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特開2024-46047内装表皮材、その内装表皮材を備えた車両用天井内装材及びその製造方法
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  • 特開-内装表皮材、その内装表皮材を備えた車両用天井内装材及びその製造方法 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024046047
(43)【公開日】2024-04-03
(54)【発明の名称】内装表皮材、その内装表皮材を備えた車両用天井内装材及びその製造方法
(51)【国際特許分類】
   D06N 7/00 20060101AFI20240327BHJP
   B60R 13/02 20060101ALI20240327BHJP
【FI】
D06N7/00
B60R13/02 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022151200
(22)【出願日】2022-09-22
(71)【出願人】
【識別番号】509069892
【氏名又は名称】株式会社HOWA
(74)【代理人】
【識別番号】110000394
【氏名又は名称】弁理士法人岡田国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】黒木 信
(72)【発明者】
【氏名】南部 正義
(72)【発明者】
【氏名】近藤 佑紀
【テーマコード(参考)】
3D023
4F055
【Fターム(参考)】
3D023BA01
3D023BB02
3D023BC01
3D023BD01
3D023BE05
3D023BE07
3D023BE31
4F055AA24
4F055BA01
4F055BA02
4F055BA10
4F055CA13
4F055HA18
(57)【要約】
【課題】抗ウイルス・抗菌機能を備えた内装表皮材と、その内装表皮材を備えた車両用天井内装材とその製造方法を提供する。
【解決手段】車両用天井内装材2に用いられる内装表皮材5である。内装表皮材5は、面内方向及び面外方向において柔軟性を有する面状の表皮層7を備えている。表皮層7の表面7aには、抗ウイルス・抗菌機能を有する漆喰8が塗布されている。車室の天井部分は、座席のシート、ドア、床等の他の内装部分と比べて、乗員が触れる機会が少なく、漆喰8を塗布する部位として適している。また、車室の天井部分は、乗員の頭上において広い面積を占めているため、内装表皮材5に塗布された漆喰8によって、乗員の顔の高さ位置から比較的近い位置でウイルスや菌を吸着し、車室内の広い範囲に亘って空気を浄化することができる。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両用天井内装材に用いられる内装表皮材であって、
面内方向及び面外方向において柔軟性を有する面状の表皮層を備え、
前記表皮層の表面に抗ウイルス・抗菌機能を有する漆喰が塗布されている、内装表皮材。
【請求項2】
請求項1に記載の内装表皮材であって、
前記表皮層は、合成繊維を含んだ繊維集合体である、内装表皮材。
【請求項3】
請求項1または請求項2に記載の内装表皮材であって、前記表皮層は、前記表面の全面に亘り前記漆喰が塗布されている、内装表皮材。
【請求項4】
車両用天井内装材であって、
天井基材と、
請求項1または請求項2に記載の内装表皮材と、を備えた、車両用天井内装材。
【請求項5】
車両用天井内装材の製造方法であって、
面内方向及び面外方向に柔軟性を有する面状の表皮層の表面に、抗ウイルス・抗菌機能を有する漆喰を塗布する塗布工程と、
前記表皮層の前記漆喰が塗布された面の反対側に、天井基材を積層させた状態で、前記表皮層を備えた内装表皮材と前記天井基材とを一体にして成形型で成形する成形工程と、を含み、
前記塗布工程は、前記成形工程より前に行われる、車両用天井内装材の製造方法。
【請求項6】
請求項5に記載の車両用天井内装材の製造方法であって、前記表皮層は、合成繊維を含んだ繊維集合体である、車両用天井内装材の製造方法。
【請求項7】
請求項5または請求項6に記載の車両用天井内装材の製造方法であって
前記塗布工程は、前記表皮層の前記表面において、全面に亘って前記漆喰が塗布される、車両用天井内装材の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、抗ウイルス・抗菌・消臭機能を有する内装表皮材と、その内装表皮材を備えた車両用天井内装材と、その製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、車両用内装材等に用いられる表皮材として、不織布からなる内装表皮材、フォームシートにニットを積層させた表皮材等が知られている。内装表皮材は、車両室内の意匠性や種々の機能性の向上を目的として内装材の基材に接合される。例えば特許文献1には、優れた意匠性と十分なクッション性を備えた、三次元立体編物からなる内装表皮材が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2009-262407号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、近年は車両室内の衛生に対する意識が高まっており、車両室内の空気の循環時に浮遊しているウイルスや菌が天井材等で跳ね返って、ウイルス感染のリスクが高まることが懸念されている。しかしながら、車両室内においては限られた空間内で乗員が一定以上の距離を保つのが困難であったり、密閉された状態になったりすることが多い。また、窓を開けて換気するのみでは、車両室内に浮遊するウイルスや菌を十分に減らすことができない場合もある。そのため、意匠性等にとどまらず、抗ウイルス・抗菌機能を備えた車両用内装材が求められている。
【0005】
本発明は、このような点に鑑みて創案されたものであり、本発明が解決しようとする課題は、抗ウイルス・抗菌機能を備えた内装表皮材と、その内装表皮材を備えた車両用天井内装材とその製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決する車両用天井内装材に用いられる内装表皮材の一つの特徴は、面内方向及び面外方向において柔軟性を有する面状の表皮層を備え、前記表皮層の表面に抗ウイルス・抗菌機能を有する漆喰が塗布されている。
【0007】
上記構成の一つの特徴及び利点は、車両用天井内装材に用いられる内装表皮材の表皮層に漆喰が塗布されていることにより、車室の天井の意匠面に抗ウイルス・抗菌機能、消臭機能、調湿機能等を備えることができる。車室の天井部分は、座席のシート、ドア、床等の他の内装部分と比べて、乗員が触れる機会が少なく、漆喰を塗布する部位として適している。また、車室の天井部分は、乗員の頭上において広い面積を占めているため、内装表皮材に塗布された漆喰によって、乗員の顔の高さ位置から比較的近い位置でウイルスや菌を吸着し、車室内の広い範囲に亘って空気を浄化することができる。
【0008】
上記内装表皮材について、前記表皮層は、合成繊維を含んだ繊維集合体であっても良い。
【0009】
上記構成の一つの特徴及び利点は、表皮層を繊維集合体とすることにより、表皮層の表面に塗布された漆喰の一部が、表皮層に染み込み易くなり、表皮層と漆喰の接着強度が向上し得る。よって、表皮層から漆喰が剥がれ落ちることを抑制できる。
【0010】
上記内装表皮材について、前記表皮層は、前記表面の全面に亘り前記漆喰が塗布されていても良い。
【0011】
上記構成の一つの特徴及び利点は、表皮層の表面全体に亘って漆喰が塗布されていることにより、内装表皮材はより広い範囲において抗ウイルス・抗菌機能を発揮し得る。
【0012】
車両用天井内装材の一つの特徴は、天井基材と、上記内装表皮材を備えていても良い。
【0013】
上記構成の一つの特徴及び利点は、抗ウイルス・抗菌機能を備えた内装表皮材を車両の天井内装材に用いており、車室内において天井内装材の漆喰塗布面に付着したウイルスや菌の生育、増殖等を抑制し得る。よって、車室内をより良い衛生状態に保つことができる。
【0014】
車両用天井内装材の製造方法の一つの特徴は、面内方向及び面外方向に柔軟性を有する面状の表皮層の表面に、抗ウイルス・抗菌機能を有する漆喰を塗布する塗布工程と、前記表皮層の前記漆喰が塗布された面の反対側に、天井基材を積層させた状態で、前記表皮層を備えた内装表皮材と前記天井基材とを一体にして成形型で成形する成形工程とを含み、前記塗布工程は、前記成形工程より前に行われる。
【0015】
上記製造方法の一つの特徴及び利点は、塗布工程において表皮層の表面に漆喰を塗布した後、成形工程において内装表皮材と天井基材を一体にして成形型で成形する。塗布工程では、成形前の表皮層の表面が凹凸のない平面状であるため、成形後に塗布する場合に比べて漆喰を均一に塗布することが容易になる。また、表皮層は面内方向及び面外方向において柔軟性を備えており、成形工程において、内装表皮材の変形によるしわの発生を抑制できる。また漆喰は、空気中の二酸化炭素を吸って時間をかけてゆっくり乾燥・硬化するため、成形時の追従性を備えている。よって漆喰塗布面のひび割れを抑制できる。さらに漆喰は、抗ウイルス・抗菌機能、消臭機能、調湿機能等を有しており、これらの機能を備えた車両用天井内装材を成形できる。
【0016】
上記車両用天井内装材の製造方法について、前記表皮層は、合成繊維を含んだ繊維集合体であっても良い。
【0017】
上記製造方法の一つの特徴及び利点は、繊維集合体である表皮層の表面に漆喰が塗布される。塗布された漆喰の一部が表皮層の繊維に染み込むことにより、表皮層と漆喰の接着強度が向上し得る。よって、表皮層から漆喰が剥がれ落ちることを抑制できる。
【0018】
上記車両用天井内装材の製造方法について、前記塗布工程は、前記表皮層の前記表面において、全面に亘って前記漆喰が塗布されても良い。
【0019】
上記製造方法の一つの特徴及び利点は、漆喰を表皮層の表面全体に亘って塗布することにより、内装表皮材のより広い範囲において抗ウイルス・抗菌機能が発揮され得る。
【発明の効果】
【0020】
本発明は、上記構成または製造方法をとることにより、抗ウイルス・抗菌機能を備えた内装表皮材、内装表皮材を備えた車両用天井内装材とその製造方法を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
図1】車両用天井内装材の構成を模式的に示した断面図である。
図2】内装表皮材と天井基材を成形型にセットする工程を模式的に示した図である。
図3】内装表皮材と天井基材を一体にして成形する工程を模式的に示した図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下に、本発明の実施形態について、図1から図3を用いて説明する。本実施形態に係る天井内装材2(車両用天井内装材)は、車両の屋根として構成された鋼板性のルーフパネル(ボディパネル)の車室内側に装着される。天井内装材2は、天井基材3と内装表皮材5とが積層されたものである。天井内装材2は、例えば、熱間プレス工法、冷間プレス工法などによって構成される。
【0023】
<内装表皮材5の構成>
内装表皮材5は、天井内装材2の意匠面を担う部位である。図1に示すように、内装表皮材5は、面状の表皮層7の表面7aに、抗ウイルス・抗菌機能を有する漆喰8が塗布された構成である。表皮層7は、面内方向及び面外方向において柔軟性を有する。ここで、面内方向は平面状の表皮層7の表面7aに沿った方向であり、面外方向は表皮層7の厚さ方向である。表皮層7は、ファブリック、クロス、ニット等の布帛や、織布、不織布、起毛布等の布部材、合成皮革、人工皮革、本革等を適用できる。内装表皮材5は、表皮層7とウレタンフォームシートが積層されていても良い。ウレタンフォームシートを積層する場合は、天井内装材2に柔らかい触感を得るためにウレタン樹脂発泡体からなる軟質層が適用される。
【0024】
表皮層7は、合成繊維を含んだ繊維集合体としても良い。表皮層7を繊維集合体とすれば、塗布された漆喰8の一部が表皮層7の繊維に染み込むことにより、表皮層7と漆喰8の接着強度が向上し得る。繊維集合体に含まれる繊維は、例えば、ポリオレフィン系繊維、ポリエステル系繊維、塩化ビニル系繊維、塩化ビニリデン系繊維、ポリフラール系繊維、ポリアミド系繊維、アクリル繊維などが挙げられる。また、天然繊維が含まれていても良い。これらの繊維は、単独で使用されても良く、2種以上を併用しても良い。ポリエステル系繊維は、高温時における熱劣化や色変化が少なく、耐熱性、対候性、防汚性に優れており、車両用内装材として好適である。
【0025】
表皮層7は、面内方向において縦方向及び横方向に伸長可能な不織布を用いても良い。例えばニードルパンチ不織布は、縦方向と横方向の柔軟性に大きな差がなく、成形性に優れており、成形型で成形される車両用内装材に好適である。また、表皮層7に不織布を適用すれば、表面7aにおける繊維によって、塗布された漆喰8の塗布面8aに凹凸が形成され、表面積が増加し得る。すなわち、塗布面8aのウイルスや菌を吸着する面積をより大きくすることができる。なお、不織布の繊維ウェブは、乾式法、湿式法、またはスパンボンド法など公知の製造方法で形成できる。
【0026】
表皮層7の表面7a(意匠面)には、漆喰8が塗布されている。漆喰8は、主成分である消石灰(水酸化カルシウム)に、結合剤を混入して水で練ったものであり、調湿性、消臭機能、抗ウイルス・抗菌機能などを有する。漆喰8の塗布面8aは、多孔質で表面積が大きく、ウイルスや菌を含んだ飛沫が付着しやすい構成となっており、飛沫の水分と消石灰が反応して強アルカリ性になる特徴を有している。塗布面8aに付着したウイルスや菌は、強アルカリ性により感染性が失われ、漆喰8の抗ウイルス・抗菌機能が発揮される。
【0027】
漆喰8は、消石灰(水酸化カルシウム)を含有した漆喰塗料を用いても良い。消石灰の配合量は、漆喰8の消臭機能、抗ウイルス・抗菌機能等を発揮できる範囲内で適宜設定される。具体的には、漆喰8を構成する固形分中に30~75重量%の範囲内で設定される。さらに、40~65重量%の範囲であれば、より好適である。
【0028】
結合剤としては、例えば海藻糊などの天然糊料、ポリビニルアルコールなどの合成糊料、水溶性樹脂などの合成樹脂を適宜選択できる。なお、漆喰塗膜の付着性とひび割れ抑制の観点から、アクリル樹脂、ポリオレフィン樹脂、ポリウレタン樹脂等が好ましく、これの樹脂から1種または2種以上を使用することができる。結合剤の配合量は、漆喰8を構成する固形分中に2~50重量%の範囲内で設定される。さらに、5~20重量%の範囲であれば、より好適である。
【0029】
漆喰8は、着色顔料や体質顔料などの顔料を使用しても良い。着色材料としては、白色顔料、白以外の有色顔料を適宜選択できる。例えば、酸化チタン、タルク、炭酸カルシウム、シリカなど無機の白色顔料が挙げられる。白色顔料を使用する場合の配合量は、漆喰8を構成する固形分中に0.5~25重量%の範囲内で設定される。有色顔料としては公知のものが使用でき、例えば黒色顔料、赤色顔料、黄色顔料、緑色顔料、青色顔料などから1種または2種以上を選択して適宜配合される。
【0030】
体質顔料としては、例えば炭酸カルシウム、石膏、クレー、シリカ、珪藻土、タルク、硫酸バリウム、水酸化アルミニウムなどが挙げられる。体質顔料を使用する場合の配合量は、漆喰8を構成する固形分中に1~50重量%の範囲内で設定される。
【0031】
漆喰8は、塗布された後に空気中の二酸化炭素を吸って時間をかけてゆっくり乾燥・硬化するため、成形時の追従性を備えている。また、乾燥時の割れ防止のために、漆喰8にスサ等を含んでいても良い。例えば麻スサを含むことにより、漆喰8の弾力性向上を図ることができ、天井内装材2の成形時における追従性を維持し得る。
【0032】
漆喰8は、表皮層7の表面7aの全体に亘って塗布されても良く、部分的に塗布されても良い。また、漆喰8を塗布するパターン(柄など)を任意に設定できる。漆喰8の塗布量、塗布面8aの厚さは、漆喰8の消臭機能、抗ウイルス・抗菌機能等を発揮できる範囲内で適宜設定される。例えば、漆喰8の塗布量は、固形分換算で、100~500g/m2の範囲を挙げることができる。
【0033】
<車両用天井内装材の構成>
天井内装材2は、天井基材3と内装表皮材5とが積層されて熱プレスによって加熱及び加圧成形されて一体化されている。天井基材3は、天井内装材2の形状保持、剛性確保、車室内の吸音、断熱等を担う部位である。天井基材3は、図1に示すように、芯材10の両面に熱硬化性接着剤を塗布した繊維補強材12が積層されている。また、繊維補強材12のうち内装表皮材5が積層される面と反対側は、非通気性フィルム14を介して、熱可塑性合成繊維不織布からなる裏材16が積層されている。
【0034】
芯材10は、形状保持と剛性確保のために設けられており、車室内の吸音、断熱機能を有する態様も採り得る。芯材10は、繊維系、段ボール系、ウレタン系、発泡オレフィン系等、種々適用できる。本実施形態においては、芯材10にウレタン樹脂発泡体からなる半硬質層のウレタンフォームが選択される。
【0035】
繊維補強材12は、天井内装材全体の形状保持と剛性確保のために設けられる。繊維補強材12は、芯材10の車室内側及びルーフパネル側の両面に積層されている。繊維補強材12は、無機繊維であるガラス繊維を適宜の長さ(例えば50mm~100mm)に切断したチョップドストランドを適宜バインダーで固めることによりシート状に形成されている。なお、ここで使用されるガラス繊維は、上記のようにチョップドストランドを固結したもののほか、ガラス繊維を切断することなくバインダーで固めたもの(コンテイニアスマット)あるいはガラス繊維不織布、ガラス繊維紙、ガラス繊維織布でも良い。また、実施形態における目付量は、要求される強度、その他の種々の条件に適合するように目付量を選択し得る。
【0036】
繊維補強材12は、チョップドストランド等の無機繊維や、有機繊維であるジュート(黄麻)、ケナフ(洋麻)、ラミー、ヘンプ(麻)、サイザル麻、竹等の天然繊維等を適宜選択して、アクリル等のバインダーまたはニードル加工によってシート状、マット状にしたものでも良い。本実施形態においては、ガラス繊維マットが選択される。
【0037】
接着剤は、イソシアネート樹脂からなる熱硬化性樹脂である。芯材10として半硬質層のウレタンフォームが適用されるため、このウレタンフォームとなじみやすいという観点からイソシアネート樹脂が好適である。なお、接着剤は、イソシアネート樹脂に限られず芯材10と繊維補強材12との関係において適宜選択される。熱硬化性樹脂は、スプレー、ロールコーター等によってシート状のガラス繊維マットの表面に塗布される。塗布量は、要求される強度その他の種々の条件に適合する量とされる。熱硬化性樹脂を含侵させた繊維補強材12を用いても良い。
【0038】
裏材16は、例えばポリエチレンテレフタレート樹脂繊維不織布が選択される。なお、裏材16は、ポリアミド系、ポリエステル系、ポリアクリルニトリル系等、種々の合成繊維不織布が適用できる。
【0039】
<車両用天井内装材の製造工程>
次に、本実施形態に係る天井内装材2の製造方法について説明する。天井内装材2の製造方法は、塗布工程と成形工程を有している。塗布工程は、成形工程より前に行われる。
【0040】
天井内装材2は、図2図3に示すように、天井基材3と内装表皮材5が積層されて成形型20で一体にして成形される。内装表皮材5における表皮層7の表面7aには、塗布工程において、調湿性、消臭機能、抗ウイルス・抗菌機能などを有する漆喰8が塗布される。表皮層7は、例えばポリエステル系繊維のニードルパンチ不織布が選択される。漆喰8は、主成分である消石灰(水酸化カルシウム)に、結合剤を混入して水で練ることにより製造される。漆喰8は、水酸化カルシウムを含有した漆喰塗料を用いても良い。
【0041】
塗布工程においては、表皮層7の表面7aの全面に亘り漆喰8が塗布されても良い。また、塗布量、塗布面8aの厚さは、漆喰8の消臭機能、抗ウイルス・抗菌機能の低下を抑えることができる範囲内で適宜設定され、部分的に異なる態様としても良い。漆喰8の塗布量は、固形分換算で、100~500g/m2の範囲を挙げることができる。漆喰8の塗布方法は、例えばコテ塗り、ローラー、刷毛、スプレー、フローコーター、ロールコーター等、適宜選択される。さらに、漆喰8の塗布のパターンは任意に設定できる。
【0042】
次に、漆喰8が表皮層7に塗布された内装表皮材5を、天井基材3に積層させる。天井基材3は、図1に示すように、例えば半硬質ウレタンフォームからなる芯材10の両面に熱硬化性接着剤を塗布して、ガラス繊維マットからなる繊維補強材12を積層するとともに、その裏に非通気性フィルム14と、PET樹脂繊維不織布からなる裏材16を積層してなるものが選択される。なお、漆喰8は空気中の二酸化炭素を吸って、時間をかけてゆっくり乾燥・硬化する特徴を有している。そのため、表皮層7に塗布された漆喰8が成形に適した状態で、内装表皮材5と天井基材3を積層させることができる。
【0043】
図2図3に示すように、成形工程において、内装表皮材5と天井基材3を積層させた状態で、内装表皮材5と天井基材3とを一体にして成形型20で成形する。具体的には、表皮層7の漆喰8が塗布された表面7a(意匠面)と反対側の面に、天井基材3の車室内側の繊維補強材12が接するようにして、内装表皮材5と天井基材3を積層させて成形型20の間にセットする。内装表皮材5と天井基材3は、熱プレスによって加熱・加圧される。これにより、天井内装材2が成形される。
【0044】
天井内装材2は、車両のルーフパネルに装着される。漆喰8の塗布面8aに、車室内を浮遊するウイルスや菌を含む飛沫が付着すると、水分の侵入によって消石灰の溶出が起きて飛沫が強アルカリ性になる。強アルカリ性によりウイルスや菌は感染性を失う。また、臭気物質の一部は、消石灰と反応して分解される。このようにして、内装表皮材5の表皮層7に塗布された漆喰8の消臭機能、抗ウイルス・抗菌機能等が発揮される。
【0045】
<実施形態の効果>
上記実施形態の内装表皮材5によれば、表皮層7に漆喰8が塗布されていることにより、車室の天井の意匠面に抗ウイルス・抗菌機能、消臭機能、調湿機能等を備えることができる。車室の天井部分は、座席のシート、ドア、床等の他の内装部分と比べて、乗員が触れる機会が少なく、漆喰8を塗布する部位として適している。また、車室の天井部分は、乗員の頭上において広い面積を占めているため、内装表皮材5に塗布された漆喰8によって、乗員の顔の高さから比較的近い位置でウイルスや菌を吸着し、車室内の広い範囲に亘って空気を浄化することができる。
【0046】
表皮層7は、面内方向及び面外方向に柔軟性を有しており、天井内装材2の成形時における内装表皮材5の破れ、しわの発生を抑制し得る。なお、建物の内装に用いられる抗ウイルス・抗菌機能を備えた紙製のシート等は、伸縮性や柔軟性がなく、内装表皮材5として天井基材3と接合した場合、天井内装材2の成形時にシートが破れたり、しわが発生したりする問題が生じる。この点、上記実施形態の表皮層7は、成形性を備えており、天井内装材2を好適に成形できる。さらに、表皮層7の表面7aに追従性を備えた漆喰8が塗布されることにより、内装表皮材5の成形性が維持される。
【0047】
内装表皮材5の表皮層7は、合成繊維を含んだ繊維集合体を適用できる。表皮層7を繊維集合体とすることにより、表皮層7の表面7aに塗布された漆喰8の一部が、表皮層7に染み込み易くなり、表皮層7と漆喰8の接着強度が向上し得る。よって、表皮層7から漆喰8が剥がれ落ちることを抑制できる。
【0048】
内装表皮材5は、表皮層7の表面7a全体に亘って漆喰8が塗布されていることによって、より広い範囲において抗ウイルス・抗菌機能を発揮し得る。
【0049】
天井内装材2は、抗ウイルス・抗菌機能を備えた内装表皮材5を用いており、車室内において天井内装材2の漆喰塗布面8aに付着したウイルスや菌の生育、増殖等を抑制し得る。よって、車室内をより良い衛生状態に保つことができる。
【0050】
上記実施形態の製造方法によれば、塗布工程において表皮層7の表面7aに漆喰8を塗布した後、成形工程において内装表皮材5と天井基材3を一体にして成形型20で成形する。塗布工程では、成形前の表皮層7の表面7aが凹凸のない平面状であるため、成形後に塗布する場合に比べて漆喰8を均一に塗布することが容易になる。また、表皮層7は面内方向及び面外方向において柔軟性を備えており、成形工程において、内装表皮材5の変形によるしわの発生を抑制できる。また漆喰8は、空気中の二酸化炭素を吸って時間をかけてゆっくり乾燥・硬化するため、成形時の追従性を備えている。よって漆喰塗布面8aのひび割れを抑制できる。さらに漆喰8は、抗ウイルス・抗菌機能、消臭機能、調湿機能等を有しており、これらの機能を備えた天井内装材2を成形できる。
【0051】
塗布工程において、繊維集合体である表皮層7の表面7aに漆喰8が塗布される。塗布された漆喰8の一部が表皮層7の繊維に染み込むことにより、表皮層7と漆喰8の接着強度が向上し得る。よって、表皮層7から漆喰8が剥がれ落ちることを抑制できる。また、漆喰8を表皮層7の表面7a全体に亘って塗布することにより、内装表皮材5のより広い範囲において抗ウイルス・抗菌機能が発揮され得る。
【0052】
天井内装材2を車両のルーフパネルに装着することにより、車室内の循環時に浮遊しているウイルスや菌が内装表皮材5の表皮層7に塗布された漆喰8に吸着される。よって、ウイルスや菌の天井からの跳ね返りを抑制できる。
【0053】
本発明に係る内装表皮材とその内装表皮材を備えた車両用天井内装材は、上記実施形態において説明した外観、構成に限られず、本発明の要旨を変更しない範囲で種々の変更、追加、削除、構成の組み合わせにより、その他各種の形態で実施できるものである。
【符号の説明】
【0054】
2 天井内装材(車両用天井内装材)
3 天井基材
5 内装表皮材
7 表皮層
7a 表皮層の表面
8 漆喰
8a 漆喰の塗布面
10 芯材
12 繊維補強材
14 非通気性フィルム
16 裏材
20 成形型
図1
図2
図3