(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024046049
(43)【公開日】2024-04-03
(54)【発明の名称】車両用サンシェードとその製造方法
(51)【国際特許分類】
B60J 3/00 20060101AFI20240327BHJP
B32B 7/023 20190101ALI20240327BHJP
B32B 7/027 20190101ALI20240327BHJP
【FI】
B60J3/00 J
B32B7/023
B32B7/027
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022151203
(22)【出願日】2022-09-22
(71)【出願人】
【識別番号】509069892
【氏名又は名称】株式会社HOWA
(74)【代理人】
【識別番号】110000394
【氏名又は名称】弁理士法人岡田国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】南部 正義
(72)【発明者】
【氏名】黒木 信
【テーマコード(参考)】
4F100
【Fターム(参考)】
4F100AA08C
4F100BA03
4F100BA07
4F100BA10A
4F100BA10C
4F100DG06C
4F100EH46C
4F100GB31
4F100JC00C
4F100JD06A
4F100JJ01B
4F100JN02A
(57)【要約】
【課題】抗ウイルス・抗菌機能を備えた車両用サンシェードとその製造方法を提供する。
【解決手段】車両用サンシェード2は、遮光機能を有する面状の表面層3と、表面層3の車室内側に積層され、熱の伝達を抑制する機能を有する面状の中間層5と、中間層5の車室内側に積層された面状の裏面層7とを備える。裏面層7は、車室内側の面に抗ウイルス・抗菌機能を有する漆喰8が塗布されている。抗ウイルス・抗菌機能を車両用サンシェード2に備えることにより、別途抗ウイルス・抗菌用の装備品を設置しなくても、一つの装備品で日除けと空気浄化を兼用できる。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両用サンシェードであって、
遮光機能を有する面状の表面層と、
前記表面層の車室内側に積層され、熱の伝達を抑制する機能を有する面状の中間層と、
前記中間層の車室内側に積層された面状の裏面層と、を備え、
前記裏面層は、車室内側の面に抗ウイルス・抗菌機能を有する漆喰が塗布されている、車両用サンシェード。
【請求項2】
請求項1に記載の車両用サンシェードであって、
前記裏面層は、合成繊維を含んだ繊維集合体である、車両用サンシェード。
【請求項3】
請求項1または請求項2に記載の車両用サンシェードであって、前記裏面層は、その車室内側の面の全面に亘り前記漆喰が塗布されている、車両用サンシェード。
【請求項4】
車両用サンシェードの製造方法であって、
面状の裏面層の一方の面に抗ウイルス・抗菌機能を有する漆喰を塗布する塗布工程と、
前記裏面層の前記漆喰が塗布された面と反対側に、熱の伝達を抑制する機能を有する面状の中間層を積層させ、前記中間層の前記裏面層と接する面と反対側に、遮光機能を有する面状の表面層を積層させて、前記表面層と前記中間層と前記裏面層を一体にする積層工程と、を含み、
前記塗布工程は、前記積層工程より前に行われる、車両用サンシェードの製造方法。
【請求項5】
請求項4に記載の車両用サンシェードの製造方法であって、
前記裏面層は、合成繊維を含んだ繊維集合体である、車両用サンシェードの製造方法。
【請求項6】
請求項4または請求項5に記載の車両用サンシェードの製造方法であって、
前記塗布工程は、前記裏面層の車室内側の面において全面に亘り前記漆喰が塗布されている、車両用サンシェードの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両用サンシェードとその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、車両室内へ進入する太陽光を遮るための、種々の車両用サンシェードが知られている。例えば特許文献1には、フロントガラスに取り付けられ、太陽光の熱による車両室内の温度上昇を抑えることができる、車両用サンシェードが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、近年は車両室内の衛生に対する意識が高まっており、車両室内の空気の循環時に浮遊しているウイルスや菌が跳ね返って、ウイルス感染のリスクが高まることが懸念されている。しかしながら、駐車中の車両から離れるときは、防犯上の観点から窓を閉める必要があり、換気をして車両室内に浮遊するウイルスや菌を十分に減らすことができない場合もある。そのため、抗ウイルス・抗菌機能を備え、簡易に取付けられる車両用装備品が求められている。
【0005】
本発明は、このような点に鑑みて創案されたものであり、本発明が解決しようとする課題は、抗ウイルス・抗菌機能を備えた車両用サンシェードとその製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決する車両用サンシェードの一つの特徴は、遮光機能を有する面状の表面層と、前記表面層の車室内側に積層され、熱の伝達を抑制する機能を有する面状の中間層と、前記中間層の車室内側に積層された面状の裏面層とを備え、前記裏面層は、車室内側の面に抗ウイルス・抗菌機能を有する漆喰が塗布されている。
【0007】
上記構成の一つの特徴及び利点は、裏面層に漆喰が塗布されていることにより、車両用サンシェードの車室内側の面に抗ウイルス・抗菌機能、消臭機能、調湿機能等を備えることができる。この車両用サンシェードを使用すれば、車室内に向かって進入する太陽光を反射、遮光すると共に、密閉状態で換気ができない車室内においても、ウイルスや菌の数を減らすことができる。また、車両用サンシェードは、フロントガラスや複数のサイドガラス等、車室内において広い面積を占める部分で使用されるため、塗布された漆喰によって、車室内の広い範囲に亘って空気を浄化することができる。
【0008】
上記車両用サンシェードについて、前記裏面層は、合成繊維を含んだ繊維集合体であっても良い。
【0009】
上記構成の一つの特徴及び利点は、裏面層を繊維集合体とすることにより、裏面層に塗布された漆喰の一部が、裏面層に染み込み易くなり、裏面層と漆喰の接着強度が向上し得る。よって、裏面層から漆喰が剥がれ落ちることを抑制できる。
【0010】
上記車両用サンシェードについて、前記裏面層は、その車室内側の面の全面に亘り前記漆喰が塗布されていても良い。
【0011】
上記構成の一つの特徴及び利点は、裏面層の車室内側の面全体に亘って漆喰が塗布されており、車両用サンシェードは、より広い範囲において抗ウイルス・抗菌機能を発揮し得る。
【0012】
車両用サンシェードの製造方法の一つの特徴は、面状の裏面層の一方の面に抗ウイルス・抗菌機能を有する漆喰を塗布する塗布工程と、前記裏面層の前記漆喰が塗布された面と反対側に、熱の伝達を抑制する機能を有する面状の中間層を積層させ、前記中間層の前記裏面層と接する面と反対側に、遮光機能を有する面状の表面層を積層させて、前記表面層と前記中間層と前記裏面層を一体にする積層工程とを含み、前記塗布工程は、前記積層工程より前に行われる。
【0013】
上記製造方法の一つの特徴及び利点は、裏面層に漆喰が塗布されることにより、車両用サンシェードの車室内側の面に抗ウイルス・抗菌機能、消臭機能、調湿機能等を備えることができる。塗布工程において裏面層に漆喰を塗布した後、積層工程において表面層、中間層、裏面層を積層させて一体にする。これにより、車両用サンシェードを成形した後に漆喰を塗布する場合に比べて、周縁の端部まできれいに漆喰を塗布できる。よって、見栄えが良い車両用サンシェードを製造できる。また、漆喰は空気中の二酸化炭素を吸って時間をかけてゆっくり乾燥・硬化する特徴を有しており、追従性を備えている。よって漆喰塗布面のひび割れを抑制できる。
【0014】
上記車両用サンシェードの製造方法について、前記裏面層は、合成繊維を含んだ繊維集合体であっても良い。
【0015】
上記製造方法の一つの特徴及び利点は、繊維集合体である裏面層に漆喰が塗布される。塗布された漆喰の一部が裏面層の繊維に染み込むことにより、裏面層と漆喰の接着強度が向上し得る。よって、裏面層から漆喰が剥がれ落ちることを抑制できる。
【0016】
上記車両用サンシェードの製造方法について、前記塗布工程は、前記裏面層の車室内側の面において、全面に亘って前記漆喰が塗布されても良い。
【0017】
上記製造方法の一つの特徴及び利点は、漆喰を裏面層の車室内側の面全体に亘って塗布することにより、車両用サンシェードのより広い範囲において抗ウイルス・抗菌機能が発揮され得る。
【発明の効果】
【0018】
本発明は、上記構成または製造方法をとることにより、抗ウイルス・抗菌機能を備えた車両用サンシェードとその製造方法を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【
図1】実施形態に係る車両用サンシェードを、車室内のフロントガラスに設置した状態を示す図である。
【
図2】実施形態に係る車両用サンシェードの構造を簡易的に示す分解斜視図である。
【
図3】実施形態に係る車両用サンシェードの正面図である。
【
図4】実施形態に係る車両用サンシェードの背面図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下に、本発明の実施形態について、
図1から
図4を用いて説明する。本実施形態に係る車両用サンシェード2は、
図1に示すように、自動車のフロントガラスFの内側に立てかけるように設置され、太陽光を反射し、遮光するものである。車両用サンシェード2の形状や大きさは、フロントガラスFの全面を覆うことができるように設定されている。
【0021】
<車両用サンシェードの構成>
車両用サンシェード2は、
図2に示すように、それぞれ面状の表面層3、中間層5、裏面層7を備えた複層体である。具体的には、フロントガラスF側から車室内側に向かって順に、表面層3、中間層5、裏面層7が積層されており、これらの互いに接する面同士が貼り合わされた構成となっている。
図3、
図4に示すように、車両用サンシェード2は略台形状であり、その上辺の中央部には、ルームミラーMとの干渉を防ぐための逃がし部10が設けられている。車両用サンシェード2は、その周縁12に沿って表面層3、中間層5、裏面層7を挟むように縁布14が当てられ、一体に縫製されている。また、車両用サンシェード2の平面に、吸盤を取り付けるための吸盤用穴16が設けられた構成としても良い。
【0022】
表面層3は、アルミシートが用いられており、外側からの太陽光を反射し、遮光する機能を有している。表面層3の例としては、合成樹脂製のアルミ蒸着シート、プラスチック製のアルミ蒸着フィルム、アルミニウム箔とポリエチレンシートの積層体等が挙げられる。また、アルミシートは遮光性が高く、遮熱機能も有している。
【0023】
中間層5は、ポリエチレン樹脂製の気泡シートと合成樹脂製シートを貼り合わせた構成とされ、熱の伝達を抑制する機能を有している。中間層5は、断熱性を高めるために気泡シートを2枚重ねて層を厚くしても良い。また、中間層5の気泡シートに代えて、綿状の繊維体、ウレタンフォーム等、他の断熱材を適宜選択できる。
【0024】
裏面層7は、合成繊維を含んだ繊維シート(繊維集合体)の車室内側の面、すなわち中間層5と反対側の面に、抗ウイルス・抗菌機能を有する漆喰8が塗布された構成である。裏面層7は、ファブリック、クロス、ニット等の布帛や、織布、不織布、起毛布等の布部材を適用できる。裏面層7に用いられる繊維シートは、面内方向及び面外方向において柔軟性を有している。ここで、面内方向は裏面層7の平面に沿った方向であり、面外方向は裏面層7の厚さ方向である。裏面層7が柔軟性を有することにより、車両用サンシェード2を容易に折り畳んだり、巻いたりすることができる。
【0025】
裏面層7は、塗布された漆喰8の一部が裏面層7の繊維に染み込むことにより、裏面層7と漆喰8の接着強度が向上し得る。繊維シートに含まれる繊維は、例えば、ポリオレフィン系繊維、ポリエステル系繊維、塩化ビニル系繊維、塩化ビニリデン系繊維、ポリフラール系繊維、ポリアミド系繊維、アクリル繊維などが挙げられる。また、天然繊維が含まれていても良い。これらの繊維は、単独で使用されても良く、2種以上を併用しても良い。ポリエステル系繊維は、高温時における熱劣化や色変化が少なく、耐熱性、対候性、防汚性に優れており、車両用装備品として好適である。
【0026】
裏面層7は、面内方向において縦方向及び横方向に伸長可能な不織布を用いても良い。裏面層7に不織布を適用すれば、不織布表面の繊維によって、塗布された漆喰8の塗布面8aに凹凸が形成され、表面積が増加し得る。すなわち、塗布面8aのウイルスや菌を吸着する面積をより大きくすることができる。なお、不織布の繊維ウェブは、乾式法、湿式法、またはスパンボンド法など公知の製造方法で形成できる。
【0027】
裏面層7の車室内側の面には、漆喰8が塗布されている。漆喰8は、主成分である消石灰(水酸化カルシウム)に、結合剤を混入して水で練ったものであり、調湿性、消臭機能、抗ウイルス・抗菌機能などを有する。漆喰8の塗布面8aは、多孔質で表面積が大きく、ウイルスや菌を含んだ飛沫が付着しやすい構成となっており、飛沫の水分と消石灰が反応して強アルカリ性になる特徴を有している。塗布面8aに付着したウイルスや菌は、強アルカリ性により感染性が失われ、漆喰8の抗ウイルス・抗菌機能が発揮される。
【0028】
漆喰8は、消石灰(水酸化カルシウム)を含有した漆喰塗料を用いても良い。消石灰の配合量は、漆喰8の消臭機能、抗ウイルス・抗菌機能等を発揮できる範囲内で適宜設定される。具体的には、漆喰8を構成する固形分中に30~75重量%の範囲内で設定される。さらに、40~65重量%の範囲であれば、より好適である。
【0029】
結合剤としては、例えば海藻糊などの天然糊料、ポリビニルアルコールなどの合成糊料、水溶性樹脂などの合成樹脂を適宜選択できる。なお、漆喰塗膜の付着性とひび割れ抑制の観点から、アクリル樹脂、ポリオレフィン樹脂、ポリウレタン樹脂等が好ましく、これの樹脂から1種または2種以上を使用することができる。結合剤の配合量は、漆喰8を構成する固形分中に2~50重量%の範囲内で設定される。さらに、5~20重量%の範囲であれば、より好適である。
【0030】
漆喰8は、着色顔料や体質顔料などの顔料を使用しても良い。着色材料としては、白色顔料、白以外の有色顔料を適宜選択できる。例えば、酸化チタン、タルク、炭酸カルシウム、シリカなど無機の白色顔料が挙げられる。白色顔料を使用する場合の配合量は、漆喰8を構成する固形分中に0.5~25重量%の範囲内で設定される。有色顔料としては公知のものが使用でき、例えば黒色顔料、赤色顔料、黄色顔料、緑色顔料、青色顔料などから1種または2種以上を選択して適宜配合される。
【0031】
体質顔料としては、例えば炭酸カルシウム、石膏、クレー、シリカ、珪藻土、タルク、硫酸バリウム、水酸化アルミニウムなどが挙げられる。体質顔料を使用する場合の配合量は、漆喰8を構成する固形分中に1~50重量%の範囲内で設定される。
【0032】
漆喰8は、塗布された後に空気中の二酸化炭素を吸って時間をかけてゆっくり乾燥・硬化するため、成形時の追従性を備えている。また、乾燥時の割れ防止のために、漆喰8にスサ等を含んでいても良い。例えば麻スサを含むことにより、漆喰8の弾力性向上を図ることができ、追従性を維持し得る。
【0033】
漆喰8は、裏面層7の車室内側の面全体に亘って塗布されても良く、部分的に塗布されても良い。また、漆喰8を塗布するパターン(柄など)を任意に設定できる。漆喰8の塗布量、塗布面8aの厚さは、漆喰8の消臭機能、抗ウイルス・抗菌機能等を発揮できる範囲内で適宜設定される。例えば、漆喰8の塗布量は、固形分換算で、100~500g/m2の範囲を挙げることができる。
【0034】
車両用サンシェード2は、天地方向に延びる線状の折り筋18が複数設けられた構成としても良い。折り筋18として、例えば車両用サンシェード2の両面に、幅方向において所定間隔ごとに複数の溝が形成される。これにより、車両用サンシェード2を蛇腹折りにしてコンパクトに収納できる。なお、車両用サンシェード2の収納態様は、蛇腹折りに限られず、表面層3、中間層5、裏面層7の素材に応じて、他の折り畳み方、または筒状に巻いて収納する態様としても良い。
【0035】
車両用サンシェード2は、天地方向に延びる棒状の芯材(不図示)が配置された構成としても良い。芯材は、例えば中間層5と裏面層7の間に配置できる。芯材の素材は、合成樹脂、金属等、適宜選択できる。芯材を幅方向において所定間隔ごとに複数配置することにより、車両用サンシェード2をフロントガラスFに立てかけたときの腰折れを防ぐことができる。
【0036】
車両用サンシェード2は、
図1に示すように、フロントガラスFに立てかけた状態で、車室内側からサンバイザSで支持することにより、簡易に設置できる。なお、吸盤でフロントガラスFに固定する態様、サンバイザS等にベルトで固定して支持する態様等、他の設置方法を用いても良い。
【0037】
図3、
図4に示すように、車両用サンシェード2の幅方向における端部のいずれか一方には、収納時の留め具20が設けられている。留め具20は、例えば帯状の面ファスナが縁布14と共に縫い付けられた構成とされ、車両用サンシェード2を折り畳んだ状態で維持できる。
【0038】
<車両用サンシェードの製造工程>
次に、本実施形態に係る車両用サンシェードの製造方法について説明する。車両用サンシェード2は、
図2に示すように、表面層3、中間層5、裏面層7を積層させて一体にして成形される。例えば、表面層3として遮光性を有するアルミシート、中間層5としてポリエチレン樹脂製の気泡シートと合成樹脂製シートを貼り合わせた断熱材を選択できる。
【0039】
裏面層7の車室内側の面には、塗布工程において、調湿性、消臭機能、抗ウイルス・抗菌機能などを有する漆喰8が塗布される。裏面層7は、ポリエステル系繊維の不織布が選択される。漆喰8は、主成分である消石灰(水酸化カルシウム)に、結合剤を混入して水で練ることにより製造される。漆喰8は、水酸化カルシウムを含有した漆喰塗料を用いても良い。
【0040】
塗布工程においては、裏面層7の車室内側の面において全面に亘り漆喰8が塗布されても良い。また、塗布量、塗布面8aの厚さは、漆喰8の消臭機能、抗ウイルス・抗菌機能の低下を抑えることができる範囲内で適宜設定され、部分的に異なる態様としても良い。漆喰8の塗布量は、固形分換算で、100~500g/m2の範囲を挙げることができる。漆喰8の塗布方法は、例えばコテ塗り、ローラー、刷毛、スプレー、フローコーター、ロールコーター等、適宜選択される。さらに、漆喰8の塗布のパターンは任意に設定できる。
【0041】
次に、積層工程において、表面層3と、中間層5と、漆喰8が塗布された裏面層7とを積層させて一体にする。具体的には、裏面層7の漆喰8が塗布された面と反対側に、中間層5を積層させ、中間層5の裏面層7と接する面と反対側に、表面層3を積層させる。なお、漆喰8は空気中の二酸化炭素を吸って、時間をかけてゆっくり乾燥・硬化する特徴を有しており、追従性を備えている。そのため、車両用サンシェード2の成形時や、収納時の折り曲げ等において、塗布面8aのひび割れを抑制できる。
【0042】
積層された表面層3と中間層5と裏面層7は、それぞれの接する面において貼り合わされ、一体にして車両用サンシェード2が成形される。車両用サンシェード2の大きさ、形状は、フロントガラスF全面を覆うことができるように任意に設定される。
図3、
図4に示すように、略台形状の車両用サンシェード2の上辺中央には、略V字状の逃がし部10が設けられる。また、車両用サンシェード2の平面に、吸盤を取り付けるための吸盤用穴16を設けても良い。また、天地方向に延びる線状の折り筋18として、車両用サンシェード2の両面に、幅方向において所定間隔ごとに複数の溝を形成しても良い。
【0043】
車両用サンシェード2は、周縁12に沿って表面層3側と裏面層7側から挟むように縁布14があてられ、全周に亘って縫製される。これにより、貼り合わされた面同士の剥がれを防ぎ、車両用サンシェード2の耐久性を高めることができる。また、車両用サンシェード2の幅方向における端部のいずれか一方に、収納時の留め具20を設けても良い。留め具20は、例えば帯状の面ファスナが縁布14と共に縫い付けられる。
【0044】
車両用サンシェード2は、車室内のフロントガラスFに立てかけるように設置され、太陽光を反射、遮光し、車室内の温度上昇を抑制する。漆喰8の塗布面8aに、車室内を浮遊するウイルスや菌を含む飛沫が付着すると、水分の侵入によって消石灰の溶出が起きて飛沫が強アルカリ性になる。強アルカリ性によりウイルスや菌は感染性を失う。また、臭気物質の一部は、消石灰と反応して分解される。このようにして、裏面層7に塗布された漆喰8の消臭機能、抗ウイルス・抗菌機能等が発揮される。
【0045】
<実施形態の効果>
上記実施形態の車両用サンシェード2によれば、裏面層7に漆喰8が塗布されていることにより、車両用サンシェード2の車室内側の面に抗ウイルス・抗菌機能、消臭機能、調湿機能等を備えることができる。この車両用サンシェード2を使用すれば、車室内に向かって進入する太陽光を反射、遮光すると共に、密閉状態で換気ができない車室内においても、ウイルスや菌の数を減らすことができる。また、車両用サンシェード2は、フロントガラスFや複数のサイドガラス等、車室内において広い面積を占める部分で使用されるため、塗布された漆喰によって、車室内の広い範囲に亘って空気を浄化することができる。
【0046】
裏面層7は、合成繊維を含んだ繊維集合体を適用できる。裏面層7を繊維集合体とすることにより、裏面層7に塗布された漆喰8の一部が、裏面層7に染み込み易くなり、裏面層7と漆喰8の接着強度が向上し得る。よって、裏面層7から漆喰8が剥がれ落ちることを抑制できる。
【0047】
車両用サンシェード2は、裏面層7の車室内側の面全体に亘って漆喰8が塗布されており、より広い範囲において抗ウイルス・抗菌機能を発揮し得る。
【0048】
上記実施形態の製造方法によれば、塗布工程において裏面層7に漆喰8を塗布した後、積層工程において表面層3、中間層5、裏面層7を積層させて一体にする。塗布工程が積層工程より前に行われることにより、車両用サンシェード2を成形した後に漆喰8を塗布する場合に比べて、周縁12の端部まできれいに漆喰8を塗布できる。よって、見栄えが良い車両用サンシェード2を製造できる。また、漆喰8は空気中の二酸化炭素を吸って時間をかけてゆっくり乾燥・硬化する特徴を有しており、追従性を備えている。よって漆喰塗布面8aのひび割れを抑制できる。
【0049】
塗布工程において、繊維集合体である裏面層7の車室内側の面に漆喰8が塗布される。塗布された漆喰8の一部が裏面層7の繊維に染み込むことにより、裏面層7と漆喰8の接着強度が向上し得る。よって、裏面層7から漆喰8が剥がれ落ちることを抑制できる。また、漆喰8を裏面層7の車室内側の面全体に亘って塗布することにより、車両用サンシェード2のより広い範囲において抗ウイルス・抗菌機能が発揮され得る。
【0050】
車両用サンシェード2をフロントガラスFに設置することにより、車室内の循環時に浮遊しているウイルスや菌が裏面層7に塗布された漆喰8に吸着される。塗布面8aに付着したウイルスや菌は、生育・増殖等が抑制され得る。このようにして、抗ウイルス・抗菌機能を車両用サンシェード2に備えることにより、別途抗ウイルス・抗菌用の装備品を設置しなくても、一つの装備品で日除けと空気浄化を兼用できる。
【0051】
本発明に係る車両用サンシェードとその製造方法は、上記実施形態において説明した外観、構成に限られず、本発明の要旨を変更しない範囲で種々の変更、追加、削除、構成の組み合わせにより、その他各種の形態で実施できるものである。
【0052】
車両用サンシェードは、フロントガラスに設置するものに限られず、例えばサイドウインド、リヤガラス等に取り付ける態様としても良い。
【符号の説明】
【0053】
2 車両用サンシェード
3 表面層
5 中間層
7 裏面層
8 漆喰
8a 漆喰の塗布面
10 逃がし部
12 周縁
14 縁布
16 吸盤用穴
18 折り筋
20 留め具
F フロントガラス
M ルームミラー
S サンバイザ