(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024045976
(43)【公開日】2024-04-03
(54)【発明の名称】汚濁物捕捉用構造体及び汚濁物捕捉設備
(51)【国際特許分類】
E03F 5/10 20060101AFI20240327BHJP
E03F 5/14 20060101ALI20240327BHJP
E03F 5/16 20060101ALI20240327BHJP
B01D 29/00 20060101ALI20240327BHJP
B01D 29/11 20060101ALI20240327BHJP
B01D 29/13 20060101ALI20240327BHJP
【FI】
E03F5/10 Z
E03F5/14
E03F5/16
B01D23/02 Z
B01D29/10 501Z
B01D29/10 530A
B01D29/12 A
B01D29/14 A
B01D29/10 510D
B01D29/10 510E
B01D29/14 D
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022151089
(22)【出願日】2022-09-22
(71)【出願人】
【識別番号】392027900
【氏名又は名称】株式会社イトーヨーギョー
(74)【代理人】
【識別番号】110000280
【氏名又は名称】弁理士法人サンクレスト国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】高岡 薫生
(72)【発明者】
【氏名】畑中 浩太郎
(72)【発明者】
【氏名】廣田 義和
【テーマコード(参考)】
2D063
4D116
【Fターム(参考)】
2D063DA07
2D063DB01
2D063DB08
4D116BB01
4D116BC28
4D116BC44
4D116BC46
4D116BC47
4D116BC76
4D116DD05
4D116FF12B
4D116GG02
4D116GG12
4D116KK02
4D116QA35C
4D116QA35D
4D116QA51C
4D116QA51D
4D116QB02
4D116QB13
4D116QB23
4D116VV09
(57)【要約】
【課題】下部室で補足した汚濁物の流出量を抑制する。
【解決手段】汚濁物捕捉用構造体1は、区画床7によって上部室5と下部室6とに区画された処理槽4の当該区画床7に取り付けられ、区画床7上の第1領域A1に流入する廃水を第2領域A2へと越流可能に堰き止める堰部8と、堰部8によって堰き止められた廃水を下部室6へ流す入口部9と、下部室6内の廃水を第2領域A2へ流す出口部10と、を備え、入口部9は、区画床7を上下貫通して取り付けられ廃水を渦流として下部室6へと導く導水管9aを有し、出口部10は、区画床7を上下貫通して取り付けられ導水管9aの下端より下方まで延びる管部材を有し、管部材は、上部を構成する第1管部材11と下部を構成する第2管部材12とを含み、第2管部材12は、管壁を貫通する複数の流入孔12Xを有する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
処理槽の内部を上部室と下部室とに区画する区画床を有する汚濁物捕捉用構造体であって、
前記区画床上の一部である第1領域に流入する廃水を堰き止めると共に当該廃水を当該区画床上にある前記第1領域外の第2領域へと越流可能とする堰部と、
前記堰部によって堰き止められた廃水を前記下部室へ流す入口部と、
前記下部室内の廃水を前記第2領域へ流す出口部と、
を備え、
前記入口部は、前記区画床に上下貫通して形成されている第1の貫通孔を挿通して取り付けられ、前記廃水を渦流として前記下部室へと導く導水管を有し、
前記出口部は、前記区画床に上下貫通して形成されている第2の貫通孔を挿通して取り付けられ、前記導水管の下端より下方まで延びる管部材を有し、
前記管部材は、上部を構成する第1管部材と下部を構成する第2管部材とを含み、
前記第2管部材は、当該第2管部材の管壁を貫通して形成されている複数の流入孔を有する、汚濁物捕捉用構造体。
【請求項2】
前記第2管部材は、外周面における開口率が、上端側に比べて下端側で大きい、請求項1に記載の汚濁物捕捉用構造体。
【請求項3】
前記第2管部材は、下端側の管径が、上端側の管径に比べて大きい、請求項1又は請求項2に記載の汚濁物捕捉用構造体。
【請求項4】
前記第2の貫通孔の内径は、前記管部材の外径に比べて大きく、
前記管部材は、前記区画床に対して着脱可能に構成されると共に、前記第2領域の前記区画床に比べて上方へ前記第2の貫通孔から引き抜き可能に構成される、請求項1又は請求項2に記載の汚濁物捕捉用構造体。
【請求項5】
前記第2管部材の外部を覆う網部材をさらに有する、請求項1又は請求項2に記載の汚濁物捕捉用構造体。
【請求項6】
前記第2管部材と前記網部材との間に配置されるスペーサをさらに有する、請求項5に記載の汚濁物捕捉用構造体。
【請求項7】
前記網部材は、前記第2管部材の下端を覆う位置からさらに下方へ延びる延長部を有する、請求項5に記載の汚濁物捕捉用構造体。
【請求項8】
槽本体、汚濁物が含まれている廃水を前記槽本体に流入させる流入口、及び廃水を前記槽本体外へ流出させる流出口を有する処理槽と、
前記汚濁物の含有率を低下させるために前記槽本体内に設置されて用いられる、請求項1又は請求項2に記載の汚濁物捕捉用構造体と、を備える、汚濁物捕捉設備。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、廃水に含まれている汚濁物の含有率を低下させるために処理槽に設置される汚濁物捕捉用構造体、及びこの構造体と処理槽とを備えた汚濁物捕捉設備に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、自動車が走行する道路の路面には、土砂、粉塵、自動車から排出され空気中を浮遊していた粒子状物質、さらには、自動車から流れ出したオイルや燃料のような油分等が堆積していることがある。このような路面の堆積物は、降雨時に、雨水に混ざって汚濁物となり路面から側溝へと流れ、その後、河川や、道路の周囲にある田畑へ流出することから、河川や田畑の水質汚染を引き起こす原因の一つとなっている。
【0003】
そこで、このような汚濁物を含んだ雨水が河川等へと流れ出る前に、雨水から汚濁物を分離し、汚濁物の含有率を低減させて雨水を下流側へと流すことが提案されている。そこで、この機能を備えた設備として、例えば、特許文献1に記載のものがある。
特許文献1に記載の設備は、地中に設置された処理槽内を上部室と下部室とに上下区画する区画床を備えており、この区画床に、上部室に流入した雨水を堰き止める堰部と、堰き止められた雨水を下部室へ流す入口管と、下部室内に溜まった雨水を上部室に流す出口管とが設けられている。
【0004】
この設備によれば、汚濁物を含む雨水が上部室から入口管を通って下部室へ流れると、下部室ではその流速が遅くなることから、汚濁物の内の、例えば粒子状物質は沈殿物となって下部室に堆積し、また、汚濁物の内の油分は下部室で浮上物となり、沈殿物及び浮上物は下部室で捕捉される。これにより汚濁物の含有率が低下した雨水を、区画床に設けられた出口管を通じて上部室へと流し、そして、処理槽からその下流の河川等へと流すことができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
前記の設備は、雨水を下部室から上部室へ導く出口管の配管径が、上部室から下部室へ導く入口管の配管径に比べて小さく、出口管の近傍で雨水の流速が部分的に速くなるため、出口管の近傍に浮遊する汚濁物が当該出口管に吸い込まれやすい。前記の設備では、下部室で捕捉した汚濁物のうち特に油等の浮遊物が雨水と共に出口管から流出しやすかった。
【0007】
そこで、本発明は、下部室で補足した汚濁物の流出量を抑制する汚濁物捕捉用構造体、及びこの構造体を備えた汚濁物捕捉設備を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の汚濁物捕捉用構造体は、処理槽の内部を上部室と下部室とに区画する区画床を有する汚濁物捕捉用構造体であって、前記区画床上の一部である第1領域に流入する廃水を堰き止めると共に当該廃水を当該区画床上にある前記第1領域外の第2領域へと越流可能とする堰部と、前記堰部によって堰き止められた廃水を前記下部室へ流す入口部と、前記下部室内の廃水を前記第2領域へ流す出口部と、を備え、前記入口部は、前記区画床に上下貫通して形成されている第1の貫通孔を挿通して取り付けられ、前記廃水を渦流として前記下部室へと導く導水管を有し、前記出口部は、前記区画床に上下貫通して形成されている第2の貫通孔を挿通して取り付けられ、前記導水管の下端より下方まで延びる管部材を有し、前記管部材は、上部を構成する第1管部材と下部を構成する第2管部材とを含み、前記第2管部材は、管壁を貫通する複数の流入孔を有することを特徴とする。
【0009】
本発明によれば、下部室の水面から下方に位置が離れた第2管部材から廃水を入口部に流入させるため、下部室における水面に浮上した汚濁物が、入口部に流入しにくくなる。これにより、下部室で捕捉した汚濁物のうち特に油等の浮遊物が廃水と共に流出しにくくなる。
【0010】
また、前記第2管部材は、外周面における開口率が、上端側に比べて下端側で大きいと好ましい。
この場合、各流入孔に流入する廃水の流速について、第2管部材の上下におけるバラツキを抑制することができる。その結果、第2管部材の上端側の流入孔へ流入する廃水の流速が、下端側の流入孔へ流入する廃水の流速に比べて速くなるのを抑制することができる。これにより、下部室の水面付近で捕捉した浮遊物が廃水と共に流出しにくくなる。
【0011】
また、前記第2管部材は、下端側の管径が、上端側の管径に比べて大きいと好ましい。
この場合、各流入孔に流入する廃水の流速について、第2管部材の上下におけるバラツキを抑制することができる。その結果、第2管部材における局所的な浮遊物の吸い込みを抑制することができる。これにより、下部室の水面付近で捕捉した浮遊物が廃水と共に流出しにくくなる。
【0012】
また、前記第2の貫通孔の内径は、前記管部材の外径に比べて大きく、前記管部材は、前記区画床に対して着脱可能に構成されると共に、前記第2領域の前記区画床に比べて上方へ前記第2の貫通孔から引き抜き可能に構成されると好ましい。
この場合、管部材の点検が容易になる。
【0013】
また、前記第2管部材の外部を覆う網部材をさらに有すると好ましい。
この場合、流入孔に流れ込もうとする浮遊物を網部材で受け止めることで、浮遊物の流出を抑制することができる。
【0014】
また、前記第2管部材と前記網部材との間に配置されるスペーサをさらに有すると好ましい。
この場合、第2管部材の外周面と網部材との間に隙間を確保することができる。このため、第2管部材における廃水の流入抵抗を抑制し、これにより、廃水量の低下を抑制することができる。
【0015】
また、前記網部材は、前記第2管部材の下端を覆う位置からさらに下方へ延びる延長部を有すると好ましい。
この場合、延長部の分だけ網部材の表面積を拡大することができ、網部材における浮遊物の捕集面積が拡大する。これにより、網部材による浮遊物の捕集量が増大する。
【0016】
また、本発明の汚濁物捕捉設備は、槽本体、汚濁物が含まれている廃水を前記槽本体に流入させる流入口、及び廃水を前記槽本体外へ流出させる流出口を有する処理槽と、前記汚濁物の含有率を低下させるために前記槽本体内に設置されて用いられる前記汚濁物捕捉用構造体とを備えていることを特徴とする。
前記汚濁物捕捉用構造体と同様に、本発明の汚濁物捕捉設備によれば、下部室の水面から下方に位置が離れた第2管部材から廃水を管部材に流入させるため、下部室における水面に浮上した汚濁物が、管部材に流入しにくくなる。これにより、下部室で捕捉した汚濁物のうち特に油等の浮遊物が廃水と共に流出しにくくなる。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、下部室で捕捉した汚濁物のうち特に油等の浮遊物が廃水と共に流出しにくくなる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【
図2】処理槽及び汚濁物捕捉用構造体を上から見た断面図である。
【
図3】処理槽及び汚濁物捕捉用構造体を側方から見た断面図である。
【
図4A】第1実施形態に係る第2管部材を示す断面図である。
【
図4B】第2実施形態に係る第2管部材を示す断面図である。
【
図4C】第3実施形態に係る第2管部材を示す断面図である。
【
図4D】第4実施形態に係る第2管部材を示す断面図である。
【
図4E】第5実施形態に係る第2管部材を示す断面図である。
【
図5A】第1形態の網部材で覆われた第2管部材を示す部分説明図である。
【
図5B】第2形態の網部材で覆われた第2管部材を示す部分説明図である。
【
図5C】第3形態の網部材で覆われた第2管部材を示す部分説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて説明する。
【0020】
[汚濁物捕捉設備]
図1は、汚濁物捕捉設備を示す斜視図である。
図1に示す汚濁物捕捉設備は、本発明に係る汚濁物捕捉設備の実施の一形態である。この汚濁物捕捉設備は、廃水に含まれている汚濁物の含有率を低下させて廃水を下流側へ流すための設備であり、例えば地中に設置されている処理槽4と、前記汚濁物を捕捉するために処理槽4内に設置されている汚濁物捕捉用構造体1とを有している。なお、本実施形態では、処理槽4は地中に設置されたマンホールからなる。
【0021】
前記廃水は、例えば、降雨時に道路から側溝へと流れた雨水であり、この雨水が処理槽4に流入する。この雨水には汚濁物が含まれており、当該汚濁物には、道路に堆積していた土砂、粉塵、自動車から排出され空気中を浮遊していた粒子状物質、さらには、事故等により自動車から流れ出したオイルや燃料のような油分等がある。このような汚濁物が混ざった雨水は道路の側溝から、その下流側にあって道路の側部等の地中に設置されている処理槽4へ到達する。
【0022】
[処理槽]
処理槽4(マンホール)は、上壁4aに、路面に開口する開口部4cが設けられている。開口部4cは、通常、マンホール蓋4dによって閉じられている。処理槽4は、汚濁物が含まれている廃水を流入させる流入口41、流入した廃水の汚濁物の含有率を低下させる槽本体42、及び廃水を槽本体42外へ流出させる流出口43を有している。流入口41及び流出口43は処理槽4の側壁4bに設けられており、上流側にある前記側溝(図示せず)から延びている流入管44が流入口41に繋がっており、流出口43には流出管45が繋がっている。
【0023】
槽本体42は、汚濁物捕捉用構造体1が有している区画床7によって、廃水が槽本体42内へ流入する及び廃水を槽本体42外へ流出させる上部室5と、この上部室5の下方に形成されている下部室6とに上下区画されている。後に説明するが、下部室6では、汚濁物捕捉用構造体1との共同により、汚濁物が捕捉される。槽本体42は内部に空間を有する円柱形状であり、上部室5ではその下部側に廃水が存在し上部側は空間を成すが、下部室6では廃水が満水状態となる。
【0024】
[汚濁物捕捉用構造体]
図2は、処理槽4及び汚濁物捕捉用構造体1を上から見た断面図である。
図3は、処理槽及び汚濁物捕捉用構造体を側方から見た断面図である。
図1~
図3に示す汚濁物捕捉用構造体1は、廃水に含まれている汚濁物を槽本体42内(下部室6)で捕捉し、廃水を槽本体42外へ流出させるために用いられるものであり、槽本体42内の中間高さ位置に設置される。汚濁物捕捉用構造体1は、前記区画床7と、この区画床7上の一部である第1領域A1に流入した廃水を当該第1領域A1に堰き止める堰部8と、この堰部8によって堰き止められた廃水を下部室6へ流す入口部9と、下部室6内に溜まった廃水を区画床7上にある第1領域A1外の第2領域A2へ流す出口部10とを備えている。
【0025】
入口部9は、管部材(後述の導水管)9aを有しており、出口部10は、第1管部材11及び第2管部材12を有している。これら管部材9a,11,12及び堰部8は区画床7に一体となって設けられている。なお、
図1及び
図3においては、汚濁物捕捉用構造体1が、第1実施形態に係る第2管部材12を有する場合を例示している。以下の説明では、第1実施形態に係る第2管部材12を第2管部材12Aとも称する。以下の説明において、単に「第2管部材12」と称するときは、第1実施形態に係る第2管部材12Aと後で説明するその他の各実施形態に係る第2管部材12(第2管部材12B~12E)に共通する構成についての説明である。
【0026】
なお、本実施形態で示す汚濁物捕捉用構造体1は、出口部10に設ける管部材を、第1管部材11、第2管部材12、及び継手13によって構成しているが、本発明の汚濁物捕捉用構造体では、第1管部材及び第2管部材が別部材でなくてもよく、第1管部材及び第2管部材を繋いだ長さに相当する1つの管部材で構成してもよい。この場合、その1つの管部材の上側部分が第1管部材に相当し、下側部分が第2管部材に相当する。この場合、継手は不要である。
【0027】
また、汚濁物捕捉用構造体1は、下部室6と上部室5とを通気する中空管19を備えている。中空管19の下端は区画床7に取り付けられており、上方に向かって延び、その上端は堰部8の上端よりも高く設定されている。この中空管19は、上部室5の廃水が下部室6へ流れる際に、下部室6の空気を上部室5へと通気するエア抜きのためのものである。
【0028】
区画床7は、槽本体42の内周面の全周と共通する外周輪郭形状を有し槽本体42を上下に区画する部分となる本体部16と、本体部16の外周端縁から下方に延びて側壁4bに嵌った状態となる筒部17とを有している。筒部17と本体部16とは一体として構成されている。また、汚濁物捕捉用構造体1は、区画床7を槽本体42に取り付けている取り付け部50を備えている。この取り付け部50は、区画床7を全体として槽本体42から取り外し可能である。
【0029】
前記堰部8は、区画床7の一部によって構成されており、流入口41側から徐々に高くなる隆起部として構成されている。堰部8は、前記第1領域A1に流入した廃水を堰き止めると共に、当該廃水を第1領域A1外の第2領域へと越流可能とする。流入した廃水は堰部8によって溜められるが、廃水の流入量が増えその水位が頂部8tを越えることで廃水は当該頂部8tを越流する。堰部8によって廃水が堰き止められる領域が第1領域A1であり、この第1領域A1以外の領域が第2領域A2である。第2領域A2は、第1領域A1よりも低い位置にある。また、第2領域A2の床面は水平面とされており、第2領域A2の床面は、流出口43の下端とほぼ同じ高さに設定されている。区画床7の内の、堰部8の上流側(流入口41側)の裾部中央には、水平状の面を有する底部7aが形成されており、この底部7aに前記管部材9aが取り付けられている。この底部7aは区画床7の一部である。
【0030】
図3に示すように、入口部9の管部材9aは、区画床7の第1領域A1に取り付けられている。管部材9aの上端は上部室5に開口しており、下端は区画床7の本体部16の下面16aよりも下に位置しており、下部室6で開口している。なお、上端は上方に向かって開口しているが、下端は槽本体42の周方向(水平方向)に向かって開口している。これにより、堰部8によって堰き止められた廃水は、管部材9aを通って下部室6へ流れ落ち、管部材9aの下端から水平方向に放出され、廃水は下部室6内で周方向のゆっくりとした循環流となる。
【0031】
特に、入口部9の管部材9aは、廃水を渦流として下部室6へと導くために、断面が円形である導水管からなる。なお、以下の説明では、管部材9aを導水管9aとも称する。このような導水管9aによれば、堰部8によって堰き止められている廃水を、渦流として下部室6へと導くことから、堰部8によって堰き止められた廃水の水面付近で浮上する汚濁物(特に油分)を、廃水の渦流に巻き込ませて下部室6へと流しやすくする。
【0032】
下部室6は流入口41及び管部材9aに比べて断面が大きいため、下部室6内に放出された廃水の流速は、流入口41及び管部材9aを通過する廃水の流速よりもはるかに遅い。このため、廃水に含まれていた汚濁物の内の、例えば粒子状物質は沈殿物となって満水状態にある下部室6に堆積し、また、汚濁物の内の油分は満水状態にある下部室6で浮上物となる。このため、沈殿物及び浮上物は下部室6で捕捉される。
【0033】
前記出口部10の第1管部材11及び第2管部材12は、区画床7の第2領域A2に取り付けられており、第1管部材11の上端は上方に向かって開口し、第2管部材12の下端は下方に向かって開口している。本実施形態の第1管部材11及び第2管部材12は、継手13によって接続されて一体に構成される。なお、第2管部材12の下端は、キャップ等によって封止されていてもよい。
【0034】
第2管部材12は、管壁を貫通する複数の流入孔12Xを有する。出口部10には、第2管部材12が有する複数の流入孔12X及び第2管部材12の下端の開口部12Yから廃水が流入する。
【0035】
図3において、第1管部材11の上端は、第2領域A2と同じ高さで開口しており、第2管部材12の下端は、区画床7の本体部16の下面16aよりも下に位置し、下部室6で開口している。さらに、第2管部材12の下端は、管部材9aの下端よりも下方に位置している。なお、第2管部材12の下端は、下部室6に堆積している沈殿物を吸い込むことがないよう、下部室6の底から十分な離間距離を確保する。また、通常時では、堰部8によって第1領域A1で堰き止められている廃水の水位は、第2領域A2にある廃水の水位よりも高くなる。このため、上部室5の廃水は管部材9aを通って下部室6へと自然に流れ、下部室6の廃水は第2管部材12及び第1管部材11を通って上部室5の第2領域へと自然に流れ出ることができる。
【0036】
本実施形態の汚濁物捕捉用構造体1では、下部室6内の廃水を第2管部材12から出口部10に流入させることができる。このような構成では、第2管部材12が無い(第1管部材11のみである)場合の出口部10に対する廃水の流入位置に比べて、廃水の流入位置を下部室6内の水面の位置から下方へ遠ざけることができる。このような構成では、下部室6内の上部に漂っている浮上物が、出口部10へ流入しにくくなる。このため、汚濁物捕捉用構造体1では、下部室6で捕捉した汚濁物のうち特に油等の浮遊物が雨水と共に第2領域A2へ排出されるのを抑制することができ、これにより、下部室6で補足した汚濁物の流出量を抑制することができる。
【0037】
さらに、第1領域A1において、区画床7上の底部7aから堰部8の頂部8tまでの高さによって、廃水が越流する際の水深が決定されるが、当該高さは、例えば、150mm程度に設定される。この場合、底部7aと第2領域A2の床面の高さとの差は、75mm程度である。なお、堰部8の高さ、及び底部7aと第2領域A2の床面との高さの差は、任意に設定することができるが、第1領域A1と第2領域A2との廃水の水頭差に影響を与え、処理槽4内での廃水の流速に影響を与える。このため、これら値は、下部室6において、汚濁物が沈殿したり浮上したりできる程度にゆっくりとした廃水の流れとなるように、設定される。
【0038】
なお、区画床7は、当該区画床7に設けた固定具(例えば、L字金物等)、槽本体42に打設したアンカーボルト、及びナット(いずれも図示せず)等を用いて、適宜の方法により槽本体42に対して着脱可能に設置される。
【0039】
また、区画床7の上面側の中央部に把手が設けられており、本実施形態では、この把手は前記中空管19からなる。つまり、区画床7(汚濁物捕捉用構造体1)を取り外す際、作業者は、この中空管19を掴むことができ、取り外しの作業が容易となる。なお、区画床7、この区画床7と一体である堰部8、管部材9a,11,12、中空管19、及び筒部17は、金属製とすることもできるが、軽量化を図るため、本実施形態では樹脂製であり、管部材9a,11,12及び中空管19は塩化ビニル製とするのが好ましく、その他の上記各部はFRP製とするのが好ましい。
【0040】
以上のような汚濁物捕捉設備によれば、廃水に含まれていた汚濁物を下部室6で捕捉し汚濁物の含有率を低下させ、処理槽4外へと流出させることができる。そして、堰部8、入口部9の管部材9a、及び出口部10の第1管部材11及び第2管部材12等が区画床7に設けられていることから、汚濁物捕捉用構造体1を一体物として取り扱うことができる。そして、鍔部51及びボルト52を備えた取り付け部50によって、この区画床7を全体として槽本体42から取り外すことができるので、汚濁物捕捉用構造体1を丸ごと槽本体42から取り除くことができる。
【0041】
このため、例えば、下部室6に溜まった汚濁物を除去する清掃を行うために、廃水が抜き出されかつ汚濁物捕捉用構造体1が取り除かれた処理槽4の底部(下部室6に相当する空間)へ、作業者が侵入することが可能となる。このようなことから、作業者が侵入するための専用の通路(マンホール)を、区画床7に設ける必要がないため、処理槽4が小規模なものであっても、汚濁物捕捉用構造体1を適用することができる。例えば、内径が1200ミリや900ミリ程度である処理槽4に、汚濁物捕捉用構造体1を設置することが可能となる。また、処理槽4は、新設のマンホールであってもよいが、既設のマンホールとすることもできる。
【0042】
図3に示すように、本実施形態の汚濁物捕捉用構造体1では、出口部10を構成する第1管部材11、第2管部材12及び継手13が、区画床7に対して着脱可能に構成される。具体的には、区画床7は、第2領域A2に形成された貫通孔7b、及び貫通孔7bの周囲に設けられたスタッドボルト21を備える。スタッドボルト21は、第2領域A2における区画床7の底面から上向きに突設される。第1管部材11は、上端にフランジ部11aを備える。貫通孔7bは、フランジ部11aの外径に比べて小さく、継手13の外径φBに比べて大きい内径φAを有する。なお、貫通孔7bの内径φAは、フランジ部11aの外径に比べて小さい。さらに、貫通孔7bの内径φAは、後で説明する網部材(
図5A,
図5B,
図5Cに示す網部材14参照)の外径に比べて大きい。なお、本実施形態では、フランジ部11aの形態が異形である(外形が円形でない)場合を例示しているが、本発明の汚濁物捕捉用構造体におけるフランジ部の形態はこれに限定されず、円形の形態であってもよく、配置位置の制約等に応じて適宜形状が設定される。
【0043】
出口部10(第1管部材11、第2管部材12及び継手13)は、第2管部材12側を下に向けた姿勢で区画床7の上方から貫通孔7bに挿通し、フランジ部11aが区画床7の上面に当接する位置まで降下させることによって、所定位置に配置される。出口部10は、スタッドボルト21をフランジ部11aのボルト穴11bに挿通した状態で、スタッドボルト21にナット22を締結することによって、区画床7に固定される。このような構成の出口部10は、スタッドボルト21及びナット22によるフランジ部11aの締結を解除すれば、出口部10(第1管部材11、第2管部材12及び継手13)を、貫通孔7bから上方へ引き抜くことができる。このため、本実施形態の汚濁物捕捉用構造体1では、例えば、流入孔12Xに浮遊物が詰まって当該出口部10の点検が必要になった場合に、出口部10(第1管部材11、第2管部材12及び継手13)だけを、上方へ引き抜いて点検を行うことができる。このように、本実施形態の汚濁物捕捉用構造体1は、出口部10(第1管部材11、第2管部材12及び継手13)の点検を、区画床7全体を取り外さずに行うことが可能であり、優れたメンテナンス性を有する。
【0044】
[上部室の第2領域]
図2に示している堰部8の頂部8tは直線状であり、この頂部8tから廃水は越流する。堰部8を越流した廃水は、第2領域A2へ落下し、その後、流出口43を通じて槽本体42外へ排出される。このために、第2領域A2は、出口部10から流れ出た廃水及び堰部8から越流した廃水を、槽本体42の側壁4bに形成された流出口43を通じて槽本体42外へと流出させるために、当該廃水を一時的に受け入れる領域であって前記側壁4bに沿った外周輪郭形状を有している。
図2では、槽本体42の中心Cを基準とした第2領域A2の平面的な広がりを示す角度θ(第2領域A2の範囲)は、おおよそ90°である。この実施形態では、流入口41の軸線41cと流出口43の軸線43cとが中心Cを通る一直線上に配置されているため、第2領域A2の廃水は、流出口43へ流れることができる。
【0045】
(第1実施形態に係る第2管部材について)
図1、
図3及び
図4Aには、第1実施形態に係る第2管部材12Aを示している。
図4Aに示す第2管部材12Aは、直管状であり、管壁を貫通する複数の流入孔12Xと、下端に位置する開口部12Yと、外周面12Zとを有する。なお、以下の説明では、第2管部材12の軸方向に直交する方向を径方向とも称し、軸方向回りの方向を周方向とも称する。
【0046】
図4Aに示すように、第1実施形態に係る第2管部材12Aにおいて、流入孔12Xの孔形状は真円状であり、外周面12Zにおいて開口している。第1実施形態に係る第2管部材12Aにおいて、流入孔12Xは、軸方向について所定の間隔(PA1~PA9)を空けつつ、周方向について等間隔QAに形成されている。ここで、前記所定の間隔(PA1~PA9)は、「PA1>PA2>・・・PA8>PA9」のように、軸方向の上端側から下端側へ向かうにつれて、間隔が小さくなる関係を有する。なお、第2管部材12Aにおける所定の間隔(PA1~PA9)は、「PA1>PA2=PA3>・・・>PA7=PA8>PA9」のように、隣り合う間隔が等しくなっている部分を含んでいてもよい。
【0047】
第1実施形態に係る第2管部材12Aでは、軸方向の上端側から下端側へ向かうにつれて、前記所定の間隔(PA1~PA9)をステップ状に小さくして複数の流入孔12Xが形成されている。このため、第1実施形態に係る第2管部材12Aでは、単位面積当たりの流入孔12Xの個数が、軸方向の上端側から下端側へ向かうにつれてステップ状に増大する。換言すると、第1実施形態に係る第2管部材12Aでは、流入孔12Xについての開口率が、軸方向の上端側から下端側へ向かうにつれてステップ状に増大する。なお、ここでいう「開口率」とは、第2管部材12の外周面12Zにおける単位面積当たりの開口部(流入孔12X)の割合である(以下の説明においても同じ)。
【0048】
第2管部材12Aは、外周面12Zにおける開口率が、上端側に比べて下端側で大きい。このため、第2管部材12Aを採用した汚濁物捕捉用構造体1では、各流入孔12Xに流入する廃水の流速について、第2管部材12Aの上下におけるバラツキを抑制することができる。その結果、第2管部材12Aにおける局所的な浮遊物の吸い込みを抑制することができる。これにより、下部室6の水面付近で捕捉した浮遊物が廃水と共に流出しにくくなる。
【0049】
なお、本実施形態に示す複数の流入孔12Xは、全ての流入孔12Xの大きさ及び形状が同じである場合を例示しているが、大きさが異なる流入孔12Xや形状が異なる流入孔12Xが混在していてもよい。なお、軸方向の上端側から下端側へ向かって、流入孔12Xについての開口率は、単調に増大する形態であればよい。第2管部材12は、流入孔12Xについての開口率が、軸方向の上端側から下端側へ向かって、距離に応じて正比例して増大するとより好ましい。
【0050】
(第2実施形態に係る第2管部材について)
図4Bには、第2実施形態に係る第2管部材12を示している。以下の説明では、第2実施形態に係る第2管部材12を第2管部材12Bと称する。本実施形態の汚濁物捕捉用構造体1は、第2管部材12として、
図4Bに示す第2実施形態に係る第2管部材12Bを採用してもよい。第2実施形態に係る第2管部材12Bは、直管状であり、管壁を貫通する複数の流入孔12Xと、下端に位置する開口部12Yとを有する。
【0051】
図4Bに示すように、第2実施形態に係る第2管部材12Bにおいて、流入孔12Xの孔形状は真円状である。第2実施形態に係る第2管部材12Bにおいて、複数の流入孔12Xは、軸方向について等間隔PBで、かつ、周方向について等間隔QBに形成されている。このため、第2実施形態に係る第2管部材12Bでは、流入孔12Xについての開口率が、軸方向の上端側から下端側へ向かって略一定である。このような構成の第2管部材12Bを採用した場合、下部室6の水面から下方に離れた位置で廃水を出口部10に流入させることができるため、下部室6の上部に浮上した汚濁物が、出口部10に流入しにくくなる。なお、第2実施形態に係る第2管部材12Bを採用した場合、流入孔12Xを通過する廃水の流速が、軸方向における下端側に比べて上端側で大きくなる。このため、本実施形態の汚濁物捕捉用構造体1では、第2実施形態に係る第2管部材12Bよりも、第1実施形態に係る第2管部材12Bを採用する方がより好ましい。
【0052】
(第3実施形態に係る第2管部材について)
図4Cには、第3実施形態に係る第2管部材12を示している。以下の説明では、第3実施形態に係る第2管部材12を第2管部材12Cと称する。本実施形態の汚濁物捕捉用構造体1は、第2管部材12として、
図4Cに示す第3実施形態に係る第2管部材12Cを採用してもよい。第3実施形態に係る第2管部材12Cは、直管状であり、管壁を貫通する複数の流入孔12Xと、下端に位置する開口部12Yとを有する。
【0053】
図4Cに示すように、第3実施形態に係る第2管部材12Cにおいて、流入孔12Xの形態は周方向に延びる長円状である。第3実施形態に係る第2管部材12Cにおいて、複数の流入孔12Xは、軸方向について所定の間隔(PC1~PC9)を空けつつ、周方向について等間隔に形成されている。ここで、前記所定の間隔(PC1~PC9)は、「PC1>PC2>・・・PC8>PC9」のように、軸方向の上端側から下端側へ向かうにつれて、間隔が小さくなる関係を有する。なお、第2管部材12Cにおける所定の間隔(PC1~PC9)は、隣り合う間隔が等しくなっている部分を含んでいてもよい。第3実施形態に係る第2管部材12Cでは、軸方向の上端側から下端側へ向かうにつれて、前記所定の間隔(PC1~PC9)をステップ状に小さくして複数の流入孔12Xを形成している。このため、第3実施形態に係る第2管部材12Cでは、流入孔12Xについての開口率が、軸方向の上端側から下端側へ向かうにつれてステップ状に増大する。
【0054】
第2管部材12Cは、複数の流入孔12Xについての下端側の開口率が、上端側の開口率に比べて大きい。このため、第2管部材12Cを採用した汚濁物捕捉用構造体1では、各流入孔12Xに流入する廃水の流速について、第2管部材12Cの上下におけるバラツキを抑制することができる。その結果、第2管部材12Cにおける局所的な浮遊物の吸い込みを抑制することができる。これにより、下部室6の水面付近で捕捉した浮遊物が廃水と共に流出しにくくなる。
【0055】
(第4実施形態に係る第2管部材について)
図4Dには、第4実施形態に係る第2管部材12を示している。以下の説明では、第4実施形態に係る第2管部材12を第2管部材12Dと称する。本実施形態の汚濁物捕捉用構造体1は、第2管部材12として、
図4Dに示す第4実施形態に係る第2管部材12Dを採用してもよい。第4実施形態に係る第2管部材12Cは、直管状であり、管壁を貫通する複数の流入孔12Xと、下端に位置する開口部12Yとを有する。
【0056】
図4Dに示すように、第4実施形態に係る第2管部材12Dにおいて、流入孔12Xの形態は軸方向に延びる長円状である。第4実施形態に係る第2管部材12Dにおいて、複数の流入孔12Xは、第2管部材12Dの軸方向について所定の間隔(PD1,PD2)を空けつつ、周方向について所定の間隔(QD1~QD3)を空けて形成されている。ここで、前記所定の間隔(PD1,PD2)は、「PD1>PD2」のように、軸方向の上端側から下端側へ向かうにつれて間隔が小さくなる関係を有し、前記所定の間隔(QD1~QD3)は、「QD1>QD2>QD3」のように、軸方向の下端側に位置するほど間隔が小さくなる関係を有する。なお、第2管部材12Dにおける所定の間隔(QD1~QD3)は、隣り合う間隔が等しくなっている部分を含んでいてもよい。第4実施形態に係る第2管部材12Dでは、軸方向の上端側から下端側へ向かうにつれて、所定の間隔(PD1,PD2)及び(QD1~QD3)をステップ状に小さくしている。このため、第4実施形態に係る第2管部材12Dでは、外周面12Zにおける流入孔12Xについての開口率が、軸方向の上端側から下端側へ向かうにつれてステップ状に増大する。
【0057】
第2管部材12Dは、複数の流入孔12Xについての下端側の開口率が、上端側の開口率に比べて大きい。このため、第2管部材12Dを採用した汚濁物捕捉用構造体1では、各流入孔12Xに流入する廃水の流速について、第2管部材12Dの上下におけるバラツキを抑制することができる。その結果、第2管部材12Dにおける局所的な浮遊物の吸い込みを抑制することができる。これにより、下部室6の水面付近で捕捉した浮遊物が廃水と共に流出しにくくなる。
【0058】
(第5実施形態に係る第2管部材について)
図4Eには、第5実施形態に係る第2管部材12を示している。以下の説明では、第5実施形態に係る第2管部材12を第2管部材12Eと称する。本実施形態の汚濁物捕捉用構造体1は、第2管部材12として、
図4Eに示す第5実施形態に係る第2管部材12Eを採用してもよい。第5実施形態に係る第2管部材12Eは、上端側と下端側で配管径が異なるレジューサ状であり、管壁を貫通する複数の流入孔12Xと、下端に位置する開口部12Yとを有する。第5の実施形態に係る第2管部材12Eは、下端側の管径D2が、上端側の管径D1に比べて大きい。このため、第2管部材12Eでは、上端側に比べて、下端側により多くの流入孔12Xを形成することができ、これにより、流入孔12Xについての開口率を、下端側でより大きくすることができる。
【0059】
図4Eに示すように、第5実施形態に係る第2管部材12Eにおいて、流入孔12Xの形態は真円状である。第5実施形態に係る第2管部材12Eにおいて、複数の流入孔12Xは、第2管部材12Eの軸方向について所定の間隔(PE1~PE11)を空けつつ、周方向について等間隔QEに形成されている。ここで、前記所定の間隔(PE1~PE11)は、「PE1>PE2>・・・PE10>PE11」のように、軸方向の上端側から下端側へ向かうにつれて、間隔が小さくなる関係を有する。なお、第2管部材12Eにおける所定の間隔(PE1~PE11)は、隣り合う間隔が等しくなっている部分を含んでいてもよい。第5実施形態に係る第2管部材12Eでは、軸方向の上端側から下端側へ向かうにつれて、所定の間隔(PE1~PE11)をステップ状に小さくしている。このため、第5実施形態に係る第2管部材12Eでは、流入孔12Xについての開口率が、軸方向の上端側から下端側へ向かうにつれてステップ状に増大する。
【0060】
第2管部材12Eは、下端側の管径D2が、上端側の管径D1に比べて大きい。また、第2管部材12Eは、複数の流入孔12Xについての下端側の開口率が、上端側の開口率に比べて大きい。このため、第2管部材12Eを採用した汚濁物捕捉用構造体1では、各流入孔12Xに流入する廃水の流速について、第2管部材12Eの上下におけるバラツキを抑制することができる。その結果、第2管部材12Eにおける局所的な浮遊物の吸い込みを抑制することができる。これにより、下部室6の水面付近で捕捉した浮遊物が廃水と共に流出しにくくなる。
【0061】
(網部材について)
図5Aは、第1形態の網部材で覆われた第2管部材を示す部分説明図である。
図5Aに示すように、本実施形態の汚濁物捕捉用構造体1は、第2管部材12を覆う網部材14を有するとより好ましい。本実施形態の汚濁物捕捉用構造体1では、格子サイズが約0.6mm角の樹脂製網を略筒状に構成したものを網部材14として使用する。なお、網部材14を構成する網は金属製であってもよく、格子サイズは本実施形態で例示したサイズに限定されない。
【0062】
図5Aに示すように、本実施形態の汚濁物捕捉用構造体1では、第2管部材12の周囲に網部材14を配置する。網部材14は略筒状であり、軸方向を上下に向けた姿勢で使用する。網部材14は、軸方向の下端部を例えば糸等で縫合して袋状として使用する。網部材14は、第2管部材12の周囲に被せた状態で、上端部を結束バンド18で締め付けることによって、第2管部材12に対して固定される。
【0063】
汚濁物捕捉用構造体1は、第2管部材12の周囲を網部材14で覆うことによって、例えば人工芝等の繊維状の浮遊物が流入孔12Xへ流入して目詰まりすることが抑制できる。汚濁物捕捉用構造体1は、網部材14を設けて流入孔12Xの目詰まりを抑制することによって、第2管部材12及び出口部10における廃水の流入抵抗を抑制し、これにより、廃水量の低下を抑制することができる。
【0064】
図5Bは、第2形態の網部材で覆われた第2管部材を示す部分説明図である。本実施形態の汚濁物捕捉用構造体1は、第2管部材12を覆う網部材14を、
図5Bに示す第2形態とするとより好ましい。
【0065】
図5Bに示すように、本実施形態の汚濁物捕捉用構造体1では、第2管部材12の外周面12Zと網部材14との間にリング状のスペーサ15を配置する。なお、本実施形態で示したスペーサ15はリング状であるが、スペーサ15の形態はこれに限定されず、例えば螺旋状であってもよく、あるいは、第2管部材12の外周面12Zに径方向外側へ突出する凸部を設けて、当該凸部をスペーサ15としてもよい。
【0066】
このようなスペーサ15を有する汚濁物捕捉用構造体1では、第2管部材12の周囲と網部材14との間に隙間を確保することができる。例えば、表面に人工芝等の繊維状の浮遊物が張り付いた網部材14が流入孔12Xに吸い寄せられると、流入孔12Xが目詰まりしたのと同様の状態となる。本実施形態の汚濁物捕捉用構造体1では、スペーサ15によって、第2管部材12の周囲と網部材14との間に隙間を確保することによって、網部材14の目詰まりに起因する流入孔12Xの目詰まりを抑制することができる。そして、網部材14が目詰まりした場合であっても、流入孔12Xに流れ込む廃水の抵抗を抑制することができる。これにより、第2管部材12及び出口部10における廃水の流入抵抗を抑制し、廃水量の低下を抑制することができる。
【0067】
図5Cは、第3形態の網部材で覆われた第2管部材を示す部分説明図である。本実施形態の汚濁物捕捉用構造体1は、第2管部材12を覆う網部材14を、
図5Cに示す第3形態とするとより好ましい。
【0068】
図5Cに示すように、本実施形態の汚濁物捕捉用構造体1では、第2管部材12を覆う網部材14の下方に、網部材14の延長部14aを設けている。延長部14aは、第2管部材12の下端を覆う位置から、網部材14をさらに下方へ延長させた部位である。延長部14aを有する網部材14は、延長部14aを有しない網部材14に比べて、浮遊物の捕集面積が大きく、浮遊物の捕集量を大きい。このため、延長部14aを有する網部材14を備えた汚濁物捕捉用構造体1では、延長部14aがない場合に比べて網部材14の目詰まりが生じにくい。また、網部材14の目詰まりは、第2管部材12に接している部分で生じやすく、延長部14aでは目詰まりが生じにくい。このため、延長部14aを設けた汚濁物捕捉用構造体1では、長期に亘って、出口部10における廃水の流入抵抗を抑制することができる。これにより、長期に亘って、廃水量の低下を抑制することができる。
【0069】
[実施形態の作用効果]
上記実施形態の汚濁物捕捉用構造体1は、処理槽4の内部を上部室5と下部室6とに区画する区画床7を有する。汚濁物捕捉用構造体1は、区画床7上の一部である第1領域A1に流入する廃水を堰き止めると共に当該廃水を当該区画床7上にある第1領域A1外の第2領域A2へと越流可能とする堰部8と、堰部8によって堰き止められた廃水を下部室6へ流す入口部9と、下部室6内の廃水を第2領域A2へ流す出口部10と、を備える。入口部9は、区画床7に上下貫通して形成されている第1の貫通孔を挿通して取り付けられ、前記廃水を渦流として下部室6へと導く導水管9aを有する。出口部10は、前記区画床に上下貫通して形成されている第2の貫通孔を挿通して取り付けられ、導水管9aの下端より下方まで延びる管部材を有する。管部材は、上部を構成する第1管部材11と下部を構成する第2管部材12とを含み、第2管部材12は、管壁を貫通する複数の流入孔12Xを有する。
【0070】
上記構成の汚濁物捕捉用構造体1では、下部室6の水面から下方に位置が離れた第2管部材12から廃水を出口部10に流入させることができるため、下部室6における水面に浮上した汚濁物が、出口部10に流入しにくくなる。これにより、下部室6の水面付近で捕捉した汚濁物のうち特に油等の浮遊物が廃水と共に流出しにくくなる。
【0071】
また、上記第1、第3、第4及び第5実施形態に係る各第2管部材12は、外周面12Zにおける開口率が、上端側に比べて下端側で大きい。この場合、各流入孔12Xに流入する廃水の流速について、第2管部材12の上下におけるバラツキを抑制することができる。その結果、第2管部材12における局所的な浮遊物の吸い込みを抑制することができる。これにより、下部室6の水面付近で捕捉した浮遊物が廃水と共に流出しにくくなる。
【0072】
また、上記第5実施形態に係る第2管部材12Eは、下端側の管径D2が、上端側の管径D1に比べて大きい。この場合、各流入孔12Xに流入する廃水の流速について、第2管部材12の上下におけるバラツキを抑制することができる。その結果、第2管部材12における局所的な浮遊物の吸い込みを抑制することができる。これにより、下部室6の水面付近で捕捉した浮遊物が廃水と共に流出しにくくなる。
【0073】
また、上記実施形態の汚濁物捕捉用構造体1において、貫通孔7bの内径φAは、継手13(管部材)の外径φBに比べて大きく、第1管部材11、第2管部材12、及び継手13は、区画床7に対して着脱可能に構成されると共に、第2領域A2の区画床7に比べて上方へ貫通孔7bから引き抜き可能に構成される。
このような構成の汚濁物捕捉用構造体1によれば、管部材(第1管部材11、第2管部材12、及び継手13)の点検が容易になる。
【0074】
また、上記実施形態の汚濁物捕捉用構造体1は、第2管部材12の外部を覆う網部材14を有する。この場合、流入孔12Xに流れ込もうとする浮遊物を網部材14で受け止めることで、浮遊物の流出を抑制することができる。
【0075】
また、上記実施形態の汚濁物捕捉用構造体1は、第2管部材12と網部材14との間に配置されるスペーサ15を有する。この場合、第2管部材12の外周面12Zと網部材14との間に隙間を確保することができる。これにより、第2管部材12及び出口部10における廃水の流入抵抗が抑制され、第2領域A2へ流出する廃水量の低下を抑制することができる。そして、網部材14が目詰まりした場合であっても、流入孔12Xに流れ込む廃水の抵抗を抑制することができる。
【0076】
また、上記実施形態の汚濁物捕捉用構造体1において、網部材14は、第2管部材12の下端を覆う位置からさらに下方へ延びる延長部14aを有する。この場合、延長部14a分だけ網部材14の表面積を拡大することができ、網部材14における浮遊物の捕集面積が拡大する。これにより、網部材14による浮遊物の捕集量が増大する。
【0077】
また、上記実施形態の汚濁物捕捉設備は、槽本体42、汚濁物が含まれている廃水を槽本体42に流入させる流入口41、及び廃水を槽本体42外へ流出させる流出口43を有する処理槽4と、汚濁物の含有率を低下させるために槽本体42内に設置されて用いられる汚濁物捕捉用構造体1とを備える。
【0078】
上記構成の汚濁物捕捉設備によれば、下部室6の水面から下方に位置が離れた第2管部材12から廃水を出口部10に流入させるため、下部室6における水面に浮上した汚濁物が、出口部10から第2領域A2に流出しにくくなる。これにより、下部室6で捕捉した汚濁物のうち特に油等の浮遊物が廃水と共に流出しにくくなる。
【0079】
なお、本発明は、以上の例示に限定されるものではなく、特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味及び範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【符号の説明】
【0080】
1:汚濁物捕捉用構造体
4:処理槽
5:上部室
6:下部室
7:区画床
8:堰部
9:入口部
9a:管部材(導水管)
10:出口部
11:第1管部材(管部材)
12:第2管部材(管部材)
12X:流入孔
12Z:外周面
14:網部材
14a:延長部
A1:第1領域
A2:第2領域