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特開2024-46006通信及び無線電力伝送を行うシステム、基地局、無線処理装置及びアンテナシステム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024046006
(43)【公開日】2024-04-03
(54)【発明の名称】通信及び無線電力伝送を行うシステム、基地局、無線処理装置及びアンテナシステム
(51)【国際特許分類】
   H04B 7/0413 20170101AFI20240327BHJP
   H04B 1/04 20060101ALI20240327BHJP
   H04L 27/26 20060101ALI20240327BHJP
   H02J 50/20 20160101ALI20240327BHJP
【FI】
H04B7/0413
H04B1/04 Z
H04L27/26 100
H02J50/20
【審査請求】有
【請求項の数】11
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022151132
(22)【出願日】2022-09-22
(11)【特許番号】
(45)【特許公報発行日】2023-05-25
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)令和4年度、国立研究開発法人情報通信研究機構「革新的情報通信技術研究開発委託研究/完全ワイヤレス社会実現を目指したワイヤレス電力伝送の高周波化および通信との融合技術」、産業技術力強化法第17条の適用を受ける特許出願
(71)【出願人】
【識別番号】501440684
【氏名又は名称】ソフトバンク株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100098626
【弁理士】
【氏名又は名称】黒田 壽
(74)【代理人】
【識別番号】100128691
【弁理士】
【氏名又は名称】中村 弘通
(72)【発明者】
【氏名】長谷川 直輝
(72)【発明者】
【氏名】中本 悠太
(72)【発明者】
【氏名】平川 昂
(72)【発明者】
【氏名】▲高▼木 裕貴
【テーマコード(参考)】
5K060
【Fターム(参考)】
5K060BB07
5K060CC04
5K060HH06
5K060HH37
(57)【要約】
【課題】下りリンクの無線電力伝送用ダミー信号及び通信信号と上りリンクの通信信号を各信号に適した個別の増幅器で増幅することができる基地局のアンテナシステムを提供する。
【解決手段】アンテナシステムは、複数のアンテナ素子を有するアレーアンテナと、複数のアンテナ素子のそれぞれに接続され、下りリンクの無線電力伝送用のダミー信号、下りリンクの通信信号及び上りリンクの通信信号の複数の高周波信号を互いに異なる増幅器で増幅し、アンテナ素子を介して、複数の高周波信号を多重化して送受信する複数の無線信号処理ユニットと、を備える。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の無線リソースを選択的に用いて通信可能な基地局に備えるアンテナシステムであって、
複数のアンテナ素子を有するアレーアンテナと、
前記複数のアンテナ素子のそれぞれに接続され、下りリンクの無線電力伝送用のダミー信号、下りリンクの通信信号及び上りリンクの通信信号の複数の高周波信号を互いに異なる増幅器で増幅し、前記アンテナ素子を介して、前記複数の高周波信号を多重化して送受信する複数の無線信号処理ユニットと、
を備える、ことを特徴とするアンテナシステム。
【請求項2】
請求項1のアンテナシステムにおいて、
前記複数の無線信号処理ユニットはそれぞれ、
前記アンテナ素子から送信される前記無線電力伝送用のダミー信号の位相を制御するための第1移相器と、
前記無線電力伝送用のダミー信号を増幅する第1増幅器と、
前記アンテナ素子から送信される前記下りリンクの通信信号の位相を制御するための第2移相器と、
前記下りリンクの通信信号を増幅する第2増幅器と、
前記アンテナ素子を介して受信された前記上りリンクの通信信号を増幅する第3増幅器と、
前記上りリンクの通信信号の位相を制御するための第3位相器と、
を備える、ことを特徴とするアンテナシステム。
【請求項3】
請求項2のアンテナシステムにおいて、
前記第1増幅器は、バイアス調整型の高効率増幅器又は波形処理型の高効率増幅器であり、
前記第2増幅器は、線形領域での効率改善を行う増幅器であり、
前記第3増幅器は、低ノイズ増幅器である、
ことを特徴とするアンテナシステム。
【請求項4】
請求項1のアンテナシステムにおいて、
前記複数の無線信号処理ユニットはそれぞれ、前記無線電力伝送用のダミー信号、前記下りリンクの通信信号及び前記上りリンクの通信信号を時分割複信(TDD)方式で多重化する多重化処理部を備える、ことを特徴とするアンテナシステム。
【請求項5】
請求項4のアンテナシステムにおいて、
前記無線電力伝送用のダミー信号に用いられる無線電力伝送用のフレーム、前記下りリンクの通信信号に用いられる下りリンク通信用のフレーム及び前記上りリンクの通信信号に用いられる上りリンク通信用のフレームが時分割されて通信フレームに割り当てられ、
前記多重化処理部は、前記無線電力伝送用のフレーム、前記下りリンク通信用のフレーム及び前記上りリンク通信用のフレームに同期させて、前記無線電力伝送用のダミー信号、前記下りリンクの通信信号及び前記上りリンクの通信信号それぞれの信号処理経路と前記アンテナ素子との接続を切り替える、
ことを特徴とするアンテナシステム。
【請求項6】
請求項1のアンテナシステムにおいて、
前記複数の無線信号処理ユニットはそれぞれ、前記無線電力伝送用のダミー信号、前記下りリンクの通信信号及び前記上りリンクの通信信号を周波数分割複信(FDD)方式で多重化する多重化処理部を備える、ことを特徴とするアンテナシステム。
【請求項7】
請求項1のアンテナシステムにおいて、
前記アレーアンテナは、
前記無線電力伝送用のダミー信号の送信に用いられる無線電力伝送用のアレーアンテナと、
前記下りリンクの通信信号の送信及び前記上りリンクの通信信号の受信に用いられる通信用のアレーアンテナと、を有し、
前記複数の無線信号処理ユニットは、
前記無線電力伝送用のアレーアンテナの複数のアンテナ素子のそれぞれに接続され、前記無線電力伝送用のダミー信号の高周波信号を無線電力伝送用の増幅器で増幅し、前記アンテナ素子を介して送信する複数の無線電力伝送用の無線信号処理ユニットと、
前記通信用のアレーアンテナの複数のアンテナ素子のそれぞれに接続され、前記下りリンクの通信信号及び前記上りリンクの通信信号の複数の高周波信号を互いに異なる増幅器で増幅し、前記アンテナ素子を介して前記複数の高周波信号を多重化して送受信する複数の通信用の無線信号処理ユニットと、を有する、
ことを特徴とするアンテナシステム。
【請求項8】
請求項1乃至7のいずれかのアンテナシステムと、前記アンテナシステムに接続された入出力信号処理部と、を備える無線処理装置であって、
前記入出力信号処理部は、
前記無線電力伝送用のダミー信号及び前記下りリンクの通信信号を含む下りリンク中間周波信号を、前記無線電力伝送用のダミー信号の中間周波信号と前記下りリンクの通信信号の中間周波信号とに分離する信号分離部と、
前記無線電力伝送用のダミー信号の中間周波信号と所定周波数の局部発振信号とを混合して前記無線電力伝送用のダミー信号の高周波信号を生成する第1混合器と、
前記下りリンクの通信信号の中間周波信号と前記局部発振信号とを混合して前記下りリンクの通信信号の高周波信号を生成する第2混合器と、
前記上りリンクの通信信号の高周波信号と前記局部発振信号とを混合して前記上りリンクの通信信号の中間周波信号を生成する第3混合器と、
を有する、ことを特徴とする無線処理装置。
【請求項9】
移動通信システムの基地局であって、
請求項6の無線処理装置と、前記無線電力伝送用のダミー信号及び前記下りリンクの通信信号を含む下りリンク中間周波信号を生成し、前記上りリンクの通信信号を含む上りリンク中間周波信号を処理する通信信号処理部と、を備える、ことを特徴とする基地局。
【請求項10】
請求項9の基地局において、
前記無線処理装置を有する遠隔無線ヘッド装置と、
前記遠隔無線ヘッド装置から離れた位置に配置され、有線の通信回線を介して前記遠隔無線ヘッド装置に接続された、前記通信信号処理部を有するベースバンドユニット装置と、
を備える、
ことを特徴とする基地局。
【請求項11】
請求項9の基地局から端末装置に無線電力伝送を行うシステムであって、
前記端末装置は、前記基地局から送信された前記無線電力伝送用のダミー信号を含む送信信号を受信する無線処理部と、前記無線電力伝送用のダミー信号を含む送信信号を受信した受信信号の電力を、受電電力として出力する電力出力部と、を有する、
ことを特徴とするシステム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、通信及び無線電力伝送(WPT)を行うことができるシステム、基地局、無線処理装置及びアンテナシステムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、無線フレームに設定された複数の無線リソースの少なくとも一部を用いて基地局と端末装置との間で通信を行う通信システムが知られている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】国際公開第2017/164220号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
従来の通信システムにおいて基地局に接続して通信する端末装置として、内蔵電池から供給される電力を主に利用する携帯型の端末装置がある。この端末装置では、内蔵電池の残量が少なくなったときに内蔵電池を充電する煩雑な作業が必要である。また、内蔵電池ではなく有線接続の電源ラインから供給される電力を利用する端末装置は、そのような電源ラインを利用可能な場所での使用に制限される。このように基地局に接続して通信を行う様々な端末装置への給電をまかなうことができるような給電インフラが未整備である。
【0005】
第5世代及びその後の次世代の移動通信システムでは、基地局に接続して通信する端末装置(例えば、ユーザ装置、IoTデバイス等)が急増してくるのが予想され、膨大なトラフィックを捌く通信インフラの整備が進められている。しかしながら、上記通信を行う膨大な数の端末装置への給電をまかなうことができる給電インフラは未整備のままである。
【0006】
上記端末装置へ給電する給電インフラとして、移動通信の基地局を用いて無線電力伝送(WPT)を行うシステムが検討されている。かかるシステムの課題の一つとして、端末装置への下りリンクの無線電力伝送用ダミー信号及び通信信号と端末装置からの上りリンクの通信信号を各信号に適した個別の増幅器で増幅することがある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の一態様に係るアンテナシステムは、複数の無線リソースを選択的に用いて通信可能な基地局に備えるアンテナシステムである。個のアンテナシステムは、複数のアンテナ素子を有するアレーアンテナと、前記複数のアンテナ素子のそれぞれに接続され、下りリンクの無線電力伝送用のダミー信号、下りリンクの通信信号及び上りリンクの通信信号の複数の高周波信号を互いに異なる増幅器で増幅し、前記アンテナ素子を介して、前記複数の高周波信号を多重化して送受信する複数の無線信号処理ユニットと、を備える。
【0008】
前記アンテナシステムにおいて、前記複数の無線信号処理ユニットはそれぞれ、前記アンテナ素子から送信される前記無線電力伝送用のダミー信号の位相を制御するための第1移相器と、前記無線電力伝送用のダミー信号を増幅する第1増幅器と、前記アンテナ素子から送信される前記下りリンクの通信信号の位相を制御するための第2移相器と、前記下りリンクの通信信号を増幅する第2増幅器と、前記アンテナ素子を介して受信された前記上りリンクの通信信号を増幅する第3増幅器と、前記上りリンクの通信信号の位相を制御するための第3位相器と、を備えてもよい。
【0009】
前記アンテナシステムにおいて、前記第1増幅器は、バイアス調整型の高効率増幅器又は波形処理型の高効率増幅器であってもよく、前記第2増幅器は、線形領域での効率改善を行う増幅器であってもよく、前記第3増幅器は、低ノイズ増幅器であってもよい。
【0010】
前記アンテナシステムにおいて、前記複数の無線信号処理ユニットはそれぞれ、前記無線電力伝送用のダミー信号、前記下りリンクの通信信号及び前記上りリンクの通信信号を時分割複信(TDD)方式で多重化する多重化処理部を備えてもよい。
【0011】
前記アンテナシステムにおいて、前記無線電力伝送用のダミー信号に用いられる無線電力伝送用のフレーム、前記下りリンクの通信信号に用いられる下りリンク通信用のフレーム及び前記上りリンクの通信信号に用いられる上りリンク通信用のフレームが時分割されて通信フレームに割り当てられ、前記多重化処理部は、前記無線電力伝送用のフレーム、前記下りリンク通信用のフレーム及び前記上りリンク通信用のフレームに同期させて、前記無線電力伝送用のダミー信号、前記下りリンクの通信信号及び前記上りリンクの通信信号のそれぞれの信号処理経路と前記アンテナ素子との接続を切り替えてもよい。
【0012】
前記アンテナシステムにおいて、前記複数の無線信号処理ユニットはそれぞれ、前記無線電力伝送用のダミー信号、前記下りリンクの通信信号及び前記上りリンクの通信信号を周波数分割複信(FDD)方式で多重化する多重化処理部を備えてもよい。
【0013】
前記アンテナシステムにおいて、前記アレーアンテナは、前記無線電力伝送用のダミー信号の送信に用いられる無線電力伝送用のアレーアンテナと、前記下りリンクの通信信号の送信及び前記上りリンクの通信信号の受信に用いられる通信用のアレーアンテナと、を有し、前記複数の無線信号処理ユニットは、前記無線電力伝送用のアレーアンテナの複数のアンテナ素子のそれぞれに接続され、前記無線電力伝送用のダミー信号の高周波信号を無線電力伝送用の増幅器で増幅し、前記アンテナ素子を介して送信する複数の無線電力伝送用の無線信号処理ユニットと、前記通信用のアレーアンテナの複数のアンテナ素子のそれぞれに接続され、前記下りリンクの通信信号及び前記上りリンクの通信信号の複数の高周波信号を互いに異なる増幅器で増幅し、前記アンテナ素子を介して前記複数の高周波信号を多重化して送受信する複数の通信用の無線信号処理ユニットと、を有してもよい。
【0014】
本発明の他の態様に係る無線処理装置は、前記いずれかのアンテナシステムと、前記アンテナシステムに接続された入出力信号処理部と、を備える。前記入出力信号処理部は、前記無線電力伝送用のダミー信号及び前記下りリンクの通信信号を含む下りリンク中間周波信号を、前記無線電力伝送用のダミー信号の中間周波信号と前記下りリンクの通信信号の中間周波信号とに分離する信号分離部と、前記無線電力伝送用のダミー信号の中間周波信号と所定周波数の局部発振信号とを混合して前記無線電力伝送用のダミー信号の高周波信号を生成する第1混合器と、前記下りリンクの通信信号の中間周波信号と前記局部発振信号とを混合して前記下りリンクの通信信号の高周波信号を生成する第2混合器と、前記上りリンクの通信信号の高周波信号と前記局部発振信号とを混合して前記上りリンクの通信信号の中間周波信号を生成する第3混合器と、を有する。
【0015】
本発明の更に他の態様に係る基地局は、移動通信システムの基地局である。この基地局は、前記無線処理装置と、前記無線電力伝送用のダミー信号及び前記下りリンクの通信信号を含む下りリンク中間周波信号を生成し、前記上りリンクの通信信号を含む上りリンク中間周波信号を処理する通信信号処理部と、を備える。
【0016】
前記基地局において、前記無線処理装置を有する遠隔無線ヘッド装置と、前記遠隔無線ヘッド装置から離れた位置に配置され、有線の通信回線を介して前記遠隔無線ヘッド装置に接続された、前記通信信号処理部を有するベースバンドユニット装置と、を備えてもよい。
【0017】
本発明の更に他の態様に係るシステムは、前記基地局から端末装置に無線電力伝送を行うシステムである。前記端末装置は、前記基地局から送信された前記無線電力伝送用のダミー信号を含む送信信号を受信する無線処理部と、前記無線電力伝送用のダミー信号を含む送信信号を受信した受信信号の電力を、受電電力として出力する電力出力部と、を有する。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、下りリンクの無線電力伝送用ダミー信号及び通信信号と上りリンクの通信信号を各信号に適した個別の増幅器で増幅することができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
図1】実施形態に係るシステムの全体構成の一例を示す説明図。
図2】実施形態に係るシステムを構成する基地局及び端末装置の構成の一例を示すブロック図。
図3】(a)は、実施形態に係る基地局から送信される通信信号のQAM方式の一次変調におけるシンボル点の配置の一例を示す説明図である。(b)は、同基地局から送信されるWPTダミー信号の変調におけるシンボル点の配置の一例を示す説明図である。
図4】本実施形態に係る基地局の増幅器の入出力電力特性及び効率特性の一例を示すグラフ。
図5】実施形態に係る基地局に適用可能なアンテナシステムの構成の一例を示すブロック図。
図6図5のアンテナシステムを構成する無線信号処理ユニットの構成の一例を示すブロック図。
図7図5のアンテナシステムで送受信される信号のフレーム構成の一例を示す説明図。
図8】実施形態に係る基地局に適用可能なアンテナシステムの構成の他の例を示すブロック図。
図9図8のアンテナシステムを構成する無線信号処理ユニットの構成の一例を示すブロック図。
図10】実施形態に係る基地局に適用可能なセパレートアンテナ構成のアンテナシステムの構成の一例を示すブロック図。
図11】(a)及び(b)はそれぞれ、図10のアンテナシステムを構成する無線電力伝送(WPT)用の無線信号処理ユニット及び通信用の無線信号処理ユニットの構成の一例を示すブロック図である。
図12図10のアンテナシステムを構成する通信用の無線信号処理ユニットの構成の他の例を示すブロック図。
図13】実施形態に係る基地局における無線処理装置の入出力信号処理部の構成の一例を示すブロック図。
図14】実施形態に係る基地局から複数の端末装置へのビームフォーミングによる端末装置毎の給電の一例を示す説明図。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、図面を参照して本発明の実施形態について説明する。
本書に記載された実施形態に係るシステムは、移動通信の基地局から給電対象の端末装置(例えば、移動通信のUE(移動局)やIoTデバイス)に対して無線電力伝送(WPT)することができるシステムである。実施形態のシステムは、例えば、UEなどの端末装置への下りリンクの無線フレームに設定された複数の無線リソース(リソースブロック)のうち通信に使用されていない通信未使用の無線リソース(リソースブロック)を端末装置への無線電力伝送(WPT)に有効活用したシステムである。実施形態のシステムは、基地局から端末装置への無線電力伝送(WPT)機能を有する、基地局と端末装置との間の無線通信システムであってもよい。また、実施形態のシステムは、基地局と端末装置との間の無線通信機能を有する、基地局から端末装置への無線電力伝送(WPT)システムであってもよい。
【0021】
特に、本実施形態のシステムでは、基地局から送信される下りリンクの無線電力伝送用ダミー信号及び通信信号と基地局で受信された上りリンクの通信信号をそれぞれ、各信号に適した個別の増幅器で増幅することができる。
【0022】
図1は、本実施形態に係るシステムの概略構成の一例を示す説明図である。本実施形態のシステムは、通信エリア(セル)10Aを形成するセルラー方式の基地局10と、通信エリア10Aに在圏しているときに基地局10に接続して基地局10と無線通信可能な給電対象の端末装置(以下「UE」(ユーザ装置)ともいう。)20と、を有する。
【0023】
UE20は、移動通信システムの移動局でもよいし、通信装置(例えば移動通信モジュール)と各種デバイスとを組み合わせたものであってもよい。UE20は、例えば複数のアンテナ素子を有するアレーアンテナを備える。UE20はIoTデバイス(「IoT機器」ともいう。)であってもよい。
【0024】
図1において、基地局10は、多数のアンテナ素子を有する複数のアレーアンテナ110を備え、複数のUE20との間でmassive MIMO(以下「mMIMO」ともいう。)伝送方式の通信を行うことができる。mMIMOは、アレーアンテナ110を用いてデータ送受信を行うことにより大容量・高速通信を実現する無線伝送技術である。また、複数のUE20のそれぞれに対して時分割で又は同時にビーム10Bを形成するビームフォーミングを行うMU(Multi User)-MIMO伝送方式で通信を行うことができる。多素子のアレーアンテナを用いてMU-MIMO伝送を行うことにより、各UE20の通信環境に応じてUE20ごとに適切なビームを向けて通信できるため、セル全体の通信品質を改善できる。また、同一の無線リソース(時間・周波数リソース)を用いて複数のUE20との通信ができるため、システム容量を拡大することができる。
【0025】
また、図1において、通信エリア10A内の一部は、基地局10から端末装置20に向けて無線電力伝送を行う無線電力伝送エリア(以下「WPTエリア」という。)10A'になっている。WPTエリア10A'は図示のように通信エリア10Aよりも狭いエリアでもよいし、通信エリア10Aと同じ又はほぼ同じサイズ及び位置のエリアであってもよい。
【0026】
WPTエリア10A'では、基地局10からの下りリンクの無線フレームを構成する複数の無線リソース(時間・周波数リソース)であるリソースブロックのうち通信に用いられていない通信未使用の無線リソース(リソースブロック)を無線電力伝送ブロックとして活用している。基地局10は、UE20への下りリンクの無線フレームにおいて、通信未使用の無線リソースである無線電力伝送ブロック(WPTブロック)に無線電力伝送用のダミー信号(以下「WPTダミー信号」ともいう。)を割り当てた送信信号を生成してUE20に送信する。
【0027】
特に、第5世代又はそれ以降の世代の移動通信システムにおいては、無線フレームの一部のサブキャリアのみに必要最小限の参照信号(RS)や制御信号を配置するリーンキャリアという技術が提案されており、無線フレームにおける通信未使用の無線リソースの部分を有効活用してUE20への無線電力伝送を行うことが期待される。
【0028】
基地局10とUE20との間で送受信される通信の信号の電波及び基地局10からUE20に送信されるWPTダミー信号を割り当てた送信信号の電波は、例えば、ミリ波又はマイクロ波である。
【0029】
図2は、実施形態に係るシステムを構成する基地局10及び端末装置(UE)20の主要構成の一例を示すブロック図である。基地局10は、アンテナ110と通信信号処理部120と無線処理装置(無線処理部)130とを備える。
【0030】
なお、図2の基地局10において、無線処理装置130を有する遠隔無線ヘッド装置(RRH)と、通信信号処理部120を有するベースバンドユニット(BBU)装置と、を備えてもよい。ベースバンドユニット(BBU)装置は、遠隔無線ヘッド装置(RRH)から離れた位置に配置され、有線の通信回線(例えば光ファイバーからなる光回線)を介して遠隔無線ヘッド装置に接続される。
【0031】
アンテナ110は、例えば、図1に示すように多数のアンテナ素子を有するアレーアンテナである。アンテナ110は単数でもよいし複数であってもよい。例えば、アンテナ110は複数のセクタセルに対応させて複数配置してもよい。
【0032】
通信信号処理部120は、UE20との間で送受信される各種のユーザデータや制御情報等の信号を処理する。
【0033】
通信信号処理部120は、UE20に対する下りリンクの通信の際に、複数の無線リソースのうち通信に使用されていない通信未使用の無線リソースを用いたWPTダミー信号を含む下りリンクの送信信号を生成する。例えば、WPTダミー信号は、通信信号よりもPAPR(ピーク電力対平均電力比)(「波高比」ともいう。)が小さい変調方式で変調して生成することができる。例えば、WPTダミー信号は、Zadoff-Chu系列の符号を用いて変調され、時間に対して振幅が一定で位相が変化する変調信号であってもよく、また、デジタル変調方式の複数のシンボル点のうち振幅が最大又は最大近傍の複数のシンボル点で変調された信号であってもよい。また例えば、送信信号の生成は、通信信号用のQAM(直交振幅変調)やWPTダミー信号用のPAPRが小さい変調等の一次変調、並びに、OFDM(直交周波数多重)変調等の二次変調を含んでもよい。
【0034】
無線処理装置130は、通信信号処理部120で生成した送信信号をアンテナ110からUE20に送信したり、UE20からアンテナ110を介して受信した受信信号を通信信号処理部120に出力したりする。
【0035】
UE20に対する下りリンク通信の送信信号に通信未使用の無線リソースを用いたWPTダミー信号を含める処理や、後述の信号の分離や信号の合成等に用いる制御信号(トリガー信号)の生成は、移動通信の無線フレームを構成するサブフレームに基づいて行ってもよい。
【0036】
また、UE20に対する下りリンク通信の送信信号に、通信未使用の無線リソースを用いたWPTダミー信号を含める処理は、基地局10が自律的に行ってもよいし、UE20からの要求若しくは指示又は外部プラットフォーム(例えば、サーバ、クラウドシステム)からの要求若しくは指示に基づいて行ってもよい。
【0037】
また、本実施形態において、無線処理装置130は、BF制御信号に基づいてアレーアンテナ110で形成される一又は複数のビームを制御する。また、無線処理装置130は、通信信号処理部120で生成されたWPTダミー信号を含む下りリンクの送信信号を、アンテナ110を介してUE20に送信する。
【0038】
基地局10は、UE20に対する下りリンクの通信の際に、UE20毎に又は複数のUE20が属するターゲットエリアのUEグループ毎に、個別のビーム10Bを形成するビームフォーミング(BF)制御を行い、UE20毎に又はUEグループ毎に無線電力伝送を行ってもよい。UE20毎又はUEグループ毎のBF制御は、通信信号処理部120における周波数領域のデジタルBF制御で行ってもよいし、無線処理装置130におけるアナログBF制御で行ってもよい。
【0039】
図2において、無線処理装置130は、入出力信号処理部131と、無線信号処理部(以下、「RF信号処理部」ともいう。)132及びアンテナ110を有するアンテナシステム133と、を備える。
【0040】
図2において、UE20は、アンテナ210と無線処理部220と通信信号処理部230と電力出力部240と電池250とを含む。アンテナ210は、例えば複数のアンテナ素子を有する小型のアレーアンテナである。無線処理部220は、通信信号処理部230で生成したフィードバック情報やユーザデータ等の送信信号をアンテナ210から基地局10に送信したり、基地局10からアンテナ210を介して受信した受信信号を通信信号処理部230に出力したりする。
【0041】
本実施形態において、無線処理部220は、基地局10から送信されたWPTダミー信号を含む送信信号を受信する。また、電力出力部240は、例えば整流器を有し、基地局10からのWPTダミー信号を含む送信信号を受信した受信信号の電力を、電池充電用の受電電力として出力する。電力出力部240から出力された受電電力により、電池250を充電することができる。
【0042】
図3(a)は、本実施形態に係る基地局10から送信される通信信号のQAM方式の一次変調におけるシンボル点41の配置の一例を示す説明図である。図3(a)は、64QAM方式の場合の複数のシンボル点(64値のシンボル点)の配置を示すコンスタレーションの図である。また、図3(b)は、本実施形態に係る基地局10から送信されるWPTダミー信号の変調におけるシンボル点の配置の一例を示す説明図である。図3(a)及び図3(b)において、横軸は同相チャネル成分を示し,縦軸は直交チャネル成分を示している。
【0043】
本実施形態では、WPTダミー信号として、PAPR(ピーク電力対平均電力比)が通信信号よりも低いOFDM変調信号を用いる。例えば、図3(a)において、通信信号用のQAM方式の複数のシンボル点41のうち、振幅が最大である最外周又は最外周周辺の複数のシンボル点41Sのみで変調されたOFDM変調信号からなるWPTダミー信号を用いてもよい。
【0044】
また、図3(b)のコンスタレーション図に示すように、時間に対して振幅が一定の条件で位相が変化するシンボル点42で変調されたOFDM変調信号からなるWPTダミー信号を用いてもよい。図3(b)のシンボル点42でOFDM変調信号は、例えばZadoff-Chu系列の符号を用いて生成することができる。
【0045】
図4は、本実施形態に係る基地局10の増幅器の入力電力Pin[dBm]に対する出力電力Pout[dBm]及びアンプ効率PAE[%]の特性の一例を示すグラフである。図中の曲線Aは、増幅器の交流の入力電力Pin[dBm]に対する交流の出力電力Pout[dBm]を示す入出力特性のシミュレーション計算結果である。また、図中の破線の曲線B,C,Dはそれぞれ、上りリンク(UL)通信信号、下りリンク(DL)通信信号及びWPTダミー信号に適した増幅器の入力電力Pin[dBm]に対する効率の指標値の一つであるPAE(電力付加効率)[%]のシミュレーション計算結果である。ここで、増幅器のPAE[%]は、(Pout-Pin)/Pdcで定義される。Pdcは増幅器に入力(印加)される直流電力である。
【0046】
図4の入出力特性Aにおいて、入力電力Pinと出力電力Poutとの関係が線形又はほぼ線形の関係にある領域は、UL通信信号の低ノイズ増幅及びDL通信信号の電力増幅に適する。特に、UL通信信号の増幅に適する増幅器の特性としては、例えば、高PAPR(ピーク電力対平均電力比)、高リニアリティ、広ダナミックレンジ及び低ノイズが要求される。また、DL通信信号の増幅に適する電力増幅器の特性としては、例えば、高PAPR、高リニアリティ及び広ダナミックレンジが要求される。この電力増幅器としては、例えば、ドハティ増幅器、エンベロープトラッキング増幅器、アウトフェージング増幅器などの線形領域での効率改善を行う増幅器が挙げられる。
である。
【0047】
また、図4の入出力特性Aの飽和領域は、入力電力Pinの増加に対して出力電力Poutが飽和又はほぼ飽和している領域である。線形領域と飽和領域の境界の近傍の領域に、電力増幅器の効率PAEのピークが位置し、この領域は、WPTダミー信号の高出力及び高効率の電力増幅に適する。WPTダミー信号の増幅に適する電力増幅器の特性としては、例えば、高効率、低PAPR及び大出力電力が要求される。この電力増幅器としては、例えば、A級増幅器、B級増幅器、C級増幅器、AB級増幅器などのバイアス調整型の高効率増幅器、又は、E級増幅器、F級増幅器、J級増幅器などの波形処理型の高効率増幅器が挙げられる。WPTダミー信号として、PAPR(ピーク電力対平均電力比)が通信信号よりも低いOFDM変調信号を用いてもよい。
【0048】
上記構成の基地局10において、WPTダミー信号、DL通信信号及びUL通信信号をそれぞれ、各信号に適した増幅器で増幅したい、という課題がある。
【0049】
そこで、本実施形態の基地局10のアンテナシステム133では、WPTダミー信号、DL通信信号及びUL通信信号それぞれに対応する複数の信号処理パスを構成し、複数の信号処理パスのそれぞれに各信号に適した個別の増幅器を設けている。
【0050】
図5は、実施形態に係る基地局10に適用可能なアンテナシステム133の構成の一例を示すブロック図である。図5において、アンテナシステム133は、複数(N個)のアンテナ素子1101(1)~1101(N)からなるアレーアンテナ110と、アレーアンテナ110に接続されたTDD(時分割複信)方式のRF信号処理部132とを備える。
【0051】
RF信号処理部132は、アレーアンテナ110の複数(N個)のアンテナ素子1101(1)~1101(N)に1対1で対応する複数(N個)の無線信号処理ユニット(以下「RF信号処理ユニット」ともいう。)1320(1)~1320(N)を有する。複数のRF信号処理ユニット1320(1)~1320(N)はそれぞれ、対応するアンテナ素子1101(1)~1101(N)に接続され、下りリンクのWPTダミー信号及びDL通信信号並びに上りリンクのUL通信信号の高周波の送信信号であるWPTダミーRF信号、DL通信RF信号及びUL通信RF信号を互いに異なる複数の増幅器で増幅し、TDD(時分割複信)方式で多重化する。また、RF信号処理ユニット1320(1)~1320(N)はそれぞれ、WPTダミーRF信号、DL通信RF信号及びUL通信RF信号の位相を所定の位相に制御することにより、アンテナ素子1101(1)~1101(N)を介したビームフォーミング制御を行って各信号を送受信する。
【0052】
図6は、図5のアンテナシステム133を構成するRF信号処理ユニット1320の構成の一例を示すブロック図である。なお、複数のRF信号処理ユニット1320(1)~1320(N)は同様な構成を有するので、図6では、括弧書きの識別番号を省略した一つのRF信号処理ユニット1320について説明する。
【0053】
図6において、RF信号処理ユニット1320は、アンテナ素子1101から送信されるWPTダミーRF信号の位相を制御するための第1移相器1321Wと、WPTダミーRF信号を増幅する第1増幅器(電力増幅器)1322Wとを備える。更に、RF信号処理ユニット1320は、アンテナ素子1101から送信されるDL通信RF信号の位相を制御するための第2移相器1321Dと、DL通信RF信号を増幅する第2増幅器(電力増幅器)1322Dと、アンテナ素子1101を介して受信されたUL通信RF信号を増幅する第3増幅器(低ノイズ増幅器)1322Uと、UL通信RF信号の位相を制御するための第3位相器1321Uと、を備える。
【0054】
また、RF信号処理ユニット1320は、WPTダミーRF信号、DL通信RF信号及びUL通信RF信号を時分割複信(TDD)方式で多重化する多重化処理部としての信号切替スイッチ1323を備える。信号切替スイッチ1323は、所定の制御信号に基づいて、WPTダミーRF信号、DL通信RF信号及びUL通信RF信号それぞれの信号処理パスとアンテナ素子1101との接続を切り替える。制御信号は、例えば、通信信号処理部120において所定のベースバンドのスケジューリング情報に基づいて生成してもよい。
【0055】
図7は、図5のアンテナシステム133で送受信されるWPTダミー信号、DL通信信号及びUL通信信号のフレーム構成の一例を示す説明図である。図7中の「WPT」、「DL」及び「UL」を付した期間はそれぞれ、基地局10と端末装置20との間の無線通信のフレーム30に割り当てられた、WPTダミー信号を送信するWPT用フレーム32、DL通信信号を送信するDL通信用フレーム31D及びUL通信信号を受信するUL通信用フレーム31Uである。また、図7中のハッチングを付した期間は、信号の送受信を行わないガード期間である。
【0056】
信号切替スイッチ1323は、図7に示すように、WPT用フレーム32、DL通信用フレーム31D及びUL通信用フレーム31Uに同期させて、WPTダミーRF信号、DL通信RF信号及びUL通信RF信号それぞれの増幅器1322W、1322D、1322Uを介した3つの信号処理経路とアンテナ素子1101との接続を切り替えてもよい。例えば、信号切替スイッチ1323の信号処理経路の切替により、WPT用フレーム32の期間において第1増幅器(電力増幅器)1322Wから出力されたWPTダミーRF信号がアンテナ素子1101に供給される。また、DL通信用フレーム31Dの期間において第2増幅器(電力増幅器)1322Dから出力されたDL通信RF信号がアンテナ素子1101に供給され、UL通信用フレーム31Uの期間においてアンテナ素子1101から出力されたUL通信RF信号が第3増幅器(低ノイズ増幅器)1322Uに供給される。
【0057】
図8は、実施形態に係る基地局10に適用可能なアンテナシステム133の構成の他の例を示すブロック図である。図8において、アンテナシステム133は、複数(N個)のアンテナ素子1101(1)~1101(N)からなるアレーアンテナ110と、アレーアンテナ110に接続されたFDD(周波数分割複信)方式のRF信号処理部132とを備える。
【0058】
RF信号処理部132は、アレーアンテナ110の複数(N個)のアンテナ素子1101(1)~1101(N)に1対1で対応する複数(N個)の無線信号処理ユニット(RF信号処理ユニット)1325(1)~1325(N)を有する。複数のRF信号処理ユニット1325(1)~1325(N)はそれぞれ、対応するアンテナ素子1101(1)~1101(N)に接続され、WPTダミーRF信号、DL通信RF信号及びUL通信RF信号を互いに異なる複数の増幅器で増幅し、FDD(周波数分割複信)方式で多重化する。また、RF信号処理ユニット1325(1)~1325(N)はそれぞれ、WPTダミーRF信号、DL通信RF信号及びUL通信RF信号の位相を所定の位相に制御することにより、アンテナ素子1101(1)~1101(N)を介したビームフォーミング制御を行って各信号を送受信する。
【0059】
図9は、図8のアンテナシステム133を構成するRF信号処理ユニット1325の構成の一例を示すブロック図である。なお、複数のRF信号処理ユニット1325(1)~1325(N)は同様な構成を有するので、図9では、括弧書きの識別番号を省略した一つのRF信号処理ユニット1325について説明する。
【0060】
図9において、RF信号処理ユニット1325は、アンテナ素子1101から送信されるWPTダミーRF信号の位相を制御するための第1移相器1321Wと、WPTダミーRF信号を増幅する第1増幅器(電力増幅器)1322Wとを備える。更に、RF信号処理ユニット1325は、アンテナ素子1101から送信されるDL通信RF信号の位相を制御するための第2移相器1321Dと、DL通信RF信号を増幅する第2増幅器(電力増幅器)1322Dと、アンテナ素子1101を介して受信されたUL通信RF信号を増幅する第3増幅器(低ノイズ増幅器)1322Uと、UL通信RF信号の位相を制御するための第3位相器1321Uと、を備える。
【0061】
また、RF信号処理ユニット1325は、WPTダミーRF信号、DL通信RF信号及びUL通信RF信号を周波数分割複信(FDD)方式で多重化する多重化処理部としてのアンテナ共用器(DUP:Duplexer)1326を備える。
【0062】
アンテナ共用器1326は、例えば、第1増幅器(電力増幅器)1322Wの出力端に接続される送信フィルタ1327Wと、第2増幅器(電力増幅器)1322Dの出力端に接続される送信フィルタ1327Dと、第3増幅器(低ノイズ増幅器)1322Uの入力端に接続される受信フィルタ1327Uとを有する。送信フィルタ1327Wは、WPTダミーRF信号の周波数Fwを通過域とし、UL通信RF信号の周波数Fuを阻止域とするバンドパスフィルタ(BPF)である。送信フィルタ1327Dは、DL通信RF信号の周波数Fdを通過域とし、UL通信RF信号の周波数Fuを阻止域とするバンドパスフィルタ(BPF)である。受信フィルタ1327Uは、UL通信RF信号の周波数Fuを通過域とし、WPTダミーRF信号及びDL通信RF信号の周波数Fw、Fdを阻止域とするバンドパスフィルタ(BPF)である。アンテナ共用器1326の送信フィルタ1327W、1327Dの出力端及び受信フィルタ1327Uの入力端が移相器を介してアンテナ素子1101に接続される。
【0063】
アンテナ共用器1326において、第1増幅器(電力増幅器)1322Wから出力された周波数FwのWPTダミーRF信号と第2増幅器(電力増幅器)1322Dから出力された周波数FdのDL通信RF信号は合成されてアンテナ素子1101に供給される。また、アンテナ素子1101から出力された周波数FuのUL通信RF信号は、第3増幅器(低ノイズ増幅器)1322Uに供給される。
【0064】
図10は、実施形態に係る基地局10に適用可能なセパレートアンテナ構成のアンテナシステム133の構成の一例を示すブロック図である。図10の構成例では、前述のアレーアンテナ110として、無線電力伝送(WPT)用のアレーアンテナ(以下「WPTアレーアンテナ」ともいう。)110W及び通信用のアレーアンテナ(以下「通信アレーアンテナ」ともいう。)110Cを別々に備えている。アンテナシステム133は、複数(Nw個)のアンテナ素子1101W(1)~1101W(Nw)からなるWPTアレーアンテナ110Wと、WPTアレーアンテナ110Wに接続された無線電力伝送(WPT)用のRF信号処理部132Wと、複数(Nc個)のアンテナ素子1101C(1)~1101C(Nc)からなる通信アレーアンテナ110Cと、通信アレーアンテナ110Cに接続された通信用のRF信号処理部132Cとを備える。
【0065】
無線電力伝送(WPT)用のRF信号処理部132Wは、アレーアンテナ110の複数(Nw個)のアンテナ素子1101W(1)~1101W(Nw)に1対1で対応する複数(Nw個)の無線信号処理ユニット(以下「WPTダミーRF信号処理ユニット」ともいう。)1320W(1)~1320W(Nw)を有する。複数のWPTダミーRF信号処理ユニット1320W(1)~1320(Nw)はそれぞれ、対応するアンテナ素子1101W(1)~1101W(Nw)に接続される。また、WPTダミーRF信号処理ユニット1320W(1)~1320W(Nw)はそれぞれ、WPTダミーRF信号の位相を所定の位相に制御することにより、アンテナ素子1101W(1)~1101W(Nw)を介したビームフォーミング制御を行ってWPTダミーRF信号を送信する。
【0066】
通信用のRF信号処理部132Cは、通信アレーアンテナ110Cの複数(Nc個)のアンテナ素子1101C(1)~1101C(Nc)に1対1で対応する複数(Nc個)の無線信号処理ユニット(以下「通信RF信号処理ユニット」ともいう。)1320C(1)~1320C(Nc)を有する。複数の通信RF信号処理ユニット1320C(1)~1320C(Nc)はそれぞれ、対応するアンテナ素子1101C(1)~1101C(Nc)に接続され、下りリンクのDL通信RF信号及びUL通信RF信号を互いに異なる複数の増幅器で増幅し、TDD(時分割複信)方式又はFDD(周波数分割複信)方式で多重化する。また、通信RF信号処理ユニット1320C(1)~1320C(Nc)はそれぞれ、DL通信RF信号及びUL通信RF信号の位相を所定の位相に制御することにより、アンテナ素子1101C(1)~1101C(Nc)を介したビームフォーミング制御を行って各信号を送受信する。
【0067】
図11(a)及び図11(b)はそれぞれ、図10のアンテナシステム133を構成する無線電力伝送(WPT)用のRF信号処理ユニット1320W及び通信用のRF信号処理ユニット1320Cの構成の一例を示すブロック図である。なお、複数のWPTダミーRF信号処理ユニット1320W及び通信RF信号処理ユニット1320Cはそれぞれ同様な構成を有するので、図11では、括弧書きの識別番号を省略したRF信号処理ユニット1320W,1320Cについて説明する。
【0068】
図11(a)において、WPTダミーRF信号処理ユニット1320Wは、WPTアレーアンテナ110Wのアンテナ素子1101Wから送信されるWPTダミーRF信号の位相を制御するための第1移相器1321Wと、WPTダミーRF信号を増幅する第1増幅器(電力増幅器)1322Wとを備える。
【0069】
図11(b)において、通信RF信号処理ユニット1320Cは、アンテナ素子1101Cから送信されるDL通信RF信号の位相を制御するための第2移相器1321Dと、DL通信RF信号を増幅する第2増幅器(電力増幅器)1322Dと、アンテナ素子1101Cを介して受信されたUL通信RF信号を増幅する第3増幅器(低ノイズ増幅器)1322Uと、UL通信RF信号の位相を制御するための第3位相器1321Uと、を備える。
【0070】
また、通信RF信号処理ユニット1320Cは、DL通信RF信号及びUL通信RF信号を時分割複信(TDD)方式で多重化する多重化処理部としての信号切替スイッチ1328を備える。信号切替スイッチ1328は、所定の制御信号に基づいて、DL通信RF信号及びUL通信RF信号それぞれの信号処理パスとアンテナ素子1101Cとの接続を切り替える。制御信号は、例えば、通信信号処理部120において所定のベースバンドのスケジューリング情報に基づいて生成してもよい。
【0071】
図12は、図10のアンテナシステム133を構成する通信RF信号処理ユニット1320Cの構成の他の例を示すブロック図である。なお、図12では、括弧書きの識別番号を省略した通信RF信号処理ユニット1320Cについて説明する。また、図12において、前述の図9の構成と同様な部分については、説明を省略する。
【0072】
図12において、通信RF信号処理ユニット1320Cは、アンテナ素子1101Cから送信されるDL通信RF信号の位相を制御するための第2移相器1321Dと、DL通信RF信号を増幅する第2増幅器(電力増幅器)1322Dと、アンテナ素子1101Cを介して受信されたUL通信RF信号を増幅する第3増幅器(低ノイズ増幅器)1322Uと、UL通信RF信号の位相を制御するための第3位相器1321Uと、を備える。
【0073】
また、通信RF信号処理ユニット1320Cは、DL通信RF信号及びUL通信RF信号を周波数分割複信(FDD)方式で多重化する多重化処理部としてのアンテナ共用器(DUP)1329を備える。アンテナ共用器1329において、第2増幅器(電力増幅器)1322Dから出力された周波数FdのDL通信RF信号はアンテナ素子1101Cに供給され、アンテナ素子1101Cから出力された周波数FuのUL通信RF信号は、第3増幅器(低ノイズ増幅器)1322Uに供給される。
【0074】
図13は、実施形態に係る基地局10における無線処理装置(無線処理部)130の入出力信号処理部131の構成の一例を示すブロック図である。図13において、入出力信号処理部131は、信号分離部1311と第1混合器1312と第2混合器1313と第3混合器1314と局部発振器1315とを備える。
【0075】
信号分離部1311は、通信信号処理部120から出力された下りリンクの中間周波信号(ベースバンド信号)を、WPTダミー信号の中間周波信号(WPT-IT)とDL通信信号の中間周波信号(DL-IF)とに分離する。第1混合器1312は、WPTダミー信号の中間周波信号(WPT-IT)と局部発振器1315から出力された所定周波数の局部発振信号(LO)とを混合してWPTダミーRF信号を生成し、RF信号処理部132に出力する。第2混合器1313は、DL通信信号の中間周波信号(DL-IF)と局部発振器1315から出力された所定周波数の局部発振信号(LO)とを混合してDL通信RF信号を生成し、RF信号処理部132に出力する。第3混合器1314は、RF信号処理部132から入力されたUL通信RF信号と局部発振器1315から出力された所定周波数の局部発振信号(LO)とを混合してUL通信信号の中間周波信号(UL-IF)を生成し、通信信号処理部120に出力する。
【0076】
上記構成の図1図13のシステムによれば、基地局10からUE20への下りリンク通信において、通信未使用の無線リソースを無線電力伝送ブロック(WPTブロック)として有効活用し、基地局10からUE20への無線電力伝送(WPT)を行うことができる。また、基地局10から送信される下りリンクのWPTダミー信号及びDL通信信号と基地局10で受信された上りリンクのUL通信信号をそれぞれ、各信号に適した個別の増幅器で増幅することができる。
【0077】
図14は、本実施形態に係る基地局10から複数のUE20へのビームフォーミングによるUE毎の給電の一例を示す説明図である。本実施形態において、図9に示すように通信エリア10A内のWPTエリア10A'(前述の図1参照)に複数のUE20(1)~20(3)が在圏し、UE毎に形成したビーム10B(1)~10B(3)を介して各UE20(1)~20(3)に給電してもよい。ビーム10B(1)~10B(3)は、例えば時分割で切り替えて形成してもよい。
【0078】
以上、本実施形態によれば、基地局10から送信される下りリンクのWPTダミー信号及びDL通信信号と基地局10で受信された上りリンクのUL通信信号をそれぞれ、各信号に適した個別の増幅器で増幅することができる。
【0079】
また、本実施形態によれば、通信信号よりも低いPAPRを有するWPTダミー信号を用いることにより、基地局10において、通信信号についてはスプリアスが発生しないように高いマージンをとった低めの出力電力の範囲で増幅できるとともに、WPTダミー信号を増幅するときの電力増幅器の高出力化及び高効率化を図ることができる。
【0080】
また、本実施形態によれば、基地局10と端末装置20との間の通信未使用の無線リソースを利用して端末装置20への給電を行うことができる。
【0081】
また、本発明は、基地局10から送信された電波を受信可能な多数の端末装置20への給電をまかなうことができる給電インフラを提供できるため、持続可能な開発目標(SDGs)の目標9「産業と技術革新の基盤をつくろう」の達成に貢献できる。
【0082】
なお、本明細書で説明された処理工程並びにシステム、無線処理装置、端末装置(UE、IoTデバイス)、基地局、移動局、中継装置及び制御装置の構成要素は、様々な手段によって実装することができる。例えば、これらの工程及び構成要素は、ハードウェア、ファームウェア、ソフトウェア、又は、それらの組み合わせで実装されてもよい。
【0083】
ハードウェア実装については、実体(例えば、各種無線通信装置、基地局装置(Node B、Node G)、端末装置、ハードディスクドライブ装置、又は、光ディスクドライブ装置)において上記工程及び構成要素を実現するために用いられる処理ユニット等の手段は、1つ又は複数の、特定用途向けIC(ASIC)、デジタルシグナルプロセッサ(DSP)、デジタル信号処理装置(DSPD)、プログラマブル・ロジック・デバイス(PLD)、フィールド・プログラマブル・ゲート・アレイ(FPGA)、プロセッサ、コントローラ、マイクロコントローラ、マイクロプロセッサ、電子デバイス、本明細書で説明された機能を実行するようにデザインされた他の電子ユニット、コンピュータ、又は、それらの組み合わせの中に実装されてもよい。
【0084】
また、ファームウェア及び/又はソフトウェア実装については、上記構成要素を実現するために用いられる処理ユニット等の手段は、本明細書で説明された機能を実行するプログラム(例えば、プロシージャ、関数、モジュール、インストラクション、などのコード)で実装されてもよい。一般に、ファームウェア及び/又はソフトウェアのコードを明確に具体化する任意のコンピュータ/プロセッサ読み取り可能な媒体が、本明細書で説明された上記工程及び構成要素を実現するために用いられる処理ユニット等の手段の実装に利用されてもよい。例えば、ファームウェア及び/又はソフトウェアコードは、例えば制御装置において、メモリに記憶され、コンピュータやプロセッサにより実行されてもよい。そのメモリは、コンピュータやプロセッサの内部に実装されてもよいし、又は、プロセッサの外部に実装されてもよい。また、ファームウェア及び/又はソフトウェアコードは、例えば、ランダムアクセスメモリ(RAM)、リードオンリーメモリ(ROM)、不揮発性ランダムアクセスメモリ(NVRAM)、プログラマブルリードオンリーメモリ(PROM)、電気的消去可能PROM(EEPROM)、フラッシュメモリ、フロッピー(登録商標)ディスク、コンパクトディスク(CD)、デジタルバーサタイルディスク(DVD)、磁気又は光データ記憶装置、などのような、コンピュータやプロセッサで読み取り可能な媒体に記憶されてもよい。そのコードは、1又は複数のコンピュータやプロセッサにより実行されてもよく、また、コンピュータやプロセッサに、本明細書で説明された機能性のある態様を実行させてもよい。
【0085】
また、前記媒体は非一時的な記録媒体であってもよい。また、前記プログラムのコードは、コンピュータ、プロセッサ、又は他のデバイス若しくは装置機械で読み込んで実行可能であればよく、その形式は特定の形式に限定されない。例えば、前記プログラムのコードは、ソースコード、オブジェクトコード及びバイナリコードのいずれでもよく、また、それらのコードの2以上が混在したものであってもよい。
【0086】
また、本明細書で開示された実施形態の説明は、当業者が本開示を製造又は使用するのを可能にするために提供される。本開示に対するさまざまな修正は当業者には容易に明白になり、本明細書で定義される一般的原理は、本開示の趣旨又は範囲から逸脱することなく、他のバリエーションに適用可能である。それゆえ、本開示は、本明細書で説明される例及びデザインに限定されるものではなく、本明細書で開示された原理及び新規な特徴に合致する最も広い範囲に認められるべきである。
【符号の説明】
【0087】
10 :基地局
10A :通信エリア
10A' :WPTエリア
10B :ビーム
20 :端末装置
30 :フレーム
31D :DL通信用フレーム
31U :UL通信用フレーム
32 :WPT用フレーム
110 :アンテナ
110 :アレーアンテナ
110C :通信アレーアンテナ
110W :WPTアレーアンテナ
120 :通信信号処理部
130 :無線処理装置(無線処理部)
131 :入出力信号処理部
132 :RF信号処理部
132C :通信用のRF信号処理部
132W :無線電力伝送(WPT)用のRF信号処理部
133 :アンテナシステム
1101 :アンテナ素子
1311 :信号分離部
1312 :第1混合器
1313 :第2混合器
1314 :第3混合器
1315 :局部発振器
1320 :RF信号処理ユニット
1320C :通信RF信号処理ユニット
1320W :WPTダミーRF信号処理ユニット
1321D :第2移相器
1321U :第3位相器
1321W :第1移相器
1322D :第2増幅器(電力増幅器)
1322U :第3増幅器(低ノイズ増幅器)
1322W :第1増幅器(電力増幅器)
1323 :信号切替スイッチ
1325 :RF信号処理ユニット
1326 :アンテナ共用器
1327D :送信フィルタ
1327U :受信フィルタ
1327W :送信フィルタ
1328 :信号切替スイッチ
1329 :アンテナ共用器
図1
図2
図3
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図5
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