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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024046057
(43)【公開日】2024-04-03
(54)【発明の名称】多相モータシステム
(51)【国際特許分類】
   H02P 25/22 20060101AFI20240327BHJP
   H02K 21/22 20060101ALI20240327BHJP
   H02P 25/022 20160101ALI20240327BHJP
   H02K 21/14 20060101ALI20240327BHJP
【FI】
H02P25/22
H02K21/22 M
H02P25/022
H02K21/14 M
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022151214
(22)【出願日】2022-09-22
(71)【出願人】
【識別番号】519262342
【氏名又は名称】zenmotor株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001737
【氏名又は名称】弁理士法人スズエ国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】澤田 昭彦
(72)【発明者】
【氏名】金原 利宏
【テーマコード(参考)】
5H505
5H621
【Fターム(参考)】
5H505AA16
5H505AA30
5H505BB02
5H505CC04
5H505DD03
5H505DD08
5H505EE49
5H505GG02
5H505HA07
5H505HB01
5H505JJ03
5H505JJ16
5H505JJ17
5H505KK06
5H505LL22
5H505LL41
5H621BB02
5H621BB06
5H621BB10
5H621HH01
(57)【要約】
【課題】 コアレスモータにハルバッハ配列を適用し、システム全体の効率を向上させた多相モータシステムを提供することにある。
【解決手段】 本実施形態に係る多相モータシステムは、コアレスモータ1を構成し、複数のコイルC1~C12が円周上に配置されたステータ3と、コアレスモータ1を構成し、着磁方向がハルバッハ配列の永久磁石21~24が設けられたロータ2と、相毎に設けられ、1つ又は1対のコイル毎に励磁するドライバー回路DRu,DRv,DRwと、ドライバー回路DRu,DRv,DRwを駆動するためのパルスを生成する駆動パルス生成部91と、相毎に少なくとも1つの励磁するコイルC1~C12を選択するコイル選択部92と、ドライバー回路DRu,DRv,DRwにより、コイル選択部92により選択されたコイルC1~C12を励磁するように制御する制御装置を備える。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
コアレスモータを構成し、複数のコイルが円周上に配置されたステータと、
前記コアレスモータを構成し、着磁方向がハルバッハ配列の永久磁石が設けられたロータと、
相毎に設けられ、1つ又は1対のコイル毎に励磁するドライバー回路と、
前記ドライバー回路を駆動するためのパルスを生成するパルス生成手段と、
相毎に少なくとも1つの励磁するコイルを選択するコイル選択手段と、
前記ドライバー回路により、前記コイル選択手段により選択された前記コイルを励磁するように制御する制御手段と
を備えたことを特徴とする多相モータシステム。
【請求項2】
前記複数のコイルは、全て対になり、対になるコイルは、前記ステータにおける回転軸を中心として対向する位置に設けられること
を特徴とする請求項1に記載の多相モータシステム。
【請求項3】
前記ステータは、各相が有するコイルの数をnとすると、機械角360度/nの間隔で、前記複数のコイルのうち同相のコイルが配置されたこと
を特徴とする請求項2に記載の多相モータシステム。
【請求項4】
機械角360度/nの間隔で配置される前記同相のコイルは、同じ交流波形により励磁されること
を特徴とする請求項3に記載の多相モータシステム。
【請求項5】
前記コイル選択手段は、前記ドライバー回路から出力される交流波形の1周期毎に、所定の順番に従って前記コイルを順次に選択すること
を特徴とする請求項1に記載の多相モータシステム。
【請求項6】
前記コイル選択手段は、前記ドライバー回路から出力される交流波形の1周期において、高出力時よりも低出力時の方が各相で選択される前記コイルの数が少ないこと
を特徴とする請求項1に記載の多相モータシステム。
【請求項7】
前記複数のコイルのそれぞれの特性を保持するコイル特性保持手段を備え、
前記パルス生成手段は、前記コイル特性保持手段に保持された特性に基づいて、前記パルスを生成すること
を特徴とする請求項1に記載の多相モータシステム。
【請求項8】
請求項1から請求項7のいずれか1項に記載の多相モータシステムと、
前記多相モータシステムを駆動源として移動するために駆動する駆動手段と
を備えることを特徴とする移動体。
【請求項9】
前記駆動手段は、外部からの制御指令に基づいて、前記移動体が飛行するように制御されることを特徴とする請求項8に記載の移動体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、多相モータを駆動する多相モータシステムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、高効率なモータとして、永久磁石をハルバッハ配列にして磁力を強化したモータが知られている。例えば、ハルバッハ配列された永久磁石を有する回転子を備えたモータが開示されている(特許文献1参照)。
また、モータシステムとしての損失は、モータの損失以外に、ドライバー回路による損失がある。ドライバー回路を効率化する方法として、一つの軸に対して複数のコイルを構成するマルチコイル方式を採用することが知られている。例えば、1相あたり複数のコイルをステータに設け、複数のコイルをそれぞれ互いに異なる位相で駆動制御することで、小型化を実現するモータの駆動方法が開示されている(特許文献2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2009-201343号公報
【特許文献2】特開2008-67461号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、コアレスモータにハルバッハ配列を適用する場合、コイルの構成及びコイルの駆動制御のいずれも考慮しなければ、モータシステム全体の効率を充分に向上させることはできない。
本発明の実施形態の目的は、コアレスモータにハルバッハ配列を適用し、システム全体の効率を向上させた多相モータシステムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の観点に従った多相モータシステムは、コアレスモータを構成し、複数のコイルが円周上に配置されたステータと、前記コアレスモータを構成し、着磁方向がハルバッハ配列の永久磁石が設けられたロータと、相毎に設けられ、1つ又は1対のコイル毎に励磁するドライバー回路と、前記ドライバー回路を駆動するためのパルスを生成するパルス生成手段と、相毎に少なくとも1つの励磁するコイルを選択するコイル選択手段と、前記ドライバー回路により、前記コイル選択手段により選択された前記コイルを励磁するように制御する制御手段とを備える。
【発明の効果】
【0006】
本発明の実施形態によれば、コアレスモータにハルバッハ配列を適用し、システム全体の効率を向上させた多相モータシステムを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
図1】本発明の第1の実施形態に係るモータの断面の構成を簡略化した簡略図。
図2】第1の実施形態に係るステータのコイルと各相のドライバー回路の配線を示す回路図。
図3】第1の実施形態に係るステータのコイルと各相の各極性のドライバー回路の配線を示す回路図。
図4】第1の実施形態に係るU相ドライバー回路の構成を示す回路図。
図5】第1の実施形態の変形例に係るモータの断面の構成を簡略化した簡略図。
図6】第1の実施形態に係るモータの構成を示す正面図。
図7】第1の実施形態に係るモータの構成を示す左側面図。
図8】第1の実施形態に係るモータの構成を示す右側面図。
図9】第1の実施形態に係るモータの図1に示すA-A線で切断した断面図。
図10】第1の実施形態に係る第1制御回路の構成を示す回路図。
図11】第1の実施形態に係る第2制御回路の構成を示す回路図。
図12】第1の実施形態に係るモータの制御により低出力制御時に各コイルに流れる電流を示す波形図。
図13】第1の実施形態に係るモータの制御により中出力制御時に各コイルに流れるの電流を示す波形図。
図14】第1の実施形態に係るモータの制御により高出力制御時に各コイルに流れるの電流を示す波形図。
図15】第1の実施形態の第1適用例に係るドローンの基本構成を示す構成図。
図16】第1の実施形態の第1適用例に係るドローンを側面から内部を透視した構成図。
図17】第1の実施形態の第1適用例に係るドローンの制御方法を示すフロー図。
図18】第1の実施形態の第2適用例に係る電動車の構成を示す構成図。
図19】第1の実施形態の第3適用例に係る電動船の構成を示す構成図。
図20】本発明の第2の実施形態に係るモータの構成を示す正面図。
図21】第2の実施形態に係るモータの構成を示す左側面図。
図22】第2の実施形態に係るモータの構成を示す右側面図。
図23】第2の実施形態に係るモータの図20に示すB-B線で切断した断面図。
図24】本発明の第3の実施形態に係るモータの構成を示す正面図。
図25】第3の実施形態に係るモータの構成を示す左側面図。
図26】第3の実施形態に係るモータの構成を示す右側面図。
図27】第3の実施形態に係るモータの図24に示すC-C線で切断した断面図。
【発明を実施するための形態】
【0008】
(第1の実施形態)
図1は、本発明の第1の実施形態に係るモータ1の断面の構成を簡略化した簡略図である。図2は、本実施形態に係るステータ3のコイルC1~C12と各相のドライバー回路DRu,DRv,DRwの配線を示す回路図である。図3は、本実施形態に係るステータ3のコイルC1~C12と各相の各極性のドライバー回路DRu1,DRu2,DRv1,DRv2,DRw1,DRw2の配線を示す回路図である。なお、図面における同一部分には同一符号を付して、適宜説明を省略する。
【0009】
本実施形態に係るモータシステムは、モータ1及びモータ1を駆動制御する制御装置を備える。モータ1は、コアレスモータであり、マルチコイルモータであり、アウターロータ型のモータである。モータ1は、全体として円柱形状である。モータ1は、ロータ2及びステータ3を備える。
【0010】
ロータ2は、円筒形状であり、モータ1の外周側に配置される。ロータ2は、ハルバッハ配列に配置された複数の永久磁石21,22,23,24を備える。図の例では、永久磁石21~24は、磁化方向により4種類に分けられるが、これに限定されるものではない。例えば、6種類や8種類に分ける構成であっても良い。図1では、矢印で着磁方向(磁化方向)を示している。図1中の30度はステータ3側の各相に対応するコイルの間隔であり、45度はロータ2の磁極の間隔を示す角度で、それぞれ機械角で示している。
【0011】
第1永久磁石21は、回転軸を中心とした円の周方向で左回り(反時計回り)の着磁方向である。第2永久磁石22は、回転軸を中心とした円の径方向で外向き(回転軸から外周側への向き)の着磁方向である。第3永久磁石23は、回転軸を中心とした円の周方向で右回り(時計回り)の着磁方向である。第4永久磁石24は、回転軸を中心とした円の径方向で内向き(外周側から回転軸への向き)の着磁方向である。
【0012】
ロータ2の全ての永久磁石21~24による磁場が内周側に偏るように、各種類の永久磁石21~24が所定の順番で配置される。具体的には、図1では、第1永久磁石21、第2永久磁石22、第3永久磁石23、及び、第4永久磁石24の順番で繰り返すように、永久磁石21~24が配列される。これにより、永久磁石21~24がハルバッハ配列に配置される。
【0013】
なお、これらの永久磁石21~24の代わりに、着磁方向がハルバッハ配列になるように(即ち、磁場が内周側に偏るように)着磁された1つの磁気異方性永久磁石が設けられてもよい。例えば、このような磁気異方性永久磁石は、磁気異方性材料をハルバッハ配向になるようにリング状に一体焼結することにより作成される。
【0014】
ステータ3は、円筒形状であり、ロータ2の内周側に配置される。ステータ3は、複数のコイル(ステータコイル)C1,C2,C3,C4,C5,C6,C7,C8,C9,C10,C11,C12を備える。
【0015】
コイルC1~C12は、積層電磁鋼板で構成される突極固定子に巻線されないコイルであり、ステータ3の表面に円周上に等間隔に配置される。コイルC1~C12は、三相交流により励磁される。コイルC1~C12は、三相(U相、V相及びW相)の各相に分けられる。各相には、2つのコイルを1組(1対)として、2組のコイルが設けられる。1つの組のコイルを構成する2つのコイルは、互いに電気的に接続される。したがって、対になるコイルは、常に同時に導通される。さらに、対になるコイルは、ステータ3における回転軸を中心として対向する位置に設けられる。これは、コイルが励磁された際に生じる回転力に偏りが生じないことを意味している。なお、ここでは、各相に2つの組のコイル(4つのコイル)が設けられた構成について説明するが、各相にコイルがいくつ設けられてもよい。また、相数は、三相に限らず、いくつの相でもよい。
【0016】
U相コイルには、第1組コイルC1,C2、及び、第2組コイルC7,C8が含まれる。V相コイルには、第1組コイルC3,C4、及び、第2組コイルC9,C10が含まれる。W相コイルには、第1組コイルC11,C12、及び、第2組コイルC5,C6が含まれる。図1中では、U相の各組コイルC1,C2,C7,C8について、互いに2つのコイルが配線された状態を図示しているが、その他の組コイルも同様に配線されている。
【0017】
三相の各相において、各組2対で合計4つのコイルは、90度間隔に設けられる。このように同相として設けられた4つのコイルは、同位相の同一交流波形により励磁されるように制御され、出力に応じて時分割で駆動される。ここで、コイルの間隔の90度は、360度を各相のコイル数の4で割った角度である。各相のコイル数をnとすると、コイルが配置される間隔の機械角は、360度/nで表される。
【0018】
機械角とはロータ一回転を360°とした場合の角度である。これに対して、電気角とは、モータを駆動するインバータ波形一周期を360°とした角度である。図1に示すモータは、インバータ波形8周期でロータが一回転する。このため、このモータでは電気角360°は機械角45°と一致する。
【0019】
U相第1組の第1コイルC1、及び、U相第2組の第1コイルC7は、U相の順方向の交流波形(正弦波に相当する波形)により励磁される。U相第1組の第2コイルC2、及び、U相第2組の第2コイルC8は、U相の逆方向(順方向と反対極性)の交流波形により励磁される。ここで、「順方向」及び「逆方向」は、互いに極性が反対であることを表すために用いた用語であり、どちらを「順方向」又は「逆方向」としてもよい。
【0020】
ところで、第2コイルC2,C8は、図2に示すように、第1コイルC1,C7に対して逆向きに設置されている。このため、第2コイルC2,C8は、第1コイルC1,C7に対して逆方向の交流波形により励磁されたとしても第1コイルC1,C7と同じ極性に励磁される。
【0021】
V相第1組の第1コイルC3、及び、V相第2組の第1コイルC9は、V相の順方向の交流波形により励磁される。V相第1組の第2コイルC4、及び、V相第2組の第2コイルC10は、V相の逆方向の交流波形により励磁される。よって、U相と同様に、第1コイルC3,C9と第2コイルC4,C10は同じ極性に励磁される。
【0022】
W相第1組の第1コイルC11、及び、W相第2組の第1コイルC5は、W相の順方向の交流波形により励磁される。W相第1組の第2コイルC12、及び、W相第2組の第2コイルC6は、W相の逆方向の交流波形により励磁される。よって、U相と同様に、第1コイルC11,C5と第2コイルC12,C6は同じ極性に励磁される。
【0023】
図2に示すように、3つのドライバー回路DRu,DRv,DRwは、相毎に、コイルC1~C12の駆動を制御する。U相ドライバー回路DRuは、U相コイルC1,C7,C2,C8を励磁するように制御を行う。V相ドライバー回路DRvは、V相コイルC3,C9,C4,C10を励磁するように制御を行う。W相ドライバー回路DRwは、W相コイルC11,C5,C12,C6を励磁するように制御を行う。各組の2つのコイルは、同一の交流波形により励磁される。
【0024】
図3に示すように、6つのドライバー回路DR1u,DR2u,DR1v,DR2v,DR1w,DR2wを設け、各相の極性毎に、コイルC1~C12の駆動を制御してもよい。この場合の構成について説明する。
【0025】
各コイルC1~C12は、個別に励磁されるように独立して配線される。ここで、対になる2つのコイルにそれぞれ印加される2つの交流波形は、同じ交流波形であっても良く、位相に誤差が無いことが望ましい。また、同相の各組から1つずつ選択された2つのコイルに印加される2つの交流波形は、同じ交流波形であっても良く、位相に誤差が無いことが望ましい。したがって、同相の4つのコイルは、配置方向を一致させれば、同一の交流波形により駆動制御をすることができる。
【0026】
U相コイルC1,C7,C2,C8の両端には、U相第1ドライバー回路DR1u及びU相第2ドライバー回路DR2uがそれぞれ接続される。V相コイルC3,C9,C4,C10の両端には、V相第1ドライバー回路DR1v及びV相第2ドライバー回路DR2vがそれぞれ接続される。W相コイルC11,C5,C12,C6の両端には、W相第1ドライバー回路DR1w及びW相第2ドライバー回路DR2wがそれぞれ接続される。
【0027】
各ドライバー回路DR1u,DR2u,DR1v,DR2v,DR1w,DR2wは、各コイルC1~C12に流す励磁電流の方向に合わせて、各コイルC1~C12の端子を接続する。
【0028】
図4は、本実施形態に係るU相ドライバー回路DRuの構成を示す回路図である。ここでは、U相ドライバー回路DRuについて主に説明し、V相ドライバー回路DRv及びW相ドライバー回路DRwは、同様に構成されるものとする。また、図3に示す各ドライバー回路DR1u,DR2u,DR1v,DR2v,DR1w,DR2wも、各コイルC1~C12との接続部分以外は、U相ドライバー回路DRuと同様に構成される。
【0029】
U相ドライバー回路DRuは、2つのスイッチング回路C1d,C2d及び直流電源BTを備える。2つのスイッチング回路C1d,C2dは、直流電源BTに対して並列に接続される。なお、直流電源BTは、各相のドライバー回路DRu,DRv,DRwに設けられてもよいし、全てのドライバー回路DRu,DRv,DRwで共通に設けられてもよい。
【0030】
第1スイッチング回路C1dは、4つのスイッチング素子E11p,E11n,E21p,E21nで構成される。正極側スイッチング素子E11p,E21pは、それぞれ負極側スイッチング素子E11n,E21nと対になる。2つの組の対になる2つのスイッチング素子E11p~E21nは、それぞれ直列に接続される。対になる2つのスイッチング素子E11p~E21nは、それぞれ直流電源BTと並列に接続される。対になるスイッチング素子E11p~E21nのそれぞれの接続点は、直列に接続された第1組コイルC1,C2、及び、第2組コイルC7,C8のそれぞれの一方の端子に接続される。
【0031】
第2スイッチング回路C2dは、4つのスイッチング素子E12p,E12n,E22p,E22nで構成される。スイッチング素子E12p~E22nは、第1スイッチング回路C1dと同様の構成である。2つの組の直列に接続された対になる2つのスイッチング素子E12p~E22nのそれぞれの接続点は、2つの組の対になる2つのコイルC1,C2,C7,C8のそれぞれの第1スイッチング回路C1dと接続された端子と異なる他方の端子に接続される。
【0032】
第1スイッチング回路C1dのオンするスイッチング素子E11p~E21nと第2スイッチング回路C2dのオンするスイッチング素子E12p~E22nとの組合せにより、2つの組のコイルC1,C2,C7,C8に、直流電源BTからの直流電圧を個別に正方向又は負方向に印加する。例えば、U相第1組コイルC1,C2に正方向の電圧を印加する場合、第1スイッチング回路C1dの正極側スイッチング素子E11pと第2スイッチング回路C2dの負極側スイッチング素子E12nをオンする。U相第1組コイルC1,C2に負方向の電圧を印加する場合、第1スイッチング回路C1dの負極側スイッチング素子E11nと第2スイッチング回路C2dの正極側スイッチング素子E12pをオンする。なお、電圧を印加する方向については、どちらを正方向又は負方向としてもよい。
【0033】
なお、図3に示す構成の場合、ドライバー回路DR1u,DR1v,DR1wには、スイッチング回路C1dが対応し、ドライバー回路DR2u,DR2v,DR2wにはスイッチング回路C2dが対応する。
【0034】
図5を参照して、本実施形態の変形例に係るモータ1aの構成について説明する。なお、本変形例に係るモータ1aを制御する構成については、図2図3及び図4に示す回路図は、モータ1aの変形された構成に合わせて変形されるものとする。
【0035】
モータ1aは、図1に示すモータ1の構成において、U相、V相及びW相のそれぞれの第2組のコイルの第1コイルC7,C9,C5と第2コイルC8,C10,C6の位置を入れ替えたものである。その他の点については、モータ1aは、図1に示すモータ1と同様に構成される。
【0036】
各コイルC1~C12は、機械角30度の間隔で配置される。また、同相の同一方向の交流波形により励磁される2つのコイルは、機械角90度の間隔で配置される。例えば、U相第1組の第1コイルC1、及び、U相第2組の第1コイルC7は、機械角90度の間隔で配置される。また、機械角90度の間隔で配置される4つのコイルは、全て同相の交流波形により励磁されるコイルである。例えば、U相第1組の第1コイルC1、U相第2組の第1コイルC7、U相第1組の第2コイルC2、及び、U相第2組の第2コイルC8、全てU相の交流波形により励磁されるコイルである。
【0037】
モータ1aのコイルC1~C12は、図1に示すモータ1と同様に、全て2つのコイルで対(組)になっている。対になるコイルは、ステータ3における回転軸を中心として対向する位置に設けられる。対になるコイルには、同相で極性が同じになるように励磁される。
【0038】
図6図9を参照して、本実施形態に係るモータ1の構成の一例について説明する。図6は、モータ1の正面図である。図7は、モータ1の左側面図である。図8は、モータ1の右側面図である。図9は、図6のA-A線で切断した断面図である。
【0039】
モータ1は、ロータ継鉄41、永久磁石42、コイル43、ステータ継鉄44、ステータパイプ45、ハウジング46、ベアリング47、ロータ軸48、ハブ49、ベアリングナット50、Cリング51、ウェーブワッシャ52、カラー53、ブッシュ54、及び、プレート55を備える。
【0040】
ロータ継鉄41及び永久磁石42は、ロータ2を構成する。ロータ継鉄41は、ロータ2における磁気回路の一部となる鉄片である。永久磁石42は、図1に示す永久磁石21~24に相当する。
【0041】
コイル43、ステータ継鉄44、及び、ステータパイプ45は、ステータ3を構成する。コイル43は、図1に示すコイルC1~C12に相当する。ステータ継鉄44は、ステータ3における磁気回路の一部となる鉄片である。ステータパイプ45は、電磁鋼鈑の積層体を支える心棒の役目をする部品である。
【0042】
ハウジング46は、ロータ軸48及びその軸受等が収容される空間を覆う部品である。ロータ軸48は、モータ1の回転軸であり、ハブ49により、ロータ2と結合される。ベアリング47及びベアリングナット50は、ロータ軸48の軸受となる部品である。Cリング51は、ロータ軸48に取り付けられたC字形状の留め金具である。
【0043】
ウェーブワッシャ52は、軸受予圧用にウェーブ状に形成されたワッシャである。カラー53は、ウェーブワッシャ52を留めるための環状の部品である。プレート55は、モータ1の右側面を覆う円板状の部品であり、空隙にはブッシュ54が詰められる。
【0044】
図10は、本実施形態に係るモータ1の第1制御回路90の構成を示す回路図である。なお、モータ1の制御については、ここで説明する制御方法に限らず、どのように制御してもよい。
【0045】
第1制御回路90は、演算処理を行うプロセッサを含むコンピュータで実行される。第1制御回路90は、駆動パルス生成部91、コイル選択部92、ドライバー回路DRu,DRv,DRw、A/Dコンバータ93、及び、位置推定部94を備える。
【0046】
駆動パルス生成部91は、位置推定部94により推定された回転角度θに基づいて、モータ1の回転速度が回転速度指令値ω*に追従するように、モータ1のコイルC1~C12を励磁する交流波形を生成するための各相の駆動パルスPu,Pv,Pwを決定する。駆動パルス生成部91は、決定した各相の駆動パルスPu,Pv,Pwをコイル選択部93に出力する。なお、駆動パルス生成部91で決定するパルスの制御方法は、例えばパルス幅変調であるPWM(Pulse Width Modulation)制御であっても良いし、パルス密度PDM(Pulse Density Modulation)制御であっても良いし、その他の公知の制御方法であっても構わない。
【0047】
コイル選択部92は、駆動パルス生成部91から入力された駆動パルスPu,Pv,Pwに基づいて、励磁するコイルC1~C12を決定する。コイル選択部92は、どのように励磁するコイルC1~C12を選択してもよい。例えば、コイル選択部92は、予め決められた所定の順番で、コイルC1~C12を選択する。なお、特定のコイルを選択しないようにすることも、コイル選択部の機能に含まれる。特定のコイルとは、故障して使用できなくなったコイルである場合もあれば、誘起電圧の検出目的のみに使用すると予め決められている場合などが考えられる。
【0048】
ドライバー回路DRu,DRv,DRwは、コイル選択部92により選択されたコイルC1~C12を励磁する制御をする。具体的には、ドライバー回路DRu,DRv,DRwは、モータ1のコイルC1~C12を励磁するための駆動指令を生成して、組毎又は個別にコイルC1~C12の駆動を制御する。
【0049】
A/Dコンバータ93は、モータ1の各相の電流を検出して、アナログ値からデジタル値に変換する。A/Dコンバータ93は、変換した各相の電流Iu,Iv,Iwを位置推定部94に出力する。
【0050】
位置推定部94は、A/Dコンバータ93から入力された各相の電流Iu,Iv,Iwに基づいて、モータ1の電気角θを推定する。位置推定部94は、演算した電気角θを駆動パルス生成部91に出力する。なお、位置推定部94の代わりに、モータ1に回転角度を検出するセンサを設けてもよい。
【0051】
図11は、本実施形態に係るモータ1の第2制御回路90aの構成を示す回路図である。第2制御回路90aは、図10に示す第1制御回路90において、コイル特性保持部95を追加し、駆動パルス生成部91を駆動パルス生成部91aに代えたものである。その他の点については、第2制御回路90aは、第1制御回路90と同様である。本実施形態に係るモータシステムは、第1制御回路90の代わりに、第2制御回路90aを用いてもよい。
【0052】
コイル特性保持部95は、ステータ3に配置された各コイルC1~C12の特性を保持する。コイル特性保持部95は、保持するコイルC1~C12の特性を駆動パルス生成部91aに出力する。
【0053】
例えば、コイル特性保持部95に保持されるコイルC1~C12の特性は、各コイルC1~C12のインダクタンス又はインピーダンスである。また、その両方であっても良い。コイルC1~C12は、巻き線であるため、製造過程においてインダクタンス又はインピーダンスにばらつきが生じる。コイルC1~C12の特性には、コイルC1~C12のステータ3への取り付け誤差(位置ずれ又は傾きなど)による影響が含まれてもよい。
【0054】
例えば、コイル特性保持部95は、フラッシュROM(read-only memory)などの不揮発性メモリを含む。コイル特性保持部95は、各コイルC1~C12を識別する識別コードと共に、各コイルC1~C12のインダクタンスやインピーダンスを記録する。これにより、コイル特性保持部95は、各コイルC1~C12の特性のばらつきを記録する。コイルC1~C12のインダクタンスは、次式により求める。
【0055】
v(t)=L・di/dt …式(1)
コイルC1~C12に所定の電圧を印加し、電流が所定の値に達するまでの時間を測定することで、測定対象のコイルC1~C12のインダクタンスが求まる。例えば、コイルC1~C12の特性は、モータ1の組み立て後の出荷検査時に、調整値としてコイル特性保持部95に記録してもよい。モータ1の出荷検査時に、コイルC1~C12の特性を測定することで、コイルのC1~C12の製造ばらつきに加え、取り付け誤差も含めた値を測定することができる。
【0056】
なお、コイル特性保持部95にコイルC1~C12の特性を保持する方法は、上述の方法に限らない。コイルC1~C12の製造段階で取得した特性に関するデータを用いてもよい。例えば、コイルC1~C12の特性に関する情報を二次元バーコードにして、対応するコイルC1~C12に貼り付け、モータ1の組み立ての段階で、コイル特性保持部95に記録してもよい。
【0057】
駆動パルス生成部91aは、コイル特性保持部95から入力されたコイルC1~C12の特性に基づいて、対応するコイルC1~C12を駆動する駆動パルスPu,Pv,Pwを生成する。駆動パルス生成部91aは、各コイルC1~C12で発生する磁界の値が均一になるように駆動パルスPu,Pv,Pwを生成する。
【0058】
例えば、パルス幅変調(PWM)制御により駆動パルスPu,Pv,Pwを生成する場合、駆動パルス生成部91aは、制御対象のコイルC1~C12毎にデューティを変更する。パルス密度(PDM)変調により駆動パルスPu,Pv,Pwを生成する場合、駆動パルス生成部91aは、制御対象のコイルC1~C12毎にパルスの密度を変化させる。いずれの場合も、各コイルC1~C12に流される電流の振幅が異なるが、各コイルC1~C12が発生する磁界は一致する。これにより、同相の各コイルC1~C12から発生する磁界が均一になることで安定した回転が得られる。
【0059】
このように、第2制御回路90aは、ステータ3に設けられた各コイルC1~C12の特性を保持し、各コイルC1~C12の特性に応じた交流波形により、モータ1を駆動制御する。これにより、各コイルC1~C12が発生する磁界が均一となり、モータ1の回転における、モータ音の低減、振動の低減、又は、消費電力の低減などの効果が得られる。
【0060】
図12図14は、本実施形態に係るモータ1の制御によりドライバー回路DRu、DRv、DRwから出力され各コイルC1~C12に印加される電流の交流波形を示す波形図である。図12は、低出力制御時の交流波形図である。図13は、中出力制御時の交流波形図である。図14は、高出力制御時の交流波形図である。
【0061】
ここでは、コイルC1~C12を励磁するドライバー回路は、各コイルC1~C12を個別に任意の電流を印加できるものとする。また、1周期とは、ドライバー回路の出力周期(出力交流電流の1周期)である。
【0062】
図12に示すように、モータ1の低速制御時(低出力時)は、1周期に、同相のコイルのうち1つのコイル又は1つの組のコイルを励磁し、1周期毎に、励磁するコイルを順次に変更する。U相コイルには、第1U相電流U1、又は第2U相電流U2、のいずれかの電流が印加される。具体的には、最初の1周期は、第1U相電流U1が印加されるコイルが励磁される。2番目の1周期では、第2U相電流U2が印加されるコイルが励磁される。3番目の1周期では、いずれのコイルも励磁されない。4番目の1周期では、最初に戻り、第1U相電流U1が印加されるコイルが励磁される。
【0063】
V相電流V1,V2は、U相電流U1,U2よりも位相が120度遅れている。W相電流W1,W2は、U相電圧U1,U2よりも位相が240度遅れている。V相コイル及びW相コイルも、U相コイルと同様に、1周期毎に、励磁するコイルが順次に入れ替わる。
【0064】
図12の例では、コイルが順次選択されるようにしているが、これに限定するものではなく、ある周期で何れかのコイルが励磁される場合、又は、いずれも励磁されない場合も含まれる。例えば、数周期おきにいずれのコイルも励磁しない周期をもうけることで、さらに低出力な制御も実現できる。
【0065】
図13に示すように、モータ1の中速制御時(中出力時)は、1周期に、同相のコイルのうち2つのコイル又は2つの組のコイルを励磁し、1周期毎に、励磁するコイルを順次に変更する。具体的には、最初の1周期は、第1U相電流U1が印加されるコイルが励磁される。2番目の1周期では、第1U相電流U1及び第2U相電流U2が印加されるコイルが励磁される。3番目の1周期では、第2U相電流U2が印加されるコイルが励磁される。4番目の1周期では、最初に戻り、第1U相電流U1が印加されるコイルが励磁される。V相コイル及びW相コイルも、U相コイルと同様に、1周期毎に、励磁するコイルが順次に入れ替わる。
【0066】
図14に示すように、モータ1の高出力時は、全てのコイルが各相の2つの電流U1,U2,V1,V2,W1,W2のいずれかにより常に励磁される。
【0067】
なお、低速制御時では、1周期に1つのコイル又は1つの組のコイルを励磁するように制御したが、2つ以上のコイル又は2つ以上の組のコイルを励磁してもよい。同様に、中速制御時においても、低速制御時と同じかそれ以上の数のコイルを励磁するように制御するのであれば、いくつのコイルを励磁してもよい。
【0068】
このように、モータ1の低速時及び中速時では、1周期毎に、各相において励磁されるコイルを順次に入れ替える。したがって、モータ1の出力に基づいて、各コイルを時分割で励磁するように制御することで、コイルによる発熱が分散される。
【0069】
(第1適用例)
図15及び図16を参照して、本実施形態の第1適用例に係るドローン60の構成の一例について説明する。図15は、ドローン60の基本構成を示す構成図である。図16は、ドローン60を側面から内部を透視した図であり、ドローン60の各構成部品が配置された状態を示す構成図である。
【0070】
ドローン60は、外部(リモートコントロール)からの無線信号による指令に応じて、空中を自由に飛行する無人の飛行体(移動体)である。なお、モータ1が適用される飛行体は、ドローン60に限らず、コントローラと有線で接続された飛行体でもよいし、有人の飛行体でもよい。
【0071】
ドローン60は、モータ1、制御ユニット61、バッテリー62、受信機63、6軸センサ64、高度センサ65、電流センサ66、回転位置センサ67、機体68、及び、プロペラ69を備える。
【0072】
制御ユニット61は、ドローン60の全体を制御するユニットである。制御ユニット61は、演算処理を行うプロセッサ及び記憶媒体(メモリ等)を含むコンピュータで構成される。記憶媒体には、制御方法を表すプログラム等が記憶されている。制御ユニット61には、モータ1を駆動するためのモータドライバー回路601が含まれる。例えば、モータドライバー回路601は、図10又は図11に示す制御方法を実行するための回路である。モータドライバー回路601は、各センサ64~67からの信号に基づいて、モータ1を駆動する制御を行う。
【0073】
また、モータドライバー回路601は、モータ1からのフィードバック信号(モータ1の状態を示す信号)を受信し、受信したフィードバック信号に基づいて、モータ1の駆動を制御してもよい。モータ1の制御に対する応答性を高くすることで、モータドライバー回路601は、モータ1のフィードバック信号に基づいて、モータ1の制御をすることができる。
【0074】
バッテリー62は、ドローン60を駆動するための電源である。バッテリー62は、一次電池(使い捨て電池)でもよいし、二次電池(充電式電池)でもよい。
【0075】
受信機63は、外部からの無線信号を受信する機器である。受信機63は、受信した無線信号に基づいて、ドローン60の制御に必要な情報を制御ユニット61に出力する。例えば、受信機63は、ドローン60の操縦者によるコントローラからの操縦指令を受信する。
【0076】
6軸センサ64は、ドローン60の姿勢状態を検出する加速度センサ及び角速度センサである。例えば、姿勢状態とは、前後揺れ(サージ)、左右揺れ(スウェイ)、上下揺れ(ヒーブ)、横揺れ(ロール)、縦揺れ(ピッチ)、及び、偏揺れ(ヨー)である。6軸センサ64は、検出した情報に基づいて、ドローン60の姿勢状態を示す情報を制御ユニット61に出力する。6軸センサ64は、1つのセンサで構成されてもよいし、複数のセンサで構成されてもよい。
【0077】
高度センサ65は、ドローン60の高度を検出するセンサである。高度センサ65は、検出した情報に基づいて、ドローン60の高度を示す情報を制御ユニット61に出力する。
【0078】
電流センサ66は、モータ1に流れる電流を検出するセンサである。例えば、電流センサ66は、モータ1に流れる各相(U相、V相及びW相)の電流を検出する。電流センサ66は、検出した電流値を示す情報を制御ユニット61に出力する。
【0079】
回転位置センサ67は、モータ1のロータ2の回転位置を検出するセンサである。例えば、回転位置センサ67は、モータ1を始動するために用いられ、ロータ2の回転時の制御には用いなくてもよい。
【0080】
電流センサ66及び回転位置センサ67は、モータ1の近傍に設けられ、モータ1と一体的に設けられてもよい。
【0081】
機体68は、各構成部品を内部に収容し、ドローン60の外形を形成する構成部品である。なお、機体68の形状は、どのような形状でもよい。
【0082】
プロペラ69は、ドローン60が飛行して移動するための推進力を発生させる機器である。プロペラ69は、駆動源であるモータ1の回転軸に取り付けられ、モータ1のロータ2が回転することで、ドローン60の推進力を発生させる。
【0083】
なお、プロペラ69は、いくつ設けられてもよい。例えば、ドローン60の上面が全体的に円形状又は正方形状である場合、外周側に複数のプロペラ69が設けられる。また、モータ1は、プロペラ69と同数設けられる。これにより、各プロペラ69に対応するように、動力源となるモータ1が設けられる。
【0084】
図17を参照して、ドローン60の制御方法について説明する。
制御ユニット61は、各センサ64~67からの各種センサ値及び受信機63からの受信機情報を読み込む(ステップS11)。制御ユニット61は、各種センサ値及び受信機情報に基づいて、各モータ1の目標モータ出力トルクT1を設定する(ステップS12)。制御ユニット61は、設定した目標モータ出力トルクT1と最大モータ出力トルクTmaxを比較する(ステップS13)。
【0085】
目標モータ出力トルクT1が最大モータ出力トルクTmaxより小さい場合、制御ユニット61は、モータ1が目標モータ出力トルクT1を得られるように、コイルC1~C12の組毎(又は個別)に流す補正電流値を設定する(ステップS13のYes、ステップS14)。制御ユニット61は、コイルC1~C12の組毎に設定した補正電流値を流すように、モータドライバー回路601を駆動する。これにより、コイルC1~C12が通電される(ステップS16)。
【0086】
目標モータ出力トルクT1が最大モータ出力トルクTmax以上の場合、制御ユニット61は、モータ1が最大モータ出力トルクTmaxを得られるように、各コイルC1~C12に最大電流値を流すように設定する(ステップS13のNo、ステップS15)。制御ユニット61は、各コイルC1~C12に最大電流値を流すように、モータドライバー回路601を駆動する。これにより、コイルC1~C12が通電される(ステップS16)。
【0087】
以上述べたドローンに本発明の多相モータシステムを使用することで、出力を制限して駆動を行う場合に、モータ内のコイルの使用状況を最適化でき効率的な運用ができる。また、各相のコイルが個別のドライバー回路で駆動されるため、コイル又はドライバー回路に障害が発生しても、障害の生じてないコイル又はドライバー回路でモータの回転を継続できるので、直ちに墜落につながるようなことは無い。
【0088】
(第2適用例)
図18を参照して、本実施形態の第2適用例に係る電動車70の構成の一例について説明する。
電動車70は、陸上を移動する移動体である。電動車70は、有人又は無人のいずれの移動体でもよい。電動車70が無人である場合、電動車70は、ドローン60と同様に、外部からの無線信号による指令に応じて、任意の方向に移動する。電動車70は、どのように制御されてもよく、ドローン60と同様に制御されてもよい。
【0089】
電動車70は、モータ1、制御ユニット71、バッテリー72、トランスアクスル(TA)73、センサ74、車体75、及び、複数のタイヤ76を備える。
【0090】
制御ユニット71は、電動車70の全体を制御するユニットである。制御ユニット71は、ドローン60の制御ユニット61と同様に構成され、センサ74からの信号に基づいて、モータ1を駆動する制御を行う。これにより、制御ユニット71は、電動車70の走行を制御する。
【0091】
バッテリー72は、電動車70を駆動するための電源である。バッテリー72は、ドローン60のバッテリー62と同様に構成される。
【0092】
トランスアクスル73は、トランスミッションとディファレンシャルギアが一体化された装置である。トランスアクスル73は、モータ1の駆動力を少なくとも1つのタイヤ76(例えば、全部で4つのタイヤ76うち2つのタイヤ76)に伝達する。なお、トランスアクスル73の代わりに、トランスミッションとディファレンシャルギアが別々に設けられてもよい。
【0093】
センサ74は、電動車70の動作を決定するためのセンサである。センサ74は、どのようなセンサでもよいし、いくつ設けられてもよい。例えば、センサ74は、電動車70の位置、姿勢又は走行方向を検出してもよい。また、センサ74は、電動車70の外部の情報を検出するものでもよい。例えば、センサ74は、電動車70の走行方向を決定する目印(物体又はマーク等)、又は、電動車70の走行を制限するための情報(障害物、車線又は標識等)を取得するものでもよい。センサ74は、検出した情報を制御ユニット71に出力する。
【0094】
車体75は、各構成部品を内部に収容し、電動車70の外形を形成する構成部品である。なお、電動車70の形状は、どのような形状でもよい。
【0095】
タイヤ76は、電動車70を走行させるための部品である。少なくとも1つのタイヤ76は、駆動源であるモータ1の回転軸と連動するように取り付けられ、モータ1のロータ2が回転することで、タイヤ76が回転する。これにより、電動車70は、走行する。図18は、4つのタイヤ76が設けられているが、タイヤ76は、1つ以上であれば、いくつ設けられてもよい。
【0096】
(第3適用例)
図19を参照して、本実施形態の第3適用例に係る電動船80の構成の一例について説明する。
電動船80は、水上を移動する移動体である。電動船80は、有人又は無人のいずれの移動体でもよい。電動船80が無人である場合、電動船80は、ドローン60と同様に、外部からの無線信号による指令に応じて、任意の方向に移動する。電動船80は、どのように制御されてもよく、ドローン60と同様に制御されてもよい。
【0097】
電動船80は、モータ1、制御ユニット81、バッテリー82、センサ83、船体84、及び、プロペラ85を備える。
【0098】
制御ユニット81は、電動船80の全体を制御するユニットである。制御ユニット81は、ドローン60の制御ユニット61と同様に構成され、センサ83からの信号に基づいて、モータ1を駆動する制御を行う。これにより、制御ユニット81は、電動船80の走行を制御する。
【0099】
バッテリー82は、電動船80を駆動するための電源である。バッテリー82は、ドローン60のバッテリー62と同様に構成される。
【0100】
センサ83は、電動船80の動作を決定するためのセンサである。センサ83は、どのようなセンサでもよいし、いくつ設けられてもよい。例えば、センサ83は、電動船80の位置、姿勢又は走行方向を検出してもよい。また、センサ83は、電動船80の外部の情報を検出するものでもよい。例えば、センサ83は、電動船80の走行方向を決定する目印(物体又はマーク等)、又は、電動船80の走行を制限するための情報(障害物、航路又は標識等)を取得するものでもよい。センサ83は、検出した情報を制御ユニット81に出力する。
【0101】
船体84は、各構成部品を内部に収容し、電動船80の外形を形成する構成部品である。なお、船体84の形状は、どのような形状でもよい。
【0102】
プロペラ85は、電動船80が水上を移動するための推進力を発生させる機器である。プロペラ85は、駆動源であるモータ1の回転軸に取り付けられ、モータ1のロータ2が回転することで、電動船80の推進力を発生させる。なお、プロペラ85は、いくつ設けられてもよい。また、モータ1は、プロペラ85と同数設けられる。これにより、各プロペラ85に対応するように、動力源となるモータ1が設けられる。
【0103】
以上述べたように、モータ1を用いて、ドローン60、電動車70又は電動船80などの移動体を構成することができる。モータ1は、制御に対する応答性が良いため、このような移動体に用いるのに適している。さらに、モータ1からのフィードバック信号に基づいて、モータ1を制御することで、モータ1をより精度よく制御することができる。特に、ドローン60では、飛行状態を維持するために精度のよい制御が求められ、モータ1は、このような制御に適している。
【0104】
本実施形態によれば、着磁方向がハルバッハ配列の永久磁石をロータ2に設け、ステータのコイルに対する磁束密度を高めることができるので、通常の永久磁石を使用したモータと比較して高出力なモータを実現できる。
【0105】
また、複数のコイルC1~C12は、全て2つのコイルで対(組)になり、対になるコイルは、ステータ3における回転軸を中心として対向する位置に設けられる。対になるコイルには、同相で極性が同じになるように励磁される。これにより、モータ1の磁界が偏らずに、各コイルC1~C12を時分割で制御することができる。また、一部のコイルを励磁しない場合でも、モータ1の回転のバランスが取れた制御をすることができる。
【0106】
また、コイルC1~C12を個別又は組毎に異なる制御ができるようにすることで、モータシステム全体の運転効率を向上することができる。また、各コイルC1~C12の特性に基づいて、各コイルC1~C12を励磁するためのパルスを生成することで、各コイルC1~C12の磁力が一致するように励磁され、モータ1を効率的に駆動することができる。
【0107】
複数の永久磁石21~24をハルバッハ配列に配置することで、着磁方向を容易にハルバッハ配列にすることができる。また、着磁方向がハルバッハ配列になるように着磁された1つ以上の永久磁石(磁気異方性永久磁石)を設けることで、モータ1の全体の構成部品を少なくすることができる。
【0108】
(第2の実施形態)
第2の実施形態は、第1の実施形態に係るモータ1を、二列ハルバッハモータに変形したものである。
【0109】
二列ハルバッハ配列は、ステータの外周と内周にそれぞれ永久磁石をハルバッハ配列に配置する。外周側の永久磁石の配列を図1に示す配列とした場合、内周側にも同じ極数で同数の永久磁石がハルバッハ配列に配置されるが配置位置が異なる。ステータ側から見た場合、外周側に配置された永久磁石と対向する位置に配置される内周側の永久磁石は、極の向きが逆になるように配置する。例えば、図1の永久磁石22をステータ側から見るとS極であった場合、内周側に対向する位置に配置される永久磁石は、ステータ側から見てN極となる。永久磁石24に対向する永久磁石も同様にS極となる。また永久磁石21で示す磁極の向きが反時計回りの場合、その対向する位置に配置される永久磁石の磁極の向きは、時計回りとなる。同様に永久磁石23に対向する永久磁石も反時計回りとなる。
以上のべたように永久磁石を配置することで極となる永久磁石の位置(永久磁石22と永久磁石24)において、ステータに生じる磁束が、一列ハルバッハ配列と比較して高い密度にすることができる。これによりモータの出力を高くすることができる。
【0110】
図20図23を参照して、本発明の第2の実施形態に係るモータ1Aの構成の一例について説明する。図20は、モータ1Aの正面図である。図21は、モータ1Aの左側面図である。図22は、モータ1Aの右側面図である。図23は、図20のB-B線で切断した断面図である。
【0111】
具体的には、モータ1Aは、円筒形状に配置されたコイル43を含むステータ3の内周側と外周側のそれぞれに、着磁方向がハルバッハ配列の永久磁石42a,42bが配置されたロータ2a,2bが設けられた構成である。その他の点は、第1の実施形態に係るモータ1と同様である。 インナーロータ2aは、ステータ3の内周側に設けられ、内側ロータ継鉄41a及び内側永久磁石42aを備える。アウターロータ2bは、ステータ3の外周側に設けられ、外側ロータ継鉄41b及び外側永久磁石42bを備える。永久磁石42a、42bともに図に矢印で示す着磁方向に配置され、ステータ3を挟んで対向する位置に配置された永久磁石は、ステータ3から見て着磁方向が逆になるように配置されている。
【0112】
放熱フィン56は、図22に示すように、断面の外周側が凹凸になるように形成される。放熱フィン56は、モータ1で発生する熱を外部に放熱する。中継基板57は、コイルの配線と、ドライバーからの配線を中継するための基板である。また、ホール素子などのセンサや、出力リップルを吸収するためのコンデンサを実装するようにしても良い。
【0113】
永久磁石飛散防止管58は、円筒形状であり、コイル43とインナーロータ2aとの間には、永久磁石飛散防止管58が設けられる。永久磁石飛散防止管58は、インナーロータ2aに設けられた永久磁石42aが遠心力で飛散するのを防止するために設けられる。例えば、永久磁石飛散防止管58は、チタン等の非磁性の高耐熱高強度材料で形成される。
【0114】
本実施形態によれば、ステータ3の内周側と外周側にロータ2a,2bが設けられたデュアルロータ型のモータ1Aにおいて、第1の実施形態と同様の作用効果を得ることができる。
【0115】
(第3の実施形態)
図24図27を参照して、本発明の第3の実施形態に係るモータ1Bの構成の一例について説明する。図24は、モータ1Bの正面図である。図25は、モータ1Bの左側面図である。図26は、モータ1Bの右側面図である。図27は、図24のC-C線で切断した断面図である。
【0116】
モータ1Bは、図24図27に示す第1の実施形態に係るモータ1を、インナーロータ型の一列ハルバッハモータに変形したものである。具体的には、モータ1Bは、円筒形状に配置されたコイル43を含むステータ3の内周側に、着磁方向がハルバッハ配列の永久磁石42が配置されたインナーロータ2aが設けられた構成である。その他の点は、第1の実施形態に係るモータ1と同様である。
【0117】
インナーロータ2aは、第2の実施形態と同様に構成される。プレート55a,55bは、モータ1の左側面及び右側面をそれぞれ覆う円板状の部品である。中継基板57及び永久磁石飛散防止管58は、第2の実施形態と同様である。
【0118】
本実施形態によれば、ステータ3の内周側にインナーロータ2aが設けられたインナーロータ型のモータ1Bにおいて、第1の実施形態と同様の作用効果を得ることができる。
【0119】
なお、本発明は上述した実施形態に限定されず、構成要素を削除、付加又は変更等をしてもよい。また、複数の実施形態について構成要素を組合せ又は交換等をすることで、新たな実施形態としてもよい。このような実施形態が上述した実施形態と直接的に異なるものであっても、本発明と同様の趣旨のものは、本発明の実施形態として説明したものとして、その説明を省略している。
【符号の説明】
【0120】
1…モータ、2…ロータ、3…ステータ、21,22,23,24…永久磁石。
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