(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024046042
(43)【公開日】2024-04-03
(54)【発明の名称】黒にんじん抽出物を含むワイン風味増強剤
(51)【国際特許分類】
A23L 27/00 20160101AFI20240327BHJP
A23L 2/00 20060101ALI20240327BHJP
A23L 2/52 20060101ALI20240327BHJP
【FI】
A23L27/00 Z
A23L2/00 B
A23L2/52 101
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022151185
(22)【出願日】2022-09-22
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用申請有り 令和4年3月31日に、エー・ディー・エム・ジャパン株式会社が、「朝倉 昂」、「青木 望」、「藤森 賢一」によってなされた発明の一態様である商品Edition ZERO RED-L 500mlをWine Bar La Storia(ワインバー ラ・ストーリア)に卸した。 令和4年4月27日及び令和4年9月21日に、エー・ディー・エム・ジャパン株式会社が、「朝倉 昂」、「青木 望」、「藤森 賢一」によってなされた発明の一態様である商品Edition ZERO RED-L 500mlをヤマエ久野株式会社に卸した。 エー・ディー・エム・ジャパン株式会社が、「朝倉 昂」、「青木 望」、「藤森 賢一」によってなされた発明の一態様である商品Edition ZERO RED-L 500mlを榎本酒類株式会社に卸した。 令和4年5月31日に、株式会社エフビーが、「朝倉 昂」、「青木 望」、「藤森 賢一」によってなされた発明の一態様である商品Edition ZERO REDを公開した。
(71)【出願人】
【識別番号】507303309
【氏名又は名称】アーチャー-ダニエルズ-ミッドランド カンパニー
(74)【代理人】
【識別番号】100079108
【弁理士】
【氏名又は名称】稲葉 良幸
(74)【代理人】
【識別番号】100109346
【弁理士】
【氏名又は名称】大貫 敏史
(74)【代理人】
【識別番号】100117189
【弁理士】
【氏名又は名称】江口 昭彦
(74)【代理人】
【識別番号】100134120
【弁理士】
【氏名又は名称】内藤 和彦
(72)【発明者】
【氏名】朝倉 昂
(72)【発明者】
【氏名】青木 望
(72)【発明者】
【氏名】藤森 賢一
【テーマコード(参考)】
4B047
4B117
【Fターム(参考)】
4B047LB09
4B047LF07
4B047LG06
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4B047LG39
4B047LP01
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4B117LL01
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4B117LP01
4B117LP14
4B117LP17
(57)【要約】
【課題】新規なワイン風味増強剤等の提供。
【解決手段】本発明は、有効成分として黒にんじん抽出物を含む、ワイン風味増強剤、を提供する。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
有効成分として黒にんじん抽出物を含む、ワイン風味増強剤。
【請求項2】
有効成分として、単糖若しくは二糖を含む糖類及び/又はグリセリンを更に含む、請求項1に記載のワイン風味増強剤。
【請求項3】
単糖若しくは二糖を含む糖類が、水あめ及びぶどう糖果糖液糖から成る群から選択される1又は複数である、請求項2に記載のワイン風味増強剤。
【請求項4】
二糖が水あめであり、水あめのDE値が40~55である、請求項3に記載のワイン風味増強剤。
【請求項5】
異性化糖がぶどう糖果糖である、請求項3に記載のワイン風味増強剤。
【請求項6】
ワイン風味が、ワイン風アルコール感である、請求項1に記載のワイン風味増強剤。
【請求項7】
請求項1に記載のワイン風味増強剤を含む、ワイン風味飲料又はその濃縮物。
【請求項8】
単糖若しくは二糖を含む糖類及び/又はグリセリンを更に含む、請求項7に記載のワイン風味飲料又はその濃縮物。
【請求項9】
請求項1又は2に記載のワイン風味増強剤をワイン風味飲料に配合する工程を含む、ワイン風味が増強されたワイン風味飲料又はその濃縮物を製造する方法。
【請求項10】
請求項1又は2に記載のワイン風味増強剤をワイン風味飲料に配合する工程を含む、ワイン風味飲料又はその濃縮物のワイン風味を増強する方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、有効成分として黒にんじん抽出物を含む、ワイン風味増強剤等に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、健康志向の高まりを受け、ノンアルコールビール等の低アルコール飲料の市場が拡大している。しかしながら、低アルコール飲料の中でもノンアルコールワインについては顧客を満足させる品質のものが存在しておらず、その結果、現在ノンアルコールワインの市場は決して大きくないものに留まっている。
【0003】
ワイン飲料の品質において最も重視されるワイン風味を増強する技術も開発されており、例えば、特開2016-123320号公報では、アセスルファムカリウムの添加による酒らしい味わい、特に、ワイン様の味わいの増強が開示されている。また、カシス(ブラックカラント)のような果実のエキスは果汁フレーバーとしてしばしばノンアルコールワインのような果実酒に配合されている(特開2017-086018号公報)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2016-123320号公報
【特許文献2】特開2017-086018号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、新規なワイン風味増強剤等の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者らは、黒にんじんの抽出物がカシス(ブラックカラント)との比較で優れたワイン風味増強効果を有することを見出し、本発明を完成させるに至った。
【0007】
すなわち、本発明は以下の発明を包含する。
[1]
有効成分として黒にんじん抽出物を含む、ワイン風味増強剤。
[2]
有効成分として、単糖若しくは二糖を含む糖類及び/又はグリセリンを更に含む、[1]に記載のワイン風味増強剤。
[3]
単糖若しくは二糖を含む糖類が、水あめ及びぶどう糖果糖液糖から成る群から選択される1又は複数である、[2]に記載のワイン風味増強剤。
[4]
二糖が水あめであり、水あめのDE値が40~55である、[3]に記載のワイン風味増強剤。
[5]
異性化糖がぶどう糖果糖である、[3]に記載のワイン風味増強剤。
[6]
ワイン風味が、ワイン風アルコール感である、[1]~[5]のいずれかに記載のワイン風味増強剤。
[7]
[1]に記載のワイン風味増強剤を含む、ワイン風味飲料又はその濃縮物。
[8]
単糖若しくは二糖を含む糖類及び/又はグリセリンを更に含む、[7]に記載のワイン風味飲料又はその濃縮物。
[9]
[1]~[6]のいずれかに記載のワイン風味増強剤をワイン風味飲料に配合する工程を含む、ワイン風味が増強されたワイン風味飲料又はその濃縮物を製造する方法。
[10]
[1]~[6]のいずれかに記載のワイン風味増強剤をワイン風味飲料に配合する工程を含む、ワイン風味飲料又はその濃縮物のワイン風味を増強する方法。
【発明の効果】
【0008】
黒にんじんは中央アジアが原産のセリ科ニンジン属ニンジンの一品種であり、その糖度の高さからジュースや菓子の原料とされている。淡い酸味とミネラル感、そして土っぽさを持つ野菜汁という風味を特徴とする黒にんじんは、ポリフェノールであるアントシアニン類を多く含む点でブラックカラントと共通しており、従来、野菜飲料における野菜風の呈味や香味の向上で用いられているものの、ノンアルコールワインを始めとするノンアルコール飲料での使用は知られていない。
【0009】
本発明によれば、アセスルファムカリウムのような人工の成分に依存することなく、天然の原料のみでワイン風味を増強することが可能になる。理論に拘束されることを意図するものではないが、黒にんじんに含まれる糖類、ポリフェノール、酸類、香気成分がワイン風味増強に寄与していると考えられる。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明を実施するための形態(以下、単に「実施形態」ともいう。)について詳細に説明するが、本発明は下記実施形態に限定されるものではない。本発明は、その要旨を逸脱しない範囲で様々な変形が可能である。
【0011】
(風味改善剤)
第一の実施形態において、有効成分として黒にんじん抽出物を含む、ワイン風味増強剤、が提供される。
【0012】
黒にんじんは、通常のニンジンにはあまり含まれていないアントシアニジンやポリフェノールを非常に多く含んでいる黒色又は紫色のニンジンであり、その抗酸化作用から健康食品としても利用されている。黒ニンジンと紫ニンジンは基本的に同じ植物であり、含まれているアントシアニン色素の量や表面の色の違いにより区別される。本明細書で使用する場合、「黒にんじん」は、一般的に紫にんじんと呼ばれるものを包含し得るが、黒高麗人参(高麗人参の一種)はその範囲に含まれない。本明細書で使用する場合、「黒にんじん抽出物」とは、通常の植物抽出物の製造に使用される一般的な抽出手法により抽出された液状のもの、それらの濃縮物又は希釈物、更には液状の抽出物をスプレードライ、フリーズドライ等の公知の方法で粉末化した乾燥物、あるいはそれらの混合物を包含する。原料とされる黒にんじんは、そのままの生の状態であってもよいが、必要に応じて、粉砕、切断、蒸熱、乾燥、焙煎等の前処理に供されていてもよい。また、得られた抽出物を更に濾過、濃縮等の後処理にかけてもよい。上記の処理は1回又は複数回行うことができる。
【0013】
黒にんじん抽出物を得る方法として、具体的には、黒にんじんの選別、洗浄、剥皮、除芯、破砕、加熱、冷却、搾汁、濾過、分離、殺菌、酵素処理、透明化、均質化、濃縮等の諸操作を適宜組合せた方法が挙げられる。更に、抽出物中のアントシアニン色素を安定化する目的でpHを調節する工程を実施してもよい。そのようなpHの調節は食品業界で採用されている一般的な成分、例えばクエン酸やレモン汁の添加により行うことができる。上記の工程は例示であり、中には透明化工程のように必ずしも必要とされないものもある。各工程の順序は問わない。限定することを意図するものではないが、例えば、洗浄してから剥皮し細断された黒にんじんを加熱し、その後搾汁を行うことで黒にんじん抽出物が得られる。単に黒にんじんをミキサー等で粉砕し、固形物を除去して得られた残りの液体を抽出物としてもよいし、あるいは、市販されている黒にんじん濃縮汁を黒にんじん抽出物として使用することもできる。市販の黒にんじん濃縮汁として、冷凍黒にんじん透明濃縮汁(Goknur製)、紫人参混濁濃縮汁(湘南香料製)、紫にんじん濃縮汁(長野サンヨーフーズ製)、冷凍黒にんじん透明濃縮果汁 65Brix(フィールドエスト製)、Black carrot concentrate(Archer Daniels Midland製)等が挙げられる。
【0014】
あるいは、黒にんじんの粉砕物や圧搾物等を任意の溶媒による抽出工程にかけて、得られたエキスを黒にんじん抽出物とすることもできる。そのような抽出に用いる溶媒としては、飲食品の製造において一般的に使用される溶媒、例えば、水、低級アルコール類(メタノール、エタノール、1-プロパノール、2-プロパノール、1-ブタノール、2-ブタノール等)、液状多価アルコール(1,3-ブチレングリコール、プロピレングリコール、グリセリン等)、ケトン類(アセトン、メチルエチルケトン等)、アセトニトリル、エステル類(酢酸エチル、酢酸ブチル等)、炭化水素類(ヘキサン、ヘプタン等)、エーテル類(エチルエーテル、プロピルエーテル、ポリオキシエチレンセチルエーテル等)が挙げられるが、好ましくは、水、低級アルコール等の極性溶媒であり、より好ましくは水である。また、これらの有機溶媒で抽出する際には抽出効率を上げるために、例えば界面活性剤、酵素(ペクチナーゼ、セルラーゼ、プロテアーゼ等)等の添加物を本発明の効果を損なわない範囲で抽出溶媒に加えることもできる。
【0015】
黒にんじん抽出物は、ワイン風味増強作用を奏する限り、必要に応じて2倍、3倍、4倍、5倍、6倍、7倍、8倍、9倍、10倍又はそれ以上に濃縮され得る。その濃縮液をそのまま、あるいは一旦濃縮された液体を蒸留水等で適当な濃度に希釈して風味増強剤の有効成分として用いることもできる。
【0016】
上記の処理を経て得られる黒にんじん抽出物は、水分、タンパク質、脂質、炭水化物、灰分、ナトリウム等の成分を含む。限定することを意図するものではないが、黒にんじん抽出物は、その100g当たり、約50gの水分、約3gのタンパク質、約1gの脂質、約40gの炭水化物、約3gの灰分、約100mgのナトリウムを含み得る。
【0017】
本明細書で使用する場合、「ワイン風味」とは、一般的なワイン、特に赤ワインが本来有する風味であって、ワインを成分として用いずに製造されたワイン風の飲料や、ワインを希釈してアルコール度を低下させた低アルコール又はノンアルコール飲料において通常欠落しているワインらしさ、例えばワイン風アルコール感を意味する。本明細書で使用する場合、「ワイン風アルコール感」とは、ワインを飲んだ際に口腔内にもたらされる、芳醇感、ボディ感、エタノールを想起させる感覚を感じ、アルコールを含むワインを飲んだ時のように感じる状態をいう。芳醇感及びボディ感は粘性及び甘味によって影響を受ける場合がある。また、「ワイン風アルコール感」の増強とは、ノンアルコール赤ワイン風飲料に本発明品を添加した際に「ワイン風アルコール感」を感じることをいう。
【0018】
ワイン風味増強が期待されるワイン風味飲料の製造に使用されるブドウの品種や産地、発酵に用いる酵母の種類、製造条件等は制限されず、ワインは、赤ワイン、白ワイン、ロゼ等を含み得る。ワイン風味増強剤が添加され得る赤ワインの品種としては、カベルネ・ソーヴィニヨン、メルロー、ピノ・ノワール、ガメイ、シラー、カベルネ・フラン、グルナッシュ、サンジョベーゼ、ネッビオーロ、マルベック、ピノタージュ、ジンファンデル、マスカットベリーA、ランブルスコ等が挙げられるが、これらに限定されない。
【0019】
有効成分の添加によりワイン風アルコール感が増強している場合にはワイン風味が増強されたと判断され、それらの感覚がいずれも増強されなかったり、あるいはぶどうジュースのような味わいになった場合にはワイン風味が低下したと判断される。ワイン風味増強効果の有無やその程度は、ワイン風味の官能評価について十分に訓練されたパネル等により決定することができる。
【0020】
ワイン風味増強剤は、所望とする効果が損なわれない限り、黒にんじん抽出物以外にも別の有効成分、例えば単糖若しくは二糖、又は糖アルコール、あるいはそれらの混合物のような糖類、グリセリン、ワイン風味増強効果が知られているその他の成分等を更に含んでもよい。単糖類の例として、ブドウ糖、果糖、ガラクトース等が挙げられる。二糖類の例として、砂糖(ショ糖)、ラクトース、トレハロース、マルトース等が挙げられる。単糖類や二糖類は、それらの混合物、例えば水あめであってもよいし、更に異性化糖などの別の糖を含むもの、例えばぶどう糖果糖液糖であってもよい。糖類は、還元水あめであることが好ましい。
【0021】
還元水あめは、水あめを水素添加することで製造される糖アルコールの一種である。還元水あめは、糖化の程度により高糖化還元水あめ(糖の総重量を100%とした場合において単糖アルコールが30~50質量%、二糖アルコールが20~50質量%、三糖以上の糖アルコールが25質量%以下)、中糖化還元水あめ(糖の総重量を100%とした場合において単糖アルコールが30質量%未満かつ五糖以上の糖アルコールが50質量%未満)及び低糖化還元水あめ(糖の総重量を100%とした場合において五糖以上の糖アルコールが50質量%以上)に分けられる。
【0022】
水あめは、澱粉を酸や糖化酵素で糖化して作られた粘液状の甘味料であり、製造方法により酸糖化水あめや酵素糖化水あめに分類される。澱粉を加水分解して得られる生成物は更に、その加水分解の程度を表す指標であるDE値(デキストロース当量)で分類することができ、DE値が20以上のものが水あめとされる。DEは、試料中の還元糖をブドウ糖として測定したときの、当該還元糖の全固形分に対する割合(百分率)である。DEの最大値は100で、固形分の全てがブドウ糖であることを意味し、DEが小さくなるほど少糖類や多糖類が多いことを意味する。DE値の低い水あめを使用することで、果糖ブドウ糖液糖などでは得られない低い甘味を持ちながら、希釈飲料でワインらしい風味を再現することが可能となる。また、水あめは特徴的な粘性を有することから、希釈時にワインらしいテクスチャーを提供することができる。ワイン風味増強に使用する場合の水あめのDE値は35超、好ましくは41以上60未満、例えば42.0~59.0の範囲内であることが好ましい。
【0023】
グリセリンは、飲酒時の刺激や苦味をワイン風味飲料に付与することができる。グリセリンは、飲食品、医薬部外品、医薬品などに通常使用されるものであれば、特に限定されない。
【0024】
(ワイン風味飲料又はその濃縮物)
第二の実施形態において、有効成分として黒にんじん抽出物を含む、ワイン風味増強剤を含む、ワイン風味飲料又はその濃縮物、が提供される。
【0025】
本明細書で使用する場合、「ワイン風味飲料」とは、ワインを成分として用いずに製造されたワイン風の飲料や、ワインを希釈してアルコール度を低下させた低アルコール又はノンアルコール飲料を意味する。ワイン風味飲料はスパークリングワインのような発泡発酵ワイン飲料として提供されることも想定される。ワイン風味飲料に含まれるアルコール度数は問わない。しかしながら、ワイン風味飲料は、風味増強が期待されている、アルコール度数が3%未満、又は1%未満のような低アルコールのワイン風味飲料、あるいは、アルコール度数が0.01%未満のノンアルコールワイン風味飲料であることが好ましい。本明細書で使用する場合、「アルコール」とは、エタノールを意味し、また、「アルコール度数」とは、エタノールの容量%を意味する。アルコール度数は公知の手法を用いて測定することができる。
【0026】
ワイン風味飲料に添加される黒にんじん抽出物の量は、所望とするワイン風味に応じて適宜調節され得る。また、ワイン風味増強剤又はワイン風味飲料はそれぞれ濃縮された状態で提供されてもよい。限定することを意図するものではないが、ワイン風味飲料は、黒にんじん抽出物を2質量%超、3質量%以上、4質量%以上、5質量%以上、6質量%以上、7質量%以上、8質量%以上、9質量%以上又は10質量%以上を含んでもよい。7質量%~9質量%の範囲内、特に8質量%前後が好ましい。
【0027】
ワイン風味飲料に黒にんじん抽出物を添加する形態及び方法は特に限定されず、その添加はワイン風味飲料の製造工程の任意のタイミングで実施され得る。
【0028】
ワイン風味飲料には、黒にんじん抽出物以外にも、上記糖類、グリセリン、酸味料(醗酵乳酸、コハク酸、酢酸、クエン酸)、ぶどう濃縮果汁、カラメル色素、酵素処理ルチン等が添加され得る。
【0029】
糖類が水あめの場合、ワイン風味飲料は、水あめを35質量%以上70質量%未満、好ましくは40質量%以上55質量%未満、より好ましくは45質量%以上53%未満を含んでもよい。水あめの配合量を調節することでワイン風アルコール感、特にワインらしい味わい、ボディ感が最適なものとなる。
【0030】
糖類としてぶどう糖果糖液糖を含む場合、ワイン風味飲料は、ぶどう糖果糖液糖を0.1質量%以上、0.5質量%以上、1質量%以上、2質量%以上、3質量%以上、4質量%以上、5質量%以上、6質量%以上、7質量%以上、8質量%以上、9質量%以上又は10質量%以上、好ましくは1質量%~15%を含んでもよい。
【0031】
糖類の糖度を評価する指標としてBrixがあるが、ワイン風味飲料に添加される糖類のBrixは10~80%、好ましくは20~70%である。Brixは屈折計を用いて測定できる。そのような屈折計として、例えば、デジタル屈折計「ATAGO RX-5000α」(株式会社アタゴ製)がある。
【0032】
ワイン風味飲料は、グリセリンを1質量%以上、2質量%以上、3質量%以上、4質量%以上、5質量%以上、6質量%以上、7質量%以上、8質量%以上、9質量%以上、10質量%以上又は15質量%以上を含んでもよい。
【0033】
ワイン様のフルーティーさを付与し、また、赤ワインのような色を再現する等の目的で、ワイン風味飲料にはブドウ果汁を添加してもよい。ぶどう果汁の種類は赤ブドウ果汁や黒ブドウ果汁が好ましい。ぶどう果汁としてぶどう濃縮汁を使用する場合、ワイン風味飲料は、ぶどう濃縮汁を0.1質量%以上、0.2質量%以上、0.3質量%以上、0.4質量%以上、0.5質量%以上、0.6質量%以上、0.7質量%以上、0.8質量%以上、0.9質量%以上又は1.0質量%以上含んでもよい。
【0034】
ワイン風味飲料にはぶどう果汁以外の果汁をさらに配合することもできる。そのような果汁として、レモン果汁、桃果汁、ライム果汁、洋梨果汁、ブドウ果汁、マンゴー果汁、梅果汁、ラズベリー果汁、ブラックカラント果汁、グレープフルーツ果汁、アプリコット果汁、ドラゴンフルーツ果汁、スイカ果汁、メロン果汁、クランベリー果汁、ブルーベリー果汁、パッションフルーツ果汁等が挙げられる。上記成分以外にも、ワイン風味飲料に一般的に配合される甘味料、醗酵乳酸、コハク酸、酢酸、クエン酸以外の酸味料、香料、ビタミン、カラメル色素以外の色素類、酸化防止剤、乳化剤、保存料、調味料、黒にんじんやぶどう以外の植物等のエキス類、pH調整剤、品質安定剤等が目的に応じて適宜添加される。例えば、ワイン風味飲料に対し、黒にんじん抽出物に加え更にブラックカラントを添加することで、ボディ感、芳醇感、複雑さが増し、ワイン感が増強され得る。上記成分の配合量や配合比は当業者が適宜調節することができる。
【0035】
(製造方法)
第三の実施形態において、有効成分として黒にんじん抽出物を含むワイン風味増強剤をワイン風味飲料に配合する工程を含む、ワイン風味が増強されたワイン風味飲料又はその濃縮物を製造する、が提供される。
【0036】
ワイン風味飲料に黒にんじん抽出物を添加する形態及び方法は特に限定されず、その添加はワイン風味飲料の製造工程の任意のタイミングで実施され得る。一態様において、原料のうち粉末状のものを水に溶解し、これと液状の原料(色素と香料を除く)と混合し、最後に色素と香料を添加することでワイン風味が増強されたワイン風味飲料又はその濃縮物が得られる。粉末状の原料の例として、クエン酸、コハク酸、酵素処理ルチンが挙げられる。得られたワイン風味飲料又はその濃縮物は、飲料やその他の形態として提供するために、更に希釈、殺菌、充填、冷却等の工程にかけられてもよい。
【0037】
ワイン風味飲料には、黒にんじん抽出物以外にも、上記糖類、グリセリン、酸味料(醗酵乳酸、コハク酸、酢酸、クエン酸)、ぶどう濃縮果汁、カラメル色素、酵素処理ルチン等が添加され得る。限定することを意図するものではないが、以下にワイン風味飲料の製造工程の一例を記載する。
1)黒にんじん抽出物、ぶどう濃縮果汁、糖類、グリセリン等の成分を混合する。
2)クエン酸、コハク酸、酵素処理ルチンを適量の水で完全に溶解させた後、上記の混合液に混ぜ合わせる。
3)酢酸、カラメル色素、香料を上記混合液に加え、規定量まで加水し、所定の期間撹拌する。
【0038】
製造された飲料は、必要に応じて、殺菌、容器詰め等の工程を経て容器詰め飲料として提供され得る。例えば、未殺菌のワイン風味飲料を容器に充填した後、レトルト殺菌等の加熱殺菌を行ってもよく、飲料を殺菌した後、容器に充填してもよい。得られたワイン風味飲料を濃縮し、更に濃縮したものを希釈することもできる。
【0039】
(風味増強方法)
第四の実施形態において、有効成分として黒にんじん抽出物をワイン風味飲料に配合する工程を含む、ワイン風味飲料又はその濃縮物のワイン風味を増強する方法、が提供される。
【0040】
配合工程で使用される黒にんじん抽出物やワイン風味飲料は上述のとおりである。
【実施例0041】
以下、本発明を実施例および比較例により説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。なお、表中「%」は、「質量%」である。
【0042】
以下の実施例で製造したワイン風味飲料の原料を以下の表に示す。
【表1】
黒にんじん濃縮汁はGoknur製、水あめは昭和産業製、グリセリンはミヨシ油脂製のものが使用された。
【0043】
上記原料を以下の工程にて製造した。
1. 粉末原料を水に溶解する。
2. 色素と香料以外の液体原料を混合する。
3. 液体原料に色素と香料を添加する。
4. 水で5倍希釈する。
5. 90℃3秒殺菌する。
6. 充てん、冷却する。
【0044】
調製したワイン風味飲料を、よく訓練を受けた官能評価パネラー6名により以下の基準で評価した。
点数の評価:
5:強く感じる
4:やや強く感じる
3:どちらともいえない
2:やや弱く感じる
1:弱く感じる
各数値は平均点の小数点第一位を四捨五入した値である。
【0045】
上記の工程に従い以下の組成を有するワイン風味飲料(実施例1)と、黒にんじん濃縮汁をぶどう濃縮果汁(雄山製)、ブラックカラント透明濃縮汁(DKSHジャパン製)にそれぞれ置き換えたワイン風味飲料(比較例1、2)とを調製し、上記の基準により官能試験を行った。
【表2】
【0046】
黒にんじん透明濃縮汁が配合された実施例1のワイン風味飲料からはワイン風アルコール感が強く感じられたが、黒にんじん透明濃縮汁の代わりにぶどう濃縮果汁又はブラックカラント透明濃縮汁が配合された比較例のワイン風味飲料ではワインらしさが損なわれた。
【0047】
続いて、ワイン風味を増強する黒にんじん透明濃縮汁の配合量について検討した。黒にんじん透明濃縮汁の配合量を除き実施例1と同様のワイン風味飲料を以下のとおり調製し、官能試験を行った。
【表3】
【0048】
上記の結果から、黒にんじん透明濃縮汁の配合量は2質量%超、15質量%未満であることが好ましいと考えられる。
【0049】
ワイン風味飲料を構成する水あめの最適なDE値について検討した。水あめの有無やDE値を除き実施例1と同様のワイン風味飲料を以下のとおり調製し、官能試験を行った。
【表4】
【0050】
DE値が高い水あめを配合したワイン風味飲料がワインらしさを演出できた。水あめを配合しないワイン風味飲料は甘味が強くなる傾向があり、ジュース感に近づき、ワイン風味飲料としては不適であった。
【0051】
ワイン風味飲料を構成する水あめの最適な配合量について検討した。水あめの配合量を除き実施例1と同様のワイン風味飲料を以下のとおり調製し、官能試験を行った。
【表5】
【0052】
実施例1のワイン風味飲料が最もワインらしい味わいでボディ感が最適であった。
【0053】
実施例1で使用した黒にんじん透明濃縮汁とは異なる製品や紫にんじんの抽出物を配合したワイン風味飲料を以下のとおり調製し、官能試験を行った。
【表6】
【0054】
黒にんじんのみならず、紫にんじんの抽出物もワイン風アルコール感を増強した。