判定処理部3は、圧力センサ2から出力される圧力の計測値に基づき、その計測値を所定間隔(例えば、1秒間隔)で記録して、圧力上昇率(例えば、基準値に対する計測値上昇分のパーセンテージ等)を算出し、その圧力上昇率の値と各種閾値を比較して、各種試験結果の判定を行う。判定処理部3としては、マイコン等が用いられる。
【0029】
・・空気管の配管長の推定機能
空気管11に注入する空気の量が一定であれば、空気管11が長いほど、上昇する圧力の最大値は減少する。すなわち、空気管11の長さによって、空気管11内の圧力の最大値が決定される。したがって、圧力の最大値から空気管11の長さを推定することができる。判定処理部3は、そのような空気管11の長さの推定機能を有する。なお、空気管11の長さの推定値は、後記で説明する空気管11の標準の圧力減少幅を推定するのに用いることができるが、それ以外にも、現場において、空気管11の施工状態を把握するのにも用いることができる。
【0030】
・・空気管の標準の圧力減少幅の推定機能
空気管11の長さの推定値から空気管11の標準の圧力減少幅(空気管11が正常である場合の圧力減少幅。すなわち、テストポンプ4による空気の注入(加圧)後、その空気による変化がなくなるまでの差)を推定することができる。判定処理部3は、そのような空気管11の標準の圧力減少幅の推定機能を有する。なお、空気管11の標準の圧力減少幅の推定値は、後記で説明する「空気管又はリーク孔の試験」の際に、圧力減少幅判定用の第3閾値を決定するのに用いることができる。
【0031】
・・その他機能(制御機能等)
試験装置1は、圧力センサ2、判定処理部3、テストポンプ4等の動作の制御機能や、各種試験結果等を表示する表示機能等を有するものとすることができ、例えば、判定処理部3がそのような制御機能や表示機能等を有するものとすることができる。
【0032】
・・テストポンプ
テストポンプ4としては、所定量の空気の注入機能を有する電動式のもの(電動式のエアポンプ等)が用いられる。なお、電動式のものに代えて、手動式のシリンジ等を用いるようにしてもよい。
【0033】
・・電源
圧力センサ2、判定処理部3、テストポンプ4等の電源が必要なものの電源としては、電池を用いることができる。
【0034】
・試験装置の常設化
試験装置1を構成する、圧力センサ2、判定処理部3、連結部5、テストポンプ4等は、一部又は全部を感知器10に常設されるものとすることができる。例えば、一部を常設化する場合、連結部5を感知器10に常設されるものとし、試験時に、連結部5に圧力センサ2が接続されるものとすることができる。そのようにすることにより、試験時に、空気管11を脱着する必要をなくすことができる。
【0035】
なお、圧力センサ2、判定処理部3、テストポンプ4等の電源が必要なものを常設化する場合、その電源は、感知器10側の電源を共用するようにしてもよい。
【0036】
[試験方法]
・準備作業
感知器10の試験を行う際、点検員は、準備作業として、圧力センサ2、判定処理部3、連結部5、テストポンプ4等の接続(常設化したものについては、省略可)の作業と、切替通路13fの、固定通路13eとリーク孔部13dの2者間と、第2接続孔部13bと試験孔部13cの2者間を別々に連通する第2の状態(この発明における試験時の状態であると共に、従来技術における作動試験時及び流通試験時の状態であり、図1(b)の状態)への切り替えの作業を行う。
【0037】
・各種試験の内容
(1)空気管の試験(従来技術における流通試験に対応)
判定処理部3において、圧力上昇率の値を圧力上昇判定用の第1閾値と比較して、圧力上昇がないか否かの判断処理を行う。圧力上昇率の値が第1閾値を上回らない場合、圧力上昇なしと判断処理する。ここで、例えば、空気管11に詰まりや大きな穴等があると圧力が上昇しない。圧力上昇がない場合、空気管11に異常がある可能性が高い。したがって、圧力上昇なしと判断される場合には、試験結果として、空気管11に異常ありの判定処理を行う。
【0038】
(2)リーク孔の試験(従来技術におけるリーク試験に対応)
判定処理部3において、(1)の試験で圧力上昇ありの判断がされる場合には、圧力上昇率の値を圧力低下判定用の第2閾値と比較して、圧力低下がないか否かの判断処理を行う。第2閾値を下回らない場合、圧力低下なしと判断処理する。ここで、例えば、リーク孔部13dに詰まり等があると、圧力が低下し難い。圧力低下がない場合、リーク孔部13dに異常がある可能性が高い。したがって、圧力低下なしと判断される場合には、試験結果として、リーク孔部13dに異常ありの判定処理を行う。
【0039】
(3)空気管又はリーク孔の試験(従来技術における流通試験又はリーク試験に対応)
判定処理部3において、(2)の試験で圧力低下ありの判断がされる場合には、圧力上昇率の値を圧力減少幅判定用の第3閾値と比較して、圧力減少幅が適正範囲を超えているか否かの判断処理を行う。第3閾値を下回る場合、圧力減少幅が適正範囲を超えていると判断処理する。ここで、例えば、空気管11に小さな穴がある場合や、リーク孔部13dの抵抗が小さい場合、圧力減少幅が大きくなる。圧力減少幅が適正範囲を超えている場合、空気管11又はリーク孔部13dに異常がある可能性が高い。したがって、圧力減少幅が適正範囲を超えていると判断される場合には、試験結果として、空気管11又はリーク孔部13dに異常ありの判定処理を行う。
【0040】
なお、圧力減少幅判定用の第3閾値は、圧力の最大値から空気管11の長さの推定値を算出して、長さの推定値から標準の圧力減少幅の推定値を算出し、その圧力減少幅の推定値から適正範囲の限界値を決定することにより決定することができる。
【0041】
(4)ダイヤフラムの試験(従来技術における作動試験又はダイヤフラム試験に相当)
判定処理部3において、(3)の試験で圧力減少幅が適正範囲内にあると判断される場合、空気管11とリーク孔部13dが正常であると推測される。したがって、点検員は、感知器10が作動(火災感知)しないか否かを確認して、作動しない場合には、ダイヤフラム4に異常ありと判断することができ、作動する場合には、ダイヤフム4だけでなく、空気管11とリーク孔部13dを含むすべてが正常であると判断することができる。
【0042】
・試験時の動作フローの具体例
図2は、準備作業終了後、試験開始から試験終了までの動作の流れの一例を示したものである。
【0043】
同図に示したように、試験を開始後、ステップS1で、圧力センサ2(判定処理部3を含む)とテストポンプ4に動作命令を行う。ステップS2で、テストポンプ4が所定量の空気を空気管11内に注入し、ステップS3で、判定処理部3が圧力センサ2から出力される圧力の計測値を所定間隔で記録する。判定処理部3は、記録した圧力の計測値から圧力上昇率の値を算出した上で、空気管11の試験(上記(1)の試験)として、ステップS4で、圧力上昇率の値を圧力上昇判定用の第1閾値と比較して、圧力上昇がないか否かの判断処理を行う。圧力が上昇しておらず、Yesと判断される場合には、ステップS5で、空気管11に異常ありの判定処理を行う。一方、圧力が上昇しており、Noと判断される場合には、さらに試験を行うために、判定処理部3は、ステップS6で、圧力の最大値から空気管11の配管長を推定し、推定した配管長の値からステップS7で、標準の圧力減少幅を推定する。さらに、推定した標準の圧力減少幅の値から適正範囲の限界値を決定し、圧力減少幅判定用の第3閾値を決定する。そして、判定処理部3は、リーク孔部13dの試験(上記(2)の試験)として、ステップS8で、圧力上昇率の値を圧力低下判定用の第2閾値と比較して、圧力低下がないか否かの判断処理を行う。圧力が低下しておらず、Yesと判断される場合には、ステップS9で、リーク孔部13dに異常ありの判定処理を行う。一方、圧力が低下しており、Noと判断される場合には、空気管11又はリーク孔部13dの試験(上記(3)の試験)として、ステップS10で、圧力上昇率の値を圧力減少幅判定用の第3閾値と比較して、圧力減少幅が適正範囲を超えているか否かの判断処理を行う。圧力減少幅が適正範囲を超えており、Yesと判断される場合には、ステップ11で、空気管11又はリーク孔部13dに異常ありの判定処理を行う。一方、圧力減少幅が適正範囲を超えておらず、Noと判断される場合には、最後に、ダイヤフラム14の試験(上記(4)の試験)として、ステップ12で、点検員が、感知器10が作動(火災感知)しないか否かを確認する。感知器10が作動せず、Yesと判断される場合には、ステップ13で、ダイヤフラム14に異常ありと判断する。一方、感知器10が作動し、Noと判断される場合には、ステップ14で、ダイヤフラム14だけでなく、すべてが正常と判断して、試験を終了する。
【0044】
[構成の変更例]
以上、この発明の実施形態について、図1乃至4を参照しつつ説明したが、具体的な構成は、上記の実施形態に限られるものではなく、この発明の要旨を逸脱しない範囲の設計変更等の変更も含むものである。
【0045】
・連結部への流通開閉機構の付加
例えば、連結部5については、図3に示したように、空気管11側とコックスタンド13側の間の連通を開閉する開閉部6が設けられるものとすることができ、圧力センサ2は、開閉部6が閉じられて、空気管11側とコックスタンド13側の間の流通が遮断されていると、空気管11側の圧力を検知するように設けられるものとすることができる。
【0046】
これにより、試験時、上記(3)の空気管11又はリーク孔部13dの試験で異常判定があった際には、開閉部6を閉じた状態にして(通常は開閉部6を開いた状態で試験を行う)、上記(3)の試験と同内容の試験を再度行い、空気管11の異常の有無を判定すれば、空気管11とリーク孔13dのどちらに異常があるのかを判定することができる。
【0047】
・連結部の跨設
また、連結部5については、図4に示したように、空気管11の一方の端部11aと他方の端部11bの間と、コックスタンド13の第1接続孔部13aと第2接続孔部13bの間を跨ぐように設けられ、それら4者を連結するものとすることができ、圧力センサ2は、そのように設けられる連結部5に設けられるものとすることができる。
【0048】
以上、この発明の実施形態について、図1乃至4を参照しつつ説明したが、具体的な構成は、上記の実施形態に限られるものではなく、この発明の要旨を逸脱しない範囲の設計変更等の変更も含むものである。
【符号の説明】
【0049】
1:試験装置 2:圧力センサ 3:判定処理部 4:テストポンプ
5:連結部 6:開閉部 10:感知器 11:空気管
11a:一方の端部 11b:他方の端部
13:コックスタンド 13a:第1接続孔部
13b:第2接続孔部 13c:試験孔部 13d:リーク孔部
13e:固定通路 13f:切替通路 13g:流路切替機構部
14:ダイヤフラム
図1
図2
図3
図4