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特開2024-46017高温継続熱処理下でも構造劣化、破壊、透明度の劣化を生じさせないシクロオレフィン系高分子用添加剤、シクロオレフィン系高分子用添加剤とシクロオレフィン系高分子とを含む組成物、及びその製品
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024046017
(43)【公開日】2024-04-03
(54)【発明の名称】高温継続熱処理下でも構造劣化、破壊、透明度の劣化を生じさせないシクロオレフィン系高分子用添加剤、シクロオレフィン系高分子用添加剤とシクロオレフィン系高分子とを含む組成物、及びその製品
(51)【国際特許分類】
   C08L 65/00 20060101AFI20240327BHJP
   C08K 5/55 20060101ALI20240327BHJP
   C09K 3/16 20060101ALI20240327BHJP
【FI】
C08L65/00
C08K5/55
C09K3/16 103Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022151154
(22)【出願日】2022-09-22
(71)【出願人】
【識別番号】508106459
【氏名又は名称】株式会社ボロン研究所
(71)【出願人】
【識別番号】591120240
【氏名又は名称】浜中 博義
(74)【代理人】
【識別番号】100107984
【弁理士】
【氏名又は名称】廣田 雅紀
(74)【代理人】
【識別番号】100182305
【弁理士】
【氏名又は名称】廣田 鉄平
(74)【代理人】
【識別番号】100096482
【弁理士】
【氏名又は名称】東海 裕作
(74)【代理人】
【識別番号】100131093
【弁理士】
【氏名又は名称】堀内 真
(74)【代理人】
【識別番号】100150902
【弁理士】
【氏名又は名称】山内 正子
(74)【代理人】
【識別番号】100141391
【弁理士】
【氏名又は名称】園元 修一
(74)【代理人】
【識別番号】100221958
【弁理士】
【氏名又は名称】篠田 真希恵
(74)【代理人】
【識別番号】100192441
【弁理士】
【氏名又は名称】渡辺 仁
(72)【発明者】
【氏名】浜中 博義
【テーマコード(参考)】
4J002
【Fターム(参考)】
4J002BK001
4J002CE001
4J002EY016
4J002FD066
4J002FD316
4J002GP00
(57)【要約】      (修正有)
【課題】熱安定性と界面活性能とに優れた疎水性シクロオレフィン系高分子用添加剤を提供する。
【解決手段】式(1)にて表されるドナー・アクセプター系分子化合物を含む添加剤。

【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記一般式(1)にて表されるドナー・アクセプター系分子化合物を含むことを特徴とする熱安定性と界面活性能とに優れた疎水性シクロオレフィン系高分子用添加剤。
【化1】
上記式中、R、Rはそれぞれ独立に、CH(CH)nCO-OCH-であり、nは14または16であり、RはCH(CH14-またはCH(CH16-である。
【請求項2】
請求項1に記載の熱安定性と界面活性能とに優れた疎水性シクロオレフィン系高分子用添加剤とシクロオレフィン系高分子とを含むことを特徴とするシクロオレフィン系高分子組成物。
【請求項3】
請求項2に記載のシクロオレフィン系高分子組成物からなる製品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、シクロオレフィン系高分子材料に添加することにより、シクロオレフィン系高分子製品の表面を保護し、かつ、内部に均質に存在し続けて、構造の安定に寄与し、構造破壊を生じさせず、また、表面を親水化させることなく透明性を保持し得る添加剤に関するものであり、また、かかる添加剤を含むシクロオレフィン系高分子組成物、及びその製品に関するものである。
【背景技術】
【0002】
シクロオレフィン系高分子(Cyclo-olefin Polymer:COP)は、日本が世界に先駆けて開発した高耐熱性、寸法安定性に優れ、透明性に富む高分子重合体である。
【0003】
シクロオレフィン系高分子の有する様々な特性を生かすことで、シクロオレフィン系高分子は多くの分野へと適用されている。例えば、シクロオレフィン系高分子の有する光学特性を活かして、カメラやプリンター、光ピックアップ、ミラーといった光学部品に使用され(特許文献1)、また、透明性、高バリア性、低不純物といった特性を活かして医療用途や、バイオ用途に使用される(特許文献2)と共に、低誘電率・低誘電正接といった特性を活かして、高周波コネクタや、アンテナ基板など電気絶縁性が求められる電子機器の用途(特許文献3)にも展開されている。
【0004】
非特許文献1は、本発明者らが、新規な構造体の有機ホウ素化合物と三級アミン化合物との間で形成されるドナー・アクセプター系分子化合物が、各種類のプラスチックと相溶して、表面の電気特性を変化させる性能試験結果を発表したものである。また、非特許文献2は、シクロオレフィン系高分子による高透明プラスチック成形物にドナー・アクセプター系化合物型帯電防止剤を練り込んで成形した試験体が、透明度がほとんど低下することなく、帯電防止効果をもたらすことを調べたものである。
【0005】
以上のとおり、シクロオレフィン系高分子の他の用途への期待がさらに高まる中にあって、シクロオレフィン系高分子表面の疎水性を変化させないままで、帯電防止させることが求められ、さらに、シクロオレフィン系高分子の内部に均一に分散した状態で帯電防止効果を長期間にわたって示す新機構型内部練り込み帯電防止剤の開発が強く求められていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2022-108649号公報
【特許文献2】特開2019-218118号公報
【特許文献3】特開2021-143247号公報
【非特許文献】
【0007】
【非特許文献1】浜中博義、新開発のドナー・アクセプター系分子化合物型帯電防止剤の応用展開、プラスチックスエージ、2018年、4月号、47~52頁
【非特許文献2】渡辺卓朗、浜中博義、佐野知己、伊藤浩志、成形加工シンポジア2015,予稿集219~220頁
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、シクロオレフィン系高分子による製品として、さらに用途を拡大するためには、ドナー・アクセプター系分子化合物を帯電防止剤としてシクロオレフィン系高分子材料に相溶させた製品が、長期間にわたり、良好な透明性を維持できるかどうか、さらには、かかる製品を高温状態に置いた状態であっても、全体の均一性を維持して、クラック等破損せず、耐久性を維持できるかどうかについて、厳密な試験により、確認をすることが求められていた。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者らは、上記課題を解決するために種々検討した結果、これまで、特に対象とするプラスチック材料を限定せず、プラスチック構造の内部に存在して静電気対策を行うという新たな機構により帯電防止剤としての機能を果たしてきたドナー・アクセプター系分子化合物型帯電防止剤類の中から選定した一群の化合物が、シクロオレフィン系高分子の表面及び内部での界面吸着力を強固にして、シクロオレフィン系高分子のマトリックス中で高温処理下でも分散状態を均質に維持して、透明性を保持し、また、成形物を破損させないことを確認して、本発明を完成するに至った。
本発明は、以下の特定事項により特定されるとおりのものである。
【0010】
(1) 下記一般式(1)にて表されるドナー・アクセプター系分子化合物を含むことを特徴とする熱安定性と界面活性能とに優れた疎水性シクロオレフィン系高分子用添加剤。
【化1】
上記式中、R、Rはそれぞれ独立に、CH(CH)nCO-OCH-であり、nは14または16であり、RはCH(CH14-またはCH(CH16-である。
(2) (1)に記載の熱安定性と界面活性能とに優れた疎水性シクロオレフィン系高分子用添加剤とシクロオレフィン系高分子とを含むことを特徴とするシクロオレフィン系高分子組成物。
(3) (2)に記載のシクロオレフィン系高分子組成物からなる製品。
【発明の効果】
【0011】
式(1)で表されるドナー・アクセプター系分子化合物を添加剤(帯電防止剤)として用いることにより、シクロオレフィン系高分子の表面及び内部での界面吸着力を強固にして、シクロオレフィン系高分子のマトリックス中で高温処理下でも分散状態を均質に維持して、透明性を保持し、また、成形物を破損させない。高温処理下でも成形物をクラック等により破損させないことは、とりわけ、シクロオレフィン系高分子の光学部品への適用において有効である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
[ドナー・アクセプター系分子化合物]
本発明に係るドナー・アクセプター系分子化合物は、下記の化学式を有する化合物である。
【化2】
上記式中、R、Rはそれぞれ独立に、CH(CH)nCO-OCH-であり、nは14または16であり、RはCH(CH14-またはCH(CH16-である。
なお、上記ドナー・アクセプター系分子化合物の製造方法及び構造確認方法については、前記非特許文献1の記載、特願2022-011827号における実施例の記載を含めて、複数の文献によって公知であることから、特に記載しない。
【0013】
[シクロオレフィン系高分子用添加剤]
シクロオレフィン系高分子用添加剤としては、本発明に係るドナー・アクセプター系分子化合物が含まれていることが必須であり、1種又は2種以上のドナー・アクセプター系分子化合物が含まれる。シクロオレフィン系高分子用添加剤として用いられる常用の成分については、本発明の奏する効果を損なわない範囲で含むことができる。本発明に係るシクロオレフィン系高分子用添加剤の形状は固体状であり、その添加量についても、効果を奏する範囲で特に制限はない。
【0014】
[シクロオレフィン系高分子]
シクロオレフィン系高分子は、シクロオレフィンをモノマーとして合成され、高分子中に脂環構造を有するポリマーである。本発明に係るシクロオレフィン系高分子組成物を構成するシクロオレフィン系高分子としては、特に制限はなく、市販のシクロオレフィン系高分子を用いることができる。
【0015】
以下に、実施例及び比較例を示して、本発明を実施するための最良の形態を含め、具体的な形態について説明するが、本発明はそれらの実施例等により何ら限定されるものではない。なお、実施例及び比較例中の「%」は、特に断りがない限り、「重量%」を表す。
【実施例0016】
ドナー・アクセプター系分子化合物として、本発明の範囲に含まれる化合物と本発明の範囲から外れる化合物とを用いて、実施例及び比較例を行い、成形物の高温安定性、透明性の変化状況、及び破壊度を測定した。
【0017】
実施例及び比較例においては、シクロオレフィン系高分子(以下、表1においては「COP」と表記する。)として、日本ゼオン社製ゼオネックスE48Rを用いた。また、ドナー・アクセプター系分子化合物として、式(1)におけるnが14及び16の化合物を実施例では用い、式(1)におけるnが20及び10の化合物を比較例では用いた。ドナー・アクセプター系分子化合物は、シクロオレフィン系高分子に対して2.5%添加し、相溶した後、280℃で精密射出成形を行い、試験体を得た。
得られた試験体は、ED-4701/300に規定される8585試験(高温高湿試験)により、長期高温試験に供した。
【0018】
1000時間経過後の、試験体の変化として、光線透過率の変化、着色性の変化、塵芥吸着性、及び外観の変化の有無を測定した。結果を表1に示す。
【0019】
【表1】
【0020】
表1の結果から、本発明に係る特定のドナー・アクセプター系分子化合物を添加剤として用いて製造したシクロオレフィン系高分子の射出成形品は、添加剤を用いていないシクロオレフィン系高分子の射出成型品と同等の光線透過率及び耐熱性能を示した。また、こうした特性は、高温条件下でも相互の均一安定状態を維持するという利点としても確認されたことに加え、これまで実現が困難と考えられていたシクロオレフィン系高分子からなる製品表面での疎水性を変えることなく、静電気対策もなし得るという点で、その意義は極めて大きいと考えられる。
【産業上の利用可能性】
【0021】
本発明に係るドナー・アクセプター系分子化合物を添加剤として用いることにより、シクロオレフィン系高分子からなる製品は、透明性を保持し、また、高温処理下でも成形物をクラック等により破損させないことから、シクロオレフィン系高分子の光学部品への適用がさらに拡大されるものである。
なお、本発明において、シクロオレフィン系高分子の特有な性能を損なわない範囲で、出発原料のシクロオレフィンモノマーに対して、例えば、非環状のオレフィンモノマーをコポリマーとして共存させて共重合体を誘導することも行い得る。