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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024046001
(43)【公開日】2024-04-03
(54)【発明の名称】火災検知システム及び火災検知方法
(51)【国際特許分類】
   G08B 17/00 20060101AFI20240327BHJP
   G01K 11/32 20210101ALI20240327BHJP
   E21F 11/00 20060101ALI20240327BHJP
   G01H 9/00 20060101ALI20240327BHJP
   G08B 17/06 20060101ALI20240327BHJP
【FI】
G08B17/00 C
G01K11/32 A
E21F11/00
G01H9/00 E
G08B17/06 J
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022151124
(22)【出願日】2022-09-22
(71)【出願人】
【識別番号】305002372
【氏名又は名称】エヌケーシステム株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001678
【氏名又は名称】藤央弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】小川 豊
【テーマコード(参考)】
2F056
2G064
5C085
5G405
【Fターム(参考)】
2F056VF02
2G064AB02
2G064BA02
2G064BC12
2G064CC41
2G064CC43
5C085AA01
5C085AB02
5C085BA25
5C085CA04
5C085FA35
5G405AA01
5G405AB01
5G405AC07
5G405BA02
5G405CA05
5G405FA25
(57)【要約】
【課題】車両などの発熱源を持つ移動体が走行する場合には火災の判定が困難である。
【解決手段】光ファイバ内部を伝搬する光のもどり光を検知して温度を測定する光ファイバ分布型温度センサと、車両の走行位置に関する情報を取得する走行位置情報取得部と、前記光ファイバ分布型温度センサの測定値及び前記走行位置情報取得部の情報を判定する制御判定部と、を備え、前記光ファイバ分布型温度センサの光ファイバは、発熱部を有する車両が通行可能なトンネルの内壁面に、前記トンネルの長手方向に沿って敷設されており、前記制御判定部は、前記光ファイバ分布型温度センサが検知した温度分布情報と、前記走行位置情報取得部の走行位置情報とから、前記トンネル内における火災の発生を検知する。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
トンネル内の火災を検知する火災検知システムであって、
前記トンネルは、発熱部を有する車両が通行可能であり、
前記火災検知システムは、
光ファイバ内部を伝搬する光のもどり光を検知して温度を測定する光ファイバ分布型温度センサと、
少なくとも前記トンネル内における前記車両の走行位置に関する情報を取得する走行位置情報取得部と、
前記光ファイバ分布型温度センサが取得した温度分布情報及び前記走行位置情報取得部が取得した前記車両の走行位置に関する情報を判定する制御判定部と、を備え、
前記光ファイバ分布型温度センサの光ファイバは、前記トンネルの内壁面に、前記トンネルの長手方向に沿って敷設されており、
前記制御判定部は、前記光ファイバ分布型温度センサが検知した温度分布情報と、前記走行位置情報取得部が取得した前記車両の走行位置に関する情報とから、前記トンネル内における火災の発生を検知することを特徴とする火災検知システム。
【請求項2】
請求項1に記載の火災検知システムにおいて、
前記光ファイバ分布型温度センサの光ファイバは、トンネル上部に敷設されていることを特徴とする火災検知システム。
【請求項3】
請求項1に記載の火災検知システムであって、
前記制御判定部は、
前記温度分布情報が所定の第1の温度閾値以上の温度を示す場合、又は所定の第1の温度変化率閾値以上の温度変化率を示す場合に、前記トンネルの長手方向における当該高温又は温度変化の検知位置を第1の高温場所と判定し、
前記車両の走行位置に関する情報から車両が走行している位置である車両走行位置を判定できる場合に、
前記第1の高温場所から所定の距離内に前記判定された車両走行位置が存在しない場合に、火災の発生を検知することを特徴とする火災検知システム。
【請求項4】
請求項3に記載の火災検知システムであって、
前記制御判定部は、
前記第1の高温場所から所定の距離以内の場所において、前記車両位置が所定の速度以上の速度で移動しており、かつ、
前記温度分布情報が所定の第2の温度閾値以上の温度を示す場合、又は所定の第2の温度変化率閾値以上の温度変化率を示す場合に、
前記トンネルの長手方向における当該高温又は温度変化の検知位置を第2の高温場所と判定し、
前記第2の高温場所が、前記車両位置と重なる位置に判定されない場合に、火災の発生を検知することを特徴とする火災検知システム。
【請求項5】
請求項3に記載の火災検知システムであって、
前記制御判定部は、
前記第1の高温場所から所定の距離以内の場所において、前記車両位置が所定の速度以上の速度で移動しており、かつ、前記温度分布情報が、所定の第2の温度閾値以上の温度を示す場合、又は所定の第2の温度変化率以上の温度変化率を示す場合に、前記トンネルの長手方向における当該高温又は温度変化の検知位置を第2の高温場所と判定し、
前記第2の高温場所が、前記車両位置と重なる位置であり、かつ、前記車両位置とともに移動しており、かつ、前記温度分布情報が、所定の第3の温度閾値以上の温度を示す場合に、火災の発生を検知することを特徴とする火災検知システム。
【請求項6】
請求項3に記載の火災検知システムであって、
前記制御判定部は、
前記第1の高温場所から所定の距離以内の場所において、前記車両位置が所定の速度以上の速度で移動しており、かつ、前記温度分布情報が、所定の第2の温度閾値以上の温度を示す場合、又は所定の第2の温度変化率以上の温度変化率を示す場合に、前記トンネルの長手方向における当該高温又は温度変化の検知位置を第2の高温場所と判定し、
前記第2の高温場所が、前記車両位置と重なる位置であり、かつ、前記車両位置とともには移動しておらず、かつ、前記温度分布情報が、所定の第3の温度閾値以上の温度を示す場合に、火災の発生を検知することを特徴とする火災検知システム。
【請求項7】
請求項1~6のいずれか一つに記載の火災検知システムであって、前記走行位置情報取得部は、光ファイバ内部を伝搬する光のもどり光を検知して振動を測定する光ファイバ分布型振動センサ又は分布型振動センサで構成されることを特徴とする火災検知システム。
【請求項8】
請求項7に記載の火災検知システムであって、
前記光ファイバ分布型温度センサと前記光ファイバ分布型振動センサとは、共通の一本の光ファイバを用いて構成されることを特徴とする火災検知システム。
【請求項9】
請求項1~6のいずれか一つに記載の火災検知システムであって、前記走行位置情報取得部は、路線の信号システムから前記車両の走行位置に関する情報を取得することを特徴とする火災検知システム。
【請求項10】
トンネル内の火災を検知する火災検知システムが実行する火災検知方法であって、
前記トンネルは、発熱部を有する車両が通行可能であり、
前記トンネル火災検知システムは、
光ファイバ内部を伝搬する光のもどり光を検知して温度を測定する光ファイバ分布型温度センサと、
少なくとも前記トンネル内における前記車両の走行位置に関する情報を取得する走行位置情報取得部と、
前記光ファイバ分布型温度センサセンサが取得した温度分布情報及び前記走行位置情報取得部が取得した前記車両の走行位置に関する情報を判定する制御判定部と、を備え、
前記光ファイバ分布型温度センサの光ファイバは、前記トンネルの内壁面に、前記トンネルの長手方向に沿って敷設されており、
前記火災検知方法は、
前記光ファイバ分布型温度センサが、温度分布情報を検知するステップと、
前記走行位置情報取得部が前記車両の走行位置に関する情報を取得するステップと、
前記制御判定部が、前記温度分布情報と前記車両の走行位置に関する情報とから、前記トンネル内における火災の発生を検知することを特徴とする火災検知方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、火災を検知する火災検知システム及び火災検知方法に関し、特に、トンネル内において発生する火災の検知に好適な火災検知システム及び火災検知方法に関する。
【背景技術】
【0002】
鉄道用トンネルにあっては列車火災の報告があり、高速自動車道用トンネルにあっては、トンネル内火災の報告がなされている。車両が通行するトンネルにおける火災を早期に検知する技術が求められている。従来から、車両が通行するトンネルにおける火災を検知するトンネル火災検知システムとして、火炎のスペクトルを検知する方法、光ファイバーセンサを用いる方法などが知られている。火炎のスペクトルを検知する方法は、トンネル内の塵埃により炎を検出する光学系が汚損してしまい、その清掃に課題があった。光ファイバを利用したセンサには、光ファイバの一端に入射した光が光ファイバ内で散乱された光を検出することで、光ファイバ自体をセンサとして用いる光ファイバ分布型センサがある。光ファイバ分布型センサは、温度、振動などの物理量を、長距離にわたり連続的に測定することができること、また火炎のスペクトルを検知する方法のような汚損の問題がないことから、光ファイバを利用した火災検知システムは有効なものである。
【0003】
特許文献1には、次の技術が開示されている。すなわち、トンネルの内部には、その内壁に沿って歪み計測用光ファイバ,温度計測用光ファイバ及び壁面温度計測用光ファイバの3本を布設する。これらの光ファイバは、片側を順次接続して1本の連続した光ファイバとし、歪み計測器に接続している。この歪み計測器は、光パルスを発生して光ファイバに入射するとともに、ブリルアン散乱光を受光して歪み計測を行なうもので、その計測した歪み量を異常監視装置へ出力する。この異常監視装置は、歪み計測器で計測される歪み量を常時監視し、これらを信号処理することにより、歪み検出警報、火災検出警報、トンネル外壁異常警報を出力する技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平10-62212号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
光ファイバ分布型温度センサを利用したトンネル火災分布型火災検知システムは、トンネルのように長距離にわたる範囲において温度上昇が発生している地点を検知することができる。その一方で、列車や自動車のように発熱源を持つ移動体が走行するトンネルにおいては、それらの移動体が発生する熱を検知してしまうことがあり、火災による熱の発生と判定することが困難であるという課題があった。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の課題を解決するための手段について代表的な一例は、次のとおりである。すなわち、トンネル内の火災を検知する火災検知システムであって、前記トンネルは、発熱部を有する車両が通行可能であり、前記火災検知システムは、光ファイバ内部を伝搬する光のもどり光を検知して温度を測定する光ファイバ分布型温度センサと、少なくとも前記トンネル内における前記車両の走行位置に関する情報を取得する走行位置情報取得部と、前記光ファイバ分布型温度センサが取得した温度分布情報及び前記走行位置情報取得部が取得した前記車両の走行位置に関する情報を判定する制御判定部と、を備え、前記光ファイバ分布型温度センサの光ファイバは、前記トンネルの内壁面に、前記トンネルの長手方向に沿って敷設されており、前記制御判定部は、前記光ファイバ分布型温度センサが検知した温度分布情報と、前記走行位置情報取得部が取得した前記車両の走行位置に関する情報とから、前記トンネル内における火災の発生を検知することを特徴とする。
【0007】
また、本発明の一例の火災検知システムでは、前記光ファイバ分布型温度センサの光ファイバは、トンネル上部に敷設されていることを特徴とする。
【0008】
また、本発明の一例の火災検知システムでは、前記制御判定部は、前記温度分布情報が所定の第1の温度閾値以上の温度を示す場合、又は所定の第1の温度変化率閾値以上の温度変化率を示す場合に、前記トンネルの長手方向における当該高温又は温度変化の検知位置を第1の高温場所と判定し、前記車両の走行位置に関する情報から車両が走行している位置である車両走行位置を判定できる場合に、前記第1の高温場所から所定の距離内に前記判定された車両走行位置が存在しない場合に、火災の発生を検知することを特徴とする。
【0009】
また、本発明の一例の火災検知システムでは、前記制御判定部は、前記第1の高温場所から所定の距離以内の場所において、前記車両位置が所定の速度以上の速度で移動しており、かつ、前記温度分布情報が所定の第2の温度閾値以上の温度を示す場合、又は所定の第2の温度変化率閾値以上の温度変化率を示す場合に、前記トンネルの長手方向における当該高温又は温度変化の検知位置を第2の高温場所と判定し、前記第2の高温場所が、前記車両位置と重なる位置に判定されない場合に、火災の発生を検知することを特徴とする。
【0010】
また、本発明の一例の火災検知システムでは、前記制御判定部は、前記第1の高温場所から所定の距離以内の場所において、前記車両位置が所定の速度以上の速度で移動しており、かつ、前記温度分布情報が、所定の第2の温度閾値以上の温度を示す場合、又は所定の第2の温度変化率以上の温度変化率を示す場合に、前記トンネルの長手方向における当該高温又は温度変化の検知位置を第2の高温場所と判定し、前記第2の高温場所が、前記車両位置と重なる位置であり、かつ、前記車両位置とともに移動しており、かつ、前記温度分布情報が、所定の第3の温度閾値以上の温度を示す場合に、火災の発生を検知することを特徴とする。
【0011】
また、本発明の一例の火災検知システムでは、前記制御判定部は、前記第1の高温場所から所定の距離以内の場所において、前記車両位置が所定の速度以上の速度で移動しており、かつ、前記温度分布情報が、所定の第2の温度閾値以上の温度を示す場合、又は所定の第2の温度変化率以上の温度変化率を示す場合に、前記トンネルの長手方向における当該高温又は温度変化の検知位置を第2の高温場所と判定し、前記第2の高温場所が、前記車両位置と重なる位置であり、かつ、前記車両位置とともには移動しておらず、かつ、前記温度分布情報が、所定の第3の温度閾値以上の温度を示す場合に、火災の発生を検知することを特徴とする。
【0012】
また、本発明の一例の火災検知システムでは、前記走行位置情報取得部は、光ファイバ内部を伝搬する光のもどり光を検知して振動を測定する光ファイバ分布型振動センサ又は分布型振動センサで構成されることを特徴とする。
【0013】
また、本発明の一例の火災検知システムでは、前記光ファイバ分布型温度センサと前記光ファイバ分布型振動センサとは、共通の一本の光ファイバを用いて構成されることを特徴とする。
【0014】
また、本発明の一例の火災検知システムでは、前記走行位置情報取得部は、路線の信号システムから前記車両の走行位置に関する情報を取得することを特徴とする。
【0015】
また、本発明の一例の火災検知方法は、トンネル内の火災を検知する火災検知システムが実行する火災検知方法であって、前記トンネルは、発熱部を有する車両が通行可能であり、前記トンネル火災検知システムは、光ファイバ内部を伝搬する光のもどり光を検知して温度を測定する光ファイバ分布型温度センサと、少なくとも前記トンネル内における前記車両の走行位置に関する情報を取得する走行位置情報取得部と、前記光ファイバ分布型温度センサセンサが取得した温度分布情報及び前記走行位置情報取得部が取得した前記車両の走行位置に関する情報を判定する制御判定部と、を備え、前記光ファイバ分布型温度センサの光ファイバは、前記トンネルの内壁面に、前記トンネルの長手方向に沿って敷設されており、前記火災検知方法は、前記光ファイバ分布型温度センサが、温度分布情報を検知するステップと、前記走行位置情報取得部が前記車両の走行位置に関する情報を取得するステップと、前記制御判定部が、前記温度分布情報と前記車両の走行位置に関する情報とから、前記トンネル内における火災の発生を検知することを特徴とする。
【0016】
また、本発明の一例の火災検知システムでは、前記光ファイバ分布型振動センサの光ファイバは、トンネル下部に敷設されていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0017】
本発明の一態様によれば、列車や自動車のように発熱源を持つ移動体が走行するトンネルであっても、正確に火災を検知できる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1】トンネル火災検知システムの一例の全体構成図を示す図である。
図2】(a)光ファイバ分布型温度センサの構成例を示す図であり、(b)光ファイバ分布型振動センサの構成例を示す図である。
図3】第1の火災検知フローチャート例を示す図である。
図4】温度分布測定処理例を示す図である。
図5】振動分布測定処理例を示す図である。
図6】列車位置速度等検出処理例を示す図である。
図7】第2の火災検知フローチャート例を示す図である。
図8】温度変化率測定処理例を示す図である。
図9】トンネル内火災の検知例を示す図である。
図10】火災による温度上昇と車両熱源による温度上昇の比較を示す図である。
図11】トンネル火災検知システムの別の一例の全体構成図を示す図である。
図12】実施例4の第1の火災検知フローチャート例を示す図である。
図13】実施例4の列車位置速度等検出処理例を示す図である。
図14】実施例4の走行位置情報取得処理例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下に実施例を用いて本発明の具体的な実施形態について説明する。以降、図を用いて、トンネル火災検知システムを説明する。なお、トンネル内の火災を検知するトンネル火災検知システムについて説明するが、発熱する車両が走行する長い通路であれば、トンネル、坑道、地下道など様々な通路に本発明の火災検知システムは適用できる。トンネル120は、発熱部を有する車両が通行可能なものである。発熱部を有する車両は、列車や自動車であってよい。列車は、駆動用モータやブレーキ装置のような発熱を伴う機器類が用いられている。自動車においては、エンジンやブレーキ装置のような発熱を伴う機器類が用いられている。実施例においては、車両の例として列車を用いて説明する。
【0020】
[実施例1]
図1は、実施例1にかかるトンネル火災検知システム101の全体構成を例示する図である。図1を用いて、トンネル火災検知システム101の全体構成を説明する。トンネル火災検知システム101は、光ファイバ内部を伝搬する光のもどり光を検知して温度を測定する光ファイバ分布型温度センサと、光ファイバ内部を伝搬する光のもどり光を検知して振動を測定する光ファイバ分布型振動センサと、それらセンサを制御する制御判定部110と、を有する。光ファイバ分布型温度センサ104は、そのセンサの光ファイバ102を有している。光ファイバ102は、温度のセンシングに用いられる。光ファイバ分布型振動センサ108は、そのセンサの光ファイバ106を有している。光ファイバ106は、振動の検知に用いられる。光ファイバ102及び光ファイバ106は、トンネル120の内壁面に、トンネル120の長手方向に沿って敷設されているとよい。制御判定部110は、光ファイバ分布型温度センサと光ファイバ分布型振動センサとを制御するとともに、光ファイバ分布型温度センサが検知した温度分布情報と、光ファイバ分布型振動センサが検知した振動分布情報とから、トンネル内における火災の発生を検知し、その検知を発報する。制御判定部110は火災発報をトンネル内及び/又は監視員に伝達する通報部を有してよい。
【0021】
本実施例に用いられる光ファイバ分布型温度センサ及び光ファイバ分布型振動センサは、それぞれ、図2(a)、図2(b)に例示すように、従来から知られているものでよい。
【0022】
図2(a)は、DTSと呼ばれる光ファイバ分布型温度センサの例である。DTS(Distributed Temperature Sensing)は、ラマン散乱を利用して光ファイバの周辺温度を計測する装置である。光源であるレーザ202から射出されたレーザ光は、変調器204にてデジタルパルス変調されたプローブ信号となり、カプラ206、及びデータを補整するための参照コイル208を経て、光ファイバ210へ送出される。ファイバの随所で散乱が起きるが、実施例1ではその散乱信号のうち、後方に散乱された非弾性散乱のラマン散乱と呼ばれる成分を利用するものでよい。ラマン散乱光では、光信号がファイバ内の格子と衝突することでエネルギの励起を受けた信号(Anti-Stokes光)とエネルギを渡した信号(Stokes光)が得られる。この二つの散乱光は、カプラ206で分離され、それぞれが増幅された後、この両者を比較する。散乱された光のうちStokes光は、カプラ206を経由してストークス受信部212、フィルタ214、アンプ216、データ収集部218を経てプロセッサ220に至る。散乱された光のうちAnti-Stokes光は、カプラ206を経由してアンチストークス受信部(Anti-Stokes Receiver)222、フィルタ224、アンプ226、データ収集部228を経てプロセッサ220に至る。途中の伝送損失はStokes光も、Anti-Stokes光も同じ経路を通るので相殺され、二つの信号のエネルギの差、即ち、プローブパルスを送出した時刻を基に、その散乱が起きた位置及び温度情報の二つの情報を得ることができる。実際の散乱信号は非常に微弱なため、プローブパルスを繰り返すことで信号対雑音比(S/N)を改善して、正確な温度計測が可能となる。このような仕組みで、トンネル内に敷設した光ファイバを用いる光ファイバ分布型温度センサによって、トンネル内の各位置における温度情報を得ることができる。
【0023】
図2(b)は、DASと呼ばれる光ファイバ分布型振動センサの例である。DAS(Distributed Acoustic Sensing)は光ファイバを用いて、光ファイバの周囲の振動を検出する装置である。光源であるレーザ232から射出されたレーザ光は、変調器234にてデジタルパルス変調されたプローブ信号となり、カプラ238を経て光ファイバ240へ射出される。ファイバの随所で散乱が起きるが、DASはそれらの散乱信号のうち、弾性散乱であるレイリー散乱と呼ばれる成分を利用する。ある時点でプローブ信号として送出され、散乱されてカプラ238まで戻ってきた光を光Aとし、その次のProbe信号により戻って来た信号を光Bとする。光A及び光Bは、カプラ238、バランス受信部244、データ収集部246を経由してプロセッサ248に至る。レイリー散乱が起こる地点が動いていなければ、光Aと光Bとは同じである。しかしレイリー散乱が起こる地点が動いた場合は、光Aと光Bとには微妙な差が生じる。この差は、時間差、若しくは光路差として表現することができる。この差は非常に微小であるが、光信号が、波長の短い信号であることから位相差として表示することができる。これにより、散乱地点の変化をプローブパルス毎に収集し、並べる事で、散乱場所の時間的な動きを把握することができる。この様にして、レイリー散乱地点の変動によって、ファイバに沿った動きを時系列として、把握することができる。すなわち、プローブパルスが送出された時刻を基準に、散乱が起きた位置、その振動の大きさ(その振動の大きさを時系列にフーリエ変換する事で周波数成分)を求めることができる。このような仕組みで、トンネル内に敷設した光ファイバを用いる光ファイバ分布型振動センサによって、トンネル内の位置における振動情報を得ることができる。
【0024】
次に、実施例にかかるトンネル火災検知システム101が、トンネル内の火災を検知する仕組みを説明する。実施例1では、列車が走行するトンネル120を例にて説明する。列車は、駆動用モータやブレーキ装置のような発熱を伴う機器類を有するものとして説明する。
【0025】
図3図8は、実施例1にかかるトンネル火災検知システム101のフローチャート例である。また、図9は、トンネル内における、車両位置及び火災発生位置と光ファイバ分布型温度センサの測定値及び光ファイバ分布型振動センサの測定値との関係を例示する図である。さらに図10は、火災が発生した時刻の前後における光ファイバ分布型温度センサが測定する温度変化を例示する図である。これらの図を用いて、実施例1における火災検知動作を説明する。
【0026】
トンネル火災検知システム101の説明においては、光ファイバ分布型温度センサ104及び光ファイバ分布型振動センサ108を、それぞれ単に温度センサ104及び振動センサ108と呼ぶことにする。トンネル火災検知システム101が起動されると、制御判定部110は、温度センサ104及び振動センサ108に、測定開始指令を送るものでよい。この測定開始指令を受けて、両センサは図4図5に示すフローに従い測定を開始するものでよい。
【0027】
温度センサ104は、前述の測定開始指令を受信すると、図4に示す温度分布測定処理400に従い、ステップS402にあるように、温度分布Tmp(p),tを測定し、測定結果を温度センサ104内に有する記憶部に記憶するものでよい。この記録する温度分布Tmp(p),tにおいて、tは、その温度分布の測定を開始した時刻であってよく、Tmp(p),tは、時刻tにおける位置pの温度分布を含む情報である。ここでpは、温度センサ104の光ファイバにおける位置であり、光ファイバがトンネル120の長手方向にその内壁に沿って設置されている場合は、トンネル120内における位置を示す。温度センサ104は、温度分布Tmp(p),tが記憶されると、制御判定部110に測定終了信号を送ってもよい。なお、前述のように、温度センサ104から射出されたプローブパルスから得られる散乱信号は非常に微弱であるので、測定開始指令を受信した後、プローブパルスを繰り返すことで信号対雑音比(S/N)を改善した温度分布Tmp(p),tを得るものでよい。この繰り返しを含めて、温度分布Tmp(p),tに関する一度の測定として扱うものでよい。
【0028】
振動センサ108は、前述の測定開始指令を受信すると、図5に示す振動分布測定処理500に従い、ステップS502において、振動分布Vbrtn(p),tを測定し、測定結果を振動センサ108内に有する記憶部に記憶するものでよい。この記録する振動分布Vbrtn(p),tにおいて、tは、その振動分布の測定を開始した時刻であり、Vbrtn(p),tは、時刻tにおける位置pの振動分布を含む情報である。ここでpは、振動センサ108の光ファイバにおける位置であり、光ファイバがトンネル120の長手方向にその内壁に沿って設置されている場合は、トンネル120内における位置を示す。振動センサ108は、振動分布Vbrtn(p),tが記憶されると、制御判定部110に測定終了信号を送ってもよい。なお、測定開始指令を受信した後、プローブパルスを繰り返すことで信号対雑音比(S/N)を改善した振動分布Vbrtn(p),tを得るものでよい。この繰り返しを含めて、振動分布Vbrtn(p),tに関する一度の測定として扱うものでよいことは温度センサの場合と同様である。
【0029】
制御判定部110は、温度センサ104及び振動センサ108の双方から測定終了信号を受信した場合には、両センサに改めて測定指令を送る。このように構成することにより、両センサは同じ時刻に測定を行うこととなり、温度センサ104から得られた温度分布情報と振動センサ108から得られた振動情報とについて同じ時間帯における情報を得ることができる。また、温度センサ104及び振動センサ108は、それぞれの時刻tにおける温度分布Tmp(p),t及び振動分布Vbrtn(p),tを測定ごとに記録している。この記録方法は、毎回記録を更新してもよい。すなわち常に最新の情報が記録されるものでよい。このように構成することで、それら情報を記録するメモリを節約できる。一方、これと異なり、両センサの所定回数の測定結果を記録してもよい。この所定回数は任意に定めることができる。このように構成することで、温度分布Tmp(p),t及び振動分布Vbrtn(p),tについて常に最新の情報とともに、過去の時間帯における情報も記録できる。さらに、最新の情報と過去の情報との間の変化を観測するのに都合が良い。また、最新の情報と過去の情報との間で演算をしやすくなるなどの効果がある。
【0030】
次に火災検知処理について説明する。図3は、火災検知処理を行うフローチャート例である。トンネル火災検知システム101が起動されると、制御判定部110は、図3に示す第1の火災検知フローチャート例300を起動する。火災検知処理フローチャートを起動するにあたっては、必要な温度分布Tmp(p),t及び振動分布Vbrtn(p),tが得られるタイミングに起動されてもよい。
【0031】
制御判定部110は、演算部、演算部がアクセスできる記憶部、インターフェース部及びメモリを有するマイコンで構成されるとよい。制御判定部110において火災検知フローチャート例300が起動すると、ステップS302「温度分布Tmp(p),t読み込み」を実行する。ここで読み込まれる温度分布Tmp(p),tは、温度分布測定処理400において測定及び保存された最新の情報でよい。次いで、ステップS304「振動分布Vbrtn(p),t読み込み」を実行する。ここで読み込まれる振動分布Vbrtn(p),tは、振動分布測定処理500において測定及び保存された情報であって、ステップS302において読み込んだ温度分布Tmp(p),tに対応する時刻におけるものでよい。しかし、ステップS304において読み込まれるVbrtn(p),tは、振動分布測定処理500において測定及び保存された最新の情報であるとよい。温度分布測定処理400及び振動分布測定処理500は、火が燃え広がる時間に比べ、十分短い時間で処理が行われるため、最新の温度分布Tmp(p),tと最新の振動分布Vbrtn(p),tとは、実質的に同時刻のものとして扱ってもよい。
【0032】
ステップS304に続いて、ステップS306において、「列車位置、速度等検出」の処理を実行する。ステップS306「列車位置、速度等検出」における具体的な処理を、図6に示す。図6に示す列車位置速度等検出600においては、まずステップS602において、トンネル内に列車が在線しているか否かを判定する。この判定においては、まず振動分布測定処理500にて保存された最新の振動分布Vbrtn(p),tを読み込んでもよい。次いで、そのVbrtn(p),tについて、「Vbrtn(p),t≧ThV」となる場所bが存在するかを判定してもよい。列車振動閾値ThVは、振動センサ108が、観測した振動分布データから、列車が走行している際の振動を判定する閾値である。この判定結果からステップS604において、「Vbrtn(p),t≧ThV」となる位置pが存在する場合に列車がその位置において走行していると判定してもよい。すなわち、振動分布の情報が所定の振動閾値ThV以上の振動を示す位置を車両位置と判定できる場合に、列車がその位置において走行していると判定してもよい。ここで、この位置pの範囲が、所定の長さLtrainである場合は、列車がその位置において走行していると判定するものでもよい。この所定の長さLtrain以上である「Vbrtn(p),t≧ThV」となる位置pの範囲を、列車の場所bと判定してもよい。列車の場所は、列車位置、すなわち列車走行位置である。場所bの両端の座標をPv1及びPv2とする。但し「Pv2>Pv1」とする。座標Pv1及びPv2の少なくとも一方が、トンネルの両端の座標Pstart及びPendの内にあれば、トンネル内に列車在線ありとしてよい。ステップS602で、トンネル内に列車在線ありの場合、Yesへ進み、そうでない場合は、Noへ進むものでよい。場所bは、その座標が、制御判定部110のメモリに記憶される。所定の長さLtrainは、トンネル120を走行する列車に応じて定めてもよい。なお、トンネル内に列車が在線していても、低速で走行している場合には、振動センサ108は列車の振動を検知しないため、列車は存在しないと判定され、前述の場所bは存在しない。しかし、この場合は、火災検知に影響を及ぼすような列車走行による風は発生しないため、火災検知において支障はない。前述のように、振動センサは、トンネル内における前記車両の走行位置に関する情報を取得するものと言える。
【0033】
ステップS602において、列車の在線が検出されなかった場合は、ステップS602におけるNoへ進み、列車位置速度等検出600の処理を終える。列車在線フラグを用意しておき、列車の在線が検出されなかった場合は、そのフラグを非在線としてもよい。ステップS602において、列車の在線が検出された場合は、Yesに進む。ここで、列車の在線が検出された場合は、前述の列車在線フラグを在線とするものでよい。列車在線フラグは、列車がトンネル内に在線しているかの判定に用いてもよい。続くステップS604では、列車位置をステップS602で判定した場所bに対応する座標Pb1及びPb2を列車位置として検出するものでよい。
【0034】
次いで、ステップS606において、列車速度及び移動方向検出を行うものでよい。ステップS606では、ステップS602において読み込んだ振動分布Vbrtn(p),tの測定時刻t1から、所定時間経過した後の時刻であるt2における振動分布Vbrtn(p),tを、振動センサ108から読み込む。この新たに読み込んだ振動分布を用いて前述したものと同様の処理を行い新たな列車位置を検出する。この新たな列車位置と以前の列車位置との差をとることで、列車の進行方向情報を取得できる。また、新たな列車位置と以前の列車位置との差を、時間(t2-t1)で除算することで、列車の速度情報を取得できる。ここで得られた列車の速度情報をVtrain,tと呼び、Vtrain,tは、制御判定部110のメモリに記憶されるものでよい。Vtrain,tにおける「t」は、その速度情報を得たもととなる振動分布Vbrtn(p),tを取得した際の時刻でもよい。
【0035】
さらに、列車位置速度等検出600においては、ステップS608「トンネル内列車停止検出」において、トンネル内で列車が停止したかを検出する。このトンネル内列車停止検出においては、逐次得られる前述した列車の速度情報の推移から列車停止したことを推定するとよい。すなわち、列車の速度が減少すると、それに伴い列車が発生する振動が減少するため、ある速度から振動分布Vbrtn(p),tに列車による振動が検出されなくなる。ステップS608では、時間を追って列車の位置情報及び速度情報を履歴として保存しつつ、それらの情報を監視し、列車の速度が低下し、振動分布Vbrtn(p),tに列車による振動が検出されなくなった時点の位置を、列車停止位置として記憶するとよい。なお、ステップS608「トンネル内列車停止検出」の処理は、列車位置速度等検出600の中では行わずに、列車位置速度等検出600とは別に独立した処理としてもよい。独立した処理とすることで、列車位置速度等検出600自体の処理時間を短縮できる。列車停止位置情報は、後に述べる火災を検知した際に、列車が安全な地点にいるか、危険な地点にいるかなどの判定に用いることができる。
【0036】
ステップS306に次いで、ステップS308において、ステップS302で読み込んだ温度分布Tmp(p),tについて、「Tmp(p),t≧Th1となる高温場所a1があるか」を判定する。「Tmp(p),t≧Th1」となる高温場所a1が存在しない場合は、トンネル内で火災は発生していないと判定して、ステップS308におけるNOへ進み、再度ステップS302の処理を行う。「Tmp(p),t≧Th1」となる高温場所a1が存在する場合、ステップS308におけるYesへ進む。Th1は、温度閾値であって、火災が発生した場合に温度センサ104が火災であると検知する閾値の一つである。このTh1は、火災発生地点において列車の走行による風の影響がない場合に火災を検知する閾値でもよい。図9(a)において、列車912に対応する温度分布922がこの例である。位置Pa1とPa2との間の範囲において「Tmp(p),t≧Th1」を満たしている。また、図9(a)において、温度分布926について、位置Pa3と位置Pa4との間の範囲において「Tmp(p),t≧Th1」を満たしている。これら範囲をいずれも高温場所a1と定める。なお、本明細書において、一点ではない、ある大きさを有する幅を便宜上「位置p」と表現する場合がある。なお、温度分布922において分布に波形が生じるのは、列車の駆動用モータやブレーキ装置が編成中の一部の車両に偏在することなどによる。
【0037】
ステップS308の処理に次いで、ステップS310の処理を説明する。ステップS310では、ステップS308において検出した「Tmp(p),t≧Th1」となる高温場所a1の付近に列車が存在するかを判定する。ステップS310では、ステップS308において検出した「Tmp(p),t≧Th1」となる高温場所a1と、ステップS306において検出した列車位置との関係を判定してもよい。今、ステップS310で、「場所a1付近に列車有?」における「付近」に対応する距離の閾値を、付近の閾値Lnearと呼ぶことにする。Lnearは正の値である。高温場所a1の座標における両端の位置をP1及びP2とする。但し「P1<P2」とする。同様に、ステップS306において検出した列車位置をPv1及びPv2とする。「P1-Lnear」と「P2+Lnear」との間にPv1及びPv2の少なくとも一つが存在する場合を、ステップS310において「Tmp(p),t≧Th1」となる高温場所a1の付近に列車が存在すると判定する。ステップS310において、「Tmp(p),t≧Th1」となる高温場所a1の付近に列車が存在する場合、Yesに進み、存在しない場合はNoに進む。ここで、付近の閾値Lnearは、列車が走行することによるトンネル内に発生する風が、火災が発生した場所において温度センサ104が火災による温度の検知に影響を及ぼすことがなくなる目安となる距離である。列車が起こす風による影響はゆらぎがあるので、「付近」の判定において、付近の閾値Lnearは数学的な厳密さを持つものではない。ステップS310の判定がNoである場合、ステップS332「トンネル火災発報」処理を実行した後、ステップS302の処理に戻る。ステップS310の判定がYesである場合、ステップS312の処理に進む。図9(a)の例において、温度分布922は、列車912が作り出す温度分布ではあるが、ステップS310の判定においてはYesとなる。しかし、この場合については、火災とは判定されないよう後に処理が行われる。図9(a)の例において、温度分布926については、列車912が、座標(Pa3,Pa4)で規定される高温場所a1の「付近」にある場合は、Yesと判定され、「付近」にない場合は、Noと判定される。
【0038】
ステップS310の判定がNoである場合、ステップS308において、「Tmp(p),t≧Th1」となる高温場所a1が存在して、ステップS310において高温場所a1の付近に列車が存在しない状態であるので、高温場所a1において火災が発生していると判定する。そのためステップS322において「トンネル火災発報」処理を実行する。このステップS310の判定がNoである場合にトンネル火災が発報されるのは、制御判定部110が、温度センサ104の出力である温度分布情報が所定の第1の温度閾値Th1以上の温度示す場合に、前記トンネル120の長手方向における検知位置を高温場所a1と判定して、光ファイバ分布型振動センサ108の出力である振動分布情報について、高温場所a1から付近の閾値Lnear内に、列車振動閾値ThV以上となる場所を判定しない場合である。
【0039】
ステップS332におけるトンネル火災発報処理は、トンネル内において火災が発生した旨を通知する。この通知は、音声等の音響信号によって通知するものでも、所定の文字や図形を表示部に表示して通知するものでもよい。音響信号で通知する場合、列車の運行を制御する司令室に音声で火災の発生を通知できる。表示部に通知される場合、同じく列車の運行を制御する司令卓に火災の発生を表示できる。さらにこの通知は、列車の運行管理を行うシステムに送られ、列車を安全な位置に停止するための制御に用いられてもよい。
【0040】
ステップS310でYesと判定された後、ステップS312では、「列車速度≧速度閾値」であるかを判定する。速度閾値は、温度センサ104が火災に起因する温度を検知する際、その火災が起きている場所に、列車が走行することによる風が影響する。この風は、火災発生場所と列車が走行する場所との間の距離とともに、走行する列車の速度にも依存する。速度閾値Tspeedは、付近の閾値であるLnear以内において列車が走行する場合に、温度センサ104が火災に起因する温度を検知する際に影響を及ぼす速度の閾値である。ステップS312の判定がYesである場合、ステップS314に進む。ステップS312の判定がNoである場合、ステップS332「トンネル火災発報」処理を実行した後、ステップS302の処理に戻る。
【0041】
ステップS314においては、「Tmp(p),t≧温度閾値Th2となる場所a2があるか?」を判定する。
【0042】
ここで、温度の状態を検知する閾値をまとめて説明する。第1の温度閾値Th1は、火災位置付近に列車がおらず、すなわち列車の走行による風の影響がない場合に、火災を検知する温度閾値である。第2の温度閾値Th2は、列車の走行による風の影響がある場合に、火災を検知する温度閾値であり、「Th1>Th2」となる。第3の温度閾値Th3は、火災位置付近の列車の走行の影響により風が吹いている場合に、火災を検知する温度閾値、又は走行している列車が火災を起こしている場合に、火災を検知する閾値であって、「Th3>Th1」である。列車の排熱による温度が、Th1より高く、Th3より低くなるようにTh1及びTh3を設定するとよい。前述の列車の排熱による温度は、列車が走行する際に、駆動用モータやブレーキ装置のような発熱を伴う機器類が発生する熱や、空調装置が発生する排熱により生じる温度である。この温度は、温度センサ104の光ファイバが検知する位置における温度である。
【0043】
また、ここで、列車の排熱と温度センサ104が検知する温度との関係を説明する。列車の排熱と温度センサ104が検出する温度との関係を図9に示す。図9は、三つの時刻T1、T2及びT3において、それぞれ、車両位置、振動センサ測定値、温度センサ測定値を例示する図である。図9(a)、(b)及び(c)は、それぞれ時刻T1、T2及びT3に対応する。図9(a)に例示するように、温度センサ104は、列車912の位置において列車の排熱による温度を検知して、測定値として温度分布を出力する。図9における温度センサ測定値及び振動センサ測定値のグラフにおけるPstart及びPendは、それぞれトンネル120の端の位置を示す。
【0044】
ステップS314の処理について説明を続ける。ステップS314の処理は、列車の走行による風がある条件下において、火災を検出するための前処理である。「Tmp(p),t≧温度閾値Th2となる場所a1」について、図9に示す例を用いて説明する。図9(a)において、トンネル内には列車912が走行していて、火災914が発生している。トンネル内位置に対応して温度センサ測定値は、列車912の位置に対応した温度分布922が観測され、火災914に対応して温度分布924、924及び928が観測される。温度分布924、926及び928は、火災914の状態によって変化し、一度の測定の観測値はこれらの内の一つである。ここで、火災914に対応して温度分布924が観測された場合、「Tmp(p),t≧温度閾値Th2となる場所a2」は二つあり、温度分布922に対応する座標(Pa1、Pa2)と、温度分布924に対応する座標(Pa3、Pa4)である。この座標Pa1、Pa2、Pa3、及びPa4は、温度分布と閾値Th1、Th2、及びTh3との交点の座標である。より正確には、閾値により座標の値は異なるが、描画の都合から、いずれの閾値についても同じ座標で表現してある。この表現は、図9において同じである。
【0045】
ステップS314でYesと判定された場合、ステップS316に進み、ステップS314でNoと判定された場合、ステップS302に戻る。
【0046】
ステップS316では、ステップS314で求めた高温場所a2について、高温場所a2は列車位置に一致するかを判定する。列車位置を求める方法は、ステップS306における列車位置速度等検出600のステップS602及び604と同じ処理でよい。
【0047】
ステップS316でYesと判定された場合、ステップS318へ進む。一方、ステップS316でNoと判定された場合、ステップS332に進む。ステップS316においてNoと判定された場合、列車の排熱を検知したものではなく、トンネル内の火災を検知したものとして、ステップS332においてトンネル火災を発報する。
【0048】
ステップS316の判定がNoとなりトンネル火災が発報されるのは、次の場合である。すなわち、制御判定部110は、温度センサ104の出力である温度分布情報が所定の第1の温度閾値Th1以上の温度を示す場合、トンネル120の長手方向におけるその検知位置を高温場所a1と判定して、振動センサ108の出力である振動分布情報が、振動閾値ThVより大きい振動を表す列車位置が、高温場所a1から付近の閾値Lnear以内の場所において、所定の速度Tspeed以上の速度で移動しており、かつ、温度センサ104の出力である温度分布情報が所定の第2の温度閾値Th2以上の温度を示す高温場所a2が存在し、高温場所a2が列車位置には一致しない場合、火災の発生を発報する。本実施例では、図3に示すように、ステップS302から始まるを経てステップS316に至るものであった。しかし、これは一例であって、火災検知フローチャート例300において、ステップS308~ステップS312の処理を経ずにステップS316に進むものであってもよい。この場合、ステップS316の処理にあたり、ステップS316の中でステップS306の処理を行い、列車位置を求めることもできる。
【0049】
ステップS318の処理を説明する。ステップS318において、ステップS314において検出した高温場所a2は、列車とともに移動しているかを判定する。この判定では、ある時刻において取得した温度分布Tmp(p),tのデータ及び振動分布Vbrtn(p),tのデータから高温場所a2と列車位置を求め、その時刻から所定時間経過した時刻における温度分布Tmp(p),tのデータ及び振動分布Vbrtn(p),tのデータから新たな高温場所a2と新たな列車位置を求め、両時刻におけるそれぞれの高温場所a2の座標と列車位置の座標との関係を判定してもよい。例えば、両時刻において、列車位置の座標のうち小さい座標と高温場所a2の座標のうち小さい座標との差が所定の誤差以内であるかを判定してもよい。この差が所定の誤差以内である場合を、「場所a1は、列車とともに移動している」と判定してもよい。さらにステップS318の処理では、ステップS312で行った「列車速度≧速度閾値」であるかの判定処理を加えてもよい。この列車速度に関する判定を加えることにより火災検知の精度を高めることができる。前述の「所定時間経過した時刻」における所定時間は、例えば、0.1秒、0.2秒、0.5秒、又は1秒でもよい。また前述の「所定の誤差」は、走行する列車の速度や発生する火災の状態に応じて設定するとよい。ステップS318でYesと判定された場合はステップS320へ進み、Noと判定された場合はステップS330に進む。
【0050】
ステップS320の処理を説明する。ステップS320においては、「温度分布Tmp(p),t≧温度閾値Th3」となる高温場所a3があるかを判定してもよい。Th3は、走行している列車が火災を起こしている際の、火災を検知する閾値でよい。ステップS320の処理は、ステップS314において行った処理を温度閾値Th3について行うものでよい。図9(c)における温度分布962の一部である温度分布964が温度閾値Th3で検出されるのがこの場合の例である。温度分布964は、列車912において発生した火災914によって生ずるものである。
【0051】
ステップS320において、Yesと判定された場合はステップS322に進み、Noと判定された場合はステップS302へ戻る。
【0052】
ステップS322における列車火災発報処理は、列車で火災が発生した旨を通知する。この通知は、音声等の音響信号によって通知するものでも、所定の文字や図形を表示部に表示して通知するものでもよい。音響信号で通知する場合、列車の運行を制御する司令室に音声で火災の発生を通知できる。表示部に通知される場合、同じく列車の運行を制御する司令卓に火災の発生を表示できる。さらにこの通知は、列車の運行管理を行うシステムに送られ、列車を安全な位置に停止するための制御に用いられてもよい。ステップS322の処理を行った後はステップS302に戻る。
【0053】
ステップS320を経由してステップS322における列車火災発報処理を行う場合は、次の場合である。すなわち、制御判定部110は、温度センサ104の出力である温度分布情報が、所定の第1の温度閾値Th1以上の温度を示す高温場所a1が存在する場合、高温場所a1の付近に列車があり、列車の速度は所定の閾値以上であり、トンネル120の長手方向の温度閾値Th2以上の検知位置を高温場所a2と判定し、振動センサ108の出力である振動分布情報が、所定の振動閾値ThVより大きい振動を示す位置を列車位置と判定し、高温場所a2が、列車位置と重なる位置であり、かつ、列車位置とともに所定の速度Tspeed以上で移動している場合、温度センサ104の出力である温度分布情報が、所定の第3の温度閾値Th3より高い温度を示す場合、火災の発生を検知する。
【0054】
次にステップS318でNoと判定された場合のステップS330の処理を説明する。ステップS330の処理は、ステップS320の処理と同じでよい。ステップS330でYesと判定された場合は、ステップS332へ進み、Noと判定されたであった場合はステップS302へ戻るも。例えば、図9(b)における温度分布952と重なる温度分布954が温度閾値Th3で検出される。温度分布954は、火災914によって生ずるものである。
【0055】
ステップS332における「トンネル火災発報」処理は、前述したとおりである。本実施例では、図3に示すように、ステップS302から始まるを経てステップS330に至るものであった。しかし、これは一例であって、火災検知フローチャート例300において、ステップS308~ステップS312の処理を経ずにステップS330に進むものであってもよい。この場合、ステップS330の処理にあたり、ステップS316の中でステップS306の処理を行い、列車位置を求めることもできる。また、ステップS314において、ステップS320と同様の処理を行い、Yesとなった場合に火災の発報を行い、Noの場合ステップS302に戻るようフローを構成することもできる。この場合は、火災検知フローチャート例300で、ステップS316以降は無いものである。この場合の火災の発報は、トンネル火災と列車火災とは区別しなくともよい。
【0056】
ここまでに述べた実施例1では、S308に示すように温度分布Tmp(p),tと温度閾値を比較して高い温度を示す場所、例えば高温場所a1を検出して火災検知を行う例を説明した。実施例1の変形例として、温度閾値を用いずに温度変化率を用いてトンネル火災や列車火災を検知することもできる。すなわち、実施例1の変形例として、時間をおいた、例えば二つの時刻における温度分布Tmp(p),tを比較することにより、温度を測定している全体の範囲わたる温度変化率Tgrdntの分布を算出し、その温度変化率Tgrdntの分布について、温度変化率閾値Gfire1やGfire2と比較を行い火災の検知を行うこともできる。この処理をステップS302で行い場所a1を求めることもできる。ステップS314においても同様である。ある温度変化率を上回る場所が、列車位置に一致するか、また、その場所が列車とともに移動するか、に関する判定も、図3においてS316やS318においてある場所、例えば高温場所a2、について行ったものと同様の処理をある温度変化率を上回る場所について行うことで可能である。この処理については、次に述べる実施例2における処理を導入することもできる。従って、温度閾値を用いずに温度変化率を用いてトンネル火災や列車火災を検知することもできる。
【0057】
実施例1及びその変形例によれば、列車や自動車のように発熱源を持つ移動体が走行するトンネルであっても、正確に火災を検知できる。
【0058】
[実施例2]
次に本発明の実施例2にかかるトンネル火災検知システム101を説明する。実施例2にかかるトンネル火災検知システム101の構成及びハードウェア構成は、実施例1のものと同様でよいので、これらの説明は省略する。実施例2は、火災を検知する方法が実施例1と異なる。図7に、実施例2にかかるトンネル火災検知システム101のフローチャート例を示す。図7を参照して実施例2について説明をする。
【0059】
トンネル火災検知システム101が起動されると、制御判定部110は、温度センサ104及び振動センサ108に、測定開始指令を送るとよい。この測定開始指令を受けて、両センサ104、108は、図4図5に示すフローに従って測定を開始する。温度分布測定処理400及び振動分布測定処理500は、実施例1と同じである。
【0060】
トンネル火災検知処理は、制御判定部110において行われる。制御判定部110において火災検知フローチャート例700が起動すると、ステップS702「温度分布Tmp(p),t読み込み」を実行する。次いで、ステップS704「振動分布Vbrtn(p),t読み込み」を実行する。そして、ステップ7306において、「列車位置、速度等検出」の処理を実行する。ステップS708において、ステップS302で読み込んだ温度分布Tmp(p),tについて、「Tmp(p),t≧Th1となる場所a1が存在するか」を判定する。ステップS702からステップS708までの処理は、それぞれ実施例1におけるステップS302からステップS308の処理と同じでよい。
【0061】
ステップS710の処理は、実施例1におけるステップS310の処理と同じであるが、Noと判定された場合は、ステップS730に進む。
【0062】
ステップS712の処理は、実施例1におけるステップS312の処理と同じであるが、Noと判定された場合は、ステップS730に進む。
【0063】
ステップS714において、「a1の温度変化率Tgrdnt1算出」を実行する。温度変化率は、ある場所における温度が所定時間で変化する割合である。
【0064】
図8に、ステップS714における具体的な処理例である温度変化率算出800を示す。温度変化率算出800では、まず、ステップS802において、その時点、例えば時刻t1におけるの温度分布Tmp(p),t1を読み込む。次に、ステップS804において、時刻t1から所定の時間経過後の時刻であるt2における温度分布Tmp(p),t2を読み込む。t1及びt2は、前述のステップS606におけるt1及びt2、及び図9におけるT1及びT2とは異ってよく、温度変化率算出800の処理における時刻でもよく「t1<t2」である。t1及びt2の間隔は、火災による温度の変化を検知できる程度の時間でよく、例えば、1秒、5秒、10秒又は30秒でもよい。次に、ステップS806において、「Tgrdnt = (Tmp(p),t2 - Tmp(p),t1)/(t2-t1)」の演算を行い、処理を終了するものでよい。ステップS806では、ある範囲を持つ場所、例えば、高温場所a1、における温度変化率算出するものである。「Tgrdnt = (Tmp(p),t2 - Tmp(p),t1)/(t2-t1)」の演算は、高温場所a1の範囲における中央の位置を基準点pとして行ってもよい。また、高温場所a1の範囲における最も温度高い位置を基準点pとしてもよい。高温場所a1の範囲においてどの位置を基準点pとするかは、種々に選択してよい。演算結果のTgrdntは、制御判定部110の記憶部に記憶される。
【0065】
ここで図10を参照して、温度変化閾値Gfireについて説明する。図10は、発熱部を持つ列車に火災が発生した場合における、温度センサ104が光ファイバのある位置において検出する温度と時間との関係を示したグラフを、三つの場合について重ねて表現した図である。波形1052は、列車走行時の温度変化を模式的に表すグラフである。波形1052は、時刻Tsから列車がある地点を通過し始めて時刻Teに通過し終わった場合のグラフである。時刻Tsから列車の発熱部によって温度が上昇し、列車が通過している間一定の温度で推移し、列車が通過し終わる時刻Teに向けて下降する。波形1056は、トンネル内のある位置における火災発生時の温度変化を模式的に表すグラフである。波形1056の場合は、火災発生位置の近くには列車は走行しておらず、火災が発生した位置において、温度センサ104が検知する温度には列車が走行することによる風の影響がない。このグラフにおいて、時刻Tsに発火した場合を表し、時刻Tsから時間が経過するとともに、波形1052に比べて温度が急に上昇しており、上昇した後は比較的温度が高い状態で温度が変化しながら推移している。波形1054は、トンネル内のある位置における火災発生時の温度変化を模式的に表すグラフである。波形1054の場合は、火災発生位置の近くに列車が走行しており、列車の走行により発生する風が、温度センサ104が検知する温度を低下するように作用している。波形1052、1054及び1056を時刻Ts以降の温度の変化率で判定し可能とするために温度変化率閾値1060及び1062を設け、温度変化率閾値1060に対応する傾きを第1の温度変化率閾値である温度変化率閾値Gfire1とする。温度変化率閾値1062に対応する傾きを第2の温度変化率閾値である温度変化率閾値Gfire2とする。列車が通過する際の温度変化率は、温度変化率閾値1062より小さい。トンネル120に火災が発生し、火災発生位置付近には列車が走行しておらず、列車の走行による風が温度センサ104の測定に影響しない場合、火災発生による波形1056の温度変化率は、温度変化率閾値1060より大きい。また、トンネル120に火災が発生し、火災発生位置付近に列車が走行しており、列車の走行による風が温度センサ104の測定に影響する場合の、火災発生による波形1054の温度変化率は、温度変化率閾値1062より大きく、温度変化率閾値1060より小さいものである。また、この複数ある温度変化率閾値の実施例における大小関係は適宜選択することができる。
【0066】
ステップS714に次いで、ステップS716の処理を実行する。ステップS716の処理は、ステップS806で求めたTgrdntを温度変化率閾値Gfire2と比較する。すなわち、「Tgrdnt≧Gfire2」について判定する。ステップS716でYesと判定された場合、ステップS718へ進む。Noと判定された場合、ステップS702へ戻る。
【0067】
ステップS718の処理は、実施例1におけるステップS314と同じでよい。
【0068】
ステップS720の処理及びステップS722の処理は、それぞれ実施例1におけるステップS316及びステップS318の処理と同じでよいが、それぞれのステップでNoと判定された場合は、ステップS740へ進む。
【0069】
ステップS716の処理は、ステップS714の処理と同様の処理を高温場所a2について実行する。
【0070】
ステップS726の処理は、ステップS716の処理と同様の処理をTgrdnt2について実行する。ステップS726でYesと判定された場合はステップS728に進み、Noと判定された場合はステップS702へ戻る。
【0071】
ステップS726を経由してステップS728において列車火災を発報する場合、制御判定部110は、温度分布に「Tmp(p),t≧温度閾値Th1となる場所a1」があり、高温場所a1の付近に列車が、速度閾値以上の速度で走行していて、高温場所a1において温度変化率閾値Gfire2より大きい温度変化率を示し、温度分布に「Tmp(p),t ≧ 温度閾値Th2となる場所a2」があり、高温場所a2が、列車位置と重なる位置であり、かつ、列車位置とともに所定の速度Tspeed以上の速度で移動しており、高温場所a2における温度変化率が温度変化率閾値Gfire2以上である場合、火災の発生を検知する。
【0072】
ステップS728の処理は、実施例1におけるステップS322の処理と同じでよい。ステップS728の処理が終わるとステップS302に戻る。
【0073】
次にステップS710でNoであった場合及びステップS712でNoであった場合に進むステップS730の処理を説明する。ステップS730の処理は、ステップS714の処理と同じでよい。ステップS730の処理が終わると、ステップS732に進む。
【0074】
ステップS732の処理は、ステップS716の処理と同じ処理を温度変化率閾値Gfire1について実行する。ステップS732の処理において、判定がYesであった場合は、ステップS734へ進み、Noであった場合は、ステップS702に戻る。
【0075】
ステップS734の処理は、実施例1におけるステップS332の処理と同じでよい。ステップS734の処理が終わると、ステップS702に戻る。
【0076】
このステップS710でNoと判定された場合にトンネル火災が発報されるのは、次の場合である。すなわち、制御判定部110は、温度センサ104の出力である温度分布情報が、所定の第1の温度閾値Th1以上の温度を示す位置を高温場所a1と判定し、振動分布情報が高温場所a1から付近の閾値Lnear以内の場所において、振動閾値ThV以上の振動を検知しない場合であり、かつ、高温場所a1における温度変化率Tgrdnt1が温度変化率閾値Gfire1以上の場合に、火災の発生を発報する。ここで、S732においては、温度変化率Tgrdnt1が温度変化率閾値Gfire1「以上」とした例を示したが、この「以上」が「を超える」であってもよい。これは、火災による温度や温度変化率にはゆらぎが大きいため、数学的な厳密性をもって閾値との判別をするものではないためである。すなわち、火災を発報する際に、危険を回避するよう判定を行えばよいものである。このことは本発明の実施例において共通に言えるものである。
【0077】
次に、ステップS720でNoと判定された場合及びステップS722でNoと判定された場合に進むステップS740の処理について説明する。ステップS740の処理は、ステップS724の処理と同じ処理を実行する。ステップS740の処理が終わると、ステップS742に進む。
【0078】
ステップS742の処理は、ステップS726の処理と同じ処理を実行する。ステップS742でYesと判定された場合、ステップS744へ進み、Noと判定された場合、ステップS702に戻る。
【0079】
ステップS744の処理は、ステップS734の処理と同じ処理でよい。ステップS744の処理が終わると、ステップS702に戻る。
【0080】
ステップS720を経由してステップS744においてトンネル火災を発報するのは、次の場合である。すなわち、制御判定部110は、温度センサ104の出力である温度分布情報が所定の第1の温度閾値Th1より高い温度を示す位置を高温場所a1と判定し、振動センサ108の出力である振動分布情報が所定の振動閾値ThVより大きい振動を示す位置を列車位置と判定し、かつ、列車位置が、高温場所a1から付近の閾値Lnear以内の場所において、所定の速度Tspeed以上で移動しており、温度センサ104の出力である温度分布情報に、温度閾値Th2以上となる高温場所a2が存在し、高温場所a2が列車位置とは一致せず、高温場所a2における温度変化率Tgrdnt2が、温度変化率閾値Gfire2以上となる場合に、火災の発生を検知する。前述のように、制御判定部は、温度センサが取得した温度分布情報及び振動センサが取得した列車の走行位置に関する情報を判定するものである。また、制御判定部は、温度センサが検知した温度分布情報と、振動センサが取得した列車の走行位置に関する情報とから、トンネル内における火災の発生を検知するものである。
【0081】
実施例2によれば、列車や自動車のように発熱源を持つ移動体が走行するトンネルであっても、正確に火災を検知できる。
【0082】
実施例1、実施例1の変形例、及び実施例2においては、温度センサ104及び振動センサ108については、光ファイバ・ブラッググレーティング・センサ(FBGセンサ)を利用するものでもよい。すなわち光ファイバ内に、多数のFBGセンサを分布するよう形成して、分布型温度計測や分布型振動計測を行うものである。また、実施例1及び2においては、温度センサ104と振動センサ108とは、個別の光ファイバを用いて、多芯の光ファイバ線を敷設するとよいが、温度センサ104と振動センサ108とは、当該両センサに共通の一本の光ファイバを用いてもよい。例えば、ブリルアン光相関領域反射計測法・解析計測法(BOCDR・BOCDA)と呼ばれる光ファイバーセンサを用いることができる。
【0083】
実施例1、実施例1の変形例、及び実施例2において、温度センサ104の光ファイバは、トンネル上部に敷設される。このように敷設することで、トンネル120における火災による温度の上昇を検出しやすくなる。また、実施例1及び2において、振動センサ108の光ファイバは、トンネル下部に敷設されてもよい。下部に敷設する場合は、既設の光ファイバを利用することもできる。このように敷設することで、トンネル120を走行する車両が発生する振動を検出できる。なお、実施例1、その変形例及び実施例2において、振動センサは、後に述べる走行位置情報取得部18の特別な場合であってよい。
【0084】
[実施例3]
次に本発明の実施例3にかかるトンネル火災検知システム11を説明する。実施例3にかかるトンネル火災検知システム11の構成及びハードウェア構成を図11に示す。トンネル火災検知システム11は、実施例1の振動センサに代えて、走行位置情報取得部18を備えている。トンネル火災検知システム11の構成について、走行位置情報取得部18以外の構成要素の動作は、実施例1のものと同様である。走行位置情報取得部18以外の構成要素の動作については説明を省略し、走行位置情報取得部18について、説明する。走行位置情報取得部18は、車両が走行している位置を検出する機能を有するものであってよい。走行位置情報取得部18は、例えば、光ファイバ分布型振動センサとは異なる、振動センサを用いるものである。この振動センサは、一か所における振動を検出する振動センサをトンネルの長手方向に沿って複数配置することで実質的な分布型振動センサを構成するものである。一か所における振動を検出する振動センサは、加速度計測を利用した振動センサ、及び変位計測を利用した振動センサなど様々な振動センサが利用できる。これらの一か所における振動を検出する振動センサを列車位置検出に必要な位置分解能が得られるよう複数配置する。それら複数の振動センサを通信ラインで走行位置情報取得部18と、を結び、それら全体として走行位置情報取得部18を構成するものである。前述の通信ラインは、有線であってもよいし、無線であってもよい。それら複数の振動センサは、トンネル下部に設置してもよいし、光ファイバ102とともに、トンネル上部に設置してもよい。
【0085】
前述のように複数の振動センサを複数設置した場合のトンネル内の振動部分布を得る方法を、図5に示す振動分布測定処理500を利用して説明する。トンネル火災検知システム11が起動されると、制御判定部110は、走行位置情報取得部18に測定開始指令を送るものでよい。この測定開始指令を受信した走行位置情報取得部18は、トンネル内に設置したすべての振動センサに測定開始指令を送出するものでよい。測定開始指令を受信したそれぞれの振動センサは、その時点の振動を測定し、測定結果を走行位置情報取得部18に送るものでよい。各振動センサからの振動測定結果を受信した走行位置情報取得部18では、あらかじめ設定してある各振動センサの位置情報とそれぞれのセンサが測定した振動情報を合成することにより振動分布Vbrtn(p),tを得ることができ、その振動分布を保存するものでよい。これら一連の処理をステップS502で行うものでよい。
【0086】
前述のように実施例3において、実施例1及び2と同様な振動分布Vbrtn(p),tを得ることができる。トンネル内の火災を検知するアルゴリズムは、実施例1、実施例1の変形例及び実施例2のものと同様でよい。
【0087】
実施例3によれば、列車や自動車のように発熱源を持つ移動体が走行するトンネルであっても、正確に火災を検知できる。
【0088】
[実施例4]
次に本発明の実施例4にかかるトンネル火災検知システム11を説明する。実施例4にかかるトンネル火災検知システム11の構成及びハードウェア構成を図11に示す。トンネル火災検知システム11は、実施例1で振動センサ108であったものが走行位置情報取得部18となっている点が異なる。これ以外のトンネル火災検知システム11の構成は実施例1と同じである。
【0089】
トンネル火災検知システム11の構成について、走行位置情報取得部18以外の構成要素の動作は、実施例1のものと同様である。走行位置情報取得部18以外の構成要素の動作については説明を省略し、走行位置情報取得部18について、説明する。走行位置情報取得部18は、車両が走行している位置を検出する機能を有するものであってよい。走行位置情報取得部18は、例えば、鉄道システムにおいて、列車が走行している位置を検出する路線の信号システムから列車の走行位置を取得してもよい。路線の信号システムは、リアルタイムで列車の走行位置を検出するシステムであって、列車の絶対位置を検出するもの、及び列車がある起点に対してどこを走行しているかを検出する相対位置を検出するもの、いずれであっても列車の走行位置が特定されるものであればよい。路線の信号システムは、地上に設置した装置の上を列車が通過することを検知して列車走行位置を検出するものでよい。また、路線の信号システムは、GNSS(Global Navigation Satellite System)に例示される、測位システムを利用するものでよい。また、路線の信号システムは、軌道回路を利用するもの、交差誘導線を用いるもの、トレッドルを利用するもの、チェックイン・チェックアウト方式によるもの、など様々な方式によるものが利用できる。
【0090】
図11に例示した路線の信号システムは、前述の軌道回路を利用するもの、及び交差誘導線を用いるものなど、地上に設置した装置16の上を列車が通過することを検知して列車走行位置を検出するものの例を図示したものである。前述した様々な構成により、信号システムは、少なくともトンネル120内を走行する列車912の位置を検知、検出する。
【0091】
次に、実施例4にかかるトンネル火災検知システム11が、トンネル内の火災を検知する仕組みを、図を用いて説明する。実施例4では、実施例1と同様に、列車が走行するトンネル120を例にて説明する。列車は、駆動用モータやブレーキ装置のような発熱を伴う機器類を有するものとして説明する。実施例4の説明においては、実施例1と同じ説明は省略する。
【0092】
トンネル火災検知システム11の説明においては、光ファイバ分布型温度センサ104を、単に温度センサ104と呼ぶことにする。トンネル火災検知システム11が起動されると、制御判定部110は、温度センサ104及び走行位置情報取得部18に、測定開始指令を送るものでよい。この測定開始指令を受けて、温度センサ104及び走行位置情報取得部18は、図4及び図14に示すフローに従い測定を開始するものでよい。
【0093】
温度センサ104が、前述の測定開始指令を受信して、図4に示す温度分布測定処理400に従い、処理を行うものでよいことは実施例1の場合と同様である。その際の温度分布Tmp(p),tについての説明も同様である。
【0094】
走行位置情報取得部18は、前述の測定開始指令を受信すると、図14に示す走行位置情報取得処理50に従い、ステップS52において、走行位置情報Train(p),tを取得し、取得した情報を走行位置情報取得部18内に有する記憶部に記憶するものでよい。この記録する走行位置情報Train(p),tにおいて、tは、その走行位置情報の取得を開始した時刻でよく、Train(p),tは、時刻tにおける位置pの走行位置情報を含む情報である。ここでpは、トンネル120内における位置であってよい。
【0095】
走行位置情報取得部18は、走行位置情報Train(p),tが記憶されると、制御判定部110に測定終了信号を送るものでよい。なお、測定開始指令を受信した後、必要であれば、実施例1で説明した信号対雑音比(S/N)を改善する処理を行うものでよい。この信号対雑音比(S/N)の改善処理を含めて、走行位置情報Train(p),tに関する一度の測定として扱うものでよいことは温度センサの場合と同様である。
【0096】
制御判定部110は、温度センサ104及び走行位置情報取得部18の双方から測定終了信号を受信した場合には、温度センサ104及び走行位置情報取得部18に改めて測定指令を送る。このように構成することにより、温度センサ104及び走行位置情報取得部18は同じ時刻に測定を行うこととなり、温度センサ104から得られた温度分布情報と振動センサ108から得られた振動情報とについて同じ時間帯における情報を得ることができる。このように、温度センサ104及び走行位置情報取得部18が制御されることにより、実施例1において温度センサ104及び振動センサ108について説明したものと同様の効果を奏する。
【0097】
次に、実施例4の火災検知処理について、図12を利用して説明する。実施例4の火災検知処理を行うフローチャート例は、図3におけるステップS304の処理が「走行位置情報Train(p),t読み込み」となったものであり、この他の処理は図3にあるものと同様である。実施例4のフローチャート例1300では、ステップS1302と表すものとする。前述したように、フローチャート例1300では、ステップS304に対応する処理ステップS1304は、「走行位置情報Train(p),t読み込み」である。
【0098】
実施例4のフローチャート例1300を説明する。この説明において、フローチャート例1300に対応するフローチャート例300で説明したものと同様の処理については説明を省略し、異なる処理を主に説明する。トンネル火災検知システム11では、制御判定部110において火災検知フローチャート例1300が起動すると、ステップS1302「温度分布Tmp(p),t読み込み」を実行する。次いで、ステップS1304「走行位置情報Train(p),t読み込み」を実行する。ここで読み込まれる走行位置情報Train(p),tは、走行位置情報取得処理50において取得及び保存された情報であって、ステップS1302において読み込んだ温度分布Tmp(p),tに対応する時刻におけるものでよい。しかし、ステップS1304において読み込まれるTrain(p),tは、走行位置情報取得処理50において取得測定及び保存された最新の情報であるとよい。温度分布測定処理400及び走行位置情報取得処理50は、火が燃え広がる時間に比べ、十分短い時間で処理が行われるため、最新の温度分布Tmp(p),tと最新の走行位置情報Train(p),tとは、実質的に同時刻のものとして扱ってもよい。
【0099】
ステップS1304に続いて、ステップS1306において、「列車位置、速度等検出」の処理を実行する。ステップS1306「列車位置、速度等検出」における具体的な処理は、実施例1において説明した図6に示すものと同様の処理でよい。しかし、実施例1で説明したものと、各ステップでも処理内容が異なるので、この異なる内容を説明する。本実施例における「列車位置、速度等検出」を、図13に列車位置速度等検出1600として示す。
【0100】
列車位置速度等検出1600においては、まずステップS1602において、トンネル内に列車が在線しているかを判定する。この判定においては、まず走行位置情報取得処理50にて保存された最新の走行位置情報Train(p),tを読み込む。読み込んだTrain(p),tから、列車の場所bを判定してよい。場所bの両端の座標をPb1及びPb2とする。但し「Pb2>Pb1」とする。座標Pb1及びPb2の少なくとも一方が、トンネルの両端の座標Pstart及びPendの内にあれば、トンネル内に列車在線ありとしてよい。場所bはその座標が、制御判定部110のメモリに記憶される。
【0101】
ステップS1602において、列車の在線が検出されなかった場合は、ステップS1602におけるNoへ進み、列車位置速度等検出1600の処理を終える。列車在線フラグを用意しておき、列車の在線が検出されなかった場合は、そのフラグを非在線としてもよい。ステップS1602において、列車の在線が検出された場合は、Yesに進む。ここで、列車の在線が検出された場合は、前述の列車在線フラグを在線とするものでよい。列車在線フラグは、列車がトンネル内に在線しているかの判定に用いてもよい。
【0102】
次いで、ステップS1604において、信号システムから列車の走行位置を取得して、列車位置を検出するものでよい。次いで、ステップS1606において、列車速度及び移動方向検出を行うものでよい。ステップS1606では、ステップS1602において読み込んだ走行位置情報Train(p),tの測定時刻t1から、所定時間経過した後の時刻であるt2における走行位置情報Train(p),tを読み込み、この新たに読み込んだ走行位置情報から新たな列車位置を検出する。この新たな列車位置と以前の列車位置との差をとることで、列車の進行方向情報を取得できる。また、新たな列車位置と以前の列車位置との差を、時間(t2-t1)で除算することで、列車の速度情報を取得できる。ここで得られた列車の速度情報をVtrain,tと呼び、Vtrain,tは、制御判定部110のメモリに記憶されるものでよい。Vtrain,tにおける「t」は、その速度情報を得たもととなる走行位置情報Train(p),tを取得した際の時刻、例えばt1でもよい。
【0103】
さらに、列車位置速度等検出1600においては、ステップS1608「トンネル内列車停止検出」において、トンネル内で列車が停止したかを検出する。このトンネル内列車停止検出においては、逐次得られる前述した列車の速度情報の推移から、列車の速度が0となったことで、列車が停止したことを判定するとよい。なお、ステップS1608「トンネル内列車停止検出」の処理は、列車位置速度等検出1600の中では行わずに、列車位置速度等検出1600とは別に独立した処理としてもよい。独立した処理とすることで、列車位置速度等検出1600自体の処理時間を短縮できる。列車停止位置情報は、後に述べる火災を検知した際に、列車が安全な地点にいるか、危険な地点にいるかなどの判定に用いることができる。
【0104】
ステップS1306に次ぐ、ステップS1308からステップS1316までの処理は、実施例1で、ステップS308からステップS316で説明したものと同様である。その説明において、ステップ符号は、適宜実施例1における三桁のものを対応する実施例4における四桁のものに置き換えて理解されるものである。
【0105】
ステップS1318の処理を説明する。ステップS1318において、ステップS1314において検出した高温場所a2は、列車とともに移動しているかを判定する。この判定では、ある時刻において取得した温度分布Tmp(p),tのデータ及び走行位置情報Train(p),tから高温場所a2と列車位置を求め、その時刻から所定時間経過した時刻における温度分布Tmp(p),tのデータ及び走行位置情報Train(p),tのデータから新たな高温場所a2と新たな列車位置を求め、両時刻におけるそれぞれの高温場所a2の座標と列車位置の座標との関係を判定してもよい。例えば、両時刻において、列車位置の座標のうち小さい座標と高温場所a2の座標のうち小さい座標との差が所定の誤差以内であるかを判定してもよい。この差が所定の誤差以内である場合を、「場所a2は、列車とともに移動している」と判定してもよい。前述の「所定時間経過した時刻」における所定時間は、例えば、0.1秒、0.2秒、0.5秒、又は1秒でもよい。また前述の「所定の誤差」は、走行する列車の速度や発生する火災の状態に応じて設定するとよい。ステップS1318でYesと判定された場合はステップS1320へ進み、Noと判定された場合はステップS1330に進む。
【0106】
実施例4のフローチャート例1300について、前述のように説明した処理以外の処理について、実施例1において説明した対応する処理と同様である。
【0107】
次に実施例4の変形例を説明する。実施例4の変形例は、実施例4のトンネル火災検知システム11の構成において、実施例1の変形例で用いた、温度閾値を用いずに温度変化率を用いてトンネル火災や列車火災を検知するものである。実施例4の変形例における火災検知処理は、実施例1の変形例のものと同様である。
【0108】
さらに実施例4の異なる変形例を説明する。実施例4の異なる変形例は、実施例4のトンネル火災検知システム11の構成において、実施例2の火災検知処理を用いるものである。実施例4の異なる変形例において、走行位置情報Train(p),tに関する処理は、実施例4のものを利用するものでよい。
【0109】
実施例4、その変形例、及び異なる変形例によれば、列車や自動車のように発熱源を持つ移動体が走行するトンネルであっても、正確に火災を検知できる。
【0110】
前述したように様々な実施例及び変形例について説明した。それらの実施例で説明した構成や種々の判定処理は、その一部の処理を他の実施例や変形例の処理に取り込む、組み合せるなどできる。前述したフローチャート例において、様々なステップについて述べたが、それらのステップの順序は固定されたものではなく、本発明の範囲で自由に順序を変更する、組み合わせを変更するなどできるものである。それらも、列車や自動車のように発熱源を持つ移動体が走行するトンネルであっても、正確に火災を検知できる。
【0111】
以上に様々な実施例及び変形例において、列車の停止を判定する処理を実行してもよい。前述の列車位置、速度等検出処理を利用して、列車の停止状態を判別し、その停止位置を記憶しておき、再度列車が移動し始める場合も含めて火災を検知してもよい。例えば、実施例1、2及びそれらの変形例において、温度分布測定処理と振動分布測定処理とは温度分布測定処理400及び振動分布測定処理500として、火災検知フローチャート例300とは独立した処理で実行されるが、これらの測定処理は火災検知フローチャートの中で実行してもよい。実施例の処理に、温度分布Tmp(p),tや振動分布Vbrtn(p),tのデータなど、種々のデータが異常な情報を含んでいる場合の異常処理を実行してもよい。実施例1及び2において、火災検知処理が繰り返し実行され、列車火災発報及びトンネル火災発報が逐次実行されるが、一旦火災を発報した後は、その発報状態を継続させるように構成してもよい。また、その場合に発報状態リセット機能を付加して、火災発報を止めることができるとよい。これらは、実施例3、4及びその変形例についても同様である。
【0112】
これまで、本発明を添付の図面を参照して詳細に説明したが、本発明はこのような具体的構成に限定されるものではなく、添付した請求の範囲の趣旨内における様々な変更及び同等の構成を含むものである。なお、本発明は前記実施形態だけに限定されることなく、実施段階ではその要旨を逸脱しない範囲内で構成要素を変形して具体化できる。
【符号の説明】
【0113】
18・・・走行位置情報取得部
101・・・トンネル火災検知システム
102、106、210、240・・・光ファイバ
104・・・温度センサ
108・・・振動センサ
110・・・制御判定部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14